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横浜市立動物園の改革に向けて 横浜市立動物園のあり 方懇談会 2005年4月18日

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Page 1: 横浜市立動物園の改革に向けて...2019/03/08  · 横浜市立動物園の改革に向けて 横浜市立動物園のあり方懇談会 2005年4月18日 2003年度の包括外部監査において、市立動物園は、経営改善の必要があると

横浜市立動物園の改革に向けて

横浜市立動物園のあり方懇談会

2005年4月18日

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2003年度の包括外部監査において、 市立動物園は、 経営改善の必要があるとの指摘を受けた。

また、 横浜市は地方自治法の改正を受け、 「 公の施設」 に対する指定管理者制度の導入を検討しており、 動物園の経営形態も見直しが必要とされていた。

これらを受け緑政局は、 2004年7月に「 横浜市立動物園のあり方懇談会」 を設置し、検討を依頼した。

懇談会は、 主に次の3点について検討を行った。• 動物園の存在意義と横浜市役所が経営する意義の再確認• 動物園が直面する経営上の課題の整理と分析• 包括外部監査の指摘事項及び指定管理者制度の導入の可能性に対する方向性の指摘

本報告書は、 2005年3月28日に行われた最終懇談会への提出資料とその口頭によるプレゼンテーショ ン、 及び質疑応答の記録を再編集したものである。

はじめに

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提言要旨

  横浜市立動物園は入場者の減少と財政危機の2つの課題に直面する。この難局は現場の

自助努力だけでは乗り切れない。市役所が主導し、動物園の基本戦略を再構築するとともに、経営体制の一本化や金沢動物園の抜本改革等の課題に早急に取り組む必要がある。改革作業の猶予期間は3年間・・2008年度に成果を示す必要がある

●動物園は娯楽に加え、 教育・ 研究、自然保護など多様な使命を担う。 また、図書館や美術館と同じく 大都市に不可欠のインフラである。 その価値は入場者数や収支に加え、 多面的に評価する必要がある。

●内外の大都市と比較した結果、 横浜市の3 園体制( 規模、数、立地) そして内容と質は都市格に見合ったも

のということがわかった。 また集客力と経営効率も国内の他都市に比べ遜色はないといえる。

●しかし近年、 入場者数が平均毎年3%ずつ減少している。 特に金沢動物園はコンセプト の陳腐化や過少投

資の弊害による悪循環に陥っている。 従来の常識を断ち切った抜本見直しの必要があり、2008年度の段階で改革の成果が確認できない場合には段階的縮小等の可能性を再検討すべきである。 またズーラシアについても競合する民間娯楽施設並みの高度なマーケティ ング戦略の構築と投資戦略の見直しが急務である。

●横浜市の動物園行政は、 これまで個々の動物園を別個に整備・ 管理してきた。 しかし今後は3園の業務連

携を図るべきである。 さらに金沢と野毛山の直営をやめ、 財団運営に一本化すべきである。 その上で指定管理者制度と業務委託による民間事業者の参画可能性を積極検討し、 一部もし く は全部の施設の中核業務以外の仕事を外部の専門事業者に委ねていく べきである。

●以上の改革は、 各園の現場や財団と連携しつつ市役所がリード ・ 推進すべきである。その際にはNPO法人等が経営する海外の積極経営の事例に学び、 また具体の随所において集客マーケティ ングをはじめとする民間経営の専門家のノウハウを導入するべきである。

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検討体制

経営強化 マーケティング 利用者満足度向上

青井 泰子 北村 健一 江上 克己 青井 泰子 相原 進

  ( 元市政モニター) 滝沢 千絵子 三瓶 裕之 田野岡 由紀子 長谷川 洋行

上山 信一( 座長) 牧 慎一郎 檜垣 宏子 原久美子   ( 慶應義塾大学教授) 村田 浩一 ヒサクニヒコ 五百木 諭

江上 克己 宮本 直利   ( ( 財) 公園緑地管理財団常務理事)

北村 健一

    ( ( 社) 日本動物園水族館協会専務理事)

三瓶 裕之

  ( ( 財) そごう美術館事務局長)

滝沢 千絵子

  ( 公認会計士)

田野岡 由紀子

( 学校法人山王台学園山王台幼稚園園長)

檜垣 宏子

   ( 鶴見川を再発見する会代表)

ヒサクニヒコ    ( 横浜市動物園友の会会長)

牧 慎一郎

  ( NPO法人市民ZOOネットワーク代表理事)

村田 浩一

  ( 日本大学教授)

宮本 直利

   ( 横浜市立山元小学校校長)

懇談会( 敬称略、 五十音順)作業部会* 事務局

( 横浜市緑政局)

*作業部会は、懇談会のメンバーから構成し、それぞれヒアリング、調査、分析を行った。

猪鼻 聡

( アドバイザー)白山 真一

( 中央青山監査法人)

( 中央青山監査法人)

( アドバイザー)中嶋 築人

( 経営コンサルタント)村井 良子( アドバイザー)

( プランニング・ ラボ代表)

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マーケティング作業部会

2004年 2004年 2004年 2004年

7月28日 第1回懇談会(討議と視察) 金沢 10月12日 第1回作業部会 10月12日 第1回作業部会 10月21日 第1回作業部会

ワークショップ(ズーラシア)

8月11日 第2回懇談会(視察)野毛山   10月29日 第2回作業部会 11月10日 第2回作業部会

10月28日 第2回作業部会

8月20日 第3回懇談会(視察)ズーラシア 11月9日 第3回作業部会 11月13日 FGI* 1回目 ワークショップ(野毛山)

および繁殖センター

12月15日 第4回作業部会 11月17日 FGI 2回目 11月5日 第3回作業部会

9月21日 第4回懇談会 ワークショップ(金沢)

11月20日 FGI 3回目

11月21日 委員と現場職員との意見交換会  11月22日 第4回作業部会

11月26日

11月24日 第5回懇談会 11月27日 2005年

1月13日 第5回作業部会

11月29日 座長主催の自主ヒアリング:WCS*本田公夫氏 11月30日

からアメリカの動物園事情をヒアリング 12月4日 職員のまとめ作業

12月3日 (財)横浜市緑の協会職員ヒアリング(事務局) 2005年

1月22日

12月16日 行政改革推進課ヒアリング(事務局) 1月24日 分析作業

2005年1月25日

1月13日 第6回懇談会

2月1日 分析結果について

2月7日 旭川市旭山動物園視察及びヒアリング 職員と意見交換

2月23日 拡大作業部会 2月7日 マーケティング作業部会とCS向上作業部会との合同作業部会

3月8日 拡大作業部会 2月17日 第3回作業部会

3月8日 委員と現場職員との意見交換会 

3月28日 第7回懇談会

など、ニューヨーク市内で合わせて5園館の動物園水族館を運営し、野生動物の

保全活動も行っている団体。

懇談会・委員の活動 経営強化作業部会 CS向上作業部会

アンケート実施:野毛山・

金沢・ズーラシア

*WCS=Wildlife Conservation Society : ブロンクス動物園、セントラルパーク動物園 *FGI=フォーカス グループ インタビュー

12月27日、2005年1月4、8,15,17、2月1日:野毛山

12月19、20,23,24,25,27,28日:金沢

12月3,7,12,19,25,27日: ズーラシア

アンケート実施:万騎が原

検討の作業経過

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1.都市経営における動物園の意義と役割        62.横浜市立動物園の現状評価         13  (1)3園全体の運営 17  (2)各園の集客・マーケティング 25  (3)全体の経営体制 353.市役所が取り組むべき経営課題 474.今後の進め方      59付属資料:報告書説明資料               61

別冊資料:(1)包括外部監査に対する懇談会の考え方     (2)作業部会報告        ① 経営強化部会          ② マーケティング部会        ③ 利用者満足度(CS)向上部会     (3)懇談会会議録

目次

ページ

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1. 都市経営における動物園の意義と役割

動物園は大都市にとって欠かせない存在だが、 その使命、役割、経営形態は時代の要請にあわせてダイナミックに進化する。 横浜市が動物園のあり方を考えるにあたっては、旧来の固定概念を取り払う必要がある。

●  動物園の機能は「 見世物展示」 から「 動物公園」 へ、そして「 繁殖・ 保護・環境教育の場」 へと進化してきた。その結果、現在では娯楽だけでなく 種の保存と保護、教育、調査・ 研究の4つの機能を担う機関となっている。

●  動物園は美術館・ 博物館など他の文化施設と同様に単独では採算はとれない。 しかし、 世界の主要な大都市には、複数の動物園を持ち、年間数十億円のコスト を投じ、百万人を超える入園者を集めている例もある。世界の動物園の経営形態を見ると、 約半分が公立であり、 さらにその大半は市立( 全体の41%) である。

●  ニューヨークなどの先進事例を見ると、 動物園の活動領域は施設の経営にとどまらず、 自然保護や教育分野にもひろがる。 また経営形態は公的支援を受けつつも、必ずしも直営に限らない。公設民営やNPO法人によるなど多様な選択肢がある。

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現代の動物園の4つの機能

・ 動物学、 獣医学等に係る研究活動

・ 教育学、 展示学等に係る研究活動

・ 大学等との共同研究

・ 動物のことを知る。

・ 動物や人間を取り巻く 環境について知り、考える。・ ・ ・ 環境教育

・ 命の大切さについて知る。

・ 希少動物の繁殖の取り組み。

・ 希少動物の野生復帰の試み。

・ 飼育下観察による野生動物の生態の把握。

・ 飼育下で得られた各種技術の生息地での応用。

・ 身近な野生動物の保護。

・ 園内で楽しく 過ごす。

・ 動物を見て楽しむ。

・ 動物について楽しく 学ぶ。

・ 家族の団欒。思い出の場所。

・ 日本獣医師学会誌・ 獣医学奨励賞( 学術賞) 受賞・ ・ ・ 「動物園飼いウサギのエンセファリト ゾーン症の臨床及び病理学的研究」 ( 旭山動物園)

・ 日本動物園水族館雑誌技術研究表彰受賞・ ・ ・ 極東地域の野生シジュウカラガンの羽数回復事業( 2002年仙台市八木山動物園) 、   ツシマヤマネコの飼育と繁殖について( 2003年福岡市動物園) など

4.

・ 動物園での学習キャンプ(サンディエゴワイルドアニマルパーク)・ 動物園内における教育的なパネルの展示

・ 教材としての骨格標本などの貸し出し。 出張講演

・ 教員向け研修プログラム

3.

・ 野生動物の人工繁殖技術・ ・ ・ 精子凍結保存技術、 受精卵移植技術、 人

工授精技術、 体外受精技術など

・ 血統登録、希少動物の繁殖計画の策定、 ブリーディ ングローン。 ( 国際種

の保存委員会(I SI S)、(社)日本動物園水族館協会)

・ ズーストック計画( 東京都)

・ 動物園生まれの個体の野生復帰。ゴールデンライオンタマリン( ワシントン動物園、アトランタ動物園など) 、アラビアオリックス( フェニックス動物園

など) 、カリフォルニアコンドル( ロスアンジェルス動物園、サンディエゴ動物園など)

・ 二ホンコウノト リの野生復帰の試み( 兵庫県立コウノト リの郷公園)

・ オオサンショ ウウオの保護活動(広島市安佐動物園) 、 保護されたオオワシの放鳥(旭川市旭山動物園)

2.

・ 動物の行動を見せる展示( オランウータンの空中散歩、 ペンギン舎の水

中トンネルなど) ( 旭川市旭山動物園)

・ 環境一体型展示( 大阪市天王寺動物園アジアの熱帯雨林)

・ 夜間開園専門の動物園( シンガポール・ ナイトサファリ)

・ スカイサファリ (園内をロープウェイから見学) ( サンディエゴ動物園)・ 充実したHP、動物園グッズの販売、通信販売(サンディエゴ動物園など)

1.

現代の動物園には多様な機能が求められている。 4つの機能は、動物園のポテンシャルの維持と国内外でのプレゼンス確保のためにも重要。

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動物園の役割の進化

出典: 世界動物園保全戦略(1993)

20世紀  分野:環境関連

 課題:生態系、種の保存

 関心:全体論的保全

     組織的なネットワーク 展示:心を奪う展示

自然保護センター( Conservation Center)

・・・環境資源の保全の場

 分野:分類学

 課題:種の多様性、生存適応

 関心:種の管理、種の繁殖

 展示:檻

見世物小屋的展示( メナジェリー: Menagerie)   ↓動物園( Zoo)へ ・・・ “生きた標本棚”

1 8世紀後半

動物公園( Zoological Park) ・・・  “生きた博物館”

19世紀

1999年 ズーラシア開園・気候帯別の展示・希少野生動物の展示・繁殖センターの設置・生息環境展示

1982年  金沢動物園一部開園・大陸別展示・希少草食動物の展示・無柵放養式展示

横浜市の場合

1951年  野毛山動物園  ・ サル舎棟、水禽舎など分類別の展示 ・ ゾウ、キリン、シマウマ、ライオンなど、   動物園にメジャーな動物種の展示  ・ 檻展示中心

 課題:動物生息地、行動生物学

 関心:共同管理、専門性発展

 展示:ジオラマ

 分野:生態学

欧米の動向

動物園の役割は時代により進化しており、 横浜市はその進化に対応して動物園を設置してきた。

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9

136

69

不明  

48

30

世界の動物園

4

2

3

3

3

295

126

112

467

202

716

245

194

220

179

0 50 100 150 200 250 300

横浜

東京

パリ

ロンドン

ニューヨーク

動物園数 年間入園者数( 万人)

年間経費*

( 億円)職員数(人)

動物園の面積(ha)

都市人口( 万人)

801

707

216

792

350

データ: ニューヨークは、 WCS の ANNUAL  REPORT  2003より。ロンドンは、ロンドン動物園とホイップスネード野生動物公園を運営するロンドン

     動物学協会のANNUAL  REPORT  2003より。     パリは、 INTERNATIONAL ZOO YEAR BOOK  Vol.38(2003)より。         東京、横浜は横浜市緑政局公園部管理課調べ、2003年度。注: ニューヨーク市には、このほかにも市直営の動物園が1つある。

世界の主要な大都市は複数の動物園を擁し、年間数十億円のコストを投入し、 100万人を超える入園者を確保している。

*: 年間経費には、 管理維持費の他、 広報宣伝費、動物収集費、 調査研究費、 保全プログラム経費などが含まれる。1ドル=105円、1ポンド=201円として換算。

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世界の動物園の経営形態

*世界動物園年鑑Vol.38(2003)の、 「 世界の動物園水族館」調査に回答した園のうち、記載された運営形態について、日本を含む、 アジア、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、アフリカなど37カ国を集計した。 なお、 水族館や海獣類中心の園館は除いた。

(100%=568施設)

市立( 直営・ 財団や基金による運営)

国立・ 郡立( 直営・ 財団や基金による運営)

財団で独立運営

民間( 個人・ 会社など)

民間だが非営利あるいは基金の支援あり

不明・ その他

約半分が国公立。 民間経営のものについてもNPO法人であったり、基金の支援を得ているものが多い。

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野生生物保全協会( WCS) の活動の全体像園の経営 環境教育活動 国際保全活動 広報・財務

・4動物園1 水族館のほか、 海洋科学

研究所及び野生生物保護センターを

運営

 

動物園

・ブロンクス動物園

・セント ラルパーク動物園(1988年) *

・プロスペクト 公園動物園(1992年) *

・ クイーンズ動物園(1993年) *

  *(  ) 内は、ニューヨーク市から

   運営を委託された年

・環境教育部門は、各施設へ

2 ~9名の教育担当者が配置

されているほか、来園者プロ

グラム、学校グループプログラ

ム、 実習生や教員の研修用の

ための担当者が28名いる

・58カ国で138のプログラムを実施

例:

①ガボン政府の国立公園の設立

②ルワンダ・ ニュングェの森の保全

③インドネシア・スラウェシの保護区

の管理

④ニューヨーク、コネティカット、

ニュージャージーにおける生物多様

性などについての調査

・「寄付集めと会員制度関連」

の部門 がある。 2003年の寄

付件数は1770件(個人、家

族、団体、企業など)

・「財務と管理」部門・・・予算

及び財務計画・財務・人事・購

買・収益の5課に分かれてい

・「広報」部門・・・政府関連・

情報通信・ マーケティング・ 行

事のマーケティング・テレビ及

び広告媒体・ グループセール

スの6課

動物園スタッフ  716名 スタッフ  56名 スタッフ  143名 スタッフ146名

4園の年間経費 ビジターサービス 国際的プログラム 補助費用

59億円 10億円 34億円 15億円

(5600万米ドル) (930万米ドル) (3200万米ドル) (1400万米ドル)

WCSの雑誌

1.5億円

(142万米ドル)

*野生生物保全協会= WCS : Wildlife  Conservation  Society1895年、 ブロンクス動物園建設のために、旧ニューヨーク動物園協会として設立。国内外での野生動物の保全活動も行う団体。 ニューヨーク市から3つの動物園の運営を移管。 1 9 9 3年、その設立の趣

旨に基づき、WCSと名称変更。          出典:   WCS  Annual  Report 2003  ( 1$=105円として換算)

ニューヨークの野生生物保全協会( WCS)は、動物園の経営を超えた活動を世界各地で行っている。

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財源の内訳100%=136億円(1億3,000万米ドル)

入園料収入

教育プログラム

会費

販売収入

投資収入

スポンサー収入寄付

非政府組織からの資金

公的資金

その他

経営体制

WCSの経営体制

*理事会には、 7つの委員会から成る常任委員会がある。**ブロンクス動物園が他の3園を統括している。

理事長

理事50人(半数以上が金融・ ビジネス関係者)

ニューヨーク市関係者  市長他6名

WCS最高経営責任者( CEO)

国際保全活動部門

ブロンクス動物園長**

環境教育部門

動物園施設部門

寄付集めと会員部門

セント ラルパーク動物園長

プロスペクト 公園動物園長

クィ ーンズ動物園長

財務と管理部門

広報部門

14の委員会教育と展示、 調査、 国際保全、 動物園施設、特別行事、情報、環境エンリッチメント など・・・

理事会*

野生生物保全協会(WCS)は、入園料収入(14%)以外に寄付やNPOからの資金など、多様な資金を得ている。

出典: WCS  ANNUAL  REPORT 2003

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2. 横浜市立動物園の現状評価

3園の整備過程をみると過去に横浜市が確固とした動物園戦略を展開してきたとはいい難い。しかし現時点での施設の規模と質、職員の能力と意欲、入園者実績等に照らし現状は他都市に比べ全く遜色がないといえる。

● 経営効率面での当面の課題は、3園のスケールメリットの追求である。但し、動物園はもともと固定費比率が高い施設であり、日常運営レベルでの効率改善の余地は限られる。経営形態の見直しや民間活力の導入の余地も合わせて考える必要がある。

● また、せっかくの施設と人材を活用しきれていないことも問題。特に集客・マーケティングに関しては予算、人員、体制が極めて弱体である。現状のままではせっかくの価値を市民に理解されないまま、集客減と過少投資の悪循環に陥る。

● 特に若手を中心とする職員の能力と改革への意欲は高い。幹部を含めた多くの職員は問題の所在も理解している。最大の障害は3園それぞれ及び本庁の間の柔軟な連携を推進しない現行の硬直的な経営体制である。

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横浜市立動物園の各園の特徴と配置

歴史と特徴

1.野毛山動物園( 1951年開園)

• 日本貿易博覧会においてクマやキツネなど動物の展示が喜ばれたことから、野毛山動物園が開園した。キリン、ライオンなど、動物園定番の動物と、 小動物のふれあいコーナーがある。 国内10番目に古い開園で、 親子3代で訪れる入園者もある。  

• 万騎が原ちびっこ動物園は1979年に分園として開園。家畜を主体に、小動物のふれあいコーナーがある。

2.金沢動物園( 1982年開園)

• 横浜南部地区の市民の森にも隣接した自然公園の中に建設された。 展示ゾーンを大陸別に分けた地理学的展示。 希少草食獣を中心に繁殖に取り組む特殊動物園。

3.ズーラシア( 1999年開園)  

• 横浜市の北西部のレクリエーショ ンの拠点、 また、 横浜市の総合動物園の役割を担うため、建設された。動物の展示場だけでなく 、園路も含めて生息環境を考慮した展示形態。

• 園内には、種の保存についてより深く 調査研究を進める繁殖センターもある。

*万騎が原ちびっこ動物園は、 野毛山動物園の分園

67種372点

31種181点

15種343点

110種1,044点

動物数

6人

1.4ha

万騎が原*

36人

3.3ha

野毛山

88人49人職員数

34.1ha12.8ha面積

ズーラシア金沢

<各動物園の規模  2003年度末現在>

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3 つの動物園を整備するまでの経緯

’ 75 ’ 82

’ 85

猛獣や希少動物

は新動物園へ(総

合動物公園基本

計画策定懇談会)

’ 80

新しい動物園のあ

り方(市方針)・・・

野毛・万騎が原・金

沢に新総合動物園

を加えた4箇所体

制とする。

’ 88

’ 91

野毛山は新動物

園へ移転

(野毛山再整備

検討委員会)

’ 94

野毛山移転を発

表、反対運動起

こる

’ 96

野毛山存続を決

定、動物の2割

は新動物園へ

( ズーラシア) ●’ 84

新動物園建設

(市政百周年記

念事業)着手

’ 99●

一次開園

’ 02、’ 03● ●

公開区域拡大

□’ 97

緑の協会への開

設準備業務委

託開始

□’ 95

緑の協会への委

託を方針決定

□’ 93

運営主体は準

公営型が望まし

い(新動物園懇

談会)

( 金沢) □

金沢自然

公園基本

計画

野毛山の

分園とし

て一部開

全面開園、

野毛山

から独立

● ● ●

部分開園

’ 92

見直し第1期4 園計画期 見直し第2期抜本見直し期

動物園のあり方

懇談会

//( 野毛山) ●’ 51

開園

●’ 99

リニューアル

●’ 02

’ 04

ののはな

館完成

市の全体、 動物園全体のあり方を見据えた整備と投資が行われてきたとはいい難い

市役所の動き

各園の動き’ 79

万騎が原

 (

分園)開園

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現状評価の対象

横浜市役所

市 長

緑政局

公園部

野毛山動物園 金沢動物園

(財)横浜市緑の協会

理 事 長

ズーラシア

(3) 経営体制

(2) 各園ごと

(1)3園全体

( 注) 万騎が原ちびっこ動物園は、野毛山動物園の分園。特に断り書きをつけた内容を除き、本報告では野毛山動物園の一部として扱った。

( 市直営) ( 財団 運営)

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(1) 3 園全体の運営

• 面積、投入コスト 、 人員、入場者数等の実績値を東京都、大阪市、名古屋市等と比較するとほぼ同等の水準(*1) となった。

• 娯楽、 集客面以外の調査、 研究、 教育、 種の保存( 保護) についても、入場者数国内3位、面積で7位(*2)という国内有数の地位にふさわしい多様な活動を行っている。

• 年間の支出の3 6%を自ら得た収入でカバーしており、名古屋市、大阪市に比べ収支効率は良い。但し、直営の2園については直営形態がもたらす経営の非効率がある。自律経営できる形態( 法人化と外部委託等) へ抜本的な見直しが必要。

• 全国の動物園の入園者数は90年代以降次第に減少している( 年平均3.1%) 。 それに比べると横浜市は金沢やズーラシアへの投資を行い、健闘してきたともいえる。 しかし近年は金沢の低迷とズーラシアの開園効果の減退が重なり、 減少傾向に歯止めがかからない状況にある。

*1 : 但し、建設コスト の回収や動物の収集費用は除外。

*2 : 社団法人日本動物園水族館協会加盟施設内での順位。 横浜市は3園合計値で比較した。

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動物園面積(㎡)

全園合計市民1000人あたり

年間運営コスト ※1( 万円)

全園合計入園者1000人あたり

職員数(人)

全園合計入園者1000人あたり

入園者数  202万人

うち市外居住者    49%※2

入園者数  198万人

入園者数  146万人うち市外居住者   

56%、※3

入園者数  467万人

2003年度実績データ: 横浜市・ ・ ・ 横浜市緑政局、他都市・ ・ ・ 社団法人日本動物園水族館年報、 名古屋市は年間運営コスト と職員数に植物公園分を含む。

※1  人件費を含む運営コスト ( 市一般財源負担額)※2  2003年度来園者アンケート※3 おんなの目で大阪の街を創る会( 2001年11月~2003年1月)

国内大都市間比較

国内の他の大都市と比べ、整備面積、投入コスト 、 職員数のいずれの面においてほぼ過不足がない。

(3園)

(3園)

(1園)

(1園)

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動物園の4 つの機能から見た横浜市立動物園の活動

・ 動物あるいは、 来園者対する様々な調査と研究活動によって、 科学

や教育活動への貢献、 希少動物の保護へ貢献する。

・ 大学との共同研究

・ 命の大切さについて知る。

・ 動物について知る。 ・ ・ ・ 行動展

示・ 動物や人間を取り巻く 環境について知り、考える。 ・ ・ ・ 生息環境展示

・ 環境エンリッチメント

・ 希少動物の繁殖の取り組み。

・ 野生復帰の試み。

・ 生息地外からの保全活動を行い、環境保全に貢献する。

・ 身近な野生動物の保護。

・ 環境エンリッチメント・ ・ ・ 動物の飼育環境の改善、 行動展示

・ 飼育下で得られた各種技術の、生息地での応用。

・ 家族の団欒。 ・ 思い出の場所。

・ 楽しく過ごす。・ 楽しく学ぶ。

・ 動物の素晴らしさを感じる行動

展示

・ 動物を見て楽しむ。

・ 文部科学省総合研究受託事業 

・ 動物園技術者研究会発表  1 3題

・ 継続的な調査研究

        ・ 鳥類の種ごとの雌雄判別法の確立 

        ・ 各種動物の精子の保存法の確立 

・ 2004年日本動物園水族館雑誌技術研究表彰受賞・ ・ ・ オカピの繁殖 

4.

・ 総合学習や学校団体の受け入れ(小中高88校)・ 実習生の受け入れ(55名)・ 小・ 中・ 高・ 成人向けサマースクール

・ 出張講座、 教職員のための動物園活用講座

・ 動物標語コンクール(年1回)・ 児童動物画コンクール(年1回)  ・ 動物感謝祭  

3.

・ 希少動物の繁殖 オカピ、クロサイ、カンムリシロムク、 カグーなど

・ 日本動物園水族館協会繁殖表彰動物種  これまでに7 1 種

・ 日本動物園水族館協会種保存委員会種別調整(国内の繁殖計画の策定など) を5種( マレーバク、カンムリシロムク、ホオアカトキ、インドセタカガメ、ハミルトンガメ) 担当。 

・ 野生傷病鳥獣保護事業    71種736点・ カンムリシロムク野生復帰事業 インドネシアへ20羽提供。カンムリシロムク保護の現地ワークショ ップへの参加

・ 繁殖センター( 雌雄判別、 ホルモンの動態調査、精子の凍結保存など・・・)

2.

・ 野毛山: 給餌時間の動物ガイド (随時) 、動物クイズ・ 金沢: 動物わく わく 体験(日・ 祭) 延べ194回、企画展示( 年8回)・ ズーラシア: ・ スポットガイド (毎日) ・ ズーラシア教室( 毎週) ウォーキングツアー(週3回)・ 愛称募集( 繁殖個体対象)

・ 夏期の夜間開園( ナイトズーラシア、ナイト金沢)

1.

(

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他都市との収支比較

データ: 社団法人  日本動物園水族館協会年報

人件費関連:2,111    

委託料:1,119   

その他:1,534

支 出(

4,76

4)

収 入(

1,911)

入場料収入:1,781

その他収入:  130

純行政コスト2,853

純行政コスト(

2,853)

 上野   1,408 多摩    275 井の頭   98

人件費関連:999

    

委託料:746

支 出(

2,69

1)

収 入

(496)

純行政コスト2,195

純行政コスト

(2,195)

その他:946

その他収入58

入場料収入:438

人件費関連:961

    

委託料:341

支 出(

1,92

5)

収 入

(287)

純行政コスト1,638

純行政コスト

(1,638)

その他:623

その他収入42

入場料収入245

人件費関連:1,162    

委託料:854

支 出(

3,04

7)

収 入

(1,094)

純行政コスト1, 953

純行政コスト

(1,953)

その他:1,031

その他収入28

入場料収入459

経営事業収入  607

○支出全体に対する

  入場料収入の割合 15%

  総行政コストの割合64%

37%

60%

16%

82%

13%

85%

年間の支出の36%を自ら得た収入でカバー。大阪市や名古屋市よりも優れている。

( 単位:100万円、2003年度)

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各園別の収支構造

野毛山動物園

(1951年開園)

金沢動物園

(1982年開園)

ズーラシア

(1999年開園)38,276百万円

263百万円

2,541百万円コスト 648百万円

    コスト2,010百万円

収入1,017百万円

年間コストのカバー率は11.7%

年間コストのカバー率は50.6%

年間コストのカバー率は0.5%

*1 動物収集コスト ( 本庁部門で計上) を除く 。なお、ズーラシアの初期動物収集コストは3,936百万円、他の動物園は不明。*2 運営コストには、市職員( ズーラシアへの派遣職員含む) の退職手当引当金は計上していない。

*3  非常勤嘱託員を含む職員数で積算。

5,540人

15,696人

12,040人

コスト 389百万円収入2百万円

収入76百万円

ズーラシアについては初期投資が大きかったものの、年間の運営コスト についてはその半分を自ら得た収入でまかなっている。

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収支構成

総支出額の64%を市に依存。 コスト の大半を固定費が占め、 現場レベルでの効率改善の余地は限られる。 収支効率を上げるためには、経営体制の見直しが不可欠。

支 出(3,047百万円) 収 入(1,094百万円) 純行政コスト(1,953百万円)- =

固定費 人件費関連: 1,162百万円  給料手当 996百万円  賃金   84百万円           等

固定費 その他:    1,279百万円    

変動費:  606百万円入場料収入:   459百万円

経営事業* 607百万円

その他:       28百万円

差引: 純行政コスト    1,953百万円

※  収入内訳  ・ 入場料収入: ズーラシア 388百万円、金沢 71百万円  ・ その他: 土地使用料20百万円、国・ 県等からの補助金2百万円などである。  ・ 経営事業収入: 主として、ズーラシアにおける飲食・ 売店収入334百万円及び駐車場収入224百万円である。       ※ 固定費には、警備・ 保守点検・ 清掃・ ゴミ処理等の委託費のうち施設維持管理に最低限必要なもの、動物飼育費、事務費・ 光熱水費の8 0 %( 管理 

     業務に付随して生ずる負担) 等を計上※ 変動費には、入園者数の増減により変動する経費( 警備誘導・ 案内業務、券売、園内マップ作成、普及活動費、美観維持・ 美化清掃など) を計上。

64%

15%

1%

20%

(2003年度)

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動物園入園者数の推移1990 2003

55825940

54675720

51554941 4966

4629

4135 4147

369039484058

3627

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

※全国の動物園・ ・ ・ 社団法人日本動物園協会加盟施設※※横浜市は、野毛山( 分園のぞく ) 、金沢、ズーラシアの3園合計。減少率の算定上、’99、’00はズーラシア開園に伴う異常値として除外

03

横浜市の動物園入園者数(万人)

90 94 98 02

全国の動物園入園者数(万人) ※横浜市を除く99

ズーラシア開園

全国平均・ ・ ・ △3.1%/年

横浜市・ ・ ・ △1.8%/年

9 0年代以降、全国的に入園者数は減少傾向。その中にあって横浜市は健闘してきたが、近年は厳しい状況。

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利用者数推移

入園者数は減少傾向→年平均△6.6%

金沢動物園の段階的整備により、一時期年平均10%を越える増加、その後は横這いを保つ

ズーラシア

金沢

野毛山

再び減少傾向に転じる。ズーラシア開園によりいったん全体としては飛躍的に増加。 しかし、その後再び減少傾向へ。→年平均△3%

( 単位:万人)

ズーラシアの開園により総数の水準は上がったが、開園後すぐに落ち込み、全体としては年率約3%ずつの減少傾向( 全国平均並み) 。

万騎が原ちびっこ

     動物園 開園

▲金沢

動物園 開園

▲▲ 金沢 部分開園

▲ ▲金沢 全面開園・有料化

       大人(

高校生以上)三百円

▲ズーラシア 開園

  金沢入園料値上げ

大人五百円・中人三百円・小人二百円

△東京ディズニーランド開園

△東京ディズニーシー開園

△八景島シーパラダイス開園

▲野毛山再整備(

99〜02)

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(2)  各園の集客・ マーケティング

●  9割方は家族やグループで娯楽・ レジャーを目的に来ている。集客・ マーケティングにおいては、ディズニーランド、映画館、スポーツ施設、水族館など首都圏におけるレジャー施設間の競争を意識した打ち手が必要である。

●  近年の野毛山のリニューアル効果や旭川市の旭山動物園の成功事例に照らすと、設備投資が集客に与える効果は大きい。ズーラシアを始めとする今後の設備投資は利用者の潜在・ 顕在のニーズや競合を分析した上で戦略的に行う必要がある。

●  各園の来園者のうち他の園に行ったことのない人の割合が3~6割を占める。3園合同もしく は連携した集客、マーケティ ングの余地は大きい。直営の金沢と野毛山に関しては集客・ マーケティングの体制・ 人員・ 予算そのものが存在せず、 ズーラシアについても規模に見合った質の高い展開ができていない。

●  金沢については他園に来園した人の間ですらその存在があまり知られていない( 不認知率30%) 。また展示や顧客サービス面の随所に改善の余地が残されている。ズーラシアへのシフト を理由とした過少投資が続けられてきたが、 このままでは中途半端・・・ 存続させるなら内容と体制の抜本的刷新が不可欠。

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横浜市の動物園の利用形態

利用目的(100%=269人)

利用者タイプ(100%=269人)

データ: 利用者質問紙調査 マーケティ ング部会

家族やグループでレジャー・ 娯楽目的で来ている人が多く 、 テーマパークや他の施設等との競争にさらされている。

調査日:2004年11月26日( 金) 27日( 土) ( 野毛山、金沢、ズーラシア)        11月30日(火) 12月4日(土) ( 万騎が原)

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旭山動物園の継続投資

*日経4紙、読売、朝日、毎日、産経、北海道新聞の年度合計

新聞記事件数*(件)

来園者数( 万人) 年度

新規の投資や企画

「 旭山動物園騒動」•ゴリラ、キツネがエキノコックスで感染死、 一時閉園決定•過去サル( ’90)、ゴリラ (‘92)が感染死していた事実も報道される

フライングバードハウス、こども牧場

せせらぎ水路、もうじゅう館

サル山、 冬季開園

ペンギン館

新オランウータン舎、 雪の中の動物園

ほっきょくぐま館

‘ 97年以降大規模な投資を継続‘ 03年度まで約10億円程度の累積

巨額の投資による話題づく り…投資がプローモーショ ン効果

投資に比例した集客推移

旭川市の旭山動物園の成功要因はこまめで継続的な投資、さらにそれを広く 外に発信し、戦略的な集客努力を展開している。

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他園に関する情報提供とプロモーションの不足

  

各園の来園者に質問をしてみると他園の存在を知らない、あるいは行ったことがない人がかなりいる。

N=209

N=210

N=179

<行ったことがない人の割合(%) > <知らない人の割合( %) >

注: 数字は対象となる園以外の他の3 ヵ所の来園者に対して現地で質問した際の結果を加工したもの。 例えば、 「 野毛山に行ったことがない人の割合」 とは、 野毛山以外の動物園来園者のうち、 「 野毛山に行ったことがない人の割合」 である。

調査日:2004年11月26日( 金) 27日( 土) ( 野毛山、金沢、ズーラシア             11月30日(火) 12月4日(土) ( 万騎が原)出典: 2004年万騎が原を含む4園での利用者質問紙調査、 マーケティ ング部会

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マーケティング・ 集客のための予算と体制

※予算は、野毛山・ 金沢は主としてチラシの作成( 紙・ インク代) などで、既定予算はなく 他経費から流用。ズーラシアは主として鉄道駅、道路等の交通広告。いずれも人件費を含まない。※野毛山、金沢は、集客、イベント企画等はテーマ別にプロジェクト方式で検討。

ズーラシア以外の直営の2園については、マーケティ ングと集客のための予算と人員が配慮されていない。

予  算 人 員具体的活動内容等

野毛山

金 沢

ズーラシア

・ チラシの作成など約20万円( このための予算がなく 他の費用から流用。紙・ インク代など)

・ チラシ、ポスターの作成など約60万円( このための予算がなく 他の費用から流用。紙・ インク代など)

・ 鉄道駅、道路等の交通広告など 約1600万円( 駐車場、飲食、物販などの付帯事業の収益を充てている)

・ 集客担当  課長1、  職員2・ 広報担当  職員2

有料広告

・ 専任なし

・ 専任なし

旅行代理店への営業活動

独自商品開発

企業等との特約利用契約

パブリシティ

雑誌・ TV等への情報提供

○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○

市場調査

学校等との連携

・・・実施している事項

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規模に応じた人員と予算の投入の必要性

0.20   3.353野毛山

16 534106ズーラシア

12 6304225国営A公園

0.60  12.827金沢

26 411686国営B公園

広報宣伝年間予算

( 百万円)

広報・ 企画等

専任職員数

(人)

面積

( ha)年間

利用者数

(万人)

施設名

国営公園等の有料の集客施設の多く は、専任職員5名程度で年間1500万円程度の広報宣伝費を使っている。野毛山と金沢についても職員2名年間500万円程度の予算を投ずることにより集客水準をアップさせる余地がある。現状は明らかに過少投資。

出典:

 国営公園・ ・ ・ 財団法人公園緑地管理財団   2004年度見込み

  横浜市立動物園・ ・ ・ 横浜市緑政局公園部管理課 2003年度データ

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野毛山動物園の改善課題

•売店やレスト ランがない

•老朽化した設備の更新( 計画あり)

•授乳室など母子専用の部屋がない

•学校、保育園、幼稚園等を受け入れる際の施設・ 設備が不足

•引き続き動物の飼育環境の向上が必要

•観察して楽しめるような、動物の動きを引き出す展示の工夫

•興味をひき、伝えたい情報、必要な情報を伝えられる解説板の工夫

•体験実習や、 研修実習の受け入れ要望に対応できる体制づく り

•利用形態にあわせ遊具( とくに教育遊具) 、ベンチなどの整備拡充

•乗入れ沿線での交通広告

•みなとみらい地区との共同プロモーション

•入門編動物園として、近隣保育園、幼稚園、小学校への勧誘

•再整備以降、来園者が回復している

•子供のいる家族連れが主体

•若いカップル、夫婦のみによる利用も比較的多い

•電車での来園が約半数である

•近隣住民の散策の場、みなとみらいからの立ち寄り利用者が多い

( 出典) 懇談会、マーケティングおよびCS向上作業部会記録

野毛山の課題は、 ソフト面での充実とマーケティ ング上の工夫

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ズーラシアの改善課題

•動物が見えにく い

•園路が非常に長く 、休憩施設・ ショートカットコースの拡充やト ラムの運行などの要望が多い

•臨時駐車場から、 入場門まで遠い。ベビーカー利用者が不便

•雨宿りスペースが少ない

•体験型施設やビジターセンターの未整備

•雨天時でも楽しめる展示や企画の工夫

・ 動物の行動を引き出す工夫。「 動物を探す楽しみ」 が持てるような情報発信

・ 季節の花を考慮した植栽計画、花のガイドツアーなどによる、園内の雰囲気そのものを心地よく楽しめる環境整備

•途中入退園を認める

•会員向け特別プログラム、子供の体験プログラムなど、再来園者確保のためのプログラムを充実

•割引制度などの料金オプショ ンの認知拡大

•家族娯楽情報誌、ドライブ情報誌などへの集中掲載

•関東広域圏からの誘客

•計画利用者数( 年間85万人) を大きく上回り、100万人代を維持

•子供のいる家族連れ主体

•カップルなど若い世代の利用、団体利用も比較的多い

•集客圏は非常に広域

•再来園率が比較的低い( 43%)

( 出典) 懇談会、マーケティングおよびCS向上作業部会記録

ズーラシアの課題は、 リピート 比率を高めるきめ細かな工夫と投資

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金沢動物園の改善課題

•高速道路からの動物園への入り口がわかりにく い。並木方面から高速側駐車場へのアプローチができない

•コアラバス(駐車場から公園入り口まで )の輸送人数に限界あり

•高速駐車場、 コアラバス終着所から、動物園入り口までが遠い

•レストランを利用するには、一度動物園から出なければならない

•雨天時には見られない動物がある•園内に起伏があり、移動手段の導入の必要性あり。•希少動物の繁殖のためのバックヤード不足•体験型施設・ 設備が不足•植物区を含め園内サインの改良が必要•植物区と動物区が2極対立構造になっていて、周りが動物区の成長を阻害している。•なかよしトンネルが意味不明、何を伝えたいのかわからない

•来園者にわかりやすい、動物園までの、 導入経路の告知対策

•展示している希少草食動物の現状や、希少性、保全の必要性がわかるような解説板の工夫

•観察して楽しめるような、動物の動きを引き出す展示の工夫

•野毛山とズーラシアの間で、別の特色を感じられる、印象に残る工夫

•雨天でも楽しめるイベントの計画や、 雨天時来園特典などの導入

•体験学習や、ポイントガイド、ズースクールなどの楽しく 学べる機会の拡充

•認知度向上のためのプロモーション

•希少草食動物がいるというアピール強化

•動物、植物に関して総合的に学習・ 体験できる場として、自然公園植物区と一体的な運営を推進。名称変更も要検討

•アウトドアレジャーを満喫できる施設( キャンプ場、 BBQなど)の拡充

•子供連れの家族が主体

•平成1 1年度の入園料値上げ( 子供有料化) とよこはま動物園ズーラシア開園の影響で入園者数が大幅減少したものの、その後は維持

•商圏は広域であるが、植物区のみを利用し動物園に来園しない人も多い

( 出典) 懇談会、マーケティングおよびCS向上作業部会記録

金沢は誰の目から見ても明らかな改善課題が山積している

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1200台

1500台

駐車場

バスで約15分

バスで約15分

最寄り駅

からの距離

・ レストハウス2ヶ所

・ うち1ヶ所に売店

<動物園外>

・ レストラン

・ 売店1店

・ 遊具広場

・ バーベキュー広場

・ ギフトショップ2店

・ レストラン1店

・ 軽食 2店

・ 遊具広場2 ha・ 芝生広場2 ha

付加的サービス

5,000円

5,600円

1家族での費用※

27種137点

38種201点

動物点数

( 哺乳類)

大人    500円高校生 300円小中学生 200円駐車場1回

        600円

12.8ha自然公園全体では

58.5ha

金沢

大人    600円高校生 300円小中学生 200円駐車場1回

    1,000円

34.1haズーラシア

料金面積

ズーラシアと金沢動物園の比較

※「 1家族での費用」 は、大人2名、子供( 小学生) 2名、自家用車での来園、昼食・ 飲み物代3,000円を想定。

金沢は規模、動物の数、付加サービスなどでズーラシアに大きく は劣らない。相当の集客・ マーケティ ング体制と内容の刷新が必須。

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(3)  全体の経営体制

● 全国のほとんどの「 公の施設」 と同様、具体的な達成目標が設定されていない。 職員はまじめに仕事をしているが現場レベルの管理・ 評価の指標や体系が存在しない。そのため現状を変えたり新しいことに挑戦することを促す環境がない。

●  3園が別個の独立のものと位置付けられている。そのためスケールメリットが追求できるはずの分野で非効率が起きている。 市役所本体の担当部署は手薄で日常の業務レベルでの調整機能を十分に果たせておらず、ましてや3園の役割分担やコンセプト、さらに全体の戦略の見直しをリードできる状況にない。

●  外部環境への対応能力や経営効率について、直営の2園を財団委託したズーラシアと比べると、 後者の優位性が目立つ。今後共、直営を維持すべきかどうか見直しすべき。

●  横浜市の動物園の整備は、 必ずしも首尾一貫した方針に基づいて展開されてこなかった。 また、現在においても市役所内で、動物園の使命・ 役割について定見がない状況にある。

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目標設定・ 評価の仕組みが事実上存在しない

・ 市と財団との協約に基づく 目標達成状況を公表する予定

・ 市と財団との協約に基づく 目標達成状況の振り返りを実施

・ 緑政局運営方針の振り返りを実施

・ 財団理事会での決算と事業実績の審査を実施

・ 個別具体業務レベルでの評価・ 指標は存在しない

・ 横浜市と財団との協約において、 受託費、入園者数、協賛企業数などを目標設定

・ 入園者数123万人・ 協賛企業数6社

・ 受託費前年度比△3%

ズーラシア

・ 制度が存在しない・ 園の事業全体に関する自己評価制度はない

・ 業務に関する評価指標は存在しない

・ 予算の枠が、経費節減目標としての、とりあえずの目標。具体目標が存在しない

野毛山

及び

金沢

第三者評価自己評価管理指標設定年次目標設定

※網掛けの説明        ・・・制度有り      ・ ・ ・ 何らかの形式は存在      ・ ・ ・ 全く無し

各園の目標管理体制

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公式文書にみる各園の具体目標○横浜市動物園条例 第2条 横浜市立よこはま動物園、横浜市立野毛山動物園及び横浜市立金沢動物園は、次の事業を行う。  (1)教育的配慮のもとに、動物を収集し、飼育し、展示すること。    ( 2 ) 動物に関する知識、動物愛護思想及び環境教育の普及活動を行うこと。  ( 3) 動物に関する調査研究を行うこと。  (4)野生動物の保護及び繁殖を行うこと。  (5)野生動物の救護活動を行うこと。   ( 6 ) その他前各号の事業に付帯する事業 

今年度の目標 

条  例

○野毛山動物園

動物園の運営及び施設の維持管理並びに動物飼育等を適切に実施する。

自然や生命に対する関心と理解を深めるため、市民参加によるイベントの実施や情報季刊誌の発行を行う。

( 平成16年度緑政局予算 説明資料より)

○ズーラシア

アニマルペアレント 制度の立ち上げや協賛事業及び物販事業等に積極的に取り組み、 さらなる経営改善を図る。

レクリエーショ ンや教育普及をより充実推進するため、来園者、学校及び一般市民に対し、動物や環境に関するさまざまな情報を広域的かつ効率的に提供する。また、動物園の魅力を伝えることにより、来園を促す広報活動を展開する。

園内施設の維持管理、来園者へのサービス、飼育管理、環境教育、植栽管理及び施設改修を行う。

動物園内の便益施設等の経営及び集客促進対策事業を行う。

( (財)横浜市緑の協会  平成16年度事業計画より)

○平成16年度緑政局運営方針・ 緑の環境学習の推進 自然環境や緑の大切さへの理解を深めるため、学校などと連携しながら、公園、動物園、市民の森、こども植物園などの フィールドを活用し、緑の環境学習を推進します・ 動物園のあり方の検討 3動物園( 野毛山、金沢、よこはま) の今後のあり方について検討を進めます・ 企業・ 市民の支援拡充 動物園、公園など、さまざまな「 緑」 に対する企業や市民からの支援の拡充を進めます

○金沢動物園

金沢動物園の運営及び公園の維持・ 管理並びに動物飼育等を適切に実施する。

動物園の普及啓発及び横浜市動物園友の会補助を行う。

( 平成16年度緑政局予算 説明資料より)

公式文書を見る限り各園のビジョ ンや戦略は抽象的かつ戦略性が感じられない。 また、 具体的な数値目標も掲げられていない。

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3 園の連携不足

せっかく の3園体制を生かしたスケールメリットの追求がなされていない。

• 市と財団の会計制度の違い

• 経営主体の違いに起因する、 他園の経営に対する無関心

• 直営の場合そもそも経営意識が希薄になりがち

• 本庁に実務担当の部署がない

• 共同購買の拡充

• 不用物品などの相互融通

• とく に園外で行う事務( 本庁での端末入力など) を集約し、効率化を図る。

• 共同購買はまれ。 飼料の一部を野毛山・金沢間で実施している程度

• 本庁などの端末へのデータ入力、調査・照会事務など集約可能な業務をそれぞれ各園が行っている

経済性の追求

• 人事交流が限定的。 とく に協会から市への出向制度がない

• 飼育職・ 動物職職員は計7 1名

   うち、協会22名

      市  49名

      市からの派遣5名

• 各園がそれぞれ別個に広報を実施

• 3園共同でのパブリシティが年1~2回ある程度

• 継続的な誘客営業はズーラシアのみ

• 顧客動向のリサーチはしていない

• 動物園の進化に沿って各園の展示手法が採用されてきた。 そのため各々ユニークな特徴を持つ

• しかし、異なる手法の特性をPRやプログラムの面で活かせていない。

• 教育普及担当者会議を平成1 6 年度から定期的に実施

実態

• 経営主体が異なるため、 採用と人事の制度がバラバラ

• 市役所本体においては、 少数特殊職種に対する人材育成の体制が弱い

• 人事交流を拡大。 多様な施設を経験することによる能力開発を図る

• 職員採用を一本化することで優秀な人材を確保

• 共通の人材育成ビジョ ンとプログラムの策定

人事

• 各園のコンセプトが不明瞭なためPRしにくい

• 3 園を総括する機能が弱体

• ズーラシアといえども民間並みの高度なマーケティ ング能力は不足

• 同一テーマでの共同広報

• 各園ごとの小規模PRを整理統合し、より大規模に実施

• ズーラシアのマーケティ ング関連のノウハウを野毛山、 金沢に移植、 共有化

• リサーチは専門チームを組んで実施

マーケティング

• 人事交流が不活発で他園の実態がお互いによく 分かっていない

• 各園の「 自律・ 自主・ 自前主義」 が悪い方向に作用

• 同じ動物でも園によって異なる見せ方があることをアピールしたり、異なる生活シーンを見せる

• 他園に行けば見られる動物を相互に紹介しあう

• 3 つの動物園を回る連続講座プログラムを実施

動物展示・ プログラム開発

阻害要因連携案連携課題

( 出典) 懇談会、職員ヒアリング等議事録

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現在の組織体制

市  長

緑政局長

公園部長

管理課長

管理係長

飼育係長

《  野毛山動物園、 金沢動物園 》 《  ズーラシア( 横浜市緑の協会)  》

理 事 長

園長( 常務理事)

副 園 長

管理課長

営業担当課長

集客担当課長

動物課長

第一係長

財務係長

経営企画係長

施設係長

安全担当係長

庶務係長

第二係長

金沢園長野毛山園長

管理係長

飼育係長

動物園担当係長

他 2係

全体を統合的かつ専門的に見る体制がない・・・ 唯一あるのは三園調整会議だけ

・・・「 三園調整会議」 出席者

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3 園調整会議の問題点対   策実   態

( 参加者)-各動物園の係長以上ほぼ全員-事務局は公園部管理課

( 議題)-イベント 等の開催情報や実施内容の調整などの実務レベルから、 事業方針まで雑多で総花的

 (例) 2005年2月の議題 1 各園日程  ・・・今後1 ヶ月程度の行事その他予定2 あり方懇談会 マーケティング部会とCS向上   部会合同拡大会議について  ・・・2月9日実施の標記会議の概略報告3  横浜市動物園友の会について  ・・・新年度事業等について4 ズーラシアでの3局合同イベントについて  ・・・ 3月13日に実施する標記イベント の概要説    明5   動物収集評価委員会について  ・・・日程の連絡、 委員会資料は別途作業チー  ムが準備、あわせて2004年度動物収集の進   捗状況の報告6 その他

問 題 点

・ 参加者が多すぎて意見が一致しにく い。かえって責任の所在があいまいとなる場合もある

・ 事務局が弱体で統括する権限と責任をもっていない

・ 課題のレベルがバラバラ

・ 報告の場になっていて、提案をする場になっていない。 これでは現場の欲求不満がつのる

「3園調整会議」 は3園調整を行う唯一の場であるが、十分に機能していない。

・「 経営評価」 「 イベント・ プログラム調整」等テーマごとに会議を設置すべき

・ 開催主体の明確化と会議そのものの定期的な評価・ 見直し

・ 園長レベル、係長レベル、担当者レベルなどの階層別会議を開催

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統括体制や管理運営上の問題点

・ 職員数に比して管理職や係長の管理スパンが広範囲。 業務の詳細や個々の職員の意見を把握しにく い

・ ローテーション職場( シフト勤務)のため、 全職員が集まる機会がほとんどない

・ 全体での意見のとりまとめはもとより、 全職員への連絡事項の周知にも苦労

・ 結果として管理部門と現場との連携が、総じて不足

・ 緑政局の各部課がそれぞれの事業について個別に連絡を行う体制( 緑政局内に緑の協会に関わる業務を専門に扱う部署は存在しない)

・ したがって、個々の部課では緑の協会の全体を見渡した調整はできない

・ 動物園に関しては動物園部のみとの連絡であり、緑の協会としての事業執行への配慮が少ない

・ 公園部は4課、2担当課、4公園緑地事務所、 2動物園を抱える。 公園部長の管理スパンは非常に広い( 各課、各事業所での自律的な運営が強く求められる構造)

・ 本庁内で動物園を専門に担当する部署は管理課内の係長級の組織でしかなく 、各園を統御しきれない

・ 一方、課をまたがる事案の多く の調整が動物園担当係に委ねられている

3 .管理部門と現場との連携体制

2 . 緑の協会と市役所の連絡体制

1 . 公園部内の統括体制

出典: 横浜市、緑の協会並びに職員へのヒアリング

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( 財) 横浜市緑の協会の主な事業(2003年度)

(財) 横浜市緑の協会は、 動物園運営以外の多様な業務を実施している。

特別会計 20億1,711万円

うち受託費 9億854万円

・ よこはま動物園の管理運営事業を横浜市から受託するとともに、普及啓発事業や、 動物園内便益施設の経営などを行う。

よこはま動物園事業

一般会計 3億7,548万円

特別会計 1億6,936万円

・ 公園駐車場、売店の管理・ 経営、公園内などに自動販売機の設置、洋館や古民家での喫茶室経営やホールの貸出しなどを行う。

経営事業

 特別会計 2億8,168万円・ 横浜自然観察の森に隣接して、宿泊施設「 上郷・ 森の家」 を経営し、市民のふるさと意識や連帯感の醸成と、体験学習を通した青少年の健全育成を図る。

横浜市民ふれあいの里「 上郷・ 森の家」 事業

一般会計 8億8,314万円・ 横浜市からの委託により、横浜市が設置する運動施設、古民家、レストハウスその他多様な公園施設の管理運営を行う。

・ 花やぐ横浜事業等、横浜市からの業務委託により公園関連及び緑化関連事業を行う。

受託事業

 一般会計 5,195万円 ・ 季刊誌発行等の広報事業、園芸諸団やMM21地区の緑化を推進する団体等への助成を行う。

自主事業

 特別会計 7,907万円・ 「 よこはま緑の街づく り基金」 の造成を行い、基金運用益により、普及啓発事業、緑化奨励事業、緑の街づく り事業、調査研究事業等を実施する。

・ これらを通じ、緑化への関心を高め、地域住民等による自主的な緑の街づくりの支援を進める。

よこはま緑の街づく り基金事業

年間事業費予算額内                   容事業名称

※一般会計は、表中に記載したほか、管理費、特別会計繰入金等、約4億3,900万円がある。

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市役所直営による運営の是非

・ 巨大組織ゆえに事業の細部にまで管理部門のチェックが行き届かない。 情報伝達や意思決定にも非常に時間がかかる

・ 経営危機を身近に感じないため危機感が薄く なりがち

・ 会計制度などが動物園のような事業に適さず、運営に柔軟性を欠く

・ 動物園の経験のない人が園長につく ことがままある

・ 半世紀以上に渡って動物園を運営してきた経験とノウハウ

・ 専門職種として動物職を採用

・ 短期的な収支や入園者数の増減に左右されず安定した経営ができる

・ 都市公園に該当する動物園の場合、 都市公園法の諸手続き( 許可等) と事業実施を同一組織でき、 効率的

横浜市の動物園の場合

( 付加事項)

・ 官庁は縦割り組織であり、 法令遵守には向いているが、 顧客向けサービスなどへの対応能力が低い

・ 効率を無視した「 公益性」 の追求に陥りがち

・ 各種の制度・ 規定に縛られ、 物品発注などの日常業務ですら柔軟で迅速もできない

・ 歳入と歳出が分離しており、 収支状況に応じた経営の伸縮がしにく い

・ 公務員の身分保障に安住しがち

・ 法令による公平性遵守などの規定が明確

・ 経営効率を過剰に意識することなく 公益を追求できる

・ 現場部門と政策・ 企画部門が同一組織内に存在するため連携がとりやすい

一般論

デメリットメリット

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歴代園長の専門性

      3

○      2

野毛山  1

      7

      6

      5

○      4

     11

○○     10

○○      9

      8

○     13

     12

①専門性

○○     15

     14

③在職   期間

②経験

( 注) 施設名称右に付した数字は、園長の代を示す。また、①から③までの分類は、下記のとおり。①専門性: 動物に関する専門性がある場合=○・ ・ ・ 職種によって分類。動物職、獣医師職、生物職を専門性ありとした。 結果は獣医師職のみ。②経験: 経験がある場合=○・ ・ ・ 園長着任以前に動物園での業務経験がある場合を経験ありとした。③在職期間: 長期間在職した場合=○・ ・ ・ 横浜市における通常の管理職異動スパンが2~3年であることから、 3年を超える場合、長期間であるとした。

○○        2

○繁殖センター1

○○        3

○        3

○○○        2

金沢動物園1

○        5

○        4

①専門性

1.8年

在職中○        4

○○ズーラシア 1

③在職期間

②経験

歴代園長は、 様々な職種の課長級( 直営) がなっており、在職期間が短く 、専門性や経験が担保されていない。

補足: 野毛山・ 金沢の園長は課長級、 ズーラシアの園長、 副園長は部長級

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指定管理者制度について

指定管理者制度 横浜市の現状

「地方自治法の一部を改正する法律」の施行(2003年年9月)

「指定管理者制度」の創設

目的:多様化する市民ニーズに、より効果的、効率的に対応するため、民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図るとともに、経費の節減を図る。

民間事業者も横浜市の代行者として「公の施設」の管理が可能となる。

管理委託をしている「公の施設」は、2006年9月までに「指定管理者」か「直営管理」か、を決定。

日本赤十字社みなと赤十字病院

(財) 横浜市緑の協会岡野、日野中央、岡村、

入船、山手、常盤、富岡西

各公園

横浜・ 八景島グループ潮田、台町、日の出川

各公園

緑とコミュニティグループ神の木公園

(財) 横浜市芸術振興財団横浜市磯子区民文化センター「 杉田劇場」

(財) 横浜市芸術振興財団横浜市民ギャラリー

指定管理者施設名称

移行状況

経過措置期間が終わる2006年9月1日までに、従来

外郭団体等に委託してきた施設については、原則

として指定管理者制度に移行する。

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市役所職員の動物園に対する見方

積極支持型 現状肯定型 懐疑型

・ 環境や命の大切さを学習する場として、動物園は極めて重要

・ 横浜は国内の動物園の中でもリーダー格。見本となるような内容と規模をめざすべき

・ 動物園は進化する存在。野毛山、ズーラシア、金沢はそれぞれ違った役割を担うべき

・ 世界の大都市は全てそれなりの動物園を持っている。あって当然の施設で維持すべき

・ 横浜市は南北に長く 人口も多い。現在の3園の配置は結果として妥当。予算、人員も過剰ではない

・ 動物園は、緑や自然の保全のためにもある。他の用途に転用する必要もないので今のままでよい

・ そもそもなぜ市役所が希少動物の繁殖や保護をやる必要があるのか疑問。国やNPOがやるべき仕事

・ 市外からの利用者が5割以上。 市民のための施設とはいいにく い

・ ズーラシアを作る時に金沢は見直すべきだった。野毛山の廃止もできなかった。結果的に3園持つことになってしまった

動物園の存在意義については、 市役所職員の間に共通の考え方がない。 それぞれに納得できる多様な考え方が混在する状況にある。

( 出典) 懇談会、職員ヒアリング等議事録

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●  市役所が取り組むべき課題は大きく 3つのレベルに大別できる。

・ レベル1 :  各園の現場改善活動

・ レベル2:  3園の連携とスケールメリットの追求

・ レベル3 :  市役所が行う基本戦略と経営体制の見直し

● レベル3の基本戦略と経営体制の見直しにおいては、 直営2園の経営体制を見直し、 3園の一体運営や、将来的には動物園専門の事業組織に運営させることを検討すべき。 また、 それに向けた過程となる形態として、当面は一つの財団のもとで、一元的な経営体制をとるべきである。なお、経営面においては、本庁担当部門と3園が一緒になって、 3園全体と各園の抜本改革案を同時かつ共同に検討すべきである。 その際には特に次の3つの重点課題にエネルギーを集中すべきである。

・ 重点課題1 :   野毛山動物園の受益者負担

・ 重点課題2 :   金沢動物園の戦略見直し

・ 重点課題3 :  ズーラシアの投資戦略

●  案の構築に当たっては、テーマパーク等の民間ビジネスのノウハウを持った専門家の参画を得る。また、経営体制の見直しは、 庁内メンバーと財団スタッフのみに委ねず、外部の専門家の助言を得るべき。

・ ズーラシアの集客はその規模と競争環境に照らすと、 今のままでは不十分となる可能性が高い。

・ 民間企業の活用のあり方は、 指定管理者制度も踏まえ、 市役所が独立の視点から、

 議論をするべきである。

●  当面はともかく 現場改善活動を通じた集客・ CSの向上に力をいれるべきである。 市民の目に見える成果をあげて成功体験を確立することが全ての改革の大前提。また、友の会やボランティ ア、地元の大学・ 研究所・ 企業の活用策も見直す。

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•園長、現場職員チーム

•園長、各園の現場リーダーの横断チーム

•本庁局部課長、園長

主な実施

責任主体

レベル1

レベル2

レベル3

•薬品の定期的棚卸

•CS(*)とES( **)の同時向上

•明らかな非効率の是正

•日常の業務改善•予算・ 人員の弾力運用

各園の現場改善活動

•経営体制の一本化

•共同購入

•3園のスケールメリットの追求

(例: ズーラシアのノウハウの横展開)

•共通インフラのあり方検討•各園の存在意義の見直し•3園人員交流等•「 3園調整会議」 の発展的改組と統合的な意思決定の場の設定

3園の連携とスケールメリットの追求

•3園の統廃合の検討

•野毛山、 金沢の委託化の推進

•各園の戦略のメリハリ付け

•予算の戦略的重点配分

•市にとっての動物園の使命・役割の確認

•経営形態( 直営、財団、民間) の見直し

市役所が行う基本戦略と経営体制の見直し

対応する包括外部監査の指摘事項

目  的内   容レベル

*  CS=Customers Satisfaction( 顧客満足度)**  ES=Employees Satisfaction (従業員満足度)

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3 つの重点課題

ズーラシアは未完成。アフリカ区の整備、トラム、ビジターセンター注)の建設は必要。

アフリカ区の整備を集客戦略の視点からいかに練り直すべきか。

3.ズーラシアの投資戦略

コンセプト を転換し、環境学習施設にシフトする、もしく は再投資して、魅力向上を図る。

どちらもしないなら、漸次閉園に向け規模縮小していく 。

いかにして存在をアピールし、また内容を充実させていく か。

2 . 金沢動物園の戦略見直し

受益者負担で得た収入を、 解説の充実やマーケティ ングに活かす仕組みを考える。

受益者負担を求めるべきかどうか。また、その具体方法論。

1 . 野毛山動物園の受益者負担

懇談会コメント( 部分引用)検討課題

各園が直面する重要経営課題について、 3園と本庁が一体となって考える体制と経験が必要。これを経なければいつまでたっても一体運営はできない。

注) ビジターセンター映像の上映・ 飼育や教育スタッフによる解説、講演を行う屋内施設で雨天時でも使える。ふだんは標本・ 骨格あるいは絵画を展示( 横浜市内に存在しない博物館の機能も期待できる) 。

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重点課題1 . 野毛山の受益者負担問題

・ 受益者負担の考え方

・ 理由

(1)得た収入をマーケティングや展示に活かせるなら好循環が期待できる。

(2)他の2園は、有料でここだけ無料はおかしい。

(3)お金を取るほうも払う方も、費用対効果を考えるようになる。

 ・ 例えば、

     大人 300円

     小人 100円

・安かろう悪かろうではなく、良い施設であ

れば有料でよい。・入園料をとっても人々は利用する。・あれだけの規模で無料はお得。有料化で

きる。・資金投入して工夫をする価値はある。カンパのようなものでもよいと思う。

・横浜市の方針として、受益者負担を掲げている点からも有料化すべき。・全国的にも、野毛山のように大規模で無

料の施設はない。・100円、200円でもとって、受益者負担はとっていくべき。

・お金を稼いで投資に回す、それでお客が喜ぶという原理を職員が学ばない限り改善は無理。

・三渓園が有料なのに、 なぜ野毛山が無料なのか。

・お金がかからないという魅力が有料

化によって失われる。・学習機会を得られるから無料でよい。

・徴収の人件費を考えると無料でよい。・中途半端に取ると維持管理費がか

かる。・市民感覚として、野毛山は無料で当然。好きなところだけを見て帰れる。

・市民に定着しているので、これからも利用しやすいようにあって欲しい。・有料にすると、金沢とどう違うのか、

分からなく なる。無料だからやっぱり行くのだと思う。・「動物のことを知ってください」という

市の意思表示とすれば、無料でよい。

・取ったお金を解説の充実やパンフレット作成に利用できるなら、有料でもよい。一般財源に消えるのは反対。

・お金を何に使うのかはっきりしていれば、市民もワンコイン程度払うのでは。

賛  成 反  対

(出典) 懇談会議事録

受益者負担を求めるべきかどうか

課題設定

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大人300円  小人100円の有料化を実施→  入場者が3割減少しても、約6 5百万円の利益

○ マーケティングスタッフ               6百万円×3名 = 18百万円

○ ポスター        A0版 @7,000円×4,000枚= 28百万円

○ キャンペーン

             @8.5百万円×2回=  19百万円

            

( 参考) ズーラシアの広告宣伝予算: 年間   16百万円            

有料化は来園者に価値を意識させ、 啓発する意味もある。経営者側にもしっかりと見せる義務が生じる。

7百万円1百万円※5

8百万円※4

ケース③

募金箱を設置

15百万円12百万円※2

2 7百万円※3

ケース②

大人: 100円

子供:   0円

65百万円12百万円※2

7 7百万円※1

ケース①

大人: 300円

子供: 100円

利益費用収入額収入体系

※1 入場者3割減少と想定※2  料金徴収業務委託費( 9百万円) と券売機のリース料( 3百万円)

※3  入場者1.5割減少と想定

※4  現在の来園者( 大人) の半数が平均50円寄付することを想定※5   募金箱設置料

想     定 

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重点課題2.金沢動物園の再生案

・  これら全ての投資を実施することは財政面の制約がある。投資は厳選あるいは民間事業者の参画を得なければならない

・ 高速側駐車場アクセス改良        1,000百万円

・ ト ラムの運行  初期投資   10百万円  運営費     28百万円

・ サイン全面改良、なかよしトンネルの展示コーナー化

          168百万円

・ 入口の新設

           62百万円

・ ふれあいコーナー新設          127百万円

・  現状の施設や展示を元に、新たな投資によって補うことが可能な部分にテコ入れする

オプション②

現状テコ入れ

・  ズーラシアのアフリカ区で受入可能な動物を移転

      移転費用 160百万円

( 移転可能な動物は3割程度)

例えば、跡地を植物園にする場合

・  整地・ 植物園建設費用

           1,600百万円

・  植物園としての運営維持費用

        年間   24百万円

・ 1日受入客数を限定した、フルアテンドの対応

・ 10人以上の団体ツアー客を中心に据える

・  環境教育を主たる目的に据えることから、集客数の目標は設定しない

・  野毛山・ ズーラシアのバックヤードとしての位置づけ

・  新たな設備投資は不要。運営維持管理費も、現状レベルで対応可能

強化策等

・  新たに巨額の投資を要すること、と動物の受入先が不透明という問題

・  ゆっく り時間をかければ不可能ではない

・  全面的な採用が困難だとしても、冬季限定など期限を設けて採用することも考えられる

・  あるいはオプショナルツアーとして付加

論点

・  娯楽・ レジャーを主目的とした施設から、環境教育を主目的としたセンターに改編

オプション①

教育・ 学習センター

・  ズーラシアのアフリカ区建設に伴い引越し

・  飼育動物の減少に伴い、順次縮小していく ( その間に跡地利用方法を検討)

オプション③

閉鎖案

内容

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金沢動物園を閉園することで長期的には年間約3億円のコストを削減できる。しかし閉鎖のためのコストや跡地利用のコストを考慮すると、必ずしも得策とはいえない。

純コスト累積比較

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30年度(平成)

純コスト( 百万円)

金沢を廃止

コンセプト見直し

努力維持

金沢動物園閉鎖に伴うコスト

    整地&植物園建設費用:1,600百万円

 植物園としての運営維持費用:          年間   24百万円

  動物の移転費用 (金沢→ズーラシア): 160百万円

※  ただし、 移転可能な動物は3割程度

金沢の閉鎖シュミレーション

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重点課題3 . ズーラシアの投資戦略

現行計画

  すでにできたもの          今後の計画

-1次開園( 1999年開園) 整備  1981年度~1998年度 用地費・ 施設費計約770億円   ・ アジアの熱帯林

   ・ 亜寒帯の森

   ・ オセアニアの草原

   ・ 中央アジアの高知

   ・ 日本の山里

  ・ アマゾンの密林

-2次開園

<整備済>

 整備  1999年度~2002年度 用地費・ 施設費計約25億円  ・ わんぱくの森( 2002年度公開)  ・ アフリカの亜熱帯雨林( 2003年度   公開)

<今後の計画>

 整備  2003年度~2010年度( ?)  用地費・ 施設費計約240億円

※用地費には、 植物区部分を含む。

○区域等 アフリカ・ サバンナゾーン 5.8ha アフリカ・ 熱帯雨林ゾーン( 一部整備済)  ふれあい体験施設 他○展示方法  ・ 生息環境展示  ・ 広大な景観を再現するため のパノラマ展示○動物種 10種 ・ フラミンゴ  ・ サーバルキャット ・ クロサイ   ・ ハイラックス ・ マサイキリン ・ サバンナシマウマ ・ グラントガゼル・ ダチョウ ・ ブチハイエナ ・ チーター○便益施設等  ・ 乗車しながら観覧できるライドシステム  ・ 乗馬施設 ・ レストラン、売店、ミニショップ、便所 ・ 北入口 ・ ゾーンセンター

漫然と、 アフリカ区の建設で動物園の完

成とするのではなく 、 21世紀にふさわしい動物園作りに取り組むべき。

工事・ 予算・ 制度の都合にしばられず、集客・ マーケティング上の効果を考え、施設の順次オープンや課題作りを考えるべき。

過去の懇談会で指摘された施設の建設を検討すべき。資料館・ ビジターセンター、園内の移動手段など。

投資の前に、 多摩動物公園やディ ズニーランドなど近隣の競合施設の分析が必要。

展示方法の見直し・・・現場のアイデアを生かした、 動物が見やすい展示の工夫や行動展示の導入の検討をすべき。

来園者の要望の把握と整備計画への反映。

今後の課題

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大正15年回遊方式庭園等として開園。昭和24年日本貿易博覧会の会場に選ばれ、展示したクマ、 キツネ、 タヌキなどの動物が喜ばれたため、 アジアゾウ、 ニホンザルなどを加え動物園とし、さらに遊戯具を設け、1951年「 野毛山遊園地」 として開園。 1964年遊園地部分の閉園により、動物園を無料化。 2002年には、大規模な改修工事が終了し、 リニューアルオープン。

近郊緑地保全区域/市民の森に囲まれた、緑豊かな金沢自然公園内にあり、 世界の希少草食動物を中心に28種の動物を収集し、展示。園内は、動物の生息地ごとに、アメリカ区・ ユーラシア区・ オセアニア区・ アフリカ区の4大陸別にエリアが分けられ無柵放養式の動物地理学的展示方法で展示。

「 生命の共生・ 自然との調和」 をメインテーマとする日本最大級の動物園。動物展示ゾーンは、 世界の気候帯・ 地域別に分け、動物、植物、人の文化を織り交ぜながら、世界の環境を演出し、地域特有の雰囲気を体感できる。 生息環境展示やゾーン毎に変化する植物、 園内に点在する石像や生活用具”によりさまざまな地域の人間の文化にも触れることができる。

 エントリーに特化 エントリーに特化 好立地を生かした小規模エンターテイメント施設としての位置付け  ポピュラーな動物を揃え、 幼児や動物園入門者向けに特化  有料化を視野に入れた受益者負担を検討 動物園に興味を持つきっかけを来園者に提供。市民のニーズ     に応じてズーラシア、 金沢に誘導する役割

  エデュエデュテティィメントを重視メントを重視  横浜市動物園のフラッグシップとしての位置付け 横浜市を代表する総合動物園として、横浜市以外のエリアからも集客することを指向。他の近隣の大規模動物園との差別化 横浜市の観光名所の一つとして位置付け、横浜のブランドイメージとの相乗効果を目指す  トラムの設置等のリノベー ションにより顧客満足度を向上させ、 リピーターの確保に努める

 エデュケーションを重視エデュケーションを重視 希少草食動物を集めた動物園としてのコンセフト゚をさらに増強・突出させ「 環境教育センター 」 として改変 環境教育、希少種保全、野生動物研究などの機関 学校、会員、予約客などにフルアテンドを実施  隣接する植物園、 周辺の自然林の活用など来園者に環境教育を提供する付加価値を提供

野毛山

野毛山

ズーラシア

ズーラシア

金沢金沢

    今後  様々な角度から検討が必要

【 従来型】 【 コンセプト変更( 例)】

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運営体制の人的・ 組織的側面

動物園運営に必要な人材開発や組織体制構築が不可欠。

• 「 動物職」 という全国的にもユニークな動物行政の専門職制度がある。

• 人材の育成・ 開発は基本的にOJ T に依存。

現状

• 特殊な専門性を要する動物園運営のためには「 動物職」 は有効な制度。

• 経営、マーケティ ング等については、人材の獲得や育成が不可欠。

• 人材育成ビジョ ンとプログラムの策定を行い、Of f JTの機会提供、国内外の動物園等との人事交流などを通じた人材の育成・ 開発を実施。

• 適切な権限委譲による職員の能力の活用。

指摘事項

人材の育成・ 開発と活用

• 総じて動物園の機能と組織が一致していない。( なお、繁殖センターを独立して設置するなど、優れた取り組みも一部に見受けられる。)

• 特に、 野毛山や金沢の組織は飼育係と管理係のみであり、機能分化がなされていない。

現状

• 動物園に求められる機能( 教育、種の保存、調査研究) を満たすことのできる組織作りが必要。

• 動物園の円滑な運営に必要な機能( 経営企画、マーケティング、広報、外部との協力、展示デザイン、獣医療、飼育調整) を満たすことのできる組織作りが必要。

• 外部委員会を設けるなど、園外の知見を活用できる仕組みが必要。

指摘事項

組織体制の再構築

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現場改善案の例動物園名 CS 作業部会での発見 マーケティング作業部会での発見

野毛山動物園

・ 園全体の植栽について樹木及び植物種の計画的選定

・ 各イベントの目標と目的を明確にする

・ 飼育研究会の一般公開(ホームページ)

・ 教育普及関係で大人を対象とした講座の開催、また親子連れが楽しめるイ

ベントの工夫

・ 出前講座の定着化と活性化

・ ふれあいコーナーの充実(ミニイベントの実施)

・ 研修の充実や班会議を通じて動物の動きを引き出す展示の工夫をさらに

進める

・ 担当動物に関する知識を増やし、それらを言葉して来園者に伝える能力を

養う

・ 園全体の美化に取り組み個人として意識の向上を図る

・ 掲示板、補助看板等の充実を図り、学習が組み込まれるようにする

・ スタッフ全員(委託先職員を含む)の電話対応等接客マナーの向上を図る

・ 危機管理対策要領等を作成し、訓練を踏まえて安全な動物園を目指す

・ 野毛山のコンセプトを作り、職員の意識を統一する

・ 園内季刊誌、掲示板を活用し植物等の四季折々の情報を提供する

・ 他の市民利用施設との連動策について(合同PR等)検討する

・ 地域及び各種サークルとの連携を検討する

・ 首都圏への情報発信のため、マスコミの利用及びホームページの

充実を今後も進める

・ 獣舎前における動物の個体説明及び情報の充実を図る

・ 園内リーフレットに車椅子で回れるルート案内を掲載する

・ 傘や車椅子の調達方法を研究し、貸し出しを準備する

・ 計画的な繁殖と飼育展示を行う

金沢動物園

・ タイムリーな情報を来園者に知っていただくために、動物園新聞の定期発

行を検討する。

・ ホームページの充実を図るために、HP作業部会を新設する。

・ リピーターが楽しめるポイントカード導入方法の検討を進める。

・ 飼育体験、宿泊体験学習、飼料栽培体験学習等、環境学習の場を提供する。

・ 身近な自然の保護を呼びかけるため、野生傷病鳥獣の展示を行う。

・ スタッフ全員(委託先職員も含む)の接客マナーの向上を図る。

・ 園内の手摺のペンキを再塗装し、園内美化を図る。

・ ふれあい体験のできるコーナーを新設する。

・ 金沢区民、近隣住民との密着を深める。

・ イベントを体系化し、集客層を明確にする。また適切なプロモー

ション方法を検討し実行する。

・ 金沢動物園の知名度をあげるための取り組みを検討する。

・ 金沢動物園のコンセプトを理解してもらうための活動を充実させ

る。

・ ふれあい体験のような子供連れが楽しめる場を提供する。

・ 希少動物に対する理解を深めるためのプログラムを作成する。

・ 自然の豊かさを満喫できる場としてバーベキュー場の充実を図

る。

・ 教育機関や親子連れなど対象別に、環境学習のプログラムの充実

を図る。

・ 売店やレストランのサービスを向上させる。

・ 遠足や校外学習向けの補助教材やカリキュラムを作成し、団体利

用の促進を図る。

・ 土曜日に利用する小・中・高校生向けのプログラムを検討する。

ズーラシア

・ 動物の派生物に触れる機会をイベント化

・ ゾウにクリスマスプレゼントとして餌やり実施

・ スポットガイドの活性化として餌やり等「とっておきタイム」を恒常的に

実施

・ 見えづらい展示場の転換開始

・ 修学旅行用にバックヤードツアーの充実

・ 飼育職員を前面に出したイベント化

・ 協力会社を含めた接遇研修の早期実施

・ イベント早期決定のためのプロジェクト検討

・ 全トイレに最低 1 箇所ベビーキープ設置

・ 子どもの囲い込みを目標としたプログラムの充実(「スクール」の

冬季実施、修学旅行団体をターゲットにしたバックヤード見学の

充実等)

・ ふれあい機能はイベントにて考慮予定

・ ホームページ技術者研修への派遣実施

・ イベント業務管理者研修への派遣実施

これまでの作業で現場レベルですぐにでもできること、やりたいことがわかってきている

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・ 地域と動物園双方にメリットが期待できるメニューの洗い出しと検討

・ 区役所等とも連携しながら地域との地道な調整を行う

・ ボランティア活用のノウハウなどについて、各園共同で研究する

・ 友の会の部会の拡大( 部会員の拡充と自律的運営)

・ 事務局の位置を再考

・ 友の会自体の自律的運営

・ アニマル・ ペアレント制度との関係を整理

解決策

・ 地域の活性化、動物園のPRにつながる連携策が不足

・ 相互のメリットを見出せていない、若しく はその可能性に対する着眼がない

・ 花植えや自然林を活用した体験プログラムの実施などに、ボランティアの活躍の余地がある

・ しかし、動物園側の統括・ 支援体制が園によっては不十分で、現状以上の拡がりは期待しにく い

・ 事務局がズーラシア内にあり、事務負担がズーラシアに偏重している

・ 類似するアニマル・ ペアレント制度が後発で発足

問題点

・ 東京工芸大等と連携しての様々なイベントを開催しているほか、地元の中山街との連携を模索中

・ 「 広報よこはま」 旭区版でズーラシアの動物紹介コラム掲載、オカピを模したマスコットキャラクターを使用

・ 金沢動物園では最寄り駅の京急金沢文庫駅とPR等で協力関係

動物園友の会の部会として各園ごとにボランティア活動を実施

・ ズーラシアは毎週日曜日に園内で来園者向けガイドを実施。その他高齢者施設などへの訪問活動を実施

・ 野毛山では週末にふれあいコーナーの案内を実施

・ 金沢ではイベント運営を実施

3園全体を対象とした「 横浜市動物園友の会」 が存在

・ 会員数約2000名・ 3園を対象とした組織

・ ズーラシア、金沢の入園料を免除

・ 会報年4回送付

・ 会員数、活動水準は動物園が実施する会員組織としては、全国的にも高い

現 状

地域等との連携ボランティア会員組織

ボランティア・ 地域との連携

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●  2005年度には市全体および各園の使命を明確にする。

● 2005年度には早急に現場改善活動を立ち上げる。また上半期中には3つの重点課題の検討を終了する。下半期は全体戦略を構築し、2006年度には市民からの意見聴取も行った上で、市役所と関連部局の支持を得て、中長期目標とコンセプトを確定する。

・各園ごとの現場改善活動の計画と目標を2005年度第1四半期中に完成

・市役所と3園全体の達成目標を明確にする

● 2006年度から具体的な実施段階に入る。また2007年度末までに新経営体制への移行を完了する。

● なお2005年度以降、以上の改革のプロセスと各年の目標達成状況を2次評価するための第三者機関を設立し、年に1回ないし2回評価を受けた上で、市民に対する改革の進捗報告を行うべき。(ニュースレター、プレスリリースなど)

● 2008年度の段階で上記のプロセスの進捗状況と改革スピードが遅い場合には、改めて基本戦略の見直しや施設の縮小、統廃合などの選択肢を検討すべき。

     ・例えば集客のジリ貧傾向に歯止めがかからない場合

     ・現場改善活動が進まない場合

     ・市民の理解が得られない場合

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第三者機関

・ 各園レベルでの改善の場合、横浜市だけでなく ズーラシア( 緑の協会) を含む。

  ’05年度

  ’06年度

  ’07年度

  ’10年度

  ’08年度

  ’09年度

・ 使命の明確化・ 現場改善活動と内部体制見直し・ マーケティング体制の確立・ 3つの重点課題・ 全体戦略の構築

・ 市民の意見聴取・ 中長期目標とコンセプトの確定・ 最適経営形態の選択、 移行を開始

・ 新体制下での実施状況の効果検証

・ 新体制での経営開始

・ 新戦略に基づいた体制への移行と施設投資

・ 最適経営形態への移行完了

横浜市

・ 新戦略及び新体制下での運営

年に1ないし2回評価を実施

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横浜市立動物園の改革に向けて

―付属資料―

この資料は、2005 年 3 月 28 日に行われた最終懇談会への提出資料とその口頭によるプ

レゼンテーション、および質疑応答の記録を再編集したものである。報告書とあわせて

お読みいただきたい。

横浜市立動物園のあり方懇談会

(説明資料)

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今回の横浜市立動物園の見直しには2つのきっかけがあります。1つ

は 2003年度の包括外部監査で、動物園に対して経営改善の必要があるという指摘を受けたことで、もうひとつは2003年に地方自治法が改正され、指定管理者制度が創設されたことです。民間事業者も「公の施設」

の管理が可能となり、動物園もその対象になりました。

この 2つの外圧をきっかけにこの懇談会がスタートしました。検討したことは、主に次の 3点 ①動物園の存在意義と横浜市役所が経営する意義の再確認 、②動物園が直面する経営上の課題の整理と分析 、③外

部監査の指摘事項および指定管理者制度の導入の可能性に対する方向

性の指摘です。

2ページは、これから説明する提言の要旨です。

3 ページは「検討体制」の説明です。今回は通常の懇談会のほかに、経営強化、マーケティング、利用者満足度向上の3つの作業部会を作り

ました。メンバーはここに記載しています。

4ページは「検討の作業経過」。7回の懇談会のほか、現場職員との意見交換会、アメリカのブロンクス動物園を運営する野生生物保全協会

(WCS:Wildlife Conservation Society)のスタッフのヒヤリング等、実施経過などを記載しています。また、北海道旭川市の旭山動物園の視

察も行いました。マーケティング作業部会では、利用者アンケートやイ

ンタビューを実施し、利用者満足度向上部会では、委員と各動物園職員

とが集まり、ワークショップを開きました。

5ページの「目次」ですが、本報告書は以下の 4本立てになっています。第1章では、「都市経営における動物園の意義と役割」として、横浜

市がなぜ動物園をやっているのかを再確認しています。

第2章では、「横浜市立動物園の現状評価」として、今ある動物園の

姿について棚卸しをしました。現状評価は、(1)3園全体の運営、(2)各園の集客・マーケティング、(3)全体の経営体制、の3つの視点から

行いました。

第3章では、「市役所が取り組むべき経営課題」について、今後の課

題をまとめました。

第4章では、「今後の進め方」を検討しました。

また、別冊資料として、(1)は包括外部監査に対する懇談会のスト

レートな考え方を述べています。外部監査報告書の指摘事項に対する懇

談会の対応は、報告書の本文のとおりですが、念のためここで、それぞ

れの項目に対する答えを整理しました。

(2)はそれぞれの作業部会の報告です。(3)は、懇談会の会議録

です。第2回および3回は施設見学を行ったので、掲載されているのは、1回、4回、5回、6回、7回分の会議録です。

第 1章「都市経営における動物園の意義と役割」

6ページ、第1章「都市経営における動物園の意義と役割」は、市役所の市長以下、幹部の皆さん、特に動物園の経験のない方々向けに書い

たものです。市民の皆さん、議員の皆さんに動物園をもっと知っていた

だかないと、そもそも本質的な議論ができないだろうということから、

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この章を設けました。

動物園は大都市にとって欠かせない存在ですが、その使命・役割、経

営形態はダイナミックに進化しつつあり、美術館や博物館よりももっと

変化が激しいといえます。これを踏まえると、「珍しい動物がいて、お

客さんがたくさん来てにぎわっていればいい」というありがちな固定概

念を取り払って考える必要があるという結論になりました。

3つの各論があります。第1は、動物園はどんどん進化しているとい

うことです。機能は「娯楽」だけでなく、今や「種の保存や保護」、「教

育」、「調査・研究」などの領域においても役割があります。

第2は、動物園はそれ自体は儲からないということです。これは、他の

文化施設と同じです。しかし、動物園は大都市にとっては欠かすことの

できない存在です。ニューヨークや、ロンドンといった、大都市の動物

園には、年間数十億のお金をかけて、100万人を越える入園者を集める例もあります。日本も例外ではなく、横浜市も例外ではない。また、経

営形態は約半分が公立で大半は市立です。これはユニークなことで、博

物館や美術館とは違います。つまり、都市の装置であることです。

今後どうなるのか。ひとつの先進事例が、ニューヨークです。ニュー

ヨークの動物園は、NPO法人野生生物保全協会(Wildlife Conservation Society)が経営していています。施設の運営だけではなくて、自然保護や教育の分野にまで広がってきていて、財源もかなり幅広いところか

ら集めています。

7 ページ、「現代の動物園の 4 つの機能」を、少し詳しく見ていきます。動物園の役割は、進化しています。現代の動物園には、4つの機能があるというのが世界的に言われていることです。一般的に知られてい

るのは「娯楽」面です。子供達を遊ばせる、人々を楽しませる施設とし

て、この機能は重要です。最近の国内の事例にも、様々な展示のスタイ

ルがあり、北海道旭川市の旭山動物園をはじめとてして、面白い展示を

数々とやっています。大阪市の天王寺動物園は、行動を見せるというよ

りも、環境を見せると言う環境一体型展示を行っていて、ゾウの展示だ

けでなく、ゾウの住んでいる環境を見せるという考え方で展示を行って

いる施設です。

2番目の機能として「種の保存、保護」があります。基本的に動物園は動物の飼育繁殖を行っており、特に希少動物の繁殖には力を入れて取

り組んでいます。最近では、野生復帰の取り組みもかなりやっています。

昔の動物園は、野生から動物を収奪する側でしたが、これからは逆に自

然に対して還元していかなければ、というのが、世界的な潮流となって

います。右側に事例がいくつか書いてあります。いろいろな人工繁殖技

術や、繁殖を目的とした動物の貸借(ブリーディングローン)、繁殖計

画というのがあり、これらは希少な動物の繁殖を、動物を交換すること

により、血が濃くならないように、計画的に繁殖がうまく行われるよう

にいろいろな取り組みがされています。動物園の個体を野生に復帰させ

る活動もあります。アメリカの動物園では、ゴールデンライオンタマリ

ン(極小なサルの仲間)やアラビアオリックス(ウシの仲間)などの、

飼育下生まれの動物を使って、試みている動物園もあります。

日本にも似たような施設はあり、よこはま動物園の園長が兼任してい

る、兵庫県のコウノトリの郷公園では、「コウノトリを繁殖させて野生

に返そう」、という試みに取り組んでいます。

3 番目の機能に「教育」があります。「娯楽」の中にも「教育」に含まれるものがありますが、動物を知ってもらうことによって、動物園に

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いる動物が置かれている環境を知る意味では、環境教育があります。命

の大切さを伝えていくという面でも、動物園の役割は重要です。そのほ

か、様々な標本の貸し出しや、出張講演、教育的パネルの作成、さらに

ハンズオンと呼ばれる、触ったりすることができる教育教材の提供など

も、動物園で行われている「教育」の例です。

4 番目の機能として、「調査・研究」があります。たとえば、動物園における動物学や獣医学の「調査・研究」だとわかりやすいですが、特

に動物行動学の面からは、野生下ではなかなかわからない動物の行動を

知る上で、飼育下での研究が役に立ちます。7ページの資料右側の紹介では、旭山動物園が紹介されていますが、動物の病気に関する研究や繁

殖の研究など、いろいろ行われています。旭山動物園は、「種の保存」

活動や「調査・研究」活動の面にもバランスよく取り組んでいます。そ

の蓄積が、人気を支え、持続させているのではないでしょうか。

8ページは、「動物園の役割の進化」です。1993年に世界各国の動物園の代表者が集まって策定された「世界動物園保全戦略」の中では、世

界の動物園間の連携の大切さや、生息地以外での動物の保護繁殖の重要

性がうたわれています。この中で、動物園が時代とともに変化している

ことについて、次のような説明があります。

古典的には、動物園というのは、もともとは権力者のコレクションと

して、珍しい動物を集めて見世物とする、「メナジェリー」と言われる

ものが始まりと言われています。その後、動物学的な見地から動物を集

め、飼育してそれらを一般に公開するという「生きた標本棚」として、

博物館機能を持った近代の動物園が始まりました。やがてそれが、動物

の生態を考慮し、過ごしやすい広さを持った動物公園(ズーロジカルパ

ーク)となり、動物を生態にあわせて群れで飼育する、展示場もその生

態を考えながら植栽や擬岩を施すという工夫を始め、「生きた博物館」

として機能し始めました。さらに 20 世紀後半くらいから 21 世紀に至り、環境の汚染、種の絶滅などが深刻となってくると、環境資源を保護、

保全していく「自然保護センター」としての役割が求められてきました。

このように、動物園は、どんどんと進化しています。

このことを横浜の動物園の動物園の設立の順に見てみました。

1番目にできた野毛山動物園(以下野毛山と表記)は、開園 50年以上の古い動物園で、檻展示が中心です。キリン、シマウマ、ライオンなど動

物園にメジャーな動物を展示しています。

2 番目にできた金沢動物園(以下金沢と表記)は、自然公園の中にある動物園で、動物をアメリカ、ユーラシア、オセアニア、アフリカ、の大

陸別に展示しています。無柵放養式といって檻を用いず、なるべく広い

スペースで、自然な感じで見られるように取り組んでいます。

3番目にできたよこはま動物園ズーラシア(以下ズーラシアと表記)は、アマゾンの密林、亜寒帯の森、アフリカ熱帯林などの生息環境を含

めた展示ゾーンからできていて、展示動物の生態系を意識した作りにな

っています。園内には、種の保存活動を推進するための繁殖センターが

設置されています。

横浜市の動物園の活動内容の充実度が、世界の動物園の進化に、きれ

いに当てはまるといえるかどうかはわかりませんが、横浜市の動物園も

時を追って、内容をバージョンアップさせてきたといえます。

9 ページは、「世界の動物園」の実態です。代表的な世界の大都市、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京にある動物園と比較してみました。

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どれも数百万人都市で、都市内の動物園の数は複数となっています。ま

た、年間入園者数が、100万人以上が普通のオーダーと思われます。年間経費も数十億を投資し、職員数も何百人かいます。世界の大都市には、

相当の規模で動物園が存在しているということがわかります。

10 ページ「世界の動物園の経営形態」。誰が運営しているのかみました。世界中の 568施設をデータのある範囲で調べた中で、約半分(49%)が公立です。残りは財団や民間企業ですが、民間の中にも公的支援や寄

付をもらったりしているものがあり(14%)、いわゆる民間としてのみ成り立っているところは全体として多くはありません(22%)。市立というのは、都市につき物の施設として考えると、不思議な形態ではないでし

ょう。

アメリカには、かつて市が経営していた動物園の運営を、NPO 法人に移管しているケースがあります。さらにNPO法人が事業形態を拡大しており、将来の動物園の発展型を考える先進事例となりますので、次

に紹介します。

11 ページは、「野生生物保全協会(WCS=Wildlife ConservationSociety)の活動の全体像」の紹介です。野生生物保全協会(以下WCSと表記)は、もともとは、ニューヨークのブロンクス動物園を設立する

ためにできた、ニューヨーク動物園協会(New York Zoological Society)が母体です。1993 年に協会の設立趣旨に基づき、名称をWCSと変更しました。現在は、ニューヨーク市が持っていた 3つの動物園の管理運営も行っています。動物園の運営の他に、環境教育活動、国際保全活動

にも力を入れています。国際保全活動では、58 カ国で 138 のプログラ

ムを実施しています。また、広報財務に関しても、寄付によって、かな

りの財源を確保しています。

12ページが「WCSの経営体制」です。年間の予算は、136億円です。経営体制は、理事会があり、理事50名のうちの半数以上が金融・ビジネス関係者で占められています。その他、ニューヨーク市とは強い係わり

がありますので、市長をはじめ市の公園関係の幹部が理事になっていま

す。このほか、14の委員会があり、「教育と展示」、「調査」、「国際保全」、「環境エンリッチメント」などの専門家によるサポートがなされていま

す。

こうした姿はもちろん、日本とは、違います。しかし、動物園という

事業の発展可能性という意味では、随分幅が広いものがあるという証明

になると思います。動物園だけをやる財団を作る可能性や、民間資金の

導入ということを考えていくと、直営以外の経営形態を考えていく発想

も必要だということです。直営で施設のみの運営だけだとどうしてもジ

リ貧になっていくのではないか、そうでない幅広い発想が必要ではない

かと思います。横浜市がニューヨークのようなアプローチを取るのか取

らないのかは政治判断になります。しかし幅広い選択肢を考え、こうい

うことも視野に入れておくべきだと思います。ニューヨークがやってい

るから横浜がやるというのは、短絡的です。が、ニューヨークがやって

いることを横浜が全くできないわけでもないと思います。

第 2章「横浜市立動物園の現状評価」

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第 2章では、横浜市の動物園の現状を評価しました。 13ページには、「横浜市立動物園の現状評価」について全体のまとめを述べています。

3園の整備過程をみると過去に横浜市が確固とした動物園戦略を展

開してきたとはいい難いといえます。しかし、現時点での、施設の規模

と質、職員の能力と意欲、入園者実績等に照らした現状は、他都市と比

べてまったく遜色がありません。

経営効率面での当面の課題は、3園のスケールメリットの追求です。

但し、動物園はもともと人件費を含む固定費比率が高い施設ですから、

日常運営レベルでの効率改善の余地は限られます。経営形態の見直しや

民間活力の余地も合わせて考える必要があります。

また、せっかくの施設と人材を活用しきれていないことも問題です。

特に集客・マーケティングに関しては、予算、人員、体制が極めて弱体

です。現状のままでは、せっかくの価値を市民に理解されないまま、集

客減と過少投資の悪循環に陥ってしまう可能性があります。

特に若手を中心とする職員の能力と改革の意欲は高いといえます。幹

部を含めた多くの職員は、問題の所在も理解しています。最大の障害は、

3園それぞれおよび本庁の間の柔軟な連携を推進しない現行の硬直的

な経営体制といえます。

以下具体的に説明します。

14ページは「各園の特徴と配置」です。まず、基本的な情報として、2003 年度末の3園の面積、職員数、動物の種類点数などを確認しました。野毛山は、面積 3.3ha、飼育動物数 110 種 1,044点。職員数は 33人。野毛山の分園の万騎が原ちびっこ動物園(以下万騎が原)は、野毛山

の分園ですが、面積 1.4ha、飼育動物15種 343点、職員6名。金沢は、面積12.8ha、動物数31種181点、職員数49人。ズーラシアは面積34.1ha、67種 372点、職員数88人です。これを見ると金沢は、ズーラシアの半分くらいの、それなりの大きさだと思います。

15ページ、「3つの動物園を整備するまでの経緯」です。横浜市に動物園が3つもいるのかということが今回の懇談会が生まれたひとつの

きっかけです。過去の経緯を見ていくと、確かに市役所が動物園全体の

あり方を戦略的に変えてきたとは言いがたいといわざるを得ないとこ

ろがあります。しかし、「動物園は進化するもの」でもある。世界的な

進化の流れに沿って3段階で変わってきたとも言える。そこで、横浜市

の動物園の整備に関する過去の経緯を確認しました。

まず、1980年前後から1990年ころまでは「4園計画期」といえます。最初に野毛山動物園があり、動物の飼育繁殖や、教育普及活動などを行

ってきました。しかしやはり、野毛山動物園が小さくて狭く、動物に対

する環境もよくないので、1980 年に、新動物園を作り、万騎が原を含めて4箇所にしようという案が出ました。

しかしその時にすでに金沢の基本計画がありました。金沢を野毛山の

分園と位置付けて 1982年に一部開園していました。金沢は金沢として作りながら、動物園を4園にしていこうという考え方があったのです。

やがて 1984年の市政100周年、開港130周年記念を機に緑政局は、新動物園構想を提案し、それが認められました。ちょうど今のズーラシア

がある所に候補地がありました。それでともかく金沢を作りながら、新

しい動物園作りに入りました。

その際、万騎が原を除き、3つの動物園を総花的に作るというわけに

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はいかないということになりました。それで、見直し期第1期となりま

す。1991 年に野毛山の新動物園への移行を、野毛山再整備検討委員会で決めました。つまりこの時は、金沢とズーラシアの2園体制にすると

いう考えでした。1992 年には、金沢に「ののはな館」が完成し、これは、教育普及のメインの場所、ビジターセンターという位置付けにもな

っていました。ところが、1994年に新動物園(ズーラシア)の管理委託反対と、野毛山のズーラシアへの移転反対が同時におきました。特に野毛

山の移転反対は、大きな市民運動になり、毎日何百通というはがきが市

長宛て、秘書課宛に送られる状態となりました。結局 1996年には、市役所は野毛山の存続を決めました。

しかし、存続を決めるといっても当時のままでは、狭い、日当たりが

悪いなど、動物にとっての環境がよくない状況でした。そこから見直し

第 2期になります。つまりある程度リニューアルして、動物愛好家にも一定程度の理解の得られる状態にして、展示をしていくことになりまし

た。一方、新動物園については、直営ではなく、財団法人横浜市緑の協

会に管理運営を委託することに決まりました。それで 1999年から 2002年にかけて野毛山をリニューアルすると共に、1999 年にズーラシアが一次開園しました。そして 2002,2003年と公開区域を拡大しました。やがて 2003年の包括外部監査からの指摘と指定管理者の問題が持ち上がり、やはり横浜市の動物園をもう一回根本から見直す必要があるとい

うことになりました。その結果、現在の抜本見直し期になり今回の「横

浜市立動物園のあり方懇談会」が設置されました。こうしてそれぞれの

見直し期をみますと、結果としてできなかった点がかなり多いのですが、

その時々の委員会もしくは懇談会にはそれなりの基本的考え方があっ

たということです。

16ページは今回の「評価の対象」ですが、こういう経緯を踏まえて、今回の現状評価の焦点を広く取りました。経営形態が直営と財団に分か

れていることなども含み、そもそもの基本の大方針に立ち返らなくては

いけない。各園の中身だけをみていてはだめだということになりました。

各園がどうなのかだけでなく、3園の連携のあり方がどうか、というこ

とも検討課題にしました。また、当然市役所自体の経営体制もどうなっ

ているか評価検討しました。

(1)3園全体の運営

17ページ「3園全体の運営」についてですが、結論からいうと、 ①面積、運営コスト、職員の数、入園者数について横浜の実績値を東

京都や大阪市、名古屋市と比べると同等、過不足はないといえます。都

市が持つ装置としてはいい規模ではないかといえます。

②娯楽集客面以外での分野はどうか。入園者数全国第 3位、面積第 7位という規模にふさわしい多様な活動を行っている。及第点ではないか

といえます。

③経済性は、年間の支出に対して 36%分は入園者収入があります。名古屋市、大阪市に比べて、収支効率はよいといえます。ただし、直営

の 2園については、直営形態がもたらすいろいろな非効率がある。動物園には 4つの機能があるということを前提とした上で、指定管理者制度とか、市場化テストの余地があるという動きも意識しながら、もっと自

律的に経営できる形態への抜本的な見直しが必要です。

④大きなひとつの問題点が入園者数です。1990 年代以降次第に、全国的に動物園は毎年平均で 3.1%ずつ入園者が減少しています。これは

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かなり大きな数字です。それに比べると、横浜市の場合は、金沢やズー

ラシアへの投資を行って、結果としては歯止めをかけてきたといえます。

しかし、近年は金沢への投資をしていないこと、ズーラシアの開園効果

が薄れてきて、やはり同じように全国並みの年率3%の減少傾向に入ってしまっています。

18ページは、「国内大都市間の比較」です。動物園の面積、年間運営コスト、職員数を、大阪市、東京都、名古屋市という大都市で比べてみ

ました。動物園の充実度という点では、市民1000人あたりの面積(横浜市 146m2)としては、名古屋市(151m2)に似ています。運営コスト

は、入園者 1000人あたり横浜市、名古屋市、大阪市は 100万円前後で、この程度であるということがいえます。職員の数で言えば、横浜市はや

や多いが、ほぼ他都市並みだといえます。

19 ページの「横浜市の動物園の活動内容」について、横浜がユニークな部分や、最近力を入れているところなどを「種の保存」、「教育」、

「調査研究」の点についてみてみました。

横浜市の動物園は、繁殖センターがあるという点で、ユニークだとい

えます。ここでは、選定した希少動物の保護繁殖の他、種の保存に関す

る実験室的な調査・研究をおこなっています。

①種の保存(希少動物の繁殖の取り組み)に関しては、それぞれの園

で取り組んでおり、日本動物園水族館協会の繁殖賞(国内で初めて繁殖

成育に成功した種に対して贈られる賞)を、これまでに 71 種受賞しています。また、国内動物園で飼育されている希少動物の中で選定された

動物種のうち、5種(マレーバク、カンムリシロムク、ホオアカトキ、

インドセタカガメ、ハミルトンガメ)については、国内飼育園から情報

を収集し、個体の血統登録と国内全体の繁殖計画の策定を受け持ってい

ます。市内で保護された、傷ついた野生鳥獣についても受け入れ、完治

したものは、放野して野生にもどす活動もしています。この活動は、県

から受託している野生傷病鳥獣保護事業の一環でもあります。繁殖セン

ターでは、野生ではバリ島にのみ生息し、現在は絶滅の危機に瀕してい

るカンムリシロムクという小型の鳥の野生復帰事業に取り組んでいま

す。飼育下で繁殖した個体を野生復帰のために、本国のインドネシア共

和国政府に送っております。来年度以降も引き続き、個体を送る予定に

していて、現地の技術者との情報交換も始めています。

②教育活動については、小学校の団体の受け入れや、実習生の受け入

れ、夏休みには、世代ごとの体験講座を実施したり、学校へ出向いての

講座や、教職員のための動物園の活用講座などを開いています。標語コ

ンクールや、動物がコンクールなども、他の団体との協力で行っていま

す。

③調査・研究活動については、国内の動物園技術者研究会に参加し、

2003年度は 13題の飼育関係獣医学関係の発表を行いました。日本動物園水族館協会の動物園水族館雑誌に投稿した「オカピの繁殖」について

は、2004年の日本動物園水族館協会の技術者表彰を受けています。鳥類には、外見が良く似ていて、雌雄の判別がしにくい種がいますが、

生化学的な手法を用いると、血液や細胞から判別ができます。繁殖セン

ターでは、そのような種類の個体の雌雄判別や、種ごとに異なる判別法

の確認などを行っています。また、3園から得られた精子を凍結保存し

配偶子バンクとしての役割も持っていますが、適正な保存方法は種ごと

に異なりますので、保存法の確立にも取り組んでいます。

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このように、横浜市の動物園は、4つの機能について満遍なく活動を行っているということがいえます。

20 ページでは「他都市との収支比較」について、横浜市、東京都、名古屋市、大阪市でみてみました。都市ごとに、左が支出で右に収入が

書かれています。色を塗ったところが、行政が負担しているものです。

一番下に支出全体に対する入場料収入の割合というのが出ていますが、

横浜市は 15%、東京都は 30%台で、名古屋市 15%、大阪市 13%です。東京都では結構な収入がありますが、行政が負担している部分の比率を

みると、東京も横浜もあまり変わらず、6割くらい。名古屋市と大阪市は、8割以上です。

21ページ、「各園別の収支構造」ですが、3園について、初期建設コスト、年間運営コスト、職員 1人当たりの年間入園者数をみました。初期投資のうち、最初の動物の収集コストは、不明なものもありますので、

含めていません。ここでは、ズーラシアについては、コストが 20 億円かかるうち、収入が 10 億円あり、年間コストのカバー率は、約半分の50%、それに対して、金沢ではコストカバー率は 11.7%、野毛山については、収入がほとんどありませんので、カバー率が 0.5%となっています。特にズーラシアが年間の運営コストについて、利用料金収入と経営

事業収入でまかなっています。職員一人当たりの入園者数が多いのは、

野毛山で、金沢は、野毛山の 3分の 1程度になっています。直営でも、収入は得られるということでは、同じではないかという意

見もありますが、入った収入が実際に自分の所に入っていくのか、市の

財政全体の中にいってしまうのかという意味では、自主収入が得られる

ズーラシアの方が、効率が良いといえます。

経営面では、完全な民間営利施設と同じことをやるわけではないので、

同じような利益を上げるということではありません。しかし、指定管理

者制度や市場化テストという時代の流れの中で、民間にもある仕事に関

しては同様の経営効率が要求されてきます。

22 ページの「収支構成」として3園全体をみると、収入の中身が入場料以外にもあることがわかります。左端がコストです。中央の収入の

所を見ると、入場料収入が大きいのですが、ズーラシアにはそれ以外に

経営事業の収入があります。つまり飲食売店収入、駐車場収入、などの

周辺収入があるため、収支的には良くなっています。これに対し、大阪

市や名古屋市などは、直営の従来型の経営なので、こういう収入は制度

上追求できない。横浜市も野毛山と金沢は同様になります。ですから財

団経営の柔軟性のメリットは、こういうあたりに収入の形で現れていま

す。その他目に見えない形で、いろいろな柔軟性のメリットは現れます。

横浜市全体でみると、東京都ほど収入はない。しかし、名古屋市や大

阪市の従来型のモデルと比べると、ズーラシアに収入がある分先んじて

いるといえると思います。

23 ページでは、「動物園の入園者数の推移」についてみてみました。動物園の評価を入園者数だけでするのは、いかがなものかということは

懇談会では強く指摘していることで、そのことだけをことさらに取り上

げるのは、間違いですが、やはり市民の支持がないと、維持できない施

設です。したがって入園者数は重要な指標のひとつです。全国の流れで

見ると、動物園は入園者を失いつつある。全国平均で年率△3.1%とか

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なりの率になっています。横浜市の場合は、1990 年からデータをとると、年率△1.8%です。これは、人口数などいろいろな要素が考えられますが、投資の仕方にもよるものだと思います。

24ページは、横浜市の動物園の「利用者推移」ですが、80年代前半までは、入園者数は年約7%落ちています。懇談会では、金沢が今ひと

つだという議論をしてきましたが、これを見ると、ある時期には金沢は

結構入園者を集めています。棒グラフの一番下が野毛山ですから、1980年代から1990年代にかけて野毛山がじりじりと落ちているところを金沢がきちんと補って現状維持をしていたわけです。全国の△3%の実態と比べると、この頃にはなかなか良いパフォーマンスをしていたと思い

ます。横浜市は先手をうって、しっかり金沢に投資をしていたという言

い方もできます。しかし、それ以後、金沢の減少傾向が始まります。一

方ズーラシアに投資がされました。ズーラシアは一端大きく上がって、

全体の入園者は一気に上がるのですが、開園後の動向をみるとすぐに年

率△3%と、結局は全国平均と同じ姿になってしまっています。大きな歴史の流れをみると、金沢が開園して、ズーラシアが開園する

までが、実は金沢の全盛期であったともいえます。以後、金沢が健闘し

ていないという原因はいろいろなものがあるでしょう。①過小投資、②

ズーラシアと比べると見劣りがする、③コンセプトが時代遅れ、などい

ろいろな原因が考えられます。しかし一定の時期に一定の役割を果たし

たということは、はっきりしています。

この図をみていると、ズーラシアの落ち込み傾向の方が極めて深刻だ

ということがわかります。全体で、1.3%の減少程度に抑えないといけないと思います。

一方で明るい材料は、野毛山が若干ですが、リカバーしていることで

す。再整備の効果が集客につながっているということがわかります。こ

のように、動物園は、そのままにしておいても利用者が集まる施設では

なくて、こまめにいろいろ手を入れないと、集まりません。逆に言うと、

手を入れれば、利用者は敏感に反応するというタイプのビジネスだと考

えられます。したがって、懇談会が特に注意したのは、入園者数を確保

するという基礎的な部分に対する努力がきちんとされているのかどう

か、ということでした。

このことをさらにきめ細かくみようというのが、、利用者満足度(C

S)向上作業部会、マーケティング作業部会を作った大きな理由です。

まず集客マーケティングについて、さらに細かく各園毎に見てみます。

(2)各園の集客・マーケティング

25ページ「各園の集客・マーケティング」のまとめは、後述することにして、個々の現状を検討していくことにします。

26ページ、「横浜市の動物園の利用形態」です。まず何を目的に人が来ているか。誰と来ているかを見ました。すると完全に「娯楽」である

ことがわかりました。動物園の機能は4つだと言ったものの、実際は、

家族、カップル、友人と来ている人が多い。一人で勉強しようと来る人

はあまりいません。利用目的も「レジャー」、「散歩、ひまつぶし」、「デ

ート」と、美術館などに比べると、もっと気楽にお遊び感覚で来ている

人達が多い。裏を返すと、ディズニーシーが開園すると結局そっちへ行

ってしまうとか、おもしろいテレビをやっている時間帯は来ないとか、

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天気がいいと公園に行ってしまうということになる。動物園は様々な競

合にさらされている難しいビジネスだといえます。

ディズニーランドのような、大きなテーマパークは大きな民間営利施

設であるし、内容も異なる商売であるので、それと動物園を比較するの

はレベルが違うのではないかという意見もあります。でも、「休日にど

こへ行こうか」という時の選択においては、明らかに競合します。特に

この問題に取り組むことがズーラシアでは必要です。

したがって、こういった競合の中から、動物園へ人を呼ぶ集客の工夫

をしなくてはならないことになります。一番うまく工夫するためには、

先程の傾向を見ても明らかなように展示の中身を充実させるというこ

とではないかと思われます。

27ページでは、「旭山動物園の継続投資」の意味を見てみました。旭山動物園はなぜ、人気があるかを見ると、やはりこまめな投資を行って

います。年ごとに少しずついろいろな投資を行っています。それに伴い

来園者数もどんどん延びています。

手を入れないと利用者が来ないという大変な施設とも言えます。とも

かく、投資は非常に大きな要素だということが確認できました。ミュー

ジアムなどの場合は、企画展の中身の入れ替えで入場者を引き寄せるこ

とができますが、それも難しい。厳しいものがあると思います。

28 ページは横浜市の動物園に関するプロモーションの論点です。せっかく投資しても全然広告しなければ人が来ない。今の横浜市の状況は

非常にひどいといえます。マーケティング部会で調査をしました。金沢、

ズーラシアに来た人全員に、「野毛山に行ったことがありますか」と質

問しました。その結果、38%の人が「野毛山には行ったことがない」と答えました。金沢について聞くと、野毛山、ズーラシアへ行った人のう

ち約 6 割が、「金沢に行ったことがない」と答えています。同様にズーラシアへ行ったことがないと答えた人は 35%です。ここから言えるのは、すでに1つの動物園に来ている人すら、他の2

園に行ったことがない人が結構いるということです。

さらに問題なのは、他の動物園の存在を知らない人がかなりいるとい

うことです。野毛山、ズーラシアに来た人に聞いたら、3割の人が、「金

沢の存在を知らない」と言っています。この人たちは、動物園が好きで

来ている人達ですから、それなりの潜在可能性が高い人たちです。その

人達に知られていないというのは商売の大原則からすると、問題外では

ないかということになります。言いかえれば、お知らせさえすれば来て

くれそうな人がまだいるということでもあるし、その程度の努力すらや

っていないということにもなります。3園がばらばらに活動しているこ

との反映でもあるようです。

29 ページ、「マーケティング・集客のための予算と体制」です。実態をもっと見ると、知らせる努力をする体制に「ない」という驚くべき事

実がはっきりしました。ズーラシアに関しては、年間 1600万円かけて鉄道広告などを出したりしていて、5人ほどの集客広報担当者がいて、

有料広告、旅行代理店への営業活動や独自の商品開発などの、知らせる

努力をかなり行っています。それでも入園者はジリジリと減っています。

野毛山、金沢に関しては、担当者はいないうえ、集客・マーケティング

のための予算はなく、チラシの作成代 20万円、60万円を他の費用から流用するという、ほとんど無きに等しい状態です。これでは入園者はな

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かなか増えない。せっかく作った施設を活かす意味でも、マーケティン

グにそれなりの投資が必要です。直営のままで、宣伝費を予算化するの

は、なじまないかもしれませんが、市の他の機関、局と連携した広報の

工夫を考えれば、仮に予算がなくても宣伝に類したことも可能になると

思います。区の広報に載せているだけでは、来て欲しい人たちへの十分

な PRとはならず、十分な集客はできないと思います。

30 ページで「規模に応じた人員と予算の投入の必要性」ということで、他の有料の国営公園がどのくらいお金をかけて努力しているのか簡

単に試算してみました。年間の利用者数が 200万人、面積が 300ha程度のかなり大規模の公園でも広報・企画専任職員が6名、年間 1200万円かけています。これより規模が小さい所でも、人とお金をかけていま

す。専任職員は5人くらい、1,500万円程度はかけているということです。ズーラシアも同じ位の規模をかけています。一方、野毛山と金沢は

専任職員も広報宣伝予算も何もないという状態ですから、これを好意的

に解釈すると、野毛山や金沢に職員2名、年間500万円程度かければ、もうちょっと利用者が来るのではないか、現状は明らかに過小投資であ

るということがいえます。現在の経営体制の制約もありますが、3園の

連携を考えれば、ズーラシアの集客担当者に野毛山・金沢も担当してや

ってもらうというのも一考です。その他、きめ細かい工夫にまだまだ余

地がありますので、現場の方で努力をしていただきたいと思います。

31 ページは「野毛山の改善課題」になります。野毛山は再整備以降入園者が回復し、みなとみらい地区からの立ち寄り利用者があるなど、

集客状況には、明るい話題がありますが、売店やレストランがない、授

乳室など母子専用の部屋がない。学校、保育園、幼稚園等を受け入れる

際の施設が不足など、リニューアルはしたけれども、アメニティの面で

は、まだまだかなり課題があります。

32 ページは「ズーラシアの改善課題」になります。設備は立派だけれども使いづらいなどハード施設上の課題がかなりあって、リピーター

がなかなか来ないという問題があります。再来園率は 43%と比較的低い状態のうえ、入園者数はジリジリ減っている状況です。集客スタッフ

がいるから良いというのではなく、今のスタッフ、今の予算でよいのか、

やり方のレベルをもう一段あげる必要性など、危機感が涌いてきます。

ディズニーランド並みの高度なスキルがないと、あれだけの大きな施設

が、このままで大丈夫とは言い難く、もしかすると、ズーラシアの集客

課題が一番難しいのではないかと思います。

33 ページの「金沢の改善課題」に関しては、ハード施設上の問題が多く、過少投資であるのは明らかです。それをどのように直すかという

のは、いろいろな議論がありますが、お金の問題を除けば、取り組む方

がよいことは非常にはっきりしているので、金沢を活かそうというので

あれば、若干の投資が必要ではないかという状態にあります。

34ページで、「ズーラシアと金沢動物園の比較」を見ますと、規模とか動物の数、付加サービスなどを見ると、ズーラシアに比べて大きく劣

るわけではないということがいえます。もちろん規模は小さいですが、

相当の集客マーケティング体制と内容の刷新をやってしかるべきとい

うことです。何もないまま、頑張るというのは、難しいのではないでし

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35 ページの「全体の経営体制」のまとめは、後に議論することにします。

36ページでは各園の「目標管理体制」をみました。すると目標設定・評価の仕組みが事実上存在していないことがわかりました。全国どこの

「公の施設」にも共通する実態で、特にここだけがひどいわけではあり

ません。また、直営のところとズーラシアでは異なっています。ズーラ

シアに関しては少しましで、財団と横浜市の契約として、年次目標の設

定に入園者数と協賛企業数とがあります。しかしながら、ズーラシアで

もそれより下の管理指標、具体的な各分野の人たちに与えられている目

標がありません。自己評価に関しては、財団の場合にはそれなりにはあ

りますが、直営にはなく、また、第三者評価は、直営では制度が存在し

ていません。財団の場合は公表する程度という状況で、目標設定・評価

の仕組みは存在していません。

37ページでは「公式文書にみる各園の具体目標」をみました。「今年度の目標」で、局運営方針というのを作っていて、その中で野毛山、金

沢、ズーラシアも含めて、年度の方針を簡単にうたっています。しかし

あまりにも具体的に欠けています。次に予算ですが、野毛山・金沢が直

営なので、一定の説明をしています。ズーラシアは、外郭団体ですので、

経営の計画として、事業計画を出しています。またMBO(目標による管理:Management by objectives)を係長以上がそれぞれで実施していて、運営方針にそって、具体的な自分の方向を出しています。

しかし、ここで言っている目標管理体制というのは、本当はもう少し

具体的なことをさしています。ズーラシアでは、外郭団体の目標設定と

して、たとえば入園者数が 123 万人という数字を、具体的に設定し、これについて自己評価と、市の方で第三者の評価をすることになってい

ます。直営部分については、具体的な設定がありません。これは動物園

のみではなく、横浜市行政全体に大抵の場合、細かい具体的な設定をし

ていないことが多いということです。

次に自己評価ですが、MBOと局の運営方針の中では「振り返り」をしますが、第三者評価についてはないのが現状です。

「局の運営方針」というのは一応書いてありますが、これは 2004年であるからというような特性があまり感じられません。「緑の環境学

習」だけでは極めて抽象的でもあります。また、野毛山と金沢の違いも

感じられません。「維持管理と運営を適切に行う」ということはわかり

ますが、毎年現状維持の域を超えていないということが問題です。管理

面については具体的な指標がないというのが現実です。内容的には何も

書いていないのと同然とも言えなくもありません。全国の公の施設は大

体このような状況と思われますが、ここも例外ではありませんでした。

このような状態なので、厳しい経営環境にもかかわらず、厳しい管理が

できないということだと思います。

もうひとつ問題なのは、38 ページの「3園の連携不足」です。これは経営体制が違うからということもありますが、それ以前に、どういう

分野でどう連携すればいいのかという発想自体がみあたりません。現場

の人の話を聞くと、「他の園は、競争相手なので、連携しない」といわ

れていた時期もあったようです。基本的にばらばらであるべきだという

ような刷り込みも一部されてきたようです。連携課題がここに書いてあ

るのですが、そもそも気づき自体がされていません。気づいたとしても

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具体的な連携案はなかなか議論されにくいし、直営と財団の混在という

阻害要因が最終的に見えてきます。阻害要因が先にみえるから、連携し

ないという要因もあるわけですが、経営形態を統合しなくてもできる活

動すらやっていないというのが現状です。やはり、できるところから始

めるべきではないかと思います。

単純なことからいえばマーケティングです。実態は、各園それぞれ別

個に広報を実施とありますが、連携案としては同一テーマで大規模に、

共同で何かやるとか、ノウハウを移植とか、そういうことが必要です。

経済性の追求も同様で、共同購買の拡充や、不用品を融通しあうとか、

事務雑用の類は一緒にやるなどです。3つを足して5の力を出すイメージで連携を強化してほしいと思います。

そして人事交流です。CS向上作業部会では、各園でのワークショップを開催しましたが、他の 2園からも職員が参加し、意見を交換しあえたことが、良い刺激になっているようです。こういった機会を今後も増

やしていく必要があると思います。各園での動物の展示とかプログラム

開発もそれぞればらばらにやっているので非効率、といったような問題

もあり、経営体制の統合を待たずに、やれることからやるべきだと思い

ます。

今ある唯一の連携体制が、39 ページの「現在の組織体制」に記載のある3園調整会議です。組織図で色を塗っているところが出席者で、事

務局となる管理課は3係ある上、動物園担当部分は動物園担当係長 1名、担当者 1名ときわめて弱体です。参加者はかなり出ていますが、議題には連絡事項的なものが多く、あまり機能していません。

40 ページには「3園調整会議の問題点」をあげています。参加者が多すぎて議論が一致しないこと、課題レベルが日常的な打ち合わせから

戦略的なものまでばらばらになっていることなどがあげられています。

対策としては、「経営評価」「イベント調整」などのテーマ別の開催や、

本庁レベル・係長レベル、担当者レベルなど分けてやったらどうかとい

うことです。とにかく「全員集まって連絡をやっています」というのは、

機能しないので、連携体制の工夫が必要だと思います。お互いに、好事

例でも悪事例でも、あるいは、入園者数の報告でもよいと思いますが、

日常の基本情報の交換という次元でも、日々できるところからお互いに

情報を交換しあうというところから始めてみたらどうでしょうか。

41 ページの「統括体制や管理運営上の問題点」は経営形態の話につながるわけですが、1番目に、結局 3つの園それぞれと市役所、この 4つがばらばらに動いているように見えるということが記載されていま

す。公園部の中の統括体制がどうもはっきりせず、動物園担当係がある

のですが、公園部全体の中のごく一部でしかないということです。

2番目として、緑の協会と市役所の連絡体制がばらばらという点です。協会の各部門と、市役所の各部門がそれぞればらばらにやっている状況

です。

3番目として、管理部門と現場の連携体制も非常に悪いという点です。ローテーションの職場なので、全員が集まらないという問題などもあり

ますが、経営管理上の工夫というのも抜本的に考えないといけない。各

園の中も、各園同士も、本庁との関係もみなばらばらです。皆さん非常

に狭い世界で、頑張ってはいるが、大きなことになると、何も進まない

という状況に見えます。

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42ページの「(財)横浜市緑の協会の主な事業」を見ると、協会はいろいろな事業をやっています。基本的には、もともと緑の協会という名

前ですから、緑の街を作っていこうということが主たる事業なわけです

が、それ以外に、財源として受託事業があって、公園の管理や駐車場の

管理運営というものがあります。そこへズーラシアを管理委託するとい

うことで付け足したという経緯があります。当初は、動物園協会をひと

つ作りたいという案がありましたが、当時、外郭団体を増やすような時

期ではありませんでしたので、緑の協会が吸収したということです。会

計を見るとわかるのですが、動物園が占める事業費が非常に大きく、特

別会計として区分経理された額は 20 億円という大きな額となっています。このように、緑の協会が行うスパンが広いため、緑政局とのつなが

りにおいて、組織については総務部に、公園については公園部に、その

中の動物園については、公園部動物園担当に、というそれぞれのつなが

り方をしているというのが現状です。また、公園部というのは、大きな

組織で、その中で公園の占めるスパンが大きく、動物園は市役所の中で

は、ごくひとつの事業体にすぎません。ですから自ずと、各動物園園長

にお任せになってしまうというような組織体制にならざるを得ない。特

に横浜市では 2005年 4月に機構改革があり、公園部の一部と下水道局の処理場と、河川管理課というところが一緒になり 1つの部となります。ですから、そこの部長では、所掌範囲が大きくなりすぎるという傾向が

あります。

ただし機構としては、動物園課ができ、現在の管理課動物園担当では

なく、動物園課で直接見るようになりますから、各園との結びつきは、

局としては少し強くなるものと思います。ちなみに、動物園担当部長も

来年度は置かれることになりましたので、特に通常業務以外に、このよ

うなあり方懇談会の後の検討というのは十分にできる状態になると思

われます。

43 ページは「市役所直営による運営の是非」についてです。直営かそうでないかという議論ですが、市役所直営が良いか悪いか、動物園以

前の一般論の話ですが、メリットとしては、法令による公平遵守などの

規定が明確、経営効率を過剰に意識することなく公益を追求できる、政

策と現場が一体だから連携が取りやすいなどがあります。

デメリットの方は、官庁縦割りなので市民サービスの対応能力が低く

なる、公益性を理由に非効率になってしまう、いろいろな規制・規則に

縛られてスピードが遅い、書類作りに追われる、歳入と歳出で分けてい

るので収支状況に応じた経営の伸縮がしにくい、あるいはインセンティ

ブが働かない、公務員の身分保障に安住して仕事をしないなどの問題が

あります。

横浜市の動物園の場合、一般論に加えて、直営のメリットにはノウハ

ウの蓄積があります。専門職種として、動物園での野生動物の飼育繁殖、

調査・研究および普及活動に従事する「動物職」があって、正規の職員

の動物職であるため、横浜市の動物園で仕事をしたいという人が来ると

いうメリットはあります。また、安定した経営ができる(これは財政状

況が良かった時の話ではないかと思います)、いろいろな手続きが同一

組織内でできて効率的であるなどがあげられます。デメリットは、細か

いところまでチェックが行き届かない、危機感が薄くなる、会計制度な

どが動物園にあっていない、動物園の経験のない人が、園長に定期人事

で異動してしまうというようなことがあります。

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44 ページに、これまでの横浜市の動物園の「歴代園長の専門性」について、専門性、経験、在職期間などについて調べてみました。

まず①の「専門性」についてですが、これは、動物に関する知識があ

るかどうかということで、横浜市にある動物職、獣医師職、生物職の 3つの職種について専門性があるものとしました。結果として全部で 25名の園長のうち、専門性が認められた園長は 12名で、全て獣医師職です。

②の「経験」については、園長着任以前に動物園での業務経験がある

かどうかをみました。野毛山では、15 代の園長のうち動物園経験があったのは繁殖センター長から異動した現職 1名のみでした。ズーラシアは、獣医師として動物園に採用され、最終的には東京都の動物園長に就

任の後、ズーラシア園長として就任しています。金沢動物園では、かつ

て、野毛山動物園で飼育係長を経験の後に園長に就任した例が 1例でした。繁殖センターについては、動物園が 3つできてから開所したということもあり、4名中3名が動物園経験のある人材として就任しています。③の「在職期間」につきましては、3年以上動物園で園長として在籍

した園長が 8 名で、一番長い例では 11 年というのがありましたが、平均は 3.4年となっています。専門性、過去の経験がある人であれば、動物園に対する予備知識や就

任後の習熟度はある程度早いとおもいますが、経験や専門性のない人が

来て、2年で異動してしまうというのは、現場からするとかなり大変な

ことで、在職期間についても考慮する必要があると思います。

また、動物園に行った時に園長の「顔」が見えない、感じられないと

いうことがあります。ズーラシアの園長は有名ですが、動物園に行って、

園長と握手をしたり、動物の話をしてくれる園長がいたりしたら、「あ

ー来てよかった」と思えると思います。園長でなくてはということでは

ありませんが、やはり、動物園の顔は園長です。園長というのは、それ

だけの「顔」と責任があると思います。そして「経営しているという感

覚」でいて欲しいと思います。旭山動物園の園長には、自分が旭川市の

動物園を背負って進んでいるという気迫が感じられます。こういう気迫

に職員が付いていくということで、旭山動物園が活性化したのだと思い

ます。園長にどこまで権限を委譲するかということも考えなければいけ

ない重要なところだと思います。

45 ページは、「指定管理者制度」についてです。2003 年に地方自治法の一部を改正する法律が施行され、「指定管理者制度」が創設されま

した。これは、多様化する市民ニーズに、より効果的、効率的に対応す

るために、民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図るととも

に、経費の節減を図ることを目的としています。このことから、民間事

業者も公の施設の管理が可能となりました。横浜市では、2006年 9 月までに、従来外郭団体に委託してきた施設については、原則として指定

管理者に移行することにしています。現在、指定管理者制度を導入した

施設は、(財)横浜市芸術振興財団が指定管理者となった「横浜市民ギ

ャラリー」や、日本赤十字社が管理者となった「みなと赤十字病院」が

あります。公園関係では、(財)横浜市緑の協会と横浜・八景島グループ

がいくつかの公園の指定管理者となっています。

46 ページは、「市役所職員の動物園に対する見方」が出ていますが、これはもうひとつ大きな経営体制上の問題として、市役所自体に、そも

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そも第1章で述べたような動物園の存在意義や基本方針についての定

見がないようだということです。これは、いろいろなヒアリングや、懇

談会の話から抽出して編集してきた結果です。左側は積極支持型。反対

の右側に懐疑型です。そもそもなぜ市役所が希少動物の保護繁殖をやる

のか、国やNPOがやればいいじゃないか、市外からの利用者が5割では市民のための施設とは言いにくいのではないか、見直しするべきだっ

たのに結果的に3つもあるのはおかしいのではないかといった意見で

す。中央の現状肯定型は、そうは言っても、大都市には動物園はあるも

のであるし、横浜市は南北に長いから3つくらいあってもいいのではな

いか、あるいは、緑や自然の保全のためにもあるので他に転用する必要

もないから今のままでよいのではないか、これまでの積み重ねを考えて

このままでいいのだ、といった人たちです。これらはどれが特に間違っ

ているわけでもなく、全てそれなりに一理あるのですが、問題は統一方

針というものが市役所として存在しないという点です。

35ページに戻って、「全体の経営体制の課題」として以上の議論をまとめています。これはかなり深刻だと思います。現状分析のところで現

れたのは、入園者数の減少と、マーケティングが中心だったのですが、

経営体制に関しては、あまりいい話がなく、かなり問題だといわざるを

得ません。まず、

①全国ほとんどの「公の施設」と同様に具体的な達成目標がないこと

です。職員はまじめに仕事をしているのは良くわかりましたが、現場レ

ベルでやってもやらなくても同じ、管理・評価の体制が存在しないとい

う状況です。したがって、現状を変えたり、新しいことに挑戦すること

を促す環境になっていません。現状維持をすることはできているわけで

すが、今のような入園者数の減少傾向と同じく、組織の方もジリ貧とい

う構造になっています。

②3園が別個独立のものと位置づけられていて、スケールメリットが

追及できていません。市役所担当部は調整機能すら果たせていないし、

管理不能状態になっています。

③直営2つと、ズーラシアを比べると、外部環境への対応能力や経営

効率の格差は明らかで、今後とも直営を維持すべきか見直しをすべきで

す。

④横浜市の動物園行政を見ると、過去において場当たり的な整備の歴

史を繰り返してきました。しかし今回の見直しも場当たり的では困ると

いうことです。市役所として、動物園に何を期待するのかをはっきりさ

せる。その上で直営として担うべき機能は何か、現在は動物飼育を職員

がやりその他の部分も直営ではほとんど職員がやっているわけですが、

機能別に見ていった場合に果たしてそれでいいのかということです。そ

もそも現実的には今財団が運営しているのですが、出資財団が果たして、

全てを受託していて良いのか、という具体的な議論ももっとやっていく

必要があります。たとえば、島根県の県立美術館の指定管理者の指定の

場合は、学芸部分は直営ですが、それ以外は全部、民間業者に任せると

いうような流れになっています。動物園で言えば、飼育係以外は、すべ

て民間という選択肢もあってもおかしくない時代なので、そういう意味

で言うと、とりあえず直営と財団が一緒になっているというのは、非常

にやりにくいというのがはっきりしています。懇談会では経営を統合す

る方向を検討したものの、果たして、それを財団がやればそれでいいの

かというと、それもパーフェクトな答えであるかどうかよくわかりませ

ん。そこまで含めて考える必要があると思われます。

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第 3章 市役所が取り組むべき経営課題

47 ページは「市役所が取り組むべき経営課題」として、課題を大きく 3 つのレベルに分けました。その理由は、「現状で具体的にできるところからやろう」というレベルから、「そもそも横浜市の動物園とは」

というような「そもそも論」のレベルの話もあるので、両方を明確に区

分したうえでの検討を進めていくためです。

レベル1は、各園の今の園長と今の体制の中で、できることにとにか

く取り組むという現場改善活動のレベルです。

レベル2が 3園の連携、スケールメリットの追及です。これは、財団問題や経営体制など、大きなレベルの話以前のものです。マーケティン

グが中心になると思いますが、連携してやれることはどんどんやったら

どうかということです。

レベル3が、もっと大きな話で、市役所はそもそも一体何を狙うのか、

動物園の存在意義を市役所全体で再確認したり、経営体制の見直し、直

営の是非といったレベルの話です。

特に、レベル3に関しては、本庁担当部門と3園が一緒になってやる

必要があります。これはともすれば、抽象論になるので、もう少し具体

的な話から入るために、レベル3をさらにブレイクダウンして、まず取

り組む課題として①野毛山の受益者負担問題、②金沢の戦略の見直し、

③ズーラシアの投資、の3つの重点課題をあげました。

これらを今後どのようするのかについて考えていく中から、各園の

性格がはっきりしてきて、経営体制問題などにもつながっていくのでは

ないかと思います。案の構築にあたっては、テーマパークなどの民間ビ

ジネスのノウハウを持った専門家の参画を得ることが必要です。特にズ

ーラシアの経営危機というのは目前に迫っているわけですから、かなり

早い段階からテコ入れしないと、転換するのに時間がかかるわけです。

また、経営体制の見直しを庁内メンバーや財団スタッフのみに委ねない

で、外部の専門家の助言を得るべきです。これは、経営体制の方も、中

だけで検討すると、ありきたりの答えになる可能性が高いと思うからで

す。つまり、財団に全て一本化しておしまいという答えになる可能性が

高いのであり、また、「民間に任せると言っても」というような話で、

全部丸抱えで結局役所と変わらない財団が引き続きやって終わるとい

うようなことになりかねないということです。

ズーラシアの集客戦略については、今の戦略が間違っているのではな

くて、今のままやるだけでは非常にリスキーだということです。また、

民間企業の活用のあり方ですが、これは、指定管理者制度も踏まえてと

いうことになるので、財団を交えて、議論するべきではないということ

です。ですから本庁側として、独立の視点から、今ある財団に果たして

任し続けて良いのか、あるいは専門財団を作るとか、あるいは民間企業

に一部任せるとか、そういった議論をやるべきです。別に財団が悪い存

在だと決めつけているのではなく、事柄の性格上、一線を画した議論の

場が必要です。

そして当面最も重要なことは、集客、利用者満足度(CS)の向上に力を入れる必要があるということです。目に見える成功体験がないと、

全体に縮小均衡にいってしまいます。前向きの拡大再生産に持っていく

ためには、やはり、集客努力において具体的な成功体験が極めて重要で

はないかということです。また、忘れてはいけないのが、友の会、ボラ

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ンティアです。様々な課題を現在の職員の体制だけで取り組むのは、か

なり大変で限界があるので、友の会とかボランティアの活用策をもっと

抜本的に見直し、足りない部分は助けてもらった方が良いと思います。

48 ページは「課題の構造化」として 3 つのレベルに分けました。右側に包括外部監査の指摘事項が書いてあります。レベル 1は、日常各園でやることです。この段階の課題はこれまでに検討した中から出てきて

いますから、5月中くらいに具体的な行動目標という形で作ったらどうかと思います。レベル2は、各園の連携体制のうえでやっていくもので

す。レベル3というのは、動物園担当部長やスタッフの人たち中心に、

もう少し時間をかけて検討していくということだと思います。

49 ページは「3 つの重点課題」です。検討は抽象論ではなく、具体論から入るというものです。

①野毛山の受益者負担問題は、直営である限りは難しいのですが、野

毛山では、受益者負担というのを取り入れる方が、経営的にはもっと締

まっていくのではないかという議論です。単にお金が入るからいいとい

う意味ではない。競争力がつく施設になるのではないかという意味で、

あえて受益者負担を入れたほうがいい。

②金沢の戦略の見直しは、施設などの投資も多少は行い、リニューア

ルしていくことに加えてマーケティングの体制も確立していき、それに

先立つコンセプトの見直し作業があります。

③ズーラシアの投資戦略は、従来からの投資戦略があるのですが、果

たしてそれでよいのか、アフリカ区の整備よりもトラムやビジターセン

ターなど、今来ている利用者の落ち込みを防ぐためのこまめな追加投資

の方が、優先度が高いのかもしれない。あるいは、ソフトな部分を投資

する必要があるかもしれない、などの見直しが必要ではないかというこ

とです。いずれにせよ、ズーラシアは未完なので、それをどういうふう

に完成させるか。当初の計画通りやるというのではなくて、集客、競争、

競合戦略という観点からもう一度見直す必要があります。

50 ページでは「重点課題1.野毛山の受益者負担問題」として、重点課題をさらに掘り下げました。今までの議論をまとめてありますけれ

ども、これには賛否両論あります。課題の設定としては、受益者負担の

考え方であり、

①得た収入をマーケティングや展示に活かせるなら好循環がきたい

できる、

②他の2園は有料でここだけ無料はおかしい、

③お金を取る方も払う方も費用対効果を考えるようになり、経営効率

が上がる、

という考え方です。収入が増えるからという単純な話ではありません。

賛否両論はいろいろあります。賛成派としては、楽しくてこれくらい

払っても行きたいという内容であれば払うのはかまわない。あの規模で

無料の施設はないのではないかなどがあります。反対派としては、お金

がかからないという魅力が失われる、学習の機会を得られるから無料で

よい、無料だから行く、などがあります。

51 ページは、「野毛山の受益者負担・コストシミュレーション」として一定の想定のもとで、計算をしてみたものです。 3つのケースを計

算してみました。過去の事例から、例えば大人 300円、子供 100 円と

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して、入園者の過去の事例から算定して、有料化により入園者がおよそ

3割減少すると想定します。この場合、券売機の設置等の費用を引いて、6500 万円の利益が見込まれます。こちらを全てマーケティングに使うとすると、マーケティングスタッフに使えたり、ポスターを 4000枚作ったり、キャンペーンを行ったりすることができます。また、そこまで

やらなくてもケース③のように募金箱を設置するだけでも、およそ700万円の利益が見込めるというようになっています。野毛山で得た収入を

野毛山だけで使うのかという議論も出てきます。野毛山の投資は終わっ

ているし、人はあれだけ来るし、野毛山で得た収入を金沢へまわすとい

う、そういった展開もあるのではないかと思います。そのように考える

と、野毛山の収益ポテンシャルというのは、見逃せないのではないかと

思います。

52ページは、「重点課題2.金沢の再生案」ですが、懇談会でも結論は出し切れていません。これは市役所が一体どういう方向なのかという

こととセットで考えるべきものなので、もう少し議論を深めていただく

必要があります。あくまで例ですが、

オプション①は、教育・学習センターとしてまったく新しいコンセプ

トの動物園にかえてしまったらどうかということです。一般向けにたく

さんただ来てくれればいいというのではなくて、団体ツアー客を中心に

フルアテンドでやっていくというもので、ズーラシアと野毛山とは別の

形で特化するというひとつの案です。これもメリット、デメリットがあ

ります。

オプション②は、現状のまま、もう一回リニューアルしてみたら、人

が来るのではないかという投資です。かつて人が来ていた時期があるわ

けですから、そういう意味で、こまめな投資をすれば、もう一回復活し

て花が開くのではないかということです。ただし、これはお金がかかり

ます。

オプション③は、順次小さくしていくという縮小均衡案です。いずれ

のオプションにせよ、現状のままということはないと思います。

53 ページは、当初包括外部監査でも言及されていた「金沢の閉鎖シミュレーション」です。単純計算だと年間 3億円分安くなるものの、長期的には閉鎖のプロセスやコストなどを考えると決して安いとはいえ

ず、跡地利用をどうするかも考えるならば、必ずしも得策とはいえませ

ん。

54 ページは、「重点課題3.ズーラシアの投資戦略」です。これは、先ほどから述べているズーラシアの入園者数の減少傾向とセットです。

旭山動物園の投資のパターンも参考にしながら、集客ということを意識

した投資をする必要があるのではないかというものです。かなり具体的

な投資をこまめにすることが必要です。逆に言うと、「完成後は投資し

ない」というコンセプトでよいのかということです。

55 ページは「各園のメリハリづけの可能性」という議論で、これまでの懇談会でも随分議論しましたが、懇談会の段階ではなかなか言い切

ることができなかったものです。というのも 2つ問題があって、ひとつは今ある施設でさえも十分活かしきれず、集客不足と、過少投資がある

という点と、2 つ目は、結局、コンセプト、メリハリ付けといっても、来園者の間では 3つが連携して理解されていないということです。3園

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(事務局)横浜市 環境創造局 環境施設部 動物園課

〒231-0017横浜市中区港町1丁目1番地

TEL 045-671-4124