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持続可能な開発目標(SDGs)の主流化に向けた SDSN Japanからの提言 武内和彦 国連大学上級副学長 SDSN Japan副議長 東京大学教授 201641614:30-15:00 国連大学ウ・タント国際会議場 SDSN Japan公開シンポジウム 「持続可能な開発の主流化を目指して:G7サミットプロセスを視野に」

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持続可能な開発目標(SDGs)の主流化に向けたSDSN Japanからの提言

武内和彦

国連大学上級副学長

SDSN Japan副議長

東京大学教授

2016年4月16日 14:30-15:00国連大学ウ・タント国際会議場

SDSN Japan公開シンポジウム「持続可能な開発の主流化を目指して:G7サミットプロセスを視野に」

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1992年 環境と開発に関する国連会議(UNCED:地球サミット)

⇒「環境と開発に関するリオ宣言」「アジェンダ21」の採択

⇒「気候変動枠組み条約(UNFCCC)」「生物多様性条約(CBD)」の採択

⇒「地球環境ファシリティ(GEF)」「国連持続可能な開発委員会(UNCSD)」の創設

2002年 持続可能な開発に関する世界首脳会議

(WSSD:ヨハネスブルグ・サミット)

⇒「ヨハネスブルグ実施計画」の採択

1972年 国連人間環境会議 (ストックホルム会議)

1987年 『ブルントランド委員会報告書 (Brundtland Report)

-Our Common Future-』

2012年 国連持続可能な開発会議(UNCSD, Rio+20)

環境と開発に関連した国際動向 ミレニアム開発目標に関連した国際動向

1995年 世界社会開発サミット

2000年 国連ミレニアムサミット⇒「ミレニアム開発目標

(MDGs)」の検討、採択(2001年)

2015年以降の「開発」アジェンダ/持続可能な開発目標(SDGs)

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我々の世界を変革する

持続可能な開発のための2030アジェンダ

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ミレニアム開発目標(MDGs)

3外務省ホームページより

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持続可能な開発目標(SDGs)とは?

• 2012年のリオ+20(国連持続可能な開発会議)により設定が合意された国際目標• ポスト2015年開発アジェンダ(ミレニアム開発目標後の国際目標)に統合

• 2013年~2014年 国連でのオープンな作業部会(OWG)による国際交渉• 2014年の国連総会でOWG提案採択(17目標、169ターゲット)

• 2015年 ポスト2015年開発目標交渉

• 2015年9月国連総会にて採択

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• 『目標 – ターゲット – 指標』の三重構造

• 進捗状況のモニタリングと評価を実施(法的義務はなし)

• 2030年を目指した目標

• グローバルな性質ですべての国に普遍的に適用可能

• 様々な国別の状況、能力、開発レベルや政策及びその優先順位を考慮

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持続可能な開発目標(SDGs)

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MDGsの残された課題の達成 地球システムの

限界からもたらされる課題

大前提

社会的な持続可能性(衡平性、公平性等)

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持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)

・研究機関や大学、企業、市民団体等を含むステークホルダーの独立したグローバルな新ネットワーク・2012年に潘基文国連事務総長によって設立

・世界の環境・社会・経済問題の解決策を見出し、持続可能な社会の実現を目的としている

SDSN Japanは、その活動を通じて、国レベルのSDGsの

構築や実施に向けた取組への重要な貢献を行うことを目的としている。

SDSN Japanは今後何をするのか?

ISAP 2015,パシフィコ横浜にて

持続性に関するアウトリーチと能力向上

Future Earth関連

も含め、会議やワークショップ、セミナーを開催

多様なステークホルダーが参画し、活動するための革新的なプラットフォームを設置

SDGsの実施に関する他国のSDSNとの協働的な研究の実施

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持続可能な開発目標(SDGs)の主流化に向けたSDSN Japanからの提言

背景と構成

• G7各国のリーダーや政策決定者の更なるリーダーシップを求めることを目指す。

• SDSNメンバーと提言を共有し、国際社会に発信し、今後のSDSN活動の世界的展開に寄与。

• 提言は、各分野の専門家により構成されたワークショップの議論の成果を踏まえたもので、以下の3部構成。

① SDGsがもたらす社会変革

② SDGs実施の推進体制枠組:ガバナンス及びステークホルダーの役割

③ 個別主要課題への対応:気候変動、持続可能な消費と生産(SCP)、生物多様性、開発・国際協力と教育

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提言:SDGsがもたらす社会変革

• MDGsからSDGsへ:全ての国を対象とする普遍的な課題解決を目指す。経済課題から経済、社会、環境を統合したアジェンダへ。

• SDGsは社会全体の変革を目指す。このため、一人一人の行動に反映されるべき。誰一人取り残されない(Noone will be left behind)⇒「人間の安全保障」の考えと軸を一つに

• G7の役割:SDSNの世界ネットワークは、今後も協働してG7サミットプロセスに働きかけを継続していくことが期待。

• 各国のSDGs推進に関する政策協調が必要。

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提言1-1.統合的な司令塔の設置・経済、社会、環境面の政策を統合して実施するための制度、政策全体の司令塔を創設すべき。

提言1-2.SDGs実施戦略・計画の策定

・目標達成に向けた実施戦略・計画を策定すべき。

・実施戦略・計画は、国内政策と国際協力政策の2つの側面をカヴァーする。・地方自治体における実施戦略・計画の策定を奨励。

提言1-3.政策協調・政策統合

• G7間でSDGsへの対応や実施戦略・計画、指標の相互学習や政策協調。

• 目標分野ごとにリード国を設定し、責任を分担してG7の方向性を見出す。

提言:ガバナンスとステークホルダー(1)

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提言1-4.地域(リージョナル)レベルの制度設計・地域レベルの国際機関は、指標統合などで重要。

提言1-5.ステークホルダーの行動・新たなイニシアティブをサポートするための政策措置(助成、税制措置、国際標準など)が必要。

提言1-6.SDGsの普及

・わかりやすい事例(グッドプラクティス)の共有などを通じ、SDGsの多様なメディアを通じた普及を促す。

提言:ガバナンスとステークホルダー(2)

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提言:気候変動と持続可能な消費と生産(SCP)(1)

• 近年気候変動が社会基盤を脅かしつつある。COP21合意により、世界は脱炭素社会に向けて舵をきったことが明確に。

• 今世紀後半までに排出と吸収をバランスさせるには、排出削減パスから乖離がある。今こそ、トランスフォーメーションが必要。社会全体のイノベーションが早期に求められている。

• 排出削減の深堀のためには、SDGsを活用し、多様な分野において削減行動を具体的に推進することが重要。

• パリ協定によって、ビジネスモデルや消費と生産のあり方が変わりつつある。持続的なライフスタイルや、ビジネスモデルを定着させるために、G7諸国は先駆的に取り組むべき。

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提言2-1.統合的アプローチの重要性

• 気候変動対策は、国内事情に応じた他の社会経済問題と合わせて総合的に実施すべき。

• 今後は取組のモニタリングが最も重要。途上国への能力開発では、データベースや指標を基にした政策実施・管理を推奨。

• 経済活動は国境を越える。持続可能なサプライチェーンにおける公的機関の役割は大きい。認証制度の統合を推奨。

• 食品ロスの問題は、SCPの観点から気候変動の緩和につながる。

提言2-2.ステークホールダーの役割

• 政府だけでなく、ビジネス産業界、NGO、自治体、国際機関、科学界等のイニシャティブによるパートナーシップを構築すべき。

• 低炭素社会に向けて投資行動の変革。

• 都市レベルでの低炭素化や自治体の役割が重要。持続的な自治体数も国の目標とすべき。ローカルな指標の開発を推奨。

提言:気候変動と持続可能な消費と生産(SCP)(2)

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提言2-3.気候変動 (緩和と適応)

• 今後、取組の報告事項や審査方法など手続きを定める必要。一人当たり排出量の指標で長期的目標を把握。

• 長期を見据えつつ、2030年までを検討すべき。実際の生産・投資・消費行動に組み込むため炭素の価格付け(Carbon Pricing)を推奨。

• 途上国支援における適応策は、グリーンインフラの活用を含め、持続可能な開発と一体的に進めるべき。

提言2-4.持続可能な生産と消費(SCP)

• 消費やライフスタイルの転換を視野に、充足性をSCPへの社会・経済転換の主要なアプローチとして政策理念化。

• SCPを通じ、再生可能資源の活用を推進。分散的、省資源型、低炭素型の社会を社会経済戦略に。

• 持続可能なライフススタイルを具現化するため、インフラ整備、研究・技術開発戦略、都市計画の中に組み入れ。

• 「SCP10年枠組」をregionalな実施枠組みに。

提言:気候変動と持続可能な消費と生産(SCP)(3)

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具体的課題解決には多くのSDGsが相互連関

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例:食品問題(食料ロス・食品廃棄物等)とSDGs

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• 生物多様性は、すべてのSDGsの達成に貢献。一方、その他のSDGsの達成は、生物多様性の保全に貢献するが、こうしたリンケージが十分認識されていない。

• 人口、経済活動の増大などにより、生物多様性は急激に減少。このままでは、社会の脆弱性が増大し、SDGsの達成は困難。

• 生物多様性や生態系サービスの持続可能な利用に対する関心は高まっているものの、こうしたアプローチに関する研究・実践・政策は不十分。

→G7各国は連携して調整・研究及び政策

立案を推進すべき。

提言:生物多様性と生態系サービス(1)

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提言3-1 .レジリエントな社会づくり• G7の有する知識、技術、人材、資金などを持ち寄り、「自然に学ぶ解決策」によるレジリエントな社会に取り組む。

提言3-2 .生物多様性の主流化• 様々な意思決定において、すべての主体が生物多様性の価値を考慮する「生物多様性の主流化」。

• 生態系サービスの可視化を行い、国家勘定や報告制度に組み込む。

提言3-3 .多様な主体の参画と実践• 教育やジェンダーバランスの向上、貧困の解消、自然資源の持続可能な消費と生産を実現するなど、個人や地域社会などの多様な主体の参画と実践を促す。

• 持続可能な形で生産されている農林水産物の認証制度などを導入・拡充し、個人の消費行動や官庁、企業等の調達の変革につなげる。

提言:生物多様性と生態系サービス(2)

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• 先進国と途上国といった二項対立から脱却し、あらゆるレベルにおける対等なパートナーシップを実現することが必要。包括的にSDGsを主流化。

• 持続可能な開発の三側面(経済、社会、環境)を統合した社会を実現するため、教育の重要性を認識。

• 公平性を重視し、異なる価値観を共有し、脆弱な者への視点をもち、“生きる力”を持った自立/自律したグローバル市民の育成。

• G7各国は、開発・国際協力や教育を通じた社会構造の変革に向けリーダーシップを発揮すべき。

提言:開発・国際協力と教育(1)

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提言4-1 .開発・国際協力がSDGsに貢献するための戦略

• 開発・国際協力の戦略にSDGsへの貢献を位置づける。(例:援助現場の政策対話の中でSDGsへの貢献を明示)

提言4-2 .開発・国際協力におけるSDGsの具現化

• 開発・国際協力案件において、正当性(Legitimacy)をもった中央政府の責任の明確化と、地方自治体の独自性の尊重に配慮。

• 公正性の高い指標及び透明性の高いモニタリングメカニズムを構築。あらゆるレベル間の縦の相互補完関係と、横の相互依存を確保。

• 社会的公平性を実現するため、適切な指標を用いたモニタリングが必要。より詳細な現状や社会構造の分析、指標開発のための国際共同研究の推進。

提言:開発・国際協力と教育(2)

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提言4-3.開発の基盤としての教育

• 個人のエンパワメントのための教育は開発の基盤。• 教育の機会、プロセス及び結果において公平性が保たれた包括的かつ公正で質の高い教育が必要。

提言4-4.持続可能な開発のための教育(ESD)の推進

• ターゲット4.7(「全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする」)の概念の整理や明確化、知見の共有、具体的な方略・方策に関する研究を国際的に推進。公平性のある指標開発、透明性の高いモニタリングを実施。

• 地方におけるESDの活用や2015年からのグローバル・アクション・プログラム(GAP)に貢献する取組を一層推進。

提言4-5.資金メカニズムの更なる活用

• SDGsのための教育の実施に関する調査研究の推進のため、資金メカニズムの一層の活用を図る。

提言:開発・国際協力と教育(3)

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• 本提言は、第一義的にはG7サミットプロセスへのインプットとして取りまとめたものであるが、多様なステークホルダーへのメッセージとしての意味合いを有する。

• 本提言は、国内関係者との共有はもとより、広く世界に発信していく。

• 将来は、G7メンバー国を超えて、さらにG20メンバー国も視野に検討していくことが望まれる。

• 今後、今回対象としたSDGsのGoals領域以外の分野についても視野に活動範囲の展開を検討すべき。

まとめ(今後の課題など)

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