医療事故が起きたら · 2019-03-08 ·...

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医療事故が起きたら 平成20年9月改訂 東京都病院経営本部サービス推進部 医療事故予防マニュアル

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医療事故が起きたら

平成20年9月改訂

東京都病院経営本部サービス推進部

医療事故予防マニュアル

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医療事故予防マニュアル「医療事故が起きたら」の改訂にあたって

平成11年2月の広尾病院薬物誤注入事故等を教訓に、都立病院では、二度とこ

のような事故を起こすことが無いよう、様々な取り組みを進めてまいりました。

「医療事故が起きたら」は、不幸にして医療事故が発生した場合の対応マニュア

ルとして、平成12年12月に作成されました。今回の改訂では、フロー図を充実する

など、より分かり易くなるようにしたものです。

職員の方々は、特に以下の点に心がけて活用していただきたいと存じます。

○ 「患者中心の医療」の理念のもと、救命・救急処置に全力を尽くす。

○ 事故発生直後の対応を迅速に行うとともに、的確に報告する。

○ 事故に関する状況や情報は、事実に基づいて正確に伝える。

○ 患者や家族の気持ちを真摯に受けとめ、コミュニケーションを大切にする。

なお、本マニュアルは、今後、医療安全に関する制度改正等に合わせて、必要

に応じた見直しをしていくものとします。

平成20年9月

都立病院医療安全推進委員会

委員長 青 木 信 彦

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「医療事故が起きたら」目次

1 緊急連絡体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2 医療事故初期対応の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 3 事故発生直後の対応 (1)救命・救急処置に全力を尽くす ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14(2)EM コール応援要請 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14(3)医療上の指示と院内連絡体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16(4)正確な記録の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18(5)証拠物品等の保存 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18(6)家族等への連絡 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20(7)説明担当者の決定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20(8)家族等への事故直後の状況の説明(説明会の開催) ・・・・・・・・・ 22(9)手術室等での事故 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 4 事故発生後の対応 (1)その後の医療に万全を尽くす ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26(2)事実経過の整理確認と記録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28(3)院内での検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30(4)患者・家族等へのその後の状況等の説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32(5)当事者に対するフォロー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合 (1)患者が死亡された時の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38(2)事故調査会の開催 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40(3)第三者機関(モデル事業)等への届出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42(4)所轄警察署等への連絡(医師法21条による届出等) ・・・・・・・・・・・ 44(5)病院としての説明謝罪 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 6 再発防止策の検討と対策の実施 再発防止策のための取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

7 患者・家族・弁護士等から面会を求められたら (1)患者・家族から面会を求められた場合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54(2)弁護士等から面会を求められた場合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

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【参考資料】

○病理解剖の承諾を求める場合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

○「「異状死」ガイドライン」日本法医学会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

○「異状死体の取扱い」日本医事新報3711号抜粋 ・・・・・・・・・・・ 63

○「医療法・医師法(歯科医師法)解」抜粋 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

○「医療事故防止方策の策定に関する作業部会(中間報告)」抜粋 ・・ 65

○「リスクマネジメントスタンダードマニュアル作成指針」抜粋 ・・・・ 66

○「異状死の届出の判断基準」(東京都監察医務院) ・・・・・・・・・・ 67

○「臨床医師が死亡診断書を作成するときの留意事項」(東京都監察医務院)・・・ 68

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1 緊急連絡体制

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2 医療事故初期対応の流れ

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3 事故発生直後の対応

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その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

EM コール( )

応援要請( )

救命・救急処置に全力を尽くす

○事故後の経過を記録する(⇒P18) ○家族等へ連絡する ⇒時刻・状況を記録(⇒P20)

○緊急連絡体制により連絡(⇒P2)

(1)

連絡

(2)連絡

事故 発生!

3事故発生直後の対応:救命・救急処置に全力を尽くす⇒EMコール・応援要請

管理看護長

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3事故発生直後の対応:救命・救急処置に全力を尽くす⇒EMコール・応援要請

(1) 救命・救急処置に全力を尽くす

- 15 -

① 直ちに、患者の救命・救急処置に全力を尽くす。

② 併せて、上席医や看護長等上司に連絡し、医療上の指示と

応援を仰ぐ。

夜間・休日の場合では、上席当直医及び管理看護長に連絡

する。

③ 当事者が連絡できない場合は、近くにいる者が連絡を行う。

(2) EMコール・応援要請

必要に応じて、EMコール(エマージェンシーコール)により、専門医等の応援を求め、病院の総力を挙げて 善の医療を行う。

病院の EM コールの方法、番号を記入

普段からEMコール・緊急応援体制を整備し、訓練をしておくことが必要。

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その他関係者

当事者の管理職

専任リス

マネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

連絡

○緊急連絡体制により連絡(⇒P2)

連絡

事故連絡会

4人のうちいずれか(または全員)に直ちに連絡すること

医事担当課長で構成 専任リスクマネジャー 看護部・科長 医療安全対策室長

指示

(3)

(3)

発生! 事故

3事故発生直後の対応:医療上の指示と院内連絡体制

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3 事故発生直後の対応:医療上の指示と院内連絡体制

(3) 医療上の指示と院内連絡体制

- 17 -

① 連絡を受けた上席医や看護長等は、医療上必要な指示を与えるとともに、定められた院内連絡体制により事故発生状況等を連絡する。

② 夜間・休日の事故の場合、上席当直医や管理看護長は、連

絡を受けたら直ちに事故現場に急行し、必要な指示・対応を行うとともに、定められた院内連絡体制により連絡する。

③ 事故連絡会のメンバーのいずれか(または全員)には、他の

連絡経路のいずれにも優先し、直ちに連絡を行う。

〔連絡先〕

○医療安全対策室長

○看護部・科長

○専任リスクマネジャー

○医事担当課長

病院は、日ごろから、夜間・休日の体制を含めて連絡体

制(連絡網)を整備し、職員にそれを周知徹底しておくことが

必要。併せて、普段から職員に対して、事故が起こったら迅

速に連絡することを周知徹底しておくことが大事である。

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3 事故発生直後の対応:正確な記録の作成⇒証拠物品等の保管

その他関係者

当事者の管理職

専任リスク

マネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

○事故後の経過を記録する

○現場の保存

○証拠物品・データ等の保存

連携しながら、正確に記録していく

○事故対応の経過を記録する

記録係に指名

(4)

(5)

- 18 -

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3 事故発生直後の対応:正確な記録の作成⇒証拠物品等の保管

(4) 正確な記録の作成

- 19 -

① 上席医や看護長等の上司は、記録係の職員を指名するなど

により、行った救命・救急処置や経過を正確に記録させる。

② 救命・救急処置実施中の記録は、正確・詳細であることを第一と

する。

記録の整理、清書等は事故の処理が一段落した後、関係者が集

まって直ちに行う。

(5) 証拠物品等の保存

① 現場の保存は、確実に行う。

② 証拠物品等を確実に保存する。 使用した注射薬のアンプ

ル等は、指定した容器に入れ、正確に記録する。

③ MD ボックス、ゴミ箱についても内容物とともに保管しておく。 ④ 食事の誤嚥等の事故の場合は、残食も保管しておく。 ⑤ 生体監視モニターの記録についても確実に保管する。 ⑥ 検査記録や電子カルテに係る電子データの保管にあたっ

ては漏れの無いように留意する。

特に電子カルテ稼動病院は、各サブシステムに保管され

ているデータについても保管する。

保管にあたっては、システム内のデータ保管期限に留意

し、他のメディアにコピーを取る等を行い、確実に保管する。

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3 事故発生直後の対応:家族等への連絡⇒説明担当者の決定

その他関係者

当事者の管理職

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

状況に応じて主治医や上席医等が担当する

○家族等へ連絡する ⇒時刻・状況を記録

(6)

記録係

説明担当者の決定

(7)

- 20 -

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3 事故発生直後の対応:家族等への連絡⇒説明担当者の決定

(6) 家族等への連絡

① 患者の家族や近親者が院内に不在の場合には、直ちに連絡先に連絡する。なお、入院時に、家族への連絡先はできれば2か所以上確認し、記載しておく。

② 不通時は、連絡がつくまで繰り返す。

※ 留守番電話等に伝言が残せる場合は、個人情報に配慮する。

(例) 「○○病院の××です。 至急、△△病棟の××まで連絡願います。」

③ 連絡をした時刻や状況をカルテ等に記録する。

(7) 説明担当者の決定

- 21 -

① 患者・家族等への説明は、状況に応じて主治医や上席医等が担当する。

② 説明担当者の決定にあたっては、必要に応じて、医療安全

対策室長等の上司に相談し指示や了解を得るようにする。 ③ 説明担当者を決定したら、そのことを現場にいる職員及び関

係する職員に周知する。

④ 説明担当者以外の職員が、患者・家族等から病状等について質問を受けた場合には、説明担当者から説明することを伝えるとともに、直ちに、説明担当者に患者・家族等が説明を求めていることを伝える。

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3 事故発生直後の対応:家族等への事故直後の状況の説明

その他関係者

当事者の管理職

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

○家族等来院

家族等への説明

(8)

※ 手術室等での事故(⇒P24)

説明担当者

(9)

必要に応じて出席

⇒時刻・状況を記録

- 22 -

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3 事故発生直後の対応:家族等への事故直後の状況の説明

(8) 家族等への事故直後の状況の説明

① 家族等は、心配しながら事実経過についての説明を心待ちに

している。救命・救急処置等で忙しい中であっても、時間をつ

くって説明する。

② 説明に際しては、家族等の心情に十分配慮し、分かり易く説

明する。

③ 説明には、説明担当者(通常は主治医や上席医等)のほか看

護長(もしくは、それに準じる看護職員)等が同席する。

④ その時点で事故の原因や予後等を正確に分かりやすく説明

する。その際、憶測による説明は行わないように留意する。

⑤ その時点で事故の原因や予後等が明らかでない場合の説明

は「病院として調査を行い、その結果は後日説明させていただ

きます。」などと伝え、家族等の理解を得るようにする。

⑥ 過失が明らかな場合には、誠意をもって説明し、謝罪する。

警察に届け出る必要がある場合は、その際に了承を得ておく。

⑦ 説明が終わったら、説明者、説明を受けた人、説明時刻、説

明内容、質問・回答等をカルテに必ず記録する。

途中経過の報告であっても、家族等にとっては重要なことである。

- 23 -

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(9) 手術室等での事故

- 24 -

① 手術室や分娩室、処置室、ICU等の隔離された部屋で起きた

事故では、家族等に室内に入っていただき、患者に面会してい

ただくとともに、医療現場を見ていただくことが必要である。

② 特に患者が死亡するおそれのあるような場合、家族等や近親

者には、患者の生存中に会っていただくことが大事である。

その際には、衣類の乱れを整えるなどして、患者の尊厳と家族

等への心情に配慮することが必要である。

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4 事故発生後の対応

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4 事故発生後の対応:その後の医療に万全を尽くす

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

事故の状況や家族等の意思により当事者が担当から外れたほうが良い場合もある

(1)

事故連絡会

逐次報告し、必 要 な 判 断を仰ぐ

救命・救急処置⇒その後の医療に万全を尽くす

- 26 -

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4 事故発生後の対応:その後の医療に万全を尽くす

(1) その後の医療に万全を尽くす

- 27 -

① 多くの場合、患者は安定した状態にまで回復していないので、

観察や処置、検査等には細心の注意が必要である。この時点

での気の緩みや混乱から、必要な処置を怠ったり、連絡の不備

が生じたりする等、患者の予後に影響を及ぼすことのないように

注意をする。

② 事故連絡会に逐次、状況報告して必要な判断を仰ぐ。

人手が足りないときは、早めに応援要請をする。

特に、専門医への依頼やコンサルテーションは、早め

の対応が必要である。

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4 事故発生後の対応:事実経過の整理・確認と記録

その他関係者

当事者の管理職

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

事故連絡会

記録係 記録

事故調査会開催の指示

報告

事故調査会

提出

整理・確認と記録

事実経過の

(2)

関係者は

全員出席

報告し、事故調査会開催の判断を仰ぐ

- 28 -

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4 事故発生後の対応:事実経過の整理・確認と記録

(2) 事実経過の整理・確認と記録

- 29 -

① それまでの経過を整理・確認するとともに、事実経過等の

記録を作成する。

② 事故に立ち会った全ての職員が集まって、事実経過を確

認する。特に、事故が突発した場合は、各職員の観察した

事実や処置、検査等の時間的経過についての認識が混乱

していることが少なくないため、時間的経過を整理する。

③ 主治医(または担当医)等が作成したメモ類の内容は、必

要な部分をカルテに正確に転記し、記録を整理しておく。

なお、紙カルテを仕様している場合は、整理した記録の

後には、記録した時刻と記録者名を記載しておく。

④ 事故連絡会は、記録内容を把握し、院長に報告する。

また、重大案件について、事故調査会開催の判断を仰ぐ。

事故の要因が、他部署にも影響を及ぼす可能性

がある場合は、点検の指示をだす。

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4 事故発生後の対応:院内での調査

- 30 -

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

(3)

事実経過の

整理・確認と記録

事故連絡会

事故連絡会等の情報を基に院内での調査を行う

報告

事故調査会

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4 事故発生後の対応:院内での調査

(3) 院内での調査

- 31 -

○ 事故調査会での調査

① 事故連絡会で収集・確認した情報を基に、事実経過の整

理・確認を行う。

※ 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合は

P40~P41 による。

② 事故の原因、病院の過失の有無、今後の方針検討し、院

長に報告する

③ 過失の存在が確実である場合はもとより、過失が疑われる

場合もしくは、患者側からの不信が強い場合には、「事故調

査会」の調査を基に院長が判断し、病院経営本部へ報告を

する。

【連絡先】

病院経営本部 サービス推進部

副参事(医療安全担当) 電話03(5320)5833

医療安全推進係 電話03(5320)5838

事故の要因が、他部署にも影響を及ぼす可能性

がある場合は、点検の指示をだす。

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4 事故発生後の対応:患者・家族等へのその後の状況等の説明

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

説明会

(4)

説明担当者 記録

説明者、説明を受けた人、説明日時、説明内容、質問・回答等を記録する

必要に応じて報告

事故調査会で選出した者が同席

カルテに

- 32 -

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4 事故発生後の対応:患者・家族等へのその後の状況等の説明

(4) 患者・家族等へのその後の状況等の説明

- 33 -

① 説明に際しては、患者・家族等の心情に十分配慮し、真摯な態度で誠意をもって話す。

② 説明には、説明担当者(通常は主治医や上席医等)のほか、

事故調査会で選任した者が同席する。医師だけではなく、看護長(もしくは、それに準ずる看護職員)等も同席する。 また、相手方にも複数の方に来ていただくよう求める。

③ カルテ等の記録に基づき、事実関係を分かりやすく説明する。 ④ 事故の原因が不明確であるときには、

・「このような事態に至ったことを、大変遺憾に思います。」 ・「 善の治療を行いたいので、今は治療に専念させていただきたい」 ・「病院として調査を行い、その結果は後日説明させていただきます。」 と話し、事実関係だけを説明して、患者・家族等の理解を得るようにする。

⑤ 病院側の過失が明らかな場合には、病院側に過失があること

を率直に告げ謝罪する。

過失と事故との因果関係が明らかでない場合には、「因果関係等については病院として十分に検討した上で、できるだけ早い時期に改めて説明する場を設けてご説明させていただきます。」と伝え、理解を得るようにする。

⑥ 説明が終わったら、説明者、説明を受けた人、説明日時、説

明内容、質問・回答等を必ずカルテに記録する。

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4 事故発生後の対応:当事者に対するフォロー

- 34 -

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

担当を替えて欲しい

違う職務へ

休養へ 復帰 「プログラム」の実施

当事者へのフォロー 要望

報告

当事者の状態、 家族等の要望等を報告

当事者の状態、 家族等の要望等も考慮し、必要性を判断

当事者フォロー実施

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4 事故発生後の対応:当事者に対するフォロー

(5) 当事者に対するフォロー

- 35 -

① 当事者の上司は、当事者の心身の状態を観察するとともに、

必要に応じて当事者自身へのフォロー体制をとる。

② 当事者を担当からはずして欲しい等の要望が患者・家族等

からあった場合は、速やかに必要性を十分に検討して対応

する。

③ 心身の状態に応じて、当事者の担当職務の変更や休養の

要否を検討する。

④ 当事者が復帰する場合、状態を勘案しながら復帰プログラ

ム等に基づき、徐々に行う。

病院では、あらかじめ研修やマニュアル等により

当事者に対するフォロー体制を検討しておく必要が

ある。

復帰を促す場合、復帰プログラムについても検討

しておく。

また、院内の健康管理部門と連携して、回復を進

めていくことが重要である。

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5 患者が死亡または、重篤な

傷害が発生した場合

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- 38 -

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

死亡!

主治医

死亡の確認

家族等

確認

患者の尊厳を尊重し、家族等の気持ちを慮り、誠実に接する

(1)

5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:患者が死亡されたときの対応

事実をカルテに記録

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:患者が死亡されたときの対応

(1) 患者が死亡されたときの対応

- 39 -

① 家族等に死亡を伝える場合、医師は、家族や他の医療従事

者とともに患者の死亡を確認し、明確に臨終を告げ、速やか

にその事実をカルテに記録する。

② 患者の尊厳を尊重し、家族の気持ちを慮り、誠実に接する。

③ これからの予定について説明する。

患者と家族がともに過ごす時間への配慮や、死後のケア

についての説明や参加の有無、荷物の整理等について十

分説明する。

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:事故調査会の開催

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

医療安全対策推進委員会

再発防止策の検討指示

報告

事実関係を詳細に調査・検討 事故原因・過失の有無の見解まとめ

(電子データ含む) カルテ、看護記録等の記録の保存 事実・見解⇒文書作成

事故調査会

(2)

必 要 に応じて

自ら行った行為や 見 た 事 実 を 報告書にまとめる

ご家族等

過失があった

に謝罪 場合、速やか

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:事故調査会の開催

(2) 事故調査会の開催

- 41 -

事故に対する緊急な対応が終了したら、直ちに、院内に事故

調査会を設置する。

① 事故発生後、できるだけ早い時期(遅くても24時間以内)に事故調査会を開催し、事実関係を詳細に調査・検討し、事故の原因や過失の有無等について見解をまとめ、院長へ 報告するとともに、判断を仰ぐ。

② 事実関係の調査において、異状死が確認された場合は、速

やかに所轄警察署に届出る。 ※ 所轄警察署への届出については P45、第三者機関(モデ

ル事業)への届出は P43 を参照。 ※ 異状死の判断が困難な場合は、P60 以降の資料を参考に

する。 ③ 所轄警察署への届出を行った場合は、会議開催について慎

重に対応し、関係機関等において疑義を生じさせることの無いよう留意する。(必要に応じて外部委員を選任する)

④ 病院の見解で、明らかに過失があると判断された場合は、速

やかに患者・家族等に病院としての謝罪を行う。 ⑤ 事故に関与した職員は、事前に自ら行った行為や見た事実

等を報告書としてまとめておく。 ⑥ 調査した事実及び病院としての 終的な見解等は、文書とし

て記録し、カルテや看護記録、エックス線フィルム等と一緒に医事担当課長が保管する。

その際、電子カルテ等の電子データについても保管を確実に行い、必要に応じてプリントアウトをしておく。

⑦ 院長は、再発防止策の検討を医療安全対策推進委員会に

指示する。 ⑧ 事故調査会における検討の目的は事実の究明であり、関係

者の責任問題については別の場で検討する。

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- 42 -

5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:第三者機関(モデル事業)等への届出

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

死亡!

家族等

モデル事業調査依頼

事故調査会

医療関連死?

(3)

異状死の助言

調査受付窓口 (東京地域事務局)

死因が不明な場合

同意

家族の同意

(速やかに届出)

過失が明らかな場合

判断

報告

報告

不同意

死因が予測されたものであった場合

帰宅 または 病理解剖へ

必 要 に応じて

異状死

不同意

家族の同意

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:第三者機関(モデル事業)等への届出

(3) 第三者機関(モデル事業)等への届出

- 43 -

① 患者が死亡した場合のうち、死因が明らかでない場合や、診

療行為の当否が問題となる場合を対象として、「診療行為に関

連した死亡の調査分析モデル事業」へ調査依頼を行うことが

ある。

② その際は、患者の家族等に事業の主旨を説明し、同意を

得るとともに同意書にも記載をお願いする。

③ 電話にて、調査受付窓口へ調査分析を依頼し、受託の可否

の判断を得る。

• 調査受付窓口

〒113-0033 東京都文京区本郷 5-23-13 田村ビル 4 階

TEL:03-3813-3025 FAX:03-3813-3026

• 受付時間 月~金曜日 9:00~17:00

④ 依頼書、患者家族の同意書、事案報告書、調査分析に必要

な資料等を用意する。

⑤ 依頼後、異状死の対象であると助言があった場合は、速やか

に所轄警察署へ届出を行う。

モデル事業の対象事例 ○ 診療行為に関連した死亡について、死因究明と再発防

止策を中立な第三者機関において専門的、学際的に検討するのが適当と考えられる事例。

○ 医師法21条の異状死届出制度について、変更を加え

るものではなく、死体を検案し異状を認めた場合は直ちに所轄警察署に届け出る。

○ 警察に連絡された事例についても、司法解剖とならな

かった場合にはモデル事業の対象となることがある。

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(医師法21条による届出等) 5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:所轄警察署等への連絡

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

※この項のフロー図は、現在、国において法改正の動きもあるこ

とから、今後、制度改正を踏まえた改訂時に、作成する。

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:所轄警察署等への連絡 (医師法21条による届出等)

(4) 所轄警察署等への連絡(医師法21条による届出等)

- 45 -

① 医師法第21条では、「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があ

ると認めたときは、24時間以内に、所轄警察署に届け出なければならない。」と規定さ

れています。死体等を検案した医師は、「異状」を認めたときにはこの規定に従い、所

轄警察署への届出を行う必要があります。

死体が「異状」であるかどうかは、死体等を検案した医師が判断します。この際、下記

の資料等を参考にします。

② なお、次の場合にも、所轄警察署への届出が必要です。

ア 病院側の過失により死亡若しくは重篤な傷害が発生した場合には、患者さん・ご家

族等に説明した上で、院長が速やかに所轄警察署に届け出ます。

イ 医療事故により患者さんが死亡されたり、重大な傷害を受けた可能性があり、その

医療行為について刑事責任を問われる可能性が考えられたときには、速やかに警察

に届け出ることが必要です。

届出の要否の判断に当たっては、下記の資料等を参考にします。院長は、医療事故

予防対策委員長、上席医師等と相談して届出の要否を判断して下さい。 ③ 所轄警察署へ届出をすると同時に、病院経営本部サービス推進部患者サービス課、

福祉保健局医療政策部医療安全課に報告します。

※ 参考資料

・「異状死」ガイドライン (⇒P60) (平成 6 年 5 月日本法医学会)

・「異状死体の取扱い」 (⇒P63) (日本医事新報第3711号 平成7年6月10日発行) (厚生省健康政策局医事課)

・「医療法・医師法(歯科医師法)解」抜粋 (⇒P64) (厚生省健康政策局総務課編)

・「医療事故防止方策の策定に関する作業部会(中間報告)」抜粋 (国立大学医学部付属病院長会議常置委員会) (⇒P65)

・「リスクマネジメントスタンダードマニュアル作成委員会」 (⇒P66)

・「異状死届出の判断基準」(東京都監察医務院) (⇒P67)

・「臨床医師が死亡診断書を作成するときの留意事項」 (⇒P68)

(監察医務院)

※この項については、現在、国において法改正の動きもあることから、今後、制度改正を踏まえて

改訂する。

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:病院としての説明・謝罪

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長)

(5)

家族等

病院関係者

必ず 出席 病院側と患者・家族等の出席

者、説明内容、質問・回答、話し合いの結論等を記録

病院経営本部へ報告

事故調査会で 同 席 者 を選任

過失が有った場合は、速やかに謝罪する。

患者・家族等の心情を十分配慮して、誠意をもって分かり易く説明する。

説明会等の実施

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5 患者が死亡または、重篤な傷害が発生した場合:病院としての説明・謝罪

(5) 病院としての説明・謝罪

- 47 -

病院としての 終的な結論が出た段階で、患者・家族等に正式

に説明する場を設定する。

① 説明を行うときは、事故調査会で選任した者が出席する。

② 事前に、患者・家族等と時間や出席人数、出席者の患者との

続柄等について確認しておく。

③ 説明は、事故の結果に対する患者・家族等の心情を十分配

慮して、誠意をもって応対する。また、専門用語や分かりにくい

表現は避け、図示や参考文献等を活用したりするなど、患者・

家族等に理解していただけるよう心掛ける。

○ 患者・家族等の発言に十分耳を傾け、冷静に話を聴

くよう心掛ける。

○ 病院が行った調査の結果、病院側に過失が存在す

ることが明らかになった場合には、事実を説明し、病院

として謝罪する。そして、以後の話合いについては、

東京都として責任をもって対応することを説明する。

○ 病院側に責任がないと考えられる場合には、その理由

を患者・家族等が分かるように説明し、理解を求める。

理解が得られないようであれば、その後も必要に応じて話し

合いの場を設け、誠意をもって患者・家族等の疑問を解消して

いくよう努力する。

④ 説明の終了後に、病院側と患者・家族等の出席者、説明内

容、質問・回答、話し合いの結論等を記録し、医事担当課長が

保管しておく。

また、その経過等を病院経営本部に報告する。

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患者・家族等への対応について

事故が発生した場合には、患者・家族等は言葉に尽くせないほどの不安や悲しみ、医療側に対する不信や怒りを抱いているものである。

医療側としてはこのことを十分認識して、過失の有無に関わらず、患者・家族等に対して真摯で誠実な態度で接することが肝要である。

事故発生後の各場面における対応については、それらを含めて患者や家族等にいかに接するべきかについて、以下にまとめて示す。

ここで も大事なことは、患者や家族等は、患者の救命はもとより、事実に関する隠し立てのない説明、過失があった場合の謝罪、さらに、事故の再発防止に対する病院の真剣な取組みです。医療機関としては、これらのことを真摯に受け止めて説明と対応をする事が肝要である。

① 患者・家族等の立場にたって考え行動する。 ② 事実経過を速やかに、隠すことなく説明する。 ③ 事故が過失に基づくことが明らかな場合には、「後ほど

病院として説明させていただきますが・・・」と断った上で、

経過等を説明し、過失について謝罪する。 ④ 過失が存在したが、その過失と事故との因果関係が明

らかでない場合には、過失が存在したことを素直に告げ

謝罪した上で、「因果関係等については、病院として十分

に検討した上で、できるだけ早い時期に、改めて場を設

けて説明させていただきます。」と伝え、理解を得るように

する。 ⑤ 過失の有無や、過失と事故との因果関係の有無につい

て、病院と患者・家族等の意見が異なる場合には、病院

の考え方を理解してもらえるよう努力する。 ⑥ 救命救急処置などの結果、患者の衣服が乱れている場

合には、衣服の乱れを整える等して、患者の尊厳と家族

等の心情に十分配慮する。

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6 再発防止策の検討と

その実施

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6 再発防止策の検討とその実施

その他関係者

当事者の管理職

専任

リスクマネジャー

看護部・科長

医事担当課長

(医療安全対策室長))

患者・家族等

医療安全対策推進委員会で再発防止策の検討

参加

必要により参加 (病院全体の構造的・体質的な要因のとき等)

説明

分かりやすく

外部委員

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6 再発防止策の検討とその実施

事故の再発防止策の検討とその実施は、病院として行うべき 重要の課題で

ある。そして、このことこそが患者の大きな犠牲に報いる道である。

再発防止のための取り組みの要点

- 51 -

① 事故に関する病院としての 終結論を出した後、速やかに院

内の医療安全対策推進委員会は、事故に関与した職員等を含

めて、事故の再発防止について検討し、再発防止策を策定し、

職員全体に徹底する必要がある。

事例によっては、必要に応じて、他の部署の職員もしくは、外

部委員を選出するなど適宜、再発防止策の策定に参加させる。

② 事故の発生が病院全体の構造的・体質的な問題に関わって

いるような場合には、必要により外部委員を加えた検討会を設

置し対策を検討する。

③ 防止策の検討に当たっては、事故発生の端緒となった事象の

みに目を奪われるのではなく、事故要因や事故の背景等を徹底

的に分析し、事故の発生機序を明らかにした上で、再発防止策

を策定する。

④ 患者や家族等に策定した再発防止策を分かりやすく説明する。

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(空白のページ)

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7 患者・家族・弁護士等から

面会を求められたら

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7 患者・家族・弁護士等から面会を求められたら

患者・家族等が医療過誤を疑い、診療上の説明ではなく、医療が適正に行われ

たかどうかについて説明を求められることがある

医療が適正に行われたかどうかを判断する場合、患者・家族等の判断も十分尊

重する必要がある。そして、患者・家族等に誠意をもって適切な説明をすることは医

療側の基本的な義務であることを忘れずに、接するようにする。

(1)患者や家族等から面会を求められた場合

- 54 -

主治医等は、以下の点に留意して応対する

① 患者・家族等からあらかじめ電話等で連絡があった場合は、事

前に上司に報告し相談する

② 外来診療の後などに急に説明を求められ、上司に相談する時

間的余裕のない場合は、患者・家族等と面談後に直ちに上司に

報告する

③ 患者・家族等と面会し説明する場合は、第一に患者の話をよく

聞き、その主張や要望を的確に把握する

④ 患者・家族等に対し説明する場合には、カルテ等の記録を見

て、事実に基づいて説明する

⑤ 主治医等の個人の見解に説明が及ぶような場合は、論議のあ

る箇所については、医学的に確定できないことを説明する。そし

て、これと同時に、「現在、病院として事実関係を調査、検討して

いるところです。」または、「今後、調査、検討しますので、後日、

結論が出た段階できちんと説明させていただきます。」と伝える

⑥ 十分に説明を尽くしても患者や家族等が納得されず、なお、

厳しく責任を追及される事態となった場合には、「これ以上の話

し合いは主治医でなく、病院がさせていただくことになります。」

と伝え、医事担当課長に以後の対応を依頼する

説明を終了したら、面談の内容をカルテに詳しく記載してお

く。

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(2)弁護士等から面会を求められた場合

- 55 -

患者・家族等が弁護士等を代理人に指定し、その代理人が主治

医や看護職員等に面会を求め、また、説明又はカルテ等の記録類

の閲覧もしくは写しの交付などを求めてくることがある。

① 患者・家族等の弁護士等から電話による問い合わせや面会の

求めがあった際には、「病院として応対させていただきます。窓

口は医事担当課長となります。」と説明する

② ①の弁護士等とのやりとりの日時、内容を記録し、直ちに医事

担当課長に伝える

※ 患者・家族等が弁護士等を代理人に指定し、接触し

てきたら・・・

弁護士等代理人が接触してきたときは、必ず上司と相

談するとともに、医事担当課長にも連絡する。

連絡を受けた医事担当課長は、直ちに病院経営本部

に連絡し、以後の対応について協議をする。

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(空白のページ)

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【資 料 編】

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資料1

病理解剖の承諾を求める場合

病院が遺族に承諾を求める解剖は病理解剖である。

① 患者が死亡されたことについて、警察への届けを要しないと思われ

る場合で医師が解剖の必要を認めたときは、その必要性について遺

族等に分かり易く説明したうえで、病理解剖の承諾を求める

② 遺族から解剖の承諾を得られなかった場合には、その理由をカル

テに記載しておく

【参考】

解剖には、①病理解剖 ②行政解剖 ③司法解剖の3種類がある。

① 病理解剖とは、剖検結果に基づいて、生前の病態や死因等を明ら

かにし、医学の進歩に役立てようとするものであり、遺族の承諾を必

要とする

② 行政解剖とは、死体解剖保存法第8条に基づき、死因が明らかで

ない死体について、その死因を明らかにするために行うものであり、

遺族の承諾を必要としない。実務においては、医師の診療を受けて

いない者が死亡した場合(自殺、行き倒れ等)、医師法第20条により

医師が死亡診断書を作成できないため、警察からの依頼により監察

医が死体の検案を行い、その検案によっても死因が判明しない場合

に監察医によって解剖(行政解剖)が行われる

③ 司法解剖とは、死体の死亡原因が犯罪(医療事故の場合は、業

務上過失致死罪)によるものかどうかを判断するため、捜査機関が

刑事訴訟法に基づき裁判所の許可を得て、大学の法医学教室に

嘱託して行うもので、遺族の承諾を必要としない

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司法解剖または行政解剖は、遺族あるいは病院等から警察への届

出等により行われる。

司法解剖は、警察が検視の結果、病院側の医療過誤に基づく業務

上過失致死罪が疑われる場合に行われることが多く、警察が、犯罪性

がないと判断した場合には、行政解剖となる。

○ 死体解剖保存法第8条第1項(監察医の検案及び解剖)

「政令で定める地を管轄する都道府県知事は、その地域内におけ

る伝染病、中毒又は災害により死亡した疑のある死体その他死因の

明らかでない死体について、その死因を明らかにするため監察医を

置き、これに検案をさせ、又は検案によっても死因の判明しない場

合には解剖させることができる。―以下略―」

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資料 2

「異状死」ガイドライン (平成6年5月日本法医学会)

出典:日本法医学会報告「異状死」ガイドライン

「日本法医学雑誌14巻5号」掲載

医師法第21条に「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があ

ると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定

されている。

これは、明治時代の医師法にほとんど同文の規定がなされて以来、第二次世界大

戦中の国民医療法を経て現在の医師法に至るまで、そのまま踏襲されている条文で

ある。立法の当初の趣旨はおそらく犯罪の発見と公安の維持を目的としたものであ

ったと考えられる。

しかし社会生活の多様化・複雑化にともない、人権擁護、公衆衛生、社会保障、

労災保険、生命保険等に関わる問題が重要とされなければならない現在、異状死の

解釈もかなり広義でなければならなくなっている。

基本的には、病気になり診療を受けつつ、診断されているその病気で死亡するこ

とが「ふつうの死」であり、これ以外は異状死と考えられる。しかし、明確な定義

がないため実際にはしばしば異状死の届け出について混乱が生じている。

そこで我が国の現状を踏まえ、届け出るべき「異状死」とは何か、具体的ガイド

ラインとして提示する。

条文からは、生前に診療中であれば該当しないように読み取ることもできるし、

その他解釈上の問題があると思われるが、前記趣旨にかんがみ実務的側面を重視し

て作成したものである。

【1】 外因による死亡(診察の有無、診療の期間を問わない)

(1)不慮の事故

A 交通事故

運転手、同乗者、歩行者を問わず、交通機関(自動車のみならず自転車、

鉄道、船舶などあらゆる種類のものを含む。)による事故に起因した死亡、

自過失、単独事故など、事故の態様を問わない。

B 転倒・転落

同一平面上での転倒、階段・ステップ・建物からの転落などに起因した

死亡

C 溺水

海洋、河川、湖沼、プール、浴槽、水たまりなど、溺水の場所は問わな

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D 火災、火焔などによる障害

火災による死亡(火傷・一酸化炭素中毒・気道熱傷あるいはこれらの競

合など、死亡が火災に起因したものすべて)、火焔・高熱物質との接触に

よる火傷・熱傷などによる死亡

E 窒息

頭部や胸部の圧迫、気道閉塞、気道内異物、酸素の欠乏などによる窒息

F 中毒

毒物、薬物などの服用、注射、接触などに起因した死亡

G 異常環境

異常な温度環境への曝露(熱射病、凍死)、日射病、潜函病など

H 感電・落雷

作業中の感電死、漏電による感電死、落雷による死亡など

I その他の災害

上記に分類されない不慮の事故によるすべての外因死

(2)自殺

死亡者自身の意志と行為に基づく死亡

縊頸、高所からの飛降、電車への飛込、刃器・鈍器による自傷、入水、服

毒など。

自殺の手段方法は問わない。

(3)他殺

加害者に殺意があったか否かにかかわらず、他人によって加えられた障害

に起因する死亡すべてを含む。

絞・扼頸、鼻口部の閉塞、刃器・鈍器による傷害、放火による焼死、毒殺

など

加害の手段方法を問わない。

(4)不慮の事故、自殺、他殺のいずれであるか死亡に至った原因が不詳の

外因死

手段方法を問わない。

【2】外因による傷害の続発症、あるいは後遺障害による死亡

例)頭部外傷や眠剤中毒などに続発した気管支肺炎

パラコート中毒に続発した間質性肺炎・肺線繊症

外傷、中毒、熱傷に続発した敗血症・急性腎不全・多臓器不全、破傷風

骨折に伴う脂肪塞栓症 など

【3】上記【1】または【2】の疑いがあるもの

外因と死亡との間に少しでも因果関係の疑いがあるもの

外因と死亡との因果関係が明らかでないもの

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【4】診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの

注射・麻酔・手術・検査・分娩などあらゆる診療行為中、または、診療)行為の

比較的直後における予期しない死亡

診療行為自体が関与している可能性のある死亡

診療行為中または比較的直後の急死で、死因が不明の場合

診療行為の過誤や過失を問わない。

【5】死因が明らかでない死亡

(1)死体として発見された場合

(2)一見健康に生活していた人の予期しない急死

(3)初診患者が、受診後ごく短時間で死因となる傷病が診断できないまま死亡した

場合

(4)医療機関への受診歴があっても、その疾病により死亡したとは判断できない場

合(最終診療後24時間以内の死亡であっても、診断されている疾病により死亡

したとは判断できない場合)

(5)その他、死因が不明の場合

病死か外因死か不明の場合

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資料3

異状死体の取扱い

出典:日本医事新報 3711号 平成7年6月10日発行(厚生省健康政策局医事課)

【問】医師法第20条では、自ら検案しないで検案書を交付することを禁じている。また、平成7年2月に厚生統計協会から出版された「死亡診断書・出生証明書・死産証書記入マニュアル」では、死亡に異状を認めない検案をしたときは、生前に無診察、無治療でも検案書として交付してもよいことになっている。

このことからみると、異状死体でなければ警察への届出は不要であるということなのか。通常、警察を経由して監察医が到着するまでという手順では、時間もかかり、死体安置に困ることが多いが。 (東京 K生)

【答】ご質問は医師法第21条の「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」に関するものである。

貴見のとおり、死体を検案して異状が認められなければ、警察に届け出る必要はない。ただし、この「異状」の基準を一律に規定することは困難であるが、日本法医学会の「異状死ガイドライン」等を参考にされたい。 なお、東京区部、大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市には死体解剖保存法に基づき監察医がおかれ、死因の明らかでない死体の検案等を行っている。制度の趣旨をご賢察のうえ、協力されたい。

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資料4

「医療法・医師法(歯科医師法)解」抜粋

出典:医療法・医師法(歯科医師法)解(厚生省健康政策局総務課編)

医師法第21条【解】

1 死体又は死産児については、殺人、傷害致死、死体損壊、堕胎等の犯罪の痕跡を止めている場合があるので、司法警察上の便宜のためにそれらの異状を発見した場合の届出義務を規定したものである。

従って、「異状」とは、病理学的の異状でなくて法医学的のそれを意味するものと解される。「所轄警察署」とは原則として死体又は死産児を検案した地の所轄警察署である。

2 本条の違反に対する罰金は、5千円以下の罰金である。(第33条)

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資料5

「医療事故防止方策の策定に関する作業部会(中間報告)」抜粋

出典:国立大学医学部附属病院長会議常置委員会

(平成12年5月)

【報告書21頁】

(2)警察への届出

医師法により、異状死体については、24時間以内に所轄警察署に届け出ることが義務づけられている。(注1)医療事故が原因で患者が死亡した可能性のある場合に、医師法の規定に従い届出を行わなければならないか否かについて、本作業部会が明確な解釈を提示することはできないが、同法の規定は、司法警察上の便宜を図ることを目的としたものであると言われることから、医療行為について刑事責任を問われる可能性のあるような場合(注2)は、速やかに届け出ることが望ましいと考える。 判断に迷うような場合であっても、できるだけ透明性の高い対応を行うという観点から、先ずは速やかに警察署に連絡することが望ましいと考える。 注1)医師法第21条

「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めるときは、24時間以内に、所轄警察署に届け出なければならない。」

注2)医療行為について刑事責任を問われる可能性のある場合は、一般に、①患者が死亡するなど結果が重大であって、②医療水準から見て著しい誤診や初歩的なミスが存在する場合であると言われている。 なお、患者が既に末期的な状況にあり、当該医療事故は、その死期を早めたに過ぎないと考えられるような場合でも、そのことで法的に免責されるわけではないとされる。

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資料6

「リスクマネジメントスタンダードマニュアル作成指針」抜粋

出典:厚生省リスクマネジメントスタンダードマニュアル作成委員会

(平成12年8月22日)

【報告書7頁】

5 警察への届出

(1)医療過誤によって死亡又は傷害が発生した場合又はその疑いがある場 合には、施設長は、速やかに所轄警察署に届出を行う。

(2)警察署への届出を行うに当たっては、原則として事前に患者、家族等に説明を行う。

(3)施設長は、届出の具体的内容を地方医務(支)局を経由して速やかに本省へ報告する。

(4)施設長は、警察への届出の判断が困難な場合には、地方医務(支)局を経由して本省の指示を受ける。

(注)医師法(昭和23年法律第201号)第21条の規定により、医師は死体又は妊

娠4ヶ月以上の死産児を検案して異状があると認めた場合、24時間以内に、所轄

警察署に届け出ることが義務づけられている。

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資料7出典:東京都監察医務院

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資料8

「臨床医師が死亡診断書を作成するときの留意事項」

東 京 都 監 察 医 務 院

1医師が死亡診断書を書かずに警察に届けなければならない事例 我が国では病死は医師の管轄下にあり、異状死は警察の管轄下にある。救急

車で搬送され、着院時心肺停止の患者が異状死であると医師が判断した場合、医師は24時間以内に警察に届け出なければならない。ここでいう異状死とは、外因死(自殺、他殺、交通事故、溺死、焼死、中毒、医療過誤など)の全てと、病死ではあるが死因が明確でないものである。 異状死の定義に法的な規定はないが、平成6年5月に日本法医学会が提言したものが参考とされることが多い。 事例1 A(76歳男性)は買物中に路上で転倒し、このことを家族等が見ていた。すぐに大学

病院に搬入されたが5時間後に死亡した。CT検査で死因は脳挫傷と診断された。大学病

院担当医は病死として死亡診断書を発行した。 死亡届の提出を受けた区役所から当院に外因死ではないのかという照会電話があったの

で、筆者が担当医から事情を聞いた。結局、本例は外因死であって担当医の発行した死亡

診断書は失効となり、警察の検視後当院の検案が行われた。

判断 本件は転倒の原因が疾病に基づくことが医学的に立証できないかぎり外因死となる。外

因の関与した死亡については、必ず警察に届けなければならない。

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事例2 B(39歳の女性)はトイレでたばこを吸っている間にネグリジェに引火して体表の約

70%の火傷を受けた。直ちに大学病院に入院して治療を受けたが、72日後に敗血症で

死亡した。担当医は外因死として警察に届けた。警察は死因がはっきりしているし、たば

こからの引火は本人の行為であり、事件性は全くないので当院の検案が必要かと照会して

きた。

判断 担当医の処置は正しい。警察はしばしば事件性の有無によって外因死であるか否かの判

断をしようとするがこれは誤りであり、当院の検案が必要である。 事例3 C(72歳の男性)は4ヶ月前に泥酔してけんかし、路上に倒れた。救急車で大学病院

に収容され、検査によって硬膜下出血が確認された。病状が安定していたので3ヶ月前に

関連病院の甲外科医院に転院になったが、その後、肺炎症状をきたして死亡した。 担当医は病死と判断して、(ア)心不全(イ)肺炎(ウ)硬膜下出血という死亡診断書を

作成した。

判断 死因の種類は原死因で決めなければならない。本例は路上で倒れたことが原死因になる

ので外因死となる。したがって、担当医の判断は誤りである。このような事例は、区役所

でチェックを受けるはずであるが、ときどきチェックを素通りすることがある。 事例2,3のように経過の長いものは原因となる病変が忘れがちになる。

2医師が死亡診断書を書かなければならない事例 入医院中の患者がある疾病で死亡したとき担当医が死亡診断書を作成する。これが臨床医の扱うもっとも一般的な事例であろう。 通院中の患者が自宅で死亡した場合はどうなるのか。医師法第20条によれば、最終診察後24時間以内に死亡した場合(実際に死体を見て24時間以内に死亡したと判断することは容易ではないが)には、死亡に立ち会わなくても例外的に死亡診断書を作成できるとしているが、実際には担当医が死体を見てから死亡診断書を作成することが望ましい。 最近、在宅医療が叫ばれており、病状が安定した患者や治療方針が確定した患者が自宅に戻り定期的な往診を受けることが多くなった。このような患者が自宅で死亡した場合はどうなるか。週に1~2回の往診によって在宅医療を受けている患者は入院と同様に医師の管理下にあるとされている。したがって、

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このような患者が自宅で死亡した場合、担当医は、往診と同様に患家に赴いて患者を見て、診療中の疾病で死亡した場合(診療中でない疾病で死亡したと考えられる場合も同じ)、担当医は死亡診断書を作成しなければならない。 事例4 D(96歳の男性)は数年来、心不全の病名で乙医師より週1回の往診治療を受けて

いた。1ヶ月前から寝たきりになり、痴呆が進行してきた。今朝Dが布団の中で死亡し

ているのを家族等が発見した。119番に電話したが、救急隊はすでに硬直があるとい

うことでそのまま帰った。家族等はZ医師に電話したところ、Z医師は死者自宅に赴き、

死体を見て異状所見は認められず、心不全で死亡したと判断したが、死亡の現場を見て

いないので警察に届けた。警察からどうしたらよいかと当院に電話照会があった。

判断 乙医師が検案して異状所見が認められなければ、心不全による病死としてよい。最終診

察後1週間経過していても、医師の管理下にあったと判断できるので、乙医師が死亡診断

書を作成して問題ない。 しかしながら、「心不全」のみでは、原死因不明であるので、必ず心不全に陥った原因を

書くようにしていただきたい。 事例5 E(78歳の男性)は数年前から大学病院で肝硬変、肝癌、食道静脈瘤などで通院治

療を受けていた。ある日、Eは自宅で急変し、救急車で大規模病院に搬送されたが、1

0時間後に死亡した。担当医は遺族から持病の肝疾患のことを聞いているので、それを

死因とする死亡診断書を作成し、遺族の承諾を得て病理解剖に付すことにした。 ところが、病理担当医から入院24時間以内に死亡したのであるから、異状死扱いで

はないかという意見があったので、当院に電話照会があった。

判断 病歴が明確でその疾患で死亡したことが明らかな場合は、入院患者が病死したことと同

じ扱いでよい。したがって、本例は担当医が死亡診断書を作成し、遺族の同意があれば病

理解剖して問題ない。警察に届ける必要もない。病理担当医のいう「入院後24時間以内

に死亡すると異状死扱い」という判断は、医師法第21条にある「異状所見を認めた場合

は24時間以内に警察に届ける」規定と混同した誤解である。

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事例6 F(82歳の女性)は心筋梗塞の小発作で1~2週間の入院を数回繰り返していた。近

くの丙医院に2週間に1度通院し、ニトロ剤などの投薬を受けていた。最終診察4日後の

朝、布団内で死亡しているのを家族等が発見した。家族等から通報を受けた警察は、定期

的に診察していた丙医師に病状の経過を尋ねたところ、心筋梗塞で死亡したと判断して無

理がないことが明らかになり、丙医師が死亡診断書を作成した。この処置が妥当か否か警

察から当院に電話照会があった。

判断 事例4と同様に丙医師の処置は正しい。 事例7 G(76歳の男性)は1年前に大学病院でホジキン病と診断され、病巣は全身に広がっ

ていた。担当医は家族等に「あと何日ももたない」と言っていた。大学病院は満床なので

死亡数日前に自宅近くの病院を紹介した。しかし、この病院で入院の必要なしといわれ、

訪問看護で自宅で点滴治療が行われた。数日後の朝、布団内で死亡しているのが家人によ

って発見された。遺族は死亡診断書交付を大学病院と紹介を受けた病院に求めたが、いず

れも担当医不在ということで死亡診断書交付を断られた。

判断 医師の異動が激しい大学病院では本例のようなことがまれでない。担当医の不在という

ことでは、死亡診断書発行を断ることの理由にはならない。この場合は、大学病院の診療

科長あるいは紹介を受けた病院長が対応すべきであろう。 なお、大学病院から派遣された医師が夜勤中に患者が死亡した場合、その夜勤医師によ

って死亡診断書が発行され、死亡診断書原本は院長が管理する。後日死亡診断書の再発行

が生じた場合、原本をコピーして院長名義で「原本と相違ないことを証する」とした死亡

診断書を発行すればよい。

3電話照会では判断が容易ではない事例 前項1,2に医師が警察に届けるべき事例と届ける必要のない事例を示したが、全ての事例がこのように明確に二別できないことがある。このような電話照会では、警察や医師に再調査をお願いすることが多い。再調査でも判断がつかない場合は、当院の検案事例としている。

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事例8 病院に入院加療中のH(74歳の女性)は消化器出血で死亡した。担当医は病理解剖

を勧めたが、遺族は第三者の施設で解剖してほしいと担当医に申し出たので、担当医は

当院に行政解剖を引き受けてくれるように要請してきた。

判断 確実に診断された病死で死亡診断書が書ける場合、遺族の私的な事情によって行政解剖

となることはない。一方、救急で病院に搬入されたCPA患者が、病死したことは明らか

であるが病名が確定できないため、病理解剖したいがどうだろうかという照会がしばしば

ある。23区では病名が確定できない事例は警察に届けることになっているので、病名確

定のための病理解剖はあり得ない。 事例9 I(78歳の男性)は数年前から肝硬変で病院に入退院を繰り返していた。同病院の喫

煙室で点滴を受けながらたばこを吸っているときに転倒したというが目撃者はいない。救

急車で大学病院に収容され、CT検査で急性硬膜下出血が確認された。担当医は外因死の

疑いもあるということで警察に通報した。

判断 大学病院担当医の処置は正しい。肝硬変でときどき転倒するという前歴があれば、喫煙

室での転倒も肝硬変によると判断できなくもない。しかし、目撃者がいないので後刻、病

院の管理責任が問題となる可能性があり、外因死扱いが妥当である。 事例10 J(61歳の女性)は3年前から自律神経失調症で歩行不能となり食欲も低下して体重

は35㎏になり、治療を受けている。4日前に家族等と朝食をとっているときに(自力で

は摂食不可で妹が食べさせている)、ご飯とほうれん草がのどに詰まり、救急車で大学病院

に収容されて呼吸が再開したが当日死亡した。 臨床診断は、食物誤嚥による低酸素性脳症、担当医から警察への届出があり、当院の検

案が必要か否かが警察から照会があった。

判断 この事例は家族等が見ている前での食物誤嚥であり、事件性は全くないので心情的には

警察が介入すべきでないかもしれない。そして、自律神経失調症によってときどき嚥下障

害があったということがあれば、自律神経失調症と食物誤嚥との因果関係があり、死因の

種類は病死となる。本例では、自律神経失調症と食物誤嚥との間に因果関係があるといえ

ないので外因死となり、当院の検案対象とした。