「剪定枝燃料による...

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街路樹から地産地消の熱エネルギー普及に向け て-現状と課題、可能性- 「剪定枝燃料による 木質バイオマスボイラの事例」 平成23219広島大学東広島キャンパス ㈱トモエテクノ

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Page 1: 「剪定枝燃料による 木質バイオマスボイラの事例」½藤...街路樹から地産地消の熱エネルギー普及に向け て-現状と課題、可能性- 「剪定枝燃料による

街路樹から地産地消の熱エネルギー普及に向けて-現状と課題、可能性-

「剪定枝燃料による木質バイオマスボイラの事例」

平成23年2月19日

広島大学東広島キャンパス

㈱トモエテクノ

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木質バイオマスを燃やす

基礎編

水分を含む木質を燃やす仕組み

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1.木材重量あたりの発熱量が低い。2.燃焼の妨げとなる水分を含んでいる。3.燃焼空気を遮断する灰が発生する。

要するに燃やしにくい。これをどう燃やすか?

燃料としてのチップ

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木質燃料は均質でない

木質燃料は

1)同じ種類の燃料でもその投入前の状況により、含水率が異なり、したがって発熱量も異なる。

2)針葉樹、広葉樹など樹種によって発熱量が異なる。

3)木部・樹皮・枝葉などの部位によって発熱量や灰の発生量が異なる。

4)チッパーによって切削型チップ、破砕型チップまたそれらのメッシュの大きさなどにより形状も異なる。

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木質燃料の含水率と発熱量との関係

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高含水率の木質燃料を燃やすためには

• 木質バイオマスの燃料的価値はそのものが持つ発熱量によって決定される。そのうち発熱量は含水率に大きく左右される為、供給段階で低含水率状態に持っていくことが好ましい。(方法)自然乾燥、前工程乾燥、サイロでの乾燥、ペレット化

• 含水率の高い燃料の場合

高含水率チップを直接燃焼させるための独特な構造のボイラによる。

• 含水率による燃焼可能範囲:ボイラによって異なるが

生チップ焚きボイラでDB含水率120%まで直接燃焼可能。

乾燥チップ焚きボイラではDB含水率80%、ただし自動着火できる含水率は70%まで。

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サイロ

ボイラ本体

チップ

灰収納ボックス

制御盤

プッシュフィーダー

生チップボイラのシステム概念図

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燃焼+乾燥

完全燃焼

熱交換

誘引ファン

灰受け

灰受け

サイクロン

逆火防止装置

生チップ

一次空気

ラムダセンサ

煙突

ムービンググレート

二次空気

生チップボイラの燃焼システムの例

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生チップボイラの燃焼制御システム

5系統の制御システム

空気圧⑤燃焼空気量制御

煙道部のO2④酸素濃度制御

炉内圧③炉内負圧制御

炉内温度②燃料送り量制御

缶水温度①出力制御

センサー対象制御システム

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燃料の性状の変化に対する対応

木質燃料ではその時々によって含水率、樹種、投入量が変動する可能性がある。このため、ボイラの熱交換部出口に、排気ガス中の酸素濃度を測るO2センサー(ラムダセンサー)を設けて、酸素濃度を測り、それによって燃料の送り量と燃焼空気量を制御し、燃料の性状に変動が生じても、最適燃焼ができるような制御を行う。

O2センサー

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生チップボイラの特徴

1.生チップを直接燃焼

チップの前乾燥工程や

助燃装置なしで

含水率120%まで

の生チップを燃やせる。

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生チップボイラの特徴

2.最適燃焼制御:

(1)負荷に応じ、定格出力で100%から30%まで連続

的に制御

(2)無負荷のときは

種火維持モードにより、缶水温度を維持

(3)排気ガス

O2センサーにより、様々な

樹種、含水率に対応

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生チップボイラの特徴

3.24時間全自動運転

通常運転時には人による管理は、

①燃料の監視と補充、

②灰の処理、

の二点である。但し、定期的な点検や掃除などは必要です。

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生チップボイラの特徴

4.ボイラの耐用年数

耐用年数は25年以上

正常な管理状態の下で25年以上で,投資効率は高く、また循環型社会に寄与できる。

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チップボイラ固有の運転特性その1

チップボイラは船の舵(かじ)と同じ

チップボイラは油やガス焚きのボイラとほぼ同様に全自動制御で運転されると考えてよいが、

異なる点は、固形燃料の性質上、

1.起動時の着火から所定の出力が出るまで数時間前後かかるという点

2.停止ボタンを押してからボイラが完全に停止するまで同じく数時間もしくはそれ以上かかるという点

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チップボイラ固有の運転特性と安全対策その2

停止直後に循環も止まって熱の行き場がない場合は、ボイラ缶水量が十分でないと、残り火の燃焼が続いて、

缶水が沸騰

し、沸騰水が噴出する可能性もある。

[安全対策]

従って一旦着火したら停止せずにできるだけ

連続運転することが望ましい。

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チップボイラ固有の運転特性と安全対策その3

停電などで、急に電源が落ちた場合、ボイラも停止するが、燃焼炉内のチップはしばらく燃焼を継続し、

停止した搬送スクリューを伝って逆火する恐れがある。

[安全対策]①多段の搬送スクリューで縁を切る。

搬送スクリュー内の温度センサーにより

②逆火警報

③消火給水装置(機械式)が作動する。未然に火事を防止する二重三重の安全システムが組込まれている。

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○剪定枝の成分は樹皮に近い。

灰の量が多すぎると、炉内に入る燃料を灰が覆ってしまい、燃料への空気の流入を妨げ、燃焼が停止してしまう。灰の燃料中の含有量は少ないほうが好ましい。

灰分発生量木質バイオマスを燃焼した場合に灰が残留する。化学分析によって得ら

れたその量は木部では針葉樹、広葉樹を含めて絶乾重量の1%弱であるが、樹皮は多く、針葉樹では1~2%、広葉樹では5~7%となっている。

国産主要樹種の灰分量%

樹種 木部 樹皮アカマツ 0.1~0.4 2.2スギ 0.3~0.8 1.2カラマツ 0.2~0.5 2.3ブナ 0.2~1.0 7.3 ナラ 0.1~0.6 5.7

灰の処理

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新宿御苑菊栽培用温室への剪定木利用ボイラ

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新宿御苑 剪定枝

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新宿御苑 剪定木チップ

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剪定枝を燃料としたボイラを導入した

新宿御苑での課題

• 剪定枝の調達時期と熱需要とは必ずしも一致しないので、乾燥度を上げ、発酵しないような保管の方法が必要である。

• 剪定枝の形状:破砕型チップ燃料では一部がパウダー状となりやすい。

【問題点】

1)センサーにパウダーチップが付着し誤動作。

2)パウダー状チップは瞬間的に燃焼し、炉全体に行渡らない。出力不足の恐れ。

3)パウダー状チップが機械室内に散り、汚れやすくなる。

剪定枝チップの選別が必要 → 規格より大きいものと粉上のものを除去する。

• 剪定枝には灰の成分が多く、燃焼を妨げやすく、不燃物が灰と混じる。 → 燃料投入時には剪定枝のみでなく、普通のチップと混合させる。

• 温室暖房は大部分のシーズンで負荷が軽いので、チップボイラは不安定な燃焼状態が続き、炉内温度が低下しやすい。 → 負荷の検討と大きすぎないボイラの選定。

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木質焚きボイラ導入後の起こりうる問題点

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切削型チップ 破砕型チップ バーク

■様々の燃料への対応

サイロに投入される木質燃料は同じ種類の燃料でもその投入前の状況により、含水率が異なる。また針葉樹、広葉樹など樹種によって発熱量が異なる。また木部・樹皮・枝葉などの部位、チッパーによって切削型チップ、破砕型チップまたそれらのメッシュの大きさなどにより形状も異なる。

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■ボイラの含水率

ボイラによって、燃料の許容範囲があり、たとえば「生チップ焚きボイラ」では木質の含水率は150%(乾量基準)が上限であり、それ以上の場合は運転しても炉内温度が上がらず、ボイラは燃焼を継続できない。乾燥チップ焚きボイラでは含水率上限は50%(乾量基準)である。

■ O2センサー(ラムダセンサー)

搬送では燃料の含水率、樹種が変動するために、熱交換部の出口に、排気ガス中の酸素濃度を保つO2センサー(ラムダセンサー)を設けて、適当な酸素濃度を保つよう燃料と燃焼空気を制御し、燃料に変動が生じても、最適燃焼ができるような制御が行われる。

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■燃料の管理と搬送上の問題

燃料搬送装置であるスクリューコンベアでは木質のサイズは80×20×10以内のものが求められ、その規格外であればス

ムーズに燃料は搬送されない恐れがある。またサイロから搬送装置へ、あるいは搬送装置の中継箱などでは、適切な設計でなければ、ブリッジを発生する可能性がある。特に、破砕型チップは圧縮されやすく、容易にブリッジが発生するので注意を要する。

化石燃料では均質の燃料であり、その搬送速度は一定でよいが、木質焚きボイラでは燃料の特性の変動が急激な場合には燃焼が不安定となり、煙やすすを発生するなどの問題が発生する。

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■着火に関して

基本的には着火作業はボイラを立ち上げるときだけで、木質焚きボイラでは、24時間連続運転させ、着火作業は極力行わない

ようにするのが理想である。乾燥チップあるいはペレットなど含水率の低い燃料は比較的着火しやすいために電気の熱風ヒーターで自動着火が可能である。着火を迅速に行おうということで灯油などの化石燃料を使おうという発想があるが、このような着火方式では、環境負荷の高い化石燃料を使わない、という環境原則に反すると同時に、春秋など負荷があまりかからない時期や時間帯で、特にON-OFF制

御の場合は、停止・起動動作が頻繁に繰り返され、化石燃料の消費が急激に増大する場合がある。

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■燃焼制御の問題

本来、負荷や温度変動に応じ、ボイラの出力は定格出力から部分負荷までの広範囲(例えば100%から30%までの間)で連続的に自

動制御され、それ以下の低負荷時も、種火維持や自動点火により燃焼が継続的に行われ、缶水温度が自動的に維持されることが望ましい。ところが出力調整がON-OFF方式であると、 缶水温度が設定上限値に達するといきなりOFFとなり、その後のOFFからの立ち上げの

とき、着火のためにその都度着火用燃料を消費することになり、木質焚きの場合の追随性の遅い分、余計な着火用の燃料を消費する。また起動動作では燃料と空気のバランスが必ずしもよく取れないため、公害成分を発生させやすくなる。したがって広範囲に連続出力制御ができる場合は、ON-OFFやHI-LO-OFFでの停止・起動動作がほとんどなくなるため、低公害に寄

与する。

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■燃焼炉の問題

燃焼炉内では、燃料の発熱量が高すぎ、高温になりすぎると燃焼炉の耐熱煉瓦の劣化が著しくなる。また温度が低くなりすぎると燃料からの水分の蒸発が促進されず、燃焼が継続できなくなることがあり,特に缶水温度が低くなりすぎないように温水配管には

三方弁などを設ける。また燃焼炉内は、燃焼ガスが、ボイラの隙間から逆流しないよう誘引ファンを搭載し、負圧を保つようにする。

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■煙突の問題

煙突は燃焼炉内を負圧に保ち、燃料ガスを排出する役割をする。煙突はドラフト効果を保つために十分な設置条件を維持する必要があると同時に、この煙突には十分な保温を施さねばならない。この保温が十分でないと、外気温度が低い場合は、燃焼ガスが煙突から排出される前に、結露を起こし、タールやすすが煙突内壁や底部に蓄積されたり、極端になると煙突火災などの原因ともなる恐れがある。

不完全燃焼時の煙 煙突に付着したすす

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■機械室の問題

機械室の換気は、やや加圧状態に保つ必要がある。運転中に突然停電になると誘引ファンも停止し、煙突のドラフトが十分でないと燃焼ガスが機械室内に流れ込むことがある。したがって機械室内は吸気ファンにより正圧とし、この燃焼ガスの逆流を起こさないようにする。

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■逆火の問題、粉塵爆発

停電時などの逆火防止対策としては、①サイロまたは搬送部に温度センサーを設け、逆火による異常高温を感知すると、警報などで知らせ、ボイラを緊急停止させる。②燃料が搬送途中で落下する燃料ピットでは搬送路の縁を切り、容易にサイロまで逆火させない。③また搬送途中には逆火を遮るダンパーや燃料は送るが気流を通さないロータリー・ゲートバルブを設けて、特にボイラの停止時での逆化を遮るシステムがある。このような逆火対策が十分でないと、逆火からサイロの火事を引き起こすなどの原因となる。特に燃料がパウダー状のものであると、搬送装置内で粉塵爆発の恐れがあり、更に十分な逆火対策が必要である。

逆火用センサー

ムービンググレート 消火用給水弁

油圧装置

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木質焚きボイラでの留意点

燃料:①樹種②寸法③含水率④補充

灰処理

煙突:①高さ②断熱③風圧帯外

定期的な点検・掃除

炉内負圧確保

逆火対策:独立の給水配管

灰処理

機械室内:①強制給気②自然排気(加圧状態)

負荷対策:①一定負荷確保②緩衝タンク③三方弁④停止時の熱放出

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木質バイオマスを燃やす

実践編

顧客を満足させるボイラシステムの提案

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木質焚きボイラ導入のための4つの原則

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原則1 施設の熱需要パターンをよく把握する

給湯、暖房など熱負荷のピーク時のみでなく、1日の負荷の変動を把握し、木質焚きボイラを選定する場合はもっとも負荷率指数の高い範囲を基準とする。

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原則2 ベース負荷にあった出力の木質焚きボイラを導入する

木質焚きボイラの運転特性すなわち追随性が緩慢であることを考えると、連続運転が可能なベース負荷に見合った出力を選定する。

林業技術センターの暖房負荷の日変化

0

10

20

30

40

50

60

70

8:00 12:00 16:00 20:00 0:00 4:00 8:00 12:00 16:00 20:00 0:00 4:00 8:00 12:00 16:00

重油

消費

量L/hr. 

室温

室温℃

重油消費量L/hr.

バックアップボイラでカバー

断続運転    連続運転

チップボイラでカバー

ON OFF ONOFF

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原則3 木質バイオマスだけで全てを満足させようとしない

通常、化石燃料ボイラを導入する場合、熱需要のピークにあわせた出力のものを選ぶ。しかし、追随性が緩慢な木質焚きボイラで同じような選定を行うと、連続運転可能な最低出力も大きなものになって、熱需要の小さいときに煙やタールなどが発生しやすくなり、トラブルの原因なる。また投資額も高コストとなる。

一般に熱需要のピークは特定の時間帯に集中するので、木質焚きボイラでベース運転を行い、ピーク負荷に石油ボイラを稼動するというハイブリッド型のシステムは、それぞれの長所を活かすことで、より安定的で効率のよいものとなる。そして木質焚きボイラを優先運転させることにより、大部分の熱需要を木質エネルギーでまかなうことが可能である。

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バックアップ運転システムの仕組み

制御システムによって、常時の運転は生チップボイラ単独で行い、ピーク時や生チップボイラの運転停止時には、バックアップボイラを稼動させて業務に支障ない様に負荷に対応する。通常バックアップボイラには木質とは異なる化石燃料(灯油、A重油、ガス、など)のボイラを使用するほうが好ましい。

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原則4 施設の断熱性能や室内気候にこだわる

断熱性能を上げ、熱損失を極力抑えることは、ボイラーの出力を小さくすることが可能で、熱費にも大きく貢献する。断熱性能を上げるために増加するコストは、熱源のコスト、燃費などで十分回収できる。

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燃料別エネルギーコストの比較

2.3円/KWh絶乾1kg=10円とすると針葉樹チップ2

3.7円/KWh絶乾1kg=16円とすると針葉樹チップ1

7.6円/KWh1kg=35円、1kg=4.6KWhとしてペレット

*6.0円/KWh9,900kcal/Nm3

1m3=69.17円都市ガス13A

7.4円/KWh低位発熱量1リットル=10.2KWh、

1リットル=75円A重油

8.9円/KWh低位発熱量1リットル=9.55KWh

1リットル=85円灯油

6.0円/KWh15円/kwh。エアコンCOP=2.5として電気

KWhあたりのコスト計算根拠燃料

*この従量料金に加え、基本料金が加わる。

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サイロへの各種投入方法

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チップ用サイロ

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ペレット用サイロ

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新宿御苑における木質バイオマスボイラ導入の意義ー廃棄物系バイオマス利用の尖兵ー

資源の再利用と温暖化対策の実現:日本中には多くの公園、学校、高速道路、ゴルフ場などがあるが、そこからは大量に排出される剪定木や倒木、刈芝などがある。従来は一部チップなどにして堆肥などに活用されるか、莫大な経費をかけて産業廃棄物で処理されるかである。しかしこれら木質系廃棄物をを燃料として活用すると、化石燃料を使わずして熱エネルギーを取り出せる。すなわちこれらの施設では、廃棄物の資源への再利用による大幅な経費の削減と温暖化対策が併せて実現されることになる。その他廃棄物系バイオマスとしては、食品粕(コーヒー粕、ビール粕、焼酎粕,酒粕など)、農業系廃棄物(もみがら、いものつるなど)、ペーパースラッジなどがある。

•【その他】海外からの化石燃料に頼らないエネルギーの安定供給とエネルギー価格の安定化を可能にする。

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