「私と協会」大腸がんと大腸がん検診のはなし ·...

昭和50年4月24日  第三種郵便物認可 「健康かながわ」の購読料については、 健康診断の料金に含まれています。 毎月1回15日発行(1部90円) 平成28年9月15日 第582号 公益財団法人 神奈川県予防医学協会 予防医学事業中央会神奈川県支部 全国労働衛生団体連合会会員 編集・発行人=土屋尚 発行所=〒231−0021横浜市中区日本大通58 日本大通ビル 045(641)8501 (代表) http://www.yobouigaku - kanagawa.or.jp 症状がないうちに定期検診でみつけることが大切 寿87 05 80 79 便便便便便便便便便便便便便便便便便便便便便穿穿便24 18 63 60 48 60 48 18 72 64 今月の主なニュース 2面 3面 大腸がんと大腸がん検診のはなし 4面 直腸、肛門管 30.8% S 状結腸 32.5% 下行結腸 4.6% 横行結腸 9.9% 上行結腸 15.6% 盲腸 6.5% 虫垂 0.1% 対策型検診 (住民健診、職域検診など) 任意型検診 (人間ドックなど) 便潜血検査 S状結腸鏡検査 全大腸内視鏡検査 注腸X線検査 直腸指診 強く勧める 勧められない 勧められない 勧められない 実施すべきでない 強く勧める 実施を妨げない 実施を妨げない 実施を妨げない 実施すべきでない 平成24年度 平成23年度 対象者数 *1 (A) 受診者数(B) 受診率 *2 (B/A) 要精検者数 *3 (C) 要精検率(C/B) 精検受診者数(D) 精検受診率(D/C) がん発見者数(E) がん発見率(E/B) 陽性反応適中度(E/C) 2,466,249 464,208 18.8% 35,436 7.63% 21,430 60.48% 1,422 0.306% 4.013% 24,66,269 448,311 18.2% 30,959 6.91% 18,170 58.69% 1,176 0.262% 3.799% 表1 大腸がん検診 表2 神奈川県大腸がん検診実績 図1 大腸がんの部位と頻度 日本消化器がん検診学会全国集計委員会: 平成25年度消化器がん検診全国集計より *安全性を確保するとともに不利益について十分説明する必要がある 「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2005」より *1 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報サービスによる数値 *2  「国民生活基礎調査」による受診率ではなく、「地域保健・健康増進事業報告」 により算出した参考値 *3 当該年度の翌年後に判明した者も含めた数値 神奈川県ホームページより

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Page 1: 「私と協会」大腸がんと大腸がん検診のはなし · 日本消化器がん検診学会全国集計委員会: 平成25年度消化器がん検診全国集計より

昭和50年4月24日  第三種郵便物認可「健康かながわ」の購読料については、健康診断の料金に含まれています。毎月1回15日発行(1部90円)

平成28年9月15日第582号

公益財団法人 神奈川県予防医学協会予防医学事業中央会神奈川県支部全国労働衛生団体連合会会員

編集・発行人=土屋尚発行所=〒231−0021横浜市中区日本大通58  日本大通ビル 045(641)8501(代表)http://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp

症状がないうちに定期検診でみつけることが大切

日本人の寿命 

女性87・05歳 

男性80・79歳

大腸がんの部位と症状

 

大腸は、肛門の近くの直

腸とその奥に続く結腸に分

けられます。結腸は直腸側

よりS状結腸、下行結腸、

横行結腸、上行結腸、盲腸

となり、小腸に続きます。

大腸がんの部位別頻度(図

1)は、おおよそ直腸とS

状結腸に3分の1ずつ、そ

れ以外に3分の1となって

います。

 

大腸がんの症状として

は、がんからの出血による

血便や貧血、がんにより大

腸の管腔が狭くなるために

便が細くなったり(便柱狭

小)、通過するときに痛み

(腹痛)をきたしたり、便

がなかなか出ず便秘(便秘

と下痢が交互に起こること

も)になったり、ひどくな

ると腸閉塞になることもあ

ります。その他、がんの腫

瘤による症状としては、腹

部に腫瘤が触れたり、残便

感などがあります。肛門か

ら遠い部位のがんでは、出

血していても便と混ざって

しまい、血便として認識さ

れないことも多くありま

す。また便は、まだ水溶、

泥状であるため、狭窄がか

なり進まないと症状が出に

くく、がんが進行して初め

て症状が現れることも多く

見受けられます。

 

このことからも、症状が

ない時からがん検診を行う

ことが勧められます。

大腸がん検診

 

大腸がんは表面がもろい

ため出血しやすく、便に血

液が混ざっていれば、大腸

がんが疑われることになり

ます。

 

大腸がん検診として行わ

れている便潜血検査は、便

の中の目に見えない少量の

血液を見つけ出す検査で

す。特に、免疫学的便潜血

検査は、人由来のヘモグロ

ビンに反応するため食事制

限が必要なく、胃や十二指

腸からの出血の場合は、便

に出てくるまでにヘモグロ

ビンが変性し反応しないの

で、大腸からの出血を見つ

けるのに有効な方法です。

 

大腸がん検診は、現在ほ

とんど免疫学的便潜血検査

2日法にて行われています。

検査自身も簡便で、死亡率

減少効果も確認されてま

す。「有効性評価に基づく

大腸がん検診ガイドライン

2005」(表1)で、が

ん検診として施行すること

が強く推奨されています。

 

注意事項としては、便の

表面からまんべんなく便を

採取すること、冷暗所(冷

蔵庫など)に保存し数日以

内に提出することが必要で

す。しかし、これによって

すべての大腸がんが発見で

きるわけではありません。

出血のない大腸がんや、間

欠的に出血している場合は

便潜血検査が陰性となるこ

とになります。そこで、毎

年検診を行うことで発見機

会を多くすることや、症状

があれば診察を受けること

が必要です。

 

便潜血検査

以外で死亡率

減少効果が確

認された方法

としては、S

状結腸鏡検

査、全大腸内

視鏡検査、注

腸X線検査が

あります。し

かし、検査に

伴う不利益が

無視できない

ため、集団を

対象とする検

診としては勧められないと

されています。不利益とし

ては、前処置(下剤など)

による腸穿孔・腸閉塞、前

投薬(鎮静剤など)による

呼吸抑制、検査自体による

腸穿孔などがあります。

 

しかし、これらの検査は

一般診療では広く行われる

検査であり、特に全大腸内

視鏡検査は便潜血検査で要

精密検査となった時に行わ

れる検査です。全大腸内視

鏡検査による大腸がんの見

逃しは5%以下であり、大

腸がんを完全に否定したい

人は、不利益を十分理解し

たうえで、検診として全大

腸内視鏡検査を行うことは

1つの選択肢となります。

 

神奈川県のホームページ

によると(表2)、神奈川

県の平成24年度の大腸がん

検診の受診率18・8%、要

精検率7・63%、精検受診

率60・48%、がん発見率0・

306%、陽性反応適中度

4・013%でした。受診

者のおよそ330人に1人

の割合でがんが見つかった

ことになり、大腸がん発見

に対し、効果があることが

うかがえます。

 

しかし、精検受診率が

60・48%と低く、検診を受

けっぱなしの人も見受けら

れます。またそれ以上に、

受診率が18・8%と低率で

あることは問題で、県民に

対してより一層啓発に努

め、受診率向上を目指す必

要があります。

大腸がんの予防

 

大腸がんの危険因子とし

て、赤身肉、加工肉、アル

コール、喫煙、肥満があり

ます。予防因子として、食

物線維、野菜、果物、牛乳、

運動が報告されています。

具体的には、バランスよい

食事を摂り、たばこは吸わ

ず、節度のある飲酒、適度

の運動を行うことが良いと

考えられます。

 

大腸がんは早期に発見で

きれば、外科手術をせずに

内視鏡にて治癒が可能なこ

とも多いがんです。「がん

診療連携拠点病院院内がん

登録2007年生存率集計

報告書」によると、大腸が

んの5年相対生存率は72・

1%であり、全がんの64・

4%より高く、比較的治り

やすいがんの部類に入ると

考えられます。

 

大腸がんの症状を把握す

るとともに、大腸がんを恐

れず、症状があれば早めに

診察を受け、症状がなけれ

ば、大腸がん検診を定期的

に受け、早期発見に努めて

いきましょう。

 

日本人におけるがんの罹患率・死亡率はともに上

昇傾向にあり、2人に1人ががんにかかり、3人に

1人ががんで亡くなる時代が迫っているといわれ

る。その中でも大腸がんは、現在死亡数第2位、罹

患数第1位となっており、神奈川県内でも男女とも

に増加傾向にある。

 

そこで当協会の消化器検診部部長・高木精一医師

が、大腸がんと大腸がん検診について、予防を含め

た観点から解説する。

今月の主なニュースかながわ健康支援セミナー

職場で高める「こころの基礎体力」

慶應義塾大学ストレス研究センター副センター長 

白波瀬 

丈一郎

「私と協会」

社会福祉法人セイワ 

理事 

笹原 

榮宏

「子どもたちを取り巻く性と生」

京都大学大学院客員研究員・産婦人科医 

早乙女 

智子

「リラックス体験」�

ボディーワーカー 

藤本 

神奈川学校保健研究会夏期講習会

「インクルーシブ教育をめざして」

「きらっと」たんの個別支援教室主宰 

丹野 

節子

2面3面

大腸がんと大腸がん検診のはなし

4面

直腸、肛門管 30.8%S状結腸 32.5%

下行結腸4.6%

横行結腸9.9%

上行結腸15.6%

盲腸 6.5%

虫垂 0.1%

今年の新規がん患者 100万人超へ

かながわ食育フェスタ2016

対策型検診(住民健診、職域検診など)

任意型検診(人間ドックなど)

便潜血検査S状結腸鏡検査全大腸内視鏡検査注腸X線検査直腸指診

強く勧める勧められない勧められない勧められない実施すべきでない

強く勧める実施を妨げない*

実施を妨げない*

実施を妨げない*

実施すべきでない

平成24年度 平成23年度対象者数*1(A)受診者数(B)受診率*2(B/A)要精検者数*3(C)要精検率(C/B)精検受診者数(D)精検受診率(D/C)がん発見者数(E)がん発見率(E/B)陽性反応適中度(E/C)

2,466,249464,20818.8%35,4367.63%21,43060.48%1,4220.306%4.013%

24,66,269448,31118.2%30,9596.91%18,17058.69%1,1760.262%3.799%

表1 大腸がん検診

表2 神奈川県大腸がん検診実績

図1 大腸がんの部位と頻度

日本消化器がん検診学会全国集計委員会: 平成25年度消化器がん検診全国集計より

*安全性を確保するとともに不利益について十分説明する必要がある 「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2005」より

*1 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報サービスによる数値*2  「国民生活基礎調査」による受診率ではなく、「地域保健・健康増進事業報告」

により算出した参考値*3 当該年度の翌年後に判明した者も含めた数値 神奈川県ホームページより