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H29.7.30 食の安全と安心フォーラムXIII 食物アレルギーのリスク管理と低減化策に関するフォーラムIII フォーラム開催に当たって 最近の食物アレルギー事情 とリスク管理 SFSS理事・低アレルギー食品開発研究所 小川

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H29.7.30食の安全と安心フォーラムXIII

食物アレルギーのリスク管理と低減化策に関するフォーラムIII

フォーラム開催に当たって

最近の食物アレルギー事情

とリスク管理

SFSS理事・低アレルギー食品開発研究所

小川 正

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食物アレルギー患者の安全かつ健全な食生活(QOL)を確保するには

食品・食事を扱う全ての関係者が

食物アレルギーのリスクコミュニケーション、リスク評価、リスク管理において

欠かせないアレルギー発症に至る感作メカニズム

に関する基礎知識を共有することが必要

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免疫システム

IgE

IgG

食と健康・放送大学出版協会

分化

異物

(液性免疫)

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Th2

食物アレルギー発症に至る感作の過程(① ④)

sIgA

sIgA

sIgA

AG

AG

AG

M TTh1 B

B

MM

AG

IL-2

IgG

IgE

IL-4

INF-

化学伝達物質化学伝達物質

アレルギー症状の惹起 肥満細胞

抗原提示

T細胞

B細胞

Antigen

抗原提示細胞

樹状細胞マクロファージ

消化管(小腸)

IgE

(アレルゲン)抗 原

分化

抗体産生

AG

脱顆粒

感染症等に対応

抗体産生

再侵入抗原

アレルギーに関与

侵入

侵入

侵入

架橋

異物

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エピトープ a エピトープbエピトープ c エピトープd

IgE抗体 a IgE抗体 bIgE抗体 c IgE抗体 d

アレルゲンたんぱく質

アレルゲンたんぱく質

*エピトープ・・・・・IgE抗体の結合(認識)する部位

アレルゲンたんぱく質の性質

アミノ酸がほぼ100個以上繋がっている(質量10、000以上)たんぱく質で、

エピトープ部位はアミノ酸5~8個のペプチド鎖に相当する。アレルゲン上に

は複数のエピトープが存在し、これに対応した複数のIgE抗体が産生される

(ポリクローナル抗体)。肥満細胞上で異なるIgE間で架橋が成立すると、情

報が細胞内に伝わり、脱顆粒や起炎性化学物質の放出により炎症が起こる。

と 特異的IgE抗体 の関係

-A-B--CC--DDDDDD--EEEEEE--F-G-H-I-

アミノ酸 5 残基

IgE

エピトープの構造

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アレルギー臨床症状を惹起するメカニズム多価抗原による肥満細胞上の特異的IgE抗体の架橋と脱顆粒

脱顆粒による化学伝達物質(ヒスタミン)の遊離

脱顆粒

多価抗原によるIgE抗体の架橋

顆粒 情報伝達②

肥満細胞

多価抗原(アレルゲンA)

糖鎖エピトープ

エピトープ a

エピトープ d

エピトープ c

*抗体が認識する(結合する)抗原上の部位

*エピトープa,b,c・・・各部位に特異的に結合する抗体 a,b,cが産生される

抗体c

情報伝達①

膜脂質からのプロスタグランジン類の産生・遊離

架橋

抗体b

抗体f

エピトープ b

抗体a

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細胞膜リン脂質の二重層

リン脂質

EPA、DHA(n-3系)

sn1ns3

Ara(n-6系)

脂肪酸(MUFA,SFA) グリセリン部

多価脂肪酸(PUFA)

COX

N-6系PUFAから産生される生理活性物質プロスタグランジンロイコトリエントロンボキサン

イコサノイド系起炎性物質アレルギー反応を激化する

PLA2切断部位

肥満細胞の細胞膜で起こる反応① と顆粒の化学伝達物質による反応②

喘 息アナフィラキシー

sn2塩基

皮膚炎

Ara:アラキドン酸

情報伝達②

情報伝達①

肥満細胞

細胞膜

脱顆粒による化学伝達物質(ヒスタミン)の遊離(アレルギー症状の惹起)

抗体c

アレルゲンA

リノール酸

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エピトープの性質(アレルゲンは加熱しても壊れない)

(アミノ酸5-8残基)

・シーケンシャル(鎖状)エピトープ(主としてこのタイプ)

・コンフォメーショナル(立体構造状)エピトープ(非常にまれなケース)

GF

ED

CBA

AB C

D E A B C Dheat denaturenative

IgE

IgE IgE

アレルゲンたんぱく質

アレルゲンたんぱく質

変性してもIgEの結合力は変わらない

変性するとIgEの結合力はなくなる

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食物アレルギー患者においてアレルギー症状が惹起されるための条件

1、異物分子(たんぱく質・アレルゲン)が体内に侵入

すること(皮膚、気道、消化管、血管)

但し、侵入した異物分子が免疫細胞に異物(たんぱ

く質・アレルゲン)として認識されるサイズである

こと、少なくとも分子量3000以上(アミノ酸約

30個以上のペプチドであること)が必要

3、この異物分子(たんぱく質・アレルゲン)に対して

特異IgE抗体が存在すること(産生されている)

4、この異物分子に対する抗体は複数(2種以上)の異なる

IgE抗体(ポリクローナル抗体)であること(IgE抗体に

よる架橋が成立する必須条件)

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特別用途食品・病者用食品(許可基準型) アレルゲン除去食品(例)

1、乳たんぱく質消化調製粉末 MA-mi

2、乳たんぱく質消化調製粉末 ニューMA-1

3、ビーンスターク ペプディエット

4、明治エレメンタルフォーミュラ

5、明治ミルフィーHP

6、乳たんぱく質消化調製粉末 低脂肪MA-1

*除去の方法はアレルゲンの低分子化(加水分解処理)

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「石鹸・茶のしずく」事件について(HPの解説から)

• 小麦そのものではなく、成分を抽出した加水分解小麦が原因でアレルギーを発症しているそうです。茶のしずくに使われた加水分解小麦はグルパール19Sというもので、分子が大きくても皮膚に吸収されるそうです。茶のしずくは分子が大きかった為にアレルゲンとなりアレルギーを誘発したのではないかとのこと。つまり。普通に小麦を摂取する以上に、急激に小麦成分を摂取したことになったのかと。花粉症なんかもそうですが、アレルギーとは、体内にアレルゲンが許容量以上入ってきたために、体の免疫システムが反応して発症するもの。恐らく、茶のしずく石鹸でアレルギーを発症しなかった方は、たまたま、人生それまでの小麦成分の摂取量が少なかったから出なかっただけで、茶のしずく石鹸を愛用したがために小麦成分を多く取得してしまったので、今後、いつ発症するかわからない恐怖と一生戦うことになるのではと思います。

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アレルギー反応惹起に至るリスクの発生要因

1、リスクの発生場所…自宅・保育園・レストラン

2、リスクの発生要因

・誤食・・・・・・・・自己の不注意、情報誤認・不足

・接触・・・・・・・・小麦粘土など

・吸入・・・・・・・・遊具(食材の入っていた袋・容器)

・調理用具・・・・共用によるコンタミ

・食事器具・・・・ビュッフェのトング、箸、スプーン

・表示事故(ラベル脱落)、大袋入り菓子(小袋)

3、外食・・ホテル、船、キャンプ:中食、惣菜

4、事故・・・・表示不足、情報誤認

5、情報共有不足(調理場作業員、配膳、発注・検収担当事務等

給食施設現場でのコミュニケーション等)

近藤先生の「ひやりはっと」より

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リスク回避のための条件

1、患者の感作アレルゲンの正確な診断;食品だけでなく

アレルゲン分子も、発症(惹起)閾値等

2、摂取食材中のアレルギー食品(アレルゲン分子)

の存在有無(含有量)と情報提供

3、食品表示に必要な正確・高感度分析法の

確立および発症(惹起)閾値の評価

4、行政(業界)による食品提供関係者の教育・研修

5、食育活動による消費者(摂取者・患者)の教育・研修

6、新規・交差アレルギーへの理解と対策(医師・行政)

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これからの食物アレルギー対策

1、アレルギー食品の同定だけでなく

アレルゲンたんぱく質の検索

2、アレルギー発症に至る摂取アレルゲンの量

閾値の把握

3、偽アレルゲンの排除

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接触皮膚炎患者の感作アレルゲン

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Immunoblot against soybean proteins with patient’s serum

A: Proteins, Amido black staining; B: Immunoblot with patient’s serum

30K

20K

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アレルギー食品の閾値(EFSAの助言)

欧州食品安全機関(EFSA・2014年10月 )はアレ

ルギー食品中のアレルゲンたんぱく質の閾値につい

て科学的助言を行った。アレルギー患者の10%

(100人当たり10人)にアレルギーが誘発される量

卵 1.2~1.6 mg (n=206人)

牛乳 2.8~6.1 mg (n=351人)

小麦 40 mg (n=40人)

エビ 284~500 mg (n=48人)

ちなみに、現在日本における表示義務限界量は10ppm、即ち1kg中に含まれるアレルギー食品(たんぱく質の量)を10mgと定めている。EFSA Journal 2014:12(11):3894,http://www.efsa.europa.eu/en/esfajournal/pub/3894,htm

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臨床検査・RAST法における偽陽性反応の排除法の検討(~30%の確率)

RAST法で偽陽性が出る原因究明

1,植物性食品素材、特に大豆や小麦などの作物における患者IgE抗体に依存したRAST値と臨床症状の不一致の原因の究明

2,正確な食物アレルギー患者識別(偽陽性の排除)法の確立

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Consensus sequence of sugar chain: -------N-X-T(S)------- : protein

Asp 結合型高Manタイプ糖鎖

アレルゲンたんぱく質ペプチド鎖

糖鎖

糖鎖

糖鎖

糖鎖

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Fig.1

糖鎖マスク後のウエスタンブロットウエスタンブロット

大豆アレルギー患者血清中の糖鎖認識IgE抗体の存在

消失

たんぱく質認識抗体が残った

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P:2003 RAST inhibition with anti-HRP

83 8087

80 83 86

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

soybean Wheat rice

buckwheat

peanuts

potato

Food items

Inhibit

ion %

P:2102 RAST inh ibit ion with an t i-HRP

8

5 0

3 7 .3

4 74 3

3 4

0

1 0

2 0

3 0

4 0

5 0

6 0

soybe

anWhe

at rice

buck

wheat

pean

utspo

tato

Food items

Inhib

ition

%

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外食・昼食・総菜分野におけるアレルゲン情報の提供

消費者庁は平成26年に医師および関係各団体の代表を集めて

「外食などにおけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会」

を7回にわたって開催し、平成26年12月に中間報告をまと

め平成27年4月にこれを公開しているが、問題も多くあり、

情報の提供方法(表示)に関しては統一見解に至る道のりは遠い

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外食等でのアレルギー情報提供の課題

〇提供されるアレルゲン情報の内容とその精度

〇提供されるアレルゲン情報が〝本当かどうか〟

を、患者はどのように確認できるのか

〇実際の食事などの提供にはコンタミ防止など、調

理場、器具、対応する人の理解にも課題がある

〇提供内容の実効性を担保する研修や、少なくとも、

万一の事故に対応できる知識をもつべきではな

いか

NPO法人アレルギーを考える母の会・ 園部氏より

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食物アレルギーのリスク回避:外食・中食へのお願い(例)

【飲食店の方に】• 「全ての料理やお弁当に卵を入れる」ことの無いように• 「アレルギーの人に出すものはありません、うちで食べ

ないでください」・・というようなことの無いように• 質問に「中途半端な情報、あいまいな答え」を出さない

ように• お弁当:裏返さなくても見える場所にアレルギー表示を• ネットは貴重な情報源・・・同時にお店にも紙情報を【企業の方に】• 責任者以外にも、社員全員にアレルギーに関する情報の

共有を• 全員に定期的に研修の機会を、またできれば対処法も周知【行政に】• 資格取得時・免許更新時に、アレルギー研修を義務化

特定非営利活動法人アレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」 より引用

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アレルギー疾患対策基本法の施行(H27/12/25)

アレルギー疾患対策基本法の施行について(施行通知)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第七条(国民の責務)

国民は、アレルギー疾患に関する正しい知識を持ち、ア

レルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減に必要な注

意を払うよう努めるとともに、アレルギー疾患を有する

者について正しい理解を深めるよう努めなければならな

い。 (各地方自治体で教育・研修の機会を設ける)

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食物アレルギー予防のための食生活・対策

1,乳幼児期の発症を極力さけるための方策

(1)母親の妊娠中における食生活の工夫ー卵、牛乳の多用を避け

食材のローテーションを工夫

(2)離乳食は6ヶ月ぐらいから、穀類、野菜、芋類から初めて、極端

な高タンパク質+高脂肪食は控えめに

(3)タンパク質源は大豆や魚介類を中心に、牛乳、卵系は控えめに

2,体質改善食の勧め

(1)n-6系脂肪酸の過剰摂取をさけ(n-3系脂肪酸の摂取に心が

ける)、魚介類、海藻、野菜類の調理をます(リノレン酸を含む

エゴマ油、シソ油の利用); n-6/n-3 = 4 or < 4

(2)高タンパク質・高脂肪食を避ける。プロバイオティクスの利用

3,食生活・環境改善・浄化の勧め

(低ストレス食品の利用、ハウスダスト、ダニ対策など)

4,ラテックスアレルギー(純正ゴム手袋多用を避ける)、花粉症

対策(花粉の種類と食品の相関情報、環境アレルゲンへの配慮)

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低アレルゲン大豆を用いた低アレルギー加工食品の

開発と製造及び

流通システムの構築

生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業起業化促進型

合同会社低アレルギー食品開発研究所総括責任者 京都大学名誉教授 小川 正平成22年8月20日設立

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大豆の成分(アレルゲン3種)育種

在来種 タチユタカ

刈系434号

東北124号(ゆめみのり)

交配

放射線育種

のぞみまる

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欠失

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「ゆめみのり」試験隔離栽培開始(2003年)

東北124号2002年「ゆめみのり」として品種登録(現在:なごみまる)

Dream ’s come true!

あきたこまち

秋田県大潟農協(八郎潟干拓地)

なごみまる

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有効性評価のチャレンジテスト

チャレンジテストの条件

大豆製品完全除去食期間

試験食期間 通常食期間

3週間 5日間 5日間

(3-5g大豆タンパク質/日/人)

緩解確認期間大豆アレルギー判定期間

臨床症状惹起有無確認期間

臨床症状惹起有無確認期間

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低減化煮豆のチャレンジテストの結果

チャレンジテスト対象者 23名

1,誘発試験結果低減化大豆製品

陰性 78.3%; 負荷陽性 21.7%市販大豆製品(コントロール)

負荷陰性 0%; 負荷陽性 100%

2,嗜好試験結果大変美味しい 17%; 美味しい 34%; 普通

50%

3,総合評価非常に有効 40%; 有効 30%; やや有効

8%

結論:アレルゲン低減化大豆煮豆製品は、ほぼ80%の大豆アレル

ギーの患者に有効であると認められる。

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新型アレルギーの登場野菜・果実アレルギー

花粉症およびラテックスアレルギーとの交差性

OAS(口腔アレルギー症候群)の増加の原因

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国民生活センター:クラス2アレルギーの注意喚起・H25/12/6朝日

クラス2アレルゲン

(汎アレルゲン)に

よる交差反応

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花粉症と交差が考えられる食品類

花粉植物(科名) 花粉植物(種名)

交差作物(科名)

交差食品(種名)

カバノキ科 シラカバ ハンノキ オオバヤシャブシ

バラ科 リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド

セリ科 セロリ ニンジン

ナス科 ポテト

マメ科 ダイズ ピーナッツ

マタタビ科 キウイ

カバノキ科 ヘーゼルナッツ

ウルシ科 マンゴー

ナス科 シシトウガラシ

ヒノキ科 スギ ナス科 トマト

イネ科 イネ ウリ科 メロン スイカ

ナス科 トマト ポテト

マタタビ科 キウイ

ミカン科 オレンジ

マメ科 ピーナッツ

キク科 ヨモギ セリ科 セロリ ニンジン

ウルシ科

ブタクサ ウリ科 メロン、スイカ、カンタロープ、ズッキーニ、キュウリ

バショウ科 バナナ

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Mal d 1アレルゲンリンゴ果実たんぱく質上の交差(相同)部位

e-2,e-4抗体が結合

Bet v 1アレルゲンシラカバ花粉症患者のポリクローナル抗体が結合する部位

シラカバ

B mgvfnyetet tsvipaarlf kafildgdnl fpkvapqais sveniegngg pgtikkisfp

M mgvytfenef tseippsrlf kafvldadnl ipkiapqaik qaeilegngg pgtikkitfg

相 同 相 同egfpfkyvkd rvdevdhtnf kynysviegg pigdtlekis neikivatpd ggsilkisnk

egsqygyvkh ridsideasy sysytliegd altdtiekis yetklvacgs gstiksish-

類 似 類 似yhtkgdhevk aeqvkaskem getllraves yllahsdayn

yhtkgnieik eehvkagkek ahglfklies ylkdhpday

類 似

B:遺伝子(cDNA)より解読されたシラカバアレルゲン(Bet v 1)の一次構造(アミノ酸配列) 相同率70%M:遺伝子(cDNA)より解読されたリンゴたんぱく質(Mal d 1)の一次構造(アミノ酸配列)

Ye-1

Ye-2

Ye-3

Ye-4

Ye-5

Ye-4

Ye-2

IgE抗体が結合する部位

仮説 : リンゴを食べてOASを発症したシラカバ花粉症患者についてー交差反応の模式図:Bet v 1と相同なリンゴ中のたんぱく質 Mal d 1の交差ー患者血清中の花粉アレルゲン・Bet v 1 に特異的なIgE抗体(e-1~e-5)のうち、

リンゴたんぱく質分子・Mal d 1上の相同部位を認識しうるIgE抗体(e-2,e-4)の存在により、アレルギー臨床症状が惹起される

交差部位1 交差部位2

IgE抗体が結合する部位

X X X非交差 非交差

OAS:口腔アレルギー症候群

エピトープ エピトープ エピトープ エピトープ エピトープ

非交差

リンゴ

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交差反応が起きる確率(予測)1)花粉由来のアレルゲン(Bet v 1)で感作(IgE抗体の産生誘導)が成 立した場合(花粉症に罹患)、Bet v 1を真のアレルゲン(complete allergen)と言い、この患者はこのアレルゲンに対して複数のIgE 抗体(poly-clonal antibody e-1・・e-n)を産生。

2)産生される抗体の種類は患者によって異なる。確率①3)植物界には広く相同性の高いたんぱく質(ファミリー)が存在する。これを偽アレルゲン(imcomplete allergen)いう。

4)IgE抗体e-1・・・e-nを持った患者がリンゴを食べたとき、偽アレルゲンが体内に侵入した場合、抗体e-1・・e-nが認識する部位(エピトープ)が全く同じ(5~8残基前後のアミノ酸配列が完全に一致する)場合と1,2残基が異なる場合がある。従って、e-1・・e-nのうち、偽アレルゲンに結合できるIgE抗体は限定される。確率②5)IgE抗体間に架橋が成立し臨床症状を惹起するに至る確率はそれほど高くはないが花粉症患者は注意することは必要。

確率①ⅹ確率② =推定:1/100 ~ 1/1000 (OAS発症患者/花粉症患)

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交差アレルギーに対する今後の対策(リスク回避)

・交差アレルゲンの存在情報

花粉症とそれに対応する相同アレルゲンたん

ぱく質の分布情報、花粉と交差食品関係、交

差の確率など

・ラテックスアレルギーのアレルゲンと交差食品の

関係ける分布情報

・新食品のアレルゲン性についての情報・バイオイン

フォマティクスの活用(データベースの構築)

・将来的にはアレルゲン含有総量の情報(露地物と

ハウス物など)

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International Bioinformatics Workshop in Mallorca, Spain, by HESI

Mol. Nutr. Food Res. 2006, 50, 592 – 660

Bioinformatics of Protein AllergenicityGuest Editor: James Gibson Editorial

◆ Bioinformatics of Protein AllergenicityJames Gibson . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 591◆Food allergyWesley Burks and Bardara K. Ballmer-Weber. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 595◆ Review of the development of methodology for evaluating the humanallergenic potential of novel proteinsSteve L. Taylor . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 604◆ Requirement for effective IgE cross-linking on mast cells and basophillsEdward E Knol . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 620◆Structural bioinfomatic approaches to understand cross-reactivityHiemo Breitender and Clare Mills . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 628

◆Evaluation of available IgE-binding epitope data and its utility in bioinformaticsGary A. Bannon and Tadashi Ogawa . . . . . . . . . . 638

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野菜・果実アレルゲンの病害虫(ストレス)による増加は農薬防除により抑制される

無農薬・露地栽培作物はアレルギー患者にとって不都合?

もしアレルゲンがPR-Pならば

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植物が様々なストレスを受けたときに誘導される生体防御たんぱく質である(PRたんぱく質:Pathogenesis-Related Protein)が、ヒトに対してアレルゲンとなる例が多く報告されている。PRたんぱく質がアレルゲンとなるのであれば、植物の栽培・環境条件が、食品素材のアレルゲン性に影響を及ぼす可能性がある。

農薬などで病害虫を防除することにより、農作物のアレルゲン性を制御できるのでは?

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農薬散布の有無によるりんご(王林)の状況

A.慣行防除区

B.省略防除区

C.完全無防除区(無農薬栽培)

被害なし

被害小

被害大

黒星病

黒星病

すす斑病

すす点病

(王林)

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A B C A B C

約4μg 約20μg

75

50

353025

105(kDa)

患者1 イムノブロット

60kDa付近

34kDa付近28kDa付近24kDa付近

たんぱく質泳動量

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患者1デンシトグラフィー測定結果

60kDa付近 34kDa付近

0

100

200

300

400

500

A B C

(%)

※A(病害なし)の値を100とした場合のアレルゲン量の増加率

慣行防除 省略防除 無防除 慣行防除 省略防除 無防除

(被害なし) (被害小) (被害大) (被害なし) (被害小) (被害大)

0

50

100

150

200

250

A B C

(%)

たんぱく質量 4μgの場合

たんぱく質量 20μgの場合

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虫害サンプルと無被害サンプル

被害なし被害あり

大豆(枝豆)の虫害によるアレルゲン変動の解析

それぞれ、チューブ内でサンプルを破砕し、たんぱく質を抽出した。

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Glym4(16kDa)

被害なし被害あり0

50000

100000

150000

200000

食害被害によって原因抗原Glym4レベルが増加した

Glym4アレルゲンは約2倍に増加する

Rela

tive

inte

nsitie

sアレルゲン量(相対値)

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植物が様々なストレスを受けたときに誘導される生体防御たんぱく質である(PRたんぱく質:Pathogenesis-Related Protein)が、ヒトに対してアレルゲンとなる例が多く報告されている。PRたんぱく質がアレルゲンとなるのであれば、植物の栽培・環境条件が、食品素材のアレルゲン性に影響を及ぼす可能性がある。

農薬などで病害虫を防除することにより、農作物のアレルゲン性を制御できるのでは?

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これでPPTは終りです

ご静聴ありがとう

ございました