わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題...

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35 わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題 Masato KIMURA 福祉心理学科(Department of Social Work and Psychology提供する学内機関として学生相談機関を設置す る大学が増加しているが(大島他,2004),来 談率はアメリカに比べると低い状況である(櫻 井・有田,1994)。学生相談機関が大学生に対 して効果的な援助サービスを提供するためには, 大学生がそのような援助サービスをどのように 捉えているかを把握することで,より効果的な サービスの提供につながると考えられる。 〔問題と目的〕 近年,様々な心の問題を抱えている大学生が 増えており,その結果,不登校や不本意な休・ 退学をする学生が増えていることが指摘されて いる(文部省高等教育局・大学における学生生 活の充実に関する調査研究会,2000)。問題を 抱えた学生に対して,心理的な援助サービスを An Overview of Studies on Seeking Help from Student Counseling Centers in Japan Masato KIMURA Abstract The purpose of this article was to review Japanese help-seeking research on student counseling services. The studies were reviewed from 1975 to 2005 by the MAGAZINPLUSJapanese National Library’s database. These studies were classified into two categories; a) studies that examine characteristics of user and non-user, b) studies that investigate the variables related help-seeking from college and university student counseling. The results indicate that 1) students prefer natural help to professional help, 2) the image and perception of and needs from student counseling are related to help-seeking. Implications for practice and research of help-seeking from college and university student counseling centers were discussed. Key words: help-seeking, student counseling services, college students, university students, literature review

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Page 1: わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題 37 1)来談率 Table 1は大学の学生数の規模別に見た学生

35

わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

木 村 真 人*

*Masato KIMURA 福祉心理学科(Department of Social Work and Psychology)

提供する学内機関として学生相談機関を設置す

る大学が増加しているが(大島他,2004),来

談率はアメリカに比べると低い状況である(櫻

井・有田,1994)。学生相談機関が大学生に対

して効果的な援助サービスを提供するためには,

大学生がそのような援助サービスをどのように

捉えているかを把握することで,より効果的な

サービスの提供につながると考えられる。

〔問題と目的〕

近年,様々な心の問題を抱えている大学生が

増えており,その結果,不登校や不本意な休・

退学をする学生が増えていることが指摘されて

いる(文部省高等教育局・大学における学生生

活の充実に関する調査研究会,2000)。問題を

抱えた学生に対して,心理的な援助サービスを

An Overview of Studies on Seeking Help from Student Counseling Centers in Japan

Masato KIMURA

AbstractThe purpose of this article was to review Japanese help-seeking research on student

counseling services. The studies were reviewed from 1975 to 2005 by the“MAGAZINPLUS”

Japanese National Library’s database. These studies were classified into two categories; a)

studies that examine characteristics of user and non-user, b) studies that investigate the

variables related help-seeking from college and university student counseling. The results

indicate that 1) students prefer natural help to professional help, 2) the image and perception

of and needs from student counseling are related to help-seeking. Implications for practice

and research of help-seeking from college and university student counseling centers were

discussed.

Key words: help-seeking, student counseling services, college students, university students,

literature review

Page 2: わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題 37 1)来談率 Table 1は大学の学生数の規模別に見た学生

東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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このような援助やサービスを求めることに関

する研究は援助要請(help-seeking)という概

念で進められている。つまり,援助サービスを

利用する人がその援助やサービスをどのように

捉え利用するのか,そのメカニズムを明らかに

する研究である。学生にとって利用しやすい学

生援助サービスを提供し,学生相談活動をさら

に充実させていくために,援助要請の観点から

学生相談活動を捉えることは意義があると考え

られる。

しかし,わが国の援助要請に関連する研究は,

諸外国に比べると圧倒的に少ない(野村・五十

嵐,2004)。学生相談領域に絞れば,さらに少

ないといえる。今後,学生相談領域における援

助要請研究の発展と実践への応用のためには,

今までの先行研究の知見を整理し,今後の研究

の方向性を明示することが必要であるといえる。

そこで本論では,わが国の学生相談領域にお

ける援助要請に関連する研究を概観し,その動

向と展望を明らかにすることを目的に文献研究

を実施する。そして,わが国の学生相談領域に

おける援助要請研究の知見から,実際の学生相

談活動への提言と,今後の研究の方向性を明ら

かにしたい。

なお,本論ではhelp-seekingに関する研究に

ついて広くその動向を把握するため,訳語の差

異にはこだわらず,文献研究の対象とする。ま

た,本研究での学生相談領域とは,各大学にお

ける学生相談機関による活動に関する領域を示

す。

〔文献研究の方法〕

文献検索は,日外アソシエーツ社のデータベ

ースMAGAZINEPULUSを使用した。援助要

請に関する研究を検索するにあたり,“help-

seeking”に関連する用語としては,わが国で

は“援助要請”,“被援助志向性”,“来談行動”

が主に用いられているので,以上の用語をキー

ワードとし文献検索を実施した。雑誌記事索引

オプションを選び1975年から2005年までの文献

で“help-seeking”,“援助要請”,“被援助志向

性”,“来談行動”をキーワードで検索したとこ

ろ,54件を抽出した。その中から学生相談領域

における援助要請に関する論文8件,および学

生相談に関連すると判断された専門的な心理的

援助に対する大学生の援助要請に関する論文10

件を抽出した。また“学生相談”をキーワード

として検索し,必ずしも「被援助志向性」,「援

助要請」の用語を用いていないが,援助要請に

関連すると判断された17件の論文を抽出した。

以上のようなプロセスを経て,最終的に35件の

論文を抽出し,これらの論文を対象に文献研究

を実施した。

〔文献研究の結果〕

分析の結果,わが国の学生相談領域における

援助要請に関する研究には,大きく分類して①

学生相談利用の実態を調査した研究,②学生相

談に対する援助要請に関連する変数を検討した

研究があった。そこで,上記の2つの分類に基

づいて研究を整理する。さらに,学生相談領域

に関連する研究として,大学生の専門的な心理

的援助に対する援助要請の研究成果を紹介する。

1.学生相談利用の実態を調査した研究

学生相談の利用に関する実態調査は各大学の

相談機関で個別に実施・報告されている。また,

日本学生相談学会は,1997年度より学生相談機

関に関する調査を実施している。そこで,ここ

ではその中でも援助要請に関連する結果につい

て紹介する。

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わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

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1)来談率

Table 1は大学の学生数の規模別に見た学生

来談率である。2003年度の大学全体の来談率は

3.8%であり,増加傾向にある。また,規模別

では,大学の学生数が多い,つまり規模が大き

い大学ほど来談率が低いことがわかる。

2)相談内容の分類

日本学生相談学会が実施している全国調査に

よれば,来談学生の相談内容別に,勉学・進路,

心理・適応,その他に分類している。その結果

をまとめたものがTable 2であり,心理・適応

に関する相談が半数を占めている。

3)他の援助者に対する援助要請との比較

木村・水野(2004)は大学生の被援助志向性

の特徴を明らかにすることを目的に,友達・家

族・学生相談に対する被援助志向性を比較して

いる。質問紙調査を実施した結果,「対人・社

会面」,「心理・健康面」,「修学・進路面」の全

ての問題領域において,友達・家族に対する被

援助志向性のほうが,学生相談に対する被援助

志向性よりも高かったと報告している。

早川他(1994)はA大学の大学生771名を対

象に「不安・悩み」に関する調査を実施し,困

っていることに対し実際に相談している相手で

は「友人」が51.2%と最も多く,ついで「母親」

が28.5%,「専門家」は1.6%と最も少なかった

と報告している。また相談したい相手でも「友

人」が33.9%と最も多く,「専門家」は10.9%と

「友人」,「先輩」についで3番目に高かった。

大学生は,専門的な相談機関である学生相談

に比べて,友人や家族などの身近な人物への援

助要請が高いといえる。

2.学生相談に対する援助要請に関連する変数

を検討した研究

次に,学生相談に対する援助要請に関連する

変数を検討した研究を紹介する。水野・石隈

(1999)は海外の援助要請に関する研究を展望

し,援助要請に関連する要因として1)デモグ

ラフィック要因,2)ネットワーク変数,3)

パーソナリティ変数,4)個人の問題の深刻さ,

症状,が指摘されていると報告している。わが

国の学生相談に対する援助要請に関連する変数

として多く検討されているものとしては,主に

1)イメージに関する変数,2)ニーズに関す

る変数,3)認知・意識に関する変数,に分類

された。そこで,以上の3つの変数に関する研

究成果を紹介し,さらにその他の変数を取り上

げた研究についても紹介する。

1)イメージとの関連

学生相談に対するイメージを検討した研究で

は,その研究の背景として,学生相談への援助

要請の低さおよび,学生の利用しづらさという

現状から,学生相談へのイメージを明らかにし,

そのイメージを改善していくという目的が見ら

れる。Table 3はイメージを取り上げた研究の

学生数(人) 1997年 2000年 2003年

10001~ 1.9 2.0 2.4

5001~10000 2.2 2.6 2.5

1001~5000 2.8 2.8 3.2

~1000 4.4 4.0 8.1

全体平均 2.7 2.8 3.8

注)日本学生相談学会特別委員会(1998;2001),大島他

(2004)をもとに作成

Table 1 大学の規模別に見た学生来談率

相談内容 2000年 2003年

来談学生実数の全体に対する割合(%) 31.8 30.2

来談学生延べ数の全体に対する割合(%) 21.9 18.3

来談学生実数の全体に対する割合(%) 47.2 50.5

来談学生延べ数の全体に対する割合(%) 65.1 67.2

来談学生実数の全体に対する割合(%) 21.0 19.3

来談学生延べ数の全体に対する割合(%) 13.1 14.5

Table 2 相談内容別にみた来談学生実数および延べ数の全体に対する割合

心理・適応

その他

注)日本学生相談学会特別委員会(2001),大島他(2004)をもとに作成

勉学・進路

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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No. 研究者 対象者 イメージに関する

変数 援助要請に関する

変数 その他の主な変数 主な結果

1 森田 (1990)

大学新入生 1957名のうち該 当項目に記述が あった1035名

「学生相談室のイメー ジ」および「相談室」 への要望を自由記述

入学後1年半までの実 際の来談

これまでの生活につい て、大学への志望から 入学まで、大学生活に ついて、現在の心境

1.イメージは「依存・信頼」、「親近感」、「受容 への期待」、「肯定的評価」、「両価的感情」、「違 和感」、「非関与の態度」、「不信・疑問」、「要望」、 「イメージなし」の10のカテゴリーに分類。 2.日常の対人関係のあり方が学生相談へのイメー ジと関連。 3.肯定的・期待的なイメージ(「依存・信頼」、 「親近感」、「要望」)が実際の来談と結びつき、否 定的・両価的イメージ(「両価的感情」、「非関与の 態度」、「不信・疑問」)は少なくとも入学後1年半 の時点では来談と結びついていない。態度を保留す る消極的イメージ(「イメージなし」、「無記入」) の学生の中には、継続的な面接を導入するに至った 例が比較的目立った。

2 真覚・中村 (1993)

私立大学1年生 189名 国立大学1年生 291名

1.相談機関について のイメージを自由記述 2.相談機関を利用す る人についてのイメー ジを自由記述

40項目の悩み・不安に ついて、相談機関への 相談のしやすさ

40項目の悩み・不安に ついて、父親・母親・ 同性の友人・異性の友 人・大学教官への相談 のしやすさ

1.相談機関についてのイメージは、大きく①親し みにくい、②不信感、③信頼感の3つのカテゴリー に分類された。 2.相談機関を利用する人のイメージは、大きく① ひどく悩んだ人、②友人がいない人、③弱い人、④ 肯定的なイメージの4つのカテゴリーに分類された。 3.悩みの内容にかかわらず同性の友人が最も相談 しやすい相手であり、最も相談しにくい相手は大学 の教官、相談機関であった。

3 荻原・吉 川・山田 (1995)

大学生335名 「学生相談室」という 名称から連想するイメ ージ(自由記述)

問題が生じた場合に相 談したい人や機関

学生相談室に関する認 知度、充実を希望する 相談領域、参加してみ たいグループ活動やイ ベント企画、「学生相 談室」から連想する 色、「学生相談室」の 新たな名称、新装学生 相談室の見学希望

1.相談室という名称から連想するイメージとして 「相談の内容に関するもの」、「相談室の機能に関 するもの」、「相談を受ける人に関するもの」、「相 談室の雰囲気に関するもの」、「マイナスのイメー ジ」、「プラスのイメージ」に分類され、内容と機 能に関するもので全体の半数を占め、相談室に対す る認識が正しく受け止められていること、またプラ スイメージに比べるとマイナスイメージが強いと指 摘。

4 櫻井・有田 (1994)

大学生133名 SD法22項目、第1因 子「受容性」、第2因 子「内面性」

性差、概念間(学生相 談センター、カウンセ ラー、カウンセリング)

1.第1因子の「受容性」では、男女で大きな差はな く、全体的に3つの概念ともpositeveなイメージ。 2.第2因子の「内面性」は男女とも全体的に地味、 真面目、落ち着いた、深刻なといった暗いイメー ジ。 3.学生相談センターから連想する言葉で最も頻度 が高かったものが「暗い」であった。

5 西川・鈴木 (1994)

A短期大学741名、B専門学校 607名

“学生相談室”のイメ ージを形容詞対10項 目、5段階評定

学生相談室の利用希 望、適性検査・性格検 査の受検希望

学生生活の満足度 1.学年と学生相談室利用希望を要因とした分散分 析の結果、主効果が認められ、利用希望者の方が、 そうでないものよりイメージがよく、また2年生の 方が1年生よりイメージがnegativeな方に有意に変 化していた。 2.一般に学生は相談室に対して「暖かい」が「暗 い」、「重い」というイメージを強く持ち、さらに 「利用しにくい」、「堅い」と捉えていた。

6 森田 (1997)

新入生1957名、 入学後5年半の 間に来談した37名

森田(1990)の10のイ メージ・カテゴリーよ り、「接近」群、「敬 遠」群、「消極」群、 「保留」群の4群に分 類。

入学後5年半の間の学 生相談室への来談、来 談時期、来談経路、相 談内容、面接機関、面 接の帰結

1.相談室イメージの違いと、その後の来談の有無 の間に有意な関連が認められ、「消極」群で最も来 談率が高く、「敬遠」群で低かった。 2.「接近」群は比較的早い時期に来談し、学業・ 学生生活に関する初期終了事例と対人関係・健康に 関する中・長期事例があった。長期事例では中断し ても再来。 3.「消極」群は学業・学生生活の相談は入学後1 年目に集中し、初期・短期事例が10例中9例だっ た。 4.「保留」群は学業については1年目の終了事例 が多く、対人関係・将来については、短期から長期 終了事例が1~3年目から開始。

Table 3 イメージを扱った主な研究のまとめ

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わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

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主な結果をまとめたものである。

学生相談および学生相談室に対するイメージ

を検討した研究としては,直接イメージについ

て自由記述式で回答を求める方法とSD法を用

いてイメージを測定する方法が用いられている。

自由記述式での方法としては,森田(1990)

がある。大学新入生を対象に「学生相談室のイ

メージ」および「相談室」への要望について自

由記述の回答を求めた結果,学生相談室のイメ

ージは「依存・信頼」,「親近感」,「受容への期

待」,「肯定的評価」,「両価的感情」,「違和感」,

「非関与の態度」,「不信・疑問」,「要望」,「イ

メージなし」の10のカテゴリーに分類されたと

報告している。

真覚・中村(1993)は私立大学1年生189名,

国立大学1年生291名を対象に,「相談機関につ

いてのイメージ」と「相談機関を利用する人に

ついてのイメージ」について自由記述で回答を

求めている。分析の結果,相談機関についての

イメージは,大きく「親しみにくい」,「不信感」,

「信頼感」の3つのカテゴリーに分類された。

また,相談機関を利用する人のイメージは,

「ひどく悩んだ人」,「友人がいない人」,「弱い

人」,「肯定的なイメージ」の4つのカテゴリー

に分類された。

荻原他(1995)は大学生335名を対象に「学

生相談室」という名称から連想するイメージに

ついて自由記述式で回答を求めている。分析の

結果,「相談の内容に関するもの」,「相談室の

機能に関するもの」,「相談を受ける人に関する

もの」,「相談室の雰囲気に関するもの」,「マイ

ナスのイメージ」,「プラスのイメージ」に分類

された。そして,内容と機能に関するもので全

体の半数を占め,相談室に対する認識が正しく

受け止められていること,またプラスイメージ

に比べるとマイナスイメージが強いと指摘して

いる。

一方,SD法を用いた研究としては,櫻井・

有田(1994)が挙げられる。大学生133名を対

象に学生相談センター,カウンセラー,カウン

セリングの3つの概念について,SD法22項目

で回答を求めた。因子分析の結果,イメージは

「受容性」と「内面性」の2因子から構成され

ていた。性差,概念間(学生相談センター,カ

ウンセラー,カウンセリング)でのイメージの

違いを検討した結果,第1因子の「受容性」で

は男女で大きな差はなく,全体的に3つの概念

ともpositiveなイメージ,第2因子の「内面性」

は男女とも全体的に地味,真面目,落ち着いた,

深刻なといった暗いイメージであった。また,

学生相談センターから連想する言葉で最も頻度

が高かったものが「暗い」であったと報告して

いる。

森田(1997)が指摘するように,大学生は学

生相談室を「暖かい」,「安心」といった援助的

な機関に結びつくイメージで認識している一方,

「暗い」,「重い」といったネガティブなイメー

ジで認識しているといえる。多くの研究におい

て,「暗い」,「重い」といったネガティブなイ

メージが学生相談に対する援助要請行動を抑制

している可能性を指摘しているが,以上にあげ

た研究では,そのようなイメージが実際に学生

相談への援助要請とどのように結びついている

のかは検討されていない。

では,学生相談に対するイメージと援助要請

とはどのような関係があるのだろうか。イメー

ジと学生相談に対する援助要請を検討した研究

としては,西河・鈴木(1994)がある。A短期

大学741名,B専門学校607名を対象に「学生相

談室」のイメージを形容詞対10項目で5段階評

定を求め,その他に学生相談室の利用希望,適

性検査・性格検査の受検希望,学生生活の満足

度について質問紙調査を実施した。その結果,

学生は相談室に対して「暖かい」が「暗い」,

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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「重い」というイメージを強く持ち,さらに

「利用しにくい」,「堅い」と捉えていたと報告

している。そして,利用希望者の方が,そうで

ないものよりイメージがよかったと報告してお

り,学生相談に対するイメージが肯定的なほど

学生相談の利用に結びつきやすいことが示唆さ

れる。

森田(1997)はイメージとその後の,実際の

学生相談への来談との関連を検討している。新

入生1957名の入学後5年半の間に来談した37名

について,森田(1990)の10のイメージ・カテ

ゴリーより,「接近」群,「敬遠」群,「消極」

群,「保留」群の4群に分類した。来談時期,

来談経路,相談内容,面接機関,面接の帰結に

ついて,4群で比較した結果,相談室イメージ

の違いと,その後の来談の有無の間に有意な関

連が認められ,「消極」群で最も来談率が高く,

「敬遠」群で低かった。各群の特徴として,「接

近」群は比較的早い時期に来談し,学業・学生

生活に関する初期終了事例と対人関係・健康に

関する中・長期事例があり,長期事例では中断

しても再来した。「消極」群は学業・学生生活

の相談は入学後1年目に集中し,初期・短期事

例が10例中9例だった。「保留」群は学業につ

いては1年目の終了事例が多く,対人関係・将

来については,短期から長期終了事例が1~3

年目から開始した。

森田(1997)の研究からも,「敬遠」群が最

も来談率が低いことから,学生相談に対するイ

メージが援助要請に関連し,そして,学生相談

室に対するネガティブなイメージが援助要請行

動に抑制的に働くと考えられる。

No. 研究者 対象者 ニーズに関する変数 援助要請に関する

変数 その他の主な変数 主な結果

1

平井(2001) 大学生331名 学生相談ニーズ尺度 :相談したいと思う 程度を4件法で評定

悩んだ経験尺度、相 談相手尺度、相談相 手からの援助による 負担の軽減度尺度、 日本版GHQ(12項目 版)、相談室の存在 についての知識

1.悩んだ経験では「就職・進路」の問題が上 位を占め、ついで「情緒的問題」、「修学面の 問題」、「対人関係の問題」の悩み経験者が多 く、これらの上位の問題では学生相談ニーズも 高かった 2.悩んだ経験が多いほど、学生相談ニーズが 高く、他者への相談拒否傾向が高いほど学生相 談ニーズが低い。また、相談室の存在を知って いる群の方が、知らない群よりも学生相談ニー ズが高い。 3.「学生生活上の重要な決断・情報入手が必 要な悩み」や「対人関係上の重篤な悩み」は悩 みの経験率の低さに関わらず、学生相談ニーズ が高かった。

2

金沢・山賀 (1998)

大学新入生 1896名

大学のカウンセリン グ・センターへのニ ーズ:カウンセリン グ・センターで相談 したいことについて 40項目、3件法

性別、学部 1.男女別に因子分析を実施した結果、男性で は3因子構造(情緒と対人困難、開発的・教育 的援助、対人コミュニケーションの問題)、女 性では4因子構造(情緒的問題、開発的・教育 的援助、劣等感による対人関係の問題、家族の 問題)が確認され、男女間で、カウンセリング ニーズに関して構造的な違いがあることがわか った。 2.ニーズの上位は男女差は見られず、男女と もに進路に関する問題へのニーズが高く、つい で不安や対人関係の問題であった。 3.所属する学部によってニーズに違いが認め られた。

3

石原・難波 (2003)

大学教職員31名(教員18人、 職員9人、未回 答4人)

「学生相談室を必要 と感じた場面」、「学 生相談室への希望」 について自由記述

― ―

1.学生相談室を必要と感じた場面では、「心 理的な問題・精神疾患に対する知識や理解が必 要な場合」、特に精神的に不安定な学生に対応 した場合が最も多く、ついて「外部機関との連 携が必要な場合」が多かった。 2.学生相談室への希望では、心理的な問題・ 精神疾患に対する知識や理解、守秘義務を守る ことなどの「専門性」に関すること最もが多く、 ついで「学内連携」が多かった。

Table 4 ニーズを扱った主な研究のまとめ

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わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

41

2)学生相談室へのニーズとの関連

学生相談へのニーズを扱った研究をまとめた

ものがTable 4である。学生相談へのニーズを

明らかにする目的としては,学生のニーズに基

づいたサービスを提供するためである。つまり,

学生相談機関主体のサービス提供ではなく,サ

ービスの受益者である学生の立場に立ったサー

ビスの提供ということである。学生のニーズに

沿ったサービスを提供することで,学生にとっ

て利用しやすいサービスの提供にも繋がると考

えられる。

では,学生は学生相談に対してどのようなニ

ーズを持っているのだろうか。

平井(2001)は大学生331名を対象に質問紙

法を実施した。相談したいと思う程度を尋ねる

「学生相談ニーズ尺度」,「悩んだ経験尺度」,

「相談相手尺度」,「相談相手からの援助による

負担の軽減度尺度」,「日本版GHQ(12項目版)」,

「相談室の存在についての知識」が測定された。

分析の結果,悩んだ経験では「就職・進路」の

問題が上位を占め,ついで「情緒的問題」,「修

学面の問題」,「対人関係の問題」の悩み経験者

が多く,これらの上位の問題では学生相談ニー

ズも高かった。悩んだ経験が多いほど学生相談

ニーズが高く,他者への相談拒否傾向が高いほ

ど学生相談ニーズが低かった。また,相談室の

存在を知っている群の方が知らない群よりも学

生相談ニーズが高かった。さらに「学生生活上

の重要な決断・情報入手が必要な悩み」や「対

人関係上の重篤な悩み」は悩みの経験率の低さ

に関わらず,学生相談ニーズが高かったと報告

している。

金沢・山賀(1998)は大学新入生1896名を対

象に独自に開発した,大学のカウンセリング・

センターへのニーズ調査を実施した。カウンセ

リング・センターで相談したいこととして40項

目について3件法で回答を求めた。男女別に因

子分析を実施した結果,男性では3因子構造

(情緒と対人困難,開発的・教育的援助,対人

コミュニケーションの問題),女性では4因子

構造(情緒的問題,開発的・教育的援助,劣等

感による対人関係の問題,家族の問題)が確認

され,男女間で,カウンセリングニーズに関し

て構造的な違いがあることが明らかとなった。

また,ニーズの上位は男女差は見られず,男女

ともに進路に関する問題へのニーズが高く,つ

いで不安や対人関係の問題であった。そして所

属する学部によってニーズに違いが認められた

と報告している。そしてニーズ調査の結果より,

ニーズの高い進路に関する相談に力を入れるこ

と,そして性別や学部の違いを考慮した学生相

談サービスの必要性を提案している。

石原・難波(2003)は,大学コミュニティ成

員のニーズを汲み取り,大学のコミュニティに

おける学生相談のあり方を検討することを目的

として,教職員を対象にニーズ調査を実施して

いる。自由記述式の質問紙調査を実施した結果,

「学生相談室を必要と感じた場面」では「心理

的な問題・精神疾患に対する知識や理解が必要

な場合」が最も多く,特に精神的に不安定な学

生に対応した場合が多かった。その他,すでに

医療的な治療を受けている場合や医療的治療が

必要と見られる場合などの「外部機関との連携

が必要な場合」,「具体的な問題」としていじめ

や退学の場合が挙げられた。「学生相談室への

希望」では,心理的な問題・精神疾患に対する

知識や理解,守秘義務を守ることなどの「専門

性」に関する希望が最も多かった。そして,教

職員へのニーズ調査の結果から,個々の大学コ

ミュニティに応じた学生相談の位置づけを試み

ている。

以上のように,学生相談に対するニーズを把

握することで,サービスを利用する側である学

生および大学コミュニティ成員のニーズに沿っ

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

42

た学生相談活動の提案がなされている。しかし,

必ずしもニーズと援助要請の関連は検討されて

いない。ニーズ調査に基づいたサービスの改善

が大学生の学生相談の利用にどのように結びつ

くのか,またもし結びつかないのであればどの

ような要因が関連しているのか,さらなる実証

的な研究が望まれる。

3)学生相談に対する認知・意識との関連

学生相談に対する認知・意識に関する変数を

扱った研究をまとめたものがTable 5である。

西山他(2005)は大学生222名を対象に,学

生相談室の利用促進を目的に,学生相談の認知

に関する7項目(「存在」,「場所」,「カウンセ

ラーの名前」,「学外カウンセラーの存在」,「相

談できること」,「相談のしかた・手続き」,「学

No. 研究者 対象者 認知・意識に関する 変数

援助要請に関する 変数

その他の主な変数 主な結果

1 西山他 (2005)

大学生222名、 このうち51名 を縦断的調査

学生相談の認知に関 する7項目(「存在」、 「場所」、「カウン セラーの名前」、「学 外カウンセラーの存 在」、「相談できるこ と」、「相談のしかた ・手続き」、「学生便 覧の情報」)

学生相談室の利用希 望の意思(「何か相 談したいことが生じ たとき相談室を利用 したいーしたくない)

認知度向上を目指し た働きかけ(1:新 入生オリエンテーシ ョンの活用、2:リ ーフレットの刷新、 3:愛称募集のキャ ンペーン)

1.相談室の存在を知っている学生の方が知ら ない学生よりも有意に多かったが、「相談のし かた・手続き」、「学生便覧の情報」を知って いる学生は有意に少なかった。 2.相談希望の意思では利用したい学生がした くない学生より有意に多く、また、学生相談の 必要性を感じている学生の方が必要ないと感じ ている学生より有意に多かった。「利用希望の 意思」は「相談室の有無」、「相談できること」 と有意な正の相関を示したが、全体的に「利用 希望の意思」は認知度と相関は低かった。 3.認知度向上の働きかけは、実施前後で全体 的に有意な変化は認められなかった。

2 木村・水野 (2004)

大学生239名 学生相談室の認知度 被援助志向性 年齢、性別、援助不 安、自己隠蔽、自尊 感情、悩みの深刻度

学生相談に対する被援助志向性を目的変数、年 齢・性別・悩みの深刻度・援助不安・自己隠蔽 ・自尊感情・認知度を説明変数とした重回帰分 析を実施した結果、学生相談の認知度が高いほ ど、また悩みが深刻なほど、被援助志向性が高 かった。

3 宮崎他 (2004)

大学生595名 学生相談室に対する 意識 (「悩みと相談意志」、 「学生相談への期 待」、「学生生活で のトラブルに関する 相談意志」、「相談 効果への疑問視」、 「カウンセラー以外 の相談者への相談意 志」、「相談の必要 度」)

学生相談室利用意思 「今、もしくは今後、 悩みを抱えられた場 合、本大学の学生相 談室を利用したいと 思いますか?」4件 法で回答 ―

学生相談室利用意志を従属変数、学生相談室に 対する意識7因子を独立変数とした重回帰分析 の結果、「悩みと相談意志」、「学生相談への 期待」、「相談の必要度」が正の影響を、「カ ウンセラー以外の相談者への相談意志」が負の

影響を示した。大学ごとの分析でも「悩みと相 談意志」の要因はすべての大学において来室意 志に正の影響を示した。

4 高野・宇留 田(2004)

大学生289名 5つの領域(①相談 室の立地条件、②広 報活動・情報提供、 ③相談の媒体、④対 面式の相談の形態、 ⑤相談以外の活動) に対する被援助利益 (道具的・心理的) と要請コスト(心理 的・道具的)

相談室に対する援助 要請のしやすさ

相談室に対する援助要請のしやすさを従属変数、 被援助利益(道具的・心理的)と要請コスト (道具的・心理的)を独立変数とした重回帰分 析を実施した結果、被援助利益は正の関連、要 請コストは負の関連が認められた。つまり被援 助利益を大きく認知していると援助要請がしや すく、また要請コストを大きく大きく認知して いると援助要請がしにくくなる。要請コストよ りも、被援助利益の方が援助要請のしやすさに 影響を与えていた。

5 木村 (2005)

大学生142名 学生相談機関の名称 ①学生相談室、②カ ウンセリング・ルー ム、③保健管理セン ター

被援助志向性

5つの問題領域(「心理・社会面」、「学習面」、 「進路面」、「健康面」、「日常生活面」)にお いて、3つの学生相談機関の名称に対して相談 したい順に回答を求めた。フリードマンの検定 を実施した結果、学業面・進路面・日常生活面 の問題では学生相談室へ、心理・社会面の問題 ではカウンセリング・ルームへ、健康面の問題 では保健管理センターに援助を求めようと考え ていることが明らかとなった。

Table 5 認知・意識を扱った主な研究のまとめ

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わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

43

生便覧の情報」)と学生相談室の利用希望の意

思(「何か相談したいことが生じたとき相談室

を利用したい-したくない」)を尋ねた。その

結果,相談室の存在を知っている学生の方が知

らない学生よりも有意に多かったが,「相談の

しかた・手続き」,「学生便覧の情報」を知って

いる学生は有意に少なかったと報告している。

また相談希望の意思では利用したい学生がした

くない学生より有意に多く,また,学生相談の

必要性を感じている学生の方が必要ないと感じ

ている学生より有意に多かった。「利用希望の

意思」は「相談室の有無」・「相談できること」

の認知と有意な正の相関を示したが,全体的に

「利用希望の意思」は認知度と相関は低かった。

さらに,認知度向上を目指した働きかけ(1:

新入生オリエンテーションの活用,2:リーフ

レットの刷新,3:愛称募集のキャンペーン)

を実施した結果,実施前後で全体的に有意な変

化は認められなかったと報告している。

木村・水野(2004)は学生相談に対する被援

助志向性に関連する変数を検討した結果,学生

相談の認知度が高いほど学生相談に対する被援

助志向性が高かったと報告している。

宮崎他(2004)は学生相談室来室を規定する

要因を調べることを目的に大学生595名を対象

に質問紙調査を実施した。学生相談室に対する

意識は因子分析の結果,「悩みと相談意志」,

「学生相談への期待」,「学生生活でのトラブル

に関する相談意志」,「相談効果への疑問視」,

「カウンセラー以外の相談者への相談意志」,

「相談の必要度」の7因子構造であった。学生

相談室利用意志を従属変数,学生相談室に対す

る意識7因子を独立変数とした重回帰分析の結

果,「悩みと相談意志」,「学生相談への期待」,

「相談の必要度」が正の影響を,「カウンセラー

以外の相談者への相談意志」が負の影響を示し

た。大学ごとの分析でも「悩みと相談意志」の

要因はすべての大学において来室意志に正の影

響を示した。

高野・宇留田(2004)は,学生相談への援助

要請行動を意思決定する際に認知される利益お

よびコストと援助要請のしやすさとの関連を検

討している。学生相談への援助要請行動の意思

決定においては,要請する場合としない場合の

それぞれの道具的・心理的な利益とコストを査

定し,それによって意思決定がなされると考え

る。そこで,1)相談室の立地条件(事務室の

隣・現在の場所・学部の建物の外),2)広報

活動・情報提供(インターネットによる情報発

信・サービス内容の公開・相談員の人となりが

わかる機会がある),3)相談の媒体(対面

式・電話・メール),4)対面式の相談の形態

(1対1・学習相談員とカウンセラーが同席・

グループ面接),5)相談以外の活動(学習や

進路選択に関する講演会・自主グループをサポ

ート・相談員が講義・24時間体制),の5つの

領域を取り上げ,援助要請にかかわる利益とコ

ストの認知を測定し,利用しやすさとの関連を

検討した。大学生289名を対象に質問紙調査を

実施した結果,①5つの領域すべてにおいて

(広報活動・情報提供の道具的コスト以外),条

件の違いにより利用しやすさ・利益・コストに

差が認められた。②利用しやすさは道具的利

益・心理的利益が正の影響,道具的コスト・心

理的コストは負の影響を示したと報告している。

木村(2005)は,学生相談機関の名称に対す

る大学生の意識に着目し,学生相談機関の名称

が被援助志向性に及ぼす影響を検討している。

わが国で多く用いられている相談機関の名称の

「学生相談室」,「カウンセリング・ルーム」,

「保健管理センター」と取り上げ,大学生142名

を対象に5つの問題領域について,それぞれの

相談機関への被援助志向性を尋ねた。その結果,

大学生は学業・進路・日常生活面の問題では学

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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生相談室へ,心理・社会面の問題ではカウンセ

リング・ルームへ,健康面の問題では保健管理

センターへ援助を求めようと考えていると報告

しており,大学生の被援助志向性に基づいた相

談機関の命名が必要であると指摘している。

以上より,学生相談に対する認知・意識に関

する変数は,学生相談機関に対する認知度,お

よび利用における利益とコストの認知が援助要

請に関連することが明らかとなった。つまり,

学生相談機関の認知度を高めること,また学生

相談の利用にあたり利益が多く,そしてコスト

が低く認知されるような工夫が学生相談の利用

に結びつくと言える。

4)その他の変数との関連

援助要請に影響を及ぼす変数として,先行研

究ではパーソナリティ変数が指摘されている

(水野・石隈,1999;Nadler,1997)。わが国の

学生相談領域における援助要請とパーソナリテ

ィ変数との関連を指摘した研究としては,ニー

ドと来談行動との関連を検討した福原(1981)

がある。

また,援助要請に関連する変数として実証的

な検討はなされていないが,関連を示唆するも

のとして,来談動機があげられる。

森田(1998)は心理療法への来談動機に関す

る研究を展望している。来談動機を「心理療法

その他の専門家による心理的援助を受けようと

する動機づけの内容,つまり専門家もしくはそ

の援助に求めるもの」と定義しているが,来談

動機という言葉に含まれる意味内容はかなり幅

広く多岐にわたり,簡単には定義しきれないと

も述べている。来談動機に関する研究を展望し,

学生相談領域での来談動機に関連する要因の仮

説として,実際の来談のしかた,来談以前の構

えをあげている。さらに,どのような経緯で来

談したのか,来談行動そのものに来談動機は反

映されているだろうと指摘しており,学生相談

への援助要請が来談動機と関連するとの仮説を

提案している。

3.大学生の専門的な心理的援助に対する援助

要請研究の成果

専門的な心理的援助に対する援助要請に関す

る研究として,大学生のカウンセリングに対す

る援助要請に関する研究が見られた。専門的な

心理的援助サービスを学生相談活動の一部と捉

えれば,その研究成果を学生相談活動に活かす

ことができるだろう。Table 6は主な研究をま

とめたものである。

カウンセリングへのイメージを扱った研究と

しては,坂本(2005)がある。大学生359名を

対象に,カウンセリングに対するイメージと悩

みの程度,相談ニーズ,カウンセリングの利用

願望について質問紙調査を実施した結果,大学

生のカウンセリング・イメージの特徴は,全体

としてあたたかい,受容的な印象が高く,自分

の問題について考えていく場であるようなイメ

ージを抱いているという結果を見出している。

またこの傾向は女性・高学年に強く,男性・低

学年はカウンセリングに対して,陰気で否定的

な,どこかうさんくさい印象を抱いていると報

告している。援助要請との関連では,カウンセ

リングに対して受容的・肯定的で,何をすると

ころかについての具体的なイメージを抱いてい

るほど,また,カウンセラーの人格に対する不

安感を有しているほど,カウンセリングの相談

ニーズ,つまり将来的に来談する可能性が高い

という結果を見出している。

学生相談領域の研究では検討されていない変

数を扱った研究として笠原(2002;2003)があ

げられる。笠原(2002)はカウンセラーへの援

助要請意図に影響を及ぼす変数を検討するため

に,大学生401名を対象に質問紙を実施してい

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わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

45

る。援助要請意図を目的変数とした重回帰分析

を実施した結果,原因帰属の認知,悩みの程度,

呼応性不安が援助要請意図への直接効果を示し,

悩みの程度が高いほど,自分で悩みを解決でき

ないと認知しているほど,カウンセラーへの呼

応性への不安が低いほど援助要請意図が高かっ

たという結果を見出している。またスティグマ,

自己隠蔽,公的自己意識は悩みの程度を直接説

明するだけで,援助要請意図には直接の影響を

及ぼしていなかったと報告している。

さらに笠原(2003)では大学生226名を対象

に質問紙調査を実施し,デモグラフィック変数,

カウンセリング恐怖,悩みの苦痛の程度,カウ

ンセラーなどの専門家に対する援助要請意図に

ついて,共分散構造分析によりモデルを検討し

ている。その結果,自己隠蔽と非専門家への援

助要請意図が直接効果を示し,自己隠蔽が高い

ほど,また非専門家への援助要請意図が高いほ

ど専門家への援助要請意図が高いと報告してい

る。

援助要請の意図を高めるための介入研究とし

て,神山(2005)はカウンセリングに関する情

No. 研究者 対象者 関連する変数 援助要請に関する 変数

その他 主な結果

1 坂本 (2005)

大学生359名 ・カウンセリングに 対するイメージ ・悩みの程度 ・相談ニーズ

カウンセリングの利 用願望

相談ニーズ=悩みの 程度×カウンセリン グの利用願望

1.大学生のカウンセリング・イメージの特徴 は、全体としてあたたかい、受容的な印象が高 く、自分の問題について考えていく場であるよ うなイメージを抱いている。この傾向は女性・ 高学年に強く、男性・低学年はカウンセリング に対して、陰気で否定的な、どこかうさんくさ い印象を抱いている。 2.相談ニーズは「進路」が最も高かった。 3.カウンセリングに対して受容的・肯定的で、 何をするところかについての具体的なイメージ を抱いているほど、また、カウンセラーの人格 に対する不安感を有しているほど、相談ニーズ が高い。

2 笠原 (2002)

大学生401名 ・デモグラフィック 変数 ・悩みの程度 ・原因帰属 ・自己隠蔽 ・カウンセリングに 対する恐れ ・公的自己意識

カウンセリングに対 する援助要請意図

 援助要請意図を目的変数とした重回帰分析を 実施した結果、以下のことが明らかとなった。 1.原因帰属の認知、悩みの程度、呼応性不安 が援助要請意図への直接効果を示し、悩みの程 度が高いほど、自分で悩みを解決できないと認 知しているほど、カウンセラーへの呼応性への 不安が低いほど援助要請意図が高い。 2.スティグマ、自己隠蔽、公的自己意識は悩 みの程度を直接説明するだけで、援助要請意図 には直接の影響を及ぼしていなかった。

3 笠原 (2003)

大学生226名 ・デモグラフィック 変数 ・カウンセリング恐 怖 ・悩みの苦痛の程度

カウンセラーなどの 専門家、および友達 や家族などの非専門 家に対する援助要請 意図

 共分散構造分析によりモデルを検討した結果、 以下のことが明らかとなった。 1.専門家への援助要請意図のみを目的変数と したモデルでは、専門家への援助要請意図を有 意に説明する潜在変数が認められなかった。 2.非専門家への援助要請意図を組み込んだモ デルでは、自己隠蔽と非専門家への援助要請意 図が直接効果を示し、自己隠蔽が高いほど、ま た非専門家への援助要請意図が高いと専門家へ の援助要請意図が高くなる。

4 神山 (2005)

大学生185名 ・デモグラフィック 変数 ・カウンセリング不 安 ・カウンセリングに 対する態度 ・抑うつ

カウンセリングの利 用意図

・実験条件 1:統制群 2:情報提示群 3:情報+モデル提 示群 ・情報提示:カウン セリングの利用に関 するQ&A・モデル提示:利用 体験者のコメント

 カウンセリングサービスに関する情報の提示 が、カウンセリングサービスへの援助要請意図 に及ぼす影響を検討することを目的に、質問紙 による実験を実施。情報提示による介入の効果 を検討した結果、実験群では評価が悪くなるこ とへの不安が有意に低減した。また利用意図に は有意な変化は認められなかった。

Table 6 専門的な心理援助に対する援助要請に関する研究のまとめ

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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報提示が援助要請意図に及ぼす影響について,

質問紙を用いた実験を実施している。大学生

185名を対象に,1:統制群,2:情報提示群,

3:情報+モデル提示群を設定し,情報提示で

はカウンセリングの利用に関するQ&Aを,モ

デル提示では,利用者の体験談を提示し,読む

よう教示した。情報提示による介入の効果を検

討した結果,実験群では評価が悪くなることへ

の不安が有意に低減したが,利用意図には有意

な変化は認められなかったと報告している。

〔考 察〕

ここでは,学生相談領域における援助要請に

関する研究のレビューから,学生相談活動の実

践,今後の研究の方向性について提言したい。

1.援助要請の観点からの学生相談活動への提

学生相談領域における援助要請研究の知見を

どのように実践に活かしていくのか。水野他

(2006)は被援助志向性の観点からの実践への

アプローチとして2つの方向性を提案している。

一つは被援助志向性を高めるアプローチであり,

もう一つは被援助志向性が低くても利用できる

援助サービス・システムを構築するアプローチ

である。この2つのアプローチの方向性は学生

相談に対する援助要請についても有用であると

考えられる。したがって,この2つのアプロー

チの方向性から学生相談活動への提言をしたい。

1)学生相談に対する援助要請を促進するアプ

ローチ

援助要請に関連する変数としてイメージやニ

ーズ,そして認知や意識が多く検討されていた。

学生相談に対する援助要請を促進するために,

これらの変数に働きかけることが有効であるこ

とが示唆される。

イメージについては,学生相談に対するマイ

ナスのイメージが学生相談の利用に抑制的に働

くことから,イメージの改善を目的とした活動

が望まれる。また,認知や意識もイメージと同

様に,働きかけにより変化可能な変数であると

考えられる。高野・宇留田(2004)の研究成果

より,利用に際して学生に認知される利益がコ

ストを上回るような工夫が必要である。

また木村(2005)が指摘するように,相談機

関の名称が援助要請に影響を及ぼすと考えられ

る。したがって,学生が相談機関の名称をどの

ように捉えているのか,またその名称に対して

どのような問題で相談するのが適切と判断して

いるのかについて,各大学は継続的に調査し,

その結果に基づいたサービス内容の提供や相談

機関名の命名など相談機関側の要因の改善によ

り利用の促進が期待される。

ニーズに着目すると,修学・進路面の問題へ

のニーズが高いことから,それらのサービスの

提供が望まれる。しかし,一方で学生のニーズ

調査の結果が必ずしも実際のサービスの利用を

予測できていないとの指摘がある(Barrow et

al., 1989)。その理由として,①相談機関が学生

のニーズ調査の結果に沿ったサービスを提供で

きていないこと,②横断的な研究方法では可変

的なニーズを捉えきれない,③自己評定式のニ

ーズ調査の信頼性,を指摘している(Barrow

et al., 1989)。

したがって,学生のニーズに合ったサービス

を提供するとともに,継続的にニーズ調査を実

施し,その結果を実践活動に反映させていくこ

とが大切である。また,学生のみのニーズ調査

だけでなく,教職員や学生の保護者など,学生

を取り巻く人々から見た学生にとって必要なサ

ービスのニーズを明らかにし提供する視点も必

要であろう。

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わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

47

しかし,ニーズと援助要請との関連を検討す

るにあたり注意すべきことは,援助要請を高め

るために,学生のニーズに全面的に応えるとい

う発想である。文部省(2000)の「大学におけ

る学生生活の充実方策について(報告)」でも

「学生の短期的な満足のみに応えるような迎合

的なものであってはならない」と指摘している。

大学の変革期にある現在,学生相談が大学教育

において担う役割・機能を明確にし,それを基

盤にしつつ学生のニーズに沿ったサービスの提

供が望まれる。

2)被援助志向性が低くても利用できるサービ

ス・システムの構築

学生相談への援助要請を促進するためのアプ

ローチとして,援助要請に影響を及ぼす変数に

働きかける際に,変容が容易な変数への介入が

そのアプローチの方法となる。したがってデモ

グラフィック変数やパーソナリティに関する変

数など,変容が容易でない変数を対象とした働

きかけは現実的ではない。それらの変数に関し

ては,学生相談の利用に対して消極的な学生の

特徴を明らかにすることに貢献する。つまり,

デモグラフィック変数やパーソナリティ変数に

関連して学生相談の利用に消極的あるいは否定

的な学生の特徴を明らかにし,そのような学生

でも利用できるサービスの内容や提供方法の検

討が重要である。先行研究では,学生相談の利

用とデモグラフィック変数やパーソナリティ変

数との関連は十分に明らかになっているとはい

えず,今後のさらなる研究が望まれる。

また,大学生の援助要請の特徴としては,専

門家よりも友人や家族などの身近な援助者に対

する援助要請を好む傾向が明らかとなった。し

たがって,学生同士によるピアサポート(内野,

2003)は有効であるといえよう。また大学生に

とって,専門的な援助を受けることができる機

関は学生相談機関だけではない。大学内のみな

らず,地域の専門機関なども視野に入れ,学生

が有効に社会的な資源を利用できるよう,情報

提供をおこなったり連携をとって学生を援助し

ていく姿勢が必要である。そのためにも,学生

相談に対する援助要請とともに,大学生を取り

巻く援助者に対する援助要請についても明らか

にし,比較検討することが求められる。

2.わが国の学生相談領域における援助要請研

究の課題と今後の方向性

最後にわが国の学生相談領域における援助要

請研究の課題と今後の研究の方向性ついて述べ

たい。

1)基礎的研究の必要性

まずは,学生相談領域における援助要請研究

についての基礎的なデータの蓄積が挙げられる。

文献研究の結果,イメージ,ニーズ,認知・態

度に関する変数が主に検討されていたが,デモ

グラフィック変数やパーソナリティ変数など,

他の領域での援助要請研究で関連が指摘される

変数についても今後さらなる検討が必要である。

2)援助要請プロセスおよび循環的な視点の必

要性

援助要請のプロセスに着目する視点も欠かせ

ない。高野・宇留田(2002)は3段階の大学生

が学生相談サービスを受けるという援助要請行

動の生起過程モデルを提唱している。第1段階

は「問題の認識と査定」,第2段階の「援助要

請の意思決定」,第3段階の「援助を受ける」

である。多くの研究は第2段階までの研究であ

り,態度や意思決定などの援助要請における認

知的な側面と実際の行動との関連が明らかにな

っていない。この点は,学生相談領域の援助要

請研究のみならず,他の領域においても課題と

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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して指摘されいる(水野・石隈,1999;田村・

石隈,2006)。さらに,援助要請に対する態度

が実際の行動を十分に予測できていないとの指

摘もあり(Fisher et al., 1983)今後の課題とい

える。

また,多くの研究が援助要請に関する変数を

従属変数として捉えているが,援助要請行動が

最終点ではなく,援助要請行動がさらに独立変

数となり,様々な変数に影響を及ぼすことも考

えられる。例えば,学生相談への援助要請行動

がその後の大学生活への適応や学業成績に影響

を及ぼすことも予想される。さらに学生相談を

利用した経験が,その人のその後の学生相談に

対する援助要請に影響を与えることも考えられ

る。事前の被援助経験が被援助志向性や被援助

行動と肯定的な関連がある(水野・石隈,1999)

との指摘もあり,援助要請のプロセスを循環的

に捉える視点も必要であろう。

3)介入研究の必要性

援助要請に関連する変数が多く指摘されてい

るが,では実際にどのような働きかけが援助要

請を促進するのか,という問いに対して,いま

までの研究成果からは明確な知見が得られてい

ない。つまり,援助要請を高める具体的な介入

方法とその効果については実証されていない。

海外においても同様の指摘がなされている

(Tryon, 1980)。援助要請行動を促進する実践

的な報告とともに,その介入方法の効果につい

て実証的な研究が望まれる。

4)研究成果の一般化について

最後に,研究成果の一般化について述べたい。

高野(2004)が指摘するように,各大学はその

規模や構成などの文化的・社会的な状況の差異

が大きいため,ある大学の学生のデータから得

られた研究成果に基づく実践を他の大学でもそ

のまま当てはめることができるとは限らない。

また,援助要請とその関連する変数との因果関

係が絶対的なものでない以上,大部分の学生に

とっては援助要請の促進につながる働きかけが,

一部の学生にとっては援助要請を抑制したり阻

害する危険性もある。この点については十分な

配慮が必要であろう。

今後,より多くの研究成果を積み上げること

で,援助要請に関連する変数として,多くの大

学および学生に共通する要因と,各大学および

学生に固有の要因を明らかにすることができる

だろう。そして何よりも個々の学生の援助要請

の特性に合わせた介入のアプローチを工夫して

いくことが必要である。

〔文 献〕

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Page 15: わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題 37 1)来談率 Table 1は大学の学生数の規模別に見た学生

わが国の学生相談に対する援助要請研究の動向と課題

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石原みちる・難波 愛 2003 大学コミュニティ

における学生相談のニーズについて 山陽学園

短期大学紀要,34,1-13.

神山佳代子 2005 情報提示が,カウンセリング

サービスへのhelp-seekingに及ぼす効果 明治学院大学大学院文学研究科・心理学研究科心理学

専攻紀要,10,1-13.

金沢吉展・山賀邦子 1998 大学のカウンセリン

グ・サービスに対する学生のニーズとその構造-

上智大学新入生を対象としたニーズサーベイの

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笠原正洋 2002 自己隠蔽,カウンセリング恐怖,

問題の認知と援助要請意図との関連 中村学園

研究紀要,34,17-24.

笠原正洋 2003 相談専門家と非専門家への援助

要請意図と心理的変数との関連 中村学園研究

紀要,35,15-21.

木村真人 2005 学生相談機関の名称と被援助志

向性との関連について 東京成徳大学研究紀要,

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木村真人・水野治久 2004 大学生の被援助志向

性と心理的変数との関連について-学生相談・

友達・家族に焦点をあてて- カウンセリング

研究,37,260-269.

真覚 健・中村雅知 1993 学生の相談相手と相

談機関のイメージについての調査 東北大学学

生相談所紀要,20,11-22.

宮崎圭子・益田良子・松原達哉 2004 学生相談

室来室の規定要因に関する研究 学生相談研究,

24,259-268.

水野治久・石隈利紀 1999 被援助志向性,被援

助行動に関する研究の動向 教育心理学研究,

47,530-539.

水野治久・石隈利紀・田村修一 2006 中学生を

取り巻くヘルパーに対する被援助志向性に関す

る研究-学校心理学の視点から- カウンセリ

ング研究,39,17-27.

文部省高等教育局・大学における学生生活の充実

に関する調査研究会 2000 大学における学生

生活の充実方策について(報告)―学生の立場

に立った大学づくりを目指して― 文部省

森田美弥子 1990 学生相談室イメージの分析-

大学入学時のアンケートにもとづいて- 名古

屋大学学生相談室紀要,2,17-24.

森田美弥子 1997 学生相談室イメージと来談の

関係 大学生を対象にして 心理臨床学研究,

15,406-415.

森田美弥子 1998 心理療法への来談動機-研究

の展望と今後の課題- 名古屋大学教育学部紀

要,45,1-8.

Nadler, A. 1997 Personality and help seeking:Autonomous versus dependent seeking of help.Pierce, G. R., Lakey, B., Sarason, I. G., &Sarason, B. R. (Eds.), Sourcebook of social

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生相談機関に関する調査報告 学生相談研究,

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日本学生相談学会特別委員会 2001 2000年度学

生相談機関に関する調査報告 学生相談研究,

22,176-211.

西河正行・鈴木典子 1994 学生は学生相談室を

どのように見ているか?-短期大学と専門学校

の学生相談室調査を通して- 慶應義塾大学学

生相談室紀要,22/23,63-76.

西山 修・谷口敏代・樂木章子・津川美智子・小

西寛子 2005 学生相談室の利用促進に向けた

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度を中心に 岡山県立大学短期大学部研究紀要,

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野村照幸・五十嵐透子 2004 我が国のメンタル

ヘルス・サービス領域における援助要請行動研

究の課題と方向性の検討 上越教育大学心理教

育相談研究,3,53-65.

大島啓利・林 昭仁・三川孝子・峰松 修・塚田

展子 2004 2003年度学生相談機関に関する調

査報告 学生相談研究,24,269-304.

坂本憲治 2005 大学生の主観的な心理相談ニー

ズに及ぼすカウンセリング・イメージの検討

福岡大学大学院論集,37,81-95.

櫻井信也・有田モト子 1994 SD法による学生

相談センターに関するイメージの測定 学生相

談研究,15,10-17.

高野 明 2004 援助要請行動 下山晴彦(編)

臨床心理学の新しいかたち 心理学の新しいか

たち第9巻 誠信書房 205-218.

高野 明・宇留田麗 2001 援助要請行動から見

たサービスとしての学生相談 教育心理学研究,

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高野 明・宇留田麗 2004 学生相談活動に対す

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援助要請に関する利益とコストの認知との関連

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Tryon, G. S. 1980 A review of the literatureconcerning perceptions of and preferences forcounseling center services. Journal of College

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東京成徳大学人文学部研究紀要 第 14 号(2007)

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内野悌司 2003 広島大学ピア・サポート・ルー

ムの初年度の活動に関する考察 学生相談研究,

23,233-242.