日本睡眠改善協議会 · 2010. 2. 26. · 日本睡眠改善協議会 2....
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日本睡眠改善協議会
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睡眠改善学第1章 睡眠中の生命現象
日本睡眠改善協議会
睡眠中の生命現象
1. 睡眠中の生理的変化
2. 睡眠中の心理的体験
1. 睡眠中の生理的変化 (P22~28)
1-1. 覚醒水準と脳波活動
1-2. 睡眠段階と睡眠経過
1 3 体温と睡眠1-3. 体温と睡眠
1-4. 自律神経系活動
1-5. 内分泌機能
1-1. 覚醒水準と脳波活動 (P22)
覚醒(興奮)
安静閉眼
α波
β波
安静閉眼
まどろみ
軽い睡眠
深い睡眠50μV
1秒
紡錘波
θ波
δ波
脳波と覚醒レベル
α波 (8-13Hz) 閉眼安静時
β波 (13Hz以上) 開眼、覚醒(興奮時)
θ波 (4-7Hz) まどろみθ波 (4-7Hz) まどろみ
δ波 (1-3Hz*) 深睡眠
* 睡眠段階の判定では、0.5-2Hz
1-2. 睡眠段階と睡眠経過 (P23)
睡眠ポリグラフ記録
(Polysomnogram: PSG)
・ 脳波(C3,C4)、眼球運動、筋電図
睡眠段階
・ ノンレム睡眠(段階1、2、3、4)/レム睡眠
・ 徐波睡眠(段階3+4)
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睡眠ポリグラフ記録[睡眠段階判定のための電極部位(国際基準)]
眼電図
脳波(脳電図)
筋電図
脳波用の電極
1cm
脳波
呼吸センサ
眼電図
電極ボックス
筋電図 基準電極
タ
脳波計
モニタ
記録計
ノンレム睡眠の段階判定 (NREM)
段階1: α波が区間の50%未満
段階2: 紡錘波(spindle)か
K複合波(K l )が出現K複合波(K-complex)が出現
段階3: δ波が区間の20%以上
段階4: δ波が区間の50%以上
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脳波(左中心部;C3)
50μV
脳波(右中心部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)
覚醒(閉眼)
α波
眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
[堀, 2008]
脳波(左中心部;C3)
脳波(右中心部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)50μV
NREM睡眠の睡眠段階1
α波は消失
ゆ くりとした目の動き眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
ゆっくりとした目の動き
[堀, 2008]
脳波(左中心部;C3)
脳波(右中心部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)
眼電図(右目)
50μV
NREM睡眠の睡眠段階2
紡錘波眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
[堀, 2008]
脳波(左中心部;C3)
脳波(右中心部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)
50μV
NREM睡眠の睡眠段階2
K複合
眼電図(左目)
眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
[堀, 2008]
脳波(左中心部;C3)
50μV
脳波(右中心部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)
NREM睡眠の睡眠段階3δ波<50%
眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
[堀, 2008]
脳波(左中心部;C3)
脳波(右中心部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)
50μV
NREM睡眠の睡眠段階4δ波 ≥ 50%
眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
[堀, 2008]
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脳波(左前頭部;C3)
50μV
脳波(右前頭部;C4)
脳波(左後頭部)
脳波(右後頭部)
眼電図(左目)
REM睡眠
Rapid Eye Movement眼電図(右目)
筋電図(オトガイ筋)
心電図
呼吸
1秒間
Rapid Eye Movement
筋弛緩
[堀, 2008]
レム睡眠 (RAPID EYE MOVEMENT: REM)
脳波: 睡眠段階1と同様
筋電図: 最低レベル(骨格筋の緊張低下)
眼電図: 急速眼球運動あり
→ PSGには、この3指標が必要
睡眠段階
粗体動
1夜の睡眠経過と体動
粗体動
細体動
時刻
1夜の睡眠経過
レム睡眠
睡眠
0
1
睡眠周期: ノンレム睡眠+レム睡眠 = 70-110分(平均90分)徐波睡眠(段階3+4): 睡眠の前半に集中
0 1 2 3 4 5 6 7時間
眠段階
2
3
4
覚醒時間と深睡眠 [模式図]
最初の4時
60
80
時間の深睡眠(分)
覚醒持続時間 (h)
0
20
40
0 4 8 12 16
レム睡眠と体温
レム睡眠の割合10%
20%
体温
03時-05時
18時-20時
03時-05時
時刻
36.5℃
37.5℃
[Czeisler (1980)のデータより模式図を作成]
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睡眠経過の特徴
睡眠周期
ノンレム睡眠+レム睡眠 = 約90分
徐波睡眠(段階3+4)
睡眠の前半に集中 → 恒常性 (ホメオスタシス)睡眠の前半に集中 → 恒常性 (ホメオスタシス)
レム睡眠
体温リズムと逆位相 → 概日性
睡眠段階の占める割合(成人)
20%
5% 段階1
段階
50%
25%
段階2レム睡眠
段階3+4
1-3. 体温と睡眠 [模式図] (P24)
睡眠
体温
37.5℃
温
36.5℃
4 12 20 4 12 20 4時刻
睡眠中の発汗作用
発汗促進
深睡眠
[堀(1972)をもとに作成]
体温低下の要因
夜間時: 概日リズム
入眠時: 手足の皮膚血管拡張
← 副交感神経系活動の亢進← 副交感神経系活動の亢進
徐波睡眠: 発汗促進
← 大脳皮質の抑制解除
1-3. 自律神経系活動 [模式図] (P25)交感神経系活動亢進
副交感神経系活動亢進
[Matsumoto(1982)のデータより模式図を作成]時間
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自律神経系活動の変化
概日リズムの影響
・入眠とともに交感神経系活動低下
(副交感神経系活動の亢進)
・第2~3周期のノンレム睡眠で最低
・起床に向けて上昇
レム睡眠 「自律神経系の嵐」
・心拍(脈拍)・血圧・呼吸が不規則になる
・陰茎勃起
1-5. 内分泌機能 (ホルモン) (P27)
成長ホルモン
脳下垂体前葉-蛋白質合成促進
コルチゾル
副腎皮質 血糖値上昇 抗炎症副腎皮質-血糖値上昇、抗炎症
メラトニン
松果体-催眠作用、概日リズム調整
成長ホルモン
睡眠段階
深睡眠で最大分泌
覚醒 睡眠
睡眠と内分泌機能 [模式図]
コルチゾル
時刻
最大分泌
起床直前で最大分泌
メラトニン 最低体温の約1時間前に最大分泌
段階1
レム睡眠
覚醒
1夜の睡眠経過(まとめ)
副交感神経系活動亢進
覚醒への準備
末梢血管拡張
放熱
身体の回復段階1
2
3
4
0 1 2 3 4 5 6 7時間
副腎皮質ホルモン分泌最大メラトニン分泌最大成長ホルモン分泌最大
発汗 発汗
体温
覚醒への準備
生体リズム調節
身体の回復
2.睡眠中の心理的体験 (P28~30)
2-1. 入眠時心像
2-2. 夢
2 3 金縛り2-3. 金縛り
2-4. 睡眠感
2-1. 入眠時心像 (P28)
感覚出現率 (%)
Foulkes & Vogel [1965] Hori [1994] 林 [1998]
視覚 89 85.5 87.6視覚
聴覚 37 7.6 9.2
身体感覚 22 6.4 3.2
その他 0 0.5 0.0
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覚醒
[林ほか, 1999]
睡眠段階1
[林ほか, 1999]
睡眠段階2
[林ほか, 1999]
2-2. 夢 (P29)
レム睡眠
夢様体験 (dream-like experience)
想起率 ・・・ 80%前後
ノンレム睡眠
思考様体験 (thought-like exp.)
想起率 ・・・ 0~50%
研究者参加
者数
覚醒
回数
夢の再生率(%)
REM睡眠 NREM睡眠
Dement 10 70 88 0Rechtschaffen et al. 17 282 86 23Orlinsky 25 908 86 42Wolpert 8 88 85 24Wolpert & Trosman 10 91 85 0大熊 19 200 84 22Foulkes 8 244 82 54Foulkes 8 244 82 54藤沢 10 7 80 50Dement & Kleitman 9 351 79 7Klemente 9 57 75 12Aserinsky & Kleitman 10 50 74 7Snyder & Hobson 10 320 72 13Goodenough et al. 16 190 69 34Snyder 16 237 62 13Jouvet et al. 4 50 60 3
2-3. 金縛り (P30)
出現率: 約40%
初発年齢: 男性17~18歳、女性15歳
要因: ①身体的・心理的ストレス
②睡眠・覚醒リズムの乱れ
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「夜寝ていて突然目が醒めると、まったく体が動きませんでした。
恐ろしくて人を呼ぼうとしたのですが、声を出すことができません。
胸を押され息が苦しくて、おそるおそる目を開けてみると、恐ろし
い形相をした人が体の上に乗っていました 息もできず とても恐い形相をした人が体の上に乗っていました。息もできず、とても恐
ろしかったのですが、どうやらそのまま眠ってしまったらしく、気が
ついたら朝でした。しかし、その体験は鮮明に覚えていて、夢とは
まったく違うという感じが残っていました。」
男性
女性
[Fukuda et al.(1987)をもとに作成]
金縛り体験の開始年齢 年齢
[Takeuchi et al., 1992]
2-4. 睡眠感 (P30)
眠ったという感覚
睡眠段階2が一定時間持続することが必要
睡眠段階と睡眠感
睡眠段階 (%)
覚醒 段階1 段階2 3+4
眠っていた 0.0 44.4 66.7 73.4
目覚めていた 100.0 55.6 33.3 13.3
わからない 0.0 0.0 0.0 13.3
[Webb (1980)をもとに作成]
入眠期における睡眠感
脳波の特徴目覚めていた
眠っていた
不明忘却
α波連続 82.5 7.2 10.3
α波消失 64.5 19.7 15.8
θ波 51.2 24.0 24.8
頭頂部鋭波 50.0 28.3 21.7
睡眠紡錘波 26.2 43.7 30.1
[Hori et al., 1994]