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日本の自動車産業が置かれた経営環境と課題
2010年5月14日
東京大学知的資産経営東京大学知的資産経営 ・総括寄付講座・総括寄付講座小川 紘一
1.製品設計にデジタル技術が介在する産業の経営環境・オープン分業型の産業構造、競争ルールの変化・技術と知財で勝る日本が勝てない
2.欧米諸国が創出したビジネスモデルと知財マネージメント・ブラックボックス領域からオープン市場を支配
3.アジア諸国の産業政策を転換させた・オープン分業構造で機能する比較優位
4.電子化と自動車産業の変貌・デスカッションのための基礎情報ご提供
ーエレクトロニクス産業から何を学ぶかー
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第6回カーエレクトロニクス研究会
今日のお話の基本メッセージ
1.モノづくりは、1990年代後半のエレクトロニクス産業で、歴史的な転換期に立つ
・デジタル技術の介在+国際標準化でオープン国際分業が加速・伝統的な大手エレクトニクス企業がグローバル市場で勝てない
2.類似の経営環境が多くの産業へ急拡大中・自動車産業もEVが普及すると競争ルールが変わる・中国ではガソリン車でも競争ルールが変わろうとしている
3.エレクトロニクス産業の教訓を学んで活かすべき・ものづくり+ビジネスモデル・財マネージメントそして産業政策の総合力
・企業間の競争から国家間の総力戦になってしまった
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モノづくりは必要条件に過ぎなくなった
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DVDプレイヤー
液晶パネル
DRAMメモリー
我が国の製造業に構造的な問題が内在
太陽光発電パネル
カーナビ
グローバル市場で大量普及のステージになると我が国企業が市場撤退への道を歩む
ー特許の質も数の競争力に寄与しないー
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産業構造審議会産業技術分科会第24回研究会小委員会の資料に小川が加筆
-技術が伝播し難い擦り合わせブラックボックス型なら勝てるーその多くが工場を海外へシフト;日本の雇用が危ない
国際競争力から見た日本企業のポジション
オープン分業が起きていない擦り合わせ型の製品群
自動車産業
デジカメ,カムコーダ
プロセス型部品・材料
デジタル型製品国際分業型製品オープン標準化
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組合せ型の製品群
4日本企業の市場シェア
国内で雇用を守ったトヨタも国内生産を縮小国内は新技術・新製造法などの取り組み拠点へ
1970s 1980s 1990s 2000s 2010sColorTV VCR
CD-ROM
CD-R/RW
DVD液晶TV
DRAM/ASIC
デジタル携帯電話
乗用車
太陽光発電・固体照明
インフラ型の産業機械、環境・エネルギー分野
モノづくりが産業競争力に直結しない領域の急拡大
プリンター、複合機
次世代ICT産業
カーナビ
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クローズド垂直統合型
モノづくりの追求が競争力に直結
オープン国際分業型
モノづくりは単なる必要条件
オープン国際分業が生まれる経営環境とは
・製品アーキテクチャの大転換によって設計と製造がオープン環境で分離:
⇒フルセット垂直統合型の経済合理性が崩壊
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・製造が部品の単純な組み合せへ転換:⇒生産技術/製造技術の役割低下
・部品・材料と設備の調達によって量産できる⇒技術力が必ずしも競争力に直結しない
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新興企業・途上国企業がビジネスチャンスを掴んで市場参入
モノづくりは単なる必要条件に過ぎなくなった
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2.欧米諸国が創出したビジネスモデルと知財マネージメント
1980年代のアメリカもエレクトロニクス産業で
現在の日本と同じ経営環境に直面
世界に冠たるR&D能力を持つIBMが15万人をレイオフ伝統的な企業制度が崩壊:国際分業型産業の興隆
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1990年代中期に、アジアの成長を取り込むための標準化ビジネスモデルと知財マネージメントを完成
第6回カーエレクトロニクス研究会
MPUPentium Ⅲ
Media Control Hubメモリーコントロール・バス
I/O Control HubI/O コントロール・バス
SynchronizeDRAM
AGPSlot
PCI Bus
Bus Interface
Pin配置
オーディオAC‘97
USB周辺機器 HDD
標準化
標準化
標準化
オープン標準化
標準化
オープン標準化
技術革新/巨額投資と価格競争が同時進行
独自イノベーション
価格競争
プラットフォ-ム
独自イノベーション熾烈な価格競争
熾烈な価格競争
熾烈な価格競争
擦り合わせブラックボックスのPF側からオープン領域を支配
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オープン標準化を駆使したインテル社の
プラットフォーム型ビジネスモデル
自動車産業ではBoschのモデルがこれに似ている
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Gateway
Gateway
Switch Switch Switch
基地局BSC
BTS BTS BTS・・・・・・
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標準化されなかった領域:市場支配力
基幹ネットワーク・システム
ブラック・ボクス領域
携帯電話端末
ハンドセット
内部も外部も完全に標準化:大量普及
欧州の携帯電話システムが市場席巻する仕組み
ブラックボックス側からオープン領域を支配
ヨーロッパの経済成長・雇用創出
アジアの経済成長を取込む仕組み
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3.アジア諸国も1990年代に産業政策を変えた
・国際分業を前提にした産業政策
・特定セグメントへ優遇政策を集中
・研究開発よりも実ビジネス(製造)段階で競争力を強化
技術が伝播し易いデジタル型のエレクトロニクス産業で顕在化国際標準化、設計・製造の分離、オープン国際分業
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第6回カーエレクトロニクス研究会
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億円
サムスンのケース(韓国税制下CF-日本税制下CF)
TSMCのケース(台湾制度下CF-日本税制度下CF)
日本の制度を基準にしたサムソンとTSMCのフリーキャッシュフロー
TSMC(台湾)世界最大のファンドリー)
サムソン(韓国)
ITバブル崩壊
韓国がIMFの管理体制
日本:上位5社のフリー・キャッシュフロー合計▲2,000億円/年(▲500億円/社・年)
環境・エネルギー関連産業でどうなるか:例えば蓄電池
半導体産業に見る比較優位の産業政策の代表的な事例と効果
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営業利益(MU
S$
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工作機械
半導体製造装置
事務機械
重電・産業機械
情報通信
半導体・液晶
家電コンピュータ
6000
エレクトロニクス以外
エレクトロニクス建設・農業機械
2005年
2006年
2007年
国際分業化した製品領域で勝てない
統合型なら勝てる
この先に自動車
エレクトロニクス産業でイノベーション投資が雇用と経済成長に寄与していない
我が国ではエレクトロニクス産業がアジアの成長を取り込めていない
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4.電子化と自動車産業の変貌
企業:グローバル市場で勝ちパターンの再構築行政:国家間の競争時代に適応した産業政策
2010年5月14日
東京大学知的資産経営東京大学知的資産経営 ・総括寄付講座・総括寄付講座小川 紘一
第6回カーエレクトロニクス研究会
1960年代 1980年代 現在 2020年
自動車の機能・複雑度
メカニクス指向
メカトロニクス指向
ソフトウエア指向技術の主役とビジネスモデルが劇的に変わる
2007年に
車両系:1,000万Step200人で5年以上の開発工数ITS全体:10億Step
2020年(最悪のケース)車両系:1 億Step
2,000人で5年以上
ITS系全体で100億Step
20万人で5年以上
新規開発の80%にソフトウエアが深く関与
出典:JARI自動車電子システム調査委員会へ提供された内容を筆者が加工編集
自動車も技術開発が組み込みソフトへ急速にシフト誰もが全てを分からない一社で開発できない:開発しても回収できない
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AUTOSAR:車載用組み込みソフト開発の標準化
非競争領域共同開発領域オープン標準化
実装・統合化の競争領域共通コンポーネント共通インフラ
S/Wによる競争領域
AUTOSARによる一元 統合化
OSEK/VDX組込みS/Wアーキテクチャ
FlexRay
通信N/W
ASAM開発ツールインタフェース
開発プロセス
H I S
アプケーションS/W
基幹H/W: パワートレイン系、走行系、ボデー系、通信・画像系
Run Time環境
RealTime OS(OSEK OS)ISO17356
ECU抽象化レイヤー
MCU抽象化レイヤー
Service レイヤー
ECU
データ互換性フォーマットIF
開発支援ツール
設計手法品質保証
設計プロセス管理手法
車載・実装
開発
ー分業化: この延長でEV用のオープン標準化が来るー
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15出典:JARI自動車電子システム調査委員会へ
提供された内容を筆者が加工編集
ENIAC;ナノエレクトロニクス16
21世紀型産業の中核に組み込みシステムが位置付けられる背景①ハードウエアを付加価値の高いシステム統合型へ転換させる②アジアの成長力を取り込むビジネスモデルを支える
ARMITIS: 組み込み型システム
予算:
27億Euro
30億Euro
エネルギー再利用
自動車交通システム
航空システム
医療・健康
安全・安心・環境
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基礎理論
アーキテクチ
記述言語、
モデリンッグ
ツール、
プロダクト
43億Euro
20億Euro
2008~2017
組み込みソフトへ重点を移す欧州連合FP-7のイノベーション政策
出口主導の産業育成投資
全ての産業領域で
ソフトウエア技術が統合型のビジネス
モデルを支える
Copyright (C) 2010 東京大学 小川紘一All Rights Reserved.出典:JARI自動車電子システム調査委員会へ
提供された内容を筆者が加工編集
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Gateway
Gateway
Switch Switch
BaseStation BSC
BTS BTS BTS・・・・・・
内部も外部もオープン
欧州案の標準化の延長に見えるビジネスモデル-中国のEVがこれを現実化する可能性大ー
電気自動車コミュニケーションコントローラ 電気自動車
コミュニケーションコントローラ
電気自動車コミュニケーションコントローラ
Charge SpotCommunication , Electricityon Controller Meter
コネクタ、通信プロトコル、電圧/電流
Charging House
Grid Operator
Electricity Service Network Supplier / Retailer System
多様なサービス方向性を主導・課金、・運転情報吸上げ・電池の内部情報・車の機能更新・カーナビ情報・音楽・映像
技術の進化を独占知財も独占
携帯電話 電気自動車
EUの経済成長・雇用
中国の経済成長・雇用 Copyright (C) 2010 東京大学 小川紘一 All Rights Reserved. 17
長期の研究開発投資 製造/実ビジネス
市場規模
特に蓄電池は製造段階の優遇政策が必須
オープン国際分業
10倍の巨大市場・短期にCO2半減・経済活性化・雇用の拡大
日本は世界に冠たる・研究開発投資立国・知財立国
これを国際競争力へ直結させるためにはイコール・フッテングの制度設計(経済特区)
例えば蓄電池
300億円で1万人の雇用
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行政:国家間の競争時代に適応した産業政策
Copyright (C) 2010 東京大学 小川紘一All Rights Reserved.
電池はそれぞれの事業セグメントのグローバルプレイヤー形成
Copyright (C) 2010 東京大学 小川紘一All Rights Reserved. 出典:産業構造審議会・情報経済分科会資料に加筆 19
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日本のものづくり経営が,デジタル型のエレクトロニクス産業から
歴史的な転換期に立った・技術力・知財力が競争力に直結しない
伝統的な「ものづくり」は単なる必要条件に過ぎない
我々はこの現実を冷静に学んで活かすべき
ビジネスモデルと知財マネージメントが伴って初めて、
企業が大量普及と高収益を享受今後の自動車産業も例外ではない
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1900 1950 1975 2000 2010
アダムスミス的分業構造
チャンドラー的フルセット垂直統合
アーキテクチャの大転換 技術伝播の加速(欧米:オープン国際分業) (アジア:ビジネス制度設計)
アダムスミス的分業化(ヨーロッパ)
オープン標準化・国際分業による経済成長仕組み作りの十分条件で復権
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欧米とアジア諸国が尖鋭的なビジネスモデル比較優位の制度設計
日本は50年に一度の転換期に立っている-企業間競争から国家間競争の時代へ突入ー
フルセット統合型から比較優位の国際分業へ転換が必要
伝統的な「ものづくり」 は必要条件に過ぎないアジアの成長と共に歩む仕組みの創出 21
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今日お話させて頂いた内容の多くは
以下の本で詳しく紹介しております
ご参考になさってください
小川紘一 「国際標準化と事業戦略」ー日本型イノベーションとしての標準化ビジネスモデル-
白桃書房
ご清聴ありがとうございました
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