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滋賀県東北部工業技術センター
「絹織物への3D柄を迅速に形成できるシステム」
平成24年2月16日
滋賀県東北部工業技術センター
所長 月瀬 寛二
繊維・高分子担当 谷村 泰宏 小谷 麻理 山田 恵
機械・金属材料担当 今田琢巳
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研究背景
滋賀県内の繊維産地は天然素材(絹、麻、綿)を用いた織物産地が点在している。
各産地ともに差別化技術を模索している。
当センターで開発され、技術移転されていない特許技術を、産地で利用してもらうために、使いやすい技術に磨きをかける必要がある。
長浜(絹織物)
高島(綿織物)
(撚糸、産業資材)
湖東(麻織物)
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試験対象特許
特許第4041920号 「絹織物表面賦型方法及び絹布」
模様型を加圧する方法により織物生地表面に、3D加工を行い織物表面に光沢差を作り、偏光調柄を作成する方法
偏光調柄が染色や洗濯によっても安定的に持続される技術
模様型のコスト、製作期間、柄形成の自由度等に課題があり、本技術普及のネックとなっていた。
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偏光調柄とは
2枚の織物を重ねることにより、偏光調(モアレ)柄が発現する。
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開発した3D加工内容
• レーザ加工技術を活用し、短時間に模様型を作成し、高圧プレス加工によって織物に偏光調柄を発現するシステム
• 織物に新たな感性価値が手軽に短時間で付加できる
レーザ加工機 模様型 プレス加工 3D加工布
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目標
• 任意柄の模様型を作成し、3D加工で無地の織物に偏光柄を形成するシステムの構築
• 模様型加工と、織物に3D加工による偏光柄形成が5分以内を目標
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型に用いる素材の特徴
水準 材種 耐熱温度(℃)
圧縮応力
(MPa)
価格 (円)
(10cm×10cm) 備考
1 アクリル樹脂 80~90 約20 310(t=5mm) キャスト板を選択
2-1 レーザー加工用ゴム ~180 - 400(t=2.8mm) シリコン系
2-2 レーザー加工用ゴム(硬質) ~180 - 400(t=2.8mm) シリコン系
3 木材(ひのき) - 39 3(t=10mm) -
4 シリコンゴム(硬度80) ~180 - 1270(t=5mm) シリコン系
5 ポリアセタール樹脂 80~120 98~130 660(t=5mm) -
6 MCナイロン MC901 80~140 95 900(t=5mm) -
型材料比較
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型素材の違いによる3D加工評価
型用板の加工性と、3D加工評価から、ポリアセタール素材が型材料に最適
アクリル ゴム ゴム(硬質) 木材 シリコンゴム ポリアセタール MCナイロン
加工布の 状態
○ × × × × ○ ○
3D加工後の 模様型の状態
× ○ ○ × ○ ○ ○
評価 型が溶融 加工が鮮明に出
来ない 加工が鮮明に出
来ない
木汁が生地に付着
型が徐々に変形
加工が鮮明に出来ない
○ 模様型作成寺に切削屑再付着
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耐洗濯性
装置:ラウンダメーター
水温:50±2℃
処理時間:30分(A-2法×1回)、60分(A-2法×2回)、90分(A-2法×3回) スチールボールの添加:無し、20個
処理水:0.05%非イオン活性剤水 100cc
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耐洗濯性結果
A-2法×3回
(スチールボール20個入り)
評価用3D加工生地 A-2法×3回
(スチールボール無し)
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3D加工による風合い評価
風合い試験機FB2を用い、柔らかさに影響のある曲げ特性(硬さ、ひずみ)について測定を行った。
測定項目
曲げ硬さB[gf・cm2/cm] 曲げひずみ2HB[gf・cm/cm]
カトーテック社製
風合い試験機FB2
カトーテック社HPより
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3D加工の条件による風合いへの影響
圧力 温度 時間
B 0.80 0.42 0.16
2HB 0.85 0.25 0.18
・風合いは、圧力と正の相関性がある。
・圧力が高いと硬い風合いの加工生地になる。
・温度や時間は、風合いにはあまり影響を及ぼさない。
風合と、3D加工条件との相関性
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3D加工時間
厚みが2mmのポリアセタール板を用い、
切断加工で周囲160cm程度の模様型の作成が可能である。
切削加工で面積32cm2程度の模様型の作成が可能である。
3D加工時間 = 型作成時間 + プレス加工時間
(4分) (1分)
目標 3D加工時間 = 5分以内
切断加工
模様に沿って板を切り抜く加工
切削加工
模様の周囲を削り凹凸形状を
作成する加工
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無地の織物に形成する偏光柄の調査
<技術説明>
◇アンケート調査
対象:滋賀県立大学人間文化学部
使用素材:染無地絹織物(一越:浜ちりめん)
3D加工のデモンストレーションを実施。当方で用意した模様型を用い、技術体験指導。その後、アンケート調査を行った。
<加工実験>
<アンケート対象者年齢、性別> <この技術をどう思いますか>
活用アイデア
「自分の名前を入れられる」 「商品の説明書き」 「お土産もの」
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無地の織物に形成する偏光柄の調査
◇情報収集調査
対象:成安造形大学(空間デザイン領域)
使用素材:3D加工を行った染無地絹織物(一越:浜ちりめん)
<録画映像を使用しての技術説明>
<ディスカッションの様子>
<記録画像の一部>
調査の結果
3D加工の弱点を活用するアイデア提案
• 板締め絞りの技法の活用
• 染め柄と合わせたデザイン。
• 偏光柄面(表)と裏面(光沢面)の特徴を利用した柄作成、
• 面と線の効果を活かした柄作成。
• 加工した模様の上からさらに模様を重ねる効果。
• 箔や温度により溶解する素材を挟み込み一緒に圧力を加える
•
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偏光柄を付加した試作品の消費者の反応調査
素材:浴染、ヨシ入りちりめん
(タテ糸絹100%、ヨコ糸絹50%ヨシ入り糸50%) 染無地絹織物(一越:浜ちりめん) 素材色:DIC22、DIC428
サイズ:26×26㎝(ヒモ部含まず)
ここまでの調査結果から使用する素材の影響を受けすぎないよう、和風とは異なる色で生地を染色し、模様型のデザインを検討
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偏光柄を付加した試作品の消費者の反応調査
■産地ショップ「麻香」(近江八幡市)
■なぎさWARMS(大津市)
■びわ湖環境ビジネスメッセ会場(長浜市)
<技術説明、聞き取り調査の様子>
■素材製産企業(浜ちりめん工業協同組合)
• 家紋、七福神、龍(干支)、縁起物(だるま) • ありがとう」「感謝」「またお会いしましょう」等の言葉
• サイズが小さく、低コストの物が求められる
• フルオーダー製品。
• 冠婚葬祭に特化した製品。故人が好きだった花の柄。
• 赤ちゃんの誕生祝いや記念品として手形や足形を採取し、デザイン化した製品等
• 地域性を意識した回答が非常に多く、びわ湖の他、東京スカイツリーや地域のキャラクター柄。
• 会社のマーク等の提案が多く、幅広いマーケット向けの製品(技術)よりも地域限定、特別感のある製品の開発、
• 着尺生地等への活用するための機器の改良
• 無地の振袖に染柄と合わせて加工
• 各社の反物の界切りに、袱紗等のネーム入れ
• 社名や商品名として名入れ
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アンケート結果による試作
<試作ドレスと柄を2重加工した部分の拡大>
調査で得た内容や、大学からの情報提供、教授からの指導を参考に再度デザインを検討
<改善、工夫点> 不規則な加圧加工をおこなっても絵柄のバランス(縫製仕上がりした場合の柄つなぎ、上下つなぎ)が取れるデザインを検討。
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アンケート結果による試作
<試作着物とぼかし偏光柄部分の拡大>
<改善、工夫点>
偏光柄面だけでは絵柄に締まりがでない。生地の両面から3D加工を施し、偏光柄面と光沢面の両面の特徴を活かせる工夫をした。柄にはレース模様を取り入れ、和風、古典的にならにようデザインした。さらに模様型にわずかな傾きを与える事により、偏光ぼかし柄を作成する事に成功した。
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生地の見本市への出展
「オープンセンター」 日時:平成23年10月5日(水) 9時~16時30分
会場:東北部工業技術センター 展示/相談室1
展示内容:3D加工生地サンプル、模様型、紹介パネル(小)
(センターにて加工機器、加工手順の説明を実施)
濱縮緬工業協同組合 新作素材展「求評会」 日時:平成23年10月13日(木)~14日(金) 10時~17時(13日は13時より) 会場:京都産業会館(京都市下京区)
展示内容:3D加工着尺2点、紹介パネル(小) 「びわ湖環境ビジネスメッセ2011」 日時:平成23年10月19日(水)~10月21日(金) 10時~17時(最終日は16時まで)
会場:滋賀県立長浜ドーム(滋賀県長浜市田村町) 展示内容:袋小物、生地サンプル、紹介パネル、模様型
※同会場では聞き取り、アンケート調査を実施した。
「平成23年度(第49回)全国繊維技術交流プラザ」 日時:平成23年10月27日(木)~28日(金) 10時~16時(28日は15時まで) 会場:岡山後楽園鶴鳴館(岡山市北区後楽園) 展示内容:着尺2点、袋小物2点、紹介パネル(小)
※同展示会はコンペティション形式の展示会であった。 「ビジネス・エンカレッジ・フェア2011」 日時:平成23年12月13日(火)~14日(水) 10時~17時(14日は16時まで) 会場:大阪国際会議場(大阪市北区中之島)
展示内容:着尺、袋小物、説明パネル、模様型
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◇対応例、現在進行中の内容
(事例1)高級オーダーシャツの開発
(事例2)ブランド名加工
<お土産物プロジェクト、知事説明>
(事例3)和装小物への柄およびブランド名加工
(事例4)記念品、限定製品の作成
(事例5)「滋賀のお土産物プロジェクト」
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企業への期待
この技術を用いた新商品アイデアを持つ企業へ、実施許諾を希望します。
短時間で製品の作成が可能である特長を生かした製品作りに取り組んでください。
また、この技術に関連した周辺技術の開発については、ご相談ください。
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本件に関する知的財産権
発明の名称:絹織物表面賦型方法及び絹布
出願番号 :特願2003-71536
公開番号 :特開2004-277934
登録番号 :特許第4041920号
発明者 :浦島 開
出願人 :滋賀県
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お問い合わせ
研究機関名 滋賀県東北部工業技術センター
担当者名 谷村 泰宏
TEL 0749-62-1492 FAX 0749-62-1450
E-mail [email protected]