土庫病院初期研修プログラム...3 第1章 初期臨床研修プログラムの概要...

155
土庫病院初期研修プログラム <2016年度> 社会医療法人 健生会 土庫病院

Upload: others

Post on 20-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 土庫病院初期研修プログラム

    <2016年度>

    社会医療法人 健生会

    土庫病院

  • ■目 次

    はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・2

    第1章 初期臨床研修プログラムの概要・・3

    第2章 初期研修プログラム・・・・・・18 【1】 内科研修プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・78

    【2】 救急研修プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・83

    【3】 地域医療研修プログラム・・・・・・・・・・・・・・87

    【4】 選択必修科プログラム・・・・・・・・・・・・・・・92

    【5】 選択科プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・104

    第3章 研修到達評価・・・・・・・・115 研修内容、指導医、病棟、病院に対しての評価・・・・・・・116

    多職種研修委員会 評価項目・・・・・・・・・・・・・・・122

    患者からの評価 評価シート・・・・・・・・・・・・・・・123

    土庫病院初期研修プログラム 評価表 EPOCに合わせて・127

    小児科研修目標チェックシート・・・・・・・・・・・・・・133

    精神科研修 総括表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138

    16年度の年間プログラム・・・・・・・140

  • はじめに

    2004年に医師の卒後臨床研修制度はインターン制度の崩壊以来の大きな転換がされること

    になりました。従来の大学医局を中心とした研修が医師として必要な基本的臨床能力の獲得に大き

    な妨げとなり、患者・住民の求める医師像との乖離がさまざまな局面で明らかになり、また研修医

    の「過労死」に見られる無権利状態も大きな問題となりました。そうした中で「医師としての人格

    を涵養(かんよう)し、将来専門とする分野にかかわらず、医学および医療の果たすべき社会的役

    割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷または疾病に適切に対応できるよう、基

    本的な診療能力を身につけることのできる」ことを目標とした新臨床研修制度が発足し、地域の病

    院を基盤とした臨床研修を推進すること自体は、日本の医師養成における大きな前進といっていい

    と思われます。

    しかし問題は医師研修の目指すべき方向に沿った教育の場を提供できる医療機関がまだ日本は

    少ないことです。さらにそうした医療機関は多くが民間の経営体で、研修医の受け入れを指導医体

    制、経営面から躊躇せざるを得ない状況も予想されます。

    また、厚生労働省の定める2年間の臨床研修は、本来の医師の身につけなければならない力量か

    らすれば、本当の「初歩」であり、その期間内で「総合的診療能力」を習得することは到底困難と

    いわざるを得ません。2年間の初期臨床研修終了後の、3年目以降の研修の進め方がますます重要

    性を増すものと思われます。

    民医連の医療機関は患者・住民の要求の中から生まれ、発展してきた医療機関です。ここ数年は

    患者のニーズに多面的にこたえるため、病院・診療所だけでなく老人保健施設、保健調剤薬局、訪

    問看護ステーション、ヘルパーステーションなど広く介護・福祉の分野にも展開しています。これ

    まで大学病院で卒後研修する研修医が多数を占める日本の中、地域の第一線の医療機関での医師養

    成システムを築き数多くの臨床医を輩出してきました。そうした研修を受けた医師は民医連の中だ

    けでなく大学、研究機関など幅広い分野で活躍しています。

    21世紀になり、今後医学・医療をめぐる状況はさらに大きな変化が予想されます。脳死・臓器

    移植や遺伝子治療など高度先端医療の進歩の一方、医療費自己負担の増加・医療機関の閉鎖や急性

    期ベッド数の減少など医療を受けること自体が困難な状況が生まれています。長引く不況による自

    殺者の増加、国民全体の健康状態の悪化も懸念されます。

    こうした状況の中、医師に求められる力量・役割もこれまでと大きく変わっていくことは明らか

    です。患者を医学的側面のみならず心理的・社会的側面からもまるごと受け止めることのできる医

    師、自らの専門分野だけでなく幅広い知識と臨床対応能力を持つ医師、医療のみならず保健や介護・

    福祉の分野にも習熟した医師など、今後求められる医師はあらゆる面で「総合性」の獲得が必要と

    なります。

    このような時代の要請に応える医師を育むべく、民医連では、これまで築いてきた初期臨床研修

    の積極的役割を引き継ぎながら、さらなる総合性を持った、患者の人権を守りその要求に幅広く応

    えうる医師を育てるために、新臨床研修制度に対応するだけでなく、その後の生涯学習のための基

    盤を作ることを重視した新しい臨床研修カリキュラムをスタートさせることにしました。地域住民

    の健康のために学び尽力する、熱い志の研修医の皆さんの参加を期待します。

    土庫病院初期研修プログラム管理委員会

  • 第1章 初期臨床研修プログラムの概要

    このプログラムについて

    今回の研修カリキュラムは、研修医・指導医だけでなく多職種の方、医学生、患者・住民の方々にも公開

    することを念頭に作成しました。そのためできるだけ平易で簡潔な内容にすることを心がけました。

    また一般的には教育カリキュラムは目標が先にあってそれを実現するためのシステムが記述されることが

    多いのですが、今回イメージしやすいよう先に研修システムを記述しました。

    【1】土庫病院初期臨床研修の理念

    人権を尊重し、安全・安心の医療・介護を担う医師養成を行います。

    (1)患者中心の医療を実践し、特定の臓器に偏らず、全身を診る医師を養成する(患者中心の医療)。

    (2)高齢者や社会的・経済的困難を抱える人々について深い理解があり、地域の健康維持・増進に役立つことが

    できる医師を養成する(SDH(健康の社会的決定要因)の視点、HPH(健康増進)の取り組み)。

    (3)患者、患者家族、地域の方々、職員ともに育ちあうことができる医師を養成する(チーム医療の中で育ちあ

    う)。

    (4)民医連綱領の実践できる医師の養成をめざします

    【2】土庫病院初期臨床研修基本方針

    地域・住民のニーズに応えられる臨床能力の獲得をめざします。

    総合診療医としての素養をもった医師集団と、多職種スタッフが積極的に関わる初期研修の強みを生かし、さら

    に県内外の研修病院との教育連携で、「当院でしかできない研修」を実施します。すなわち、高齢化がすすむ奈良

    県において外来~入院~在宅など、幅広い診療現場の中で地域ニーズに応える力の獲得を目指します。

    将来、総合診療、また領域別の専門医として地域の病院や診療所で活躍できるような医師の基礎的な力を獲得で

    きる研修を行います。

    【3】研修の到達目標

    「主治医力」を身につけ、地域医療に貢献できる医師になります。

    将来の専門科にかかわらず医師として医学・医療の社会的ニーズを意識しつつ、日常診療で頻繁に遭遇する病気

    や病態に適切に対応できるよう、コモンディジーズ・コモンプロブレム・初期救急対応などの幅広い基本的な臨床

    能力(態度・技能・知識)を身に付ける。また、医療を提供するだけではなく健康を守りそのために社会に働きか

    けるプライマリー・ヘルス・ケアを実践する。

    (1)人権を守る基本的、総合的な診療能力(主治医能力)を獲得する。

    ①患者様を身体的、精神心理的、および社会的側面から全人的に理解し患者様や家族と医療の目標を共有する。

    ②総合性を重視した、医学・医療の基本的な知識・技能を修得する。

    ③一人ひとりの患者様に応じて問題解決を指向する視点を獲得する。

  • (2)患者様の立場に立つ民主的集団医療を実践する能力を獲得する。

    (3)医療の社会性を学び、医師の社会的役割を自覚し、患者様と共に良い医療を追求する視点を獲得する。

    【4】土庫病院の初期臨床研修システム

    (1)初期臨床研修の期間

    ①初期臨床研修期間は、2年間を原則とします。ただし、病気や妊娠・育児などにより90日を超えて研修が

    中断した場合は、2年間での研修修了とならず、必要に応じて延長を行ないます。

    (2)研修システム

    ①初期研修期間として24ヶ月を定めます。

    ②開始後の9ヶ月間は、一年目研修医全員が必修科目の総合内科研修(9ヶ月)(オリエンテーション期間を

    含む)を実施します。

    ③その後2年目にかけて必修科目:地域医療(1ヶ月)、選択必修科目:小児科(2ヶ月)、産婦人科(1.

    5ヶ月)、精神科(1.5ヶ月)救急部門研修(3ヶ月)、外科研修(2ヶ月)のうち二科目以上の研

    修を行い、それ以外の10ヶ月間は研修医の希望に応じて、自由なローテート研修を組み立てる(但

    し、選択した科は最低1ヶ月以上の履修とするが、小児科・救急・外科・地域医療いずれも3か月産

    婦人科・精神科いずれも1.5ヶ月を推奨します)

    ④初期臨床研修修了時に厚生労働省の定める臨床研修修了の認定を行います。

    ⑤途中入職の研修医の場合は、上記の研修システムに準じて土庫病院初期研修プログラム管理委員会におい

    て個別に合った内容で検討します。

    ◆推奨するローテートモデル◆

    4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

    1年次 内科 救急

    2年次 小児科 外科 産婦人科 精神科 選択研修 地域

    保健

  • 【5】研修指導体制

    (1)指導体制

    【6】研修指導体制 組織体制と役職の規定

    (1)土庫病院初期研修プログラム管理委員会 ①土庫病院初期研修プログラム管理委員会は以下の事項の審議を目的とする。

    Ⅰ.初期臨床研修プログラムの作成および改訂

    Ⅱ.研修プログラム間の調整

    Ⅲ.初期研修医の採用承認

    Ⅳ.初期研修の中断勧告ならびに承認

    Ⅴ.初期研修の修了認定

    Ⅵ.研修プログラムおよび研修医・指導医の評価

    Ⅶ.初期研修医の後期研修に向けての進路指導の統括

    Ⅷ.その他、初期臨床研修に関する事項初期臨床研修の研修プログラムに関すること

    ②委員は次に掲げるものをもって組織する。

    Ⅰ.委員長(プログラム責任者)・副委員長(副プログラム責任者)

    Ⅱ.カリキュラム責任者

    Ⅲ.協力型臨床研修病院の研修実施責任者

    Ⅳ.研修協力施設の研修実施責任者

    Ⅴ.指導者

    Ⅵ.外部委員(弁護士・友の会役員)

    Ⅶ.初期研修医

    Ⅷ.その他委員会が必要と認めたもの

    ③会議の開催については以下に定める。

    本委員会の開催数は3か月に1回(年4回)以上とする。

    委員長が必要と認めた場合、臨時で開催することができる。

    本委員会は委員の3分の2以上の参加をもって成立する。但し委任状も含むものとする。

    プログラム責任者

    指導医 (上級医)

    研修医

    研修医

    研修医

    研修医

  • (2)各科初期研修委員会

    土庫病院初期研修プログラム管理委員会のもとに各カリキュラムに初期研修委員会をもち、日常の研修医の

    研修状況の把握・指導上の課題確認と改善・カリキュラムの検討を行います。

    構成はカリキュラムにあたっている初期研修医・カリキュラム責任者・関連する指導者と上級医・研修担当事

    務とし、当該の科に研修医が研修を行っている期間中は、少なくとも月一回は開催します。また、必要に応じて、

    カリキュラム責任者の提案によって看護部門などから指導者が参加します。内科に関してのみプログラム責任

    者・副責任者も参加します

    (3)各科指導医会議

    土庫病院各科初期研修委員会のもとに各カリキュラムに指導医会議をもち、指導医のみで日常の研修医の研

    修状況の把握・指導上の課題確認と改善を行うことができる。当該の科に研修医が研修を行っている期間中は、

    少なくとも月一回開催することとする。

    構成はカリキュラム責任者・関連する指導者と上級医・研修担当事務とし必要に応じ開催することができる。

    プログラム責任者・副責任者も必要に応じ参加することができる。

    内科・救急においては各科初期研修委員会のもとに指導医会議を持つことができるが、総合診療部会での上級

    医の意見を踏まえ、日常の研修医の研修状況の把握・指導上の課題確認と改善を行うことができ、初期研修委員

    会に反映させることができる。

    (4)各科部会での意見集約

    各科部会の時に日常の研修医の研修状況の把握・指導上の課題確認と改善を検討するため多くの指導医から

    の意見を聴取する。

    プログラム責任者もしくは副責任者は、各科部会に出席し一年目の研修医に関する意見を集約することがで

    くる。総合診療部会では少なくとも月一回は意見を聞く

    (4‘)師長会議への出席

    研修医の状況の情報共有のためプログラム責任者もしくは副責任者が第一3木曜日午後の師長会議に毎回出

    席する。

    (5)研修医会議

    ①研修医の人格の涵養や社会性といった成長に資するため、また研修の双方向性を持った改善のため、研修医

    の権利保障のため、その他研修に係る事項の報告・検討のため研修医会議を設置する。

    ②研修医会議は以下の活動を行う。

    Ⅰ.研修上の要望をまとめ初期研修プログラム管理委員会への報告・提案。

    Ⅱ.各種研修・セミナー、学習会、他病院との研修交流企画への参加の調整。

    Ⅲ.研修医合宿の企画

    Ⅳ.その他研修の向上に関わること

    ③研修医会議への参加は研修医の権利であり、業務としてその出席を保障する。構成は本プログラムに参加す

    るすべての初期研修医と研修担当事務とし、月一回以上開催する。

    ④研修医会議の活動費用については、病院管理委員会の承認を得る。

  • (6)多職種研修委員会

    ①多職種研修委員会は、初期研修医が良好な医師-スタッフ関係、医師-患者関係の構築のためのコミュニケ

    ーションスキル(態度)の獲得、チーム医療を実践する能力を涵養するために、多職種が効果的に指導、援

    助することを目的とする。

    ②多職種研修委員会は以下の構成で行う。

    Ⅰ.プログラム責任者

    Ⅱ.指導医

    Ⅲ.看護総師長

    Ⅳ.病棟看護師長

    Ⅴ.外来看護師長

    Ⅵ.薬局長

    Ⅶ.放射線科 科長

    Ⅷ.検査科 科長

    Ⅸ.リハビリテーション科 科長

    Ⅹ.医療福祉相談室 主任(SW)

    ⅩⅠ.医事課 課長

    ⅩⅡ.研修担当事務責任者

    ⅩⅢ.その他、必要と思われる職員

    ③毎月1回、病院管理委員会内で開催する。「観察記録」、「振り返り」、「360度評価」等を用い、

    研修医・研修システムの評価を行い、効果的な指導・援助方針を検討し、研修プログラム管理委員会に報

    告する。

  • ◆病院内組織図(研修関連のみ)◆

    医局事務が研修事務局を担う。医局事務の中で、研修担当者を配置する。

    ◆病院内委員会図(研修関連のみ)◆

    (7)プログラム責任者

    ①プログラム責任者はプログラム責任者養成講習会を受講したものとし、各プログラムの管理責任を負う。プ

    ログラム責任者は土庫病院初期研修プログラム管理委員会委員長を兼ねる。

    ②副プログラム責任者は、プログラム責任者を補佐する。プログラム副責任者は土庫病院初期研修プログラ

    ム管理委員会副委員長を兼ねる。

    院長

    事務長 事務次長(医局担当) 医局事務課長 事務主任 事務員

    医局長

    総合診療部長

    救急科長 医員

    医員

    外科部長 医員

    小児科部長 医員

    病理センター長 医員

    研修センター長 研修医

    管理委員会

    師長会議

    初期研修プログラム

    管理委員会

    多職種研修委員会

    研修医会議

    各科初期研修委員会 各科指導医会議

    医局会議

    総合診療部会

    外科部会

    小児科部会

    各科部会

    医局事務

  • (8)カリキュラム責任者

    ①各診療科の研修カリキュラムを作成する。毎年のカリキュラムの見直しを行い修正・改善する。

    ②当該診療科全体の研修内容・研修に係る全般(研修医評価・研修到達状況に応じたスケジュールの変更・受

    け持ち患者など)にも責任を負い、必要に応じて個別に指導を行う。

    (9)指導医

    ①指導医は、7年以上の臨床経験のある医師で、原則として厚生労働省認定の臨床研修指導医講習会を受講し

    ている者とし、院長が任命する。

    ②指導医は、研修医による診断・治療行為とその結果について直接の責任を負う。

    ③指導医は、研修医の身体的、精神的変化を観察し問題の早期発見に努め、必要な対策を講じる。

    (10)上級医

    ①各診療科の診療に従事し研修医に接するすべての上級医が研修医の指導を行う。

    (11)指導者 コメディカル

    ①医師以外にも看護師・検査技師・薬剤師・ケースワーカーなどその診療科の診療に従事し研修医に接するも

    のは指導者として研修医教育に携わる。

    ②研修上関わりを持つ職場においては、研修医の指導責任者を院長が任命する。

    【7】研修医の研修状況の評価方法

    (1)EPOC

    EPOCを用いての評価を、プログラム管理委員会に合わせて研修医・カリキュラム責任者・プログラム責

    任者・指導者が行う。EPOCはstandard EPOCを活用する。

    (2)観察評価

    各科初期研修委員会に合わせて各科部会や多職種研修委員会での評価をふまえ観察評価をまとめ各科初期研修委員会でフィードバックする

    (3)評価表

    ①研修医の状況に関してはPG管理委員会に合わせて所定の評価表を用いて以下からの評価を行う。

    指導医からの評価・指導者からの評価・プログラム責任者からの評価

    研修医からの評価・360度評価・Mini-CEX

    ②プログラムに関して

    各カリキュラムが終わった時点で指導医・指導者・研修医からフィードバックを受ける。

    各カリキュラムに必要があれば、各カリキュラム独自の評価表を用いて評価を行う。

    ③各科の評価方法については、各科のプログラムに定める。

  • 10

    (4)OSCE

    各年度のの7月ごろと3月ごろにOSCCEを行い形成的評価をする

    (5)研修レポートの作成

    (6)自己評価(研修医ポートフォリオ)の作成を目指す(当面の努力目標)

    【研修医ポートフォリオの「目的」】

    ○ モチベーション:自己評価でより高い成長を目指す前向きな気持ちが湧く

    ○ 自分の個性や能力の方向性を見出す

    ○ モノサシで計れない能力や感性を見出すとき

    ○ 進路決定やキャリアアッププランを描く際

    ○ 指導医やメンターからの評価

    ○ 希望する進路への面接時の際、自己PR …etc

    【研修医ポートフォリオに入れるもの】

    □研修目標

    □研修の基本フレームワークと基本フェーズ展開

    □研修期間全体タイムスケジュール

    □今日の状況シートと知的アウトカム

    □今日の自己評価シート(アクションシート)

    □患者さんがよりよくなるための問題点リストアップ

    □患者さんとのコミュニケーション記録

    □患者さんからの手紙・コメント

    □患者さんや身近な方からのアンケート類

    □自分を成長させた所見、その表現や工夫

    □味わい深いカルテ例:分かりやすい記入やイメージ図表現

    □診断法の選択方法とその結果

    □参考になる治療プランと治療法の選択方法とその結果

    □業務改善の工夫、アイディアや提案

    □診察器具を上手く使うスキル/手順

    □どんな患者さんを診てきたか歴

    □患者さんをどうやって診てきたかがわかるもの

    □自分と同僚や指導医との対話記録やアドバイス

    □身につけた手法や技術を書き出したもの

    □自分の研究記録

    □発表論文・寄稿

    □手技などの実践記録

    □研修中の有効な経験

    □有効資料:新聞記事、冊子、地域の患者マップ

    □研修のシステムや方法への有効な提案

    □こうすればもっと成長できる、というアイディアメモ

    □自己研鑽歴がわかるもの

    □自分なりの効果的な勉強ルール

    □資格一覧/公的評価/スキルや知識や経験を証明するもの…etc

    2年目の7月は?

  • 11

    【8】研修施設

    (1)臨床研修指定病院(基幹型)

    土庫病院(内科、救急、外科、小児科、地域医療)

    (2)臨床研修指定病院(協力型)

    吉田病院(内科、精神科、眼科、地域医療)

    おかたに病院(内科、泌尿器科、地域医療)

    耳原総合病院(内科、外科、救急、産婦人科)

    京都民医連中央病院(内科、外科、救急、産婦人科)

    奈良医大(標榜する診療科 ※一部例外あり)

    市立奈良病院(小児科、産婦人科、救急科、整形外科、総合診療科)

    (3)臨床研修協力施設(診療所)

    土庫こども診療所

    日の出診療所

    河合診療所

    大福診療所

    【9】研修医定員

    1年次 4名

    2年次 4名

    【10】公募及び研修プログラムの公表

    マッチングシステムに参加登録する。当院ホームページにて研修医募集や研修情報を公開する。

    【11】研修修了の認定及び証書の交付

    (1)厚生労働省医師臨床研修終了要件に沿って、以下の要件を満たしたときに、初期研修プログラム管理委員会

    にて修了認定に対して評価を行う。

    ①必修レポートの提出。

    ②必修研修(内科・救急・地域医療)ならびに選択必修研修期間を含む24ヶ月の研修期間の満了。

    (2)初期研修プログラム管理委員会にて、研修修了基準を満たしていると評価されたときには研修修了と認定し、

    研修修了書を交付する。

    (3)(1)および(2)の基準を満たせない場合、原則として引き続き同一の研修プログラムで研修を継続する

    こととし、初期研修プログラム管理委員会は修了基準を満たすための指導を講じなくてはならない。

    【16】研修医の応募手続きおよび

    採用と一緒にしたほうがいい?

  • 12

    【12】研修の中断と再開

    (1)初期研修プログラム管理委員会は、医師としての適性を欠く場合、病気・出産など療養で研修医として研修

    継続が困難と認めた場合、その時点での当該研修医の研修評価を行い、評価あるいは研修医自らの中断申し

    出を受け、臨床研修を中断することができる。

    (2)研修医の臨床研修を中断した場合、院長は速やかに当該研修医に対し法令に基づき「臨床研修中断証(医師

    法・歯科医師法16条の2第一項)」 を交付する。

    (3)中断した研修医の臨床研修を当院で再開することを希望する時は、中断内容を考慮し可否を決定する。また

    再開の場合はその内容を考慮した研修を行う。

    【13】研修終了後の進路

    3年目以降引き続き、志望する診療科および研修施設群での研修を希望する場合、研修医の希望する内容と専攻

    医プログラムとの調整を行います。

    【14】研修医の処遇

    (1)身分

    ①常勤医として採用する。

    ②法令に基づき研修期間中のアルバイトはすべて禁止する。

    (2)給与・勤務時間・休暇

    ①給 与 1年目研修医 月額409,000円

    2年目研修医 月額429,000円

    ②賞与有 7月・12月

    ③勤務時間 9:00~17:00

    ④休 暇 有給休暇 4週6休 夏期休暇4日 年末年始休暇あり

    休暇の取得に当たってはカリキュラム責任者に承諾を得ること

    ⑤時間外勤務 時間外勤務および当直については別紙に定める。

    (3)宿舎・社会保険

    ①宿舎については、希望に応じて、法人が賃貸契約を行い、賃料は個人負担とする。

    ②社会保険(公的医療保険、公的年金保険、労災保険、雇用保険)に加入する。

    ③医師賠償責任保険を適応する。

    (4)出張規定

    初期研修医自身の学びを深めるために、指導医の判断の上で学会・研究会・民医連企画等への参加を命じるこ

    とがある。具体的な要綱は以下とする。

    ①適用範囲

    ・各ローテート研修の領域ごとに1回の国内の学会・研究会出張を認める(内科については2回を認める)。

    ・研修医が学会・研究会で発表する場合は上記項目の回数に含まない。

    研修医用に出張規定を作る。

  • 13

    ・ICLS、ACLS、BLS、PALS、ISLSについて希望があればこれを認める。

    ・民医連企画等の参加は随時指導医の判断で認める。

    ②支給の範囲と手続き

    ・学会・研究会・企画の参加費を支給する。

    ・旅費交通費は最も経済的な経路及び方法を選び、鉄道の特急、新幹線(グリーン車除く)飛行機はエコノミ

    ー、船舶は1等席までとする。タクシーの利用はそれ以外に交通機関が無い場合や重量物の運搬の場合とす

    る。

    ・出張に係る費用は、各病院の規定に従う。

    【15】研修医の応募手続きおよび採用

    (1)必要書類

    研修希望者は以下の書類を添えて所定の期日までに病院に提出しなければならない。 ①履歴書

    ②卒業(見込み)証明書

    ③成績証明書

    ④研修医採用試験申込書(当院指定用紙 当院ホームページ上にて公開)

    (2)試験方法および評価方法

    ①試験は小論文試験、面接及び書類審査に基づき選考を行う。

    ②面接を担当する医師は、初期研修プログラム管理委員およびそれに準ずる者とし、医師以外の職種も面接

    を担当する。

    (3)採用試験の取り扱い

    選考結果に基づき、院長の承認を得て研修医マッチングに登録する。なお、研修医マッチングへの登録状況

    および結果は、初期研修プログラム管理委員会にて報告を行う。

    研修医マッチングの結果を受け、受験者に採用を通知する。

    マッチングの結果採用予定人数に達しない場合に、2次募集を実施することができる。

    研修医として採用された者は、誓約書を所定の期日までに院長に提出しなければならない。

    【16】研修医の業務分掌と業務指示と医療安全管理基準手技に関して

    (1)研修医の行う業務に関する原則

    ①研修医はすべての医療行為の承認を指導医あるいは主治医から事前ないし事後に得る。

    ②研修医は救急外来におけるすべての医療行為の承認を当直指導医から患者帰宅前に得る。

    ③研修医は当院初期臨床研修カリキュラムの目標に明記された基本的手技以外のすべての医療行為(検査

    及び治療)については、指導医の監督下でのみ行う。

    ④研修医は健康保険適用外のすべての検査の指示を出すときは指導医の事前の承認を得る。

    ⑤研修医は健康保険適用外のすべての治療を指導医の監督下でのみ行う。

    ⑥研修医の診療記録(退院サマリー含む)は必ず指導医の承認を得る。

  • 14

    (2)指導医の承認が必要な業務指示

    研修医は以下の業務指示を出す場合には研修委員会で認められるまでは事前に指導医の承認を得なければ

    ならない

    ①造影X線検査

    ②妊婦・褥婦・授乳婦・小児に対する処方

    ③麻薬処方

    ④抗がん剤

    ⑤輸血

    ⑥他施設への患者紹介・転送

    ⑦当院にない治療での紹介

    ⑧入退院

    (3)指導医の監視下での手技

    研修医は以下の手技は研修委員会で認められるまでは指導医の監視下でのみ行う

    ①CV

    ②穿刺 腰椎・胸腔・腹腔・骨髄

    ③胃管

    ④縫合

    ⑤その他チェックリストに掲げられている項目

    【17】指導医の不在時の指導

    (1)指導医不在時の対応

    ①救急搬送等で一時的にすべての指導医が不在になる場合に、指導医は研修医の対応を上級医に委ね、その

    旨を研修医に伝えなくてはならない。

    ②指導医およびカリキュラム責任者は、研修医の勤務時間中は、指導医が不在とならないよう努めなくては

    ならない。

    【18】日当直研修について

    (1)臨床研修医の業務

    ①研修医は、指導医、上級医の指導の下に1年次より救急医療の実際を経験するために日当直研修を行う。

    研修場所は、土庫病院及び初期研修プログラムに属する協力型病院とする。日当直の時間帯及び手当ては、

    各病院の規定に従う。

    ②診療行為については、「研修医の業務分掌と業務指示と医療安全管理基準手技に関して」に規定されてい

    るが、検査オーダー、カルテ記載、投薬、注射オーダー、侵襲的な手技、入退院、入院時指示などの判断

    においては、指導医や上級医の指示のもとに、報告・連絡・相談を行いながら診療を行う。

    最終的な責任は指導医・上級医が担い、すみやかにカウンターサインを行う。

  • 15

    (2)指導体制

    日当直研修における指導体制は、常勤の日当直医師の管理・指導責任の下に行われる。

    (3)研修のステップアップ

    ①1年次の6月以降に研修を開始し、研修の到達レベルを評価しながら日当直研修を継続する。

    ②原則、常勤指導医または上級医の日当直勤務日に研修を行う。(詳細は研修プログラム参照)

    (4)日当直研修のフィードバック

    日当直研修のフィードバックに関しては、指導医・上級医がすみやかに行う。

    (5)日当直手当、当直明け勤務

    日当直手当、当直明け勤務(見習い当直含む)の扱い、は別途定める。

  • 16

    【19】初期研修プログラム管理委員および指導医

    (1)初期研修プログラム管理委員会 名簿

    氏名 所属 役職 備考

    山西 行造 土庫病院 院長 プログラム責任者・指導医

    津島 寿幸 土庫病院 副院長 プログラム副責任者・指導医

    更屋 勉 土庫病院 副院長 カリキュラム責任者(内科)・指導医

    吉川 周作 土庫病院 副院長 カリキュラム責任者(外科)・指導医

    下林 孝好 土庫病院 救急科 科長 カリキュラム責任者(救急科)・指導医

    横山 知司 土庫病院 健生会 理事長 指導医(内科)

    矢持 悠一 土庫病院 病棟 医長 指導医(内科)

    下 澄子 土庫病院 看護部長 指導者(看護)

    吉國 賢 土庫病院 放射線科 科長 指導者(放射線)

    中村 水樹 土庫病院 医局事務課長 事務部門の責任者

    石丸 敏博 土庫こども診療所 所長 研修実施責任者・指導医

    朝倉 健太郎 大福診療所 所長 研修実施責任者・指導医

    佐藤 崇 日の出診療所 所長 研修実施責任者・指導医

    土井 真知子 河合診療所 所長 研修実施責任者・指導医

    井上 賀元 京都民医連中央病院 集中治療科科長 研修実施責任者・指導医

    植原 亮介 吉田病院 精神科副診療部長 研修実施責任者・指導医

    水野 渉 おかたに病院 副院長 研修実施責任者・指導医

    松田 圭一 耳原総合病院 副院長 研修実施責任者・指導医

    平 康二 市立奈良病院 副院長・小児科部長 研修実施責任者・指導医

    原田 直哉 市立奈良病院 産婦人科部長 研修実施責任者・指導医

    赤井 靖宏 奈良県立医科大学 臨床研修センター長 研修実施責任者・指導医

    宮尾 耕二 宮尾耕二法律事務所 弁護士 外部委員

    寺前 憲一 健生会友の会 外部委員

  • 17

    (2)指導医 名簿

    担当分野 氏名 所属 役職

    内科 山西 行造 土庫病院 院長

    外科 吉川 周作 土庫病院 副院長

    産婦人科 中村 光佐子 京都民医連中央病院 科長

    産婦人科 坂本 能基 耳原総合病院 部長

    小児科・内科 横山 知司 土庫病院 理事長

    小児科 石丸 敏博 土庫こども診療所 所長

    精神科 植原 亮介 吉田病院 精神科診療部長

    地域保健 朝倉 健太郎 大福診療所 所長

    内科 津島 寿幸 土庫病院 副院長

    内科 更屋 勉 土庫病院 副院長

    内科 矢持 悠一 土庫病院 医長

    内科・地域保健 水野 渉 おかたに病院 副院長

    内科 井上 賀元 京都民医連中央病院 科長

    内科 松田 圭市 耳原総合病院 副院長

    地域保健 土井 真知子 河合診療所 所長

    病理(CPC) 宮沢 善夫 土庫病院 病理センター長

    救急 下林 孝好 土庫病院 科長

    地域保健 佐藤 崇 日之出診療所 所長

    小児科 平 康二 市立奈良病院 副院長兼・小児科部長

    産婦人科 原田 直哉 市立奈良病院 産婦人科部長

    内科・地域保健 三木 隆 吉田病院 副院長

    REISの登録が土井が日の出

    所長となっている

  • 18

    第2章 初期研修プログラム

    ◇総論 土庫病院の臨床研修カリキュラムは、2年間の初期臨床研修とそれに続く3年間の後期臨床研修より成り立

    ちます。研修医は将来の専門分野にかかわらず、5年間の研修修了時点で下記の目標達成を目指します。

    【1】基本的診療能力獲得の課題

    (1)多様な問題を持つ患者の主治医として診療にあたれるための全ての科にわたる基本的な知識・技能・態度を

    獲得します。

    (2)自らの専門分野・科についての一定の専門性を持った知識・技能・態度を獲得します。

    (3)患者の問題を解決するために、生涯継続的に学習し、研鑽する能力を獲得します。

    【2】患者を中心としたチーム医療の課題

    (1)医療機関で働く多職種の役割と思いを理解し、協力しながら診療できるようになります。

    (2)共同組織の役割を理解し、活動にかかわります。

    (3)後輩の研修医に対し、自らの知識と経験に基づき、ともに学びながら指導にあたることができます。

    【3】医療の社会性・医師の社会的役割の自覚の課題

    (1)社会の中で求められる医師の役割を理解し、その責任を果たせます。

    (2)社会保障活動の意義を理解し、必要な行動を行なえます。

    (3)後輩である医学生に自分の行なっている研修を見せ、内容を伝えることができます。

  • 19

    ◇2年間で到達すべき課題

    【1】医療人として必要な基本姿勢・態度

    (1)患者-医師関係

    行動目標

    患者を全人的に理解し、患者・家族と良好な人間関係を確立するために、以下を行うことができる。

    1)患者、家族のニーズを身体・心理・社会的側面から把握できる。

    2)医師、患者・家族がともに納得できる医療を行うためのインフォームド・コンセントが実施できる。

    3)守秘義務を果たし、プライバシーへの配慮ができる。

    ①患者、家族のニーズを身体・心理・社会的側面から把握できる。

    1)患者の個別的背景はそれぞれ異なっているため、まず患者・家族の話を傾聴する。

    2)受容的・共感的に聴くことが重要であり、患者・家族の話をすぐに否定しない。患者の話をさえぎるような

    質問を行わない。

    3)常に患者・家族の精神的・身体的苦痛への配慮を示しつつ、患者の言葉を復唱することや、話を要約するこ

    とにより、患者・家族のニーズを把握する。

    ②医師と患者・家族がともに納得できる医療を行うためのインフォームド・コンセントが実施できる。

    1)診断の経過、治療計画などについてわかりやすく説明し、了解を得て治療を行う。

    2)難しい専門用語は避け、専門的知識がなくてもわかりやすい表現をするよう心がける。

    3)説明を行うための適切な時期や場所、機会などに配慮する。

    4)説明を受ける患者・家族の心理状態や理解度について配慮する。

    5)インフォームド・コンセントは、単に十分な説明を行って同意を得るということだけではなく、医師の提示

    する治療に対しての拒否権を含めた患者・家族の選択権を認めたものであるということを念頭に置くすなわ

    ち、重要なことは、患者の自由な意志決定に基づいた治療の「同意」ということである。

    ③守秘義務を果たし、プライバシーへの配慮ができる。

    1)常に個々の医療者がプライバシーの配慮を行うこと。

    2)患者・家族への尊敬の念を持つこと。

    3)診療情報の開示は、あくまでも患者に対するものであり、第三者に対するものではないこと。

    4)個人データを第三者に 提供する場合には、予め本人の同意を得ること。

    方略

    ①病院が作成している指針のレクチャーを4月5月に行う。

    ②受け持ち症例に関して研修を行う。

    1)5月にシャドウイングを行う。

    2)6月受け持ち後は事前に話す内容を打ち合わせたうえ、主治医として指導医と共にICを行う。

    3)徐々に主治医として経験が増え・知識量が増え・話す内容がふえてくるとともに、ラポールの形成が困難で

    はないと観察評価にて指導医が評価し指導医会議で合意されたとき、10月以降事前に打ち合わせただけで

    ICを行っていいこととする。

    評価

  • 20

    ①EPOCにて土庫病院初期研修プログラム管理委員会ごとに自己評価と指導医と指導者が行う。

    ②研修医間での同僚評価の施行もありうる。

    ③Mini-CEXを施行することもありうる。

    (2)チーム医療

    行動目標

    医療チームの構成員としての役割を理解し、保健・医療・福祉の幅広い職種からなる他のメンバーと協調するた

    めに、以下を行うことができる。

    1)指導医や専門医に適切なタイミングでコンサルテーションができる。

    2)上級及び同僚医師や他の医療従事者と適切なコミュニケーションがとれる。

    3)同僚及び後輩へ教育的配慮ができる。

    4)患者の転入・転出に当たり、情報を交換できる。

    5)関係機関や諸団体の担当者とコミュニケーションがとれる。

    チーム医療を実践する時に留意すべき事項が3点。

    ①各職種がそれぞれの立場から評価を行い、それらを基にチーム全体で治療(支援)計画を策定すること。

    ②各職種間の業務内容の分担及び責任体制を確立すること。

    ③一症例一診療録を原則とし、各職種の共通理解のために共通用語で表現すること。

    方略

    ①受け持ちをはじめたら毎日当直医に申し送りをする。

    ②受け持ち症例を通じ病棟などにてケースカンファレンスをもつ(入院時と経過中と退院支援・退院時など)。

    ③症例カンファレンスを行う。医師への情報提供も行う(内科・CPC・MM・院外)。

    ④研修医会などでお互いにレクチャーを行う、教えあう。

    ⑤情報提供の文書を作成し指導医のチェックを受けることを義務付ける。

    ⑥態度習慣として周りの医師の様子から医師の役割を体験させる。

    ⑦症例を通じ関係機関や諸団体の担当者とコミュニケーションをとる。

    ⑧病棟などの部署での教育に参加する。

    評価

    ①観察評価。

    指導医・指導者・自己評価を指導医会議・内科部会後の会議などで観察評価を行う。

    研修医間での同僚評価施行もありうる。

    ②EPOCでの評価。

    土庫病院初期研修プログラム管理委員会ごとのEPOC評価にて行う。

    ③Mini-CEXを施行することもありうる。

    (3)問題対応能力・学術活動

    行動目標

    ①患者の問題を把握し、問題対応型の思考を行い、生涯にわたる自己学習の習慣を身に付けるために、臨床上の

    疑問点を解決するための情報を収集して評価し、当該患者への適応を判断できる(EBM =Evidenc

  • 21

    e-based Medicineの実践ができる)。

    1)現場から課題を作成し整理する能力。

    a 患者、対象者、現場、地域が抱えている健康にかかわる問題を把握し列挙することができる。

    b 把握した問題を緊急性、重要性、解決可能性に応じて分類し、取り組むべきもの取り組むべきものを解決

    可能な課題としてまとめることができる。

    2)課題解決に必要な情報収集・整理運用能力。

    a 課題の解決に必要な情報や要因を列挙し、足りないものを集めることができる。

    b 臨床研究や治験の意義を理解し、その結果を批判的に吟味し、問題解決に活かすことができる。

    3)課題解決策の実施・解決能力。

    a 選択された手段を実行するにあたって、安全性と有効性を確保し、危険性や合併症が避けられる手段を選

    択できる。

    ②自己評価及び第三者による評価を踏まえた問題対応能力の改善ができる。

    1)問題解決手段を共有する能力。

    a まとめた問題・課題を患者や対象者、その他の同僚・チームメンバーに提示し説明することができる。

    b 解決のための手段を提案し、必要に応じてその判断の手順や根拠を、対象者や現場、その他のチームメン

    バーに提示し説明することができる。

    2)問題解決能力を継続的に自己研鑽する能力。

    a 課題解決の取り組みの結果を、自己評価及び第三者評価によって振り返り、手順の改善に活かすことがで

    きる。

    ③臨床研究や治験の意義を理解し、研究や学会活動に関心を持つ。

    ④自己管理能力を身に付け、生涯にわたり基本的診療能力の向上に努める。

    方略

    ①入院外来時間外を問わず受け持ち症例を通して指導医と共に症例に対処することで研修する。

    ②EBMに必要な検索の仕方や論文の読み方を学ぶ機会を持つ。

    ③申し送りやカンファレンスの利用。

    ④同僚での学びあいの研修。

    ⑤内科学会地方会への発表の義務付け。

    評価

    ①観察評価を行う。土庫病院初期研修プログラム管理委員会ごとのEPOC評価にて自己評価・指導医・指導者

    が行う。

    ②研修医間での同僚評価施行もありうる。

    ③Mini-CEXを施行することもありうる。

    (4)安全管理

    行動目標

    患者及び医療従事者にとって安全な医療を遂行し、安全管理の方策を身に付け、危機管理に参画するために、以

    下を行うことができる。

    1)医療を行う際の安全確認の考え方を理解し、実施できる。

    2)医療事故防止及び事故後の対処について、マニュアルなどに沿って行動できる。

    3)院内感染対策(Standard Precautions を含む)を理解し、実施できる。

  • 22

    方略

    ①医療安全医局会議への参加。

    ②感染対策委員会・ICTへの参加。

    ③院内制度教育(医療安全大会など)への参加。

    ④感染・安全教育への参加。

    ⑤4月5月でのレクチャー。

    評価

    ①土庫病院初期研修プログラム管理委員会ごとのEPOCや評価表に基づき指導医・指導者・自己評価を行う。

    ②現場での研修時に観察評価を行う。

    ③必ずヒヤリハット報告を一例は記載する。

    (5)症例呈示

    行動目標

    チーム医療の実践と自己の臨床能力向上に不可欠な、症例呈示と意見交換を行うために、以下を行うことができ

    る。

    ①症例呈示と討論ができる。

    ②臨床症例に関するカンファレンスや学術集会に参加する。

    方略 内科研修中

    ①毎週水曜日と金曜日のカンファレンスで症例提示を行う。

    ②毎朝の新入院カンファレンスで必要に応じて症例提示を行うとともに、カルテ記載を行う。

    ③日本内科学会地方会での、演題発表を少なくとも年1回行う。

    ④横大路の会、民医連近畿地協研修医症例検討会で症例提示を行う。

    全体を通じて

    ①上級医にコンサルトすることや、チームカンファレンスを通じて、症例提示と討論を行う。

    ②同僚での学びあい。

    評価

    ①日頃の状況について観察評価を行い、必要に応じてフィードバックを行う。

    (6)診療計画

    行動目標

    保健・医療・福祉の各側面に配慮しつつ、診療計画を作成し、評価するために、以下を行うことができる。

    1)診療計画(診断、治療、患者・家族への説明を含む)を作成できる。

    2)診療ガイドラインやクリティカルパスを理解し活用できる。

    3)入退院の適応を判断できる(デイサージャリー症例を含む。)。

    4)QOL(Quality of Life)を考慮にいれた総合的な管理計画(リハビリテーション、社

    会復帰、在宅医療、介護を含む。)へ参画する。

  • 23

    方略 ①診療計画について指導医とディスカッションを行う。

    ②各科のカンファレンスにて、症例提示を行い、意見をもらう。

    評価 ①症例を通して指導医・指導者が観察評価を行い土庫病院初期研修プログラム管理委員会ごとのEPOCに記

    載する。

    ②各科研修委員会でフィードバックする。

    (7)医療の社会性

    行動目標

    医療の持つ社会的側面の重要性を理解し、社会に貢献するために、以下を行うことができる。

    ①保健医療法規・制度を理解し,適切に行動できる。

    【医師として知っておくべき法規・制度】表1のAグループに記載

    【医師として知っていることが望ましい法規・制度】 表1のBグループに記載

    【労働者性に関して知っていることが望ましい法規・制度】表1Cグループに記載

    ②医療保険、公費負担医療を理解し、適切に診療できる。

    ③医の倫理,生命倫理について理解し、適切に行動できる。

    ④医薬品や医療用具による健康被害の発生防止について理解し、適切に行動できる。

    方略

    ①オリエンテーションでのレクチャー。

    ②水俣病・原爆被災者・避難者検診への参加。

    ③症例を通じて倫理的課題のカンファレンス。

    ④症例を通して制度に関し研修し、必要に応じ対応する。

    ⑤社保活動への参加。

    ⑥制度教育への参加。

    ⑦症例を通してSDH・HPHに関して研修する。

    ⑧班会への参加。

    評価

    ①土庫病院初期研修プログラム管理委員会ごとのEPOCに合わせて指導医・指導者が観察評価をし、研修医が

    自己評価を行う

    ②Mini-CEXを施行することもありうる

  • 24

    表1 保健・医療および労働などに関する法規

    Aグループ

    医療法

    医師法

    死体解剖保存法

    健康増進法

    原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律

    地域保健法

    臓器の移植に関する法律

    結核予防法

    感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

    検疫法

    予防接種法

    ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律

    狂犬病予防法

    薬事法

    安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律

    麻薬及び向精神薬取締法

    食品安全基本法

    食品衛生法

    児童福祉法

    母子保健法

    母体保護法

    社会福祉法

    障害者基本法

    身体障害者福祉法

    知的障害者福祉法

    精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

    心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律

    高齢社会対策基本法

    老人保健法

    老人福祉法

    介護保険法

    健康保険法

    国民健康保険法

    公害健康被害の補償等に関する法律

    ダイオキシン類対策特別措置法

    有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律

    廃棄物の処理及び清掃に関する法律

    学校保健法

    任意後見契約に関する法律

    WHO憲章前文

    Bグループ

    保健師助産師看護師法・栄養士法・救急救命士法等の身分を定める法律

    墓地、埋葬等に関する法律

    公衆浴場法

    旅館業法

    水道法

    建築物における衛生的環境の確保に関する法律

  • 25

    毒物及び劇物取締法

    大麻取締法

    あへん法

    覚せい剤取締法

    と畜場法

    児童虐待の防止等に関する法律

    配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律

    生活保護法

    環境基本法

    下水道法

    湖沼水質保全特別措置法

    産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律

    水質汚濁防止法

    大気汚染防止法

    更生保護事業法

    Cグループ

    労働基準法

    労働安全衛生法

    労働者災害補償保険法

    労働保険の保険料の徴収等に関する法律育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関

    する法律

    介護休業法

    雇用保険法(雇保)

    事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針(セ

    クハラ指針)

    短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

    雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律男女共同参画社会基本法

    男女雇用機会均等法

    厚生年金保険法

    国民年金法

    国家賠償法

  • 26

    ◇経験目標 A 経験すべき診察法・検査・手技

    (1)医療面接 患者・家族との信頼関係を構築し、診断・治療に必要な情報が得られるような医療面接を実施するために、以

    下を行うことができる

    ①医療面接におけるコミュニケーションの持つ意義を理解し、コミュニケーションスキルを身に付け、患者の

    解釈モデル、受診動機、受療行動を把握できる。

    ②患者の病歴(主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活・職業歴、系統的レビュー)の聴取と記録ができる。

    ③患者・家族への適切な指示、指導ができる。

    (2)基本的な身体診察法 病態の正確な把握ができるよう、全身にわたる身体診察を系統的に実施し、記載するために以下を行うことが

    できる。

    ①全身の観察(バイタルサインと精神状態の把握、皮膚や表在リンパ節の診察を含む)ができ、記載できる。

    ②頭頸部の診察(眼瞼・結膜、眼底、外耳道、鼻腔口腔、咽頭の観察、甲状腺の触診を含む)ができ、記載で

    きる。

    ③胸部の診察(乳房の診察を含む)ができ、記載できる。

    ④腹部の診察(直腸診を含む)ができ、記載できる。

    ⑤泌尿・生殖器の診察(産婦人科的診察を含む)ができ、記載できる。

    ⑥骨・関節・筋肉系の診察ができ、記載できる。

    ⑦神経学的診察ができ、記載できる。

    ⑧小児の診察(生理的所見と病的所見の鑑別を含む)ができ、記載できる。

    ⑨精神面の診察ができ、記載できる。

    (3)基本的な臨床検査 病態と臨床経過を把握し、医療面接と身体診察から得られた情報をもとに必要な検査を、

    A・・・・・自ら実施し、結果を解釈できる。

    その他・・・検査の適応が判断でき、結果の解釈ができる。

    必修項目:以下の検査について経験があること(「経験」とは受け持ち患者の検査として診療に活用すること)

    1 一般尿検査(尿沈渣顕微鏡検査を含む) □

    2 便検査(潜血、虫卵) □

    3 血算・白血球分画 □

    4 A 血液型判定・交差適合試験 □

    5 A 心電図(12誘導)、負荷心電図 □

    6 動脈血ガス分析 □

    7 血液生化学的検査

    ・簡易検査(血糖、電解質、尿素窒素など) □

    8 血液免疫血清学的検査(免疫細胞検査、アレルギー検査を含む) □

    細菌学的検査・薬剤感受性検査

    ・検体の採取(痰、尿、血液など) □

    ・簡単な細菌学的検査(グラム染色など) □

    10 肺機能検査

    ・スパイロメトリー □

    11 髄液検査 □

    12 内視鏡検査 □

    13 A 超音波検査 □

    14 単純X線検査 □

  • 27

    15 X線CT検査 □

    達成度を評価するために必要な検査をリストアップし、EPOCの項目の数字に合わせてナンバリングをする。

    1. 尿沈渣

    2. 便検査

    ① 潜血

    ② 虫卵

    3.血算・白血球分画

    4.血液型判定・交差適合試験

    5.①心電図

    ②負荷心電図

    6.ABG

    7.血液生化学的検査

    8.血液免疫血清学的検査

    9.細菌学的検査・薬剤感受性検査

    ①検体の採取

    ⅰ.痰

    ⅱ.尿

    ⅲ.血液

    ⅳ.CVカテ

    ⅴ.迅速検査のための咽頭・鼻腔粘膜

    ⅵ.開放創

    ②グラム染色

    10.呼吸機能検査・スパイロ

    11.髄液

    12.細胞診・病理組織検査

    13.内視鏡検査

    ①胃

    ②SCF

    ③TCF

    14.超音波

    ①心

    ②腹部

    ③甲状腺

    ④処置に必要なエコー

    ⅰ.胸水

    ⅱ.腹水

    ⅲ.CVの血管

    ⑤外来診察で必要なエコー

    ⅰ.心

    ⅱ.腹部

    15.単純X線検査

    ①胸部

    ②腹部

    ③骨

    ④その他

    16.造影X線検査

  • 28

    ①胃透視

    ②注腸

    17.CT

    ①頭

    ②胸

    ③上下腹部

    ④骨盤

    ⑤心臓

    ⑥その他

    18.MRI

    ①頭

    ②肝臓・膵臓

    ③骨

    ④その他

    19.核医学

    20.神経生理学

    ①脳波

    ②筋電図

    21.穿刺液

    ①胸水

    ②腹水

    ③関節液

  • 29

    1.一般尿検査(尿沈渣顕微鏡検査を含む)ができる・わかる

    a.尿を肉眼的に観察して血尿やビリルビン尿を判断できる。

    b.尿定性検査(試験紙法)を適切に行える。

    c.尿潜血陽性の場合の鑑別疾患を挙げることができる。

    d.尿蛋白陽性の場合の鑑別疾患を挙げることができる。

    e.尿沈渣標本を作製することができる。

    f.弱拡大で尿沈渣の円柱の有無を判断できる。

    g.強拡大で尿沈渣の赤血球数、白血球数を数えることができる。

    h.強拡大で尿沈渣の赤血球の変形の有無を判断できる。

    方略

    ①5月の手技研修時に研修する。

    ②症例を通して研修する。

    ③必要に応じて実習は継続してもよい。

    評価

    ①5月の手技研修時には実習しcdを除いてできるかどうかを検査技師が評価する。

    ②cdは症例を通じて指導医が観察評価する。

    2.便検査(潜血、虫卵)ができる・わかる

    a.大便の肉眼的な観察を行う習慣を身につける

    b.肉眼でタール便を診断できる

    c.直腸診で手袋に付着した便で便潜血検査を行うことができる

    d.化学的便潜血検査と免疫学的便潜血検査の違いを述べることができる

    e.虫卵検査の結果を解釈できる

    方略

    ①5月の手技研修時に研修する。

    ②症例を通して研修する。

    ③必要に応じて実習は継続してもよい。

    評価

    ①5月の手技研修時には実習しbを除いてできるかどうかを検査技師が評価する。

    ②bは症例を通じてけいけんする。

    3)血算・白血球分画 がわかる

    a.白血球数減少と増多の鑑別疾患を挙げることができる。

    b.白血球分画の結果(異常細胞の存在を含む)を解釈することができる。

    c.赤血球数減少と増多の鑑別疾患を挙げることができる。

    d.平均赤血球容積(MCV)などをもとに貧血を分類できる。

  • 30

    e.血小板数減少と増多の鑑別疾患を挙げることができる。

    f.偽性血小板減少の機序と鑑別方法について述べることができる。

    方略

    ①症例を通して研修する。

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    4.血液型判定・交差適合試験ができる

    a.おもて(抗血清試薬)試験とうら(血球試薬)試験を実施し ABO 血液型を判定できる b. 抗血清

    試薬を用いて Rh0(D) 血液型を判定できる。

    c.交差適合試験(室温、生理食塩水法)を実施し ABO 血液型適合血を判定できる。

    d.不規則抗体スクリーニング検査の意義を説明できる。

    e.交差適合試験(37℃、間接抗グロブリン法)の必要性を説明できる。

    方略

    ①主に5月の手技研修時に研修する。

    ②症例を通して研修する。

    ③必要に応じて実習は継続してもよい。

    評価

    ①5月の手技研修時には実習しできるかどうかを検査技師が評価する。

    ②症例を通じて指導医が評価する。

    5.心電図(12誘導)ができる・わかる

    a.心電図(12誘導)検査を単独で実施できる。

    b.心電図(12誘導)検査結果について一定の手順で以下の所見を述べることができる。

    (ア)記録条件 (イ)心拍数とリズム (ウ)電気軸 (エ)P波

    (オ)PR間隔 (カ)QRS (キ)ST-T (ク)U

    (ケ)QTc

    c.心電図(12誘導)検査結果にて以下の明らかな異常所見を指摘できる。

    (ア)上室性期外収縮 (イ)心室性期外収縮 (ウ)発作性上室性頻拍

    (エ)心房細動 (オ)心房粗動 (カ)心室細動

    (キ)心室頻拍 (ク)狭心症 (ケ)心筋梗塞

    (コ)心筋症

    方略

    ①5月の手技研修時にECGの取り方を研修する。

  • 31

    ②症例を通して研修する。

    ③必要に応じて実習は継続してもよい。

    評価

    ①5月の手技研修時には実習しbcを除いてできるかどうかを検査技師が評価する。

    ②bcは症例を通じて指導医が観察評価する。

    6.動脈血ガス分析

    a.動脈血ガス分析の適応を述べることができる。

    b.単独で動脈血の採血ができる。

    c.採血時の呼吸条件,呼吸数を動脈血ガス分析の結果とともに記載する習慣を身につける。

    d.動脈血ガス分析の結果から以下の明らかな異常所見(それぞれ代償されたものも含む)を把握でき る。

    (ア)代謝性アシドーシス (イ)代謝性アルカローシス (ウ)呼吸性アシドーシス

    (エ)呼吸性アルカローシス

    e.酸素飽和度と酸素分圧の乖離を指摘しその原因を推測(検体放置、白血病細胞増多による酸素消 費など)

    できる。

    方略

    ①症例を通して研修する。

    ②レクチャーもしくは輪読会を行う。

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    7.血液生化学的検査ができる・わかる

    a.適切な検査項目を選択してオーダーすることができる。

    b.検査項目に適した条件で採血できる(脂質,ホルモンなど)。

    c.逸脱酵素の臓器別分布の知識を基に肝障害と筋障害の鑑別ができる。

    d.血清尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cr)の乖離を指摘し病態を解釈できる。

    e.適切な間隔で検査をオーダーする習慣を身につける(毎日のように採血しない)。

    f.簡易血糖測定が単独で行える。

    方略

    ①症例を通して研修する。

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

  • 32

    8.血液免疫血清学的検査

    a.肝炎ウイルス関連検査の意義を説明できる。

    b.ウイルス抗体価、グロブリンクラス別(IgM、IgG などの)ウイルス抗体価の解釈ができる。

    c.梅毒血清反応検査の結果の解釈ができる。

    d.主要な自己免疫疾患とその診断に有用な自己抗体検査を述べることができる。

    e.主要な自己抗体検査の感度と特異度を把握し検査結果を解釈できる。

    方略

    ①症例を通して研修する。

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    9.細菌学的・薬剤感受性検査ができる・わかる

    a.適切な検体採取ができる。

    (ア)無菌的に血液培養が行える。

    (イ)膿性喀痰と唾液を判別できる。

    (ウ)中間尿の採取方法を患者にわかりやすく説明できる。

    b.グラム染色が単独で行える。

    c.検査結果を参考に感染に関係している菌と常在もしくは定着(colonization)している菌を判

    別できる。

    d.薬剤感受性の結果から適切な抗生物質を選択できる 。

    e.迅速検査を適切にオーダーできる。

    方略

    ①主に5月の手技研修時にabの研修をする。

    ②症例を通して研修する。

    ③必要に応じて実習は継続してもよい。

    評価

    ①5月の手技研修時には実習しできるかどうかを検査技師が評価する。

    ②症例を通じて指導医が評価する。

    ③症例レポートの作成。

    10.肺機能検査がわかる

    a.以下の検査について適応と禁忌を述べられる。

    (ア)スパイロメトリー (イ)フローボリューム曲線 (ウ)気道可逆性検査

    b.以下の肺機能検査について説明し、適切な検査指示を出すことができる。

    (ア)最大吸気位 (イ)安静吸気位 (ウ)安静呼気位

    (エ)最大呼気位全肺気量 (オ)肺活量 (カ)最大吸気量

  • 33

    (キ)機能的残気量 (ク)予備吸気量 (ケ)一回換気量

    (コ)予備呼気量 (サ)残気量 (シ)努力肺活量

    (ス)一秒量最大呼気流量 (セ)V.50 V.25 V.50/V.25

    (ソ)気道可逆性

    c.以下の換気障害の分類と該当する疾患を列挙できる。

    (ア)閉塞性換気障害 (イ)拘束性換気障害 (ウ)混合性換気障害

    d.以下の疾患の肺機能検査を評価できる。

    (ア)慢性閉塞性肺疾患(COPD) (イ)気管支喘息 (ウ)間質性肺炎

    (エ)肺結核後遺症(胸郭形成術後または高度な変化を伴う)

    方略

    ①症例を通して研修する。

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    11.髄液検査ができる・わかる

    a.髄液検査の適応と禁忌を述べることができる。

    b.髄液検査に伴う偶発症と合併症を述べることができる。

    c.髄液検査に必要な器具を準備することができる。

    d.髄液検査に適した体位をとらせることができる。

    e.安全な穿刺部位を同定できる。

    f.穿刺部位の消毒と局所麻酔ができる。

    g.検査針を髄腔内まで適切に挿入できる。

    h.三方活栓と検圧用のガラス管を用いて初圧と終圧を測定できる。

    i.髄液検査の結果を説明できる。

    j.検査後の低髄圧性頭痛の特徴や対処法を述べることができる。

    研修の場

    ①病棟・外来での必要時

    方略

    ①病棟外来での手技発生時に処置担当研修医がコールされる。

    ②一回目は見学のみで次回できるようにその手順を見ておく。

    ③成書で確認しておく。

    ④手順のシミュレーションが確実である。

    トラブル発生時の対処が述べられる。

    清潔操作ができる。

    指導医とともに穿刺を行う。

    ⑤終了後その場のスタッフ指導医と振り返りを行い自分で記録する。

    ⑥次回に生かすよう課題と目標を立てておく。

  • 34

    評価

    ①評価はその場にいる看護師・指導医からフィードバックを受ける。

    ②手技に問題がなければ一人で行ってもよいものとする。

    それまでは指導医の監視下で行う。

    評価ポイント ①看護師とコミュニケーションをとって共同で手技ができる。

    ②圧迫止血を確実にできる。

    ③穿刺時に患者に配慮できる。

    ④手技がスムーズである。

    ⑤清潔操作ができる。

    ⑥後の指示ができる。

    ⑦トラブル発生時の対処が可能である。

    ⑧体位など周りの環境に配慮できる。

    12.細胞診・病理組織検査がわかる

    1.細胞診の具体的到達度の目安。

    a.細胞診の目的と有用性と限界を説明できる。

    b.細胞診の主要な検査材料について適切な検体採取法を説明できる。

    c.指摘された細胞診所見を理解できる。

    d.指摘された異常所見を光学顕微鏡下または写真上で示すことができる。

    2.病理組織検査の具体的到達度の目安

    a.病理組織検査の目的と必要性を説明できる。

    b.主要な病理組織検査の検体採取の適応を判断できる。

    c.病理医が指摘した病理所見を理解できる。

    d.病理医が指摘した異常所見を光学顕微鏡下または写真上で示すことができる。

    方略

    ①症例を通して研修する。

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    13.内視鏡検査(呼吸器)がわかる

    a.気管支鏡検査の適応と禁忌を述べることができる。

    b.下記の基本手技を述べることができる。

    (ア)前処置 (イ)麻酔法 (ウ)挿入法 (エ)気道分泌物の吸引法

    c.合併症とその対策を述べることができる。

    d.下記の気道の解剖を述べることができる。

    (ア)気管支壁の組織学的構造 (イ)気管支分岐の命名

    e.正常気管支鏡所見を述べることができる。

  • 35

    研修の場

    ①病棟・外来での必要時。

    方略

    ①病棟外来での手技発生時に処置担当研修医がコールされる。

    ②成書で確認しておく。

    評価

    ①症例ごとに観察評価を行う。

    13.内視鏡検査(呼吸器)がわかる

    a.気管支鏡検査の適応と禁忌を述べることができる。

    b.下記の基本手技を述べることができる。

    (ア)前処置 (イ)麻酔法 (ウ)挿入法 (エ)気道分泌物の吸引法

    c.合併症とその対策を述べることができる。

    d.下記の気道の解剖を述べることができる。

    (ア)気管支壁の組織学的構造 (イ)気管支分岐の命名

    e.正常気管支鏡所見を述べることができる。

    研修の場

    ①病棟・外来での必要時。

    方略

    ①病棟外来での手技発生時に処置担当研修医がコールされる。

    ②成書で確認しておく。

    評価

    ①症例ごとに観察評価を行う

    13-2内視鏡検査(消化器)の検査のことがわかる

    1.消化器内視鏡機器の取り扱い、検査の偶発症とその対策

    a.内視鏡機器の種類と原理を説明できる。

    b.検査前、検査後における内視鏡機器の基本的な取り扱いができる。

    c.内視鏡機器の洗浄消毒法を概説することができる。

    d.消化器内視鏡検査および治療の偶発症と対策を概説することができる。

    2.上部消化管内視鏡検査

    a.上部消化管内視鏡検査の適応を述べることができる。

    b.上部消化管内視鏡検査を受ける患者の前処置について指導できる。

    c.上部消化管内視鏡検査に必要な器具を準備することができる。

    d.上部消化管内視鏡検査に適した体位(左側臥位)をとらせ、機器を配置することができる。

  • 36

    e.検査中の生検などの処置を介助することができる。

    f.検査中の部位について説明できる。

    g.上部消化管内視鏡検査における正常所見を説明できる。

    h.上部消化管内視鏡検査における代表的な異常所見を説明できる。

    i.上部消化管内視鏡検査の偶発症と対策を概説することができる。

    3.大腸内視鏡検査

    a.大腸内視鏡検査の適応を述べることができる。

    b.大腸内視鏡検査を受ける患者の前処置について指導できる。

    c.大腸内視鏡検査に必要な器具を準備することができる。

    d.大腸内視鏡検査に適した体位(左側臥位)をとらせ、機器を配置することができる。

    e.検査中の生検などの処置を介助することができる。

    f.検査中の部位について説明できる。

    g.大腸内視鏡検査における正常所見を説明できる。

    h.大腸内視鏡検査における代表的な異常所見を説明できる。

    i.大腸内視鏡検査の偶発症と対策を概説することができる。

    4.緊急内視鏡検査

    a.緊急内視鏡検査の適応を述べることができる。

    b.緊急内視鏡検査に必要な器具を準備することができる。

    c.緊急内視鏡検査に適した体位(左側臥位)をとらせ、機器を配置することができる。

    d.検査中の止血術などの処置を介助することができる。

    e.検査中の部位について説明できる。

    f.緊急内視鏡検査に続いて必要な治療について説明できる。

    5.その他

    a.高齢者の内視鏡検査の適応と禁忌を説明できる。

    方略

    ①内科や外科での症例を通して検査時に付き添いを行い内視鏡室にて研修する。

    ②5月の手技研修時に内視鏡室に配属し研修する。

    評価

    ①症例を通して指導医・術者・看護師が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    14.超音波検査が使える

    1.超音波検査一般

    a.患者の病態や臨床症状、臨床所見、臨床検査結果に基づいた超音波検査適応の判断、および適切な検査部位・

    臓器の選択ができる。

    b.目的に応じた基本的な超音波検査ができる。

    c.超音波検査結果に基づいて鑑別診断をあげ、次の検査の計画が立てられる。

    d.超音波検査と他の画像検査(X 線 CT、MRI、核医学、血管造影)の長所・短所を説明できる。

    2.循環器超音波検査

    a.胸骨左縁からの長軸像を描出し、描出された心・大血管構造を説明できる。

    b.胸骨左縁長軸像で、左室、左房、右室および大動脈の高度の拡大を指摘できる。

    c.高度の左室収縮異常(びまん性、局所的)、高度の左室肥大、および高度の心膜液貯留の有無を、 断層心

  • 37

    エコー法で同定できる。

    d.高度の弁狭窄と高度の弁逆流を、断層心エコー法とカラードプラ法で同定できる。

    3.腹部超音波検査

    a.肝臓の解剖学的右葉と左葉の区分、および外科的右葉と左葉の区分を説明できる。

    b.肝臓の明らかな空間占拠病変(SOL)を同定できる。

    c.肝硬変の病因・病態・症候および超音波像を説明できる。

    d.胆嚢の解剖学的位置、形状、各部位の解剖、機能、血管支配などを説明できる。

    e.胆嚢結石を描出でき、その超音波像を構成する各所見について説明できる。

    f.腹部大動脈の解剖、走行およびその主要分枝(腹腔動脈幹、上腸間膜動脈、腎動脈など)を説明で き、描

    出できる。

    g.下大静脈の解剖、走行およびその主要分枝(腎静脈、総腸骨静脈など)を説明でき、描出できる。

    h.超音波にて腎臓を描出し、腎臓の位置、形状、大きさ、周囲臓器との関係を説明できる。

    i.胸水、腹水の高度貯留を同定できる。

    頸動脈超音波検査

    a.頸動脈を含めた末梢動脈、静脈の解剖について説明できる。

    b.動脈硬化の超音波像を説明できる。

    方略

    ①内科や外科での症例を通して検査時に付き添いを行いエコー室病棟にて研修する。

    ②内科研修後週一単位を割り当て研修する。

    ③成書を読む。

    評価

    ①症例を通して指導医・検査技師・看護師が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    15.単純X線検査がわかる

    単純X線検査は、どの施設においても簡便に施行できることもあり、安易に施行される危険性も高い検 査であ

    る。胸部、腹部の適応疾患は多く、その有用性はほぼ確立しており、プライマリ・ケアの観点からも、この2部

    位については検査の適応から結果の解釈まで初期研修の段階で習熟することが望ましい。外傷 の評価の骨・関

    節X線検査を除いて、他の部位(頭部、脊柱、骨盤、乳腺など)は、適応が限られる。

    a.X線の線量や生体に対する影響、被曝や防護の基本について説明できる。

    b.検査によって得られる情報と被曝による患者の不利益とを比較した上で、検査の適応を決定することができ

    る。

    c.病歴や理学所見により、胸部、腹部、骨・関節のどの部位の単純X線撮影に適応があるかどうか判断するこ

    とができ、患者に説明できる。

    d.専門医に相談の上、頭部、骨関節の中の脊椎、骨盤部、乳腺等の部位の撮影の適応を決定することが望まし

    い。

    方略

    ①症例を通して研修する。

    ②胸部・腹部単純撮影の読み方に関して講義を受ける。

  • 38

    評価

    ①症例を通して指導医が観察評価を行う。

    ②症例レポートの作成。

    16.造影X線検査ができる

    造影X線検査は、消化管、血管、胆管、リンパ管、脳脊髄腔等全身の臓器に及び、使用される造影剤も、 油性、

    水溶性、ヨード系、バリウムなどに多岐にわたっている。CT、MRIの進歩により取って代わられつつある検

    査も多い。しかし、尿路造影、消化管造影、血管造影は依然として�