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松本市立病院新公立病院改革プラン (平成 29 年度~平成 32 年度) 平成29年3月

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松本市立病院新公立病院改革プラン

(平成 29年度~平成 32年度)

平成29年3月

松 本 市

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目 次

1 はじめに

⑴ 新公立病院改革プラン策定の趣旨 ・・・・・・ 1

⑵ 新公立病院改革プランの期間 ・・・・・・ 2

2 当院を取り巻く環境

⑴ 松本医療圏の状況 ・・・・・・ 3

⑵ 当院の状況 ・・・・・・10

⑶ まとめ ・・・・・・16

3 新公立病院改革プランの基本方針 ・・・・・・17

⑴ 地域医療構想を踏まえた役割の明確化

ア 長野県地域医療構想

イ 長野県地域医療構想を踏まえた松本市立病院の役割

ウ 松本市立病院における診療機能の取組方針

エ 地域包括ケアシステムの構築に向けて果たすべき役割

オ 一般会計における経費負担の考え方

カ 医療機能等指標に係る数値目標

キ 住民の理解のための取組み

⑵ 経営の効率化 ・・・・・・25

ア 経営指標に係る数値目標

イ 目標設定の考え方

ウ 目標達成に向けた具体的な取組み

エ 収支計画

⑶ 再編・ネットワーク化 ・・・・・・30

⑷ 経営形態の見直し ・・・・・・31

4 点検・評価・公表等 ・・・・・・31

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1

1 はじめに

⑴ 新公立病院改革プラン策定の趣旨

本市では、平成16年から「超少子高齢型人口減少社会」が急速に進展していく

将来を見据え、「量から質」へと発想を転換し、市民一人ひとりの命と暮らしを大

切に考え、誰もが健康でいきいきと暮らせるまちづくり「健康寿命延伸都市・松本」

の創造を進めています。

「健康寿命延伸都市・松本」は、「人と社会の『健康づくり』」を目指す総合的な

まちづくり政策で、平成23年に「松本市基本構想2020」で将来都市像として

掲げ、平成25年の「健康寿命延伸都市宣言」によって、松本市のまちづくりの普

遍的な理念として位置付けました。

平成27年に策定した「『健康寿命延伸都市・松本』地方創生総合戦略」では、「健

康寿命延伸都市・松本」を更に前進させる「生きがいの仕組みづくり」を基本目標

に掲げ、平成28年には「松本市基本構想2020」の後期計画として、平成32

年度までを計画期間とする「松本市第10次基本計画」を策定し、「生きがいの仕

組みづくり」に取り組むこととしています。

第10次基本計画の「地域医療の充実」では、地域医療の基幹的な役割を担う市

立の病院として当院を位置付けています。

当院は、昭和23年に国保直営診療所として開設されて以来、旧波田町の病院と

して地域医療を担ってきましたが、平成22年3月の市町合併により、本市が旧波

田町から引き継ぎ、松本市立病院として現在に至っています。

本市の中心市街地からは車で30分から1時間ほどかかり、主に農業振興地域と

中山間地域が岐阜県境まで広がる松本市西部地域における唯一の病院として立地し

ています。

従来から「患者さんに寄り添う医療」を病院の理念に掲げ、新しい命の誕生から

人生の終末期まで幅広く地域の皆さんを支えるとともに、公立病院として、救急医

療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療など第6次長野県

保健医療計画に基づく医療体制の構築と、その他、地域に必要な医療の提供を政策

的に担ってきました。また、県から松本医療圏における第二種感染症指定病院の指

定を受け、二類感染症病床機能を有しています。

しかしながら、団塊の世代が全て75歳を迎える2025年まで10年を切り、

急速な少子高齢化の進展や人口減少問題、生活習慣病などによる疾病構造の変化、

医療ニーズの多様化等、医療を取り巻く環境は大きく変化しています。

このような中で、当院では病院の移転建替という大きなプロジェクトが始まって

います。建築後30年以上経過し建物の老朽化と狭隘化という現実に直面しながら、

2025年問題を見据え医療を取り巻く環境変化に対応できる病院機能の見直しが

求められており、平成27年度に策定した「松本市立病院整備のあり方に関する将

来構想」で、移転建替による新病院の建設に向け準備を進めることとしました。

現病院の移転建替は、今後の医療需要の変化や病院機能の分化などに対応し、住

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み慣れた地域で安心して医療が受けられる体制を構築する公立病院の役割を、

2025年以降も持続可能にすることを目指すものです。したがって、2025年

までのプロセスとして現病院の移転建替を新改革プランに位置付けて取り組みます。

平成27年3月に総務省から示された「新公立病院改革ガイドライン」では、前

回の改革の柱としてきた「経営効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直

し」に「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を加えた4つの視点に立った改革

が求められています。当院が松本市西部地域の公立病院として、住み慣れた地域で

安心して医療が受けられる体制を構築する役割を将来にわたって果たせるように新

改革プランに取り組みます。

⑵ 新公立病院改革プランの期間

本プランの期間は、平成29年度から平成32年度までの4年間とします。

ただし、県が策定する地域医療構想の結果や計画期間中に病院を取り巻く環境に

変動があった場合には、必要に応じて計画を見直します。

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2 当院を取り巻く環境

⑴ 松本医療圏の状況

ア 二次医療圏別構成

長野県は、地域の医療需要

に対して、医療資源の適正な

配置と医療提供体制の体系化

を図るため、10の二次医療

圏を設置しています。当院が

位置する松本市は、松本二次

医療圏に所属しており、3市

1郡(5村)で構成されていま

す。

イ 二次医療圏別・松本二次医療圏市町村別人口

平成26年人口動態調査によると、長野県の総人口は、2,152,449人

です。そのうち、松本二次医療圏の人口は、430,447人で、構成割合は

20.0%であり、長野県の二次医療圏において、長野二次医療圏に次いで2番目

に構成割合が高い状況です。また、当院の位置する松本市の人口は、

243,037人となっています。

出典:長野県「第 6次長野県保健医療計画」

出典:厚生労働省「平成 26年人口動態調査」

三次医療圏 二次医療圏

松本

木曽

大北

佐久

上小

諏訪

上伊那

飯伊

長野

北信

中信

東信

南信

長野市、須坂市、千曲市、埴科郡、上高井郡、上水内郡

中野市、飯山市、下高井郡、下水内郡

北信

岡谷市、諏訪市、茅野市、諏訪郡

伊那市、駒ヶ根市、上伊那郡

飯田市、下伊那郡

構成市町村

木曽郡

大町市、北安曇郡

小諸市、佐久市、南佐久郡、北佐久郡

上田市、東御市、小県郡

松本市、塩尻市、安曇野市、東筑摩郡(麻績村、生坂村、山形村、朝日村、筑北村)

二次医療圏 人口(人) 構成割合(%)

松本 430,447 20.0

木曽 31,042 1.4

大北 62,649 2.9

佐久 213,724 9.9

上小 201,682 9.4

諏訪 204,875 9.5

上伊那 190,402 8.8

飯伊 169,504 7.9

長野 554,256 25.8

北信 93,868 4.4

長野県全域 2,152,449 100.0

人口(人) 構成割合(%)

243,037 56.5

67,670 15.7

96,479 22.4

23,261 5.4

麻績村 2,970 0.7

生坂村 1,953 0.4

山形村 8,425 2.0

朝日村 4,741 1.1

筑北村 5,172 1.2

430,447 100.0松本二次医療圏全体

市町村

松本市

塩尻市

安曇野市

東筑摩郡

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4

ウ 二次医療圏別出生数、死亡数

松本二次医療圏の出生率は、長野県全域よりも高く、長野県二次医療圏の中で

最も高くなっています。死亡率は、長野県全域よりも低く、長野県二次医療圏の

中で最も低くなっています。

エ 松本市死因別死亡率

本市の死因別死亡率は、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎の順で高くな

っており、特に、悪性新生物が非常に高くなっています。

死亡数(人) 死亡率(人)*1 死亡数(人) 死亡率(人)

*1 死亡数(人) 死亡率(人)*1

651 267.9 6,219 288.9 370,346 295.3

363 149.4 3,776 175.4 196,113 156.4

241 99.2 2,705 125.7 111,973 89.3

165 67.9 1,835 85.3 120,953 96.4

212 87.2 2,254 104.7 84,810 67.6

61 25.1 787 36.6 38,306 30.5

39 16.0 381 17.7 24,560 19.6

34 14.0 327 15.2 15,756 12.6

27 11.1 247 11.5 15,659 12.5

41 16.9 378 17.6 23,152 18.5

642 264.2 5,627 261.4 288,816 230.3

2,476 1,018.8 24,536 1,139.9 1,290,444 1,028.8

長野県

合計

松本市 全国

自殺

悪性新生物

心疾患(高血圧性除く)

脳血管疾患

肺炎

老衰

死因

不慮の事故

腎不全

慢性閉塞性肺疾患

肝疾患

その他

出典:厚生労働省「平成 26年人口動態調査」

※1 人口 1,000人当たり

出典:厚生労働省「平成 26年人口動態調査」

※1 人口 100,000人当たり

出生数(人) 出生率(人)*1 死亡数(人) 死亡率(人)

*1

3,463 8.0 4,603 10.7

148 4.8 530 17.1

370 5.9 751 12.0

1,458 6.8 2,456 11.5

1,460 7.2 2,299 11.4

1,487 7.3 2,230 10.9

1,366 7.2 2,047 10.8

1,246 7.4 2,168 12.8

4,036 7.3 6,213 11.2

604 6.4 1,239 13.2

15,638 7.3 24,536 11.4

上小

諏訪

上伊那

北信

長野県全域

飯伊

長野

二次医療圏

松本

木曽

大北

佐久

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5

オ 二次医療圏別病院数

二次医療圏別の対人

口10万人当たり病院

数をみると、松本二次

医療圏は長野県全域と

比較して、一般病院数

はやや低いものの、精

神科病院数が高くなっ

ているため、全体とし

て長野県全域よりも高

くなっています。

カ 二次医療圏別医療従事者数

松本二次医療圏の対人口10万人当たり医療従事者数をみると、全職種におい

て長野県全域よりも高くなっています。これは、松本駅周辺の病院及び信州大学

附属病院の影響が考えられます。

出典:厚生労働省「平成 26年医療施設調査」

出典:厚生労働省「平成 26年病院報告」

一般病院(施設) 精神科病院(施設)

27 22 5 2

6.3 5.1 1.2 0.5

1 1 0 0

3.2 3.2 0.0 0.0

2 2 0 0

3.2 3.2 0.0 0.0

14 14 0 1

6.6 6.6 0.0 0.5

16 13 3 1

7.9 6.4 1.5 0.5

12 11 1 1

5.9 5.4 0.5 0.5

10 7 3 1

5.3 3.7 1.6 0.5

10 10 0 1

5.9 5.9 0.0 0.6

35 32 3 3

6.3 5.8 0.5 0.5

3 3 0 0

3.2 3.2 0.0 0.0

130 115 15 10

6.0 5.3 0.7 0.5

対人口10万人

長野県全域

対人口10万人

上伊那

対人口10万人

長野

対人口10万人

飯伊

対人口10万人

対人口10万人

北信

佐久

対人口10万人

上小

対人口10万人

諏訪

対人口10万人

二次医療圏

松本

木曽

対人口10万人

大北

対人口10万人

病院数

総数(施設) 地域医療支援病院【再掲】

(施設)

1,083.5 24.9 69.8 409.8 202.1 332.4 172.1 203.7 765.3 102.3 3,365.9

対人口10万人(人) 251.7 80.2 111.4 191.7 100.2 162.2 90.4 120.2 138.1 109.0 156.4

170.6 0.0 3.1 14.5 9.2 7.9 3.4 5.0 24.6 1.0 239.3

対人口10万人(人) 39.6 0.0 4.9 6.8 4.6 3.9 1.8 2.9 4.4 1.1 11.1

192.7 10.0 18.0 89.7 67.0 87.1 55.7 67.3 191.6 33.9 813.0

対人口10万人(人) 44.8 32.2 28.7 42.0 33.2 42.5 29.3 39.7 34.6 36.1 37.8

183.9 9.8 9.4 75.6 23.1 57.1 40.9 40.7 118.9 34.0 593.4

対人口10万人(人) 42.7 31.6 15.0 35.4 11.5 27.9 21.5 24.0 21.5 36.2 27.6

3,088.3 146.4 376.3 1,769.8 1,031.4 1,414.5 968.7 1,081.6 3,650.4 583.7 14,111.1

対人口10万人(人) 717.5 471.6 600.6 828.1 511.4 690.4 508.8 638.1 658.6 621.8 655.6

368.5 8.1 27.8 131.5 315.9 156.0 130.8 150.8 497.8 46.7 1,833.9

対人口10万人(人) 85.6 26.1 44.4 61.5 156.6 76.1 68.7 89.0 89.8 49.8 85.2

322.0 11.0 48.0 165.9 174.1 135.6 86.0 139.7 280.6 51.0 1,413.9

対人口10万人(人) 74.8 35.4 76.6 77.6 86.3 66.2 45.2 82.4 50.6 54.3 65.7

206.5 5.0 21.0 89.0 145.4 83.5 72.0 85.6 168.9 32.0 908.9

対人口10万人(人) 48.0 16.1 33.5 41.6 72.1 40.8 37.8 50.5 30.5 34.1 42.2

北信 長野県全域職種

医師(人)

諏訪 上伊那 長野

二次医療圏

松本 木曽 大北 佐久 上小 飯伊

作業療法士(人)

歯科医師(人)

助産師(人)

看護師(人)

准看護師(人)

理学療法士(人)

薬剤師(人)

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6

キ 松本市将来人口推計

本市の将来人口は年々減少しますが、人口に占める高齢者割合は年々増加し、

高齢化率は平成52年には34.6%に達することが予測されます。

ク 松本市将来患者推計

本市の将来人口は年々減少することが予測されていますが、高齢者の増加の影

響により、入院患者数については平成42年まで増加し、外来患者については平

成32年まで増加し、その後減少することが予測されます。

64,070 66,326 66,652 67,349 69,129 72,314

144,191 140,064136,511 131,560

123,827 113,684

32,398 29,98027,469

25,128 23,82422,980

26.6%28.1%

28.9%

30.1%31.9%

34.6%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

平成27年

(24,0659)

平成32年

(236,370)

平成37年

(230,632)

平成42年

(224,037)

平成47年

(216,780)

平成52年

(208,978)

単位:人

松本市の年齢階層別人口の将来推移

老年人口(65歳以上) 生産年齢人口(15~64歳)

年少人口(14歳以下) 高齢化率

5,091.7 5,305.0

5,392.4 5,453.9

5,572.0 5,800.1

4,541.5 4,458.5 4,418.9 4,319.1 4,068.5 3,693.9

1,260.5 1,157.5 1,059.1 975.0 927.8 894.2

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

平成27年

(10,893.8)

平成32年

(10,921.1)

平成37年

(10,870.4)

平成42年

(10,748.1)

平成47年

(10,568.3)

平成52年

(10,388.2)

人/日

松本市年齢階層別外来患者の将来推計

老年層 生産年齢層 年少層

1,475.7 1,571.2

1,657.0 1,681.1

1,691.3 1,733.9

611.9 603.8

602.6 593.7 559.6 504.4

77.6 70.3

64.3 60.0 57.5 55.3

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

平成27年

(2,165.2)

平成32年

(2,245.3)

平成37年

(2,323.9)

平成42年

(2,334.7)

平成47年

(2,308.4)

平成52年

(2,293.6)

人/日

松本市年齢階層別入院患者の将来推計

老年層 生産年齢層 年少層

出典 1:国立社会保障人口問題研究所「日本の市町村別将来推計人口(平成 25年 3月推計)」

出典 2:厚生労働省「平成 26年患者調査」

出典:国立社会保障人口問題研究所「日本の市町村別将来推計人口(平成 25年 3月推計)」

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7

ケ 疾患大分類別将来患者マトリックス

(入院)

本市における将来入院患者推計を疾病大分類別にみると、主に「循環器系の疾患」、

「損傷・中毒及びその他の外因の影響」、「新生物」の患者数が増加することが予測

されます。

(外来)

本市における将来外来患者推計を疾病大分類別にみると、主に「循環器系の疾患」、

「筋骨格系の疾患」の患者数が増加することが予測されます。

感染症

新生物

血液免疫

内分泌

精神

神経系 眼

循環器系

呼吸器

消化器

皮膚

筋骨格系

腎尿路生殖器系

妊娠分娩

周産期

先天奇形

他に分類され

ないもの

損傷、中毒

-35%

-30%

-25%

-20%

-15%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500患者数変動率

平成52年(

対平成27年)

外来患者数(人/日)松本市将来外来患者マトリックス(平成52年)

D

A:患者数が多く、将来的にも増加が予測される疾患B:患者数はあまり多くないが、将来的に増加が予測される疾患C:患者数はあまり多くなく、将来的にあまり増加しない、もしくは減少することが予測される疾患

D:患者数は多いが、将来的にあまり増加しない、もしくは減少することが予測される疾患

E:将来的に減少することが予測される疾患

E

A

C

B

出典 1:国立社会保障人口問題研究所「日本の市町村別将来推計人口(平成 25年 3月推計)」

出典 2:厚生労働省「平成 26年患者調査」

感染症

新生物

血液免疫内分泌

精神

神経系

循環器系

呼吸器

消化器皮膚

筋骨格系

腎尿路生殖器系

妊娠分娩

周産期

先天奇形

他に分類され

ないもの損傷、中毒

-30%

-25%

-20%

-15%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

0 100 200 300 400 500

患者数変動率

平成52年(

対平成27年)

入院患者数(人/日)松本市将来入院患者マトリックス(平成52年)

D

A:患者数が多く、将来的にも増加が予測される疾患B:患者数はあまり多くないが、将来的に増加が予測される疾患C:患者数はあまり多くなく、将来的にあまり増加しない、もしくは減少することが予測される疾患

D:患者数は多いが、将来的にあまり増加しない、もしくは減少することが予測される疾患

E:将来的に減少することが予測される疾患

E

A

C

B

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8

コ 長野県二次医療圏別医療需要必要病床数の推計

長野県地域医療構想によると、平成37年の機能区分(高度急性期、急性期、

回復期、慢性期)ごとの推計必要病床数と平成27年の病床機能報告による病床

数は、下記のとおりです。

長野県全域における各機能区分は、回復期が2,894床不足しており、高度

急性期が637床、急性期が3,387床、慢性期が541床過剰であると予測さ

れています。

松本二次医療圏では、回復期が660床、慢性期が11床不足しており高度急

性期が305床、急性期が599床過剰であると予測されています。

出典:長野県「地域医療構想」

構想区域 医療機能

必要病床数

(平成37年)

A

病床機能報告

(平成27年度)

B

差し引き

A-B構想区域 医療機能

必要病床数

(平成37年)

A

病床機能報告

(平成27年度)

B

差し引き

A-B

高度急性期 503 808 ▲ 305 高度急性期 119 128 ▲ 9

急性期 1,432 2,031 ▲ 599 急性期 432 764 ▲ 332

回復期 1,098 438 660 回復期 381 80 301

慢性期 562 551 11 慢性期 221 210 11

計 3,595 3,828 ▲ 233 計 1,153 1,182 ▲ 29

高度急性期 14 0 14 高度急性期 129 125 4

急性期 58 138 ▲ 80 急性期 555 915 ▲ 360

回復期 40 0 40 回復期 416 209 207

慢性期 26 48 ▲ 22 慢性期 238 266 ▲ 28

計 138 186 ▲ 48 計 1,338 1,515 ▲ 177

高度急性期 36 0 36 高度急性期 543 961 ▲ 418

急性期 197 349 ▲ 152 急性期 1,634 2,148 ▲ 514

回復期 108 65 43 回復期 1,196 573 623

慢性期 62 57 5 慢性期 1,047 1,220 ▲ 173

計 403 471 ▲ 68 計 4,420 4,902 ▲ 482

高度急性期 193 68 125 高度急性期 57 15 42

急性期 733 1,300 ▲ 567 急性期 244 456 ▲ 212

回復期 494 191 303 回復期 182 140 42

慢性期 334 460 ▲ 126 慢性期 58 72 ▲ 14

計 1,754 2,019 ▲ 265 計 541 683 ▲ 142

高度急性期 98 30 68 高度急性期 1,907 2,544 ▲ 637

急性期 547 1,009 ▲ 462 急性期 6,551 9,938 ▲ 3,387

回復期 696 288 408 回復期 5,121 2,227 2,894

慢性期 423 672 ▲ 249 慢性期 3,260 3,801 ▲ 541

計 1,764 1,999 ▲ 235 計 16,839 18,510 ▲ 1,671

高度急性期 215 409 ▲ 194

急性期 719 828 ▲ 109

回復期 510 243 267

慢性期 289 245 44

計 1,733 1,725 8

佐久 北信

上小 合計

諏訪

松本 上伊那

木曽 飯伊

大北 長野

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サ 機能別の患者流入の状況

長野県地域医療構想によると、平成25年度の機能区分(高度急性期、急性期、

回復期、慢性期)ごとの医療圏別患者流出入の状況は、下記のとおりです。

松本二次医療圏では、高度急性期、急性期については、隣接医療圏から患者が

流入しており、回復期、慢性期については、隣接医療圏へ患者が流出しています。

出典:長野県「地域医療構想」

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⑵ 当院の状況

ア 当院概要

名称 松本市立病院

所在地 長野県松本市波田4417番地180

開設者 松本市長  菅谷  昭

病院局長 斉川  久誉

病院長 高木 洋行

昭和23年10月1日  診療所開設

昭和60年4月1日 総合病院開設

敷地面積 16,983㎡

延床面積 15,200㎡  鉄骨鉄筋コンクリート6階建

主な設備 コージェネレーション発電機設備  230キロワット/2基

病床数 215床(一般病床/209床・感染症病床/6床)

松本市立病院訪問看護ステーション

松本市立病院居宅介護支援事業所

託児所

施設基準

一般病棟入院基本料7対1、臨床研修病院入院診療加算、救急医療管理加算、妊産婦緊急搬送入院加算、診療録管理体制加算1、医師事務作業補助体制加算2 、急性期看護補助体制加算 50対1、療養環境加算 、重症者等療養環境特別加算 、医療安全対策加算1 、感染防止対策加算1、患者サポート体制充実加算 、ハイリスク妊娠管理加算 、ハイリスク分娩管理加算 、救急搬送患者地域連携受入加算 、データ提出加算 、小児入院医療管理料4、回復期リハビリテーション病棟入院料1、在宅療養後方支援病院、がん性疼痛緩和指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、小児科外来診療料、夜間休日救急搬送医学管理料、外来リハビリテーション診療料、ニコチン依存症管理料、開放型病院共同指導料、ハイリスク妊産婦共同管理料(Ⅰ)、薬剤管理指導料、医療機器安全管理料1、HPV核酸検出、検体検査管理加算(Ⅰ)、検体検査管理加算(Ⅱ)、センチネルリンパ節生検、CT撮影及びMRI撮影、抗悪性腫瘍剤処方管理加算、外来化学療法加算1、無菌製剤処理料、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)、運動器リハビリテーション料(Ⅰ)、呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ)、透析液水質確保加算2、乳がんセンチネルリンパ節加算2、組織拡張器による再建手術、ペースメーカー移植術及びペースメーカー交換術、早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術、輸血管理料Ⅱ、輸血適正使用加算、麻酔管理料(Ⅰ)、地域連携診療計画料、地域連携診療計画退院時指導料(Ⅰ)及び(Ⅱ)等

開設年月日

併設施設

標榜科目

産科、婦人科、内科、消化器内科、循環器内科、人工透析内科、糖尿病内科、内分泌内科、呼吸器内科、外科、消化器外科、肛門外科、乳腺外科、脳神経外科、形成外科、整形外科、ペインクリニック整形外科、小児科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、リハビリテーション科、放射線科、救急科、麻酔科、歯科口腔外科

各種認定等

保険医療機関、生活保護法指定病院、救急告示病院、労災保険指定医療機関、更生医療指定病院、短期入院協力病院、松本広域圏救急医療連絡協議会認定2次救急医療施設、第2種感染症指定医療機関、新医師臨床研修指定病院、日本外科学会専門医修練施設、マンモグラフィ検診施設、日本透析医学会認定医制度教育関連施設、日本泌尿器学会専門医教育施設、日本静脈経腸栄養学会NST専門療法士教育認定施設、日本消化器内視鏡学会指導施設、日本周産期・新生児医学会周産期母体・胎児専門医暫定研修施設、日本乳癌学会関連施設、日本整形外科学会認定研修施設、麻酔科認定病院、日本救急医学会救急科専門医施設、日本産科婦人科学会専門医制度専攻医指導施設、日本手外科学会手外科専門医制度研修施設

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イ 経営状況

当院の主な経営数値の推移は、下記のとおりです。

項目 平成 25年度 平成 26年度 平成 27年度

年間入院延患者数(人) 55,426 51,442 55,229

平均在院日数(日) 13.7 13.0 13.5

病床利用率(%) 70.6 65.6 70.2

年間延外来患者数(人) 114,682 114,253 114,754

年間救急搬送患者数(人) 952 972 977

年間手術件数(件) 1,299 1,069 908

年間分娩件数(件) 512 523 513

紹介率(%) 36.2 40.8 39.6

入院単価(円) 40,603 41,891 39,854

外来単価(円) 10,447 11,051 11,263

経常収支比率(%) 100.2 98.7 96.4

医業収支比率(%) 94.7 94.3 92.4

給与費対医業収益比率(%) 55.4 55.9 58.3

材料費対医業収益比率(%) 18.1 17.7 17.5

経費対医業収益比率(%) 26.3 26.7 26.0

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ウ 経営数値比較

当院の100床当たり医業収益・費用(平成25~27年度平均)を200~

299床規模の市町村・組合立病院と比較した結果は下記のとおりです。

(ア) 「100床当たり医業収益比較」

当院の平成25~27年の100床当たり医業収益は200~299床規模

の市町村・組合立病院と比較して低く、特に、100床当たり入院収益が低くな

っています。

48,175

49,306

48,489

0 40,000 80,000 120,000 160,000 200,000

市町村・組合(200-299)全体

市町村・組合(200-299)黒字

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:千円/月・100床

経営形態・規模別の100床当たり外来収益比較

92,362

93,761

85,355

0 40,000 80,000 120,000 160,000 200,000

市町村・組合(200-299)全体

市町村・組合(200-299)黒字

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:千円/月・100床

100床当たり入院収益比較

148,963

173,105

152,403

0 40,000 80,000 120,000 160,000 200,000

市町村・組合(200-299)全体

市町村・組合(200-299)黒字

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:千円/月・100床

100床当たり医業収益比較

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(イ) 「100床当たり医業費用比較」

当院の平成25~27年の100床当たり医業費用は200~299床規

模の黒字市町村・組合立病院と比較して高くなっています。

当院の主な経営数値(平成25~27年度平均)を同規模公立病院と比較した

結果は、下記のとおりです。

(ウ) 「経常収支比率」

当院の平成25~27年の平均経常収支比率は、98.4%と赤字計上とな

っています。

96.8

103.1

97.7

103.3

98.4

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0

公立病院100~199床

(全体)

公立病院100~199床

(黒字病院)

公立病院200~299床

(全体)

公立病院200~299床

(黒字病院)

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:%

公立病院病床規模別経常収支比率比較

出典 1:松本市立病院「決算書」

出典 2:全国公私病院連盟「病院経営実態調査報告」、「病院経営分析調査報告」

172,812

139,761

162,325

0 40,000 80,000 120,000 160,000 200,000

市町村・組合 (200 - 299) 全体

市町村・組合 (200 - 299) 黒字

松本市立病院 ( 平成 25 ~ 27 年度平均 )

単位 : 千円 / 月・ 100 床

経営形態・規模別の 100 床当たり医業費用比較

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(エ) 「医業収支比率」

当院の平成25~27年の平均医業収支比率は、93.8%で、同規模黒字

公立病院と比較して低くなっています。

(オ) 「給与費対医業収益比率」

当院の平成25~27年の医業収益に占める給与費比率の平均は、56.5%

で、同規模黒字公立病院と比較して高くなっています。

85.8

89.8

90.3

97.1

93.8

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0

公立病院100~199床

(全体)

公立病院100~199床

(黒字病院)

公立病院200~299床

(全体)

公立病院200~299床

(黒字病院)

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:%

医業収支比率

58.3

54.1

55.8

52.2

56.5

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

公立病院100~199床

(全体)

公立病院100~199床

(黒字病院)

公立病院200~299床

(全体)

公立病院200~299床

(黒字病院)

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:%

給与費対医業収益比率

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(カ) 「委託費対医業収益比率」

当院の平成25~27年の医業収益に占める委託費比率の平均は、7.0%

となっています。同規模黒字公立病院と比較して低くなっています。

(キ) 「材料費対医業収益比率」

当院の平成25~27年の医業収益に占める材料費比率の平均は、17.7%

で、同規模黒字公立病院と比較して低くなっています。

9.9

9.2

9.5

8.4

7.0

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

公立病院100~199床

(全体)

公立病院100~199床

(黒字病院)

公立病院200~299床

(全体)

公立病院200~299床

(黒字病院)

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:%

委託費対医業収益比率

18.0

18.0

20.0

19.0

17.7

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

公立病院100~199床

(全体)

公立病院100~199床

(黒字病院)

公立病院200~299床

(全体)

公立病院200~299床

(黒字病院)

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:%

材料費対医業収益比率

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(ク) 「一般病床利用率」

当院の平成25~27年の一般病床利用率の平均は、68.8%で、同規模黒

字公立病院と比較して低くなっています。

⑶ まとめ

将来人口推計や長野県地域医療構想によると、松本医療圏は、今後少子高齢化の

進展が顕著となり、それに伴い、循環器系や筋骨格系統の高齢者の疾患が増加する

ことから、回復期機能の病床が不足することを予測しています。

また、経営状況では、当院の医業収益は他同規模公立病院と比較して低く、医業

費用は同規模黒字公立病院に比べ高く、経常収支比率は、100%を下回っています。

最近の医業収益の低下は、医師の不足から患者数が減少したことによるものと考え

られるため、医師確保が大きな課題です。

経常収支の黒字化に向けては、医業収益の確保に合わせて、費用削減の取組みも

必要です。

出典 1:松本市立病院「決算書」

出典 2:総務省「地方公営企業年鑑」

66.9

68.2

69.2

73.5

68.8

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

公立病院100~199床

(全体)

公立病院100~199床

(黒字病院)

公立病院200~299床

(全体)

公立病院200~299床

(黒字病院)

松本市立病院

(平成25~27年度平均)

単位:%

公立病院病床規模別一般病床病床利用率比較

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3 新公立病院改革プランの基本方針

⑴ 地域医療構想を踏まえた役割の明確化

ア 長野県地域医療構想

長野県地域医療構想によると、当院が位置する松本構想区域は、全県を対象と

した医療機関が複数あり、一般診療だけでなく、医療従事者の養成・育成、研究、

高度先進医療の提供等の多くを担っています。そのため、高度急性期機能、急性期

機能については、他構想区域と比較して充実しており、他構想区域から患者が流

入しています。一方で、回復期機能については、一部上小構想区域へ患者が流出し

ています。今後の高齢化の進展による回復期機能病床の需要増加も加味すると、

回復期機能の充実が必要です。

また、高齢化の進展により、2025年度の在宅医療等の必要量は2013年

度と比較して約23%増加することが想定されており、在宅医療への支援体制の

構築が課題となっています。

更に、松本構想区域は、全県のハイリスク分娩の多くが搬送される区域であ

る一方で、分娩を扱う医療機関が減少しており、周産期医療体制の維持も課題と

なっています。

イ 長野県地域医療構想を踏まえた松本市立病院の役割

前述した長野県地域医療構想では、松本構想区域における2025年度の病床

数の必要量等推計値は、下表のとおりとなっています。

区分 2015病床機能報告 2025必要病床数 増減 2025構成比

高度急性期 808床 503床 △305床 14.0%

急性期 2,031床 1,432床 △599床 39.8%

回復期 438床 1,098床 660床 30.6%

慢性期 551床 562床 11床 15.6%

計 3,828床 3,595床 △233床

当院では、従来は病床の全てを急性期病床とする病棟構成としていましたが、

松本構想区域の必要病床等推計値と、当院が位置している松本市西部地域の医療

状況から、急性期病床からの一部転換により、新たに回復期リハビリ病棟と地域

包括ケア病棟を開設し、2025年に向けて病床の構成比を急性期病床60%、

回復期病床40%としました。

地域住民が、医療機関が多い中心市街地まで行かなくても、住み慣れた地域で

安心して医療が受けられる体制を、第6次長野県保健医療計画に基づき政策的に

構築し維持することが、公立病院として今後も当院が果たすべき役割です。

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周産期医療について当院は、一般周産期医療機関の中でも、松本医療圏で緊急

帝王切開術等比較的高度な医療行為を行う事ができる医療機関と位置付けられて

おり、他の病院と連携して、地域の住民が安心して出産できる周産期医療体制を

維持します。

また、院内においては、小児医療と連携して出産から子育てまで切れ目のない

安心、安全な医療を提供していきます。

長野県地域医療構想を見据え再編成した病床機能と、第6次長野県保健医療計

画に基づき構築した住み慣れた地域で安心して医療が受けられる体制を、

2025年以降も持続可能な公立病院とするため、新改革プランに取り組むとと

もに、これらの機能と役割に必要な病院施設を整備する現病院の移転建替を計画

的に推進します。

ウ 松本市立病院における診療機能の取組方針

当院の役割を踏まえ、平成37年(2025年)における病院の具体的な将来像

は現状機能の維持を前提として、以下のとおりとします。

(がん)

・診断については、内視鏡診断、画像診断など国内標準以上の整備とします。

・手術療法、薬物療法については、当院で可能な範囲を担い、専門性の高い分野や

放射線治療に関しては、がん診療連携拠点病院などの高度医療機関との連携を強

化します。

・緩和ケアに対応できる体制を整備します。

(糖尿病)

・糖尿病及び糖尿病による透析移行患者が増加しているため、発症予防、重症化

予防に、多職種による連携等、病院全体で取り組みます。

(へき地医療)

・へき地医療を担う安曇・奈川地区の市営診療所(5施設)の持続可能な医療提供

を支援します。

(救急医療)

・一次、二次救急患者に幅広く対応できるよう、地域に根差した救急体制を目指し

ます。

・輪番ではない日の、時間外外来診療の体制を強化し救急車不応需件数の削減を目

指します。

・高度医療機関との連携を更に充実強化します。

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(周産期医療)

・松本二次医療圏の出産を担う病院の一つとして、継続して医療を提供できる体制

が必要であり、一部門ととらえず、病院全体で支えます。

・外来から出産まで一貫して安全・安心を最優先に、アメニティにも配慮した環

境整備を目指します。

・ハイリスク妊娠、ハイリスク新生児に関しては、信州大学附属病院や県立こども

病院との連携を強化します。

・新生児医療については、院内整備を図ります。

(小児医療)

・入院を要する急性期患者に対応できる体制の強化を一層図ります。

・産科との連携の中で、より安全・安心な新生児医療を目指します。

・学校保健や予防接種活動を通じて、地域の健やかな小児の成長に関わります。

(感染症医療)

・地域の基幹病院として、一般感染症から新型感染症まで幅広く対応し、各種感染

症を想定した外来機能・入院機能を整備します。

・松本二次医療圏における第二種感染症指定医療機関として、施設及び体制の強化

を図ります。

(災害医療)

・本市における災害時黄タグ対応病院及び松本広域圏における災害医療協力協定

病院としての体制強化を図ります。

(総合診療)

・外来診療の入口として、総合診療体制をより一層充実させます。

(高齢者医療)

・地域包括ケアシステムにおける地域連携の中心的な役割を担う病院として施設

及び体制の充実、強化を図ります。

・住み慣れた地域で適切な医療が受けられるよう、多職種多分野が連携する体制を

整備します。

(終末期医療)

・様々な人生の終末期の要望に応えられる環境や体制の整備を検討します。

(健診機能)

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・地域住民の需要に応えられるよう、施設及び体制の強化を図ります。

・市や大学等との連携による健診事業の充実を目指します。

エ 地域包括ケアシステムの構築に向けて果たすべき役割

地域包括ケアシステムにおいて当院は、高度急性期機能を担う病院等の受け皿

としての亜急性期機能と在宅医療を担う診療所及び介護福祉施設のバックアップ

機能を担い、在宅復帰支援に重点的に取り組みます。

亜急性期機能については、大学病院等の高度医療機関及び他急性期医療機関と

の病病連携を強化し、高度急性期及び急性期を脱した回復期患者の受入体制を整

備します。

バックアップ機能については、当院がこれまで在宅療養後方支援病院として実

施してきた、医療機関との連携を強化・拡充するとともに、介護福祉施設等から

の急性増悪患者を積極的に受け入れます。

これらを推進するため、回復期リハビリテーション病床及び地域包括ケア病床

の体制強化に取り組みます。

また、当院に設置されている訪問看護ステーション及び居宅介護支援事業所の

取組みを強化するとともに、高齢化により今後増加が予測されるがん患者への対

応として、緩和ケア医療と終末期医療の充実を図り、在宅療養を支援します。

更に、本市が掲げる「健康寿命延伸都市・松本」の創造に向けて、健診機能

を強化するとともに、予防医療に力を入れ、地域住民の健康増進に寄与します。

オ 一般会計における経費負担の考え方

当院は、中心市街地から離れ人口が少なく高齢化が進む、主に農業振興地域と

中山間地域が広がる松本市西部地域の唯一の病院として、救急医療、へき地の医

療、周産期医療、小児医療など住み慣れた地域で安心して医療が受けられる体制

を、第6次長野県保健医療計画に基づき政策的に構築しており、その他、地域に

必要な医療を提供しています。

一般会計の経費負担にあっては、当院が政策的に提供している医療の不採算分

野を明確にするとともに、現病院の移転建替に伴う企業債及び建設改良費等の増

大を考慮しつつ、病院の財政基盤の安定化を図るため、地方公営企業繰出基準に

基づき経費負担基準の見直し及び適正化について関係部署と協議を進めます。

【総務省による平成28年度地方公営企業繰出金の考え方】

No. 項目 経費負担の考え方

1 病院の建設改良に要

する経費

病院の建設改良費及び企業債元利償還金のうち、その経営に

伴う収入をもって充てることができないと認められるものに

相当する額(建設改良費及び企業債元利償還金の2分の1を

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21

基準とする。)とする。

2 へき地医療の確保に

要する経費

⑴ 地域において中核的役割を果している病院による巡回

診療、へき地診療所等への応援医師又は代診医師の派遣及

び訪問看護に要する経費等のうち、その経営に伴う収入を

もって充てることができないと認められるものに相当す

る額とする。

⑵ 遠隔医療システムの運営に要する経費のうち、その経営

に伴う収入をもって充てることができないと認められるも

のに相当する額とする。

3 不採算地区病院の運

営に要する経費

不採算地区病院(許可病床数 150床未満(感染症病床を除く。)

であって、最寄りの一般病院までの到着距離が 15キロメート

ル以上であるもの又は直近の国勢調査に基づく当該公立病院

の半径5キロメートル以内の人口が3万人未満のもの)の運

営に要する経費のうち、その経営に伴う収入をもって充てる

ことができないと認められるものに相当する額とする。

4 結核医療に要する経

医療法第7条第2項第3号に規定する結核病床の確保に要す

る経費のうち、これに伴う収入をもって充てることができな

いと認められるものに相当する額とする。

5 精神医療に要する経

医療法第7条第2項第1号に規定する精神病床の確保に要す

る経費のうち、これに伴う収入をもって充てることができな

いと認められるものに相当する額とする。

6 感染症医療に要する

経費

医療法第7条第2項第2号に規定する感染症病床の確保に要

する経費のうち、これに伴う収入をもって充てることができ

ないと認められるものに相当する額とする。

7 リハビリテーション

医療に要する経費

リハビリテーション医療の実施に要する経費のうち、これに

伴う収入をもって充てることができないと認められるものに

相当する額とする。

8 周産期医療に要する

経費

周産期医療の用に供する病床の確保に要する経費のうち、こ

れに伴う収入をもって充てることができないと認められるも

のに相当する額とする。

9 小児医療に要する経

小児医療(小児救急医療を除く。)の用に供する病床の確保に

要する経費のうち、これに伴う収入をもって充てることがで

きないと認められるものに相当する額とする。

10 救急医療の確保に要

する経費

⑴ 救急病院等を定める省令又は「救急医療対策の整備事業

について」(昭和 52 年7月6日付け医発第 692 号)に基づ

く救命救急センターもしくは小児救急医療拠点病院事業

もしくは小児救急医療支援事業を実施する病院における

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医師等の待機及び空床の確保等救急医療の確保に必要な

経費に相当する額とする。

⑵ 次に掲げる病院が災害時における救急医療のために行う

施設の整備に要する経費に相当する額とする。

① 災害拠点病院

② 地震防災対策特別措置法に基づく地震防災緊急事業五

箇年計画に定められた耐震化を必要とする病院及び土

砂災害危険箇所に所在する病院

③ 救命救急センター、病院群輪番制病院、小児救急医療拠

点病院、小児救急医療支援事業参加病院、共同利用型病

院等

⑶ 災害拠点病院又は救急告示病院が災害時における救急医

療のために行う診療用具、診療材料、薬品、水及び食料等

の備蓄に要する経費に相当する額とする。

11 高度医療に要する経

高度な医療の実施に要する経費のうち、これに伴う収入を

もって充てることができないと認められるものに相当する額

とする。

12

公立病院附属看護師

養成所の運営に要す

る経費

公立病院附属看護師養成所において看護師を養成するために

必要な経費のうち、その運営に伴う収入をもって充てること

ができないと認められるものに相当する額とする。

13 院内保育所の運営に

要する経費

病院内保育所の運営に要する経費のうち、その運営に伴う収

入をもって充てることができないと認められるものに相当す

る額とする。

14 公立病院附属診療所

の運営に要する経費

公立病院附属診療所の運営に要する経費のうち、その経営に

伴う収入をもって充てることができないと認められるものに

相当する額とする。

15 保健衛生行政事務に

要する経費

集団検診、医療相談等に要する経費のうち、これに伴う収入

をもって充てることができないと認められるものに相当する

額とする。

16 経営基盤強化対策に

要する経費

⑴ 医師及び看護師等の研究研修に要する経費

医師及び看護師等の研究研修に要する経費の2分の1と

する。

⑵ 保健・医療・福祉の共同研修等に要する経費

病院が中心となって行う保健・福祉等一般行政部門との

共同研修・共同研究に要する経費の2分の1とする。

⑶ 病院事業会計に係る共済追加費用の負担に要する経費

当該年度の4月1日現在の職員数が地方公務員等共済組

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合法の長期給付等に関する施行法の施行の日における職員

数に比して著しく増加している病院事業会計に係る共済追

加費用の負担額の一部とする。

⑷ 公立病院改革の推進に要する経費

ア 新改革プランの策定並びに実施状況の点検、評価及び

公表に要する経費とする。

イ 新改革プランに基づく公立病院の再編等に伴い必要と

なる施設の除却等に要する経費及び施設の除却等に係る

企業債元利償還金のうち、その経営に伴う収入をもって

充てることができないと認められるものに相当する額と

する。

ウ 新改革プランに基づく再編・ネットワーク化に伴い、

新たな経営主体の設立又は既存の一部事務組合若しくは

広域連合への加入に伴い経営基盤を強化し、健全な経営

を確保するために要する額のうち、その経営に伴う収入

をもって充てることができないと認められるものに対す

る出資に要する経費とする。

エ 新改革プランに基づく公立病院の再編等に伴い、新た

に必要となる建設改良費及び企業債元利償還金のうち、

その経営に伴う収入をもって充てることができないと認

められるものに相当する額(建設改良費及び企業債元利

償還金の3分の2を基準)とする。

オ 前改革プランに基づく公立病院の再編等に伴い、新た

に必要となる建設改良費のうち、その経営に伴う収入を

もって充てることができないと認められる額に対する出

資に要する経費とする。

⑸ 医師確保対策に要する経費

ア 医師の勤務環境の改善に要する経費

公立病院に勤務する医師の勤務環境の改善に要する経

費のうち、経営に伴う収入をもって充てることが客観的

に困難であると認められるものに相当する額とする。

イ 医師の派遣を受けることに要する経費

公立病院において医師の派遣に要する経費とする。

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カ 医療機能等指標に係る数値目標

数値目標項目 平成 28年度

(計画前年度)

平成 29年度

(計画初年度)

平成 32年度

(計画最終年度)

1日平均入院患者数(人) 148 155 158

1日平均外来患者数(人) 455 468 482

紹介率(%) 39.7 40.0 45.0

逆紹介率(%) 17.4 20.0 25.0

救急患者受入件数(件) 900 950 990

手術件数(件) 770 900 1,000

分娩件数 510 520 520

時間外受入れ患者数(件) 6,472 6,550 6,900

健診件数(件) 2,160 2,220 2,430

訪問看護件数(件) 4,060 4,140 4,400

訪問リハビリ件数(件) 1,220 1,240 1,320

住民健康福祉教育講座開催

数(回) 15 21 40

へき地診療所医師派遣数

(件) 59 60 60

臨床研修医受入数(人) 6 6 6

外来患者満足度(%) 83.0 84.0 90.0

入院患者満足度(%) 78.0 80.0 85.0

キ 住民の理解のための取組み

当院は、これまで住民健康福祉教育の支援及び住民参加型活動の支援に力を入

れてきました。地域住民のための病院として、引き続きこれらの支援を行います。

住民健康福祉教育の支援については、健康教室の開催などにより、開かれた病院

事業を目指します。住民参加型活動の支援については、患者さん自らが支え合い、

寄り添い合う患者会や患者サロンのスペース確保やボランティア活動専用の部門

及びコーナーを整備し、病院ボランティアを広く公募していきます。

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⑵ 経営の効率化

ア 経営指標に係る数値目標

持続的な健全経営を行うための目標

数値目標項目 平成 28年度

(計画前年度)

平成 29年度

(計画初年度)

平成 32年度

(計画最終年度)

経常収支比率(%) 96.2 96.6 101.7

医業収支比率(%) 91.9 90.8 92.9

給与費比率(%) 60.5 60.5 58.9

一般病床利用率(%) 68.8 72.0 73.5

イ 目標設定の考え方

当院の平成28年度経常収支比率(見込)は、96.2%となっています。健全

経営に向けて計画期間中の黒字化を目指し、各種の数値目標を設定します。

特に、黒字経営の同規模公立病院と比較して医業収益に占める給与費比率が高

いため、収益と人件費のバランスを考慮しつつ、人員の効率的な配置や委託化の

促進等により、適正配置を目指します。

また、病床利用率についても、黒字経営の同規模公立病院と比較して病床利用

率が低いため、病床利用率の向上を目指します。病床利用率の向上のためには、

入院患者の確保が必要であり、それに向けた取組みを実施します。

ウ 目標達成に向けた具体的な取組み

【医師等の確保対策】

高齢化に対応した急性期医療やへき地医療、救急医療、小児・周産期医療、感染

症医療、災害医療などの政策的医療を提供するためには、医師や看護師確保が重

要となります。このため、これまでと同様に関係大学等との関係を維持するとと

もに、医師や看護師等が当院で働きたいと思える環境づくりや、魅力(ブランド

力)を外部に積極的に発信していくことが必要です。

医師については、当院の強みとする専門領域を伸ばすとともに、研修制度も充

実させ、そうした領域に魅力を感じる医師の獲得を図ります。

看護師については,近隣の大学や看護学校との関係を維持しながら、働きやす

い環境整備を推進します。

(具体的な取組み)

・信州大学医局との関係を基軸としつつ、より安定した医師の確保に向けた連携強

化を目指します。

・信州大学医学部附属病院との医師派遣委託事業の創設等、新たな視点で医師確保

に取り組みます。

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・初期臨床研修医の受入れ体制及び後期臨床研修プログラムの充実による、実践的

な医師育成を目指します。

・近隣大学及び看護学校への訪問活動や、看護学生への就学資金貸与制度等の充実

を図ります。

・院内託児所の充実等による、女性医師、看護師等が働きやすい環境を整備します。

・研修・研究環境の整備による医療スタッフのレベル向上を図ります。

【民間的経営手法の導入】

地域に求められる医療を継続して安定的に提供するためには、経営的な課題を

抽出し、その解決に向けた取組みと中長期的な視点での数値目標に基づいた経営

計画を策定する必要があります。

このため、経営マネジメントツールを活用しながら、現実的な目標設定・目標

管理を行う等、民間的経営手法の導入を目指します。

一方で、地域の医療機関等との連携促進や、多くの地域住民に当院を利用して

いただくには、当院の強みや特色等に関する積極的な広報活動が必要です。また、

今後の新病院整備において、新たな診療機能や果たすべき役割の拡充も考えられ

ることから、こうした広報活動を通じて市民に十分に理解していただく必要があ

ります。

このため、広報活動を病院組織としての重要な取組みとして位置付け、効果的

な情報発信を行っていきます。

(具体的な取組み)

・病院事業の経営改革に強い意識を持ち、経営感覚に優れたプロパー職員の登用を

進めるとともに、(仮称)経営戦略室を設置し、DPC、診療科別、疾患別の詳

細な各種データを経営分析に応用し、収益性の向上と適正なコスト配分に取り組

みます。

・KPIやクリニカルインディケータの設定、SWOT分析、BSC等の経営マ

ネジメントツールの活用を検討します。

・病院の基本理念・基本方針を明確にし、全職員が共有化するとともに、達成に

向け一丸となった協力体制を構築します。

・病院情報の院内共有化を通じた、職員の経営に対する意識改革を図り、職員の

経営参画意識の醸成に努めます。

・病院経営アドバイザー契約により、専門家の助言を得ます。

・市民への広報活動の強化・充実を行います。

【経費削減・抑制対策】

当院の給与費対医業収益比率は、同規模黒字病院と比較して高い状態です。こ

のため、業務効率化と人員の適正配置を目的に、給与費と委託費のバランスを考

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慮しつつ、業務委託化範囲の検討を行います。

材料費対医業収益比率は、同規模黒字病院と比較して低くなっています。今後

も、診療材料購入金額の精査等、材料費比率の抑制に努めます。

また、医療機器調達や更新についても、病院にとって大きな投資であるので、

今後の建替を念頭に置きつつ、採算性や優先度を考慮しながら計画的に整備しま

す。

移転建替に向けては、外部有識者による松本市立病院建設検討委員会を設置し、

規模(病床数)、機能、役割、資金計画等について提言を求め、移転建替に反映し

ます。

(具体的な取組み)

・医療環境の変化や患者動向に対応した業務量を見定めるとともに、業務内容の見

直しや効率化を進め、収益性や移転建替等を見据えた人員計画を策定します。

・ジェネリック医薬品への切替え促進、ベンチマークを活用した診療材料の見直し

を行い、外来診療における院外処方の促進を目指します。

・省エネルギー対策によるライフサイクルコストの低減を目指します。

・費用対効果の精査や優先順位検討に基づく医療機器整備を行います。

・全職員を対象とした経費節減の職員提案の募集や啓発ポスターの作成などを行う

ほか、定期的に病院の経営状況を示すなど、日ごろから職員個々の経費節減意識

を高めます。

・医材物品管理委員会及び機種選定委員会にて、医療材料・消耗品、医療備品の購

入がより適正に行われるよう努めます。

・移転建替では、近年の民間病院、公的病院の建設状況の分析を行い、検討委員会

の提言を踏まえ、建築単価、整備面積の精査等により整備費の抑制に取り組みま

す。

【収入増加・確保対策】

公立病院改革ガイドラインにおいては、一般病床及び療養病床の病床利用率が

概ね過去3年間連続して70%未満の病院については,抜本的な見直しの検討が

必要とされています。

当院においても、平成25~27年度の実績は、68~70%程度となってい

ることから、病床利用率の向上は急務であると言えます。

病床利用率の向上については、当院が急性期医療と回復期医療を担う病院であ

ることを十分に活かすことが重要となります。急性期医療については、地域的な

高齢化により増加が予測される疾患への対応を考慮した診療体制を充実させると

ともに、中等症以上の救急搬送の受入れ強化など新規の入院患者をより多く受け

入れることが入院収益の増加につながります。また、これらの体制強化により、

手術適応患者の増加も目指します。

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回復期医療については、前述の整形外科体制の充実による整形外科患者の増加

への対応として、回復期リハビリテーション病床及び地域包括ケア病床の活用を

促進します。また、高度急性期機能を担う病院及び他病院との連携強化による回

復期リハビリテーション病床及び地域包括ケア病床患者の確保を目指します。

(具体的な取組み)

・高齢化により、患者数の増加が予想される整形外科及び泌尿器科医師を増員し、

患者数の増加を目指すとともに、手術適応患者の受入れを積極的に行います。

・地域の医療機関との連携を更に強化し、紹介率・逆紹介率の向上を目指します。

・救急体制を充実し、救急車不応需件数の減少を目指します。

・診療報酬に係る各種情報の収集や院内共有化を図るとともに、職員研修の充実に

より複雑な請求事務も精度を高めるなど、請求漏れ防止や査定減対策、未収金対

策を強化し、診療報酬の確保に努めます。

・医師等の負担軽減を目的とし、多職種連携の推進、ITの活用等の方策を費用対

効果等を判断しながら順次進めます。

【事業規模・事業形態の見直し】

当院は、移転建替を計画し、地域に求められる病院となるよう、地域医療構想を

踏まえた適正な診療機能・病床規模を検討します。

また、今後高齢化が大きく進展する当院地域を考慮し、本市が掲げる「健康寿

命延伸都市・松本」の創造に向けて、予防医療への取組みを行っていきます。更に、

健診機能を充実し、地域住民の健診受診率の増加に寄与します。

(具体的な取組み)

・地域の将来的な医療需要を考慮し、病院の移転建替に向けて適正な病床規模を検

討します。

・松本ヘルスラボとの連携等、本市が掲げる「健康寿命延伸都市・松本」の創造に

寄与します。

・健診機能を充実し、健診件数の増加を目指します。

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エ 収支計画

収益的収支 単位:百万円、%

資本的収支

※平成30年度以降の他会計負担金については、今後関係部署との協議を必要とします。

   年 度

区 分

1. a 3,965 3,938 4,026 3,899 4,151 4,179 4,235 4,259

(1) 3,448 3,418 3,494 3,334 3,571 3,599 3,635 3,657

(2) 517 520 532 565 580 580 600 602

54 56 63 69 78 78 78 78

2. 347 355 323 309 314 449 462 464

(1) 284 272 248 231 229 362 370 368

(2) 12 7 9 10 10 10 10 10

(3) 0 19 24 26 29 31 35 39

(4) 51 57 42 42 46 46 47 47

(A) 4,312 4,293 4,349 4,208 4,465 4,628 4,697 4,723

1. b 4,186 4,177 4,357 4,241 4,571 4,580 4,587 4,583

(1) c 2,196 2,203 2,347 2,316 2,464 2,464 2,464 2,464

(2) 719 695 703 680 750 750 757 764

(3) 1,067 1,075 1,071 1,027 1,129 1,129 1,134 1,140

(4) 202 203 229 210 227 236 231 214

(5) 2 1 7 8 1 1 1 1

2. 116 173 153 134 53 50 61 59

(1) 52 48 45 43 41 38 49 46

(2) 64 125 108 91 12 12 12 13

(B) 4,302 4,350 4,510 4,375 4,624 4,630 4,648 4,642

経  常  損  益  (A)-(B) (C) 10 ▲ 57 ▲ 161 ▲ 167 ▲ 159 ▲ 2 49 81

1. (D) 0 0 0 0 0 0 0 0

2. (E) 3 476 0 2 1 1 1 1

特 別 損 益 (D)-(E) (F) ▲ 3 ▲ 476 0 ▲ 2 ▲ 1 ▲ 1 ▲ 1 ▲ 1

7 ▲ 533 ▲ 161 ▲ 169 ▲ 160 ▲ 3 48 80

(A)

(B)

c

a

25年度(実績) 26年度(実績) 27年度(実績) 28年度(見込) 29年度 30年度 31年度 32年度

経 常 収 益

医 業 費 用

職 員 給 与 費

材 料 費

経 費

減 価 償 却 費

そ の 他

医 業 外 費 用

支 払 利 息

医 業 収 益

料 金 収 入

そ の 他

う ち 他 会 計 負 担 金

医 業 外 収 益

他 会 計 負 担 金 ・ 補 助 金

国 ( 県 ) 補 助 金

長 期 前 受 金 戻 入

そ の 他

そ の 他

経 常 費 用

特 別 利 益

特 別 損 失

純 損 益 (C)+(F)

91.9 90.8 91.2 92.3

101.7経 常 収 支 比 率 ×100 100.2 98.7 96.4 96.2 96.6 100.0 101.1

医 業 収 支 比 率 ×100 94.7 94.3 92.4

72.0 72.5 73.0

92.9

職 員 給 与 費 対 医 業 収 益 比 率 ×100 55.4 55.9 58.3 59.4 59.4 59.0 58.2 57.9

病 床 利 用 率 70.6 65.6 70.2 68.8 73.5

   年 度

区 分

1. 50 370 140 140 136 1,009 167 3,044

2. 0 0 0 0 0 0 0 0

3. 80 80 80 80 80 178 202 186

4. 0 0 0 0 0 0 0 0

5. 2 3 0 3 3 3 0 3

6. 0 14 0 0 0 0 0 0

7. 0 0 0 0 0 0 0 0

(A) 132 467 220 223 219 1,190 369 3,233

1. 55 360 146 156 142 1,014 172 3,049

2. 337 293 232 232 294 314 349 315

3. 0 0 0 0 0 0 0 0

4. 2 2 2 2 4 4 4 4

(B) 394 655 380 390 440 1,332 525 3,368

差 引 不 足 額 (B)-(A) (C) 262 188 160 167 221 142 156 135

31年度 32年度

収      入

企 業 債

他 会 計 出 資 金

他 会 計 負 担 金

他 会 計 借 入 金

他 会 計 補 助 金

国 ( 県 ) 補 助 金

そ の 他

25年度(実績) 26年度(実績) 27年度(実績) 28年度(見込) 29年度 30年度

収 入 計

支  出

建 設 改 良 費

企 業 債 償 還 金

他 会 計 長 期 借 入 金 返 還 金

そ の 他

支 出 計

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30

⑶ 再編・ネットワーク化

【会田病院の診療所化に伴う再編・ネットワーク化】

本市の公立病院は、松本市立病院(当院)と四賀地区の松本市国民健康保険会田

病院(以下「会田病院」という。)の2病院があり、合計病床数は246床(松本

市立病院215床、会田病院31床)です。

会田病院は、平成17年4月の旧四賀村との合併に伴い国保直診の会田病院とし

て本市に引き継がれ、当院は、平成22年3月の旧波田町との合併に伴い地方公営

企業法全部適用の旧波田町立波田総合病院として引き継がれました。両院の経営形

態が違うため、旧波田総合病院を引き継ぐと同時に、会田病院は地方公営企業法全

部適用の病院としましたが、経営の統合をせず、それぞれ独立した病院として経営

し現在に至っています。旧波田総合病院は、合併時に松本市波田総合病院と名称を

変更し、平成24年4月松本市立病院に再度名称変更をしています。

《会田病院の概要》

名称 松本市国民健康保険会田病院

所在地 松本市会田 1535-1

開設者 松本市長 菅谷 昭

病院長 望月 太郎

開設年月日 昭和25年7月 会田村、中川村の2カ村組合立病院

(内科、外科、産婦人科 病床20床)

昭和30年4月 四賀村立会田病院

(内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科

病床20床)

平成17年4月 松本市国民健康保険会田病院

(内科、外科、小児科、放射線科、リハビリテー

ション科 一般病床11床、介護療養病床20床)

敷地面積 3,402㎡

建物構造規模 RC造2階 1,636㎡

建設年度 昭和60年度

病床数 31床(一般病床11床、介護療養病床20床)

診療科目 内科、外科、小児科、放射線科、リハビリテーション科

会田病院は、病床利用率が低水準になり経営も悪化傾向にあるため、2025年

に向けて将来の四賀地区の人口動態や医療需要などを分析した上で、今後の運営方

針として「松本市国民健康保険会田病院基本方針」(以下「会田病院基本方針」と

いう。)を平成27年3月に策定しました。

基本方針の柱として、「持続可能な医療提供体制を将来にわたって安定的に確保

Page 33: 松本市立病院新公立病院改革プラン (平成 29 年 …hp-hata.com/etc/...掲げ、平成25年の「健康寿命延伸都市宣言」によって、松本市のまちづくりの普

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するため、病院から診療所に規模を縮小し、在宅療養支援診療所への転換を目指

す」こととしています。具体的には、平成28年度末には一般病床11床を廃止

し、平成29年度末には介護療養病床20床を廃止して、平成30年度から無床診

療所に移行する予定です。

会田病院基本方針では、診療所に移行後も本市が運営することとしていることか

ら、会田病院は、診療所移行に伴い当院との再編・ネットワーク化により四賀地区

での医療提供体制の構築と経営の合理化を推進し、当院は移転建替により必要な施

設整備を行います。

(具体的な取組み)

・会田病院の診療所移行に伴い廃止する31床(一般病床11床、介護療養病床

20床)は、長野県地域医療構想との整合を図り当院へ統合せず、本市の公立病

院の病床数246床(松本市立病院215床、会田病院31床)を215床程度

に見直します。

・医薬品や診療材料購入の一元化や職員配置の見直しなど、経営の合理化を図りま

す。

・診療所の医師、看護師等を当院の職員として配置し、地域の医療提供体制を構築

します。

・医療提供体制の構築については、政策として行うことに伴う不採算分野を明確に

し、一般会計における経費負担の考え方を整理します。

・移転建替により電子カルテなど医療ICT共通基盤を整備し、医療情報、医療提

供の連携体制を構築します。

⑷ 経営形態の見直し

当院は、平成23年9月策定の基本方針に基づき地方公営企業法全部適用の経営

形態を継続することとしています。今後、より一層の経営の安定化を図るため、平

成29年度から経営部門の体制強化を進めるとともに、長期的な視点で当院にとっ

て最も適切な経営形態を検討していきます。

また、複数の医療機関等の一体的経営を可能とする仕組みとして、新たに制度化

される地域医療連携推進法人について、将来的な可能性を研究します。

4 点検・評価・公表等

松本市立病院新公立病院改革プランの点検・評価・公表については、「松本市立病院

新公立病院改革プラン評価委員会(仮称)」を設置し、毎年、事業の決算数値が確定し

た際に点検と評価を行うとともに、プランの見直し等を検討します。また、その結果

はホームページ等により公表します。