匡を e 1歳で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの1例...遅発↑~ti11'i...

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匡をE 1歳で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの 1 藤井笑子 I l 二|二 li s!IJ Il 須賀健1) 田哲也 1) 1 )徳島赤卜字病院 小児科 Tm 敏弘 I 阪田 章聖2) 2 )徳島赤十字病院 小児外科 要旨 l 2ヶ月男児の遅発性横隔膜ヘルニアを経験した。主訴は|極|止であり、胃腸炎として入院し点滴と食事療法で経過 制祭した 。 しかし l 恒吐が続くため服部単純 X 線と JI 旬腹部 CT 検査を施行し診断に至った。忠児は九 ヶ月H 寺に 肺炎に慌 隔膜ヘルニアは出生直後のような重篤な症状を示す司 i が少なく、 診断 に苦除、することが多いが、本症の発症H )JJJ ji を検討する必要がある 。 キーワード :遅発性検隔)]英ヘルニア、円 JI 易炎 症例 症例: 平成 11 9 16 日生まれ、 l 2ヶ月、男 児 家族歴:特記すべきことなし 既往歴: 9 ヶ月時に肺炎に,罷患し 他 院 で 入 院 加 療 さ れ る。 現 病 歴 :平 成 12 12 12 日に腹痛を訴え、他院を受診 し整腸剤 を処方され内服 していたが、その夜数回の 1[& |止があった。翌日も 1 1 匝吐が続くため、再度受診し点滴 を受けるが効果なく、 12 14 日ぐったりしてきたため 巾院を招介され加療目的で入院した。 入 院 時 現 症 :体 重8.9kg 。体 温37.2 0 C 。 仁|唇に軽度の 1'I'iJ 莫は l i 保していた。胸部l 陪診では異常を 35 めず。日差 部は1 [ 珪度陥没気味で、i [ 次、 l lf 日動音は微弱で肝J J J 重は認 めず、腹部腫摘は触れなかった。 入院時検査成績:WBC13400/μ1(seg 52. 8%Iym39. 7 %), RBC428 /μ1 Hb1 1. 4g/d l . Plt33.5 /μ1 血糖 107mg/dl CRP O. 4mg/ dl 生化学検査では異 常を認めなかった。尿検査にも異常を認めず、使培養 では一般細菌は陰性でロタ反応も|岱|生であった。 入院後経過:入院後輸液を開始し、翌日まで絶食にし て経過観察したと ころ1 I 1 &f気、1 1 匝吐は消失したため、食 事を 開始した。 しかし食べると阻止|こする事が続いた。 40 歳で発症した遅発性縦|同I J 英ヘルニアの l 1 平成12 12 18 日( 1 2 ヶ月 ) 2 Tokushi ll1 aRedCross I-I ospital Medical Journal

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Page 1: 匡を E 1歳で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの1例...遅発↑~ti11'i 隔膜ヘルニアは出生直後のような重篤な症状を示す司iが少なく、 診断に苦除、することが多いが、本症の発症H寺)JJJ

匡をE 1歳で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの 1例

藤井笑子II

l二|二li本 忠s!IJIl

須賀健一1)

吉田哲也1)

1 )徳島赤卜字病院 小児科

大Tm 敏弘II

阪田 章聖2)

2 )徳島赤十字病院 小児外科

要旨

l歳2ヶ月男児の遅発性横隔膜ヘルニアを経験した。主訴は|極|止であり 、胃腸炎として入院し点滴と食事療法で経過

制祭した。しかしl恒吐が続くため服部単純 X線と JI旬腹部 CT検査を施行し診断に至った。忠児は九ヶ月H寺に肺炎に慌

jt してい るが、その際の胸部単純 X 線上は杭|刷l英ヘルニアを疑う像は認めず、今回発症したと考えられた。 遅発↑~ti11'i

隔膜ヘルニアは出生直後のような重篤な症状を示す司iが少なく、 診断に苦除、することが多いが、本症の発症H寺)JJJやji状

を検討する必要がある。

キーワード :遅発性検隔)]英ヘルニア、円JI易炎

症例

症例 :平成11年9月16日生まれ、 l歳 2ヶ月、男児

家族歴:特記すべきことなし

既往歴:9ヶ月時に肺炎に,罷患し他院で入院加療され

る。

現病歴:平成12年12月12日に腹痛を訴え、他院を受診

し整腸剤を処方され内服 していたが、その夜数回の11[&

|止があった。翌日も 11匝吐が続くため、再度受診し点滴

を受けるが効果なく、 12月14日ぐったりしてきたため

巾院を招介され加療目的で入院した。

入院時現症:体重8.9kg。体温37.20

C。仁|唇に軽度の

チアノーゼ、 顔色は軽度蒼白でII[~[頭発赤はなし、口 JJ空

1'I'iJJ莫はl詑i保していた。胸部l陪診では異常を35めず。日差

部は1[珪度陥没気味で、i[次、 l場lf日動音は微弱で肝JJ専JJ重は認

めず、腹部腫摘は触れなかった。

入院時検査成績:WBC13400/μ1 (seg 52. 8% Iym 39. 7

%), RBC428万/μ1,Hb11. 4g/ dl. Plt33.5万/μ1,

血糖107mg/dl, CRP O. 4mg/ dl 生化学検査では異

常を認めなかった。尿検査にも異常を認めず、使培養

では一般細菌は陰性でロタ反応も |岱|生であった。

入院後経過:入院後輸液を開始し、翌日まで絶食にし

て経過観察したと ころ1I1&f気、11匝吐は消失したため、食

事を開始した。 しかし食べると阻止|こする事が続いた。

40 歳で発症した遅発性縦|同IJ英ヘルニアの l例

図 1 平成12年12月18日 (1歳 2ヶ月)

図2

Tokushill1a Red Cross I-Iospital Medical Journal

Page 2: 匡を E 1歳で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの1例...遅発↑~ti11'i 隔膜ヘルニアは出生直後のような重篤な症状を示す司iが少なく、 診断に苦除、することが多いが、本症の発症H寺)JJJ

12月18日に腹部単純 X線を撮り 、左肺野に腸管ガス

像を認め(図 1)、胸腹部 CT検査で左胸l庄内に主に

colonと思われる消化管の突出を認めた (図2)。遅

発性横隔膜ヘルニアと診断し、同日 、当院小児外科に

て根治術を施行された。開腹アプローチされ横隔膜左

後外側 に3cmのヘ ルニア門 を認め、脱出臓器は小

腸、大腸であった(図3)。腸回転異常を認めたため

Laddの1開帯を切離され右に小腸、左に大腸を還納し

欠損孔を修復された。その後、|呼吸状態の悪化も生ず

ることなく 12月28日に退院した。

図3 左横隔膜ヘルニア 2000年12月18日 1才 男児

図4 平成11年 7月1日 (9ヶ月)

VOL. 7 NO. 1 MARCH 2002

考察

Bochdalek干しヘルニアは先天性横隔膜ヘルニアでは

最も発生頻度が高く、 JJ台生期の胸腹膜孔の閉鎖が左側

で遅れる事に加え右側は肝臓に より保護されているた

め左側が 4 ~ 8 倍で多い。 また発症時期に関しては

Bermanらによると生後24時間以内に90%が発症し、

遅発性横隔膜ヘルニアの頻度は少なく (5 ~25%) 、

生後 8週以降の発症は全体の約10%である。])脱出臓

器は小腸、大腸の一部が多く H乎吸器症状以外に脱出し

た腸管の通過障害に基づく消化器症状で発症する事も

ある。lト 3)患児の場合、生後 9カ月時に肺炎擢患時の

胸部 X線像ではJliIT野、横隔膜に異常を認めておらず

(図4)、今回の l歳 2カ月で発症したと思われる。在

日台39週、 2885gで出生しているが生直後の呼吸障害は

認められていない。その後の発育発達状態も標準であ

り、ヘルニアの症状は示さなかったため、疾患のある

事に気付かれず経過した例であり腸回転異常を伴うも

のであった。本症の発症の原因は胃腸炎や腸回転異常

における腸閉塞のH匝吐のため腹圧が上昇し、かつ胸腔

内の陰圧も関係してヘルニアが発生したと考えられ

た。

遅発性横隔膜ヘルニアは肺低形成の合併も少なく予

後は良好であるが本症例は初診時から診断できたわけ

でない。冬季の乳幼児恒吐下痢症が流行 していた時期

であり胃腸炎としての治療を行ったが、しつこい恒吐

は稀ではあるが本症も疑い検査をすすめる必要性を感

じた。

結 三五回ロ

l歳 2ヶ月で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの 1症

例を報告した。

腸回II1iを伴い、消化器症状が主症状であった。遅発

性横隔膜ヘルニアは出生直後発症例の ような重篤な症

状を示す事が少ないが、本症も念頭に置きその特徴に

ついて検討することが必要である。

文献

1) Berman L et al: The latepresenting pediatric

Bochdalek hernia: a 20-year review. J Pediatr

l 歳て、発痕した遅発↑~U'ずl隔)J莫ヘルニアの I 例 41

Page 3: 匡を E 1歳で発症した遅発性横隔膜ヘルニアの1例...遅発↑~ti11'i 隔膜ヘルニアは出生直後のような重篤な症状を示す司iが少なく、 診断に苦除、することが多いが、本症の発症H寺)JJJ

Surg, 23: 735-739,1988

2) Hartman GE: Nelson Text book of Pediatrics

16th ed., p1231 -1234, W.B.Saunders Company,

Philadelphia, 2000

3 )鎌田振吉:横隔膜ヘルニア.小児科診療 62:

1801 -1806, 1999

A Case of Late Diaphragmatic Hernia that Developed at the Age of One

Shoko FUJII'), Kenichi SUGN), Tosihhiro ONISHI'), Tadanori NAKATSUt),

Tetsuya YOSHIDN), Akihiro SAKAT N)

1) Division of Pediatrics, Tokushima Red Cross Hospital

2) Division of Pediatric Surgery, Tokushima Red Cross Hospital

We experienced a case of late diaphragmatic hernia in a body of one year and 2 months. The chief

complaint was vomiting. The patient was hospitalized for gastro巴nteritis,and the subsequent course was

watched under treatment with drip infusion and diet therapy. I-Iowever, because of persisting vomiting, plain

films of the abdomen and CT of the abdominothoracic region wer巴 taken,which led to the diagnosis. Th巴

patient contracted pneumonia at the age of 9 months, and plain films of the chest taken at that time showed

no signs of diaphragmatic hernia, and therefore, the disease is considered to have d巴velopedthis til1l巴 Late

diaphragmatic hernia seldol1l shows such serious symptol1ls as observed immediately after birth, and the

physician is often perplexed as to what diagnosis should be given. Therefore, it is necessary' to study the til1l巴

of onset of this disease and its symptoms.

K巴ywords: late diaphragmatic h巴rnia,gastroenteri tis

Tokushima Red Cross Hospital M巴dicalJ ournal 7・40-42,2002

42 歳で発症した遅発性横隔IJ莫ヘルニアの I例 Tokushima Red Cross Hospital M巴dicalJournal