「弘前大学coiヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … ·...

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第84号 発行日:平成30年3月20日 発行者:医学研究科広報委員会 印 刷:やまと印刷株式会社 題字 前弘前大学長 遠藤正彦氏筆 1面:COIヘルシーエイジング・イノベーションサ ミット2018を開催して 2面:〈共同研究講座開設 にあたって〉ウォーターヘルスサイエンス講座、野 菜生命科学講座、女性の健康推進医学講座 3面ゴールド卍賞を受賞して/医学研究科長・医学部長 寄稿 4面:副学長(COI担当)に就任して/各賞受 賞して 5面:弘前医学会例会開催報告/弘前医学 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの 腎移植が100件に到達 7面:医学研究科学外公開 講座の開催報告/世界糖尿病デー in弘前/知事と5 年生との懇談会 8~11面:〈特集〉各賞受賞 12 :弘前大学医学部がサポートしている名城大女子 駅伝部優勝/若手教員・医師だより 13面:〈部活 動紹介〉ラグビー部/青森あずまし温泉紀行 14 :自転車競技部、写真部/〈書籍発刊〉パーフェ クト疲労骨折 15面:〈研究室紹介〉臨床・脳神経 内科学講座、臨床・薬剤学講座 16面:テレビに 出演して/人事異動 姿寿西西調西西調寿寿真先理事 若林先生 佐藤学長 浜内先生 西本係長 寺田社長 佐々木副知事 齊藤会長 中路先生 西川課長 葛西市長 杉本代表幹事 会場の様子

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Page 1: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

第84号発行日:平成30年3月20日

発行者:医学研究科広報委員会

印 刷:やまと印刷株式会社題字 前弘前大学長 遠藤正彦氏筆

1面:COIヘルシーエイジング・イノベーションサミット2018を開催して 2面:〈共同研究講座開設にあたって〉ウォーターヘルスサイエンス講座、野菜生命科学講座、女性の健康推進医学講座 3面:ゴールド卍賞を受賞して/医学研究科長・医学部長寄稿 4面:副学長(COI担当)に就任して/各賞受賞して 5面:弘前医学会例会開催報告/弘前医学優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの腎移植が100件に到達 7面:医学研究科学外公開講座の開催報告/世界糖尿病デー in弘前/知事と5年生との懇談会 8~11面:〈特集〉各賞受賞 12面:弘前大学医学部がサポートしている名城大女子駅伝部優勝/若手教員・医師だより 13面:〈部活動紹介〉ラグビー部/青森あずまし温泉紀行 14面:自転車競技部、写真部/〈書籍発刊〉パーフェクト疲労骨折 15面:〈研究室紹介〉臨床・脳神経内科学講座、臨床・薬剤学講座 16面:テレビに出演して/人事異動

 

平成三十年二月九日、弘

前大学、青森県、弘前市は、

科学技術振興機構JST共

催のもと、シンポジウム「弘

前大学COIヘルシーエイ

ジング・イノベーションサ

ミット2018」を開催し、

全国から約五百名参加しま

した。

 

まずは当シンポジウム開

催にあたってご協力くださ

り、当日ご参加くださった

医学部をはじめとした諸先

生方や学内関係者、COI

関係者の皆様にお礼を申し

上げます。

 

当シンポジウムでは、真

の「健康の姿(未来)」の

あり方について、弘前大学

COI参画機関をはじめと

した産学官金トップが一堂

に会して発表・討論しまし

た。

 

弘前大学は平成二十五

年、文部科学省・JSTの

産学官民連携研究支援事業

「COI(センターオブ・

イノベーション)」に採択

され、青森県の短命県返上

と健康長寿社会の実現を目

標とした社会システムデザ

イン研究と事業化を実施し

ています。

 

開会にあたり、弘前大学

の佐藤学長、青森県の佐々

木副知事、弘前市の葛西市

長、JSTの真先理事、文

部科学省の西本係長よりご

挨拶を頂戴しました。

 

注目の基調講演では、弘

前大学の中路特任教授が

「健康未来イノベーション

戦略」と題してご講演し、

啓発型健診の普及版や海外

展開、個人向け腸内細菌叢

解析サービスをはじめとし

た当拠点発が有する知財の

可能性等についてもご紹介

いたしました。

 

特別講演では、文部科学

省 

西本係長が「文部科学

省の目指す産学イノベー

ション戦略」、経済産業省

の 

西川課長が「経済産業

省の目指す健康イノベー

ション戦略」と題し、ご講

演されました。さらにカゴ

メ株式会社 

寺田社長が

「〝野菜生活〟を科学する」

と題して、弘前大にこの一

月に開設した共同研究講座

「野菜生命科学講座」や岩

木健診の意義などについ

て、ご講演されました。

 

続いて料理研究家 

浜内

先生が「次の世代に繋げる

ための、健康アクション」

と題して、楽天や青森県食

生活改善推進連絡協議会と

協働する健康な食事啓発プ

ログラムなどをご紹介くだ

さいました。

 

地域を代表して、青森県

医師会の齊藤会長が「短命

県返上に向けた青森県医師

会の取り組み」と題し、同

会に付属する健やか力推進

センターが県内で実施する

健康リーダー人材育成事業

についてご講演されまし

た。さらに青森経済同友会

杉本代表幹事が「青森県に

おける健康経営について」

と題し、青森県健康経営認

定制度についてご紹介くだ

さいました。

 

続いて、京都大学 

奥野

教授、東京大学医科学研究

所 

井元教授、名古屋大学

医学部附属病院 

中杤病院

講師は、弘前大学が大規模

健康調査「岩木健康増進プ

ロジェクト」で十三年間に

「弘前大学COIヘルシーエイジング・

イノベーションサミット2018」を開催して

弘前大学 

教授・COI研究推進機構 

機構長補佐(戦略統括) 

村 

下 

公 

わたって蓄積する

二千項目の健康

データを解析した

最新の研究成果を

ご発表されまし

た。九州大学、京

都府立医科大学、

名桜大学(沖縄)、

和歌山県立医科大

学は、岩木データ

と各大学のデータ

を連携させて得た

成果をご紹介くだ

さいました。

 

社会実装リレー

では、代表的な事

例として、花王、

ライオン、ベネッ

セ、イオン、楽天、

ローソン、クラシ

エ、エーザイ、テ

クノスルガ・ラボ、

マルマンコンピュ

ータサービス、東

北化学薬品、日本

コープ共済生活協

同組合連合会が、

それぞれの研究や

取組みをご発表さ

れました。

 

パネルディス

カッションには青

森県、サントリー、

青森県食生活改善

推進連絡協議会ら

が加わった、産学

官民十八名のパネ

ラーが参加して、

日経BP社

特命

編集委員・宮田氏、COI

総括ビジョナリーリーダー

代理・名古屋大学総長補

佐・同大医学部附属病院

教授・水野正明氏を迎えて

「寿命革命」をテーマに討

論を行いました。

 

閉会にあたって、弘前大

学の若林副学長(医学研究

科長)からご挨拶を頂戴

し、当シンポジウムは大き

な拍手に包まれて終了しま

した。

 

昨年末に厚労省から発表

された平均寿命ランキング

で、青森県はまたもや最下

位となりましたが、一位と

の差は縮まり、改善率も三

位になりました。全県挙げ

た短命県返上活動の盛り上

がりが少しずつ結果に表れ

ているものと嬉しく思って

います。当拠点による社会

実装が、その推進力となれ

ば幸いです。今後ともよろ

しくお願い申し上げます。

真先理事

若林先生

佐藤学長

浜内先生

西本係長

寺田社長

佐々木副知事

齊藤会長

中路先生

西川課長

葛西市長

杉本代表幹事

会場の様子

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医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

問題は山積しており、水の

研究が栄養学の一分野にと

どまらず臨床医学にも大き

な貢献をなしうることが期

待されます。

 

来年度の岩木健康増進プ

ロジェクトでは新項目をい

くつか加えて本格的研究の

第一歩にしたいと考えてい

ます。

 

講座の体制は以下のよう

になっています。サント

リー食品インターナショナ

ル社の発展を願いつつ、水

の研究の大いなる発展を期

待します。皆様どうかよろ

しくお願いいたします。

 

平成二十九年十二月一日

付で開講されました本講座

は、特任教授(併任)とし

て中路重之先生、教授(併

 

昨年の十一月一日医学研

究科長室でサントリー食品

インターナショナル社によ

る共同研究講座「ウォー

ターヘルスサイエンス講

座」の開講式が

行われました。

出席者は、同社

側から、西本正

三常務執行役

員、竹本晋商品

開発部部長、吉

田孝子開発主

幹、浅野悠開発

主任、弘前大学

から佐藤敬学

長、若林孝一医

学研究科長、な

どでした。

 

そもそも、こ

の共同研究講座

はサントリー側

から「水の研究

をしたい」とい

うお申し出を受

け、岩木健康増

進プロジェクト

を活用した共同

研究を視野に入

れて開講にたど

り着いたわけで

す。サントリー

と言えばウイス

キーで有名な

会社で、W

hisky

の語源はaqua

vitae

(アクア・

ヴィテ、「命の

水」の意)です

から、学生時代

にサントリー

〝だるま〟を口

にできなかった

私は、〝アルコー

ルを含有した水〟かと驚い

たのですが、あにはからん

や、まさにど真ん中の〝水〟

の研究でした。

 

水の研究は私自身も非常

に興味がありました。そも

そも、口から入れる食事の

中に、五つの栄養素があ

り、その後、先世紀半ばに

食物繊維(非栄養素)とい

う概念が登場したわけです

が、今回それに水が加わっ

たわけです。水が健康に及

ぼす影響を科学的に検討し

た報告は少なく、その意味

では、同社の発想はまさに

慧眼であり、これまでの栄

養学とは全く違った観点の

〝栄養学〟が生まれるので

はないかと期待されます。

 

共同研究講座の話は約一

年前から持ち上がってお

り、その意味もあって、開

講の前の平成二十九年度の

岩木健康増進プロジェクト

で前倒しで水の研究を始め

ようということになりまし

た。これまでも、インピー

ダンスを用いた体の水分量

の測定や、皮膚科学講座に

よる皮膚の水分量の測定が

なされてきましたが本格的

研究には程遠いものがあり

ました。そこで、より体水

分を測定できる機器を導入

し、また食事調査に水分の

摂取量の詳しい聞き取りを

加え、バゾプレッシンの測

定も行いました。

 

医学の分野としては、下

痢・脱水という古典的な病

態に始まり、輸液の分野で

も体水分の詳細な研究がさ

れてきました。また最近で

は多発する熱中症が大きな

社会問題となり、高齢者の

心不全や頻尿患者の水分摂

取は日常的な大問題です。

このようにまだ解決すべき

「ウォーターヘルスサイエンス講座」

開設にあたって

サントリー共同研究講座

社会医学講座 

特任教授 

中 

路 

重 

ウォーターヘルスサイエンス講座教員

特任教授(併) 中路 重之

講  師(併) 倉内 静香

特 任 助 教 浅野  悠

「女性の健康推進医学講座」

開設にあたって

大塚製薬共同研究講座

産科婦人科学講座 

教授 

横 

山 

良 

「野菜生命科学講座」

開設にあたって

分子生体防御学講座 

教授 

伊 

東   

カゴメ共同研究講座

 

平成三十年元日、カゴメ

株式会社との共同研究講

座「野菜生命科学講座」を

設置いたしました。思え

ば、平成二十四年度、社会

医学講座の中路重之先生の

長年の研究が評価され、

中路先生をリサーチリー

ダーとする申請が文部科

学省のCO

I-STREA

M

に採

択されました。今や壮大な

プロジェクトに発展しその

内容を一言で表現するのは

容易ではありませんが、将

来の疾患リスクの高い人を

未病の段階で予測し予防す

るのがそのプロジェクトの

大きな柱の一つです。私は

Keap1-N

rf2

解毒・酸化スト

レス応答経路の加齢性疾患

に果たす役割を研究してお

りましたので、COIの一

員として酸化ストレス防御

を基盤にしたアンチエイジ

ング研究とその社会実装に

取り組んでいます。面白い

ことに、N

rf2

経路を強く活

性化する物質は野菜、特に

アブラナ科の植物に多く含

まれています。高等動物は

植物に含まれる毒(親電子

性物質)に対するグルタチ

オン抱合を中心とする解毒

化機構を進化し現在に到り

ますが、N

rf2

はこれら解毒

化酵素の発現誘導に中心的

な役割を担っています。こ

の進化のおかげで、元来

毒であった親電子性物質

はもはや毒ではなくN

rf2

活性化物質に変容し、今日

Nrf2

活性化物質はがんの予

防に有効であると考えられ

ています。その代表がブ

ロッコリースプラウトに含

まれるスルフォラファンで

す。カゴメ株式会社と言え

ば皆さん、トマトジュース

や野菜ジュースでお馴染み

のことと思います。しかし

ながら、「健康直送便」な

どで健康によい食品加工物

をインターネット販売した

り(その一つがスルフォラ

ファンです)、一重項酸素

の消去活生測定法を開発し

たりと、先端的な健康科学

の社会実装と研究を行って

いることでも定評がありま

す。ですから、弘前COI

における「食による疾患予

防」ということを考えた時

に強くカゴメさんに弘前C

OIに参加していただきた

いと思いました。那須塩原

にあるカゴメ株式会社研究

開発本部(当時)にCOI

参画をお願いしに行ったの

は平成二十四年の七夕の日

でした。その時話を聞いて

いただいた自然健康研究部

の菅沼部長に、岩木の健康

増進プロジェクトによる健

康増進活動に深くご共感い

ただき、平成二十六年度か

ら弘前大学COIにご参画

いただきました。今回、こ

の取り組みを加速させるべ

く共同研究講座開設に至っ

たわけです。世界に発信す

るレベルの高い研究成果を

以て野菜の健康増進効果を

証明し、地域ひいては日本

の健康増進に役立っていき

たい所存です。また、こう

した活動がひいては青森県

の食による地域創生にも繋

がればと願っております。

 

この共同研究講

座は、社会医学講

座の中路先生(特

任教授)と倉内先

生(講師)、分子

生体の山㟢先生

(助教)と私(教

授)、そしてカゴ

メ(株)の清水直

さん(特任助手)

から構成されま

す。岩木プロジェ

クト健診のデータ

を活用し、野菜摂

取が上記慢性疾患

の予防や改善に寄

与するエビデンス

を得たいと思って

います。さらに、

日本人において不

足している野菜摂

取量を向上させる

ことを目的に、

弘前大学COIに

て推進している啓

発型健診や岩木プ

ロジェクト健診を

通じて、非侵襲で

簡便・短時間に野

菜の摂取量を見積

もる仕組みとそれ

を活用した食事指

導の有効性を検証

する予定です。ブ

ロッコリースプラウト抽出

物を用いた臨床研究も現在

計画中です。これらの活動

を通して、日本人の健康増

進に「野菜の力」で貢献し

ていきたいと思っておりま

す。皆様の温かいご指導・

ご鞭撻をいただきますよ

う、どうぞよろしくお願い

申し上げます。

任)の横山、助手(専任)

の當麻絢子先生、大塚製薬

側からは特任教授(併任)

内山成人氏、研究員として

上野友美氏、野田恒行氏、

上田敦史氏の体制となって

います。

(次ページへ続く)

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医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日

Age total 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80≥N 1097 63 171 169 206 310 147 30

EQL producers(%)

501(46%)

28(49%)

53(35%)

69(45%)

97(51%)

157(55%)

77(57%)

20(70%)

一般住民のエクオール産生者・非産生者の割合

─ 岩木健康増進プロジェクトから ─

Age total 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80≥N 1097 63 171 169 206 310 147 30EQL

producers(%)

501(46%)

28(49%)

53(35%)

69(45%)

97(51%)

157(55%)

77(57%)

20(70%)

一般住民のエクオール産生者・非産生者の割合ー岩木健康増進プロジェクトからー

Age total 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80≥N 1097 63 171 169 206 310 147 30EQL

producers(%)

501(46%)

28(49%)

53(35%)

69(45%)

97(51%)

157(55%)

77(57%)

20(70%)

一般住民のエクオール産生者・非産生者の割合ー岩木健康増進プロジェクトからー

 

弘前大学COIが世界に

誇る大規模且精巧な「岩木

健康増進プロジェクト」の

ビッグデータをもとに、ヒ

トの健康寿命・QOLの向

上に貢献するための研究、

特に女性の健康寿命・QO

Lの向上に貢献するため、

エクオールに着眼した研究

を推進し、研究成果を社会

に還元することを目的とし

て立ち上げた共同研究講座

です。さらに生活習慣病・

認知症・睡眠・ストレス・

運動機能等について健康を

損なう要因を探索し、その

解決策を創出して具体的な

製品化の基礎情報を得て、

最終的には青森県民の健康

増進に貢献するとともに、

世界に先駆けた最新の情報

と解決策を国内外へ発信す

ることを目指しています。

具体的には若年から高齢者

までの健康寿命・QOL向

上とエクオールの関係を明

らかにし、さらにその他の

栄養成分について探索を行

い、解決策に関する研究を

推進することになります。

 

研究課題としましては、

①一般住民女性における婦

人科疾患とエクオールの関

係の検討、②一般住民にお

ける生活習慣病の要因につ

いて栄養成分の探索、③一

般住民における認知症の要

因について栄養成分の探

索、④一般住民における睡

眠障害の要因について栄養

成分の探索、⑤一般住民に

おけるストレス要因につい

て栄養成分の探索、⑥一般

住民における運動機能障害

要因について栄養成分の探

索、⑦②~⑥の解決策を創

出して具体的な製品化の基

礎情報を収集。これらを三

年間の研究期間で解決し

て、エクオールの製品化を

目指すところです。

 

現在私たち産科婦人科学

講座は、一般住民女性を対

象とした地域保健活動の実

践、およびその効果を検証

する研究を行っています。

本共同研究講座は、これら

と密接に連携し、当該教育

研究の更なる充実を図るこ

とを目的とするものであ

り、特に、本共同研究講座

は、これまで十数年にわた

り実施してきた「岩木健康

増進プロジェクト」におけ

る膨大且つ多項目と高精度

のデータを分析・解析する

ことで婦人科疾患、生活習

慣病、認知症、睡眠障害、

ストレス、運動機能等の観

点からその要因を探索し、

食事成分(栄養成分)との

関係を明確化して、解決策

を考案し、メーカーの強み

を活かして具体的な製品化

の基礎情報を収集すること

が期待できます。将来的に

は、地域住民の健康増進に

寄与する製品を提供できる

ことを目指しております。

 

昨年の暮、弘前市の方か

ら「ゴールド卍賞」を授与

したいとのお申し出を受

け、正直お受けしていいも

のか戸惑いました。関係者

とともに私がやってきた弘

「ゴールド卍賞」を受賞して

前市の健康

づくり活動

が対象だっ

たからで

す。結論を

言えばまだ

何もなしえ

ておりませ

ん。また、

私の活動は

個人ででき

るものでは

なく多くの

皆さんのご

協力、ご援

助をいただ

かなければ

何一つでき

ない性質の

ものだから

です。

 

でも結局受けさせていた

だきました。月並みな言い

方ですが、お断りする大き

な理由もなく、まだもう少

し頑張れということかなと

いう自分なりに勝手な解釈

をしたからです。

 

新年一月三日の午後五時

に授賞式が執り行われまし

た。市長からご祝辞をいた

だき、表彰状と盾を直接贈

呈していただきました。そ

の後弘前市の市民新年互例

会が同会場で行われ多くの

皆さんの前で総勢七名の受

賞者(一名の団体代表

者も含む)が紹介され

拍手でお祝いをいただ

きました。

 

弘前大学は弘前市に

存在します。それゆ

え、健康づくりもまず

は弘前からという気持

ちでここまで来まし

た。中心活動である〝岩

木健康増進プロジェク

ト〟は十三年目になり

ます。派生する形で

〝いきいき健診〟(認知

症健診)も始まりまし

た。六年前には弘前市

から「地域健康増進学

二年間をなんとか務めるこ

とができました。今後とも

皆様のご指導、ご鞭撻を宜

しくお願い申し上げます。

さて今回は医学研究科が取

り組むべき課題について私

の思いを述べてみたいと思

います。

 

学部教育に関しては、

医学教育センターを実質化

し、六つの部門(学務、

カリキュラム検討、臨床能

力開発、IR、学生生活支

援、国際交流)を設置しま

した。多くの課題がありま

すが、平成三〇年度からは

臨床実習を四年次から開始

することになるため、臨床

実習の中身についての検討

を開始します。二〇二〇年

度には医学教育分野別評価

を受審することが決定して

おり、臨床実習後の評価

(Post-CC OSCE

)も正式に

導入されます。その準備を

医学科全体で進めてゆかな

ければなりません。

 

大学院に関しては、まず

は大学院生の確保です。平

成一九年四月に大学院医学

研究科が部局化されました

が、この部局化は大学院の

教育研究活動の比重が高ま

ったことに対する措置でも

ありました。大学院のアク

ティビィティーは多角的に

評価されるべきですが、

その重要な指標の一つに充

足率があります。研究者と

して研鑽を積むことは医師

のキャリアアップにもつな

がり、弘前大学医学研究科

は医学部に限らず、他の学

問領域の学生、研究者、

会人にも門戸を開いていま

す。さらに、「研究医育成

 

平成三〇年二月一日から

医学研究科長、医学部長と

して二期目を迎えることに

なりました。また、医学系

長も引き続き務めることに

なりました。多くの方々の

ご支援を得て、これまでの

二期目のご挨拶

医 学 研 究 科 長医 学 部 長 寄 稿

医学研究科長 

若 

林 

孝 

事業」を開始しました。初

期研修を附属病院のプログ

ラムで行い、研修終了後た

だちに大学院に進学する者

が対象です。対象者には入

学金と授業料(一年目は前

後期、二年目は前期)を支

給します。このような制度

をぜひ活用していただけれ

ばと思います。

 

研究面では各講座の研究

を着実に進めていただくこ

とはもちろんですが、若手

研究者の育成(特に基礎医

学)と国際共同研究の推進

を掲げたいと思います。現

在、基礎医学講座では病理

系の講座を除くと准教授以

下のポストに医師が一人も

いません。もちろん種々の

専門性を有する教員によっ

て医学に関する教育、研究

が進められてゆくことに問

題はないのですが、将来、

基礎医学を志向する医師を

育てることは急務であると

思います。さらに、若手の

海外留学や帰国後の研究支

援も国際共同研究を今以上

に活発にするために必要な

ことです。

 

地域定着枠の現状につい

ては前号で述べましたが、

医師の確保は地域医療だけ

でなく、大学院を含めた研

究や教育に直結する重要事

項です。附属病院や関連医

療機関と連携しながら取り

組んでゆきたいと考えてい

ます。

(前ページより)

講座」という寄附講座をい

ただきそこを起点として

〝ひろさき健幸増進リー

ダー育成事業〟が始まりま

した。現在約百八十名の卒

業生が誕生し、活発な健康

づくりが日々全市で繰り広

げられています。このよう

な活動を弘前大学COIが

全面的に支援し、弘前市の

健康づくり事業の中心と

なっています。

 

このように振り返ってみ

れば、私が弘前市から褒め

られる(表彰される)とい

うよりは、私の方から、こ

れまでの経緯に感謝を申し

上げなくてはいけません。

 

弘前市を日本一の健康の

市にというのが葛西市長の

公約です。私たちも全く同

じ目標を持っています。そ

れは青森県に対しても同じ

です。「目的の達成までも

う少し頑張りたい」という

私自身の願いを今回の受賞

が後押ししてくれたと思っ

ています。

 

関係者の皆様に重ねて御

礼を申し上げます。

社会医学講座 

特任教授 

中 

路 

重 

弘前市顕彰

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医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

い範囲にターゲットはある

と思われ、今後も研究をす

すめて参りたいと存じま

す。

 

このたび平成三〇年二月

一日付けで副学長(COI

担当)を拝命いたしまし

た。弘前大学は平成二五

年にCOI(センター・

オブ・イノベーション)全

国一二拠点の一つに採択さ

れました(拠点名:真の社

会イノベーションを実現す

る革新的「健やか力」創造

拠点)。中路重之特任教授

が拠点長ですが、その基盤

となっているのが、社会医

学講座が中心となって平成

一七年から進めている「岩

木健康増進プロジェクト健

診」です。現在、岩木健診

には医学研究科の多数の講

座に加え、他学部の教員や

学生、さらには自治体や住

民、企業、研究機関などが

参加し、産学官民が連携し

た一大プラットフォームを

形成しています。その最大

の目玉は二千を超える検査

項目から得られる健康ビッ

グデータです。弘前大学C

OIでは、岩木健診で十数

年にわたり蓄積している健

康ビッグデータを活用した

生活習慣病や認知症などの

予兆発見、予防法の開発、

ビジネス化に取り組んでい

ます。さらに、青森県医師

会の中に「健やか力推進セ

ンター」が作られ、地域・

職域の健康づくりリーダー

の育成、小中学校の健康授

業、親子体操の普及など、

子どもから高齢者までを巻

き込んだ健康啓発を全県で

展開しています。また、全

学組織として「健康未来イ

ノベーションセンター」が

設置され、同センター名を

冠した拠点施設が医学研究

科のキャンパス内に建設中

です。これは文部科学省の

「地域科学技術実証拠点整

備事業」で全国二二拠点の

一つに採択されことによる

ものであり、弘前大学CO

Iの大きな成果でもありま

す。平成二八年の中間評価

では、弘前大学COIは医

療・健康分野で唯一の最高

評価Sを獲得し、全国的に

も大きな注目を集めていま

す。現在、弘前大学COI

には四〇を越える有力企業

が参画しており、ここ数年

でCOI関連の寄附講座、

共同研究講座が七講座で

き、今後もいくつかの共同

研究講座の設置が予定され

ています。

 

COIそのものは全学組

織ですが、岩木健診を継続

し、企業との共同研究を発

展させてゆくためには今後

とも医学研究科の強力な

バックアップが必要です。

皆様のご指導、ご鞭撻をど

うぞ宜しくお願い申し上げ

ます。

 

第五十九回日本小児血液

学会(二〇一七年十一月九

日~十一日、愛媛県県民文

化会館)において、優秀演

題を受賞したので報告させ

ていただきます。受賞した

演題名は「小児ランゲルハ

ンス細胞組織球症(LC

優秀演題賞を受賞して

ter Inventory

(TCI)に

おける傾向とパロキセチン

血中濃度-

治療効果の関係

について」でございます。

本研究結果によると、特定

の性格傾向(パターン)の

患者群では、抗うつ薬のパ

ロキセチンの血中濃度とう

つ病症状の改善率に負の相

関が示される、となってお

ります。結果を一言で言う

と、性格によってちょうど

よい薬の量が変わるかも?

ということです。これによ

り、うつ病治療の個別化と

いう目標にまた一歩近づけ

たものと思われます。精神

医学および精神科治療はま

だまだ未発達なところがあ

ると言われており、うつ病

治療への反応性の多様性

(人によって、薬が効かな

い、効く薬が異なる、副作

用が出やすい等)もその問

題の一つです。個別化によ

り、患者様ごとに有効な治

療方針を適切に立てられる

ようになるということは非

常に有益なことと思われま

す。

 

以前も別の件で医学部

ウォーカーにてお知らせさ

せていただきましたが、こ

れまでも当科では患者様の

利益となるように、より良

い治療効果をもたらし、副

作用を防ぐよう、個別化に

向けた研究を行ってまいり

ました。個別化を決定する

要因としては、性格検査は

もちろん、生物学的アプ

ローチから患者背景など

様々なものがございます。

試験管の中から診察室ひい

ては患者様の人生まで、広

 

去る平成二十九年十一月

二日から三日に松江市で行

われました、第二十七回日

本臨床精神神経薬理学会に

おいて、優秀プレゼンテー

ション賞を受賞しましたの

で、ご報告させていただき

ます。

 

この学会は精神科におけ

る薬物療法についての学会

であり、当講座からも例年

多数の先生方が参加されて

おります。先進的かつ斬新

な切り口の臨床研究の成果

が多数報告され、また多く

の「明日からの診療に役立

つ」シンポジウムも多く企

画され、非常にためになる

熱い学会でございます。薬

理学会というとどこかとっ

つきにくいので参加しづら

いという声も聞きますが、

専門以外の方や精神科歴の

浅い先生にもぴったりのプ

ログラムもあり、学生さん

を含め、精神科治療に興味

のある方皆様にお勧めで

す。

 

さて、今回賞をいただい

た演題は「うつ病患者の

Tem

perament and Charac-

H)における遺伝子変異解

析」です。

 

LCHは古くはヒスチオ

サイトーシスXと呼ばれ、

長年、炎症と腫瘍のどちら

なのか、議論されてきた謎

めいた希少疾患でありまし

たが、近年のゲノム解析技

術の進歩により単球系前駆

細胞由来の血液腫瘍である

ことが判明してきました。

さらに、変異のタイプに応

じたキナーゼ阻害剤による

治療が有効であることも明

らかになってきました。し

かしながら、生検組織は微

小であること、さらには、

周囲に炎症細胞が多く中心

部の腫瘍細胞のみ遺伝子変

異を有することから、遺伝

子変異解析は比較的困難で

す。今回の我々は、診断時

の病理組織標本由来ゲノム

を検体として、変異好発部

位をPCR法で増幅してか

ら次世代シーケンサーで高

感度遺伝子解析(ディープ

シーケンス)を行う手法を

用いた、診断的遺伝子変異

解析研究を行いました。結

果として九〇%以上の小児

LCH症例で原因となる遺

伝子異常を同定し、さらに

新規遺伝子変異を発見しま

した。臨床的意義として

は、LCHの診断および治

療法選択に臨床応用可能な

解析方法を提案することが

できました。

 

本研究は、新潟大学、東

北大学をはじめとする五施

設の先生方に共同研究とし

てご協力いただきました。

共同研究者の諸先生方、お

よび同意いただきました患

者さまのご協力に深く感謝

申し上げます。また、温か

い御指導いただきました本

講座の伊藤悦朗教授、土岐

力講師、病理標本作成でご

協力いただきました病理診

断部黒瀬顕教授に深謝いた

します。

 

今回の演題は、本教室に

おける研究テーマとして新

しい疾患であり、この受賞

は非常に励みになりまし

た。本研究を起点とし、こ

こから新たな知見を重ねて

いけるよう、臨床応用に直

結する研究をめざして、微

力ながら精進して参りたい

と存じます。今後ともご指

導ご鞭撻のほど宜しくお願

い申し上げます。

 

日本脳科学会はGAB

A・GABOBおよびその

関連物質研究会(昭和三十

四~四十八年)と日本条件

反射学会(昭和三十七~四

十八年)を母体とした脳研

究会(昭和四十九~平成六

年)を前身としており、様々

な視点から脳科学研究に取

り組んでいる学会でありま

す。今年度は平成二十九年

十月十四日から十五日にか

けて、本学神経精神医学講

座中村和彦教授を大会長と

して弘前市で開催されまし

た。「A

P-1 complex induces

mouse T

spo expression by lip

opoly

saccahrid

e in m

icrogrial cell line, BV-2

という演題で発表し、若手

研究者を対象とした奨励賞

を受賞致しましたので、こ

の場をお借りしてご報告さ

せて頂きます。

 

近年は、様々な疾患にお

ける脳内炎症、つまりミク

ログリアの活性化、を可視

化する研究が非常に盛んに

行われており、可視化する

際のPET用プローブとし

てPK-11195

やPBR

28

が用

いられております。これら

はTSPOと呼ばれるミト

コンドリア内膜に局在する

タンパク質に特異的に結合

するトレーサーであり、結

合活性は変化しないが、T

SPOの発現量が増加する

ことで、結合量も増加しま

副学長(COI担当)に就任して

医学研究科長 

若 

林 

孝 

第59回日本小児血液学会

小児科学講座 

助教 

工 

藤   

優秀プレゼンテーション賞を受賞して

第27回日本臨床精神神経薬理学会

神経精神医学講座 

助教 

冨 

田   

奨励賞を受賞して

第44回日本脳科学会

脳神経生理学講座 

助教 

下 

山 

修 

(次ページへ続く)

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医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日

す。しかしながら、炎症時

にミクログリアにおいて、

どのようにTSPOの発現

が増加するかは不明でし

た。

 

そこで、炎症誘導剤とし

てリポポリサッカライドと

マウスミクログリア細胞株

を用いてT

spo

の遺伝子発

現制御メカニズムの解明に

取り組みました。その結

果、遺伝子発現に必要な転

写因子としてc-Fos/c-Jun

からなるA

P-1

複合体が重

要であることを明らかにす

るとともに、ミトコンドリ

アよりも細胞膜での発現増

加が顕著であることがわか

りました。このことから、

炎症時にPET用プローブ

の結合量が増える要因とし

て、TSPO発現量の増加

だけではなく、膜表面での

発現が増加することで結合

しやすくなっている可能性

も示唆されました。

 

今後は脳内

で炎症が起き

ている疾患モ

デル動物を用

いて、本研究

で得られた結

果と同じメカ

ニズムで制御

されているか

どうかの検討

を行うととも

に、TSPO

の発現増加が

疾患に与える

影響について

も検討してい

きたいと考え

ております。

 

最後にご指

導いただきま

した神経精神

医学講座中村

和彦教授、脳

神経生理学講

座上野伸哉教

 

平成二十九年十一月二十

三日から二十五日に東京国

際フォーラムで開催され

た、第七十九回日本臨床外

科学会総会の研修医セッ

ションで研修医A

ward

受賞したため、ご報告しま

す。受賞演題名は「肺動脈

スリングと気管狭窄の同時

手術を行った新生児症例」

です。

 

肺動脈スリングは、通常

主肺動脈から分岐する左肺

動脈が、右肺動脈から分岐

する発生異常です。主肺動

脈、気管の後方を走行する

左肺動脈、動脈管が気管周

囲で血管輪を形成して気

管狭窄症状を伴います。気

管は、膜腰部が欠損して全

周が軟骨成分から成る

complete cartilage tracheal

rings

という病理学的異常

を伴うことが多いと報告さ

れています。肺動脈スリン

グと気管狭窄に対する同時

手術の報告は散見されます

が、新生児期での報告は少

なく、成績も悪いのが現状

です。今回我々は肺動脈ス

リングと気管形成の同時手

術を行った新生児症例を経

験しました。症例は日齢十

七の女児で、呼吸状態の悪

化で心肺蘇生を要したた

め、臨時手術を行いまし

た。胸骨正中アプローチ、

人工心肺使用下で動脈管離

断、肺動脈スリングの修

復、気管形成を行いまし

た。動脈管を離断して血管

輪を解除後、左肺動脈を起

始部の右肺動脈から切離

し、気管の後方から前方へ

引き抜いて主肺動脈に移植

しました。次に、気管を中

央の最狭窄部で離断し、頭

側の気管は前面を約二セン

チ縦切開し、尾側の気管は

後面を気管分岐部まで縦切

開しました。離断された頭

尾側の気管を重ね合わせる

ように吻合するsliding

plasty

を行い、気管狭窄を

解除しました。術後二カ月

で合併症なく退院し、術後

十カ月現在、気管狭窄の再

発なく経過しています。

 

今回は新生児の肺動脈ス

リングと気管狭窄に対する

一期的手術を行い良好な結

果が得られました。術前の

気管支鏡検査を契機に呼吸

状態が悪化するなど、経過

中に注意すべき点も見られ

ました。本症例の手術や周

術期管理を報告すること

は、より重症な肺動脈スリ

ングや気管狭窄治療の成績

改善に寄与できると考え、

学会で報告しました。現在

論文執筆中です。このよう

な貴重な症例の手術に入れ

ていただき、発表の機会を

与えていただいたことは学

生生活の集大成となりまし

た。今回の経験を活かして

初期研修に臨みたいと思い

ます。

 

最後になりましたが、今

回の発表にあたりご指導頂

きました胸部心臓血管外科

の先生方にはこの場をお借

りして心より感謝申し上げ

ます。ありがとうございま

した。

授及び講座スタッフの皆さ

まに深く御礼申し上げます。

(前ページより)

研修医A

ward

を受賞して

第79回日本臨床外科学会総会

医学部医学科六年 

佐々木 

花 

弘前医学会例会開催報告

弘前医学会庶務幹事 

福 

田 

幾 

(胸部心臓血管外科学講座 

教授)

第155回

 

第百五十五回弘前医学会

例会が平成三十年一月十九

日㈮、弘前大学医学部コ

ミュニケーションセンター

で開催されました。本年は

例年にない豪雪の冬でした

が、当日は積雪・降雪もな

く穏やかな天候でした。参

加者は七十二名でした。

 

一般演題発表九題の発表

が行われ、新岡丈典先生・

松坂方士先生・佐々木亮先

生に座長をお願いしまし

た。いずれも内容の濃い高

いレベルの発表でしたが、

座長および富田泰史教授、

青木昌彦教授(選考委員

長)を加えた選考委員会の

厳正な審査により、弘前大

学大学院医学研究科

産科

婦人科学講座の追切裕江先

生が発表された「人工ヒト

腹膜組織を用いたCarbonyl

reductase 1

による卵巣癌腹

膜播種抑制効果の形態学的

解析」が優秀発表賞に選ば

れました。

 

例会講座では弘前大学医

学部附属病院

小児外科の

平林健先生診療教授から、

「小児外科とは???小児

外科学領域の臨床と研究に

関して。特に小児領域での

排便障害について」のご講

演をいただきました。小児

外科という難しい分野の概

説と、ご自身が取り組んで

きた排便障害に対する外科

的治療から薬物療法、さら

には小児・成人の便秘の治

療薬や電気刺激法の開発ま

で、大変広い見識をご披瀝

いただき、素晴らしいご講

演に感銘を受けました。

 

引き続き、第二十二回弘

前大学医学部学術賞受賞者

による記念講演が行われま

した。はじめに学術奨励賞

を受賞された中国医科大学

付属第一医院・弘前大学大

学院医学研究科分子病態病

理学講座の安欣先生、およ

び弘前大学医学部附属病院

脳神経外科の奈良岡征都先

生から講演をいただき、さ

らに学術特別賞を受賞した

弘前大学大学院医学研究科

高血圧・脳卒中内科学講座

木村正臣先生から講演が行

弘前医学会例会

弘前医学会優秀発表賞を

受賞して

産科婦人科学講座 

助教 

追 

切 

裕 

 

平成三十年一月十九日に

開催された、弘前医学会例

会におきまして、「人工ヒト

腹膜組織を用いたCarbonyl

reductase 1

による卵巣癌腹

膜播種抑制効果の形態学的

解析」について発表させて

いただき、優秀発表賞をい

ただきました。この場を借

りて、指導してくださった左 青木昌彦選考委員長・追切裕江先生・右 若林孝一会長

われました。いずれも内容

の濃い研究であり、弘前大

学の医学研究のレベルの高

さに改めて感心いたしまし

た。

 

次回、第百二回弘前医学

会総会は平成三十年七月七

日㈯、プラザマリュウ五所

川原で開催する予定です。

是非とも多数の演題申し込

みとご参加をお願いいたし

ます。

横山教授、神経解剖・細胞

組織学講座の浅野先生、下

田教授にお礼を申し上げま

す。

 

当講座では、横山教授の

指導の下、Carbonyl reduc-

tase 1

(以下CR1

)DNA

による卵巣癌の遺伝子治療

における研究を長年おこ

なっております。そこで、

今回、神経解剖・細胞組織

学講座で作成しているin

vitro

人工ヒト腹膜組織を

用いて上皮性卵巣癌腹膜播

種モデルを作成し、CR1

DN

A-dendrim

er

複合体導

入による癌性腹膜播種の初

期動態の変化から、CR1

よる遺伝子治療効果の機序

を明らかにすることを目的

とし、本研究を行いまし

た。結果として、癌細胞は

穿孔を形成しながら中皮層

に侵入し、中皮間および中

皮下で増殖して集塊を形成

していました。二十四時間

後にはリンパ管への侵襲が

みられ、四十八から七十二

時間後には癌細胞が集塊を

形成しながら組織深部に浸

潤していました。上皮性卵

巣癌腹膜播種モデルに対し

てCR-1 DN

A

を導入する

と、人工ヒト腹膜組織上の

癌細胞増殖が有意に抑制さ

れ、ネクローシスの誘導を

(次ページへ続く)

Page 6: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

示す結果が得られました。

 

私自身は、今回の研究の

なにもかもが初めてのこと

で、無菌操作、細胞培養、

パラフィン標本作製、電顕

標本作製、電顕の観察、免

疫染色等、失敗を繰り返し

ながらも浅野先生の粘り強

い指導の下何度も実験を行

いました。はじめは無菌操

作すらままならなかった私

ですが、繰り返し培地交換

をしたり継代したりしてい

るうちにプロ級になりまし

た。ままならない頃は「癌

細胞ちゃん、大きくなぁ

 

昨年十月末、若林研究科

長、学務グループ阿部係長

とともに、弘前大学と馬偕

醫學院との教育・

研究に関

する大学間交流協定、なら

びに弘前大学医学部と馬偕

醫學院及び馬偕紀念醫院と

の学生交流に関する覚書を

取り交わすため台湾を訪問

しましたのでご報告しま

す。

 

馬偕醫學院は、台

湾で最も歴史のある

馬偕紀念醫院を母体

とする、最も新しい

医科大学で、現在台

湾で最も高い医師国

家試験合格率を誇っ

ています。施設の名

称は、カナダの長老

派協会の医師伝道師

として移住し、一八

八〇年に台湾で初め

ての西洋医学による

医療施設を作った

Dr. M

acKay

に由来

しています。呉懿哲

学長自らが、医学部

関連施設ならびに馬

偕紀念醫院本院と分

院をご案内下さり、大学挙

げての歓待を受けました。

 

馬偕醫學院は台北より北

に車で一時間ほどの、台湾

北端の新北市にあります

(写真1)。周囲は海と山

に囲まれ、風光明媚な地域

です。中心街とは距離があ

り、雑念を持てないほど勉

強に適した環境でした。し

かも全寮制です。一年次か

ら三年次まで教養教育や基

礎医学教育はこのキャンパ

スで行われます。全て英語

馬偕醫學院、馬偕紀念醫院との

   国際交流協定締結式に出席して

教材による厳しい医学教育

ですが、異なる学年が共同

生活することで自然と屋根

瓦方式の学習が成立してい

るとのことです。二十四時

間利用可能な図書室やミー

ティングルームがあり、さ

らには充実した体育施設も

あり、羨ましいほどの学習

環境でした。

 

次いで、南に三十分ほど

の淡水にある馬偕紀念醫院

分院を訪問しました。千床

規模の新しい病院で、臨床

実習の中心施設です。案内

の道すがら呉学長は、知識

偏在の教育を避け、実学を

重んじ、PBLを活用して

問題解決能力の醸成や、

プロフェッショナリズムや

社会との協調性の理解を教

育の主眼に置いているとの

理念を力説されていました

が、病院の中に完備された

教育施設を見学して、彼ら

の医学教育に対する工夫や

意気込みを伺い知ることが

できました。目玉はOSC

Eセンターです(写真2)。

常勤スタッフが運営するシ

ミュレーションセンターと

PBLルームが整備され、

診療技術と臨床

推論能力を高め

るために臨床実

習中も常時活

用されていまし

た。さらに、研

修医や看護師の

卒後教育の場と

しても利用され

ており、多職種

に及ぶ卒前から

卒後までのシー

ムレスな臨床医

学教育に感心い

たしました。

 

最後に台北市

内の馬偕紀念醫

院本院に移動

し、交流協定の

締結式に臨みま

写真1 馬偕醫學院

写真2 OSCEセンターて

れ」的な気持ちで癌細胞を

かわいがっていましたが、

癌細胞の増殖能は尋常では

なく、培養液はどんどんな

くなるわ、継代しても翌日

にはコンフルになるわと次

第に私を煩わせるようにな

り、可愛さ余って憎さ百倍

でした。そして一番大変

だったのが、電顕です。電

顕標本作製時は、とにかく

細かい作業続きで、鼻息で

飛んでしまうようなmm単位

の標本を、おおざっぱな私

は時には見失いながら作業

を行っていました。観察も

何が正常で何が異常なの

か、標本自体のコンディ

ションが不良なのか、癌細

胞の影響なのか、わからな

いことだらけで、電顕室の

暗闇の中ひとり発狂しそう

でした(というか時々発狂

していました)。

 

今回の受賞は、これらの

苦労が報われた瞬間でし

た。しかし、この結果をゴー

ルとせず、念願の臨床応用

までいけるように、講座一

丸となって今後も臨床と研

究と頑張っていきたいと思

います。

(前ページより)

国際交流研究委員長 

袴 

田 

健 

(消化器外科学講座 

教授)

した。はじめに若林研究科

長から今回の協定締結を機

会に相互交流を深めたいと

のご挨拶があり、私からは

弘前大学と医学部の特徴と

歴史、弘前の魅力について

スライドでご紹介しまし

た。医科大学と病院の双方

の関係者が出席される中、

協定書と覚書を署名交換

し、終始和やかな雰囲気の

中で締結式を終了いたしま

した(写真3)。

 

来年度には馬偕醫學院か

ら臨床実習生を数名迎える

ことになりますし、本学か

らも派遣の予定です。臨床

実習での受け入れについて

は各講座にご協力を仰ぐこ

とになりますが、どうぞよ

ろしくお願いします。

 

余談ですが、台湾は温暖

で、スィーツの宝庫です。

しかも安全かつ親日的で

す。台北と青森を結ぶ直行

便も就航しました。安心し

て、気軽に相互交流できる

関係は双方に有益です。新

しいパートナーである馬偕

醫學院ならびに馬偕紀念醫

院との国際交流推進に期待

します。

写真3 国際交流協定を結んて 

日本で慢性腎不全患者に

対して最初に腎移植が行わ

れたのは一九六四年で、

青森県ではその僅か三年後

の一九六七年に弘前大学医

学部附属病院第一外科の山

本 

実先生が第一例目の腎

移植を実施しました。その

後、鷹揚郷弘前病院、八戸

市民病院、八戸平和病院で

も実施されるようになり、

本県は腎移植のパイオニア

的役割を果たしていました。

 

ところが、二〇〇四年に

は全国的な医師不足を背景

に、県内で腎移植が一件も

実施されないという事態に

陥り、腎移植を希望される

患者さんは東京、仙台、秋

田など遠方の施設を受診せ

ざるを得ない状態になって

しまいました。

 

そこで、この窮状を打開

するために、二〇〇五年に

附属病院の診療科の枠組み

を超えた新しい腎移植ユ

ニットである「弘大腎移植

チーム」が立ち上がり、

二〇〇六年六月に第

一例目の生体腎移植

を実施しました。臓

器移植は究極のチー

ム医療です。泌尿器

科、消化器外科、腎

臓内科の医師が協力

しながら、さらに病

理部、薬剤部、麻酔

科、手術部、看護部、

検査部の援助を頂き

ながら、一例一例実

績を積み重ねまし

た。そして、二〇一

七年十一月に「弘大

腎移植チーム」によ

る腎移植が百件に到

達しました。生着率

も非常に良好で、五年生着

率は生体で九七%、献腎で

一〇〇%となっています。

 

現在、青森県内の腎移植

認定施設は本院、八戸市民

病院、鷹揚郷弘前病院の三

か所になっていますが、ど

の施設も急な対応が要求さ

れる脳死下あるいは心停止

下の腎移植に単独で対応す

るのは容易ではあり

ません。そこで、県

内の献腎移植に対応

するために、施設の

枠組みを超えた「腎

移植チーム青森」を

形成し、三施設で実

績を上げています。

定時手術が可能な生

体腎移植は本院で実

施し、緊急対応が必

要な献腎移植は本院

の「弘大腎移植チー

ム」が鷹揚郷弘前病

院の手術場で移植を

します。また、八戸

市民病院で脳死下の

臓器提供が出た場合

にも本院のチームが鷹揚郷

のスタッフと共に摘出チー

ムを形成して支援します。

 

このような既成の枠組み

を超えた腎移植実施体制は

全国的にも類がなく、「弘

大方式」「青森方式」とし

て注目を集めています。そ

して、二〇一七年二月に

は、本院から初の脳死下臓

器提供が実施されました。

事務の皆さんにも大変素晴

らしい対応をして頂き、

初めてとは思えないような

円滑な臓器提供でした。臓

器不全に苦しむ患者さんに

とって、唯一の根本治療と

なるのが臓器移植です。「弘

大腎移植チーム」の腎移植

百件は単なる一里塚に過ぎ

ませんが、これまでの皆様

のご理解とご支援に感謝

し、この素晴らしい医療が

今後さらに発展、充実する

ことを祈りつつ、紹介させ

て頂きました。

弘大腎移植チームの腎移植が100件に到達しました!

泌尿器科学講座 

教授 

大 

山   

Page 7: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日

発に行われ、盛況な会だっ

たと思います。このような

機会を頂いた公立野辺地病

院および本学のスタッフの

皆様、ご参加頂いた皆様に

この場をかりて感謝申し上

げます。

平成29年度 

医学研究科学外公開講座の開催報告

「大腸かん検診と生活習慣病」

内分泌代謝内科学講座 

教授 

大 

門   

 

平成二十九年十二月九日

㈯に弘前大学大学院医学研

究科 

健康・医療講演会

「大腸がん検診と生活習慣

病」が野辺地町

公立野辺

地病院講義室で開催されま

した。がんも生活習慣病と

して位置づけられてきてい

る事を背景に、近年有病率

が増加してきている大腸が

ん、及び糖尿病がテーマと

なりました。

 

始めに、本学広報委員長

の分子病態病理学講座教

授 

水上浩哉先生から、本

会の趣旨などを含めてご挨

拶を頂いた後、講演1「大

腸がん検診のすすめ」と題

して、公立野辺地病院副院

長 

中島道子先生より講演

を頂きました。本邦に置い

て大腸がんの有病率、死亡

率が増えており、それを抑

える取り組みとして検診を

受けることが有用なことを

種々のデータを示し分かり

やすく教えていただきまし

た。ことに、便鮮血を用い

た検診は、スクリーニング

としての有用性は高いが、

精度は高くはない。逆を言

うと、見落としが多くあ

り、一回の検診で安心する

のでは無く毎年検診を受け

ることが重要なのだという

点は、大きなインパクトが

あり、定期的に検

診を受ける事の意

義が強く伝わった

と思われました。

 

次に、講演2

「糖尿病になりや

すい体質ってある

の?」と題して、

私の方からお話し

させて頂きまし

た。糖尿病は生活

習慣病の代表と言

えますが、実際に

は生活習慣が悪い

のに、糖尿病にな

らない人がいます

し、逆に生活習慣

が悪くないのに糖

尿病になる人もい

ます。その理由と

して、糖尿病に成

り易い体質、すな

わち遺伝的素因が

ある事を、図表を

用いて分かり易く

説明しました。合

わせて、糖尿病に

成り易い体質、遺伝的素因

は、個々の人で違い、その

違いに基づいた予防策、言

うなればオーダーメイドの

医療が必要で、近い将来に

実現する可能性、展望も解

説しました。

 

昨年は雪の降り始めが早

く、十二月上旬にも関わら

ず雪がかなり降っていまし

たが、それにも関わらず多

数の参加者が有、また、参

加者には、熱心に聴講して

頂き、講演会後の討論も活

大門 眞 先生 中島道子 先生 水上浩哉 先生

 

十一月十四日は国連によ

り公式認定されている「世

界糖尿病デー」です。糖尿

病の予防、治療、療養を喚

起する様々なイベントが開

催されていますが、弘前市

協力のもと、本年度も「世

界糖尿病デーin弘前」を行

いました。

 

本年度は十一月十四日か

ら十九日までの六日間、

青森銀行記念館のライト

アップを行いました。十一

月十四日の点灯式は、霙交

じりのあいにくの天候でし

たが、多くの医療スタッ

フ、患者様が参加してくだ

さいました。今回はライト

アップ会場において、たか

丸君との写真撮影会を二回

(十一月十四日、十七日)

行い、五十人ほどのご参加

をいただきました。

 

十一月十七日には、弘前

公開糖尿病教室(於 

ヒロ

ロ内弘前市

民文化交流

館)を開催

しました。

弘前市立病

院内分泌代

謝内科科長

の松本敦史

先生、今村

クリニック

院長の今村

憲市先生、

黒石病院糖

尿病内科・

内分泌内科

部長の上原

修先生の三

名の先生方

による講演

をいただき

ました。

附属病院 

内分泌内科,糖尿病代謝内科

講師 

柳 

町   

世界糖尿病デーin弘前

 

松本先生には糖尿病と膵

臓との関係、膵臓疾患と糖

尿病との関係について分か

りやすくお話いただきまし

た。今村先生には弘前市で

開始となった、「

糖尿病性

腎症重症化予防プログラ

ム」のご紹介と腎症合併の

問題点や評価方法に関する

ご講演いただきました。上

原先生には「メディカル

アートで学ぶ肥満症と糖尿

病」と題し、先生の描いた

イラストと共に肥満症と糖

尿病に関して学ぶ、ユニー

クなご講演をいただきまし

た。本年度の参加者は約百

三十名でした。昨年度より

も多くの方々にご参加いた

だき、盛会裡のうちに終了

いたしました。

 

本イベントを通して、糖

尿病患者様とそのご家族、

そして医療スタッフ一丸と

なった療養環境づくりがで

きればと考えております。

最後になりましたが、本イ

ベント開催にご協力くださ

いました関係各位に深謝申

し上げます。

 

三村申吾青森

県知事と弘前大

学医学部医学科

学生との懇談会

は年二回行われ

ています。県知

事と医学科学生

との定期的な

懇談は、全国的

に見ても極めて

稀で貴重な会と

なっており、春

は新入生を対象

に、秋は五年生

を対象としたも

のです。この懇

談会がスタート

したのは平成

十七年のことであり、その

後、十三年にわたり連続し

て開催されています。今回

は平成二十九年十二月六日

に医学部基礎大講堂で、医

学科五年生全員が出席して

実施されました。県側から

は三村知事に加え、山中朋

子医師確保対策監、小川克

弘良医育成支援特別顧問ら

が出席し、佐藤学長・若林

医学部長の列席のもとで行

われました。知事からは、

「青森県の目指す医療の

姿」に基づき、地域を支え

る保健・医療・福祉一体化

システムを築くために、さ

らには青森県の医療の未来

に明るい展望を持つために

何をすべきかの説明がなさ

れました。弘前大学と連携

した県の取り組みが紹介さ

れ、⑴優れた医育環境(医

師が学ぶ環境)を整える、

⑵意欲がわく環境(医師が

働く環境)を整える、⑶仕

組みを整える(医師が学

び、働く環境を整えるため

に、県・市町村・大学がそ

れぞれ連携と支援のネット

青森県知事と

五年生との懇談会

学務委員長 

鬼 

島   

(病理生命科学講座 

教授)

後援会のご案内会長 石戸谷 忻 一

 弘前大学後援会では、学生の学業、課外活動への助成、学生の進路指導に必要な助成等学生生活の多岐にわたる分野の助成を行っております。つきましては、何卒本会の趣旨に御賛同頂きまして、各位の格別の御高配、御支援を賜りますよう、切にお願い申し上げます。 なお、入会方法等の詳細については、弘前大学総務部総 務 広 報 課(Tel:0172-39-3012、E-mail:[email protected])までご連絡いただくか、弘前大学後援会ホームページ(http://www.hirosaki-u.ac.jp/kouen/index.html)をご覧ください。

弘前大学

ワークを取り組んでゆく、

という三本柱からなってい

ると力説されました。具体

的には、医師修学資金によ

る支援、女性医師の定着や

職場復帰支援、研修医や指

導医を対象としたワーク

ショップの開催などがそれ

に含まれます。知事の講演

の後は、県スタッフも加わ

り、学生との活発な意見交

換あり、和やかな雰囲気の

中、懇談会の幕が閉じられ

ました。

 

現在、青森県からの寄附

講座として総合地域医療推

進学講座が設置されてお

り、青森県地域医療支援セ

ンターや自治体病院等を介

して、県と大学との連携も

強化されつつあります。青

森県の医療の未来に明るい

展望を持つためには、弘前

大学医学部を中心とする循

環型医師育成の中で、多く

の卒業生が青森県に定着

し、大学が担う教育・研究

機能を充実してゆくことも

肝要です。

会場の様子

Page 8: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

で術時間および透視時間の

短縮、さらに長期成績の改

善を示すことができまし

た。これらの結果をもと

に非透視下心房細動アブ

レーションを始めとする

Hirosaki M

ethod

を提唱し

ました。本メソッドを展開

することで当院への医師の

 

この度は、歴史ある弘前

大学医学部学術特別賞を受

賞することができ、大変光

栄に思います。選考委員の

皆様、これまでご指導、ご

支援を頂いた皆様に心より

感謝申し上げます。

 

今回、受賞の対象となっ

た研究課題は「心房細動に

対するカテーテルアブレー

ションの安全性および有効

性向上を目指したH

irosaki M

ethod

の開発」です。近年、

高齢化の急速な進行により

我が国における心房細動罹

患率は増加傾向にあり、心

房細動の根治を目指したカ

テーテルアブレーションが

注目されるようになりまし

た。しかし、以前は術時間

の長さや再発率の高さ、さ

らに透視による被ばくなど

問題が多く、取り組むべき

課題が山積していました。

心房細動アブレーションに

おいて、いかに術時間、透

視時間を短縮させ、なおか

つ予後の改善を図るかが私

の研究テーマとなり、この

弘前大学から全国へ向けて

発信することが私のライフ

ワークとなりました。

 

心腔内超音波カテー

テルを用いた3D

-CT

統合

(SOU

ND

MERGE

)におけ

る誤差の最小化法の開発に

より3Dナビゲーションシ

ステムを用いた治療の有

用性を示すことができま

した。さらにコンタクト

フォース情報を用いること

第22回 医学部学術賞第20回 医学部附属病院診療奨励賞第21回 医学部医学科国際化教育奨励賞第36回 唐牛記念医学研究基金助成金

特 集

第22回 弘前大学医学部学術賞

医学部学術賞(特別賞)を

受賞して

不整脈先進治療学講座

 

准教授 

木 

村 

正 

特 別 賞

見学者数は百名を超えるほ

どになり、技術講習会を通

じて本メソッドを広めるこ

とができました。

 

今回の受賞でこれまでの

成果が評価されたことは、

ともに研究に携わった同僚

の先生方のお陰でもあり厚

く御礼申し上げます。とり

わけ今回のテーマの礎を築

いてくださった循環器腎臓

内学講座前教授の奥村謙先

生には特別な感謝を捧げま

す。今後もこの受賞を励み

に、普段の診療に加え、よ

り臨床に役立つ研究活動に

も邁進して参りたいと存じ

ます。今後ともご指導ご鞭

撻のほど宜しくお願い申し

上げます。

 

今回はこのような名誉あ

る賞をいただきましてまこ

とにありがとうございまし

た。現在私は中国医科大学

の重症医学科に所属し、I

CUで働いております。二

〇一三年に学位を取得する

ために来日し、二〇一五年

まで分子病態病理学講座で

研究を行っておりました。

今回の論文はその時行った

研究結果をまとめたもので

す。現在2型糖尿病は世界

的に増加しております。特

に、その中でも老年者の割

合が高いことが分かってお

ります。老年者の糖尿病患

者は、中年で発症して老年

になった症例と老年で初め

て糖尿病を発症した症例に

分けることができます。特

に老年発症例では遺伝因子

厚く御礼申し上げます。

 

今回受賞した論文は、

Long-acting statin for

aneurysmal subarachnoid

hemorrhage: A

randomized,

double-blind, placebo-controlled trial

(くも膜下

出血後の脳血管攣縮に対す

の関与が少ない、低血糖発

作を起しやすいなどの特徴

が知られております。しか

しながら、そのような症例

の膵島病理的変化はいまま

で不明でした。そこで、剖

検症例のうち八十五歳以上

で、糖尿病を七十五歳以上

で発症した症例を集め、膵

島病理を検討しました。そ

の結果、高齢発症症例では

1.膵臓重量が低い、2.

腺房細胞の萎縮、線維化が

顕著である、3.膵管内腫

瘍性病変が見られる、4.

膵島にアミロイドの沈着が

目立つ、などの特徴がある

ことが分かりました。この

結果をまとめて論文を執筆

し投稿したところ、最初の

雑誌はリジェクトされまし

た。しかしながら二回目の

 

この度、学術奨励賞を受

賞させて頂き、大変光栄に

感じております。御選考の

労をおとり頂きました先生

方、並びに、ご指導、ご支

援を頂きました当講座、大

熊教授および教室の諸先生

方にこの場を借りまして、

 

この度は名誉ある第二十

回弘前大学医学部附属病院

診療奨励賞・診療技術賞を

受賞することができ、大変

光栄に思っております。こ

医学部学術賞(奨励賞)を

受賞して

中国医科大学附属第一医院

重症医学科 

安     

(元 

分子病態病理学講座)

奨 励 賞

Journal of Clinical Endocri-nology and M

etabolism

に何

とかアクセプトされまし

た。さらに、ED

ITO

RʼS CH

OICE

に選ばれるという

おまけつきでした。日本に

いた時は自分の研究がどう

なるか分からず非常に不安

でしたが、結果として論文

化され、学位も無事取得す

ることができほっとしてい

るところです。また、分子

病態病理学講座の水上教

授、八木橋特任教授とス

タッフの皆様には多くのご

指導、ご助言をいただきま

した。この場を借りて厚く

御礼申し上げます。研究は

概して苦労が多く、つらい

ものですが、新しい何かを

自分で見出すことは何事に

も変えがたいものです。日

本で学んだ研究精神、手法

を忘れず、分野は違うもの

の中国でも多くの研究成果

を出していく所存です。今

回は本当にありがとうござ

いました。

医学部学術賞(奨励賞)を

受賞して

附属病院 

脳神経外科 

講師 

奈良岡 

征 

奨 励 賞

る長時間作用型スタチンの

効果)として、T

he Journal of Cerebral Blood Flow

&

Metabolism

(JCBFM

)に掲

載されております。研究内

容ですが、くも膜下出血後

に好発する脳血管攣縮の予

防・治療に関するもので、

脳血管攣縮とはくも膜下出

血発症後、遅発性に脳主幹

動脈の持続的収縮を介し脳

虚血・神経脱落症状を引き

起こす重大な合併症です。

急性期の手術が成功しても

なお、脳血管攣縮を発症す

ると予後不良となり、ま

た、未だ有力な治療法は確

立されていません。

 

今回の研究では治療薬と

してスタチンに着目しまし

た。スタチンは高脂血症治

療薬として汎用されていま

すが、血清脂質降下作用の

他に、血管拡張作用を含む

多面的作用を有していま

す。以前にも脳血管攣縮に

対して一般的なスタチン投

与が臨床的に試みられてき

ましたが著明な有効性は示

されませんでした。そこ

で、作用時間が長く、より

多くの多面的作用を持つス

トロングスタチンの有効性

を検討するために、県内四

施設において無作為化二重

盲検比較試験を施行しまし

た。具体的には、くも膜下

出血症例をスタチン群(ピ

タバスタチン4mg/日投

与、五十四例)およびプラ

セボ群(五十四例)に無作

為に割り付け比較検討しま

した。

 

その結果、脳血管撮影上

の脳血管攣縮発生率はスタ

チン群で有意に低率となり

ました。他のエンドポイン

トでは、スタチン治療群で

良好な結果が得られたもの

の有意差は認めませんでし

た。本研究の結果は、⑴ス

トロングスタチンにより脳

主幹動脈内腔狭小化の改善

が得られる、⑵スタチンの

単剤投与は推奨されないが

combined therapy

の基本薬

となり得る、⑶脳血管攣縮

の病態には主幹動脈の狭小

化のみが関わる訳ではな

い、という三点を初めて明

確に示すことができまし

た。

 

本研究は、青森県内の脳

神経外科施設による共同研

究として、くも膜下出血治

療に関するエビデンスの構

築に貢献し得た点で大きな

意義を有しています。今後

も、同様の共同研究を遂行

し、くも膜下出血の予後向

上に寄与したいと考えてお

ります。

医学部附属病院診療奨励賞

(診療技術賞)を受賞して

附属病院 

検査部 

主任臨床検査技師 

一 

戸 

香都江

診療技術賞

(次ページへ続く)

第20回 医学部附属病院診療奨励賞

Page 9: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日

の場をお借りして受賞の報

告と検査業務充実に向けて

の取り組みについて報告さ

せていただきます。今回の

主題は「弘前大学医学部附

属病院検査部生理検査室に

おける平成二十五年度から

(前ページより)

平成二十八年度の超音波検

査業務充実に向けての取り

組み~大学病院として相応

しい意識改革・環境整備・

人材教育・地域貢献~」で

あり、生理検査業務を対象

に5Sと断捨離を基本とし

たPDCAサイクル活動

や、信頼できる検査業務と

質の向上を目指したもので

す。第一段階として職場環

境改善目的での整理整頓を

するにあたり物品や機器の

他、無駄な業務を減らすこ

とに重点を置き、意識改革

目的での勉強会の開催や業

務固定化による悪循環の改

善、また休暇取得が容易な

環境整備に力を入れまし

た。現在生理検査担当技師

は十二名であり九名が超音

波検査を担当しており、資

格として超音波検査士はこ

の五年の間に三名が取得し

七名(心臓六名、腹部一名、

体表一名、血管診療技師一

名)となっています。なお

人材教育面では個人評価で

の技術向上を促し、カン

ファの開催、近隣施設の研

修受入れや、医師への指導

など意欲的に実施しており

ます。地域貢献としては岩

木健康増進プロジェクトに

平成二十六年度から関わ

り、心臓超音波検査を四年

間で約四千五百人実施する

など青森県の健康増進に寄

与しました。この様な取り

組みの結果、超音波検査項

目は三項目から十三項目、

件数は平成二十四年度二千

五十件(UCG・千三百九

十四件)から平成二十八年

度六千三百十七件(UC

G・四千百四十三件)と収

益も高増収となり大きな貢

献となったと自負しており

ます。最後に今回の受賞に

際しまして、ご支援頂きま

した医学研究科臨床検査医

学講座萱場広之教授、循環

器腎臓内科学講座富田泰史

教授、山田雅大先生、そし

て超音波検査に関わった技

師の皆様には、心から感謝

を申し上げます。

医学部附属病院診療奨励賞

(診療技術賞)を受賞して

附属病院 

泌尿器科 

助教 

畠 

山 

真 

診療技術賞 

泌尿器科と二病棟五階看

護師を代表し、診療奨励

賞・診療技術賞を受賞させ

ていただきましたので報告

いたします。受賞タイトル

は「歩行スピードをとり組

み入れた高齢者脆弱性(フ

レイル)評価法の確立」で

す。

 

社会の高齢化に伴い、

泌尿器癌患者も高齢化が進

んでおります。高齢者患者

さんは何かしらの身体的予

備力低下(虚弱性=フレイ

ル)を抱えているため、フ

レイルを評価し安全な医療

に反映させる試みが必要に

なります(図1)。術後せ

ん妄や転倒などといったフ

レイル関連合併症は看護・

ケアの妨げになり、在院日

数の延長や医療費の増加に

直結し、医療安全上も非常

に重要ですが、どの患者に

起きるかを予測するのは容

易ではありませんでした。

そこで我々は二〇一三年よ

り簡便なフレイル評価を導

入しました。

 

その結果、フレイル評価

項目のなかで、歩行スピー

ドが術後に引き起こされる

せん妄や転倒イベントと高

い相関があることがわかり

ました。この結果を受け、

医療従事者の経験や感覚主

体の対策からTGUGを指

標とする高齢患者のリスク

評価が可能となり、高リス

ク患者に対する重点的な看

護・ケアが行えるようにな

りました。

 

我々が用いた評価法は

Tim

ed Get Up and Go test :

TGU

G

と言いまして、椅子

に座った状態から立ち上が

り、三m歩行し、また椅子

に座る、という動作の時間

を測定する検査で、簡便に

数分で測定できます(図

2)。泌尿器癌患者の術後

せん妄に対するTGUG

カットオフ値は十三秒以上

でしたが、他の日本人を対

象とした研究でも十二~

十三秒とする報告が多く、

「TGUG十三秒以上」は

多くの診療科でも広く応用

可能と考えられます。この

度、我々の試みが評価さ

れ、本賞を受賞できたこと

は大変喜ばしいことであ

り、今回の受賞をきっかけ

として、多くの診療科でT

GUGを導入していただけ

れば幸いです。

 

最後になりましたが、本

研究のご指導を頂きました

泌尿器科学講座の大山

教授、教室の皆様、フレイ

ル測定に多大なるご尽力を

いただいた病棟看護師の皆

様にこの場をお借りして厚

く御礼申し上げます。

医学部附属病院診療奨励賞

(心のふれあい賞)を受賞して

患者給食に選択メニューを取り入れて

附属病院 

栄養管理部 

栄養士 

三 

上 

恵 

心のふれあい賞

メニュー」を実施していま

す。メニューの内容は「カ

レー」か「カツサンド」、「親

子煮」か「かにごはん」、「豚

肉の生姜焼き」か「ほっけ

の生干し」など、幅広い年

齢層の入院患者さんの嗜好

に対応できるよう工夫して

います。

 

また、選択メニューの実

施は、調理作業のみなら

ず、選択用紙の配布や回

収、オーダーの入力などす

べて手作業でおこなってい

るため、非常に人手のかか

る作業ですが、給食業務受

託会社のスタッフの協力の

もと、入院患者さんの楽し

みを支える給食サービスと

なっています。

 

選択メニューの実施は入

院患者さんから大変好評

で、その証として今年度栄

養管理部では、良い投書が

多く、患者さんの満足度U

 

このたびは、思いが

けず「心のふれあい賞」

をいただき大変嬉しく

思っております。選考

してくださった先生

方、お力添えくださっ

た多くの方々、そして

推薦してくださった須

藤士長に厚く御礼申し

上げます。

 

病院の食事は、「集

団給食」というイメー

ジが強くありますが、

患者さん一人一人の年

齢や病態に合わせ、栄

養バランスはもちろ

ん、旬の食材や行事

にちなんだ料理をメ

ニューに取り入れ、治療効

果のある安全でおいしい食

事の提供を心がけていま

す。

 

入院患者さんからよく聞

かれるのは、「食事が楽し

みだ」という言葉です。栄

養管理部では入院患者さん

に食事をもっと楽しんでい

ただこうという考えのも

と、水曜日から土曜日の週

四回、昼食と夕食にAメ

ニューとBメニューの二種

類の献立から、好きなメ

ニューを選ぶという「選択

(次ページへ続く)

Page 10: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

 

このたびは第二十一回弘

前大学医学部医学科国際化

教育奨励賞を頂きまして、

誠にありがとうございま

す。選考委員の先生方、関

係者の皆様に感謝申し上げ

ます。

 

私は現在、基礎の病理学

講座に所属し、病理診断・

教育・研究に従事しており

ます。教育に従事するよう

になりまして、教育の難し

さを実感していたところ、

本賞を頂くことができ、

平成二十九年十月二十四

日~二十七日の期間、ハ

ワイ大学において開催さ

れた、PBL(Problem

Based Learning

)Workshop

に参加させて頂きました。

PBLとは、臨床のシナリ

オを基にして、学生自ら学

んでいく勉強法です。内容

に関しては、同大学のPBL

program

に学生が八月に

参加しており、医学部ウ

オーカー第八十三号に記載

されているので参照してみ

てください。PBLで学ぶ

内容は実臨床のシナリオで

あり、実際、このセミナー

に参加しているのは、私以

外すべて臨床科の先生方で

あったことから、基礎教員

である私が、そのワーク

ショップに参加するのに

は、不安が正直ありまし

た。しかし、実際に参加し

てみて、他大学の先生方と

の交流も含め、大変実りあ

 

この度、第三十六回唐牛

記念医学研究基金(助成金

A)を受賞させていただく

ことになりました。選考委

員の先生方はじめ弘前大学

医学部の先生方、みちのく

銀行関係者の皆様に篤く御

礼申し上げます。本助成金

は、みちのく銀行初代頭取

唐牛敏世氏の御遺志に基づ

いて、辞退された退職慰労

金を原資として創設された

ものと伺っております。昨

今、運営交付金の削減や

誤った「選択と集中」によっ

て、大学における研究環境

が極めて悪化しています

が、誤った政策を正すこと

が難しい中で、こうした民

間の篤志家の御支援は正に

干天の慈雨であり、日本の

科学を壊滅一歩手前で踏み

留めさせている最後の砦で

す。また、私は今年度弘前

大学に異動してきたことも

あり、研究室移転に伴う費

用等に運営交付金等を振り

分けざるを得ず、その分研

究経費が減ってしまうこと

から、困っていたところで

したので、今回の御支援は

その意味でもたいへんあり

がたいです。今回の私への

御支援と、これまでの弘前

大学医学部への継続的な御

支援に心から感謝申し上げ

ます。

 

今回助成いただく研究

テーマは、「遺伝子座特異

pに貢献したということ

で、病院長から「ベストや

まびこ賞」をいただいてお

り、「心のふれあい賞」と

あわせて二重の喜びとなっ

ております。

 

食事には人を喜ばせた

り、心を和ませたりする大

きな力がありますが、病院

の食事には治療への意欲を

高めるという側面もありま

す。栄養管理部では今回の

受賞を励みに、今後さらに

患者さんと心ふれあう給食

サービスと臨床栄養を目指

して努力して参りたいと思

います。

(前ページより)

 

この度は第二十一回弘前

大学医学部国際化教育奨励

賞という名誉ある賞をいた

だきありがとうございま

した。平成二十九年十月

二十四日から二十七日ま

第21回 医学部医学科国際化教育奨励賞

医学部医学科国際化教育

奨励賞を受賞して

地域医療学講座 

講師 

櫻 

庭 

裕 

で、ハワイ大学で行われた

「Problem Based Learning–

Haw

aii Style Workshop

」研

修へ病理生命科学講座の吉

澤忠司先生、消化器外科学

講座の三浦卓也先生、久保

寛仁先生と共に参加させて

いただきました。

このProblem

Based Learn-ing

(PBL)学習方法は、

様々な症例シナリオを、四

五人のグループで、症例

検討及び学習事項の列挙、

自己学習、最後に学習を通

して得た知識をグループ内

で発表討論するという三つ

のステップからなるもので

す。実臨床の診察・診断・

治療のプロセスをイメージ

しながら、病態の考察から

検査及び治療まで自主学習

で考え、その後、学習した

内容をプレゼンテーション

し討論するものです。ハワ

イ大学のPBLは、一つ一

つのシナリオが非常に洗練

されており、うまく学生が

重要な問題点を引き出せる

ようになっていました。一

方教官は、すぐに答えを提

示するのではなく学生の疑

問・興味を引き出すような

助言をするだけでした。そ

してシナリオの検討を繰り

返すことにより、学生の

様々な問題を解決するため

に自ら学習する力が高まる

のだと思いました。また、

ハワイ大学のPBLは入

学してすぐの一年次から

講義と平行して行われ学

年をまたいで継続されま

す。そのことが、現在の

基礎医学から臨床講義へ

段階的な学習のシステム

と臓器別・疾患別の講義

のみでは得られにくい、

継続的な高いモチベー

ションと実臨床における

解剖学や生理学といった

基礎医学の重要性を感じ

ることにつながるのでは

ないかと感じました。

 

本学においても、

チュートリアル、研究室

研修、BSL、クリニカ

ルクラークシップの中に

この学習法を取り入れ組

医学部医学科国際化教育

奨励賞を受賞して

病理生命科学講座 

助教 

吉 

澤 

忠 

る研修となりました。今

回、このセミナーを受講し

てみてわかったことは、基

礎の教員も、事前にシナリ

オの重要なポイントの講義

を受けてチューターとして

参加していること、そし

て、すべての授業をPBL

で行っているわけではな

く、基礎科目も平行して

行っているとのことでし

た。そして、本研修を通じ

て、印象に残っていること

は、学生のレベルの高さで

した。今回、実際にハワイ

大学の学生が、PBLを行

うことを見学させてもらい

ましたが、学生の積極性、

豊富な知識量に驚かされま

した。その理由は、もちろ

ん、active learning

であり、

自分たちで調べたことを発

表し、知識の共有を行うと

いう仕組みがしっかりとな

されているからだと考えら

れました。実際に、学生に

調べたことを発表してもら

いましたが、教科書の単な

る羅列ではなく、病気に関

連した必要な知識をその病

態の流れの中でまとめ、部

分的には基礎分野にも踏み

込んだものとなっていまし

た。自分自身も含め、積極

第36回 唐牛記念医学研究基金助成金

第36回唐牛記念医学研究基金

(助成金A)を受賞して

ゲノム生化学講座 

教授 

藤 

井 

穂 

助成金A

(次ページへ続く)

み合わせていけば、ハワイ

大学に匹敵するような教育

システムの構築と学生の考

える力の向上につながるの

ではないか考えました。最

後に、これからの医学教育

について考える貴重な機会

を与えていただきました、

袴田教授、福田教授に感謝

申し上げます。

性の乏しい、今まで座学

での講義に慣れてしまっ

ている日本人に、このシ

ステムをすぐに導入する

ことは難しいとは思いま

す。しかし、医学部ウオー

カーで記載された、学生

達の留学体験記を読む

と、ハワイ大学のPBL

を経験し、良い影響を受

けた学生たちの文章が生

き生きと記載されていま

す。その経験を自分自身

に留めることなく、同輩、

後輩に伝えていってくれ

ることを期待するととも

に、自分自身も講義、B

SLの学生、研修医に還

元していける方法を模索

し、学ぶことの魅力を伝え

ていければと思っておりま

す。

Page 11: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日

糖質の一つ「トレハロー

ス」にたどり着き、その治

療効果を実証してきまし

た。トレハロースによる異

常分子の分解には、二〇一

六年のノーベル医学生理学

賞の対象となった「オート

ファジー」という本来身体

に備わっているシステムが

関わっています。さらに、

トレハロースは天然糖質で

あることから、オリゴ糖や

食物繊維などとともに腸内

 

この度唐牛記念医学研究

基金を受賞させて頂き、大

変光栄です。研究内容はく

も膜下出血後の脳血管攣縮

という重篤な合併症に関す

るものです。以前から、遅

発性の脳血管攣縮に対する

予防・治療が試みられて来

ましたが、今なお克服され

ておりませんでした。近年

では超急性期の脳障害

Early Brain Injury

が遅発性

 

このたびは伝統ある唐牛

記念医学研究基金助成金を

いただき、とても大変光栄

に思います。関係者の皆様

に心よりお礼申し上げま

す。二〇一八年一月十九日

の贈呈式では、若林孝一医

学研究科長から大きな目録

を手渡され、とても感激し

たと同時に、「基礎研究か

ら社会に役立つ成果」を求

められていることを再認識

いたしました。

 

私の研究課題は「細胞内

分解システムを利用した新

たなシヌクレイノパチー発

症前治療法の開発」です。

シヌクレイノパチーとは、

加齢性の神経難病であり、

特にパーキンソン病、レ

ビー小体型認知症および多

系統萎縮症が含まれます。

高齢化社会を迎えている日

本では、これらの患者数が

今後もますます増加すると

予想されており、その病態

解明や治療・予防法の開発

は必須となっています。し

かし残念ながら、現在まで

根本的な治療・予防法はあ

りません。認知症を引き起

こすアルツハイマー病やシ

ヌクレイノパチーにおい

て、発症の約二十年前から

脳内ではすでに異常が起

こっています。特に特定の

タンパク質が異常に蓄積す

ることがわかっています。

我々の研究室では以前から

この「異常な蓄積」に着目

して、それらを分解する「安

全」「低価格」かつ「効果的」

な理想の治療法を探索して

きました。その結果、天然

 

この度は第三十六回唐牛

記念医学研究基金の助成金

Bを賜り、みちのく銀行関

係者の皆様ならびに選考委

員の先生方に厚くお礼申し

上げます。私が申請いたし

ました研究テーマは様々な

疾患の発症に関わるミトコ

ンドリアの機能異常を細胞

がどのように認識している

かの分子機構を明らかにす

ることが目的で、様々な進

行性疾患の早期診断につな

がると考えております。ミ

トコンドリアは好気呼吸に

より効率的にエネルギーを

産生する細胞小器官です

が、その機能が障害される

と活性酸素を産生し、メタ

ボリックシンドロームや

パーキンソン病をはじめ

様々な疾患につながると言

的クロマチン免疫沈降法を

用いた癌の新規創薬標的の

同定」です。従来、発癌に

おいては、癌遺伝子や癌抑

制遺伝子の変異が注目され

ていましたが、近年、変異

が認められない場合でも、

エピジェネティック機序に

より癌抑制遺伝子の発現が

低下する場合のあることが

分かってきました。しか

し、その分子機構の詳細

は、未だ不明の点が多くあ

ります。エピジェネティッ

ク機序を標的とする薬剤に

は、DNA脱メチル化剤等

がありますが、これらは全

細胞で、また、全ゲノム領

域に作用しうることから、

重篤な副作用が起こる可能

性があります。我々は、ゲ

ノムの解析対象領域のみ

を、クロマチン構造を保

持した状態で生化学的に

単離できる新技術・挿入

的クロマチン免疫沈降法

(insertional chromatin

imm

unoprecipitation: iChIP

法)を開発しました。今回

の研究提案では、癌抑制遺

伝子発現抑制に関与するエ

ピジェネティック制御因子

の同定を目指して、iChIP

法を用いて、エピジェネ

ティック機序により発現が

抑制されている癌抑制遺伝

子のプロモーター領域を単

離し、結合分子を網羅的に

同定し、それらが当該癌抑

制遺伝子の発現抑制に果た

す役割を解明します。これ

らの分子は、特異性が高く

副作用の少ない新規抗癌剤

を開発する際の有望な標的

分子となりえます。こうし

た戦略によって新しいタイ

プの抗癌剤の開発を目指し

ていきたいと思っていま

す。

(前ページより)

第36回唐牛記念医学研究基金

(助成金A)を受賞して

脳神経病理学講座 

助教 

丹 

治 

邦 

助成金A

第36回唐牛記念医学研究基金

(助成金B)を受賞して

附属病院 

脳神経外科 

講師 

奈良岡 

征 

助成金B

の脳血管攣縮発生や予後に

多大なる影響を与えること

で注目され、apoptosis

によ

る神経細胞死、血管内皮細

胞のapoptosis

や血液脳関

門破綻による脳浮腫、脳微

小循環障害などがEarly

Brain Injury

の中核をなす

ことが示唆されています。

 

今回は特に、脳微小循環

障害に着目しました。くも

膜下出血後に脳内微小血栓

第36回唐牛記念医学研究基金

(助成金B)を受賞して

分子生体防御学講座 

助教 

葛 

西 

秋 

助成金B

われています。ミトコンド

リアストレスに応答して活

性化する転写因子であるA

TF4がミトコンドリアの

恒常性維持に関わる遺伝子

の発現を誘導することが分

かってきましたが、どのよ

うに異常を認識しATF4

を活性化するのか明らかに

なっておりません。ATF

4は心筋症モデルマウスに

おいて疾患が発症する前に

活性化し遺伝子発現を誘導

することから、ATF4の

活性化を捉えることでミト

コンドリア異常が関わる疾

患の予防的介入が可能にな

ると考えております。この

度の受賞を励みとして、さ

らに研究に邁進する所存で

ございます。

 

第三十六回唐牛記念医学

研究基金を賜りまして誠に

ありがとうございます。栄

誉ある賞を頂きましたこ

と、選考委員の皆様ならび

に関係者の皆様に心より感

謝申し上げます。

 

私の受賞研究テーマは

「肝内胆管癌の腫瘍リンパ

管新生機構の解明とリンパ

行性転移の制御」です。我々

が診療する癌種の一つであ

る肝内胆管癌は予後不良の

疾患です。特にリンパ節転

移症例の治療成績は著しく

不良で、外科手術、化学療

法、放射線療法等を駆使し

た既存の治療戦略では、そ

の成績向上が困難な現状に

あります。この現状を打破

したいとの思いから、リン

パ行性転移の制御を念頭に

置いた新規治療法の確立と

の着想に至りました。

 

近年、リンパ行性転移と

腫瘍リンパ管新生の密接な

関連が明らかとなっていま

す。更に、腫瘍リンパ管新

生のシグナルや受容体を標

的とした抗リンパ管新生療

法が開発され、リンパ行性

転移の予防戦略として期待

されています。既に、大腸

癌等では臨床試験が実施さ

れる段階にあります。

 

肝内胆管癌でも抗リンパ

管新生療法の効果が期待さ

れます。しかし、肝内胆管

癌における腫瘍リンパ管新

生については、残念ながら

基礎的知見が不足していま

す。よって、本研究の目的

は、肝内胆管癌における腫

瘍リンパ管新生の形成およ

び調節機序を解明すること

です。そして、結果を展開

し、肝内胆管癌に対する抗

リンパ管新生療法の確立、

治療成績の向上を最終目標

とします。病める患者さん

の光となるよう研究に診療

に誠心誠意努めて参りま

す。今後ともご指導ご協力

の程、何卒宜しくお願い致

します。

第36回唐牛記念医学研究基金

(助成金B)を受賞して

消化器外科学講座 

助教 

脇 

屋 

太 

助成金B

環境の改善を促します。

「腸」と「脳」は密接に関

連しています。一つの臓器

にとらわれず、今後も他分

野の方々との共同研究をと

おして、研究成果を社会に

還元できればと思います。

 

最後になりましたが、日

頃、研究をサポートしてい

ただいている脳神経病理学

講座のスタッフの皆様、お

よび脳神経血管病態研究施

設、高度先進医学研究セン

ターの皆様に深謝いたしま

す。またトレッドミルやテ

レメトリーシステムなどで

お世話になっている整形外

科学講座、循環器腎臓内科

学講座および動物実験施設

の方々にも感謝いたしま

す。

形成や脳微小循環障害を引

き起こすことは、当講座に

て三十年来研究を行い、証

明してきておりましたが、

最近Early Brain Injury

一要素として再評価されて

います。これまでの研究成

果を基礎として、微小血栓

形成や細動脈の収縮に対す

る各種薬剤の効果を実験的

に検討する予定です。これ

により Early Brain Injury

の軽減および脳血管攣縮を

予防することで、くも膜下

出血患者の厳しい予後の改

善が望まれる、非常に有意

義な研究であると考えてお

ります。

 

この度助成金を受賞でき

ましたのは、多くの方々の

ご指導・ご協力のお陰であ

り、感謝の念に堪えませ

ん。誠にありがとうござい

ました。

Page 12: 「弘前大学COIヘルシーエイジング・ イノベーションサミッ … · 優秀発表賞を受賞して 6面:馬偕紀念醫院との国 際交流協定締結式に出席して/弘大腎移植チームの

医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

態が続いていましたが、先

輩方の愛情たっぷりの指導

に恵まれて徐々に自分の

ペースをつかむことができ

ました。結婚や出産を経験

しておらず、まだまだ気楽

な生活をしている私が女医

生活を語ることはいささか

荷が重いですが、最近「ど

うして麻酔科医になったの

か?」と質問されることも

多いため、麻酔科医に向い

ているのはどん

な人か、という

観点で考察して

いきたいと思い

ます。

 

まずは、短気

でない人。麻酔

科医はオーケス

トラの指揮者や

パイロットとし

て例えられ、全

体を見渡す必要

があります。予

定より手術時間

が長くなっても

出血量が増えて

も動じない強い

心が必要です。

それと同時に危

険性を予測し、

安全第一に患者

さんを管理する

必要がありま

す。大学病院で

は比較的合併症

 

あの大震災のあった年、

私は弘前大学を卒業し青森

市民病院で初期研修を経

て、平成二十五年に弘前大

学麻酔科学講座に入局しま

した。同時に大学院へ進学

し、学位も無事に取得する

ことができました。入局当

時はその日一日を終えるこ

とだけでいっぱいいっぱい

で、家に帰ると同時に眠

り、気がつけば朝という状

麻酔科に向いている人

附属病院 

麻酔科 

助教 

野 

口 

智 

若手教員・医師だより

麻女会への入会もお待ちしています♪

いた米田勝朗監督からの要

請があってのことでした。

私も大学院生のころから現

在までサポート

活動への参加を

させていただき

ましたが、第一

に選手たちの競

技に向き合う真

摯な姿勢に心打

たれました。当

初は勝ちにこだ

わるために極限

まで体脂肪率

を落とし、オフ

シーズンもなく

トレーニングを

継続するために

疲労骨折や貧血

 「名城大学、十二年ぶり

二回目の優勝!」この見出

しで号外が発表されたのは

平成二十九年十月二十九日

に行われた全日本大学女子

駅伝大会、通称「杜の都駅

伝」の結果を受けてのこと

でした。どれほどこの日を

待ちわびていたことか、そ

の喜びの大きさとこれまで

の弘前大学医学部からのサ

ポートの歴史を合わせてご

報告させていただきたいと

思います。

 

弘前大学医学部と名城大

学女子駅伝部の関係は平

成二十二年からになりま

す。スポーツ医学分野でも

コンディショニングに関す

るフィールド活動を得意と

する社会医学講座(中路

重之教授、梅田孝元准教

授)を中心として整形外科

学講座(石橋恭之教授)と

も連携し本チームへのメ

ディカルサポート事業がス

タートしました。十二年前

に本大会で優勝してから、

故障者も多く勝ちから遠ざ

かっていたチームを率いて

弘前大学医学部がサポートしている

名城大女子駅伝部優勝!

女子駅伝部の寮内てのメディカルチェック

優勝の瞬間

優勝監督は本学社会医学講座てコンディショニングに関する研究に取り組み学位を取得された米田勝朗先生

整形外科学講座 

佐々木 

英 

(現 

弘前記念病院 

医師)

により競技離脱する選手も

少なくありませんでした。

勝つために「練習する」こ

とに加え、様々な取り組み

を行いました。定期的な

身体組成測定、骨密度測

定、骨代謝マーカー測定、

血液検査による貧血や筋疲

労評価、身体診察によるタ

イトネス評価や疼痛部位の

ケア、疲労骨折のスクリー

ニング、心理テストとあら

ゆる面から問題をあぶり出

し、その対処法を監督、コー

チ、選手本人と個別に面談

しながら検討を繰り返しま

した。その集大成として本

年度のサポートチームは

我々の包括的コンディショ

ニング評価に加え、名古屋

学芸大学の管理栄養学部に

よる栄養管理、産婦人科に

よる月経に関する問題への

対策、メンタルトレーナー

による心理面への配慮など

幅広く選手をサポートする

体制が整っていました。毎

年三

四例発生していた疲

労骨折がこの二年間は一件

にとどまり、貧血で走れな

くなる選手はいなくなりま

した。選手が一〇〇%の力

を一〇〇%発揮し、のびの

びと仙台の地で勝負する姿

を見て、私は感動せずには

いられませんでした。あの

「弘前ならでは? リンゴ花粉症」弘前市周辺のアレルギーの原因になる植物

耳鼻咽喉科学講座 教授 松 原   篤

 弘前の春と言えば桜ですが、桜に続いて開花するリンゴの花も素敵ですよね。何と言っても弘前市はリンゴの生産が日本一で、リンゴとその加工品は市の産業を支える大事な存在です。しかし、そんなリンゴでも花粉症が存在します。とは言っても、読者の中でリンゴの花の近くでくしゃみ・鼻水が出る方はほとんどいないと思います。これまで紹介してきた色々な花粉症は、花粉が空中を舞う風媒花によるもので、多くの方がそれと知らずに花粉を吸い込んで発症します。一方、リンゴはハチなどの体に花粉がついて受粉する虫媒花で、リンゴの花粉はほとんど空中には飛散しません。そのため一般の方がリンゴ花粉症に悩むことはほとんどありませんが、リンゴ農家の方がリンゴの受粉や摘花といった農作業を行う際に、リンゴの花粉を吸い込んで花粉症を発症することがあります。こ

のように仕事に伴う場合を職業性花粉症と呼んでおり、他にもハウス栽培のイチゴ、モモやナシといったリンゴと同じバラ科の植物により発症する職業性花粉症が知られています。今度、リンゴを口に運ぶ時には農家の方のご苦労に思いを馳せみては如何でしょう。 弘前周辺の代表的花粉症はほとんど紹介してしまいました。本コラムは今回を持ちまして終了となります。これまでご愛読頂き有難うございました。� (了)

優勝の瞬間、これまで十

二年間我慢して、努力し

て、実らなかった先輩の思

いを引き継ぎながら走りぬ

いた選手の皆様には本当に

素晴らしい感動をいただき

ました。今後も選手の健康

と一〇〇%のパフォーマン

ス、将来的な不安解消に向

けて、微力ながら全力でサ

ポート活動に参加させてい

ただきたいと思います。

の多い患者さんや複雑な手

術が行われ、麻酔科医もそ

れに備えた準備が必要とな

ります。もちろん外科医と

信頼関係を築くことも重要

です。縁の下の力持ちとし

て働きたい人にお勧めで

す。

 

次に、いろいろなことに

挑戦したい人。弘前大学は

臨床麻酔・集中治療・ペイ

ンクリニックの三つを柱と

し、救急救命治療や緩和医

療にも麻酔科医が関わって

います。基礎・臨床研究も

多く行っており、臨床業務

と大学院との両立によって

学位や専門医の取得を並行

することもできます。入局

後も自分のライフスタイル

にあわせて変更可能であ

り、サブスペシャリティー

としての幅はとても広いの

です。

 

あとは、自分の時間を大

切にしたい人。麻酔科医の

仕事は朝早くから夜遅くま

で働いているイメージがあ

ります。しかしオンとオフ

がはっきりしているので休

日はしっかり休むこともで

きます。妊娠や育児など両

立されている先輩方も多

く、麻酔科全体の四割が女

性医師であるのもこのよう

な理由からだと思います。

 

麻酔科の仕事は個人競技

のように見られ、麻酔科医

は変わった人たちの集団と

思われがちです。何か困っ

たら麻酔科医にと頼られる

存在である一方、失敗は許

されないという責任もあり

ます。私が学生や研修医

だったころ、麻酔科後期研

修の先輩方は何でもできる

というイメージでした。他

科よりも少しだけ独り立ち

が早いことは大きな利点で

ある一方、常に鍛錬し慢心

せず新しいことにチャレン

ジしなければ一定の水準を

保つことさえできません。

自分が同じ立場に近づいた

今、後輩たちに同じような

背中を見せられるよう今後

も努力していこうと思いま

す。

 

さて、麻酔科医に向いて

いるのはどんな人でしょう

か?答えは、研修してから

のお楽しみです。麻酔に興

味がある人もない人もぜひ

ぜひお待ちしています。

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医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日 

二〇〇二年弘前大卒の教

育研究院医学系臨床医学領

域医学部附属病院専任担

当 

皆川智子と申します。

二〇一六年いわゆる附属病

院長枠で採用頂き、午前:

皮膚科外来、午後:検査

部・感染制御センターで働

いています。異動後に輸血

部:玉井先生から青森県医

師会男女共同参画委員会委

員を引継ぎ、大学医学部・

医学会女性医師支援担当者

連絡会や医学生・研修医の

ためのキャリアサポートセ

ミナーなどに参加していま

す。

 

附属病院では感染制御は

重要な仕事です.私もIC

D資格を取得し、院内巡視

や、感染対策研修会での講

師など、微力ではあります

が、精いっぱい務めており

ます。私は東北大農学部に

入学したものの、バブルが

はじけた一九九〇年代は理

系女子就職難でした。進路

を迷った末、幼い頃から憧

れた医師になろうと出身地

の弘前大医学部に再入学し

ました。

 

医学部四年で澤村教授

(当時は准教授)の研究室

研究生として配属され、卒

後入局しました。病棟・外

来諸先生のご指導のおかげ

で皮膚科専門医取得し、大

学院卒後助教にして頂きま

したが、産前五週で退職に

なり、夫の実家で同居し、

出産後は家事・育児に専念

しました。夫の留学に伴い

渡米後、一歳の息子を保育

園に預けPennsylvania

大皮

膚病理部

Elenitsas

教授のもと

で研修させ

て頂きました。育児中で英

会話に通う余力なく渡米し

ましたが、厳しかった聖愛

で学んだ英語が役に立ちま

した。

 

帰国後週三→週四→週五

+日直と徐々に増やし、二

〇一三年一月に第二子出産

後、生後二か月で敷地内の

ひろだい保育園に預け四月

一日~復帰しました。弘前

大の研究支援制度のおかげ

で細々と臨床研究を続け、

支えてくださる先生方や家

族のおかげで何とか診療を

続けております。皮膚科で

は女性医師が仕事を続けら

れる環境が整っており、研

修医の皆様に是非選択して

いただきたいです。〝育児

中もいろんな支援があれば

続けられるかも!〟と思っ

て頂ければと思い書きまし

たが、自分自身も〝医師〟

と〝母〟で精一杯でお恥ず

かしい限りです。今後とも

ご指導ご鞭撻のほどお願い

申し上げます。

青森県医師会男女共同

参画委員会委員便り

附属病院 

検査部 

助教 

皆 

川 

智 

若手教員・医師だより

 

弘前大学医学部ラグビー

部第五十二代主将の倉で

す。弘前大学医学部ラグ

ビー部は、創部五十二年の

間に、東医体八連覇(九九

~〇六)、三連覇(一一~

一三)、準優勝(一〇、一五、

一六、十七)、東北リーグ

一部所属という、輝かしい

成績を誇る歴史と伝統ある

部活であります。我々ラグ

ビー部は週三回、少ない時

間の中で明るく楽

しく中身の濃い練

習をモットーに活

動を行っていま

す。そして、夏は

バーベキュー、冬

はスキー合宿など

楽しいイベントも

盛りだくさんで

す。オン・オフは

どの部活よりも

しっかりしてい

て、自分自身の時

間も十分持てま

す。楽しい有意義

な学生生活をお探

しなら、ラグビー

部に入るべきで

す。部員は、現在

プレーヤー二十七

名、マネージャー

七名の計三十四名

で活動しておりま

す。私自身、ラグ

ビーを始めたのは

中学一年生の時で

した。今年で、と

うとう十年目にな

ります。私のように、ラグ

ビー経験者はプレーヤーの

中に二、三割しかいませ

ん。つまり、未経験者が大

半である、ということで

す。経験者がいるから強い

というよりは、むしろ、未

経験者の人たちが上達する

ことで、〝部〟が強くなる

のです。新入生の皆さん

に、私がラグビーを始めた

部活動紹介

医学部医学科三年 

倉   

諒 

 医学部ウォーカー第六十九

号から本紀行を綴りはじめて

四年になります。多くの方々

に読んでいただいている望外

の喜びです。しばしば尋ねら

れる質問と回答ですが、⒜連

載の温泉はすべて行ったので

すか→はい、その多くが複数

回尋ねています;⒝何処から

情報を入手するのですか→温

泉好きのウェブからが多いの

ですが、歴史は古書(下記)

を参照しています;⒞どこの

温泉が良いですか(難題中の

難題)→すべての温泉は個性

があり最高ですが……あえて

と申されれば、昭和的な銭湯

では桜ヶ丘温泉(第一湯)・

松崎温泉(第四湯)、スーパ

ー銭湯系では津軽おのえ温泉

(福屋)・館山温泉(からんこ

ろん温泉)、一日ゆっくり過

ごす一軒宿では夏瀬温泉・日

景温泉、風情ある温泉宿では

渋温泉金具屋・強首温泉樅峰

苑・鉛温泉藤三旅館・銀山温

泉街でしょうか。

 津軽おのえ温泉(第六十五

青森市白羽

二十二時

迄)は「福屋」として名が知

れており、弘南鉄道柏農高校

前駅近くで老若男女問わず人

気の温泉である。以前は、新

町屋温泉フラワーランド憩い

の湯と称していました。アル

カリ性単純温泉ながら、薄黄

色でわずかな鉱物系の湯の花

が含まれている柔らかな湯で

津軽おのえ温泉

(福屋)

館山温泉

(からんころん温泉)

夏瀬温泉

(仙北市)

日景温泉

(大館市)

⑯鬼 

島   

(病理生命科学講座・教授)

す。

 館山温泉(第六十六湯

川市館山

二十二時迄)は、

「からんころん温泉」として

親しまれています。癖のない

無味無臭透明のアルカリ性単

純温泉ですが、すべすべで温

まる湯感が支持を受けている

のは十分に理解できます。開

放感ある露天風呂も心地よい

ものです。

 夏瀬温泉(県外編第十二

秋田県大仙市)は、平成

十七年に妙乃湯(乳頭温泉郷)

姉妹館として再開した一軒宿

です。芒硝成分を含むナトリ

ウム・カルシウム・硫化塩泉

ですが、澄んだ柔らかな湯で

す。各客室にある露天風呂で

は自然と温泉との調和がじっ

くり楽しめます(写真)。特に、

送迎(角館ないし国道四十六

号)が唯一のアクセスとなる

静かな冬期に訪れたい。

 日景温泉(県外編第十三

秋田県大館市)は、一時

閉館していましたが、経営者

が変わり平成二十九年に改修

後に再開しました(写真)。

以前と変わらず質の高い硫黄

泉(含硫黄・ナトリウム・塩

化物泉)は入湯者を癒してく

れます。一方で、改修後は、

客室にテレビが無くじっくり

と過ごす空間づくりを心掛け

ているようですので、是非と

も一泊してその魅力を味わい

たい温泉宿です。

 処で、一時期閉館していた

温川温泉(平川市)も平成二

十九年に再開しましたが、現

在は冬期休業中ですので初夏

の開業の頃に改めて紹介いた

します。後継者不足や老朽化

等の理由で閉館する温泉が少

なくない中、新たなコンセプ

トの下で再開してくれる温泉

は訪れることで応援したいも

のです。

【参考図書】 日本案内記東北編

(鐵道省・昭和四年)、温泉案内

(運輸省観光部・昭和二十五年)、

青森県温泉の旅(酒井軍次郎・

宮城一男:昭和四十五年)、青

森温泉風土記(松村慎三・斎藤

祐司:昭和四十五年)など。

(次ページへ続く)

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医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日

は続々と増え現在はマネー

ジャーも含め二十九人もの

大所帯となり、これからに

期待が高まる限りです。

 

東医体のない現在は七月

 

弘前大学医学部写真部は

現在部員数八十三名という

大所帯で活動しておりま

す。と言いましても写真部

の正式な活動は年二回の写

真展(春季写真展、冬季写

真展)のみであり、全員が

一堂に会することは非常に

まれな部活です。その分、

部員にはいろいろな人たち

がいます。日ごろから写真

を撮り写真の技術がとても

高い人、他の部活と兼部し

ながらも非常にクオリ

ティーの高い作品を出展す

る人、写真は趣味程度でむ

しろほかの活動に重きを置

いている人などなどです。

部内でも部としての写真の

レベルの低下を心配する声

もありますが、私はこの多

様性こそが医学部写真部の

魅力だとも感じておりま

す。

 

自転車とは日々の通勤通

学などの移動をスムーズに

素早く、便利にしてくれ

る。自転車競技というス

ポーツはここから「素早

く」だけを切り取

り特化させた「ど

れだけ速くスター

トからゴールまで

自転車でたどり着

くか」を競う競技

です。弘前大学医

学部自転車競技部

は二〇一四年に発

足したばかりで他

の部活よりはまだ

日の浅い部活であ

り東医体も二〇一

四年以降、開催は

されておりませ

ん。しかし発足か

ら三年がたち部員

 

現在、デジタルカメラの

普及・技術進歩により銀塩

カメラが主流だった時代に

比べ、素人の写真のレベル

が格段に上がっていると言

われています。そんなデジ

タルカメラ主流の中で私た

ちの部活では銀塩カメラを

主として作品作りを行って

います。部室の隣には暗室

もあり、フィルムの現像か

ら印画紙への引き延ばしの

作業まですべて自らの手で

行っています。銀塩カメラ

は撮った写真を現像される

まで確認することができ

ず、さらにとる枚数もフィ

ルムによって定められてお

り、費用もかかります。し

かし、手間がかかる分、一

枚のシャッターにかける熱

量や作品に対する愛情がデ

ジタルカメラに比べ大きい

です。多くの部員は入部し

自転車競技部

医学部医学科三年 

弘 

世 

航 

に北海道ニセコ町で行われ

るUCI(国際自転車競技

連合)公認の大会「ニセコ

クラシック」を中心に据

え、秋田大学や札幌医科大

学などの自転車競技部や地

域のライダーとも交流を深

めつつ大会に参加していま

す。普段の練習では弘前市

内から遠くて竜飛崎、八戸

といった青森県中を活動し

ています。自転車はレース

だけでなく観光メインで乗

るファンライド、ロングラ

イドもとても魅力的なス

ポーツです。青森県内は景

観のきれいなところが多く

特に春には奥入瀬渓流、夏

には新緑の木々、秋には

城ヶ倉で紅葉が楽しめるな

ど、ルートに困らないのが

素晴らしく青森の季節の機

微を余さず見ることができ

ます。冬はさすがに自転車

には乗れないですが部室で

ローラーと呼ばれる室内ト

レーニング器を利用しつつ

筋トレに励むなどしてオン

シーズンに備えています。

 

自転車競技部も四年目へ

と突入します。今年も部員

一同、大会での好成績目指

して練習に励みつつ自転車

を目いっぱい楽しめたらと

思っております。

医学部医学科四年 

一 

戸   

て初めて本格的にカメラに

ふれますが、学年が上がる

につれ一年のときには想像

できないほど素晴らしい作

品を作るようになります。

 

これから、銀塩写真の需

要の低下に伴い、ますます

作品作りや活動にかかる費

用が増していくことが予想

されますが、これからも暗

室などの場所を提供してく

ださっている大学や、寄付

金を下さるOB、OGの先

生方への感謝を忘れずによ

りよい作品を作っていきた

いと思います。もしお時間

がございましたらぜひ写真

展にも足をお運びください。

(前ページより)

きっかけでもある魅力を一

つ紹介したいです。それ

は、ラグビーには十五人そ

れぞれに違う役割があると

いうことです。誰にでも必

ず自分に適したポジション

があります。体の小さい

人、大きい人それぞれの役

割を果たし、それらが一つ

となることでチームにトラ

イがもたらされるのです。

その全員で勝ち取ったトラ

イ、そして勝利というの

は、個人競技では得ること

のできないものだと私は

思っています。そして、一

つ新入生の皆さんに共通し

て憶えておいてほしいこと

があります。それは、部活

動を選ぶにあたって一番大

事な事は、その部活動を通

していかに自分が〝成長〟

できるか、ということで

す。新入生の皆さんは六年

間の長いようであっという

間の学生生活を終えると、

すぐに研修医として、臨床

の現場に立つことになりま

す。そこで必要とされる知

識はもちろん、精神的強

さ、バイタリティ、チーム

ワーク、マナー等を身に着

けなければなりません。ラ

グビーという競技は数ある

スポーツの中でもトップク

ラスにタフでハードなス

ポーツです。それゆえ、学

業とラグビーを六年間両立

させることができれば、自

分の想像以上に精神的・肉

体的にも成長することがで

きるはずです。

 

最後に、この文章を読ん

でくれた新入生の方へ。ぜ

ひ部活でお会いしましょ

う。

春季写真展 6/16、17冬季写真展 12/8、9  @弘前文化センター

2018年度

 

本書(整形外科学講座 

授 

石橋恭之著)はスポー

ツ障害の一つである疲労骨

折の診断、治療についてま

とめたものである。これま

では疲労骨折の約八割は

中・高校生に発生している

とされてきたが、近年では

競技スポーツの低年齢化、

健康スポーツの普及により

幅広い年齢層において増加

傾向である。疲労骨折は下

肢のみならず体幹から上肢

まであらゆる骨に発生する

ため、知識不足は見逃しに

つながる。また、一部の難

治性疲労骨折は保存治療に

対して抵抗性であるため手

術治療を要することがある

が、早期診断により保存治

療が可能な場合もある。ス

ポーツ選手にとっての治療

のゴールは早期に受傷前の

競技レベルに復帰するこ

とであり、積極的な治療

介入が必要である。

 

第一章では疲労骨折に

ついての基礎知識に関し

て疫学、骨の組織像、生

物学的反応、骨代謝、物

理特性、疲労骨折の生体

力学について記述されて

いる。第二章では疲労骨

折の診断において最も重

要である病歴聴取のポイ

ント、画像検査、治療法

(保存治療、手術治療)

について記述されてい

る。また、疲労骨折の治

療において重要なことは

再発予防であり、リハビ

リテーションプログラム

の立案・実践に関する知識

も紹介されている。第三章

では競技種目特性と疲労骨

折との関連性や近年問題視

されている、利用可能エネ

ルギー不足、視床下部性無

月経、骨粗鬆症の三主徴を

基盤とした「女性アスリー

トの疲労骨折」について解

説されている。第四~七章

では下肢、体幹、上肢に発

生する特徴的な疲労骨折の

発生メカニズム、診断、治

療のポイントについて発生

部位ごとに

記述されて

いる。第八

章では難治

性疲労骨折

に対する手

術治療の適

応や手術手

技、後療法

附属病院 リハビリテーション科助教 佐々木   静

に関する要点がまとめられ

ている。時に正常な骨に繰

り返しストレスが加わるこ

とで発生する疲労骨折は病

的骨折や脆弱性骨折と鑑別

を要することがある。病的

骨折は局所的な骨強度の低

下により軽微な外力によっ

て発生するものであり、脆

弱性骨折は骨粗鬆症により

強度が低下した骨に軽微な

外力が加わって非外傷性に

発生する骨折である。第九

章ではこれらを踏まえて日

常診療で遭遇する頻度の高

い骨腫瘍類似疾患、高齢者

に多く見られる骨粗鬆症性

椎体骨折や大腿骨近位部骨

折について解説されてい

る。

 

日本のスポーツ界は二〇

二〇年に開催される東京オ

リンピックに向けて今後

益々の盛り上がりを見せて

いくことが予想される。ス

ポーツ医学に関わる全ての

職種の方々において、本書

を通じてスポーツに関連す

る疲労骨折の診断、治療と

再発予防に関する知識を深

めていただきたい。

パーフェクト

疲労骨折

書籍発刊

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医学部ウォーカー第 84 号 平成 30 年 3 月 20 日

 

薬剤学講座には、現在教

授一名と事務一名が在籍し

ております。薬剤学講座

は、病院薬剤部と連携しな

がら、医薬品の適正使用に

関わるテーマで研究を行っ

ております。薬剤師は病棟

で患者さんに対して服薬指

導を行ったり、副作用を確

認したりする過程におい

て、「なぜこの患者さんで

は他の患者さんと異なる症

状が認められるのだろう」

等のようなクリニカルクエ

スチョンに直面します。こ

れらを理論的に解決するた

めには、検証可能なリサー

チクエスチョンに構造化

し、臨床研究へ繋げていく

必要があります。薬剤学講

座では、臨床現場で見出し

た課題を、薬物動態学、薬

力学、遺伝薬理学、および

薬剤経済学的アプローチで

解決し、医薬品の適正使用

を支援するための研究活

動を行っております。その

一つが、T

herapeutic drug m

onitoring

(TDM)に関

する研究、すなわち、効果

や副作用発現の違いを、生

体試料中の薬物濃度レベル

から予測する研究です。近

年、薬物代謝酵素やトラン

スポーターの遺伝子多型が、

薬物服用後における効果や

副作用発現に影響を及ぼす

ことが明らかになってきま

した。現在、診療報酬とし

て算定が認められている薬

物動態関連遺伝子多型解析

は、イリノテカン投与時に

おけるU

GT

1A1

*6

および

*28

の解析のみですが、

CYP3A

5

*3

やCYP2C19

*2

 

弘前大学医学研究科脳神

経内科教室は、平成十八年

一月に東海林が弘前大学に

赴任して現在に至ってい

る。それまでの脳神経血管

病態研究施設研究部門と第

三内科神経グループが統合

されて、脳神経学講座とし

て新設された教室であり、

現在も脳神経血管病態研究

施設の一部門として、研究

開発の役割も担っている。

 

教育面では四年生系統講

義、五年生のBSLと六年

生のクリニカルクラーク

シップを担当し、全国から

招聘した著名な先生ととも

に本格的な神経内科学教育

をおこなっている。卒業生

が務める全国の施設からの

お褒めの評価もいただき、

専門医も巣立ってきた。

 

診療面で青森県全域をは

じめとして道南、北東北一

円における唯一の大学附属

病院診療機

関として、

この十年で

約九千人の

外来患者と

千百例の入

院を受け入

れ、脳炎な

どの救急疾

患や多発性

硬化症を始

めとした多

彩な自己免

疫性疾患か

ら神経難

病、認知症

まで広い領

域をカバー

し、最後の

拠り所とし

ての高度専

門医療を

行っている。特に、もの忘

れ外来や神経変性疾患外来

は全国的にも著明となり、

日本での牽引役として、ス

タッフが五人、病棟が九床

と限られたなかでも多くの

実績を示してきた。

 

研究面では、注目されて

いるA

lzheimer

病(AD)

を始めとする神経変性疾患

を対象に、病態解明と病態

修飾薬の開発を行ってき

た。A

ß oligomer

による記

憶障害の発症機序解明や、

抗Aß oligom

er

抗体と組み

替え大豆A

ß

ワクチンを用

いた病態修飾薬の開発と

臨床応用を行っている。

多くのA

ß amyloid

および

tauopathy

モデルマウスを

開発するとともに、病態変

化や行動障害の評価の国際

標準化を行い、病態修飾薬

臨床・脳神経内科学講座

脳神経内科学講座 

教授 

東海林 

幹 

開発を迅速に推進するシス

テムを確立した。脳脊髄液

やtau

測定がAD発症

の最も有用なバイオマー

カーであることをこれまで

明らかにしてきたが、血漿

のAß

42

、Aß

oligomer

α-synuclein

やtau oligomer

などのより侵襲性の少ない

マーカーを開発を進めてい

る。この十年間にグローバ

ルに行われたA

DN

I-1

AD

NI-2

研究へ貢献すると

ともに、現在最も先端的な

家族性ADのグローバルな

観察研究(D

IAN

-obs

)を

行っているワシントン大学

と国内の十五施設とともに

DIA

N-Japan

を立ち上げた。

国際共同研究としての標準

化や法的適合性の調整を行

い、AMEDとNIAの支

援のもとに本年から本格的

DIAN研究の施設承認のために弘前を訪問されたワシントン大学Morris教授と当科スタッフ

臨床・薬剤学講座

薬剤学講座 

教授 

新 

岡 

丈 

および

*3

などの遺伝子多

型も、少なからず基質とな

る薬物の動態に影響を及ぼ

します。本研究では、薬物

動態関連遺伝子多型解析が

様々な領域における医薬品

の効果や副作用発現予測法

として臨床応用されるよう

検討を進めております。ま

た、わが国では高齢者にお

ける多剤服用問題、すなわ

ちポリファーマシー対策が

急務となっております。多

剤服用時においては、有害

な薬物相互作用が起こりや

すくなるため、可能な限り

服用薬剤数を減らす必要が

あります。しかし、実臨床

においては併用が避けられ

ない場面も少なくありませ

ん。したがって、薬物相互

作用時における有害反応の

強弱や、薬物血中濃度の上

昇/低下レベルの個体差要

因を明らかにし、これらの

要因に基づく用法用量調節

法を確立することも、重要

な研究テーマの一つとなり

ます。特に我々は、複数の

代謝経路や輸送経路を有す

る薬物の使用時において、

遺伝的要因や併用薬などに

より、同時に複数経路の活

性に影響が及び、体内動態

が著しく変化する相互作用

に注目しながら研究を行っ

ております。加えて、近年

次々に登場する高額な医薬

品の費用対効果分析や、不

適切な抗菌薬の使用による

耐性菌の増加を防止するた

めの使用動向調査などの疫

学研究も、地域全体で推進

していきたいと考えており

ます。病院薬剤師が診療と

研究のバランスを保ちなが

ら研究活動を継続していく

ためには、薬物療法適正化

に繋がる研究テーマと個々

の研究マインドが必要不可

欠となります。これからも

医師と信頼関係を築きなが

ら共同研究を実践し、患者

さんのために役に立つ研究

成果を残せるよう、薬剤学

講座・薬剤部スタッフ一

同、努力して参りますの

で、宜しくお願い致しま

す。

弘前大学医学部附属病院 薬剤部スタッフ一同

 現在(二月下旬)我が医

学部は年度末の試験真っ只

中である。真夜中であるに

もかかわらず、校舎の中で

は勉強をしている学生の姿

をあちらこちらで見ること

ができる。進級がかかって

いるので、学生達も必死で

あるが、試験前にインフル

エンザを発症し、いきなり

追試確定している悲惨な生

徒もいる。この時期は生徒

同様に教官も忙しい。とい

うのも、科目によっては比

較的短い期間に大量の採点

をしないといけないからで

ある。さらに、合否判定の

後、場合によっては追試験

の準備もしないといけな

い。また、自動的に追試の

採点もついてくるという特

典つきである。しかしなが

ら、今回私の担当している

とある科目では答案量に比

べて採点は比較的楽であっ

た。二時間かかるかなと

思ったら四十五分くらいで

終わってしまった。なぜか

というと白紙答案が多かっ

たからである。きっと学生

の皆さんが教官のことを考

えて回答量を少なくしてく

れたのに違いない、ってそ

んなはずがあるわけない。

白紙の答案は短期的には採

点の手間を省け私を楽にし

てくれるが、長期的には結

局もっとお互い手間がかか

ることになるのだと思う。

採点が大変でもいいから、

追試では白紙の答案が少し

でも減ってくれるよう期待

している。

なグローバルなADの予防

治験を開始する(D

IAN

-T

U

)。また、この間、弘前

大学で行われているCOI

岩木プロジェクトやいきい

き検診、国立長寿医療セン

ターのオレンジレジスト

リー等の国家的な研究プロ

ジェクトを支援するととも

に、各種企業と薬物第一~

三相臨床試験やバイオマー

カー開発支援を行い、神経

変性疾患の診断と治療の進

歩に貢献している。

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医学部ウォーカー第 84 号平成 30 年 3 月 20 日 「ATVテレビ診察室」

一月十四日の放映回に、「冬

の皮膚トラブル~暖房器具

が皮膚に及ぼす影響~」と

いうテーマで出演いたしま

した。皮膚科の外来を受診

される患者さんの症状は、

季節によって異なります。

なぜなら、皮膚症状が環境

因子に起因することが少な

くないためです。例えば、

夏に多い疾患として虫刺さ

れ、とびひ、日焼けなどが

例として挙げられます。今

回は冬に放映されるという

ことから、冬に多い疾患で

あること、かつ視聴者に予

防や注意喚起ができる内容

をと考え、上記のテーマを

選びました。

 

皮膚トラブルその一

は乾燥肌(ドライスキ

ン)。冬は皮膚を乾燥

させる外的要因(低

温、低湿度、気流)が

顕著になります。さら

に、暖房器具を使うこ

とで室内の相対湿度が

低下するので、乾燥肌

が悪化して皮膚炎や激

しい痒みを引き起こし

ます。また、皮膚の最

外層にある角層が保湿

機能における重要な役

割を担っていますが、

加齢に伴い角層の保湿

因子が低下してくるた

め、乾燥肌で皮膚科を

受診される患者さんの

多くは高齢者です。部

屋の加湿(湿度四〇~

六〇%が理想)、毎日

の保湿ケアで角層を整

えること。シンプルで

すが、この二つが乾燥

肌の有効な予防策で

す。皮膚トラブルその

二は低温熱傷。低温熱

傷は、六〇℃以下の熱

源による熱傷と一般的

 

このたび、ATVテレビ

診察室に『子どものネット

依存』というテーマで、平

成二十九年五月二十一日、

二十八日の二週にわたり出

演させていただきました。

収録では、あらためてテレ

ビ番組作成の専門家の手際

の良さに驚かされ、また女

性の司会役である千葉アナ

ウンサーの適切なリードの

もとにスムーズな進行を経

験することができました。

平成二十六年にスマホのL

INE(無料通話・無料ア

プリケーションのSocial

Netw

orking Service

(以下

SNS))利用者が全国的

に増加し、平成二十八年の

青森県「青少年の意識に関

する調査」結果報告書から

も分かるように、中学生で

の携帯・スマホの所有状況

が「五八%」(高校生に至っ

ては「一〇五・四%」)となっ

ている現在、小中学生から

の使用を前提とした啓蒙、

指導が必要となってきまし

た。なぜなら、ネット依存

による心の健康問題を調べ

てみると、感情をコント

ロールできなくなる、ネッ

トをしていない時の意欲低

下が著しい、自己中心的な

考えに傾く、思考能力が低

テレビに

出演して

「ATVテレビ診察室」に出演して

皮膚科学講座 

助教 

滝 

吉 

典 

に定義され、原因となる暖

房器具の代表が湯たんぽで

す。原因として湯たんぽが

多い理由は、近年のエコ

ブームで湯たんぽを使用す

る家庭が増えているという

背景があるようです。湯た

んぽのような接触型の低温

熱傷は、深い潰瘍を形成す

ることがあるので、要注意

です。そのほか、ヒーター

や電気ストーブなどの温風

による非接触型の低温熱傷

もあります。

 

今回とりあげたのは誰も

が知っている疾患で、予防

策もいたってシンプルで

す。そのようなごく身近な

疾患が、どういうメカニズ

ムで起こるかということを

理解していただけるよう

に、わかり易い解説を心が

けました。少しでも視聴者

の皆さんのお役に立てたこ

とを願っています。

「ATVテレビ診察室」に出演して

子どものこころの発達研究センター 

特任准教授 

栗 

林 

理 

 

本学に赴任してから一年

が経ち、大学や弘前という

街にも慣れてきました。雪

があまり降らないところに

住んでいた人間は、雪が降

ると興奮するもので、弘前

に来てから冬場はテンショ

ン上がりっぱなし!です。

大阪から青森というと、都

会から田舎というイメージ

を持たれがちで、確かに大

阪は梅田や心斎橋は大都会

ですが、私がいた阪大吹田

キャンパスは大阪の北の外

れにあるため、野生の猿や

雉が出没するようなところ

で、これで犬を飼えばセッ

トが揃います。最近も、ア

ライグマがキャンパスに住

みついて、学内に警報が発

24 公益

公益社団法人 青森医学振興会

下する、攻撃的になる、睡

眠不足でいつも居眠りをし

ている、などがあげられて

いるからです。最近では、

青少年がSNSをめぐって

様々な事件に巻き込まれた

りすることも目立ってきて

おります。

 

したがって、青森県内の

子どもたちがSNSの使用

をめぐり、過度の集中や依

存といった状況に陥ること

なく、適正な距離を保ちつ

つ、SNSに向き合ってい

けるようになることを願

い、ネット依存に対する「予

防」と「治療」についてお

話させていただきました。

 

最後に、このような機会

を与えて下さった青森県医

師会の皆様に心より感謝申

し上げます。

令され(笑)、野生の王国

状態です。大学周辺にはあ

まり飲食店も無く、飲み会

といえば車か電車で移動し

なければならないのでたい

そう不便でしたが、弘前で

は大学のすぐ近くに繁華街

があるので、至極便利です

(但し、飲み過ぎ注意!)。

つまり、弘前の方が格段に

都会で、大阪から弘前に

戻ってくる度にクリスタル

キングの「大都会」が頭の

中で鳴り響きます。という

ことで、グローバルな特徴

とローカルな特徴は結構違

い、これは私が研究してい

る核内事象についても言え

ることで、先入観無く対象

を見なければならないと思

う今日この頃です。

(藤井 

記)

人 事 異 動(H29.12.1 ~H30.2.28)

⃝医学研究科【採用】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属H29.12.1 女性の健康推進医学講座 助手 當麻 絢子 産科婦人科 医員

【昇任】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属H30.2.1 循環器腎臓内科学講座 講師 藤田 雄 循環器腎臓内科学講座 助教

H30.2.1 整形外科学講座 講師 熊谷 玄太郎 整形外科学講座 助教

【配置換】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属H30.2.1 循環器腎臓内科学講座 准教授 佐々木 真吾 不整脈先進治療学講座 准教授

H30.2.1 不整脈先進治療学講座 准教授 木村 正臣 高血圧・脳卒中内科学講座 准教授

⃝附属病院【採用】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属H29.12.1 消化器外科,乳腺外科,甲状腺外科 助教 澤野 武行 消化器外科,乳腺外科,甲状腺外科 医員

【辞職】発令日 所   属 職 名 氏  名 前 所 属H30.2.28 循環器内科,腎臓内科 助教 横山 公章 榊原記念病院

称  号 氏  名 所   属 期   間診療准教授 米山 高弘 泌尿器科 平成29年12月1日~平成32年11月30日

診療教授・診療准教授称号付与者(H29.12~H30.2)