「発達支援を通して見えてくるもの」 · 2018. 2. 28. ·...
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第22回通園協研修会 分科会2 「発達支援を通して見えてくるもの」
芽室町発達支援センター
遠藤 安英
発達支援を通して見えてくるもの ~芽室町発達支援センターの取り組みから~
• 芽室町発達支援センターの概要
• 支援を支える3本の柱
① 児童発達支援 療育の様子から(専門支援事業より学んだ療育のポイント) 三種の神器
② 保護者支援 ペアレントトレーニング
③ 地域支援 研修会 巡回相談
• ゴール(目標)から考える発達支援
芽室町は、 芽室は、帯広のお隣さん
人口は、19,243人(26年4月現在)
農業の町(スイートコーンの生産量が日本一)
ご当地B級グルメは、「コーン炒飯」
ゆるキャラは、「まちるだいすけ」……らしい
ここ
外部機関 ・医療機関 ・療育機関 ・相談支援 事業所 ・余暇支援事業所 ・私立幼稚園 等
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福 祉
教 育
福 祉
保健福祉
芽室町が目指す地域支援システム
高 校
中学校
小学校
幼稚園
生活支援
就労支援
保 育
健診・療育
個別支援計画・めむたっち
道教委
保健福祉課
産業振興課
子育て支援課
保健福祉課
町教委
発達支援センター
子育て支援課
保健福祉課
自立支援協議会(発達支援部)
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子育てサポートファイル めむたっち
児童の情報が一冊のファイルにま
とまっていることで、必要な時に必
要な機関へ、正確な情報を引き継
ぎ、タイムリーに必要な支援を受け
ることができるためのツール。
平成21年より運用開始。
http://wwwmemuro.net/kosodate/support.htm
• めむたっちを管理するのは保護者。
• めむたっちの様式は、母子健康手帳を
補完するような様式、各ライフステージ
ごとの記録、医療や相談の記録、預け
るときに相手方に知っておいて欲しいこ
となどが含まれている。これをファイル
にして、母子健康手帳の交付と同時に
全ての子どもに配布。
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芽室町発達支援センターの概要その1 昭和56年 「芽室町ことばの教室」が開設
平成21年 「芽室町発達支援センター」として事業開始
平成23年 児童デイサービス事業を開始
平成24年 児童発達支援・放課後等デイサービス事業を開始
平成25年 保育所等訪問事業を開始
平成26年8月 発達支援センター増改修工事を開始
平成27年3月 発達支援センター供用開始
芽室町発達支援センターの概要その2
利用者数(平成26年4月現在)
① 児童発達支援 26名
② 放課後等デイサービス 78名
職 員
管理者1名
児童発達支援管理責任者1名
指導員7名(地域コーディネーターと発達心理相談員を含む)
芽室町発達支援センターの支援メニュー
療
育
個別療育 担当者と1対1で、お子さんの発達・課題に合わせた療育を行いま
す。
グループ療育 小集団で、行動面や社会性の課題に焦点を当てた療育を行いま
す。
短期プログラム 所定の回数の中で、特定の課題に焦点をあてたプログラムを行い
ます。
連 携 所属・関係機関と情報交換しながら、支援方法を検討します。
相 談 保護者・本人からの相談をお受けします。
平成27年3月に建物が
新しくなります
現在の建物
新しい建物
平成28年 完成予定の 子どもセンター
支援を支える3本の柱
発達支援センターの役割として、児童への「発達支援」はもちろん大黒柱ですが、「保護者支援」と「地域支援」も大切な役割と考えています。
地域支援
発達支援
保護者支援
芽室町発達支援センターでの
療育の様子を道の補助事業
「専門支援事業」から紹介しま
す。
児童発達支援
専門支援事業の概要
障がい児施設や医療機関の専門員 (理学療法士、作業療法士、心理士、言語聴覚士、等)
子ども発達支援センター
子どもが所属する 幼稚園・保育所等
子ども・保護者
訪問し幼稚園保育所等を支援
連携し子どもや保護者を支援
発達相談 通所による療育
専門支援事業
芽室での専門支援事業の活用方法
発達心理相談員 帯広児童養育センター
心理発達面のアセスメントと評価・助言
芽室町発達支援センター
作業療法士 運動発達面のアセスメントと評価・助言
OT専門支援にむけて、子どもの様子(実態)
4歳5か月児 男の子 現在の様子
• 階段は、左右交互に出して登れるが、降りるときは一歩ずつになる。
• 両足跳びはできるが、ケンケンはできない。
• 50cmぐらいの高さを飛び降りる時は両足揃えて着地ができない。
• ぬりえやお絵かきは、筆圧が弱め。
• 単語で言えることばが増え、2語文も聞かれるようになった。発音は不明瞭。
保護者の願い
• 話を聞いてから、指示に沿って動けるようになってほしい
• 気がそれると話が聞けなくなる時があるので、話が聞けるようになってほしい。
担当者として検討したいこと 専門支援
• 運動面や手の動かし方についてどのような支援を取り入れていったらよいか知りたい。
当日の療育略案 活動内容 留 意 点
あいさつ スケジュールの説明
座る姿勢の確認 話を聞く。静かにする。(リマインダーの提示)
絵本 一緒に声を出す。
切り絵 ハサミで折り紙を折り、台紙に貼っていく
クレヨンの持ち方。 片方の手で紙をおさえる。
ライオンを作る たてがみを洗濯バサミでつくる
見本を見てつくる。 洗濯バサミの使い方。
サーキット遊び ・ドレミでぴょんぴょんをゆっくり歩く ・平均台を渡る ・階段を登って飛び降りる ・プラポイントを両足跳び ・トンネルをくぐる
プレイルームに移動 大人の動きを見て同じ動作をする
車であそぼう ・自由に乗って遊ぶ
振り返り 指導室に戻る。カードにシールを貼る。
• 持ち方が握り持ち。現時点ではそれが「楽な持ち方」。
• 始めに正しい持ち方を教え、あとは自由に描かせて「楽しい」と感じさせてあげることが大切。
作業療法士からの評価・助言1
• クレヨンを持つ手に力が入っている。描きやすいマーカーなどを使うのも方法の一つ。
• 紙がずれないようにテープで留めるなどの配慮があると良い。
• 物を置くときは、正面から広げて置くようにする。
• 利き手が決まってくると、どこに置いてあっても持ちやすい方の手に持ち替えるようになる。
作業療法士からの評価・助言2 • 手の動きを見ていると、左手が優位だが、まだ利き手が決まっていない。
• 右にあるものは、右で持ち、左にあるものは、左で持つ。
• はさみは、左右があるので、優位と思われる左手に持たせる。
• 最初に正しい持ち方を教え、「できる!」意欲につなげる。
• 次回の時には、リセットされて元に戻ってしまう場合が多い。
• 何度も繰り返して経験を積むことが大切。
作業療法士からの評価・助言3
作業療法士からの評価・助言4
サーキット
体を動かすことが、苦手なお子さん。
土踏まずが形成されているかを確認。
つま先立ちやしゃがむような体の動きを取り入れる。 簡単なものから徐々に難
しい課題へ。
ただし、本児が自信のあるものは、必ず残しておくこと。
繰り返し取り組むことで体の動きがよくなり、意欲も出てきた。
しかし、次回にはリセットされてしまうことが多い。経験の積み重ねを大切に。
本児の様子に合わせながら、置き方や使うものを変える。
変化が重要。
簡単すぎると足形があっても見ていない。
少し難しく、変化をつけて、対象物への気づきを引き出す。
三種の神器 芽室町発達支援センターでは、平成23年から「たすくの療育」を学び、療育に取り組んでいます。
三種の神器とは、発達支援のスタートラインにおいて、「無くてはならない必須のツール」です。
(たすくメソッドより)
コミュニケーション
スケジュール タスク・オーガナイ
ゼーション
コミュニケーション
評価のポイント
① 代替えの手段はありますか?
② 一日のお子さんからの発信(表出)
をする機会の回数は?
③ 聞き取れる音声言語は?(単語・
二語文・三語文・それ以上)
PECS カードコミュニケーション
ツール
CAT‐kit
気持ち日記
スケジュール
評価のポイント
① どのように知らせますか?(絵・写
真・文字・音声言語)
② ご褒美や活動の切れ目までの時間
は?(課題ごと・15分・30分・
1時間以上・一日・一週間)
タスク・オーガナイゼーション
評価のポイント
① 利き手は決まっていますか?
② 利き手と反対の手を添えて食事が
出来ますか?
③ 左から右、上から下の流れで自然に
認知することが出来ますか?
今年度より、新たな試みとして、「ペアレント・トレーニング」を取組み始めています。
保護者支援
ペアレントトレーニングの目的
子どもの「行動」に焦点を当て、その特徴を理解する。
より効果的な対処法を学ぶ。
親子間のコミュニケーションをよりスムーズにし、より良い関係を築く。
それぞれの自己評価の低下を防ぐ
発達年齢4歳~10歳の発達障害をもつ子ども(ことばでのやり取りがある程度でき、褒められて喜ぶ子ども)の保護者
顕著な性格の偏り、著しい心理的・情緒的な問題、深刻な夫婦間の問題、定期的な参加が困難、などを抱えていない方
保護者支援
ペアレントトレーニングが
最も効果的な対象者
「こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル」 中央法規出版より
1回1時間半、全10回 2週間に1回、期間は約半年(長期休暇中はお休み) 毎回少しずつ異なるテーマ 前の会で学んだことを土台に、以降のプログラムを積み上げていく「ステップ・バイ・ステップ」
保護者支援
ペアレントトレーニングの
プログラム構成
「こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル」 中央法規出版より
保護者支援 プログラムの流れ
第1回 オリエンテーリング・子どもの行動を3種類に分けましょう
第2回 肯定的な注目をあたえよう・ほめ方のコツ、スペシャルタイム
第3回 好ましくない行動を減らす① ~上手な無視のしかた
第4回 好ましくない行動を減らす② 無視とほめるの組合せ
第5回 子どもの協力を増やす方法 :効果的な指示の出し方①
第6回 子どもの協力を増やす方法 :効果的な指示の出し方②
第7回 子どもの協力を増やす方法 :よりよい行動チャート
第8回 制限を設ける :警告とペナルティの与え方
第9回 学校との連携
第10回
「こうすればうまくいく発達障害のペアレント・ト
レーニング実践マニュアル」
中央法規出版より
芽室町発達支援センター学習会を、町内保育所・幼稚園・学校などの関係者に呼びかけて実施しています。 平成25年度は、延べ317名の参加がありました。
地域支援 日時 テーマと講師 内容
5/10
「3歳児の発達」 発達心理相談員 有本 和晃
3歳は言葉や運動の発達が目覚ましい時期です。3歳児にできること、できないこと、この時期取り組むべき課題などを発達段階に沿って学びます。
6/14
「アサーショントレーニングの実際」 芽室南小学校長 狩野 信也 氏
適切な自己主張:アサーション。社会性は社会的ルールを学ぶ+自ら適切に伝えるという双方向。子ども達が自己主張を学ぶアクティビティについて学びます。
7/12
「発達障がいの理解と支援」 ・発達障がい当事者青年(18歳) ・地域コーディネーター 清末 有二
「理解は最大の支援」発達障がいとはどのようなことを指すのか学びます。当事者青年に協力をお願いし、学校・友だち・自分理解について話していただきます。
9/13
「自立課題のつくり方」 NPO法人わいわいクラブ 児童発達支援員 浦辺真由美 氏
「自分でできる」教材は大切です。かかわりながら取り組むことも大切ですが、自立して取り組むことも必要。それを教材でどのように構築するのか学びます。
10/11
「ペアレントトレーニング」 発達心理相談員 有本 和晃
予定が変更になりました。 ~効果的に子どもをほめてのばす親になってもらうには~
11/8
「子どもの運動発達支援」 帯広けいせい苑
広川 暢恵 氏
発達支援センターをご指導いただいている広川先生に来ていただき、支援の視点や指導事例へのアドバイスなどを学びます。
1/10
「認知行動療法」 発達心理相談員 有本 和晃
認知行動療法は、認知(考え方、受け取り方)に働きかけて、不適応状態の改善を図る心理療法の一種です。基本となる考え方や、関わり方について学びます。
幼稚園・保育所 巡回相談事業 児童クラブ・児童館 巡回相談事業
• 地域コーディネーター、発達心理相談員、保健師、発達支援センター職員、子育て支援センター職員が、2人1組で町内の幼稚園保育所を巡回し所属支援を行なっています。
• 無認可の保育所も対象とします。また発達支援センター在籍児童で他市町村の幼稚園保育所に通っている場合には、保護者の希望と当該所属の了解のもと実施します。
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目標
①子ども一人ひとりのケースに関する情報交換
や支援を活発化する。
②個別支援計画の理解促進を支援する。
③町の子育て支援方針を共有する機会とする。
実施:年3回
3回目(2~3月)の巡回相談は、新就
園児・新入所児の情報提供を中心に実施
する。
地域支援
まとめ ゴール(目標)から考える発達支援
子どもの発達を支える「療育」 から 環境を整える「発達支援」へ
就労までの道すじをイメージできる発達支援が今後の課題