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1 環境セミナー 脱炭素時代に向けた未来型風力船開発の現状 20191031日本海事協会 技術部 部長 池田 久司 「風力を利用した船舶補助推進装置の 設計に関するガイドライン」 のご紹介

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Page 1: 「風力を利用した船舶補助推進装置の 設計に関するガイドライン … · 風力関連技術の進展や業界からのフィードバックに応じて、ガイドラインの

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~ 環境セミナー ~ 脱炭素時代に向けた未来型風力船開発の現状 2019年10月31日

日本海事協会 技術部 部長 池田 久司

「風力を利用した船舶補助推進装置の 設計に関するガイドライン」 のご紹介

Page 2: 「風力を利用した船舶補助推進装置の 設計に関するガイドライン … · 風力関連技術の進展や業界からのフィードバックに応じて、ガイドラインの

目次

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1. 背景

2. ガイドラインの思想と構成

3. ガイドラインの規定内容

4. 今後の運用

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海運業界における環境規制

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国際海運からのGHG排出削減戦略 2050年までに ... 総排出量50%削減 (2008年比) 今世紀中のなるべく早期に ... 総排出量ゼロ

削減目標達成のための対策 代替燃料化 燃料電池 再生可能エネルギー 運航最適化 ・・・ 風力エネルギーの利用

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風力推進装置の過去と現在 [1/4]

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紀元前~19世紀

帆船の登場

蒸気機関の登場まで海運の主役として活躍

http://mankanshoku.blog.jp/ https://www.jmets.ac.jp/

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1980~90年代

・・・

風力推進装置の過去と現在 [2/4]

船の科学 1980-12, 世界の艦船 1985-3

オイルショックを受け、 「新愛徳丸」をはじめとする 帆走商船が登場

タンカー、ばら積み貨物船、 一般貨物船に高さ20m程の 鋼製帆を搭載し燃費削減

メンテナンスや操作性の問題、 油価の安定を受け徐々に衰退

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近代 (21世紀~)

_帆式_ http://wind.k.u-tokyo.ac.jp/

_けん引凧式_ https://www.airseas.com/

_回転円柱式_ https://www.norsepower.com/

・・・

風力推進装置の過去と現在 [3/4]

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近代 (21世紀~)

風力推進装置の過去と現在 [4/4]

近代の風力装置の特徴: 構造の大型化・複雑化

オペレーションの高度化 (自動制御システム、ウェザールーティン)

関連技術の発展による設計のバリエーション増加

対応のため、専用のガイドラインの整備

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ガイドラインの制定

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2019年 9月4日 「風力を利用した船舶補助推進装置の設計に関するガイドライン」を発行

(ガイドライン本文はClassNKマイページからダウンロード可能) https://www.classnk.or.jp/account/ja/Rules_Guidance/ssl/login.aspx

[Japanese] [English]

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目次

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1. 背景

2. ガイドラインの思想と構成

3. ガイドラインの規定内容

4. 今後の運用

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適用

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ガイドラインの適用対象:

風力を原動力として船舶の推進機関として機能する装置、かつ

船舶の推進補助のため使用される装置

※ すなわち、船舶の主推進機関となる風力装置には適用されない

本ガイドラインが適用された装置が搭載される船舶に対して 特別な船級符号を付与

- EQ WAPS-S: 帆式装置 - EQ WAPS-R: 回転円柱式装置 - EQ WAPS-K: けん引凧式装置

(Equipped with Wind-Assisted Propulsion System – Sail / Rotor / Kite の略号)

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ガイドラインの位置付け

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風力装置として多様なデザインが存在している 風力装置は開発途上の分野であり、新技術の登場も想定される 現状で十分な風力装置の設計 / 搭載 / 運用実績がない

ガイドラインの方針として:

設計の自由度が確保されるよう、風力装置全般に共通の機能要件、最低限の設計条件までを規定する内容とする

装置の特性に応じた詳細の取扱いについては、ガイドラインの思想に基づき、個別に協議する形を想定する

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章構成

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1章 一般 1.1 適用 1.2 同等効力 1.3 機能要件 1.4 機関,電気及び制御設備 1.5 船級符号への付記 1.6 用語の定義 2章 リスクの評価 3章 荷重 3.1 荷重ケース 3.2 空力荷重 3.3 重力及び慣性荷重 3.4 その他の荷重

4章 構造設計 4.1 一般 4.2 組合せ荷重に対する強度 4.3 座屈強度 4.4 疲労強度 5章 材料及び接合 5.1 材料 5.2 接合 6章 搭載船の設計に関する事項 7章 作業及び保守点検 7.1 オペレーションマニュアル 7.2 メンテナンスマニュアル 7.3 構造の保全 8章 検査 8.1 適用 8.2 登録検査 8.3 定期的検査

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想定されるデザインフロー

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安全性の確認 設計完了

初期 仕様/ オペレーション決定

コンセプト立案

適用

機能要件

荷重

構造設計

リスクの評価 機関、電気 及び制御設備

保守点検 検査

材料及び接合

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目次

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1. 背景

2. ガイドラインの思想と構成

3. ガイドラインの規定内容

4. 今後の運用

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1章 機能要件 / 2章 リスクの評価

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1章 – 1.3 機能要件 -1. 風力装置は次の機能要件に適合するよう設計されなければならない

-2. 装置の安全性及び信頼性

-3. 操作の安全性及び信頼性

-4. 故障に対する耐性

-5. 人員及び環境の保護

-6. 船舶への影響

-7. 適合性の判定

2章 リスクの評価

人員、環境及び船体の構造強度又は保全性に対するリスクについて検証するため、 リスク評価を行わなければならない

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3章 荷重 [1/2]

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3章 荷重 3.1 荷重ケース

→ 通常運転状態/停止状態/特殊状態を考慮

<通常運転状態>

船舶推進補助のため 風を受ける状態

<特殊状態>

その他、 故障シナリオ、i 事故シナリオ等

<停止状態>

風を受けないよう 縮帆、格納されている状態

Wind Wind

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3章 荷重 3.2 空力荷重

装置の仕様、オペレーションをもとに 適切な設計荷重を設定 3.3 重力及び慣性荷重

3.4 その他の荷重

<空力荷重>

風による荷重

<重力及び慣性荷重>

船体の運動による荷重

<その他の荷重>

青波荷重、衝突荷重、 氷荷重など

3章 荷重 [2/2]

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4章 構造設計

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4章 構造設計 4.2 組合せ荷重に対する強度(降伏強度)

4.3 座屈強度

4.4 疲労強度

それぞれの荷重ケースに対して、 最も厳しい荷重の組合せを考慮して 装置の構造強度を計算

安全率として腐食の影響を考慮

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6章 搭載船の設計

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6章 搭載船の設計に関する事項

装置が本船に与える 以下のような影響について考慮する

操縦性能 復原性 船橋視界 無線設備の機能 航海灯の機能 装置の出力による船速の増大 装置の振動と本船の動揺の同調 艤装数 トン数 ・・・

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7章 保守点検 / 8章 検査

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7章 作業及び保守点検 7.1 オペレーションマニュアル

→ 通常時及び緊急時の操作、オペレーションを示す

7.2 メンテナンスマニュアル

→ 保守点検のためのマニュアルを作成し、定期的な点検と記録を行う

7.3 構造の保全

→ 構造の腐食や劣化を防止するための措置を講じる

8章 検査 8.2 登録検査

→ 図面審査、工事の検査、負荷試験、作動試験を行う

8.3 定期的検査

→ 装置の特性に応じた計画を策定し、それに基づいた検査を行う → (搭載船の検査のタイミングを標準とする)

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1. 背景

2. ガイドラインの思想と構成

3. ガイドラインの規定内容

4. 今後の運用

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今後の運用計画

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風力関連技術の進展や業界からのフィードバックに応じて、ガイドラインの

規定内容は継続的に改正していくことを予定

風力装置に関する知見や実績が一定以上蓄積された段階で、 個別の装置の種類(帆式、回転円柱式、けん引凧式など)に対する より詳細なガイドラインの整備を計画する予定

風力装置の設計審査のご要望があれば、本ガイドラインに基づき 対応いたします

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A World Leader in Ship Classification.