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78 平成23年度川崎市全町内会連合会・(財)川崎市市民自治財団合同研修会 これからの町内会・自治会のあり方 ~活動事例を通して考える~ 川崎市全町内会連合会では例年、(財)川崎市市民自治財団と合同研修会を開催しています。 この合同研修会は市内7区の輪番制で開催され、平成23年度は8月19日午後2時30分から当番 区の多摩区役所11階会議室で行われました。佐伯喜世志全町連副会長の開会の辞、彈塚誠全町 連会長の主催者あいさつ、担当区である多摩区の門ノ沢俊明区長のあいさつに続いて、第1部 では多摩区内2町会の事例発表、第2部では阿部孝夫川崎市長の講演「市政を語る」、そして、 意見交換会が行われました。ここでは第1部で行われた2つの事例発表をご紹介します。 阿部市長の講演に耳を傾ける町内会長、自治会長

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平成23年度川崎市全町内会連合会・(財)川崎市市民自治財団合同研修会

これからの町内会・自治会のあり方~活動事例を通して考える~

 川崎市全町内会連合会では例年、(財)川崎市市民自治財団と合同研修会を開催しています。この合同研修会は市内7区の輪番制で開催され、平成23年度は8月19日午後2時30分から当番区の多摩区役所11階会議室で行われました。佐伯喜世志全町連副会長の開会の辞、彈塚誠全町連会長の主催者あいさつ、担当区である多摩区の門ノ沢俊明区長のあいさつに続いて、第1部では多摩区内2町会の事例発表、第2部では阿部孝夫川崎市長の講演「市政を語る」、そして、意見交換会が行われました。ここでは第1部で行われた2つの事例発表をご紹介します。

阿部市長の講演に耳を傾ける町内会長、自治会長

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 「まち歩き」は第1回が平成20年12月に、布田、中野島6丁目、商店街、堤防、木造密集住宅の各地区を対象に、第2回が平成21年9月に、中野島1丁目、中野島中学校周辺を対象に行いました。その時に大矢根教授から指摘されたことは、まちには危険な場所だけでなく、防災上の資源、財産となるものがあることです。例えば、駅前にある15階建ての高層マンションは落下などの危険が大きいものの、その前の公開空地(通称コミュニティプラザ)は一時避難場所として利用できるものです。また、工務店は工作機械などがあり、企業の社員寮は若者が多く、救助の際の力になる可能性があることも資源となります。そして、調査した対象地区ごとに「危険」「資源」をピックアップし、さらに「提案」を加え、それぞれの防災のポイントをまとめた論点集ならびに「中野島町会防災マップ(2009年2月28日実施)」と「中野島再発見一丁目の危険と資源探しのまち歩き(2009年10月18日実施)」という地図を作りました。 一方、中野島町会防災委員会としては「まち歩き」とは別に、「中野島町会防災地図」の作成を計画し、平成21年6月に第1版を完成しましたが、年々改訂をし、本研修会の配布資料は平成23年8月版の「中野島

町会防災地図」です。 この地図にある通り、北に多摩川の土手があり、南にJR南武線が通り、畑や梨農園が多い農業地帯があります。これが中野島の特徴です。防災地図には避難場所である中野島中学校、中野島小学校、下布田小学校が記載され、そのほかに消火栓、外付け消火器、AEDや防災無線のある場所を、また、地図右下には緊急時に井戸を提供してくださるお宅の名簿を載せました。いざという時に町民がどこで何をしたらいいかを記録する意味でまとめたものです。

まちの実情を知り、防災を考える事 例 1

 中野島町会では組織として町会長を本部長に自主防災に取り組んでいますが、防災対策はむしろ遅れていると思っています。数年前から安全安心のまちづくりをどうしたらいいか、町会で盛り上がり、執行部から独立した形で、防災委員会を設立することを、平成19年6月の役員会に提案し、承認を得て発足しました。そして多摩区役所地域振興課防災担当と連携しながら「自主防災に関する研究」「自主防災組織および各ブロックへの助言、助成」「防災訓練などの企画、実施、ブロック長との連絡、調整」に取り組むことになりました。 その中で多摩区役所から紹介されたのが、地元にキャンパスのある専修大学人間科学部で災害社会学に

取り組む大矢根淳教授でした。 活動にあたっては、大矢根教授のアドバイスもあり、地図づくりというよりも、まず、みんなで防犯のベストを着て、まちの中を大勢で歩く「まち歩き」からスタートしました。「まち歩き」は対象地域を定め、危険な箇所、物件、施設あるいは安全や危険に対して役立つ財産(資源)などを見つけ、気づいたことを地図に記入するもので、自分たちの住むまちの現状を知るものです。 記入にあたっては(株)防災都市計画研究所の吉川忠寛所長にまとめていただいた「まち歩きの着目点」に沿いました。

防災地図づくりを通じて町会の総合防災対策を多摩区中野島町会

区・地元大学との連携でスタート(プロジェクト委員長:瀬下 勇氏)

「まち歩き」で知った防災のポイント

地図づくりのプロセスを熱心に語る瀬下勇氏

会 長:古谷欣治氏副 会 長:田村忠蔵氏前副会長:瀬下 勇氏

専修大学社会関係資本研究センターリサーチアシスタント:横山順一氏

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地域の実情を知るために調査を行ったということですが、3月11日の東日本大震災当

日とそれ以降、調査されたことが、どのように役立っているか、教えてください。

正直なところ、3月11日は全く機能しませんでした。避難所もそうですし、防災委員

会もほとんど何も動けませんでした。ですから、どう機能させるか今後の一番の課題だと思います。

質 疑 応 答

質疑応答に応える田村忠蔵副会長

 「まち歩き」も2回目だけでなく、3回4回と続けて、さらに見直しをしていきたいと考えています。ここで一番大切なのは、老若男女、小さい子どもたちまで参加してもらっていることです。大震災の津波災害ではありませんが「孫子の代まで、このまちでどう暮らしていけば良いかを伝えていくことが大切」という大矢

根教授からのアドバイスがありました。 私たちは地図づくりが目的ではありません。これをもとにまちをどのように改善していくかというように考えています。そして、地域としての共助制度に発展させていけないかというところまで、取り組みを広げようとしています。

次世代まで伝えることが大切

中野島町会防災地図(平成23年8月版・研修会資料より)

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情報の伝達と安全の確保事 例 2

 自治会活動が陥りやすいのは、役員だけが一生懸命で、ほかは知らん顔というケースです。それでは自治会活動はうまくいきません。自治会が何をやっているかを知らしめることと同時に、自治会活動にみんなが

参加する方法が必要です。 そこで鴛鴦沼自治会では「情報の伝達と安全の確保」として、自治会の広報活動と安全パトロールの取り組みを考え、活動しています。

 鴛鴦沼自治会では住民の皆さんに自治会の活動を知ってもらうために、「自治会だより」を2カ月に1回発行しています。内容は、役員、組長など約50 ~60人が参加して2カ月に1回開かれる役員会の動向を載せ、皆さんに知っていただくようにしました。具体的には会長からの呼びかけ、また、環境、防災などの各部署や民生委員をはじめとする委員、子ども会や老人クラブから公開したい情報を集め掲載しています。 そのほかに鴛鴦沼自治会ではホームページを運営しています。自治会の規則や資料、1年間の予定表、バス停の時刻表、3時間ごとの天気予報などの便利帳的

な内容、また、行政から出ている情報のうち東京電力の電力使用状況や飲料水の放射能の状況、計画停電、液状化の状況などの災害関係まで、鴛鴦沼自治会や日常生活に関係のある情報を網羅しています。 さらに自治会に対する質問や要求を受けるEメールの宛先もあり、役員会の欠席もここから連絡できます。組長さんが仕事を確認できるように「組長さんの仕事」の項も入っています。役員会資料や緊急情報は「自治会だより」とともに1年間分が収められ、自治会や生活に関係するあらゆる情報を住民に発信しています。

新しい取り組みで住民の信頼と自治会活動への理解を多摩区鴛

鴦し

沼ぬま

自治会

自治会活動を活性化していくために(会長:下村優毅氏)

「自治会だより」と「ホームページ」による情報の伝達(書記:野田 孝氏)

会 長:下村優毅氏副 会 長:松本 勝氏書 記:野田 孝氏

安全部長:斉藤隆光氏書 記:山県和彦氏

自治会メンバーを紹介する下村優毅会長

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 鴛鴦沼地区は緑が多く環境に恵まれていますが、逆に危険な場所もあります。不審者が子どもに声をかけ車に乗せようとした事件や不法投棄も続き、平成18年に自治会の専門部として安全部が生まれました。当初は子どもたちの安全対策が中心でしたが、その中で防犯カメラの設置が取り上げられ、現在カメラが9台、録画機が5台あり、要所要所を見守っています。 最近、カメラや映像機器の性能が良くなり、専門的な知識がない素人でも設置できます。また、365日24時間と大変な監視も、機器の進歩によって負担が大幅に軽減されるようになりました。 既に、不法投棄では大きな効果を上げ、平成18年5月まで15件あったものが、カメラの設置により、現在、ほぼゼロになりました。映像から廃棄された物も車のナンバーも確実にわかり、多摩警察署によって検挙された例もあります。たまたま7月にもテレビの廃棄がありましたが、「防犯カメラで映しているので、撤去してください」と廃棄時の写真をそのテレビに貼り付けたところ、翌日、廃棄者が回収していました。また、ゴミ出しのマナー遵守にも効果があります。 個人情報の扱いが厳しくなっている時代だけに「役員で検討した場所に設置する」「映像の確認は個人が勝手に見るのではなく、副会長と運用者が必ず2人以上立ち会う」と防犯カメラの設置については、自治会としてきちんとした運用・設置基準を設けました。 安全パトロールは週1回、夏休み、冬休みを除いて年間46回行っています。午後2時から3時まで、低学

年の児童の下校時間に合わせ、登下校の通学路をパトロールします。防犯部で「何月何日の安全パトロールはどこの組」と担当を決めていますが、自発的に参加する形にして、1回に10人から15人参加しています。そのほかに自治会役員や鴛鴦沼クラブ(老人会)も協力し、去年は延べ580人が参加しました。一番大きな効果は、まちを歩く人々のあいさつを通して、鴛鴦沼自治会の人であることを確認するなど、地域コミュニケーションの活性化で、犯人がこのまちに足を踏み入れない環境づくりを進めています。 今後の計画ですが、震災の問題や高齢者など、自治会としては何をなさなければいけないかを考えていきたいと思います。特にこれからのサポート体制では今日の中野島町会の事例発表が参考になりました。

「防犯カメラ」と「安全パトロール」による防犯への取り組み(安全部長:斉藤隆光氏)

防犯の取り組みを語る斉藤隆光氏

鴛鴦沼自治会ホームページのトップ画面

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ホームページの細かい資料はどこで見れますか。また、鴛鴦沼自治会のホーム

ページでは誰が新しい情報の更新をしていますか。

ホームページの画面下の「テーマ:合同研修会」をクリックすると資料が出

「自治会が何をやっているか」という住民の疑問を、鴛鴦沼自治会では回覧や

ホームページで解消されていますか。

解消されたと思います。今まで「知らない」ということがよくありましたが、

「自治会だより」で回覧しますので、知らないということにはなりません。自治会としての活動は認識していただいていると思います。

質 疑 応 答

ホームページについて質疑応答に応える野田孝氏

ます。このホームページは“free way”というアメリカのソフトウェアを使っています。これはスキャナーに読み込ませるだけでホームページに内容を掲載することができる、作業の簡単なソフトウェアで、小学5~6年生でも更新できます。更新は基本的に書記の野田が行っています。

平成14年度 高津区全町内会連合会「高津区全町内会連合会の活動について」 高津地区連合町内会 副会長 佐保田實氏 橘地区連合自治会  副会長 小島恵一氏

平成15年度 宮前区全町内・自治会連合会「宮前区全町内・自治会連合会の活動について」 菅生ヶ丘自治会会長 大津三郎氏

平成16年度 多摩区町会連合会「多摩区町会連合会の活動について」 栗谷町会長 岸 隆氏

平成17年度 麻生区町会連合会「百合丘地域社会と自治会活動」 百合丘公団住宅第2団地自治会会長 内山春夫氏

平成18年度 川崎区連合町内会「わが町大島地区自主防犯活動」 大島4丁目町内会長 藍原 晃氏「川崎区連合町内会のまちづくり活動について-小田地域の活動事例を中心に-」 小田4丁目町内会長 田辺冨男氏

平成19年度 幸区町内会連合会「冬の夜間パトロールについて」 南加瀬中央町内会長 田島光男氏「やすらぎの道 新明会の歩み」 神明町町内会副会長 髙橋良雄氏

平成20年度 中原区町内会連絡協議会「独居老人等見守りネットワークについて」 上平間第2町会会長 山上 正氏「ペットボトルキャップの収集について」 小杉2丁目町内会会長 𠮷房正三氏

平成21年度 高津区全町内会連合会「高津区全町内会連合会の活動について」 下作延第1町内会会長 佐藤 忠氏

平成22年度 宮前区全町内・自治会連合会「認知症高齢者の徘徊発見訓練について」 鷺沼町会会長 持田和夫氏「鷺沼町会の防災に関する取り組みについて」 鷺沼町会副会長 恒川康夫氏

過去10年の活動事例発表