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JPMA NEWS LETTER 2015 No. 168 Topicsトピックス 「第26回 広報セミナー」を開催 1/8 製薬協 広報委員会主催の「第26回 広報セミナー」を、2015年4月21日、東京・野村コンファレンスプラザ日本橋にて開 催しました。今回は「日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development、AMED)設 立にあたって」のテーマのもとに、内閣官房 健康・医療戦略室 企画調査官 永野智一氏が講演しました。会員会社から 約100名が参加し、聴講しました。 製薬協 広報委員会は、広報委員および会員会社の広報担当者を対象に、製薬産業や広報業務にかかわる者として共通 認識を深めるために広報セミナーを開催しています。今回は内閣官房 健康・医療戦略室 企画調査官 永野智一氏による、「日 本医療研究開発機構設立にあたって」と題した講演が行われました。以下に、講演内容を紹介します。 「日本医療研究開発機構設立にあたって」 ~健康・医療戦略と機構設立~ 内閣官房 健康・医療戦略室 企画調査官 永野 智一 日本は世界最高水準の平均寿命を達成し、人類誰もが願う長寿社会を現実のものと した一方、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の乖離が10年程度あり ます。また、高齢化率は2012年現在、24.1%に至り、世界に先駆けて超高齢社会を 迎えています。さらに2060年には39.9%に達することが予測されています。医療費は 毎年増大しており、2011年度に38兆円を突破し、2025年度には約60兆円に達すると 見込まれています。このような現状から、国民がさらに健康な生活および長寿を享受 することのできる社会、すなわち健康長寿社会を形成することが急務となっています。 私が所属する内閣官房 健康・医療戦略室は、世界最先端の医療技術・サービスを実現し、健康寿命延伸を達成すると同 時に、それにより医療、医薬品、医療機器を戦略産業として育成し、日本経済再生の柱とすることを目指すため、2013年2 月22日、内閣官房に設置されました。 会場の様子 Topics |トピックス 2015年7月号 No.168 J P M A N E W S L E T T E R 「第26回 広報セミナー」を開催 日本医療研究開発機構設立にあたって

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JPMA NEWS LETTER 2015 No. 168 Topics|トピックス 「第26回 広報セミナー」を開催 1/8

製薬協 広報委員会主催の「第26回 広報セミナー」を、2015年4月21日、東京・野村コンファレンスプラザ日本橋にて開催しました。今回は「日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development、AMED)設立にあたって」のテーマのもとに、内閣官房 健康・医療戦略室 企画調査官 永野智一氏が講演しました。会員会社から約100名が参加し、聴講しました。

 製薬協 広報委員会は、広報委員および会員会社の広報担当者を対象に、製薬産業や広報業務にかかわる者として共通認識を深めるために広報セミナーを開催しています。今回は内閣官房 健康・医療戦略室 企画調査官 永野智一氏による、「日本医療研究開発機構設立にあたって」と題した講演が行われました。以下に、講演内容を紹介します。

「日本医療研究開発機構設立にあたって」~健康・医療戦略と機構設立~内閣官房 健康・医療戦略室 企画調査官 永野 智一 氏

 日本は世界最高水準の平均寿命を達成し、人類誰もが願う長寿社会を現実のものとした一方、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の乖離が10年程度あります。また、高齢化率は2012年現在、24.1%に至り、世界に先駆けて超高齢社会を迎えています。さらに2060年には39.9%に達することが予測されています。医療費は毎年増大しており、2011年度に38兆円を突破し、2025年度には約60兆円に達すると見込まれています。このような現状から、国民がさらに健康な生活および長寿を享受することのできる社会、すなわち健康長寿社会を形成することが急務となっています。

 私が所属する内閣官房 健康・医療戦略室は、世界最先端の医療技術・サービスを実現し、健康寿命延伸を達成すると同時に、それにより医療、医薬品、医療機器を戦略産業として育成し、日本経済再生の柱とすることを目指すため、2013年2月22日、内閣官房に設置されました。

会場の様子

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日本医療研究開発機構(AMED)設立までの経緯 健康・医療戦略室の設置後、平成25年(2013年)4月の総理指示および官房長官取りまとめを受けて、同年6月、日本再興戦略において「医療分野の研究開発の司令塔機能創設」が閣議決定されました。その後、「健康・医療戦略推進法案」と「日本医療研究開発機構法案」が国会で審議され、平成26年(2014年)5月に成立しました。これを受け、同年6月に法定の「健康・医療戦略推進本部」が設置、7月に「健康・医療戦略」が閣議決定、「医療分野研究開発推進計画」が推進本部決定されました。併せて、6月にAMEDの設立準備室が設置され、理事長などの指名などの準備が進められ、平成27年(2015年)4月1日にAMEDが設立されました(図1)。

健康・医療戦略の推進体制 健康・医療戦略推進本部は、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚により構成されており、健康・医療戦略の案の作成および実施を推進するとともに、医療分野の研究開発の司令塔機能の本部の役割を担っています。具体的には、医療分野研究開発推進計画の作成および実施の推進、医療分野の研究開発関連予算の総合的な予算要求配分調整などを行います。健康・医療戦略推進本部の下には、産業界・医療関係機関などの有識者から構成され政策的助言を行う「健康・医療戦略参与会合」と、医療分野の研究開発に関する専門家で構成され医療分野研究開発推進計画に関する調査・検討を行う「健康・医療戦略推進専門調査会」が設置されています。そのほかに「健康・医療戦略推進会議」、5つの協議会と2つのタスクフォースが設置され、具体的な検討を推進しています(図2)。

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図1 AMED設立までの経緯

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「健康・医療戦略推進法」「独立行政法人日本医療研究開発機構法」 「健康・医療戦略推進法」は、世界最高水準の医療の提供に資する研究開発などにより、健康長寿社会の形成に資することを目的としており、健康・医療戦略推進本部の設置、健康・医療戦略および医療分野研究開発推進計画の策定などの措置を講ずるとしています。「日本医療研究開発機構法」では、医療分野の研究開発およびその環境の整備の実施・助成などの業務を行うことを目的とする日本医療研究開発機構を設立すること、およびその名称、目的、業務の範囲などについて定めています(図3)。

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図2 健康・医療戦略の推進体制

図3 健康・医療戦略推進法の概要の骨格

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健康・医療戦略 世界に先駆けて超高齢社会を迎える日本では、健康長寿社会の形成に向け、世界最先端の医療技術・サービスの実現による、健康寿命の延伸が重要な課題となっています。こうした中で、最先端の医療技術やサービスによって健康長寿社会を実現し、経済成長も目指す「健康・医療戦略」が平成26年(2014年)7月に閣議決定されました。「健康・医療戦略」では、世界最高水準の技術を用いた医療の提供に寄与する「医療分野の研究開発の推進」、健康長寿社会の形成に資する「新産業の創出」、「医療の国際展開」、「医療のICT化」を4つの柱としています(図4)。

医療分野研究開発推進計画 平成26年(2014年)7月に本部決定された「医療分野研究開発推進計画」においては、「基礎研究と臨床現場の間の循環を構築する必要性」、「課題解決のための10の基本方針」、「機構(AMED)に期待される機能」、「9つの連携プロジェクト」などがまとめられています(図5)。

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図4 「健康・医療戦略」について

図5 「医療分野研究開発推進計画」について

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日本医療研究開発機構(AMED、http://www.amed.go.jp) AMEDでは、医療分野の研究開発における基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進・成果の円滑な実用化および医療分野の研究開発のための環境の整備を総合的かつ効果的に行うため、医療分野の研究開発およびその環境の整備の実施や助成などを行います。 理事長には慶應義塾大学医学部出身の末松誠氏が就任しています。組織図は図6の通りですが、末松理事長は、戦略推進部の7つの課と5つの事業部が「縦横連携」することによって、Medical R&Dの全体最適化を目指すとしています(図6、7)。

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図6 AMEDの組織体制について

図7 7プロジェクトを包含する戦略推進部が他の5事業部との「縦横連携」によってMedical R&Dの全体最適化を目指す

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AMEDに期待されること AMEDの設立により、研究者は、基礎段階から実用化まで切れ目なく、研究開発の進捗に応じた最適な研究費などを確保できるようになり、かつ情報提供や申請の窓口・手続きが一本化され、研究以外の事務負担が減り、これまで以上に研究開発に専念できるようになることが期待されます。また、国にとっては、研究開発に係る設備・機器整備での重複投資を避け、国全体を俯瞰した最適な配置が可能となり、研究の効率化が期待できます(図8)。

AMEDに求められる機能 AMEDには、健康・医療戦略推進本部が定める医療分野研究開発推進計画に基づくトップダウンの研究を推進するため、「医療に関する研究開発の実施」、「臨床研究等の基盤整備」が求められています。そのほかに、「産業化へ向けた支援」や「国際戦略の推進」もAMEDの重要な機能となっています(図9)。

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図8 AMEDの設立による効果

図9 AMEDに求められる機能

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創薬支援ネットワーク 「創薬支援ネットワーク」は、大学などの優れた基礎研究の成果を医薬品として実用化に導くため、AMED創薬支援戦略部が本部機能を担い、理化学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所、産業技術総合研究所などとの連携により、革新的医薬品の創出に向けた研究開発などを支援する取り組みです。創薬エキスパートチームによる「総合コンサルテーション」と「技術支援」を両輪とするわが国初の本格的なオールジャパンでの公的創薬支援を行っています(図10、11)。

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図10 創薬支援ネットワーク(AMED設立以降)

図11 創薬エキスパートチームによる「総合コンサルテーション」と「技術支援」を両輪とする我が国初の本格的なオールジャパンでの公的創薬支援

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最後に 今回の広報セミナーでは、「日本医療研究開発機構設立にあたって」というテーマのもと、AMED設立の経緯やこれまでの取り組みとともに、AMEDの役割や意義などを丁寧にわかりやすく説明いただきました。 事後のアンケートでは、「具体的な取り組みに関する説明が、大変勉強になった」、「AMEDの役割とわれわれ製薬企業の関係が大変参考になった」などのコメントが多く寄せられ、参加者一同にとって大変有意義なセミナーとなりました。

(広報部)

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