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産学官連携共同研究の推進 事後評価 「自動車触媒の性能監視用排ガスセンサ の開発」 研究代表者名:三浦 則雄 研究期間:平成15年 月~平成18年3月

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  • 産学官連携共同研究の推進 事後評価

    「自動車触媒の性能監視用排ガスセンサ

    の開発」

    研究代表者名:三浦 則雄

    研究期間:平成15年8月~平成18年3月

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究計画の概要 p.1

    研究成果の概要 p.5

    研究成果の詳細報告

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する基礎的研究

    1.1. センサ電極材料の検討・評価

    1.1.1. 混成電位型ジルコニアNOxセンサ用検知極材料の探索 p.13

    1.1.2. 酸化ニッケルを検知極とした混成電位型ジルコニア NOx センサの高温作動特性 p.19

    1.1.3. Rh 添加 NiO 検知極を用いた混成電位型ジルコニア NOx センサの高温作動特性 p.25

    1.1.4. WO3 を添加した NiO 検知極を用いた混成電位型ジルコニアセンサの NO2 応答特性 p.35

    1.2. センサ特性発現・劣化機構の解明

    1.2.1. 固体電気化学式安定化ジルコニア NOx センサにおける混成電位応答特性と

    複素インピーダンス応答特性との比較 p.43

    1.2.2. 酸化ニッケル(NiO)を検知極とする混成電位型ジルコニア NOx センサにおける

    検知極焼成温度の応答特性への影響 p.53

    1.2.3. NOx センサにおける安定化ジルコニアと酸化物検知極界面の透過電子顕微鏡による

    高分解能観察 p.62

    1.2.4. Cr2O3 を検知極とする混成電位型ジルコニア NOx センサにおける検知極厚さの

    応答特性への影響 p.66

    1.2.5. 混成電位型 NOx センサ用 NiO 検知極中の不純物元素の分布 p.74

    1.2.6. Pt 添加 NiO を検知極とした混成電位型NOx センサの電極界面組織の観察 p.79

    1.2.7. 車載用積層型 NOx センサの NOx 変換電極の組織観察 p.84

    1.3. 新規検知法による特性改善法の検討

    1.3.1. 複素インピーダンス法を用いたトータル NOx センサ p.89

    1.3.2. 高温での広範囲な水蒸気濃度の検出が可能な複素インピーダンス応答型ジルコニアセンサ p.98

    1.3.3. 複素インピーダンス応答型ジルコニアセンサによるプロペンの検出 p.105

    2. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する実用化研究

    2.1. センサ素子構造の検討

    2.1.1. センサ素子構造の最適化とその製造方法の確立 p.114

    2.2. 素子製造プロセスの確立

    2.2.1. YSZ グリーンシートの製造技術の確立 p.118

    2.3. センサ検出方式の最適化

    2.3.1. 酸化物電極を用いた混成電位型 NOx センサの検知性能 p.123

    2.3.2. 積層構造を有する混成電位型 NOx センサの作製と検知性能 p.132

    2.3.3. 酸化触媒電極を付加したトータルNOxセンサの作製と評価 p.139

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    1

    研究計画の概要

    ■ プログラム名

    産学官連携共同研究の推進 (事後評価)

    ■ 研究課題名

    自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    ■ 研究代表者名(所属研究機関名・役職)

    三浦 則雄 (国立大学法人九州大学・教授)

    共同研究機関代表者名(所属研究機関名・役職)

    国元 晃 (株式会社リケン・部長)

    ■ 研究期間及び研究総経費 (金額単位:百万円)

    研究期間:3年, 研究総経費:114 百万円(調整費充当分)、89百万円(民間分)

    ■ 研究規模

    サブテーマ数:1, 個別課題数:4, 延べ研究機関:2, 延べ研究者数:9

    ■ 研究の趣旨 (研究を実施した背景、必要性、目的、目標等を記入してください)

    (研究の背景)

    ガソリン車には通常、排ガス浄化用として三元触媒が用いられ、ラムダセンサ(一種の酸素センサ)で空燃比(A/

    F,空気と燃料との混合比)を量論組成比付近に制御することにより、NOx (主に NO および NO2), CO, HC (炭化水

    素) を同時に除去するシステムが採用されている。この方式のエンジンはストイキエンジンと呼ばれる。一方、空燃比

    を量論組成比よりも大きくした希薄燃焼(リーンバーン、空気過剰)領域でエンジンを作動させると、燃費の大幅な改

    善が可能となる。(燃費改善は主要温室効果ガスである CO2 の排出削減につながる。) この方式のエンジンはリー

    ンバーンエンジンと呼ばれ、最近急速に自動車に搭載され始めた直墳エンジンはこの範疇に入る。ただし、三元触

    媒だけではリーンバーン領域での NOx の浄化率が低下するため、NOx 吸蔵還元型触媒を新たに付加する必要があ

    る。この場合、触媒の NOx 吸蔵量が飽和に近くなった時点で、HC や CO などの未燃ガソリンを短時間流通させて吸

    蔵能を再生させる必要がある。この時のタイミングを知るために、従来のラムダセンサ以外に、吸蔵触媒の前後に 10

    ppm 程度の NOx 濃度の検知ができる高性能センサを設置する必要がある。このような車載用排ガス NOx センサは、

    作動条件が非常に厳しいため、開発がかなり難しい。

    (研究の必要性)

    自動車排ガス流中に直接挿入して作動できる可能性があるセンサ材料としては、上述の実用ラムダセンサに用い

    られている安定化ジルコニアが第1候補として考えられる。また、自動車触媒性能監視用として実用化の可能性の高

    い排ガス NOx センサとしては、現在までのところ我々が提案した混成電位型センサと国内他社提案の限界電流式セ

    ンサしかない。後者の限界電流式センサについては、比較的精度の良い検出は可能であるが、電流値が非常に低

    いためにシステムが複雑で高価である。また、触媒性能監視用として必須条件である 100ppm 以下の NOx の検出が

    難しい。一方、我々が提案、検討している混成電位型 NOx センサは、数十 ppm 程度の低濃度 NOx が高温排ガス

    中でも検出可能という特性を有している。本センサは低燃費化、CO2 排出削減、NOx 排出低減に貢献できる独創的

    な国産技術であり、早期に実用化するためには研究開発をさらに推進する必要がある。

    (研究の目標)

    本事業は、大学におけるセンサ工学の専門的研究者と先端的センサ開発技術を有する企業とが、これまでの共同研

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    2

    究をベースにして、より緊密な共同研究体制を構築することにより、独創的な自動車触媒性能監視用排ガスセンサについ

    ての基礎的事項の検討と開発研究を連携して行うことにより、この排ガスセンサの早期実用化を目指すものである。

    ■ 研究の要旨 (研究計画及び研究成果の要約を記入してください)

    研究課題を大別すると以下のようになり、それぞれの研究計画及び研究成果を記述する。

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する基礎的研究

    九州大学においては、自動車用排ガスセンサの電極特性の改善や新検知法の検討、特性発現・劣化メカニズムの解明

    などの検討を行うことにより、実用化のための基礎的研究を推進することを計画した。

    (1) センサ電極材料の検討・評価

    新規酸化物系の探索や添加物効果などについての検討を行うとともに、得られた材料の詳細な特性評価を行うことを計

    画した。その結果、金属酸化物のうちで酸化ニッケルなどが、かなりの高温においても優れた検知特性を示すことを見出し

    た。また、酸化ニッケルにロジウムや酸化タングステンなどの第二成分を添加して検知極を作製したところ、センサのガス感

    度が大幅に向上することがわかった

    (2) センサ特性発現、劣化機構の解明

    新規材料設計や長期安定性確立のために、特性発現・劣化機構の解明を、電極層や電極界面の微細構造の観察や組

    成分析、ガス吸脱着挙動の測定、気相触媒活性や電気化学的活性の評価といった基礎的な面から検討することを計画し

    た。その結果、電極材料の微細構造や電極層の厚さを変化することにより、気相触媒活性や電気化学的活性がコントロー

    ルでき、ガス感度や応答回復特性も制御できることがわかった。また、電極活性の劣化原因として電極界面の微細構造の

    変化が一因になっていることを突き止めた。

    (3) 新規検知法による特性改善法の検討

    新たな複素インピーダンス検出法について、電極材料の最適化やガス応答特性の評価を行い、特性改善につなげるこ

    とを計画した。その結果、高濃度の水蒸気や二酸化炭素共存下でもトータル NOx の検出が可能なことがわかった。また、

    本方式により、水蒸気の検知や炭化水素の一種であるプロペンの高感度、高選択的な検出が可能なことを見出した。

    2. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する実用化研究

    (株)リケンにおいては、素子構造の検討、素子製造プロセスの確立、センサ検出方式の最適化などを行うことにより、

    センサ素子の実用化研究を推進することを計画した。

    (1) センサ素子構造の検討

    積層構造体としての充分な強度や耐熱性を確保するために、センサ素子構造および製造方法の検討を行うことを計画

    した。その結果、初期不良率を大幅に低減し、歩留まりが良好で、作動時の構造劣化を抑制したセンサ素子構造および製

    造方法を確立することができた。

    (2) 素子製造プロセスの確立

    センサ素子製造工程におけるばらつきを極力小さくするために、素子に用いるイットリア安定化ジルコニアの組成、厚さ、

    グリ-ンシ-ト作製条件、焼成条件等を検討し、量産プロセスに適応した低コストな素子製造技術の確立を行うことを計画

    した。その結果、再現性や生産性に優れた積層素子の製造プロセスを確立することができた。

    (3) センサ検出方式の最適化

    車載用センサとしてエンジンガス組成の干渉を受けないようにするために。還元性ガスや酸素の濃度依存性がないセン

    サ出力検出方式の最適化を行うことを計画した。その結果、還元性ガスや酸素の濃度依存性を極力抑えた検出方式の最

    適化に成功した。

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    3

    ■ 実施体制

    研 究 項 目 担当機関等 研究担当者

    (調整費受給機関)

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する基

    礎的研究

    (1) センサ電極材料の検討・評価

    (2) センサ特性発現、劣化機構の解明

    (3) 新規検知法による特性改善法の検討

    九州大学産学連携

    センター

    九州大学産学連携

    センター

    九州大学産学連携

    センター

    九州大学産学連携

    センター

    ◎三浦則雄(教授)

    三浦則雄(教授)

    王 健

    三浦則雄(教授)

    寺田大将

    セージ・ズイコフ

    三浦則雄(教授)

    ペルマル・エルマレイ

    (民間共同研究機関)

    1.自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する

    実用化研究

    (1) センサ素子構造の検討

    (2) 素子製造プロセスの確立

    (3) センサ検出方式の最適化

    株式会社リケン

    株式会社リケン

    株式会社リケン

    株式会社リケン

    国元 晃

    長谷井政治

    小野 敬

    厳 永鉄

    ◎ 代表者

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    4

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    5

    研究成果の概要

    ■ 研究成果の要旨 (研究成果の内容を要約し記入してください)

    九州大学においては、自動車用排ガスセンサの電極特性の改善や新検知法の検討、特性発現・劣化メカニズムの解明

    などの基礎的研究を推進し、以下のような結果を得た。 まず、新規酸化物系の探索や添加物効果などについての検討を

    行い、酸化ニッケルなどの単独酸化物材料が、かなりの高温においても優れた検知特性を示すことを見出した。また、酸化

    ニッケルへの第二成分の添加により、NO2 感度が大幅に向上することがわかった。次に、特性発現・劣化機構について、

    電極層や電極界面の微細構造の観察や組成分析、気相触媒活性や電気化学的活性の評価などにより検討した。その結

    果、電極材料の微細構造や電極層の厚さを変化することにより、気相触媒活性や電気化学的活性が制御でき、応答特性

    も改善できることがわかった。電極活性の劣化原因として電極界面の微細構造の変化が一因になっていることを突き止め

    た。さらに、新たな複素インピーダンス検出法について、電極材料の最適化やガス応答特性の評価を行い、トータル NOx、

    水蒸気、炭化水素の検出も可能なことを見出し、素子の特性改善につなげることができた。

    一方、(株)リケンにおいては、素子構造の検討、素子製造プロセスの確立、センサ検出方式の最適化などを行うことによ

    り、センサ素子の実用化研究を推進した。その結果、積層構造体としての充分な強度を有するセンサ素子構造などの設計

    を行い、最適な積層型素子構造設計と製造方法を確立することができた。また、素子構成材料の組成、厚さ、作製条件、

    焼成条件等を詳細に検討することにより、量産プロセスに適応した積層素子の製造プロセスを確立することができた。さら

    に、車載用センサとしてエンジンガス組成の干渉を受けないようにするために。還元性ガスや酸素の濃度依存性を極力抑

    えた検出方式の最適化に成功した。

    ■ 研究目標 (課題採択時に決定した研究目標を簡潔に箇条書きで記入してください)

    大学におけるセンサ工学の専門的研究者と先端的センサ開発技術を有する企業とが、これまでの共同研究をベースに

    して、より緊密な共同研究体制を構築することにより、独創的な自動車触媒性能監視用排ガスセンサについての基礎的

    事項の検討と開発研究を連携して行うことにより、この排ガスセンサの早期実用化を目指す。具体的には以下の2項目を

    研究目標とした。

    ① 自動車用排ガスセンサの電極特性の改善や新検知法の検討、特性発現・劣化メカニズムの解明などの基礎的研究

    を推進する。

    ② 素子構造の検討、素子製造プロセスの確立、センサ検出方式の最適化などを行うことにより、センサ素子の実用化

    研究を推進する。

    ■ 目標に対する結果 (前記目標に対比させてその結果を箇条書きで記入してください)

    排ガスセンサに関する基礎的研究については、ほぼ当初の目標を達成することができたし、全く予想していなかった新

    しい成果を得ることもできた。実用化研究についても大学との緊密な共同研究体制のもとで順調に推進することができ、

    現在、実用化のための最終段階であるセンサの長期安定性の確立に向けて鋭意検討中であり、実用化にかなり近いレ

    ベルにある。

    ① 新規酸化物系の探索については、酸化ニッケルなどが、かなりの高温においても優れた検知特性を示すことを見出

    した。また、第二成分の添加により、感度が大幅に向上することがわかった。特性発現機構については、電極材料の

    微細構造などを変化することにより、気相触媒活性や電気化学的活性が制御でき、応答特性が改善できることを解

    明した。また、電極界面の微細構造の変化が特性劣化の一因になっていることを突き止めた。さらに、新規検出法に

    より、トータル NOx の種々ガスの検出も可能なことを見出し、素子の特性改善につなげることができた。

    ② 最適な積層型素子構造を設計、作製することができた。また、素子構成材料の作製条件を検討することにより、量産

    プロセスに適応した積層素子の製造プロセスを確立することができた。さらに、車載用センサとしてエンジンガス組成

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    6

    の干渉を受けないようにするために。還元性ガスや酸素の濃度依存性を極力抑えた検出方式の最適化に成功し

    た。

    ■ 科学的・技術的価値 (研究の創造性や独創性、得られた成果の世界的な価値について、具体的な事例を

    挙げて客観的に記入してください)

    自動車排ガス流中に直接挿入して作動できる可能性がある安定化ジルコニア固体電解質を基本構成材料とする

    混成電位型 NOx センサについて、新たに提案した酸化物系検知極材料と NO 変換電極を組み合わせた方式で車

    載センサの開発を共同で行うこと自体、世界でも類を見ない全くオリジナルな研究である。前述したように、本混成電

    位型 NOx センサは、自動車触媒性能監視用として実用化の可能性の最も高い排ガスセンサとして位置付けられて

    いる。また、以前(2002年)に発表した検知極材料に関する論文について、ISI-Thomoson 社の調査でこの論文の

    引用数がその分野のトップ1%にランクされていると同社より報告を受けており、本研究の独創性の高さを物語ってい

    るといえよう。本研究で得られた酸化ニッケル系の新規検知極材料、応答特性の発現メカニズム、新規複素インピー

    ダンス応答方式センサなどの成果については、国内、国際学会での発表時の注目度も高いし、国際学会への招待

    講演の依頼も多いことが、これら成果の世界的価値の高さを示しているといえよう。また、(株)リケンでの開発データを

    国際学会で発表した際にも、米国や欧州の自動車メーカーや研究所からの質問が多く、世界で唯一の車載用混成電位

    型NOxセンサの開発メーカーとしての注目度は高い。さらに、(株)リケンに対しては世界各国から素子サンプルの試供依

    頼が多い(テスト中であるためサンプル提供はまだ行っていないが)ことも、本センサに対する需要と関心度の高さを示す

    ものである。

    ■ 科学的・技術的波及効果について (研究成果にどのような波及効果が期待されるか記入してください)

    従来は全く予想もされなかった 800-900℃という相当な高温での作動が可能な新規検知極材料としての酸化ニッケル

    を見出したこと、及びこれに第二成分を添加することにより NO2 感度を大幅に向上できたことは、今後さらなる新規材料発

    見の可能性が残っていることを示したといえるし、特性向上のための材料設計の指針を与えたという点で波及効果は大き

    いと思われる。また、気相触媒活性や電極反応活性が NO2 感度や応答速度を制御する因子となっていることを明確にした

    成果は、今後、このタイプのセンサの特性改善を行う際の指導原理を与えたことになり、この分野での科学的・技術的波及

    効果は相当大きいと考えられる。さらに、新しい特性改善法として我々が全く独自に提案した複素インピーダンス応答型セ

    ンサにおいては、トータル NOx、水蒸気、炭化水素などの検知へ発展させており、既に米国をはじめとする世界のいくつか

    の機関でこの新方式を検討を始めている。一方、NO の NO2 への変換機能、還元性ガスの酸化機能、酸素濃度のフィード

    バック機能などを付加した積層型素子が、実排ガス条件下でも有効に機能することを確認できたことは、この独自の方式と

    構造を有する素子の有効性が実証されたことを意味しており、車載排ガスセンサ分野における技術的波及効果は計り知れ

    ないと思われる。

    ■ 社会的・経済的波及効果について (研究成果にどのような波及効果が期待されるか記入してください)

    本排ガスセンサは当事業期間内では実用化までは至っていないが、かなり近い将来に実用化できるレベルまで到達し

    ている。実用化された場合には、ガソリン直噴エンジン制御システムを構築するための自動車触媒監視・制御用として、初

    期には年間数十万個の需要が見込まれよう。また、将来、ガソリン車だけでなくディーゼル車にも排ガス浄化触媒が搭載さ

    れるようになれば、ガソリン車の場合と比べて十倍以上の市場規模が予想される。さらに、車載診断(OBD)システム用とし

    て本排ガスセンサが使用されるようになれば、その市場規模は予測が難しいほどに拡大すると思われる。

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    7

    ■ 企業と連携することにより得られたシナジー効果について記入してください。

    本事業は元々、10年近く前から続けてきた共同研究を実用化に向けて連携を強化して推進したものであり、これまでに

    もシナジー効果はいくつか得られている。今回の事業においては、まず検知極材料の探索過程において、作動温度60

    0℃以下では企業側がこれまでに探索しつくした材料について、大学側において800-900℃という相当に高温でも作動

    できないかという発想転換を行って探索を進めた結果、このような高温でも酸化ニッケルが予想外に高いガス感度を示すと

    ともに、600℃以下では水蒸気の影響により応答速度が著しく低下したものが、高温では水蒸気の共存により逆に速度が

    改善するという結果を得た。このことは、大学側と企業側とのディスカッションの場でたまたま発想されたものであり、一種の

    シナジー効果と言えよう。また、特性発現・劣化機構の解明についての研究においても、感度発現に対して検知極層のモ

    ルフォロジーや厚さが重要な因子となっている点や、特性劣化に対して電極界面近傍での微細構造の変化が一因となっ

    ている点などを、企業側での実際の素子製造工程にフィードバックしつつあることも重要なシナジー効果と言えよう。

    ■ 共同研究の研究計画・実施計画について (計画の妥当性、実施体制の連携について、具体的に記入して

    ください)

    本事業で計画したように、大学側がこれまでの専門的知識、技術に基づいて、排ガスセンサについて新規電極材料、特

    性発現・劣化機構、新規検知法などといった基礎的事項の検討を進める一方で、企業側が有する実際的な製品開発能

    力・技術力を生かしながら、排ガスセンサの素子構造、素子製造工程、検出法の最適化といった開発研究を両機関の強固

    な共同研究実施体制の下で推進し、本排ガスセンサの実用化を目指したことは、大変有益で妥当な計画であったと思われ

    る。また、両機関の全研究者が参加しての開発会議を合計11回開催することにより、非常に有意義なディスカッションや意

    見交換を行うとともに、電子メール、電話、FAXによる情報交換、さらには学会参加時の資料収集などにより、お互いの研

    究推進に役立つ情報の取得を連携して行うことができた。

    ■ 今後の発展方向、改善点等 (実用化の見通し等を具体的に記入してください)

    本事業で新たに見出した800-900℃という従来よりもかなり高温で作動可能な検知極材料の実用素子への適用は、エ

    ンジン直下で使用可能な酸素センサとの複合センサ用の将来技術として期待される。また、電極材料探索、改良技術や素

    因子制御による特性改善法などの基礎的知見、技術は、排ガス中の NOx レベルが現在の数十ppmよりさらに一桁低いレ

    ベルまで規制された場合、素子感度の大幅向上に多大の貢献をするはずである。

    ところで、本排ガスセンサの実用化に当たっては、特に素子の長期耐久性と製造コストが重要なポイントである。長期耐

    久性については、現在車載用として実用されているラムダゼンサ(酸素センサ)が既に約30年もの開発歴、実用歴があるた

    め、10年間あるいは10万km以上もの使用が可能である。自動車メーカーは、開発歴が短く実用歴のない全く新規な本排

    ガスセンサに対しても、実用ラムダセンサと同等あるいはそれ以上の長期耐久性を最初から要求している。そのため、開発

    期間が長くかかってしまっているが、現在、かなり実用化に近いレベルまで到達しているといえる。今後、実車での長期耐

    久試験を重ねることにより、なるべく早期に高い完成度まで到達させたい。また、素子の製造コストについても、ラムダセン

    サよりもはるかに複雑な構造を有した素子であるにもかかわらず、このセンサを同レベルの価格での販売が要求されている。

    そのため、さらなる製造プロセスの改善や素子構造の簡素化を今後行う必要がある。

    いずれにしても、排ガス NOx センサについては、燃費の良いガソリン直噴エンジンの普及、ディーゼル車の排ガス規制

    の強化、車載診断システムの将来的な採用などのために、その早期の実用化が自動車メーカーや車部品メーカーから熱

    望されている。その可能性の最も高いレベルにあるのが、本センサであることは間違いないと思われる。

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    8

    3. 所要経費

    *経費受給機関は「直接経費」のみ記入してください

    所要経費

    研 究 項 目 担当機関等 研 究

    担当者 H15

    年度

    H16

    年度

    H17

    年度 合計

    (経費受給機関)

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセ

    ンサに関する基礎的研究

    (1) センサ電極材料の検討・評価

    (2) センサ特性発現、劣化機構の解明

    (3) 新規検知法による特性改善法の検

    九州大学 産学連携

    センター

    三浦 則雄

    27

    34

    27

    88

    所 要 経 費 (合 計) 27 34 27 88

    (民間共同研究機関)

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセ

    ンサに関する実用化研究

    (1) センサ素子構造の検討

    (2) 素子製造プロセスの確立

    (3) センサ検出方式の最適化

    株式会社リケン

    国元 晃

    41

    22

    26

    89

    所 要 経 費 (合 計) 41 22 26 89

    (単位:百万円)

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    9

    4. 使用区分

    【経費受給機関】 (直接経費のみ記入してください)

    サブテーマ1 サブテーマ2 サブテーマ3 計

    設備備品費※ 37 37

    試作品費 0 0

    消耗品費 10 10

    人件費 35 35

    その他 6 6

    計 88 88

    (単位:百万円)

    ※備品費の内訳 (購入金額 5 百万円以上の高額な備品の購入状況を記入してください)

    (装置名:購入期日,購入金額,購入テーマの順)

    ① 高性能電気化学測定システム:2003 年 11 月,6 百万円,サブテーマ1

    ② 分析走査電子顕微鏡:2004 年 11 月,13 百万円,サブテーマ1

    ③ フーリエ変換赤外分光システム:2005 年 1 月,8 百万円,サブテーマ1

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    10

    【民間共同研究機関】

    サブテーマ1 サブテーマ2 サブテーマ3 計

    設備備品費 25 25

    試作品費 0 0

    消耗品費 58 58

    人件費 0 0

    その他 6 6

    計 89 89

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    11

    5. 研究成果の発表状況 (本課題による成果に限り記入してください)

    ■ 研究発表件数

    原著論文による発表 (査読付き)

    左記以外の誌上発表 口頭発表 合 計

    国 内 3 件 9 件 17 件 29 件

    海 外 14 件 1 件 10 件 25 件

    合 計 17 件 10 件 27 件 54 件

    ■ 特許等出願件数

    1 件 (うち国内 1 件、国外該当なし)

    ■ 受賞等

    1 件 (うち国内 1 件、国外該当なし)

    1) P. Elumalai, M. Hasei and N. Miura : 「Effect of Thickness of Cr2O3 Sensing-Electrode on Sensing Properties of

    YSZ-based NO2 Sensor」, World Young Ceramist Meeting 2006 Presentation Award, 2006. 1. 20

    ■ 主な原著論文による発表

    国内誌(国内英文誌を含む)

    1) 小野敬, 長谷井政治, 厳永鉄, 国元晃, 三浦則雄: 「酸化物電極を用いた混成電位式 NOxセンサの検知性

    能」, 電気化学会論文誌 E, 124 巻 11 号, 428, (2004)

    2) M. Nakatou, N. Miura : 「NOx Sensing Performances in Various Mixed Gases at High Temperature for Complex

    Impedance-base Zirconia Sensor」, J. Ceram. Soc. Japan, 112(5), S532-S534, (2004)

    3) P. Elumalai, M. Hasei, N. Miura : 「Influence of Thickness of Cr2O3 Sensing-Electrode on Sensing Characteristics

    of Mixed-potentional-type NO2 Sensor based on Stabilized Zirconia」, Electrochemistry, 74(2), 197-201, (2006)

    海外誌

    1) N. Miura, K. Akisada, J. Wang, S. Zhuiykov, T. Ono : 「Mixed-Potential-Type NOx Sensor Based on YSZ and

    Zinc Oxide Sensing Electrode」, Ionics, 10, 1-9, (2004)

    2) N. Miura, M. Nakatou, K. Akisada, S. Zhuiykov : 「High-Temperature NOx Sensor Based on YSZ and Oxide

    Electrode」, Solid State Ionics : Sci. & Tech. Ions in Motion, World Scientific 647-657, (2004)

    3) P. Elumalai, N. Miura : 「 Influence of Annealing Temperature of NiO Sensing-Electrode on Sensing

    Characteristics of YSZ-Based Mixed-Potential-Type NOx Sensor」, Chemical Sensors Ⅵ : Chemical and

    Biologgical Sensors and Analytical Methods, ECS, 8, 80-88, (2004)

    4) N. Miura, M. Nakatou, S. Zhuiykov : 「Development of NOx Sensing Devices Based on YSZ and Oxide

    Electrode Aiming for Monitoring Car Exhausts」, Ceramics International, 30, 1135-1139, (2004)

    5) M. Nakatou, N. Miura : 「Impedancemetric sensor based on YSZ and In2O3 for detection of low concentrations of

    water vapor at high temperature」, Electrochem. Commum., 6, 995-998, (2004)

    6) S. Zhuiykov, N. Miura, 「Solid-State Electrochemical Gas Sensors for Emission Control」, Materials for Energy

    Conversion Devices, Chapter 12, 303-335, (2005)

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    12

    7) N. Miura, J. Wang, M. Nakatou, P. Elumalai and M. Hasei : 「 NOx Sensing Characteristics of

    Mixed-Potential-Type Zirconia Sensor Using NiO Sensing Electrode at High Temperatures」 Electrochem.

    Solid-State Lett., 8, H9-H11, (2005)

    8) P. Elumalai, N. Miura : 「Performances of planar NO2 sensor using stabilized zirconia and NiO sensing electrode

    at high temperatures」, Solid Sate Ionics, 176, 2517-2522, (2005)

    9) P. Elumalai, J. Wang, S. Zhuiykov, D. Terada, M. Hasei, N. Miura : 「Sensing Characteristics of YSZ-based

    Mixed-potential-type Planar NOx Sensors Using NiO Sensing-electrodes Sintered at Different Temperatures」,

    J. Electrochem. Soc., 152 (7), H95-H101, (2005) 10) N. Miura, J. Wang, M. Nakatou, P. Elumalai, S. Zhuiykov, M. Hasei : 「High-temperature Operating

    Characteristics of Mixed-potential-type NO2 Sensor Based on Stabilized-zirconia Tube and NiO Sensing

    electrode」, Sensors and Actuators B, 114, 903-909, (2006)

    11) J. Wang, P. Elumalai, D. Terada, M. Hasei, N. Miura : 「Mixed-potential-type zirconia-based NOx sensor

    using Rh-loaded NiO sensing electrode operating at high temperatures」, Solid State Ionics, in press

    12) Zhuiykov, N. Miura : 「Development of zirconia-based potentiometric NOx sensors for automotive and energy

    industries in the early 21st century : What are the prospects for sensors?」, Sens. Actuators B, in press

    13) M. Nakatou, N. Miura : 「Detection of propene by using new-type impedancemetric zirconia-based sensor

    attached with oxide sensing-electrode」, Sens. Actuators B, in press

    14) N. Miura, T. Koga, M. Nakatou, P. Elumalai, M. Hasei : 「Electrochemical NOx sensors based on stabilized

    zirconia : comparison of sensing performances of mixed-potential-type and impedancemetric NOx sensors」, J.

    Electroceram., in press

    ■ 情報発信(一般向けのセミナー、Web 公開等)

    該当なし

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    13

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する基礎的研究

    1.1. センサ電極材料の検討・評価

    1.1.1. 混成電位型ジルコニア NOx センサ用検知極材料の探索

    九州大学産学連携センター・三浦研究室

    三浦 則雄、 王 健

    ■ 要 旨

    混成電位型ジルコニア NOx センサの検知極材料として種々の酸化物を検討した結果、ZnO で良好な結果が得られた。

    また、NOx感度の異なる ZnO と In2O3 について酸素センサとしての応答特性を調べたところ、いずれの場合も酸素電極とし

    ての電気化学活性は同程度に高かった。また、ZnO、In2O3 および Co3O4 の気相 NO2 分解反応に対する触媒活性は、NO2

    感度の高いものほど触媒活性が低いことがわかった。以上の結果より、触媒活性が高いとき、NO2 が酸化物層を通過する

    際に分解され、電気化学反応サイトである気相、検知極、YSZ の三相界面における NO2 の実効濃度が低くなるのに対して、

    活性が低い場合には、三相界面まで NO2 の実効濃度を高く維持できるため、高温でも高い感度を示すと考えられる。

    ■ 目 的

    車載用 NOxセンサとして混成電位型ジルコニア NOx センサが注目されている。そこで、ジルコニア NOx センサの優れた

    検知極材料を見出すことを目的として、種々の単独金属酸化物を検知極として用いたときの NOx 応答特性について検討

    した。さらに、各酸化物についての酸素電極特性や NO2 の気相分解特性を比較することにより、高感度発現メカニズムの

    検討を行った。

    ■ 研究目標

    センサ電極材料の検討・評価として、優れた NOx センサ用検知極材料の探索を行う。

    ■ 目標に対する結果

    比較を行った単独酸化物の中では、ZnOを検知極として用いた場合に、700℃においてはNOxに対して最も大きな感度

    を示すことがわかった。

    ■ 研究方法

    作製したセンサ素子の模式図を図-1 に示す。固体電解質には 8 mol% イットリア安定化ジルコ二ア(YSZ)の一端封止管

    を用いた。この管内部の先端と外側表面に Pt ペーストを塗布し、1000℃で焼結させて参照極と対極を作製した。次に、各

    種酸化物の粉末とエチルセルロース(+5wt.% α-テルピネオール)を1:1の重量比で混練してペーストを調製した。これを

    YSZ 管の先端の外側表面に帯状に塗布し、100℃で乾燥させた後、酸化物層の上に Pt 線を集電体として巻きつけた。その

    後、800℃で空気中において熱処理することにより検知極とした。センサ応答としては、空気または被検ガス(空気希釈 NO2

    または NO)を流通させた時の検知極と参照極間の電位差(起電力)を、600~700℃で測定した。また、種々のガス雰囲気下

    での分極曲線を、3 電極法により測定した。

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    14

    ■ 研究成果の内容

    図-2 は、種々の酸化物検知極を用いた NOx センサで得られた NO と NO2 の EMF 値を示した(作動温度 600℃、NOx

    濃度 200 ppm)1)。図より、各種単独酸化物の中で ZnO を検知極として用いた場合に高い NO2 感度が得られることがわかる。

    図-3 に、ZnO 検知極を用いた素子について、700℃における種々の濃度の NO2 に対する応答曲線を示した2)。100 ppm

    NO2 に対して約 60 mV という高い感度が得られており、90%応答時間も約 10 秒と速かった。また、図-4 に示すように、600

    ~700℃において EMF 値は NOx 濃度の対数に比例する相関を示した。また、NO2 と NO に対する感度の方向は逆で、NO

    よりも NO2 感度の方がかなり大きかった。

    ところで、本タイプのセンサにおいては、NO2 を検知する場合には、検知極において次のような2つの電気化学反応が同時

    に起こることにより、混成電位が発生していると考えられる。

    2NO2 + 4e- → 2NO + 2O2- (1)

    2O2- → O2 + 4e- (2)

    一方、NO 検知の場合には、それぞれ逆の反応が進行することにより、反対方向の混成電位応答を示す。このような混成電

    位は上記各反応の分極曲線の交点で与えられる。作動温度 700℃で、200ppm の NO、NO2 および空気に対する分極曲線

    を図-5 に示す。分極曲線の交点より求めた混成電位値と実際のセンサ応答値を表 1 に示す。これらは、非常によい一致を

    示し、混成電位応答モデルの妥当性が確認できた3)。

    次に、感度発現メカニズムについて検討を行った。ZnO と In2O3 を用いた素子について、酸素センサとしての応答特性を

    調べたところ、いずれの場合も酸素電極としての電気化学活性は同程度に高いことがわかった(図-6)。一方、3 種類の酸

    化物(ZnO、In2O3および Co3O4)の高温での気相 NO2分解反応に対する触媒活性は、図-7 に示すように、NO2感度の高い

    ものほど触媒活性が低いことがわかった。以上の結果より、触媒活性が高い場合には、NO2 が酸化物層を通過する際に分

    解されてしまうため、三相界面での NO2 の実効濃度が低くなるが、活性が低い場合には、逆に NO2 の実効濃度を高く維持

    できるため、高温でも高い感度を示すと考えられる。

    Oxide(SE)

    Pt wire

    Pt paste

    Pt mesh (RE)

    YSZ

    図-1 ジルコニア NOxセンサ素子の模式図

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    15

    図-6 種々の酸化物を検知極としたときの酸素

    センサとしての応答特性

    -80

    -60

    -40

    -20

    0

    20

    40

    1 10 100

    O2 concentration / %

    EM

    F / m

    V

    □ Pt△ In2O3● ZnO

    48 mV/decade

    36 mV/decade

    図-7 種々の酸化物を触媒としたときの NO2 転

    化率の反応温度依存性

    図-2 種々の酸化物を検知極に用いたときの

    NO および NO2 に対する起電力値(作動温度

    600℃、被検ガス濃度 200ppm)

    図-3 ZnO を検知極とするセンサの 700℃にお

    ける種々の濃度の NO2 に対する応答曲線

    図-4 ZnO を検知極とするセンサにおける 600-

    700℃での NOx 濃度と EMF 値の関係 図-5 ZnO を検知極とするセンサに対する 200 ppm

    NO、200 ppm NO2 および空気中の分極曲線

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    16

    ■ 考 察

    混成電位型ジルコニア NOxセンサの NO2 感度は、検知極材料の NO2 分解反応の触媒活性に大きく依存していることが

    明らかとなった。その結果より、電気化学反応サイトである気相、検知極および YSZ の三相界面における NO2 実効濃度を

    高く維持することで高い NO2 感度を得ることができると考えられる。

    ■参考(引用)文献

    1) N. Miura, S. Zhuiykov, T. Ono, M. Hasei and N. Yamazoe: 「Mixed potential type sensor using stabilized zirconia and

    ZnFe2O4 sensing electrode for NOx detection at high temperature」, Sens. Actuators B, 83, 222-229, (2002)

    2) E.L. Brosha, R. Mukundan, D.R. Brown, F.H. Garzon and J.H. Visser: 「Development of ceramic mixed potential

    sensors for automotive applications, Solid State Ionics, 148, 61-69, (2002)

    3) N.F. Szabo, H. Du, S.A. Akbar, A. Soliman and P.K. Dutta: 「Microporous zeolite modified yttria stabilized zirconia

    (YSZ) sensors for nitric oxide (NO) determination in harsh environments」, Sens. Actuators B, 82, 142-149, (2002)

    ■ 関連特許

    1. 基本特許 (当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)

    1) 平成 6 年 7 月 28 日出願, 平成 8 年 2 月 16 日公開, 平成 16 年 1 月 30 日登録, 「窒素酸化物センサ」, (発明

    者) 黒澤秀行, 長谷井政治, 山添昇, 三浦則雄, (特許権者) 株式会社リケン, 特願平 6-194605, 特開平

    8-43346, 特許第 3516488 号, 特許公報 (B2)

    固体電解質体に接する電極間の起電力変化によって窒素酸化物濃度を検出し、検知極材料として6a族から選

    ばれた金属の酸化物で構成されたセンサに関する特許。「電極材料の検討」に関連。

    2. 参考特許 (当該課題に関連する周辺特許) 該当なし

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    17

    ■ 成果の発表

    (成果発表の概要)

    1. 原著論文による発表(査読付き) 3 報 (筆頭著者:3 報、共著者:0 報)

    2. 原著論文による発表(査読なし) 0 報

    3. 原著論文以外による発表

    (レター、レビュー、出版等)

    国内誌:0 報、国外誌:0 報、書籍出版:0 冊

    4. 口頭発表 招待講演:2 回、主催講演:0 回、応募講演:0 回

    5. 特許出願 出願済み特許:0 件 (国内:0 件、国外:0 件)

    6. 受賞件数 0 件

    1. 原著論文による発表(査読制度のある雑誌への投稿のみ。本文中の成果の番号と対比)

    1) N. Miura, K. Akisada, J. Wang, S. Zhuiykov, T. Ono : 「Mixed-Potential-Type NOx Sensor Based on YSZ and

    Zinc Oxide Sensing Electrode」, Ionics, 10, 1-9, (2004)

    2) N. Miura, M. Nakatou, K. Akisada, S. Zhuiykov : 「High-Temperature NOx Sensor Based on YSZ and Oxide

    Electrode」, Solid State Ionics : Sci. & Tech. Ions in Motion, World Scientific, 647-657, (2004)

    3) S. Zhuiykov, N. Miura, 「Solid-State Electrochemical Gas Sensors for Emission Control」, Materials for Energy

    Conversion Devices, Chapter 12, 303-335, (2005)

    2. 原著論文による発表(査読制度のない雑誌への投稿)

    該当なし

    3. 原著論文以外による発表(レビュー等)

    国内誌

    該当なし

    国外誌

    該当なし

    書籍出版

    該当なし

    4. 口頭発表

    招待講演

    1) N. Miura, K. Akisada, M. Nakatou, S. Zhuiykov:「High-Temperature NOx Sensor Based on YSZ and Oxide

    Electrode」, The 9th Asian Conference on Solid State Ionics, 2004.6.10

    2) 三浦則雄:「実用化を目指した高性能化学センサの開発」, The 5th International固体化学の新しい指針を探る

    研究会第49 回定例研究会, 2004.9.24

    応募・主催講演等

    該当なし

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    18

    5. 特許等出願等

    該当なし

    6. 受賞等

    該当なし

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    19

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する基礎的研究

    1.1. センサ電極材料の検討・評価

    1.1.2. 酸化ニッケルを検知極とした混成電位型ジルコニア NOx センサの高温作動特性

    九州大学産学連携センター・三浦研究室

    三浦 則雄、 王 健

    ■ 要 旨

    種々の単独金属酸化物を選び、混成電位型ジルコニア NOx センサの検知極材料として用いたときの 800~900℃の高

    温環境下における NO2 感度について検討した。その結果、NiO が高温でも良好な作動特性を示すことを見出した。また、

    乾燥検知ガスよりも検知ガスに水蒸気が含まれている方が、感度が向上し、回復速度が速かった。インピーダンス測定の結

    果より、水蒸気共存下の方が酸素の電気化学的反応がよりスムーズに進行していることが示唆された。実際の排ガスには、

    水蒸気が含まれていることも考慮すると、NiO は高温作動型 NOx センサの検知極材料として有望であることが分かった。

    ■ 目 的

    酸化物検知極を用いた混成電位型NOxセンサを提案、検討しているが、その最高作動温度は600℃程度である。さらに

    高温で作動させると感度は急激に低下する傾向が見られた。そこで、本研究では、より高温においても良好な作動が可能

    なセンサ素子を得ることを目的として、種々の酸化物を検知極材料として用いたときの NO2 応答特性について検討を加え

    た。

    ■ 研究目標

    センサ電極材料の検討・評価として、600℃以上の高温においても良好な感度を示す検知極材料の探索を行う。

    ■ 目標に対する結果

    検討を行った 13 種類の単独金属酸化物の中で、NiO が 800~900℃という高温条件下でも NOx センサの検知極として

    最も良好な応答特性を示すことがわかった。

    ■ 研究方法

    検知極材料としては種々の単独金属酸化物を選び、これらの各粉末とα-テルピネオールを混練することによりペースト

    を調製した。このペーストを市販のイットリア安定化ジルコニア(8-YSZ)管の外部表面にベルト状に塗布し、空気中、1200℃

    (または 1400℃)で焼成することにより検知極を形成した。YSZ 管の内部先端には Pt ペ-ストを焼き付けることにより、大気

    開放型参照極を形成し、検知極と参照極との電位差(起電力)をセンサ信号としてエレクトロメータにより測定した。センサ

    応答特性は、ガス流速を 100 cm3/min、作動温度を 800~900℃、NOx 濃度を 10~400 ppm とした条件下において測定し

    た。

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    20

    ■ 研究成果の内容

    13 種類の単独酸化物を検知極材料として用い、850℃という高温において 400 ppm NO2(乾燥合成空気希釈)に対する

    起電力応答値を調べたところ、図-1 に示すように、NiO を用いた時に 40 mV という最も高い NO2 感度が得られることを見

    出した。これまで、混成電位型 NOx センサで報告された作動温度は 700℃が最高であり、このように高温においても良好な

    NO2感度が得られたのは初めてである。

    応答速度については、より実際の排ガス条件に近い 5 vol.% O2 (N2 バランス) 希釈ガスを用いて検討した。その結果、

    図-2 (a) に示すように乾燥ガス中では特に回復特性が悪く、400 ppm NO2 に対しては 850℃においても元のレベルまで回

    復するにはかなりの時間がかかった。一方、5 vol.% の水蒸気を混合した場合には、図-2 (b) に示すように、感度がやや向

    上するとともに、回復速度も大幅に改善されて、元のレベルまで迅速に戻る回復特性が得られた。また、50 ppm NO2 対し

    ても約 25 mV の起電力応答を示した。図-3 は、5 vol.% O2 + 5 vol.% H2O (N2 バランス)雰囲気中における 10 ~ 400 ppm

    の NO2 に対する本素子の応答曲線である。850℃の高温で NO2に対して良好な感度と応答速度を示すことが分かった1)。

    図-4には800~900℃でのガス感度のNO2濃度依存性を示した。5 vol.% H2O共存下においては乾燥ガス中にくらべて、

    NO2 感度がやや増加し、感度と NO2 濃度の直線性が改善されている。

    このような水蒸気共存による応答特性の改善効果の原因を調べるために、センサ素子の複素インピーダンス測定を 0.01

    Hz ~ 1 MHz の周波数範囲で行ったところ、図-5 に示すように、乾燥空気中よりも 5 vol.% H2O が共存した場合の方が、

    電極反応抵抗に起因すると見られる高周波数側の半円弧が大幅に縮小することが分かった 2)。このことは、NiO/YSZ 界面

    図-1 種々の単独金属酸化物を検知極としたときの 850℃、400 ppm NO2 に対する起電力値の比較

    0 10 20 30 40EMF / mV

    850 ℃400 ppm NO2

    NiOSnO2

    Fe2O3

    Ga2O3TiO2

    Cr2O3ZnO

    Nb2O5In2O3

    CuOCo3O4

    CeO2Ta2O5

    Pt

    図-2 NiO を検知極とするセンサの 850℃、400 ppm NO2 + 5

    vol.% O2(N2 バランス)に対する応答曲線、(a)乾燥、(b)5 vol.%

    水蒸気共存下

    -40

    -30

    -20

    -10

    0

    10

    20

    30

    40

    0 10 20 30 40 50Time / min

    EM

    F / m

    V

    + 5 vol.% H2O

    850℃400 ppm NO2

    (a) (b)

    図-3 NiO を検知極とするセンサの種々の濃度の NO2 に対す

    る応答曲線(作動温度 850℃)

    -40

    -20

    0

    20

    40

    60

    80

    0 5 10 15 20 25 30 35Time / min

    EM

    F  /  

    mV

    10 ppm20 ppm

    50 ppm

    100 ppm

    200 ppm300 ppm

    400 ppm400 ppm

    850℃ NO2

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    研究成果の詳細報告

    21

    における酸素の電気化学的反応が、乾燥雰囲気中よりも水蒸気共存下の方がよりスムーズに進行することを示している。

    水蒸気共存によるこのような特性改善効果は、別に行った分極曲線の測定結果からも説明できることを確認した。本研究

    に関連する「引用文献 5.」によると、水蒸気環境下で酸素の電気化学反応が促進される現象は、電解質と電極としてそれ

    ぞれ LaGaO3 と Ba(La)CoO3 を用いた燃料電池においても報告されている。

    以上の結果より、NiO は自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの検知極材料として有望であることが分かった。

    ■ 考 察

    13種類の単独金属酸化物について、NOxセンサの検知極として検討したところ、NiOが高温環境下で最も良好な作動特

    性を示した。水蒸気共存下で、感度が向上し、回復速度が速くなったことから、水蒸気を含む実際の排ガス環境下で、優

    れたセンサ特性を示すことが期待される。

    ■ 参考(引用)文献

    1) N. Miura, S. Zhuiykov, T. Ono, M. Hasei and N. Yamazoe : 「Mixed potential type sensor using stabilized zirconia

    and ZnFe2O4 sensing electrode for NOx detection at high temperature」, Sensors & Actuators B, 83, 222-229,

    (2002)

    2) 三浦則雄、中藤充伸 : 「排ガス監視用高温作動型固体電解質 NOx センサ」, 未来材料, 3, 44-51, (2003)

    3) N. Miura, K. Akisada, J. Wang, S. Zhuiykov, T. Ono : 「Mixed-Potential-Type NOx Sensor Based on YSZ and Zinc

    Oxide Sensing Electrode」, Ionics, 10, 1-9, (2004)

    4) N.F. Szabo, H. Du, S.A. Akbar, A. Soliman and P.K. Dutta : 「Microporous zeolite modified yttria stabilized

    zirconia (YSZ) sensors for nitric oxide (NO) determination in harsh environments」, Sens. Actuators B, 82, 142-149,

    (2002)

    5) 石原達己, 福井佐登子, 西口宏泰, 滝田祐作 : 「酸化物固体電解質形燃料電池用 Ba(La)CoO3 空気極の酸素

    解離触媒能に及ぼす H2O の共存効果」, 触媒, 45, 89-91, (2003)

    ■ 関連特許

    1. 基本特許 (当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)

    1) 平成 6 年 7 月 28 日出願, 平成 8 年 2 月 16 日公開, 平成 16 年 1 月 30 日登録, 「窒素酸化物センサ」, (発明

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    10 100 1000NO2 concentration / ppm

    ΔE

    MF

    / mV

    NO2 800

    850℃

    900℃

    800℃

    dry+ 5 vol.% H2O

    850900

    図-4 各作動温度における起電力応答の NO2 濃度依存性 図-5 NiO を検知極とするセンサの乾燥および加湿条件下で

    の複素インピーダンスプロット(850℃)

    0

    2

    4

    6

    0 2 4 6 8 10 12Z' / kΩ

    -Z''

    / kΩ

    5 vol.% O2 + 5 vol.% H2O

    5 vol.% O2

    850℃

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    22

    者) 黒澤秀行, 長谷井政治, 山添昇, 三浦則雄, (特許権者) 株式会社リケン, 特願平 6-194605, 特開平

    8-43346, 特許第 3516488 号, 特許公報 (B2)

    固体電解質体に接する電極間の起電力変化によって窒素酸化物濃度を検出し、検知極材料として6a族から

    選ばれた金属の酸化物で構成されたセンサに関する特許。「電極材料の検討」に関連。

    2. 参考特許 (当該課題に関連する周辺特許) 該当なし

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    23

    ■ 成果の発表

    (成果発表の概要)

    1. 原著論文による発表(査読付き) 2 報 (筆頭著者:2 報、共著者:0 報)

    2. 原著論文による発表(査読なし) 1 報

    3. 原著論文以外による発表

    (レター、レビュー、出版等)

    国内誌:0 報、国外誌:0 報、書籍出版:0 冊

    4. 口頭発表 招待講演:0 回、主催講演:0 回、応募講演:2 回

    5. 特許出願 出願済み特許:1 件 (国内:1 件、国外:0 件)

    6. 受賞件数 0 件

    1. 原著論文による発表(査読制度のある雑誌への投稿のみ。本文中の成果の番号と対比)

    1) N. Miura, J. Wang, M. Nakatou, P. Elumalai and M. Hasei : 「 NOx Sensing Characteristics of

    Mixed-Potential-Type Zirconia Sensor Using NiO Sensing Electrode at High Temperatures」 Electrochem.

    Solid-State Lett., 8, H9-H11, (2005)

    2) N. Miura, J. Wang, M. Nakatou, P. Elumalai, S. Zhuiykov, M. Hasei : 「 High-temperature Operating

    Characteristics of Mixed-potential-type NO2 Sensor Based on Stabilized-zirconia Tube and NiO Sensing

    electrode」, Sensors and Actuators B, 114, 903-909, (2006)

    2. 原著論文による発表(査読制度のない雑誌への投稿)

    1) J. Wang, M. Nakatou, N. Miura : 「Mixed-Potential-Type Zirconia Sensor Using Nickel Oxide Sensing-Electrode

    for Detection of NOx at High Temperatures」, Chemical Sensors, 20, Supplement B, 230-231, (2004)

    3. 原著論文以外による発表(レビュー等)

    国内誌

    該当なし

    国外誌

    該当なし

    4. 口頭発表

    招待講演

    該当なし

    応募・主催講演等

    1) 王 健, 中藤充伸, 三浦則雄 : 「酸化ニッケルを検知極とした混成電位型ジルコニア NOx センサの高温作動特

    性」, 東京, 第 38 回化学センサ研究発表会, 2004.3.24

    2) J. Wang, M. Nakatou, N. Miura : 「Mixed-Potential-Type Zirconia Sensor Using Nickel Oxide Sensing-Electrode

    for Detection of NOx at High Temperatures」, Tusuba, The 10th International Meeting on Chemical Sensors,

    2004.7.11

    5. 特許等出願等

    1) 平成 16 年 9月 24 日出願, 平成 18 年 4 月6 日公開, 「窒素酸化物センサ」, (発明者) 長谷井政治, 三浦則雄, (出

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    24

    願人) 株式会社リケン, 三浦則雄, 公開特許公報 (A), 特許公開 2006-90898

    低濃度の窒素酸化物濃度を高精度に検出可能であって、700℃を超える作動温度においても十分な検知精度を示

    す窒素酸化物センサに関する特許。「電極材料の検討」に関連。

    6. 受賞等

    該当なし

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    25

    1. 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサに関する基礎的研究

    1.1. センサ電極材料の検討・評価

    1.1.3. Rh 添加 NiO 検知極を用いた混成電位型ジルコニア NOx センサの高温作動特性

    九州大学産学連携センター・三浦研究室

    三浦 則雄、 王 健、 ペルマル エルマレイ、 寺田 大将

    株式会社リケン 研究開発部

    長谷井 政治

    ■要 旨

    イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板をベース材料とする混成電位型NOxセンサの応答特性の向上を目指し、NiOに貴

    金属を添加した。検討した貴金属(白金(Pt), ロジウム(Rh), イリジウム(Ir), パラジウム(Pd)およびルテニウム(Ru))のうち、Rh

    を添加した場合に、NO2 感度が大きく向上した。さらに、Rh の添加量が 3 wt.% のとき、もっとも高い感度を示した。この 3

    wt.% 添加 NiO 検知極を用いたセンサでは、800℃の高温環境下でも、50 ppm NO2 に対して 77 mV もの高い応答値を示し

    た(5 vol.% 水蒸気共存下)。このセンサは、800℃で共存する H2O や CO2 の濃度が変化しても NO2 感度がほとんど変化せ

    ず、さらに、50日間ほぼ安定に作動した。Rh添加によって検知極/YSZ界面のNO2のカソーデック反応が促進された結果、

    NO2 感度が大きく向上したものと考えられる。

    ■目 的

    これまで検討されてきた固体電気化学式 NOx センサの中で、金属酸化物を検知極とする混成電位型ジルコニア NOx セ

    ンサが、車載用 NOx センサとして有望視されている。実用的な面からみると、このタイプの NOx センサは、数十 ppm の NOx

    に対しても高い感度を示し、制御回路が比較的安価であるという利点を有する。そこで、混成電位型ジルコニア NOx セン

    サに注目し、種々の酸化物検知極について検討した結果、混成電位型センサの感度が大幅に低下すると考えられていた

    800~900℃という高温でも、NiO を検知極材料とする NO2 センサが良好に作動することを見出した。さらに、このセンサは、

    乾燥雰囲気中よりも水蒸気を含む雰囲気中で回復速度が向上することが明らかとなっている。しかしながら、実用化のため

    にはさらなる性能向上が求められている。

    ところで、少量の貴金属を添加して応答特性を改善する方法は、半導体ガスセンサではよく用いられる。混成電位型

    NOxセンサの場合にも、ZrFe4O4検知極にPtを添加することによって応答速度が改善できることを以前報告した。本研究で

    は、さらなる性能向上を目指して、NiO 検知極に貴金属を添加した場合の応答特性について実験を行い、貴金属添加によ

    る応答特性改善について検討を行った。

    ■ 研究目標

    センサ電極材料の検討・評価として、混成電位型 NOx センサの新規検知極材料としての NiO に、第 2 成分を添加する

    ことにより応答特性のさらなる改善を行う。

    ■ 目標に対する結果

    検討した 5 種類の貴金属(Pt, Rh, Ir, Pd, Ru)のうち、Rh を NiO に 3 wt.% 添加した場合に、応答特性の大幅な改善が見

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    26

    られた。

    ■研究方法

    YSZ 基板(8 mol% Y2O3 添加、10×10mm、厚さ 0.2mm)を平板型センサの基板として用いた。市販の NiO 粉末(高純度化

    学製, 純度 99.97%)と適当な量の Rh コロイド溶液(田中貴金属製, 濃度 2.95wt%)を混合し、水分を蒸発させた後に、α-

    テルピネオールと混錬し、ペーストを作製した。櫛状の Pt 集電体を付加した YSZ 基板に、スクリーン印刷法を用いてペース

    トを塗布して検知極とした。市販の Pt ペーストを YSZ 基板の反対側へ塗布することにより、参照極を作製した。その後、YSZ

    基板を 130℃で 2 時間大気中で乾燥させた後、1400℃で 2 時間、大気中で焼成して素子を作製した。図-1(a)に平板型セ

    ンサの模式図を示す。

    3 wt.% Rh 添加 NiO 粉末の結晶構造を X 線回折装置(XRD, リガク製, RINT 2100VLR/PC)で調べた。X線源は、CuK

    α(λ=1.5406Å)を用い、0.5゜/min の速度で測定した。検知極は、走査電子顕微鏡(SEM, 日立製, S-3000N)を用いて

    加速電圧 20kV で観察を行い、付属のエネルギー分散型 X 線分析装置(EDX, 堀場製作所製, EX-220SE)を用いて元素

    分析を行った。

    応答特性について、図-1(b)に示すガスフロー装置にセンサ素子を設置し、NOx 応答の評価を行った。ベースガスは、5

    vol.% O2+5 vol.% H2O+N2 バランスとした。サンプルガスとして、5~100 ppm の種々の濃度の NO2 を含むガスを用いた。サ

    ンプルガス中の O2 と H2O の濃度は、常に 5 vol.%とした。ベースガスとサンプルガスは流量 100cm3min-1 で導入した。平板

    型センサであるため、ガスをフローセルに導入すると、検知極と参照極はベースガスまたはサンプルガスに同時に接触する。

    その際に生じる検知極と参照極間の起電力(emf)を、検知信号としてデジタルエレクトロメーター(Advanst, R8240)を用い

    て測定した。作動温度は 800~850℃とした。電流-電圧曲線(分極曲線)は、ベースガス(5 vol.% O2+N2 バランス)中とサ

    ンプルガス(50 ppm NO2+5 vol.% O2+N2 バランス)中で、2 端子法により 2 mV/s のスキャン速度で測定した。縦軸(電流

    軸)は、カソーデック分極曲線からアノーデック分極曲線を差し引いて絶対値で示した。複素インピーダンス解析装置

    Draft chamber

    Exhaust

    Electrometer or Impedance analyzer

    Temperature controller

    Flow controller

    Bulb

    Heater

    Computer

    Quartz tube

    H2O vapor generator

    O2

    NO

    2

    N2

    Sensor

    Front side Back side

    PtRh-NiO YSZ

    (a) (b)

    5 vo

    l.% O

    2

    Draft chamber

    Exhaust

    Electrometer or Impedance analyzer

    Temperature controller

    Flow controller

    Bulb

    Heater

    Computer

    Quartz tube

    H2O vapor generator

    O2

    NO

    2

    N2

    Sensor

    Front side Back side

    PtRh-NiO YSZ

    (a) (b)

    5 vo

    l.% O

    2

    Draft chamber

    Exhaust

    Electrometer or Impedance analyzer

    Temperature controller

    Flow controller

    Bulb

    Heater

    Computer

    Quartz tube

    H2O vapor generator

    O2

    NO

    2

    N2

    O2

    NO

    2

    N2

    N2

    Sensor

    Front side Back side

    PtRh-NiO YSZ

    (a) (b)

    5 vo

    l.% O

    2

    図-1 平板型センサ(a)と応答特性評価装置(b)の模式図

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    27

    (Solatron, 1225WB)を用いて、800℃、周波数 0.01 Hz~1 MHz で、複素インピーダンスを測定した。

    1400℃で焼成した NiO 試料と 3 wt.% Rh 添加 NiO 試料について、フロー装置と化学発光 NOx 分析装置(Yanaco,

    ECL-88A)を用いて、200~700℃における NO2 から NO への気相分解活性を測定した。ガス接触時間(W/F)は、0.15 g s

    cm-3 とした。

    さらに、1400℃で焼成した NiO 粉末と 3 wt.% Rh 添加 NiO 粉末について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR, 日本分

    光(株)製フーリエ変換赤外分光光度計, FT/IR-6300)を用いて、各検知極の NO2吸着について検討した。測定の際には、

    図-1(b)で示したガスフロー装置を用いて FT-IR の試料室の雰囲気制御を行った。測定では、まず、200 mg の粉末を試料

    ホルダに充填した後、試料室に N2ガスを導入しながら 600℃まで加熱し、粉末に吸着している水分やガス等を除去した。そ

    の後、室温まで冷却した後、乾燥 N2 希釈の 500 ppm NO2 を試料室内に導入し、IR スペクトルの測定を行った。

    ■研究成果の内容

    図-2 に、1400℃、2 時間で焼成した NiO(a)と 3 wt.% Rh 添加 NiO(b)の各粉末の XRD パターンを示す。両者ともに、NiO

    (面心立方構造、JCPDS PDF #44-1159)のピークが見られる。焼成によって、NiO のピークはすべて鋭くなっている。3 wt.%

    Rh 添加 NiO のパターンで、40.24゜、47.01゜および 68.53゜に小さなピークが見られるが、これは Rh(JCPDS PDF #05-0685)

    のピークである。以上の結果より、NiO と Rh は、1400℃の高温で焼成しても固溶体とならないことがわかった。

    図-3(a)に 1400℃、2 時間焼成後の 3 wt.% Rh 添加 NiO の SEM 像を示す(反射電子像)。NiO 検知極中に Rh の粒子が比

    較的均一に分散しているのが分かる。NiO 粒子の直径は、3~5μm で、Rh 粒子の直径は約 1.5μm であった。図-3(b)に図

    -3 (a)中の領域 A の EDX 分析結果を示す。EDX スペクトルで最も強いピークが Rh であり、図-3 (a)の白い部分は Rh であ

    ることがわかる。

    1400℃でも安定な貴金属(Pd、Pt、Ru、Ir および Rh)を NiO 検知極に 12wt.%添加したセンサ素子について、800℃にお

    ける 50 ppm NO2 (5 vol.% O2, 5 vol.% H2O 含有)に対する NO2感度(Δemf)を測定した結果を図-4 に示す1)。ここで、Δemf

    とは、ベースガス中の emf 値とサンプルガス中の emf 値の差を示している。図より、添加した貴金属のうち、Rh 以外の貴金

    25 35 45 55 65 75 852θ / Degree

    Inte

    nsity

    / a.

    u.

    25 35 45 55 65 75 85

    (b)

    (a) NiORh

    2θ / degree

    Inte

    nsity

    / a.

    u.

    25 35 45 55 65 75 85

    (b)

    (a) NiORh

    2θ / degree

    Inte

    nsity

    / a.

    u.

    図-2 1400℃、2 時間焼成後の NiO(a)と 3 wt.% Rh 添加

    NiO(b)の XRD パターン

    Inte

    nsity

    Energy / keV

    10 μm

    (a)

    (b)

    A

    Inte

    nsity

    Energy / keV

    10 μm10 μm

    (a)

    (b)

    A

    図-3 1400℃、2 時間焼成後の 3 wt.% Rh 添加 NiO の

    SEM 像(a)と領域 A の EDX スペクトル(b)

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    28

    属を添加した場合、NiO 単独検知極よりも NO2 感度が低下しているのに対して、Rh を添加した場合にのみ、NO2 感度が向

    上しているのがわかる。そこで、Rh に着目し、さらに検討を行った。

    図-5 は、温度 800℃において 50 ppm NO2 に対するΔemf を 1~12wt.%の Rh 添加量に対してプロットしたものである。図

    より、いずれの添加量においても、Rh を添加することにより NO2 感度は向上しており、特に、Rh を 3 wt.%添加した場合に、

    NO2 感度が最大となることが明らかとなった。

    NiO 単独検知極と 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極をそれぞれ付加した素子について、800℃における種々の濃度の NO2 に

    対する応答曲線を図-6 に示す。図より、両者ともに NO2によく応答し、各 NO2濃度に対して定常値に達しているのがわかる。

    また、実験を行った 5~100 ppm の濃度範囲において、NiO 単独検知極を用いた素子よりも 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を

    用いた素子の方が NO2 感度が高い。しかしながら、応答速度と回復速度は、Rh の添加によりほとんど影響を受けていない

    ことがわかる。

    図-7 には、NiO 単独検知極と 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極をそれぞれ付加した素子について、800℃と 850℃におけるΔ

    emf 値の NO2 濃度依存性を示した2)。どちらの場合も、Δemf 値は NO2 濃度の対数に対してほぼ直線関係を示した。このよ

    うな関係は混成電位型センサでよく見られる。実験を行った条件下では、NiO 検知極の素子よりも、3 wt.% Rh 添加 NiO 検

    知極の方が常にΔemf 値が大きいことがわかる。例えば、800℃のときの 50 ppm NO2 に対するΔemf 値を比較すると、NiO

    単独検知極のときは 44 mV であるのに対して、3 wt.% Rh 添加 NiO の場合は 77 mV であった。さらに、3 wt.% Rh 添加 NiO

    NiO-SE(800℃ )

    15

    25

    35

    45

    Pd Pt Ru Ir None Rh

    Δem

    f/

    mV

    N iO-SE(800℃ )

    15

    25

    35

    45

    Pd Pt Ru Ir None Rh

    Δem

    f/

    mV

    図-4 種々の貴金属を添加した NiO 検知極を用いた素

    子の 50 ppm NO2 に対する 800℃における感度 (Δemf)

    (ベースガス : 5 vol.%O2 + 5 vol.% H2O + N2 バランス)

    0

    20

    40

    60

    80

    0 3 6 9 120 3 6 9 120 3 6 9 12

    Δem

    f/

    mV

    0 3 6 9 12

    Rh content / wt.%

    800℃50 ppm NO25 vol.% H2O

    (NiO-SE)

    0

    20

    40

    60

    80

    0 3 6 9 120 3 6 9 120 3 6 9 12

    Δem

    f/

    mV

    0 3 6 9 12

    Rh content / wt.%

    800℃50 ppm NO25 vol.% H2O

    (NiO-SE)

    図-5 800℃における 50 ppm NO2 に対する感度

    (Δemf)の Rh 濃度依存性 (ベースガス : 5 vol.% O2

    + 5 vol.% H2O + N2 バランス)

    10

    20

    50

    80100 ppm100

    5 ppm

    10 min

    20 m

    V

    (800℃)3 wt.% Rh-NiO

    NiO

    10

    20

    50

    80100 ppm100

    5 ppm

    10 min

    20 m

    V

    (800℃)3 wt.% Rh-NiO

    NiO

    図-6 NiO 単独検知極と 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を用い

    た素子の 800℃での NO2 に対する応答曲線(ベースガス : 5

    vol.%O2 + 5 vol.% H2O + N2 バランス)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    10 100NO2 conc. / ppm

    Δem

    f/

    mV

    3 wt.% Rh-NiO

    NiO

    850℃

    800℃

    50

    20

    40

    60

    80

    100

    10 100NO2 conc. / ppm

    Δem

    f/

    mV

    3 wt.% Rh-NiO

    NiO

    850℃

    800℃

    5

    図-7 NiO 単独検知極と 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知

    極を用いた素子に対するΔemf 値の 800℃での

    NO2 濃度依存性(ベースガス : 5 vol.% O2 + 5 vol.%

    H2O + N2 バランス)

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    29

    検知極を用いた素子は、800℃の高温においても 5 ppm NO2 に対して 14 mV もの高い感度を示した。混成電位型 NOx セ

    ンサで、このような高温での高感度 NO2 検出はこれまで報告されていない。

    ところで、実際の自動車排ガス中には、水蒸気と CO2 がそれぞれ 5~13 vol.%と 5~20 vol.%の濃度範囲で含まれている。

    そのため、水蒸気や CO2 の NO2 感度への影響を調べる必要がある。3 wt.% Rh 添加 NiO を検知極として用いた素子の 50

    ppm NO2 に対する感度について、共存する水蒸気と CO2 の濃度依存性を 800℃において調べた結果を図-8 に示す。図よ

    り、水蒸気や CO2 の濃度が広範囲にわたって変化しても、NO2 感度はほとんど変化していないことがわかる。

    実用化の面からみると、センサ素子の安定性が重要である。高温還元雰囲気下では NiO が還元される可能性があるた

    め、還元性ガスである CO を用いて、NiO 単独検知極と3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極について、800℃で素子を 1000 ppm CO

    を含むサンプルガスに 20 秒間曝露し、曝露前後の NO2 応答を調べた。図-9 にその結果を示す。素子の NO2 感度は CO

    曝露前後で変化は見られないことが分かる。この結果は、NiO が高温作動中に還元雰囲気に曝されても安定であることを

    示している。さらに、素子の長期安定性を調べるために、3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を用いた素子について、50 ppm と 100

    ppm の NO2 に対する感度を 50 日間測定した結果を図-10 に示す。図より、試験を行った 50 日間、NO2 感度はほとんど変

    化していないことがわかる。以上の結果より、応答速度と回復速度の改善やさらなる長期間の安定性を調べる必要はあるも

    のの、本センサ素子が高温でも作動する車載 NOx センサとして有望であることが明らかとなった。

    次に、NiO 検知極に Rh を添加することで応答特性が向上した原因を明らかにするために、検討を加えた。まず、800℃

    でベースガス(5 vol.% O2+N2 バランス)とサンプルガス(50 ppm NO2+5 vol.%O2+N2 バランス)中の電流-電圧曲線(分極

    曲線)の測定を行った。結果を図-11 に示す。縦軸(電流)は絶対値で示している。図より、酸素のアノーデック反応の分極

    (a)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    5 7 9 11 13 15H2O conc. / vol.%

    Δem

    f/

    mV

    800℃50 ppm NO25 vol.% O2

    (3 wt.% Rh-NiO)

    (b)

    800℃50 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    0 5 10 15 20

    CO2 conc. / vol.%

    Δem

    f/

    mV

    (3 wt.% Rh-NiO)

    (a)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    5 7 9 11 13 15H2O conc. / vol.%

    Δem

    f/

    mV

    800℃50 ppm NO25 vol.% O2

    (3 wt.% Rh-NiO)

    (b)

    800℃50 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    0 5 10 15 20

    CO2 conc. / vol.%

    Δem

    f/

    mV

    (3 wt.% Rh-NiO)

    図-8 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を用いた素子の 800℃におけ

    る 50 ppm NO2 に対する感度の H2O(a)と CO2(b)の影響

    -60

    -40

    -20

    0

    20

    40

    60

    80

    Em

    f/ m

    V

    (800℃)

    NiO

    Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    100 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    100 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    base

    base base

    Base gas:5 vol.% O25 vol.% H2ON2 balance

    1000 ppm COin N2 for 20 s

    2 min

    base

    -60

    -40

    -20

    0

    20

    40

    60

    80

    Em

    f/ m

    V

    (800℃)

    NiO

    Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    100 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    100 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    base

    base base

    Base gas:5 vol.% O25 vol.% H2ON2 balance

    1000 ppm COin N2 for 20 s

    2 min

    base

    -60

    -40

    -20

    0

    20

    40

    60

    80

    Em

    f/ m

    V

    (800℃)

    NiO

    Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    100 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    100 ppm NO25 vol.% O25 vol.% H2O

    base

    base base

    Base gas:5 vol.% O25 vol.% H2ON2 balance

    Base gas:5 vol.% O25 vol.% H2ON2 balance

    1000 ppm COin N2 for 20 s

    2 min2 min

    base

    図-9 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を用いた素子を

    800℃で 1000 ppm CO に暴露した前後の 100 ppm NO2に対する応答曲線

    0

    40

    80

    120

    0 10 20 30 40 50Time / day

    Δem

    f/

    mV

    100 ppm NO2

    50 ppm NO2

    (3 wt.% Rh-NiO)

    800℃5 vol.% O25 vol.% H2O15 vol.% CO2

    0

    40

    80

    120

    0 10 20 30 40 50Time / day

    Δem

    f/

    mV

    100 ppm NO2

    50 ppm NO2

    (3 wt.% Rh-NiO)

    800℃5 vol.% O25 vol.% H2O15 vol.% CO2

    図-10 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を用いた素子の 50

    ppm と100 ppm NO2に対する800℃での感度の長期安定製

  • 自動車触媒の性能監視用排ガスセンサの開発

    研究成果の詳細報告

    30

    0

    2

    4

    6

    -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90Emf / mV

    | I |

    / μ

    A

    50 ppm NO2

    NiO

    50 ppm NO2 Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    cal. 75 mVobs.77 mV

    5 vol.

    %O2

    cal. 42 mVobs.44 mV

    800℃5 vol.% O25 vol.% H2O

    0

    2

    4

    6

    -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90Emf / mV

    | I |

    / μ

    A

    50 ppm NO2

    NiO

    50 ppm NO2 Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    cal. 75 mVobs.77 mV

    5 vol.

    %O2

    cal. 42 mVobs.44 mV

    800℃5 vol.% O25 vol.% H2O

    0

    2

    4

    6

    -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90Emf / mV

    | I |

    / μ

    A

    50 ppm NO2

    NiO

    50 ppm NO2 Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    cal. 75 mVobs.77 mV

    5 vol.

    %O2

    cal. 42 mVobs.44 mV

    0

    2

    4

    6

    -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90Emf / mV

    | I |

    / μ

    A

    50 ppm NO2

    NiO

    50 ppm NO2 Rh-NiO

    NiO

    Rh-NiO

    cal. 75 mVobs.77 mV

    5 vol.

    %O2

    cal. 42 mVobs.44 mV

    800℃5 vol.% O25 vol.% H2O

    800℃5 vol.% O25 vol.% H2O

    800℃5 vol.% H2O5 vol.% O2

    0

    5

    10

    0 5 10 15

    Z' / kΩ

    -Z'‘

    / kΩ

    NiO

    Rh-NiO400 ppm NO2

    base ga

    s

    0.01 Hz

    1 MHz

    NiO ( ) NiO ( )

    Rh-NiO ( ) Rh-NiO ( )

    図-11 NiO 単独検知極と 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を

    用いた素子の 800℃における分極曲線(5 vol.% O2 中と 50 ppm NO2 中)

    図-12 NiO 単独検知極と 3 wt.% Rh 添加 NiO 検知極を用

    いた素子の 800℃における複素インピーダンスプロット(5

    vol.% O2 中と 400 ppm NO2 中)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    100 200 300 400 500 600 700 800Temperature / ℃

    NO

    2co

    nver

    sion

    / %

    Blank

    Rh-N

    iO(

    ) Ni

    O(

    )

    Equil

    ibrium

    100 ppm NO25 vol.% O20.2 g each

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    100 200 300 400 500 600 700 800Temperature / ℃

    NO

    2co

    nver

    sion

    / %

    Blank

    Rh-N

    iO(

    ) Ni

    O(

    )

    Equil

    ibrium

    100 ppm NO25 vol.% O20.2 g each

    図-13 1400℃で焼成した NiO 単独粉末と 3 wt.% Rh 添加

    NiO 粉末の NO2 の NO への転化率の温度依存性

    -0.01

    0.00

    0.01

    0.02

    0.03

    50070090011001300150017001900

    Wave number /cm-1

    Abs

    .

    NiO

    NiO+3 wt.% Rh

    1260

    1360

    16001629

    図-14 1400℃で焼成した NiO 単独粉末と 3 wt.% Rh 添加NiO 粉末に室温で 500 ppm NO2 を導入した時の FT-IR 吸収

    スペクトル

    曲線は、NiO 単独検知極と Rh 添加 NiO 検知極でほとんど変化していないのに対して、NO2 のカソーデック反応の分極曲

    線は Rh 添加によって大きく上側へシフトしているのがわかる。この結果より、酸素のアノーデック反応活性は Rh を添加して

    も変化しないのに対して、NO2のカソーデック反応活性は Rh 添加によって大きく向上すると考えられる。その結果として、検

    知極が NiO 単独から Rh 添加 NiO になると、アノーデック反応とカソーデック反応の分極曲線の交点が 42 mV から 75 mV

    へ増加し、感度が向上する。この交点の値は、実際に測定した素子の NO2 に対する起電力値とよく一致している。このよう

    に、分極曲線の交点の値と実測値が良く一致していることから、本センサ素子の応答メカニズムは、混成電位モデルによっ

    て説明することができる。

    Rh 添加による