「自治体の広報戦略についての調査研究」 春日部市の シティ・ … ·...

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かすかべ未来研究所 平成24年度研究報告 (研究テーマ) 「自治体の広報戦略についての調査研究」 春日部市の シティ・コミュニケーション力向上策

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Page 1: 「自治体の広報戦略についての調査研究」 春日部市の シティ・ … · 自治体における広報の意義は、以前と比較して大きく異なってきています。それは「広

かすかべ未来研究所 平成24年度研究報告

(研究テーマ)

「自治体の広報戦略についての調査研究」

春日部市の

シティ・コミュニケーション力向上策

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目次

はじめに ………………………………………………………………………………… 1

1 研究概要 ……………………………………………………………………………… 2

1.1 本調査研究の趣旨 ……………………………………………………………… 2

1.2 研究員のメンバー ……………………………………………………………… 3

1.3 チームの取組概要 ……………………………………………………………… 4

2 自治体がシティセールスを始めた理由 ………………………………………… 5

2.1 自治体を取り巻く環境要因 ………………………………………………… 5

2.2 3つの環境要因への対応策 ………………………………………………… 6

3 広報・PR(パブリック・リレーションズ)とは

~広義の広報と狭義の広報~ …………………………………………………… 7

4 シティセールスとは ……………………………………………………………… 9

4.1 シティセールスの定義 ……………………………………………………… 9

4.2 シティセールスの目的 ………………………………………………………… 10

4.3 シティセールスの理想形 ……………………………………………………… 11

4.4 春日部市におけるシティセールス ………………………………………… 11

4.5 広報・PRとシティセールスの関係性について …………………………… 12

5 先進地事例 ………………………………………………………………………… 13

5.1 特例市、中核市、政令指定都市の実態 …………………………………… 13

5.1.1 シティセールス統括部門の設置傾向、推進体制 …………………… 13

5.1.2 シティセールス統括部門と広報担当部門の事務分掌の比較 ……… 13

5.1.3 シティセールス統括部門における実状 ……………………………… 15

5.2 視察先の実態 ………………………………………………………………… 16

5.2.1 宇都宮市 ………………………………………………………………… 16

5.2.2 相模原市 ………………………………………………………………… 17

5.3 視察先に共通する、取組みへの姿勢 ……………………………………… 18

6 春日部市におけるシティセールスの必要性 …………………………………… 19

6.1 本市の広報活動と視察先の広報活動の比較 ……………………………… 19

6.2 本市の対外的評価 …………………………………………………………… 23

6.2.1 共栄大学による、本市の印象およびイメージ調査 …………………… 23

6.2.2 各種ランキングから見る対外的な評価 ………………………………… 26

6.2.3 本市の対外的評価に関するまとめ ……………………………………… 26

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6.3 職員向けアンケートおよびヒアリング調査から探る課題 ……………… 27

6.3.1 職員向けアンケート ……………………………………………………… 27

6.3.2 主要イベントの担当課向けヒアリング調査 …………………………… 28

6.4 本市における課題のまとめ …………………………………………………… 29

7 企業の広報手法 …………………………………………………………………… 30

7.1 各種調査から見る活動内容および業務内容 ……………………………… 30

7.2 ヒアリング調査から見る活動内容および業務内容 ……………………… 32

7.3 調査結果の考察 ……………………………………………………………… 33

7.4 業務内容の官民比較および視察先の実態 ………………………………… 33

8 外部有識者の見解 ………………………………………………………………… 36

9 提案 ………………………………………………………………………………… 37

9.1 推進体制 ……………………………………………………………………… 38

9.2 地域資源の整理と活用 ………………………………………………………… 40

9.3 企業広報におけるPR手法の導入 …………………………………………… 44

9.4 庁内広報の推進 ………………………………………………………………… 45

9.5 広報効果測定の実施 …………………………………………………………… 46

9.6 活動スケジュールの設定 ……………………………………………………… 47

10 おわりに …………………………………………………………………………… 48

資料編

1 関連用語の整理 …………………………………………………………………… 1

2 アンケート調査用紙および結果報告 …………………………………………… 3

2.1 職員向けアンケート調査 …………………………………………………… 3

2.2 主要イベント担当課向けヒアリング調査 ………………………………… 8

3 先進地実態調査データ …………………………………………………………… 17

4 視察報告 …………………………………………………………………………… 18

4.1 宇都宮市 ……………………………………………………………………… 18

4.2 相模原市 ……………………………………………………………………… 23

5 企業の実態調査データ …………………………………………………………… 30

6 終報告発表資料 …………………………………………………………… (別添)

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はじめに

行政は他の組織体と異なり、単独の決定事項として事業を実現することができません。

この事実は、本市における今後の広報活動のあり方を考える際にも通ずる、 も大切な

視点だと思います。つまり、「どのようにすれば、市民を含む周囲の人を自然と巻き込

むことができるか」という視点が、今、我々に必要とされているのです。

自治体における広報の意義は、以前と比較して大きく異なってきています。それは「広

く伝え、知れ渡れば良い」という、公平性に訴えた活動のあり方自体に変化が出てきて

いることを示します。さまざまな環境要因が重なり、また、市民を含む周囲の人々の行

政に対する見方も変わってきたことで、それに対応し順応する形で、我々も変化しなけ

ればならない時期にきていることを示唆しています。

本報告書は、かすかべ未来研究所における4つの研究テーマの1つ「広報戦略」に関

する調査研究チーム(4名)によって行われた研究成果をまとめたものです。本調査研

究チームでは、今後の広報活動において も必要と考えられる、「市民等周囲の人を巻

き込む力」を「シティ・コミュニケーション力 1」と言うこととしました。この「シテ

ィ・コミュニケーション力」を組織レベルで身に付けるためには、組織内での仕組みづ

くりの徹底や 新の動向に沿った広報手法を知り、自らに合う形で導入しながら、常に

時代、場所、内容に沿った広報活動を行っていくことが不可欠であると考え、それらを

実現するための提案を行ってまいります。

本調査研究が、今後、本市におけるより良い広報活動の実施の一助となり、延いては

本市の発展につながるきっかけとなれば幸いです。

また、この場をお借りして、ユニークビジョン㈱代表取締役 白土`様、視察に応じ

てくださった宇都宮市および相模原市の職員の方々、アンケートやヒアリング調査に協

力いただいた本市職員に深く感謝するとともに、本報告書の執筆に際してもご理解、ご

協力いただきましたことを厚く御礼申し上げます。

平成 25(2013)年 3 月

かすかべ未来研究所「広報戦略」調査研究チーム

1 企業(Corporation)におけるコーポレート・コミュニケーションの考え方と同様、市(City)における

「市が、その他主体と行う双方向的相互理解活動」を意味する、著者による造語。

広報広聴室 岩井 良介 行政経営課 三ヶ島 ちひろ 資 産 税 課 中村 有佑 政 策 課 松井 紗智子

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1 研究概要

1.1 本調査研究の趣旨

広報・PR(パブリック・リレーションズ 2)とは、社会と関わり、その存在を社会

に認めてもらう必要がある企業・団体にとって、経営に並んで重要な業務の一つとされ

ている。多くの企業や団体では、複雑化するステークホルダー3へ向けて、それぞれに

適した手法あるいはメディア 4を用いた、的確かつ効果的な広報活動が展開されている

が、近年では中央官庁や自治体でもそれに漏れず同様の動きが見られる。このことは行

政広報の在り方自体に変化が出てきたことを示している。 従来の行政広報は市政等の現状報告、行政サービスについての情報提供など、万人に

広く知らせることを主目的とする、いわゆる「お知らせ」機能に傾斜していた印象が強

い。このことは、行政には住民に行政サービスをひろく周知する「義務」があることに

も起因している。 しかし、 近では行政機関も企業と同様、その存在を維持していくために業務内容の

透明化を図り、社会の理解を得て友好的な関係を築いていく必要が出てきている。その

対策の1つとして、どの行政機関においても、昨今の動向に合った、戦略的かつ効果的

な機能を持つ、新たな広報推進体制の整備が進められている。特に自治体においては「シ

ティセールス」「シティプロモーション」「地域ブランド戦略」等の名称で、平成16

(2004)年頃から「自らを売り込む」ための取組みが活発化しているのが実状である。 この調査研究は、春日部市全体のイメージや魅力を高め、他自治体と比較して行って

みたい、住んでみたいと思われる「選ばれる市」になるためには、今後の広報活動にお

いて、どのような取組みを行っていくことが効果的か、その方向性や解決策について明

らかにしていくものである。本市を取り巻く背景を踏まえながら、広報活動の現状等の

与件を整理し課題を洗い出すとともに、その解決策として、先述の「シティ・コミュニ

ケーション力」を組織レベルで身に付けるために、官民を問わず、 新の広報・PR業

界動向を組み込んだ、本市ならではのシティセールスのあり方に係る提案を行うことを

目的とする。

2 Public Relations。「広報」と訳され、公共社会(公衆)との良好な信頼関係づくりの意味である。(藤江

俊彦編著(2006)『広報 PR&IR 辞典』同友館,p.192) 3 一般的に企業の利害関係者と訳される。企業経営に対して影響力を持つ存在の総称で、具体的には顧客

や取引先、株主、投資家、従業員、消費者、地域社会などを含む。ステークホルダーという言葉が多用さ

れ始めた背景としては、企業が永続的に持続的な発展を遂げるためには、さまざまなステークホルダーと

の関係性に配慮した経営をすることが不可欠であるとの認識の広がりがある。(藤江俊彦編著(2006)『広報

PR&IR 辞典』同友館,p.133) 4 媒体。手段。特に、マス・コミュニケーションの媒体。(『広辞苑第五版』岩波書店,p.2625)

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1.2 研究員のメンバー

本調査研究は、広報活動に係る庁内全体の仕組みについて考えていくものであるため、

広報実務に従事する職員を中心に、研究員として下記計4名の研究グループを組織し、

研究を進めた。

また、特別行政課題研究においても、同様のテーマで下記5名の研究グループを組織

し、本調査研究の事前調査に位置付けられる研究を進めたことを、併せてここに報告す

る。

図表 1 平成24(2012)年度かすかべ未来研究所研究員名簿(広報戦略)

No 所 属 職名 氏 名 備 考

1 広報広聴室 主任 岩井 良介

2 行政経営課 主事 三ヶ島 ちひろ

3 資産税課 主事 中村 有佑

4 政策課 主事 松井 紗智子 研究責任者

図表 2 特別行政課題研究名簿(広報戦略) ※研究当時の所属および職名

No 所 属 職名 氏 名 備 考

1 広報広聴室 主事 山本 智美

2 IT 推進課 主任 渡邉 賢秀

3 高齢介護課 主事 深野 賢一

4 政策課 主査 阿久津 公彦 研究責任者

5 政策課 主事 松井 紗智子 研究副責任者

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1.3 チームの取組概要

本調査研究における主な取組みの概要として、以下に記す。

図表 3 平成24(2012)年度かすかべ未来研究所研究員(広報戦略)の取組概要 回・日程 検討内容 第1回

(7/4)

・調査研究の流れ

・視察先の選定

・作業確認(同規模自治体における「シティセールス統括部門」の調査

および企業の実態調査の分析)

第2回

(9/3)

・広報活動の見直しおよびシティセールスの推進によって実現できるこ

との洗い出し(グループワーク形式)

・現時点での広報活動における課題・問題点の確認

中間報告

(11/2)

副市長、所長(総合政策部長)、副所長(総合政策部次長)、総務部長、

秘書広報防災担当部長へ、調査研究の中間報告

第3回

(11/16)

・調査研究の方向性の確認

(中間報告時の指摘および政策形成アドバイザーの助言より)

第4回

(11/30)

・報告書の進捗確認

・庁内向けアンケートの実施について

・シティセールス統括部門に係る他市事例の再確認

・全体の内容構成の微修正および確認

庁内向け

アンケートの

実施

(12/20-12/28)

グループウェアのアンケート機能を活用し、庁内職員(1,631名対

象)向けにアンケート調査を実施。

主要イベント

担当課向け

ヒアリングの

実施

(12/27、1/17)

市の主要なイベントを担当している課(商工観光課、農政課、市民参加

推進課、体育振興課、支所総務課)の課長および担当者向けにヒアリン

グ調査を実施。

第5~7回

(3/8,14,18)

・ 終報告発表資料の確認

・報告書の 終確認

終報告

(3/19)

市長、副市長、所長(総合政策部長)、副所長(総合政策部次長)、総務

部長、秘書広報防災担当部長へ、調査研究の 終報告

※このほか、電子メールでのやり取り、庁内グループウェア上に開設した本調査研究の

電子会議室を利用し、意見交換および確認作業等を適宜行った。

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2 自治体がシティセールスを始めた理由

2.1 自治体を取り巻く環境要因

ここ数年の間に、シティセールスに代表される、戦略的かつ効果的な広報活動の実施

が自治体に求められるようになったのは、一体なぜか。その背景としてどのような要因

が考えられるかについて、 初に整理していきたい。

先行研究 5を参考に自治体が置かれている現状を紐解いていくと、以下の3つを環境

要因として挙げることができる。

1つ目は、「財政面での自立」である。平成16(2004)年以降進められてきた、三位

一体の改革により、国と地方公共団体に関する行財政システムに関する改革、すなわち

財政面での地方分権(国庫補助金改革・税源移譲)および地方交付税の削減が実施され

た。国の関与を減らし、地方が自らに責任を持ち、その地域ならではの自由な事業展開

が可能となる、という理想像が掲げられていたが、実際は、地方自治体に深刻な財政的

課題を突き付けるものとなった。このことで、言ってみればそれぞれの自治体が、まさ

に「生き残る」ために、自力で稼がなければならない状況になったのである。

2つ目は「平成の大合併」である。平成の大合併では、自治体を広域化することによ

って行財政基盤を強化し地方分権の推進に対応することや、自動車社会の進行等に伴う

生活圏の広域化に対応することなどを目的としていた。これにより、市町村数は平成7

(1995)年の 3,234 から平成24(2012)年の 1,719 まで、約半分に減少したが、合併に伴

う市町村名の変更などで、それまで築かれていた「地元らしさ」「住民の愛着心」等、

地域における帰属意識の希薄化につながってしまったのが実状である。

そして 後に、3つ目は「人口減少時代の到来」である。我が国の人口は平成16

(2004)年にピークを迎え、減少局面に入ったと言われている。人口減少による大きな弊

害としては、地域内経済の停滞とともに、各自治体で住民を奪い合うという自治体間競

争の誘発が挙げられる。これにより、自治体は自らの魅力・強みや他との違いについて

積極的に発信し、「訪問したい」「住んでみたい」と、数多くある自治体の中から「選ば

れるまち」となることを常に意識することが必要となった。

5 河井孝仁著(2009)「シティプロモーション 地域の魅力を創るしごと」東京法令出版、電通プロジェク

ト・プロデュース局ソーシャルプロジェクト室編(2005)「広報力が地域を変える!」日本地域社会研究所、

牧瀬稔・中西規之著(2009)「人口減少時代における地域政策のヒント」東京法令出版、河井孝仁(2009)「シ

ティプロモーションを可能とする創発型情報流通 The Emergent Type of Information Exchange which enables City Promotion」、宮田穣(2007)「行政広報における新たな課題-政令指定都市が求める自治体広

報とは- The new subjects in administration public relations」、巻頭特集「住みたくなる、訪れたくな

る街をつくる シティプロモーション」月刊広報会議 2012 年 7 月号,宣伝会議等、多数。

シティセールスが必要とされるようになった環境要因

① 財政面での自立 ② 平成の大合併 ③ 人口減少時代の到来

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以上の3つを、自治体を取り巻く環境要因として挙げることができ、これらに起因し

て、近年、自治体における広報活動が積極的に見直されていると見ることができる。

2.2 3つの環境要因への対応策

これらの環境要因への対応策として、広報活動において有効と考えられる取組みにつ

いて、以下に見ていく。

3つの環境要因「財政面での自立」「平成の大合併に伴う、地域における帰属意識の

希薄化」「人口減少時代の到来に起因する、自治体間競争の発生」から、財源の確保、

地元らしさ・住民の愛着の再構築、そして自治体間競争への対策といった、自治体が取

り組むべきことが明らかとなった。

環境要因および解決策について整理していくと、「シティセールス活動の推進」が必

要とされていることがわかる(図表4)。

図表 4 3つの環境要因への対応スキーム

財源の確保が急務

シティセールス活動の推進

財政面での自立

「深刻な財政的

課題」

平成の大合併

「地元らしさ・愛

着心の希薄化」

人口減少時代の到来

「自治体間競争

の誘発」

地元への愛着醸成 「売り込み力」強化

交流人口増

定住人口増

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3 広報・PR(パブリック・リレーションズ)とは ~広義の広報と狭義の広報~

概して、社会は個人、そして個人がそれぞれに所属する組織体をベースとして形成さ

れる。そのような中で存在し続けるためには、自らが生き残るためのさまざまな戦略に

取り組む過程で、まるで網目のように広がる個々のつながり、つまり「他との関係性」

を無視することができないのが実状である。

このようなことから、どのような戦略に取り組むにしても、まずは組織体とその存続

を左右する社会あるいは公衆(パブリック)との間における「継続的な信頼関係」の構

築が必要不可欠となる。ここで必要となる考え方あるいは行動のあり方が、広報・PR

(パブリック・リレーションズ)である。

簡単に言うと、広報・PRは、社会における自らの存在意義を高めていくために、自

らを周知し、自らの活動の有益性を、双方向のコミュニケーションを通じて伝え、継続

的な信頼関係を構築する行為を指す。

参考書籍の中で、広報・PRは「組織とそれを取り巻く人々・集団との関係を円滑に

し、お互いが信頼できる関係をつくり、維持する考え方であり、技術」6もしくは「あ

る主体がそのステークホルダーとの良好な関係づくりを通して何か好意的な見返りを

得ようとする活動で、直接金品のやり取りをせず、主として情報の交換や善意の行動を

その手段とするもの」7というように定義されている。つまりはさまざまなコミュニケ

ーションの過程を踏んで周囲と対話していくことで、理解・納得してもらい、合意を獲

得していきながら自らを取り巻く多様な人々、つまり利害関係者と継続的な信頼関係を

築いていくことを目的としていることがわかる。

そして、ここで気をつけたいのが、一般的に「広報」という言葉には広義の広報と狭

義の広報が存在するという点である。広義の広報は広報広聴活動全体の考え方および行

為を指すものである一方、狭義の広報は、行政における「広報」の意味とされることが

多く、「情報を発信すること」つまりは「話す、書く、発表する等の情報発信の行為そ

のもの」を意味するものとなり、「広聴(公聴)」と相対するものとされる(図表5参照)。

しかし、広報活動を進めるにあたり、担当者が 初に考えるべきは広聴であるとされ

る。自分の組織、商品あるいはサービスが社会や消費者からどのように認知されている

か、評価されているか、また、どのようなことが求められているのかなど、まず「聴く

こと(広聴)」から始めることで、冷静かつ客観的に自らを知った上での効果的な広報

活動を進めていくことが可能となると言うことができる。

以上から、一般的に広報・PRという場合は、広報広聴活動全体の考え方や行動のあ

り方を指す、「広義の広報」を指すことが多いのが実状である。

6 猪狩誠也(2007)『広報・パブリックリレーションズ入門』宣伝会議,p.12 7 五十嵐寛(2004)『広報担当の仕事』東洋経済新報社,p.16

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パブリック(大衆)とリレーション(関係)を築くための活動。

一般的な定義では、この2つの機能を併せて、「広報」と言う。

発信すること 聴くこと +

■広義の広報

図表 5 広義の広報と狭義の広報の違い

■狭義の広報(≒行政における定義)

発信すること

狭義の意味での広報

聴くこと

広聴

PR(パブリック・リレーションズ)とも言う。 企業・団体が社会全体とのよ

りよい関係を築き上げるために行う内外に向けてのコミュニケーション活動。対

マスコミの情報発信(パブリシティ活動)を中心に企業・団体側から情報を発信

することだけでなく、利害関係者からの情報収集(広聴)も含める。もともと、

第二次世界大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)を通じてアメリカからもたらされた

概念。 PR(パブリック・リレーションズ)の意味として、上記の意味に「広告

宣伝」の意味を含めることがあるが、必ずしも正しい用法ではない。

(出所:広告用語辞典ほか)

情報を発信すること。話す、書く、発表する等の情報発信の行為そのもの。

(出所:広辞苑ほか)

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4 シティセールスとは 4.1 シティセールスの定義

近年、中央官庁や自治体における広報活動への姿勢・考え方が如実に変化してきてい

る。この動向は行政機関も多くの企業と同様、その存在を維持していくために、企業的

な「経営マインドを持つこと」が求められていることを示している。 近では、自治体

の倒産もあり得ないことではなくなっており、「生き残る」ために、経営体質を持った

効率的かつ効果的な行政運営が必要とされているのである。 そのような中、自治体にとって、訪問先として、また住む場所として、一人でも多く

の人に「選ばれる市」になるために「自らを売り込む」ことを目的とした、戦略的かつ

効果的な広報活動の実施が急務となっている。つまりは、民間企業の販促活動やマーケ

ティング活動で通常行われている、情報の加工やターゲットに合った伝え方を通じて付

加価値を高め周囲の人を巻き込みながら、イメージ向上を図るといった活動が求められ

ているのである。これが、「シティセールス」の意味するところである。 もともと、セールスという言葉は、民間企業で競合他社製品と比較したときに自社製

品を「選んでもらえる」ように、他社製品との差別化および自社製品の付加価値の明確

化を通じて効果的に売り込んでいく活動に対して用いられているものである。このこと

からも、シティセールスという言葉に「まち(市)の付加価値を高めて売り込む」とい

う意味合いを取ることができる。 なお、シティセールスと類似した言葉にシティプロモーションがあるが、プロモーシ

ョンという言葉も販売促進を意味するため、双方の意味に大きな相違はなく、結果、同

じ意味を持つものとして多方面で用いられているのが実状である。そのため、本報告書

では、「シティセールス」という言葉を用いていくこととする。

(参考) シティプロモーション

地域を持続的に発展させるために、地域の魅力を地域内外に効果的に訴求し、それにより、

人材・物財・資金・情報などの資源を地域内部で活用可能としていくこと。シティセールス

と違って、行政「運営」の延長上にあるもので、対外的な活動に加えて対内の主体者も対象

としていることが多い。(出所:河井孝仁著(2009)「シティプロモーション 地域の魅力を創るしごと」,p.1、

牧瀬稔、中西規之編著(2009)「人口減少時代における地域政策のヒント」,p.109)

■ シティセールスとは

市の地域資源(物的、人的、歴史的な地域資源全般を指す)を整理・分類して見直し、情

報の加工やターゲットに合った伝え方を通じて付加価値を高めながら、企業の販促手法を取

り入れた、積極的・戦略的な「売り込み活動」を通じて、地域住民等周囲の人を巻き込みな

がら市全体のイメージ向上を図る活動を指す。

「周囲を巻き込む、双方向性の魅力発信活動」

つまり…

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4.2 シティセールスの目的

シティセールスをする目的は、先に示した定義の中にある「市全体のイメージ向上を

図る」というところを第一段階とし、延いては「交流人口増」「情報交流人口 8増」「定

住人口増」の可能性につなげるものである。下図に示すとおり、本市に対して好意的な

感情を持ってもらえる、活気のできる仕組みづくりを行うことで、人・企業から市を選

んでもらうための可能性を高めることにあると言うことができる。

8 国土交通省による造語で、「自地域外(自市町村外)に居住する人に対して、何らかの情報提供サービス

を行う等、『情報交流』を行っている『登録者人口』」と定義している。情報提供の手段はインターネット

の他、郵便やファックス等も含み、 も重要な点は不特定多数に対する情報提供サービスではなく、個人

が特定でき、何らかの形で登録がなされていることを指す。

図表 6 シティセールスの目的

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4.3 シティセールスの理想形 いくつかの先行研究、先進地事例の実状および民間企業における体制等を分析したと

ころ、成功要素として図表7のようにまとめることができる。 図表 7 シティセールスにおける5つの成功要素 No 項目 詳細 要約すると

(1) 地域経営の視点 まち全体の幸福を 大化するために、市民、企

業、NPO、行政が互いにかかわっていくこと。 周囲を巻き込む

(2) 戦略(指針)の

必要性

・地域に関わる人々への方向性の明示

・シティセールスを的確に進めるための手順書 統一性・一貫性

(3) 誘発力を基礎とした

編集

新たな魅力を誘発し、情報に意味づけ(新たな

価値付与)して発信すること。 付加価値の創造

(4) マーケティングの

発想

顧客ニーズを起点として考え、自らを客観的に

見て顧客満足度を向上させるという発想。

訴求性のある

発信

(5) 推進体制の確立

専管組織が、行政全体の情報発信に対し、コー

ディネーター(調整者)、ファシリテーター(促

進者)、エディター(編集者)的に関与する体

制。

統括部門の

必要性

(出所)河井孝仁「シティプロモーション 地域の魅力を創るしごと」 ※項目および詳細欄。

これらから、「市民等周囲を巻き込む」、「活動全体の方向性に統一性・一貫性を持た

せる」、「市から発する情報や市のイメージにおける付加価値の創造」「発信する相手を

想定し、それに合わせて媒体や発信方法を選定するといった、訴求性のある発信を行う」、

そして「シティセールス全体を客観的な目を持ちながら統括する専管部署を設置する」

といった、5つの項目がシティセールスを成功させるために必要な要素であるとわかる。 4.4 春日部市におけるシティセールス

次に、春日部市における情報発信の取組みはシティセールスに当てはまるのか、考え

ていきたい。 自治体には、制度や行政情報など、広く市民へ周知しなければならないとされる義務

的な情報が多くある。この他、市の大きな動きなど、市民へ必要な情報を提供する中で、

市民との信頼関係を築くことを目的に、広報紙の発行などを主流とする情報発信活動が、

多くの自治体において行われているのが実状である。 本市もその例外でなく、このような広報活動を広報紙の発行、公式ホームページの更

新、各種メディアへの情報提供などを介して行っている。特に 近では、広報活動のさ

らなる充実を図るため、先述の活動に加えて、広報紙のリニューアルや取材活動の強化

などに取り組んでいるところである。

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12

これらを鑑みると、本市における情報発信の取組みはその大部分が、シティセールス

ではなく、いわゆる「狭義の広報」に付随した活動に留まっていると言うことができる。

なお、「狭義の広報」と「シティセールス」の違いを記すと図表8のようになる。

図表 8 「狭義の広報」と「シティセールス」の違い 狭義の広報 シティセールス

対象 全市民 一部(個別にターゲット設定を行う)

目的 義務的な広報・お知らせ 魅力として発信

発信内容 市政情報全般 ターゲットに合わせた情報の加工および

発信手法を取り、一部に特化して発信

4.5 広報・PRとシティセールスの関係性について

ここで改めて、広報・PRとシティセールスの意味するところを整理すると、図表9

のとおり示すことができる。

図表 9 広報・PRとシティセールスの関係性

※研究チームによる図表化

自治体で言う広報

(≒狭義の広報)

シティセールス

広聴

企業で言う広報(≒広義の広報)

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13

5 先進地事例 5.1 特例市、中核市、政令指定都市の実態

5.1.1 シティセールス統括部門の設置傾向 まず、自治体のシティセールスの取組み状況について、特例市、中核市、そして政令

指定都市について、図表10のとおりまとめた。 図表 10 特例市・中核市・政令指定都市のシティセールス推進体制の状況

区分 数

シティセールス統括部門の

設置数

統括部門がある自治体における

戦略・指針の策定数

実数 設置率 実数 策定率

特例市 40 5 13% 1 20%

中核市 41 14 34% 11 79%

政令指定都市 20 14 70% 9 64%

研究チームによる調査まとめ 9(平成24年6月現在)

シティセールス統括部門の設置状況を見てみると、特例市、中核市、政令指定都市の

順に、全体の13%、34%、70%と設置率が上がる傾向にある。また、統括部門に

おけるシティセールスに係る戦略や指針の策定状況についても併せて調査したところ、

本市と同等の特例市においては策定率が2割に留まっているものの、中核市では約8割、

政令指定都市では約6割という結果が出ており策定が進んでいることがわかる。これら

から、人口規模が大きい都市になるにつれてシティセールスを行うにあたっての推進体

制の整備および全庁的な戦略・指針の策定を進めており、シティセールスへの意識が高

くなる傾向にあることがわかる。 5.1.2 シティセールス統括部門と広報担当部門の事務分掌の比較 次に、シティセールス統括部門を持つ自治体における、それぞれの部署の事務分掌に

ついて、図表11のとおりまとめた。

9 各自治体の公式ホームページから情報を収集するとともに、社団法人地方行財政調査会による「都市の

シティセールス取り組み状況調べ(平成23年7月1日)」を参考に調査した。

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14

図表 11 特例市・中核市・政令指定都市のシティセールス統括部門と広報担当部門の

事務分掌一覧 区分 シティセールス統括部門の事務分掌 広報担当部門の事務分掌

特例市 市の情報発信に関すること。

シティプロモーションの推進。

市政の周知に関すること。

(政令指定都市の場合)区の広報の支援

及び調整。

広報紙、季刊誌及び市勢要覧の発行。

広報写真の撮影・管理。

職員広報。

その他広報活動(テレビ・ラジオ広報、

公式ホームページ、ツイッター、ユーチ

ューブなど)に関すること。

記者会見の運営。

広聴活動に係る企画及び調整に関する

こと。

市民相談に関すること。

市民の要望、陳情、苦情等の処理に関す

ること。

市政モニターに関すること。

市有施設の案内に関すること。

中核市 観光ブランドの情報発信に関すること。

観光客の誘致に関すること。

観光関係諸行事に関すること。

ブランド推進計画の策定及び推進に関するこ

と。

ブランドの開発及び推進に関すること。

芸術文化の振興及び文化的資源の調査活用に

関すること。

シティセールス推進の総合企画及び調整に関

すること。

シティセールス手法の研究と推進に関するこ

と。

定住促進事業の推進に関すること。

政令指定都市 市内外へ向けたシティセールスの総合的企画

立案及び実施。

交流・投資促進に係るシティセールスの総括。

テレビやインターネット、刊行物を活用した

情報発信。

マスコミの取材誘致等、シティセールス推進

に係る業務。

観光関連施策の企画。

観光資源の活用。

都市の魅力の創造及び発信に係る企画及び総

合調整。

企業誘致や観光・コンベンション誘致活動、

マスコミへのPR。

研究チームによる調査まとめ 10(平成24年6月現在) まず、シティセールス統括部門における事務分掌は、「ブランド開発」、「観光客の誘

致や定住促進事業の企画」といった、まさに「市内外へ向けたシティセールスの総合的

企画立案及び実施」がより強く意識されたものであることがわかり、一方で広報担当部

門においては、「市民の声をよく聞き」、「市の情報を広く知らしめる」ということを意

識して行われているものであることがわかる。

10 注釈9に同じ。

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以上から、シティセールス統括部門においては広報担当部門の業務内容とは異なって、

「ターゲット(伝える対象)」や「伝える内容」を意識して行われる、戦略的な広報活

動を進めている部署と定義づけられていると言うことができる。 また、市の区分別に事務分掌の内容を見ていくと、特例市においては「市の情報発信

に関すること」「シティプロモーションの推進」といった、大きく定義づけられたもの

になっており、具体的に何に取り組んでいくかが不明確になっている。それと比較して、

中核市や政令指定都市においてはより詳細に定められていることがわかる。このことか

ら、中核市および政令指定都市ではその存在意義がより高く認識されていると理解でき

る。部署の設置率や戦略指針の策定率と合わせて見ても、大規模な都市になるにつれて

組織も大きくなり、シティセールスを効率的に進めるにあたって、全体を統括する部門

が必要とされている傾向が強いということがわかる。 5.1.3 シティセールス統括部門における実状 さまざまな環境要因に対処すべく、シティセールス活動が積極的に進められる中、シ

ティセールス統括部門の設置は全国的に増加傾向にある。その一方で、一度立ち上げら

れた統括部門が降格もしくは廃止といった形で改める自治体があるのも事実である。そ

こには一体、どのような背景があるのか。ここでは、シティセールスを推進するにあた

っての 良のあり方を探るためにも、その実状について改めて見ていきたい。 先の実態調査を基に、シティセールス統括部門が存続している自治体と降格・廃止し

た自治体との相違点を整理すると、図表12のようになる。 図表 12 シティセールス統括部門が継続している自治体と、廃止した自治体の違い

項目 存続している自治体 廃止した自治体

事務分掌および

業務内容から見る

相違点

■広報担当部門と事務分掌を明確に分

けている。

■シティセールス統括部門が行う業務

は、「ターゲット(伝えたい対象)」およ

び「伝えたい内容」を意識した、企業の

広報手法を取り入れた広報活動に基づ

く。

■市内外へ向けての発信を意識してお

り、特に、メディアへの売り込みを意識

した情報発信に注力している。

■市民等の周囲を自然と巻き込む仕組

みを作っている自治体が多い。

■広報担当部門と事務分掌に差が無い。

■シティセールス統括部門が行う業務内

容が大まかに決められており、実際には

何に取り組んでいくのか、方向性が不明

確。

(例えば、「市の情報発信に関すること」、

「シティセールスの推進」といったもの)

以上から、それぞれの部署の庁内での役割、そして業務内容を明確に分けることが、

目的を達成するための長く継続した活動として、シティセールスに取り組んでいく上で

は重要であるということがわかる。

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5.2 視察先の実態 本調査研究では、シティセールスの意識が高く、また先進地が多い中核市および政令

指定都市の中から、一定以上の効果を出している2市、宇都宮市と相模原市へ視察に行

った。 5.2.1 宇都宮市

宇都宮市は、平成20(2008)年度より大手広告代理店の博報堂グループ 11とパートナ

ーシップ契約を締結し、3年間に及ぶ先進的な取組みの末、実績を出している自治体の

1つである。シティセールスの目的を「市民の誇りを獲得し、宇都宮で暮らすことを『愉

快』と思う人を一人でも増やす」としており、これまでは取組みの7割が市民に向けた

ものであったことから、今後は積極的に市外・県外へPRしていく予定とのことである。 ① 視察の視点

宇都宮市の取組みで特徴的なのは、実践的な取組みを通じて市民・市外の住民や市内

外の企業を「巻き込む」仕組みを作り上げたことである。広報の専門スキルを持つ民間

企業と全面的に連携することで市民も参加しやすい体制となり、結果的に民間企業およ

び市民が前面に出る取組みとなって話題性が高まり、市の認知度向上につながったこと

で、同市の独自性、つまりはブランドが確立できたとしている。 周囲を巻き込むための仕組みについては、公益社団法人日本パブリックリレーション

ズ協会からも評価され、「一連の活動内容は行政本位のものでなく、上手に市民を巻き

込んだものである」として、平成23年PRアワードグランプリにおいて「コーポレー

ト・コミュニケーション部門 優秀賞」を受賞している。 ② 検討項目 宇都宮市への視察を通して、参考としたい項目は以下のようになる。 No. 項目 詳細

1 市民・市外の住民、企業を巻き込

む仕組み

・市民参加型のワークショップ開催

・市民参加型のPRツール作成

・市民参加型のPRコミュニティの設置

2 民間企業の専門スキルの

導入

・外部有識者もしくは専門業者との業務委託による専門スキル

の導入

11 ブランディング/コンサルティング、クリエイティブ(宣伝広告、企画)、ストラテジックプランニン

グ(ターゲット戦略、マーケティング)、カスタマーマーケティングなど、広報および広告業務全般を専門

とする、国内広告業界第2位、単体で世界第7位の広告代理店。

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5.2.2 相模原市

相模原市は政令指定都市への移行をきっかけにシティセールス活動を開始し、平成2

3(2011)年度より広報の専門スキルを持つ民間経験者 12を登用して、民間趣向の先進的

な活動に取り組んでいる自治体として有名である。 同市においては、神奈川県内で3番目の政令指定都市となるにあたり、他の多くの政

令市が地域の中核都市としての存在感と全国規模の知名度を持つのに比べ、特定のイメ

ージを持ちにくいのが実状であった。そのため、今後発展していく過程で、効果的に街

の魅力を全国レベルで発信していく「プロモーション機能」が必要だと考え、本格的な

シティセールス活動を開始するに至ったとのことである。 ① 視察の視点 相模原市の取組みで特徴的なのは、広報の専門スキルを持つ民間経験者のアイデアを

積極的に活用し、自治体としては先進的な、民間趣向の広報業務を展開している点であ

る。例えば、メディア向けの積極的な売り込み活動や、facebook や LINE 等のソーシ

ャルメディアの広報媒体の導入、そして毎月の広報計画を持って将来を見据えた戦略的

な活動を進めている点がそれに当たる。 ② 検討項目 相模原市への視察を通して、参考としたい項目は以下のようになる。 No. 項目 詳細

1 民間企業のPR手法の導入 ・報道対応

・ 新動向の広報媒体の導入

・広報計画の策定

2 民間企業の専門スキルの導入 ・広報スキルを持つ民間経験者の採用

12 東証・大証一部上場企業の元広報部長を課長級職員として登用している。

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5.3 視察先に共通する、取組みへの姿勢 視察先に共通する、シティセールス活動への取組みの姿勢として、以下のようにまと

められる。

また、これらの共通点および視察先から得た検討項目を、「4.3 シティセールスの理

想形」において提示した5つの成功要素と比較すると、図表13のようにすべて合致す

ることがわかる。このことから、これらの検討項目について考慮し、業務へ反映してい

くことは、シティセールスを成功させるための仕組みづくりに通ずると言うことができ

る。

図表 13 視察先から得たシティセールスの必要要素と5つの成功要素の比較

視察先から得たシティセールスの必要要素 シティセールスの5つの成功要素

共通

推進体制の設置 統括部門の設置

戦略・指針の策定 統一性・一貫性

各視察先

市民・市外の住民、企業を巻き込む仕組み 周囲を巻き込む

民間企業のPR手法の導入 付加価値の創造、訴求性のある発信

民間企業の専門スキルの導入 -

宇都宮市、相模原市とも、各市の総合計画において、特に優先的・重点的に取り組むべき

ものとして、シティセールスを「重点プロジェクト」の1つとして定めた上で、企業の広報

手法をうまく導入して、以下の段階を踏んだ後、マーケティング手法を用いた、市民等周囲

の人をうまく巻き込む仕組みを確立している。

① 推進体制の設置

② 戦略・指針の策定

③ 具体的事業の開始

このため、それぞれの活動が一過性のものにならず、将来へ繋がる、長く続く取組みとし

て、じっくり戦略が練られていると言うことができる。

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6. 春日部市におけるシティセールスの必要性 6.1 本市の広報活動と視察先の広報活動の比較 まず、本市の情報発信の推進体制および所有している媒体について整理していく。 図表 14 本市の情報発信の推進体制および主な広報媒体(平成25(2013)年3月現在) (1)情報発信の推進体制

情報発信の担当課 秘書室、広報広聴室、政策課、商工観光課など

(2)主な広報媒体

広報かすかべ ■通常版

発行:毎月1回

発行部数:91,000部

大きさ・規格:A4 版、1色刷

配布方法:自治会を通して各世帯へ配布

また、市内の鉄道8駅、金融機関、郵便局、スーパー・コンビニエン

スストアの一部店舗に配架

■グラフ誌

白黒の広報紙では伝えきれない市の魅力を、カラー写真を多用して紹介したもの

発行:年1回

発行部数:91,000部

大きさ・規格:A4 版、フルカラー

配布方法:自治会を通して各世帯へ配布

※両方とも市公式ホームページで PDF 版を掲載

定例記者会見 5 月、8月、1 月、2月に定例市議会前の議会運営委員会開催日の午後に開催。

※市公式ホームページにおいて記者会見資料を公開。

記者会見 4 月、7月、10 月、1月の原則第 1月曜日の午後 1時 30 分から、市政全般につい

ての PR を目的として開催。

※市公式ホームページにおいて記者会見資料を公開。

プレスリリース(記者

発表資料)

記者クラブ加盟報道機関へ電子メールおよび FAX にて随時情報を提供。

平成23(2011)年度:363件、平成22(2010)年度:338件

※市公式ホームページにおいて発表資料を公開。

公式ホームページ CMS を導入し、各部署でコンテンツ作成後、広報広聴室にて運営・管理。

平成23(2011)年度アクセス件数:1,037,331件

地域ポータルサイト

「オラナビ」

商工観光・行政・防災情報など、生活に役立つ地域情報の提供を行うサイト。

平成23(2011)年度アクセス件数:89,373件

公式ツイッター 140 文字以内で即時性をもって情報を伝えることができるコミュニケーションツ

ール。利用者間で情報が広く拡散しやすいため、広報かすかべ、市ホームページ、

安心安全メールに掲載されている情報を拡散するために利用。

フォロワー数:3,330件(平成25(2013)年1月18日現在)

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安心安全メール

「かすかべ」

安心安全情報・子育て情報・イベント情報を、登録者向けにメールで配信。

PR誌 ■春日部市ガイドブック

市の重点施策や歴史、特産品・名産品など、「市の概要」を分かりやすく紹介し

た冊子

大きさ・規格:A4 版、フルカラー

発行部数:2,000部

■春日部市ウエルカムガイド「春日部で暮らそう」

安全で暮らしやすい春日部の魅力を視覚的に分かりやすく紹介した冊子

大きさ・規格:B5 版、フルカラー

発行部数:20,000部

※両方とも市ホームページで電子ブックを掲載

暮らしの便利帳 市の仕事や施設の紹介、手続きや申請方法などを掲載した冊子。3~4年おきに

発行。

発行部数:110,000部(平成21(2009)年度版)

主な媒体について、視察先と比較したものを図表15として示す。 図表 15 本市の主な広報媒体と視察先の主な広報媒体の比較

※記号の意味:○…所有している、×…所有していない

なお、視察先の状況については、聞き取り調査の他、各市公式ホームページの情報を参考にした。

項目 春日部市 宇都宮市 相模原市

広報紙 ○ ○ ○

定例記者会見 ○ ○ ○

記者発表

(プレスリリース) ○ ○

(併せて年4回の季刊版も発行)

テレビ広報 × ○

(「ほっと HOT みや」「もっと見て宮」)

(「JCOM:潤水都市さがみはら」)

ラジオ広報 × ○

(「愉快なラジオ」他3番組)

(「市長と話そう」)

公式ホームページ ○ ○ ○

地域ポータルサイト

(オラナビ)

※運営主体は市。

(宇都宮マップ)

※運営主体は商工会議所、新聞社、地図会

社の3社共同。

(さがみはら地域ポータルサイト)

※運営主体は市民。

シティセールス用

公式ホームページ ×

(「宮カフェ」)

(「さがみはらシティセールス」)

公式 facebook × × ○

(「相模原市シティセールス」)

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公式ツイッター ○

(広報広聴室)

(広報広聴室、ゆるキャラ、ブランド

推進協議会のもの)

(シティセールス推進課)

公式 LINE@ × × ○

(「相模原市シティセールス」)

公式ブログ × ○

(ゆるキャラおよび職員のもの)

(シティセールスサポーターズ)

動画配信 × ○

(「愉快動画館」、ジャズ関係のもの)

(「相模原チャンネル」)

メール配信 ○

(安心安全メール「かすかべ」)

(メール配信サービス、愉快メルマガ

宮カフェなど)

(さがみはらメールマガジン)

PR誌 ○

(「春日部市ウエルカムガイド」)

(「宇都宮愉快な暮らし図鑑」)

(「シティセールスブック」)

暮らしの便利帳 ○ ○ ○

まず、本市では情報発信を行う部署として、少なくとも4つの部署がそれぞれ関連し

た事務を行っており、これらを統括する部門や全庁的な指針は存在していない。 また、主な広報媒体について見ると、シティセールス専用公式ホームページ、公式ブ

ログ、そして動画チャンネルといった3種類の媒体が本市には無く、逆に視察先では積

極的に展開されている媒体であることがわかる。特に相模原市に関しては、LINE@13の

ような 新の広報動向に合った媒体も取り入れている。以上から、視察先においては、

情報の付加価値を創造するために、これらの媒体を活用していることが理解できる。 続いて、本市の広報活動の内容を視察先のシティセールス活動と比較する。

図表 16 本市の広報活動と視察先のシティセールス活動の比較

項目 春日部市 宇都宮市 相模原市

人口規模 239,796 人

(平成24年12月 1日現在)

515,296 人

(平成24年12月 1日現在)

720,244 人

(平成24年12月 1日現在)

■推進体制について

戦略・指針 なし 宇都宮ブランド戦略指針

(平成21年3月策定)

相模原市シティセールス

推進指針(平成20年3月策定)

シティセールス

統括部門 -

都市ブランド戦略室

(平成21年4月設置)

シティセールス推進課

(平成24年4月設置)

人員配置 - 4 名 5 名

13 企業や団体向けの LINE ビジネスアカウントサービス。LINE とは、携帯電話(スマートフォン・フィ

ーチャーフォン)・パソコン向けのインターネット電話やチャットなどのリアルタイムコミュニケーション

を行うためのツールである。「LINE@」を活用することで、企業や団体から直接利用者へ情報を届けるこ

とができる。LINE は他媒体と比べて内容を確認される確率が高く、また実際に店舗へ足を運ぶなどの行

動に繋がりやすい点が特長とされる。

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民間スキルの

導入方法 なし

博報堂グループとのパート

ナーシップ契約を締結

広報の専門スキルを有する

民間経験者を 3名登用

■業務内容について

地域資源の整理 未実施 実施 実施

報道対応の状況

各課から集まる情報を記者

クラブへ提供

①ブランド戦略室に関する

情報を月1回のペースで記

者クラブへ提供

②イベント等で訪問する自

治体への投げ込みを依頼

①シティセールスに関する

情報を不定期に提供

②記者向けおよびブロガー

向けに市内のツアーを開催

③季刊(年4回)の「ニュー

スレター」を記者向けに配信

(番組や雑誌の特集化へつ

なげるため)

広報媒体の積極的

活用

公式ツイッターで市の情報

を提供するとともに、ホー

ムページへ誘導

①シティセールス専用ホー

ムページ「宮カフェ」の開

②ゆるキャラ「ミヤリー」

の公式ツイッター、ブログ

を開設

①シティセールス専用ホー

ムページ「さがみはらシティ

セールス」の開設

②公式 facebook の開設(民

間企業との連携)

③公式 LINE@の開設

官民連携の状況 特になし

イベントにおける連携(宇

都宮パルコ、コカコーラな

ど)

商品の共同開発(サンクスと

の商品開発「いとかわカレ

ー」)

職員向け広報

広報広聴マニュアルの提示 ①他課への広報活動のアド

バイス支援

②委託先のPR会社による

職員向け研修の実施

①他課向けの自己紹介パン

フレットの作成・配布(「は

じめまして、シティセールス

推進課です。」)

②各課を巻き込む事業の実

施(食堂メニューの開発)

シティセールス

活動の年間計画 特になし

毎年「事業計画」を作成し、

「宇都宮ブランド推進協議

会 14」にて審議を実施

課内で簡単な計画を所有

4月:facebook ページの活性

5月:金環日食観察会の開催

6月:はやぶさ記念日の設定

7月:食堂メニューの開発

8月:野球観戦ツアーの企画

9月:さがみはら地盤ツアー

の企画(居住環境PR)

10月:社会科見学コース企

画(未来の定住者へのPR)

14 宇都宮市民、企業、経済・まちづくり団体、有識者、メディア、議会、行政から成る団体。

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視察先における活動には着目すべき点が2点ある。1点目は、情報提供の方法にして

も、メディアに取り上げられやすいよう、伝えたい相手を意識して情報を加工し、「話

題性を高める」工夫をしているという点である。2点目は、双方向のコミュニケーショ

ンを前提とした、ソーシャルメディアの広報媒体を積極的に導入し、利用者にとっては

市の情報や活動が自分と関係のあること、つまり「自分ごと」となるよう、周囲を巻き

込む1つの手段として活用しているという点である。 一方、本市における広報活動は、職員による各課の情報収集から現場への取材対応や

所有する媒体の管理に主に注力しているため、メディア向けの付加価値的な広報活動に

まで、なかなか幅を広げられていないのが実状である。また、ソーシャルメディアの広

報媒体もツイッター以外はまだ導入に至っていないため、周辺の巻き込みを促進する情

報発信に関しては弱いと言うことができる。 6.2 本市の対外的評価 6.2.1 共栄大学による、本市の印象およびイメージ調査

共栄大学が行った「『春日部の魅力』に関するイメージ調査報告書(平成21(2009)

年3月)15」によると、本市の印象については、「自然環境」「歴史・伝統」「住環境」「交

通の便」といった面で、市内外から高評価を得ている一方、「食」に関する評価は市内

外ともに低く、また、市民からは「芸術・文化活動」「住民のコミュニティ」「商業・工

業」といった面で低い評価を得ていることがわかった(図表17)。このことから、本

市にはいくつかの地域資源が存在するが、中にはPRしきれていない資源があること、

そして、地域住民のコミュニティを巻き込んでの活動が活発でないという2点が指摘さ

れたと言うことができる。 続いて本市のイメージについては、市内市外共通して、「田園的」「庶民的」なイメー

ジが強いが、詳しく見ていくと、市民にとっては「田舎的」、市外住民にとっては「都

会的」という認識の差があることがわかった(図表18)。また、同時に、市内外から

「閑散としている」というイメージが指摘されていることから、「地域に開かれた、市

民や市外に向けての情報発信が不足している」ことが指摘されており、このことが、ま

ちの付加価値を伝えることができず、「洗練されていない」「後進的」というイメージを

持たれる要因となっているとされている。 また、次年度に行われた「『観光資源の魅力向上策』の研究報告書(平成22(2010)

年3月)16」からは、観光資源の活用における本市の問題点として、「クレヨンしんち

ゃん、伝統工芸品などといった地域資源のアピール不足」「『春日部といえば○○○』と

いった、本市ならではの強みの不在」が指摘されており、本市における地域資源が整理

されていないため市の魅力が散在することとなり、結果、強みとして際立つものがない

ということを示唆している。

15 共栄大学国際経営学部山田耕生研究室による調査。市内外を対象としたアンケート調査に基づき、本市

の魅力について研究したもの。 16 同上。注釈 14 におけるアンケート調査の他、市内審議会との議論や学生によるフィールドワークから

観光資源の特長および弱点を洗い出し、今後の方向性について研究したもの。

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図表 17 春日部市の印象についての市内外相関図

※「『春日部の魅力』に関するイメージ調査報告書(平成21(2009)年3月)」

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図表 18 春日部市のイメージについての市内外相関図

※「『春日部の魅力』に関するイメージ調査報告書(平成21(2009)年3月)」

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6.2.2 各種ランキングから見る対外的な評価 東洋経済新報社が発表している、いわゆる住みやすさを都市間でランキング付けした

「住みよさランキング 17」では、全国では787市中515位(埼玉県内40市中37

位)となっており、本市が「住みやすさ」において全国的に、かつ埼玉県下で見ても低

く評価されていることがわかる。 これらの他にも「住んでみたい街ランキング」といったランキング調査が多く存在す

る中、それらにおいて本市が上位に評価されることは、残念ながら極めて少ない状況に

ある。このことから、総じて、本市の魅力が対外的には認識されていない、もしくは評

価されていない状況にあることがわかる。これを視察先と比較すると図表19のように

なる。 図表 19 本市と視察先の対外的評価の比較

項目 春日部市 宇都宮市 相模原市

住みよさランキング 全国:515位 /787 市中

県内:37位 /40 市中

全国:65位 /787 市中

県内:3位 /14 市中

全国:493位 /787 市中

県内:17位 /19 市中

財政健全度ランキン

グ 18

(※参考)

全国:293位 /783 市中

県内:39位 /40 市中

全国:57位 /783 市中

県内:1位 /14 市中

全国:92位 /783 市中

県内:10位 /19 市中

(出所:「都市データパック2010」東洋経済新報社)

6.2.3 本市の対外的評価に関するまとめ

本市の厳しい対外的評価を通じて、これを今後改善していくための1つの取組みとし

て、対外的なイメージ戦略が急務であることがわかる。つまり、効果的・戦略的な広報

活動を行っていくことは、市にとって重要課題であると言うことができる。

17 東洋経済別冊「都市データパック2010」より引用。各都市の「都市力」をあらわしており、住民の

生活の場面に応じた「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」「住居水準充実度」という5つの観点に分類

し、それぞれ50を平均値とする偏差値を単純平均してランク付けしたもの。 18 東洋経済別冊「都市データパック2010」より引用。全国の都市の財政状況について関連する14の

指標を「脱借金体質」「弾力性・自立性」「財政力」「財政基盤」の4つに分類し、それぞれランク付けを行

うとともに、全体の単純平均値を総合的な「財政健全度」として評価しているもの。

共栄大学の調査からは、①地域資源の整理・活用不足、②地域等周辺を巻き込んだ活動の

不足、③効果的な情報発信ができていない、といった3点が指摘されている。

また、ランキング調査からは、④市のイメージ向上への対策が不足という点が強く指摘で

きる。

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27

6.3 職員向けアンケートおよびヒアリング調査から探る課題 6.3.1 職員向けアンケート このアンケートは、「今後、シティセールスを進めるにあたって、何が必要とされる

か」について、職員の考えや意見を集めたものである。調査概要は以下のとおりである。 調査結果によると、シティセールス活動を行うにあたって求められる活動内容として

は、売り込むテーマや発信方法に関する「広報活動の統一化」、メディアへの売り込み

強化、デザイン性の向上など、民間企業の手法を取り入れた「情報発信方法の刷新」、

そして、春日部らしさの整理、新たな地域資源の発見につながる「地域資源の整理」お

よび「既存資源の活用」の3つが、職員から求められていることがわかった。 図表 20 「広報戦略に関する職員アンケート調査」より

「広報戦略に関する職員アンケート調査」調査概要

・実施期間:平成24年12月20日(木曜日)~平成24年12月28日(金曜日)

・調査方法:庁内グループウェア内アンケート機能を利用し、イントラネット経由で回答

を収集。

・対 象 者:基本的にパソコンを付与されている全職員(1,631名)

※再任用・嘱託・臨時(一部)職員を含み、看護師は除く。

・回答者数:270名

シティセールス活動に取り組むと

して、「このような取組みを行って

ほしい」、「こういう地域資源をこ

ういう風に活かしてほしい」等の

ご意見についてご記入ください。

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6.3.2 主要イベントの担当課向けヒアリング調査 この調査では、主要なイベントを担当する部署向けに、イベントを周知する際にどの

ような方法で行っているかについて、聞き取り調査を行った。調査概要は以下のとおり

である。 調査結果によると、ターゲットを絞った広報活動は行っていない部署が8割にのぼっ

た。理由としては、市を代表するイベントにあたるため、とにかく多くの人に参加して

もらいたいという考えが基本にあることが挙げられた。 また、広報活動を行うにあたっての日常的な課題および問題点については、6割の部

署が「ある」と回答しており、その詳細は「売り込みが単発になりがち」「どのように

売り込みを行ったらいいか、効果的な周知方法がわからない」とされている。具体的に

は、他市イベントとの差についてうまく伝えることができない、庁内で色々な媒体やP

R方法が存在しており、それが個々人のスキルに留まってしまっているため、組織全体

の情報発信力が伸びないのが実状であるといった。 図表 21 「広報戦略に関するヒアリング調査」より

「広報戦略に関するヒアリング調査」調査概要

・実施期間:平成24年12月27日(木曜日)、平成25年1月17日(木曜日)

・調査方法:研究メンバーで下記部署の課長級および主幹級職員を訪問し、直接聞き取り

調査を実施。

・対象部署:本市の主要なイベントの運営を担当している、以下の部署

※商工観光課、農政課、市民参加推進課、体育振興課、支所総務課

課で行っているイベントにおい

て、「ターゲット(来てほしい人の

属性)」を設定していますか?

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6.4 本市における課題のまとめ 本市における広報活動の課題をまとめると、以下のようになる。 これらの課題を解決するため、次章以降、民間企業や先進地における広報活動の内容

を参考に、本市に合う形の提案を行っていく。

1.情報発信を行う部署が多く存在し、全庁的に統一された指針のようなものがないため、

情報の散在化につながっている。

2.地域資源が整理できておらず、PRするにあたっての強みが不明確。

3.ターゲットを定め、市民等周囲の人を巻き込む形をとった、まちの付加価値を伝

える広報活動が展開できていない。

4.シティセールスについての考え方や広報活動における工夫の仕方などが、庁内で統

一して存在していない。

5.広報活動の効果測定の基準がないため、成果目標を設定できず、次年度における

活動の見直しもできていない。

6.具体的な活動内容および時期を示した、シティセールス活動に係る全庁的な計

画がない。

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7 企業の広報手法 7.1 各種調査から見る活動内容および業務内容 シティセールス活動の方法や方向性を探るため、民間企業においてはどのように広報

活動を進めているのか、その実態を探っていく。 企業広報についての3つの調査 19を参考に調査したところ、民間企業の広報担当部門

における活動内容および業務内容について、以下のように明らかになった。 図表 22 民間企業の広報担当部門における活動内容および業務内容一覧

主な活動内容・業務内容 ターゲット 詳細

報道対応 (メディアリレーション)

メディア(媒体) ・プレスリリースの制作、配信

・新聞、雑誌等のクリッピング

・記者会見の設置、運営

・記者クラブへの訪問、記者懇親会の開催

・PR イベントの開催

社内広報 従業員 ・社内報の制作

・イントラネットの運営、管理

危機管理広報 メディア、取引先、投資

家・投資機関、銀行・金

融機関、消費者

・危機管理委員会(トップも含めた横串の組織)

への参画

・危機管理マニュアルの策定

・危機管理研修の実施

広聴活動、消費者対応 消費者 ・ソーシャルメディア等のウェブ上のモニタリン

・電話等の対応

・各種見学会の企画、運営

宣伝広告 消費者 ・製品 PR、マーケティング(商品開発から販売ま

での活動全般)

・ノベルティ制作、管理

ブランド管理 メディア、取引先、消費

・ブランドの立上げ(コンセプト、商品展開等)

・立上げ後のブランドの管理、運営

文化活動、社会貢献活動 メディア、取引先、消費

・環境報告書などのレポート作成

IR 活動

(投資家向け広報)

投資家、投資機関 ・アニュアルレポートの作成

・投資家向け説明会の設置

海外広報 海外取引先・顧客・政府

機関等

(海外情勢、動向をくみ取った、その国に合った

形の広報活動の展開)

19 財団法人経済広報センター「第10回企業の広報活動に関する意識実態調査報告書(2009年3月)」、

株式会社宣伝会議「総力特集 企業価値を上げる広報戦略(月刊広報会議2011年3月号)」および「総

力特集 成長企業の広報戦略(月刊広報会議2012年3月号)」

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地域広報 地域住民、地域メディア ・地域に根差したボランティア活動の展開

・地域密着のイベント企画

政府・行政機関などへの

渉外活動

政府、行政 ・公的活動へのタイアップ交渉など

他部門との連携 社内(他部署) ・横断的な会議の設置(対社長、対他部署責任者)

・各課への推進体制の配備(広報担当員の配置、

専用メールアドレスの設置)

・その他(広報担当者による社内での積極的なコ

ミュニケーション活動など)

広報効果の測定 - ・企業ランキング、イメージ調査

・メディアの評価、評判

・株価の動向

・求人に対する応募状況や学生の人気ランキング

・他社、他団体による広報、広告、宣伝関連の表

彰状況

戦略および計画の立案 - ・与件の整理、課題やリスクの抽出

・ターゲットの設定

・基本方針の提示

・広報・PRをする目的の明確化

・具体的な活動内容およびスケジュールの作成

その他 - ・PR ツールの制作(会社案内、広報誌・PR 誌、

販促ツールなど)

・ホームページ等のウェブ関係の管理、運営

・イベントの企画、運営

この表から一見して、企業広報には「『報道対応』における、PRイベントの開催」

「商品開発から販売活動までのマーケティング活動」「他部門との積極的な連携」「広報

効果の測定」など、自治体広報には無い業務があることがわかる。 特に、他部門との連携については、調査によると、経営トップとの定期的な打ち合わ

せを行っている企業が全体の6~7割にも上っており、企業広報においては経営トップ

の意向を重要視していることがわかる。 また、企業の広報担当部門はまさに「企業の顔」として、これらの多岐に渡る業務を

通じて、対外的に発する情報を調整して統一したイメージで発信する体制をとることで、

企業の印象や認知度の向上のために日頃から努力していることがわかる。

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7.2 ヒアリング調査から見る活動内容および業務内容 続いて、東証・大証一部上場企業へヒアリング調査 20をおこなったところ、以下のよ

うな結果が得られた。 図表 23 ヒアリング先企業の業務体制および内容一覧

項目 名称 担当内容の詳細

広報担当部門 戦略企画グループ 広報室 ・報道対応(メディアリレーション)

・ホームページの運営管理

・社内広報

・全社的なツール作成(会社案内など)

※国内広報担当、海外広報担当、IR 広報

担当等に分かれており、人員は全体で5

0人弱。

その他関係課 戦略企画グループ 経営企画部 ・ブランド管理

営業統括グループ 広告部

デザインセンター

・宣伝広告

・商品に係るデザイン全般

CSR 本部 CSR 推進室 ・CSR 関係全般(環境報告書の作成など)

その他 ■危機管理広報

リスクの種類によって対応する部署が異なる。但し、記者会見等メディア向けの対

応はすべて広報室の担当となる。

■各種商品・サービスに係るパンフレット制作、イベントの企画・運営

「社内カンパニー制 21」をとっており、それぞれの商品およびサービスにおける販

促活動全般はそれぞれで担当して行っている。

この結果からは、「7.1 各種調査から見る活動内容および業務内容」で示した調査結

果と同様、広報担当部門である「広報室」が対外的・対内的広報活動全般を統括する形

で担当しており、全体的な情報発信の統一化を図っていることがわかる。また、その他

のブランド管理、宣伝広告、商品デザイン、CSR 等に関しては、各担当部門が存在し、

それぞれが分担する形で専門性を高めて戦略を練り、業務を進めているとのことであっ

た。 これらから、企業広報においては、社内全般の情報に関しては一ヶ所から発信するこ

とで対外的に統一した情報管理を可能とし、このことが延いては、企業に対する信頼性

向上・認知度向上・イメージアップなどに結びついているものと考えることができる。

20 平成24年8月13日(月曜日)、電話により実施。 21 企業内の事業部門を独立採算方式で一会社のように位置づけて運営する事業部門のこと。またはその制

度。

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7.3 調査結果の考察 以上から、民間企業においてはどのように広報活動を進めているのか、具体的な活動

内容および業務内容を探ることができた。但し、ここで注意したいのが必ずしもすべて

の企業においてこのような活動が行われているとは言うことができないという事実で

ある 22。実際、我が国には中小企業が実に多く存在しており、その数は約 430 万社、

日本の企業数の 99.7%、雇用の約 7 割を占めている 23。つまり、日本の全企業中わず

か 0.3%を対象とした調査であるため、この調査結果が民間企業における広報活動の実

態である、とは言い切れないのである。 しかし一方で、これらの調査結果はいわゆる上場企業、有名企業、成長企業から得ら

れた回答であることは確かであり、私たちが日頃目にする、それらの企業の効果的かつ

先進的な広報活動から鑑みると、自治体にとっても参考になる部分は多々あると言うこ

とができる。 企業と自治体の存在意義の違いから見ても、企業広報の良いとされるところすべてを

取り入れるといったことは有効であるとは言えないが、例えば他部署との連携方法、メ

ディア向けの情報提供の方法やターゲットを絞ったマーケティング手法、そして広報活

動の効果測定などについては、自治体広報においても十分導入可能な、有効な業務内容

と考えられる。 7.4 業務内容の官民比較および視察先の実態 ここで改めて、企業の広報担当部門で行われる業務内容と、視察先のシティセールス

統括部門で行われる業務内容について、相関があるか、確認するために比較する(図表

24)。また、「他部門との連携手法」については特に、図表25にて示す。 図表 24 民間企業の業務内容と視察先の業務内容の比較

※記号の意味:○…十分に行っている、△… 低限行っている、×…行っていない、-…該当せず

項目 民間企業 宇都宮市 相模原市 備考

報道対応 (メディアリレーション)

○ △ ○

相模原市ではプレスツアー等の記者向け

のイベントも企画し、先進的な報道対応を

行っている。

社内広報 ○ △ △

【民間企業における目的】

①企業理念、ビジョンや価値観の共有

②従業員のモチベーション、生産性向上

③従業員の愛着や一体感の醸成

22 財団法人経済広報センターによる調査の対象企業は、同センターおよび日本経団連に加盟している主要

企業となっており、調査母体は412社(郵送数884社、回答率46.6%)となっている。また、株

式会社宣伝会議による調査の対象企業は、無作為抽出した主要企業・団体となっており、調査母体は、2

011年は105社、2012年は210社が調査母体となっている。 23 経済産業省「工業統計表」(2006 年)、総務省「事業所・企業統計調査」(2006 年)による。

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④企業の 大の理解者、企業の顔としての

自覚の醸成

⑤企業文化の醸成・伝承

危機管理広報 ○ ○ ○

企業においては危機発生時の記者会見を

シュミレーションするなど、日頃から危機

管理広報に力を入れている。

広聴活動・消費者対応 ○ ○ ○

宣伝広告 ○ ○ ○

宇都宮市はCM制作および放映、相模原市

はお土産感覚のノベルティ制作を行って

いる。

ブランド管理 ○ ○ ○

2市ともに協議会を持ち、客観的・専門的

視点を持って同市のブランドを確立し、管

理も行っている。

文化活動・社会貢献活動 ○ - -

※民間企業特有の活動であるため、

比較せず。

IR活動 ○ - -

海外広報 ○ - -

地域広報 ○ - -

政府・行政との渉外活動 ○ - -

他部門との連携 ○ △ ○ 相模原市では、事業を通じて自然と他課と

の連携が取れる仕組みを作っている。

広報効果の測定 ○ ○ ○ 2市ともに、クリッピングを基に広告費換

算の方法で効果測定を行っている。

戦略および計画の立案 ○ ○ ○

2市ともに、総合計画の重点プロジェクト

の1つにシティセールスを掲げており、全

庁的な指針を策定、そして具体的な活動内

容・スケジュールの決定を行った上で活動

を進めている。

その他 ○ ○ ○

2市とも、シティセールスに特化した冊子

の制作、公式ホームページの更新・管理、

公式ブログの更新・管理、イベントの企画

運営など積極的に進めている。

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図表 25 民間企業および視察先における、他部門との連携手法

No. 民間企業 視察先(宇都宮市、相模原市)

1 広報担当責任者と経営トップとの

定期的な打ち合わせ

シティセールス担当責任者と市長との

打ち合わせ

(宇都宮市では実施したことがあるが、現在は無い。相模原市では「シ

ティセールス推進本部会議」として年2回開催。)

2 他部門との日常的なコミュニケーション

(広報担当者によるPRのネタ探し)

3 他部門をまたいだ定期的な会合の設置

他部署をまたがる連絡会議の設置

(相模原市では「シティセールス推進本部事務局会議」として、

年4回実施。)

4

まち全体を巻き込むための仕組みづくり

(宇都宮市および相模原市では、市民や外部有識者を構成員とした

「宇都宮ブランド推進協議会」「シティセールス推進協議会」を設置)

5 社内イントラネットの活用 庁内イントラネットの活用

6 各部署へ広報担当者を配置 (※足立区で実施。)

7 広報部門への専用メールアドレスの設定

図表24から、視察先で行われているシティセールスの手法は民間企業の広報手法に

類似していることが理解できる。また、図表25からは、視察先において行われている

他部門との連携手法が民間企業の手法に似たものであることも併せてわかる。 視察先ではこれらの取組みを行うことで一定以上の成果を上げていることから、民間

企業における広報手法はシティセールスを行うにあたって、自治体に合う形で導入する

ことで大変有効なものとなると言うことができる。

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8 外部有識者の見解

本調査研究では、5つの外部有識者による講演会やセミナーに参加した。この章では、

外部有識者から得た新たな視点や検討項目について、以下、整理していく。

図表 26 外部有識者の講演会およびセミナーのまとめ

かすかべ未来研究所 外部有識者講演会「ソーシャルメディアの現状と自治体での活用」

講師 ユニークビジョン株式会社 代表取締役 白土`良之氏 新たな視点など

ポイ

ント

新たな情報発信の媒体として、ソーシャルメディアの利用者数が世界中で急

増している。行政における活用も例外ではなく、コミュニケーションのあり方

がますます変わっていく今後、大きな可能性を秘めたものであると言うことが

できる。

SNS 24

活用の

可能性

訴求性

のある

発信

さいたま市総合振興計画シンポジウム「一緒に考えよう!私たちの『幸せ』と『まちづくり』」

講師 日本総合研究所主席研究員 藻谷浩介氏、コミュニティデザイナー 山﨑亮氏 新たな視点など

ポイ

ント

シティセールスには「地域コミュニティとの連携」が不可欠である。理想の

まちづくりについて互いに意見を出し合い、事業がより実際的になった時には、

それぞれどのような役割を担うか、検討することが必要である。

地域に

飛び込

む姿勢

周囲を

巻き込

松戸市政策推進研究室主催 第1回政策研究フォーラム

講師 武雄市長 樋渡啓祐氏 新たな視点など

ポイ

ント

シティセールスという「新しさ」を求められる体制や事業に取り組む際には、

「スピードは 大の付加価値」「既得権益に切り込む」といった、先進的かつ広

い視野を持って、常に可能性を探っていく必要がある。但し、何をするにでも、

自治体職員は「市民目線」に立って取り組んでいくことが前提である。

市民目

線を持

つこと

付加価

値の創

彩の国さいたま広域連合 平成24年度行政課題連続セミナー

【第1回】「シティプロモーションの意義と可能性」

講師 東海大学文学部広報メディア学科 教授 河井孝仁氏 新たな視点など

ポイ

ント

シティセールスを進めるにあたっては、本市の課題を明確にし、ここの部分

が足りない、だからこういったことをしていく必要がある、というように、明

確な戦略を持ち、それに沿った工程管理を行うことが成功させるための秘訣と

なる。

工程管

理の必

要性

統括部

門の設

置、統

一性・

一貫性

彩の国さいたま広域連合 平成24年度行政課題連続セミナー

【第2回】「地域ブランド戦略~失敗事例から見えてくる成功の秘訣~」

講師 くんじゅうぼう・未来ブランド研究所 代表 二村宏志氏 新たな視点など

ポイ

ント

成熟した市場、情報化社会が進む現代では、『顧客価値の創造』が必要であり、

さらに生き残るために、独自性を出すべく「顧客価値の創造に顧客自身が参加

する」仕組みづくりが重要である。

付加価

値の創

周囲を

巻き込

24 ソーシャルネットワーキングサービス(social networking service)の略。社会的ネットワークをイン

ターネット上で構築するサービスのことである。

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表の右項目に注目すると、「4.3 シティセールスの理想形」にて挙げた5つの成功要

素が含まれていることがわかる。このことから、シティセールスを推進するにあたって

は、この5つの要素を考慮した取組みを行うことが必要不可欠であると、有識者の方々

からも指摘されていると言うことができる。 また、それぞれの有識者から得た「新たな視点」は、シティセールスの取組みに付加

価値を付ける「知恵」である。これらの視点を常に持つことで、一歩進んだ、広い取組

みを行うことが可能となる。 次章以降、これらの成功要素や新たな視点を含んだものとして、提案を行っていきた

い。

9 提案

本章では、今後、戦略的かつ効果的なシティセールスを行うために、何に、どのよう

に取り組んでいくと良いか、について提案をしていく。まず、先に述べた本市における

課題、そしてその対応策として必要となることについて整理する。

図表 27 本市における課題とその対応策の対比表

No 本市における課題 対応策(提案)

(1) 情報の散在化 推進体制の整備

(2) PRの強みが不明確 地域資源の整理と活用

(3) まちの付加価値の戦略的発信 企業広報におけるPR手法の導入

(4) 職員の意識・スキルがばらばら 庁内広報の推進

(5) 活動の効果測定基準の不在 広報効果測定の実施

(6) 全庁的な計画の不在 活動スケジュールの設定

そして対応策を提案事項として一覧にまとめると、図表28のようになる。

図表 28 提案事項一覧

項目 詳細

(1)推進体制の整備

①専管組織の設置 シティセールス広報課の新設

②戦略指針の策定 (仮称)春日部市シティセールス戦略プランの策定

③横断組織の整備 (仮称)シティセールス広報戦略本部の設置

(2)地域資源の整理と活用 本市の地域資源の整理表を作成し、強みや「春日部

らしさ」を把握(※戦略指針を策定する際に行う)

(3)企業広報におけるPR手法の導入 A.報道対応の活発化

B.広報媒体の積極的活用

C.官民連携の強化

(4)庁内広報の推進 職員の広報意識および広報スキルの向上

(5)広報効果測定の実施 広報活動の効果や市の対外的な評価について統計

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として蓄積

(6)活動スケジュールの設定 上記項目のスケジュールを策定

(※戦略指針を策定する際に行う)

次ページ以降、それぞれについて具体的に提案していく。

9.1 推進体制

「6.1 本市の広報活動と視察先の広報活動の比較」で示したとおり、本市には情報

発信を行う部署として、秘書室、広報広聴室、政策課、商工観光課などがあり、各部署

において広報に関連した事務を行っているが、市としての広報活動全体の流れを把握し、

連携を取るためにこれらを統括する横断的な部署は無いのが実状である。そのため、そ

れぞれの業務範囲の線引きが極めて曖昧な状況にあり、結果として、広報活動全体に連

携が取れておらず、「広報媒体をうまく使いこなせていない」「市の強みや魅力が乱立・

散在している」など、市が発信する情報として統制が取れていない印象を対外的に与え

やすい状況となっている。

この問題を解決するためには、「市として、どのような視点で市を『売り込ん』でい

くのか」「それに付随する『市の売り・魅力』にはどのようなものがあるのか」といっ

た、部署を超えた、広報活動に関する情報の把握や連携を推進していくことが重要とな

ってくる。そのためには、庁内で横断的に情報を共有し、連携するための仕組みづくり

が必要である。

以上から、本市における推進体制の仕組みづくりとして、①専管組織の設置、②全庁

的にシティセールスの方針および計画を示す「戦略指針の策定」、そして③「全庁横断

的な組織の設置」を提案する。

これらにより基盤が整うことで、各施策を結びつける全庁的なテーマを決めることが

可能となり、各施策につながりを持たせつつPRできるため、対外的に市が行っている

ことに統一感が出る、という利点がある。例えば、「三世代がつながるまち」といった

テーマを設定する場合は、子育てや福祉はもちろん、「ふれあい家族住宅購入奨励事業」

といった助成金事業や公園の整備も結びつけてPRすることで、本市が「子育てしやす

いまち」であることを一貫してPRすることができるものである。

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【提案】推進体制

①専管組織の設置

■ 名 称:シティセールス広報課

■ 業 務:戦略指針の策定、横断的組織の事務局、提案事業の主管課

②シティセールス戦略指針の策定

■ 名 称:(仮称)春日部市シティセールス戦略プラン

■ 構 成:策定の背景、市の現状・課題、地域資源の整理、基本方針、戦略の方向性、推進体制、

主な活動内容、活動計画

③全庁横断的な組織の設置(※戦略指針に基づくものとして設置する)

■ 名 称:(仮称)シティセールス広報戦略本部

■ 活 動:年に数回の会議を持ち、その年度の「売り込むテーマ」を決める。テーマは施策を束

ねる内容で、イメージ統一を図るキャッチフレーズのようなものとする。(例:三世代

がつながるまち)合わせて、前年度の活動報告も行う。

■ 下部組織の設置:「(仮称)シティセールス広報戦略事務局」、外部組織として「(仮称)春日部

市シティセールス広報戦略協議会(市民、企業、大学、外部有識者等を含む

もの)」を併せて組織し、全市的な展開を図る。

④その他

■ 専門スキルの導入:「(仮称)シティセールスアドバイザー」として広報の専門家を配置し、客

観的な視点を持った、質の高い専門スキルを導入し、 新の動向に合った

活動を目指す。

■ 各課での連携:「広報担当」職員を各課に配置し、庁内においてもスムーズな情報提供および

共有を図る。

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40

9.2 地域資源の整理と活用

春日部市における「シティセールス」の定義については、「4.1 シティセールスの定

義」において「市の地域資源(物的、人的、歴史的な地域資源全般を指す)を整理・分

類して見直し、それらを企業の販促手法を取り入れた、積極的・戦略的な『売り込み活

動』を通じて、地域住民等周囲の人を巻き込みながら市全体のイメージ向上を図る活動

を指す。」と定めた。つまり、シティセールスを進めるにあたっては、自らの強みや魅

力を整理して認識した上で、従来とは異なる情報発信方法を取り入れながら、それらを

積極的・戦略的にアピールしていくという、言わば段階的な取組みが必要となることを

示唆している。このことから、まずは「地域資源の整理および把握」が行われることが

第一に必要であることがわかる。

また、「6 春日部市におけるシティセールスの必要性」において、市内に数多く存在

する地域資源の整理および活用ができていない、という実態が課題の1つとして浮かび

上がった。つまり、市の魅力や売りが整理・把握・統一されておらず、それがバラバラ

な情報発信の印象を持たれることにもつながっていると予想される。

以上から、春日部が本来持っている「春日部らしさ」、つまり「地域資源」はどのよ

うなものがあるのかを知るため、「地域資源の整理」を研究チームメンバーで行った。

なお、本作業については、本調査研究チームのメンバーが知り得るもののみを記載した

ものであり、本市全課が把握しているものを網羅しているものではないことをあらかじ

め留意いただきたい。作業概要については以下のとおりである。

このような手順でまとめたものが下表29のとおりとなり、これらの地域資源をまと

める利点としては、以下の3点が挙げられる。

■職員間でこの情報を共有することで、市の魅力を「共通認識」として把握すること

ができ、市民から質問を受けた時などにも統一した答えを述べることができる。

(→ 職員一人一人の広報力が向上)

■シティセールスを進めていく上で、市の魅力となり得るものにはどのようなものが

あるのか、売り込むべきものを一見して把握できる。

■定期的に地域資源を整理し直すことで、新たな資源の発掘にもつながる。

(→ シティセールスの可能性拡大)

「春日部市の主な地域資源のまとめ」作業概要

①調査方法:第一段階として、特別行政課題研究における研究チームメンバーで、市内の

地域資源を整理する表をデータベースとして作成し、思いつく地域資源を入

力。その後、本調査研究の研究チームメンバーでカテゴリーを刷新し、新た

に思いつく地域資源を追加しつつまとめ直した。

②カテゴリーの種類:自然資源、歴史・文化資源、観光・レクリエーション資源

(カテゴリー分けに関しては「相模原市シティセールス戦略検討報告

書(平成23(2011)年3月)」を参考にした。)

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図表 29 春日部市の主な地域資源のまとめ

大分類 中分類 小分類 数量 主なもの

自然資源

地形 台地 2 下総台地、大宮台地

河岸砂丘 3 浜川戸砂丘、小渕砂丘、藤塚砂丘

水系 河川 17 江戸川、中川、大落古利根川

名木等

森林 1 古隅田野鳥の森

天然記念物 5 牛島の藤、蓮華院のムク、満蔵寺のお葉附きイチョウ、碇

神社のイヌグス、秋葉神社の夫婦松

歴史・文化資源

神社・仏閣

寺院 39 勝院、圓福寺、東陽寺

神社 38 赤沼神社、稲荷神社(谷中)、香取神社(大枝)、香取神社(大

場)

指定文化財

遺跡 103 浜川戸遺跡、神明貝塚、米島貝塚、須釜遺跡

史跡 3 小島庄右衛門墓、花積貝塚、内牧塚内古墳群

有形文化財

(建造物)

6 花蔵院の四脚門、香取神社本殿、小渕山観音院仁王門、や

じま橋、立野天満宮本殿、新井家住宅主屋

有形文化財

(建造物以外)

25 【彫刻】小渕観音院円空仏群

【古文書】北条氏政の感状

【歴史資料】西金野井香取神社の棟札

【考古資料】板石塔婆

無形文化財 1 きゅう漆保持者

有形民俗文化財 1 榎囃子神楽連面芝居用具

無形民俗文化財 9 やったり踊り、西金野井の獅子舞

歴史的地名標柱 8 備後一里塚跡、日光道中の道標(田村本店前)

歌碑・記念碑等 5 都鳥の碑、満蔵寺の梅若塚、春日部重行公墳

近代化産業遺産群

(土木学会推奨土木遺産)

2 めがね橋、五ヶ門樋

彫刻作品 22 大空、ジーンズ・夏、茉莉花

博物館等

博物館・郷土資料

館等

1 郷土資料館

市民ホール等 5 市民文化会館、東武地域振興ふれあい拠点施設コンベンシ

ョンホール

観光・レクリエーション

ハイキング

コース等

ハイキングコース 3 健康ハイキングコース

ウォーキングコー

9 お楽しみウォーキング(2)、かすかべウォーク(5)、さ

くら祭りの古利根ウォーク、ひなまつりウォーキング

サイクリングコー

3 大凧ポタリング、江戸川沿いサイクリングロード、内牧サ

イクリングロード

自然歩道 2 古利根川遊歩道、古隅田川遊歩道

花の名所 花の名所 6 大落古利根川沿いの桜並木、内牧公園のお花見広場

観光農園等 観光農園 1 産直の里 内牧

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テーマパー

ク等

大規模公園 3 庄和総合公園、内牧公園、内牧黒沼公園

橋上公園 1 古利根公園橋

温泉等 温泉 2 かすかべ湯元温泉、湯楽の里

スポーツ施

体育館 3 総合体育館「ウイング・ハット春日部」

野球場 12 大沼野球場

テニスコート 5 大沼テニスコート、立沼テニス場、庄和テニスコート

陸上競技場 1 大沼陸上競技場兼サッカー場兼ラグビー場

その他 7 外郭放水路多目的広場

直売所等

農産物直売所 2 道の駅「庄和」、春日部農産物直売所「はくれん」

朝市 1 春日部市農産物の朝市

特産品 4 麦わら帽子、押絵羽子板、桐箱、桐たんす

名産品 18 梨(豊水、幸水)、藤乃彩(焼酎:埼葛酒販協同組合)、赤

沼ロマン(筒屋)、粕壁宿(おづつみ園)、藤うどん(埼玉

県麺類業生活衛生同業組合)

宿泊施設 旅館・ホテル 6 ホテルカスカベ、ヤマヤ新館

行・祭事等

行・祭事等 44 春日部藤まつり、大凧あげ祭り、春日部大凧マラソン大会、

春日部夏まつり、かすかべ押絵羽子板と特産品まつり

郷土芸能 9 ※無形民俗文化財へ

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次に地域資源の活用について見ていく。これらの整理された地域資源を活用すること

でどのようなシティセールスが可能になるのか、また、どのような効果が期待されるか

について、図表30に示す。

図表 30 地域資源の活用例

大カテゴリー (仮称)「花と春日部」キャンペーン 担当課

中カテゴリー

(当てはまる地域

資源)

・天然記念物(牛島の藤)

・名所(大落古利根川沿いの桜並木、庄内領悪水路沿いの散策路、ふじ通り

の藤棚、内牧黒沼公園の蓮、エンゼルドーム前のひまわり広場)

・行・祭事(藤まつり、さくら祭りと古利根ウォークなど)

・ハイキング・ウォーキングコース(ふるさとお花見散歩観光ハイキングな

ど)

-

現状

本市には天然記念物に指定されている「牛島の藤」を始めとし、市内各所

で様々なお花を楽しむことができる。また、それにまつわる行祭事やハイキ

ングコース・ウォーキングコースも充実しているが、現在は比較的高い年齢

層のリピーターによる参加が多い状態にある。今後は、新しい世代を取り込

んだ取組みが求められている。

-

具体的提案

・「花と春日部」キャンペーンとして、市内の「花」に関係する地域資源を結

びつける形で、各課で互いの現場でパンフレットを配るなど、相互に連携し

た総合的なアピールを行う。

・ターゲット層を若い世代に設定して本市の新しい一面を体験してもらうき

っかけにする。特集ホームページ、ツイッターなどの既存の広報媒体を 大

限生かして広報活動を行うとともに、facebook や LINE など若い世代がよく

使用する広報媒体の導入も検討する。また、若い世代がよく見る雑誌・情報

媒体向けに情報の売り込みを行う。

【企画】

シティセール

ス担当課

【協力課】

商工観光課

(商工会議所)

広報広聴室

期待される

効果

・新たな世代の交流人口増加が期待できる。

・これまで1つのイベントに参加して終わりだったお客様にとっては、つい

でに他のイベントや名所を巡るきっかけともなるため、本市をもっと知って

もらえる機会となる。

・お客様1人あたりの市内の滞在時間が長くなるため、経済効果が期待でき

る。

-

以上のような形で、戦略指針の策定時など、全庁的にシティセールスへの取組みを始

める際に、併せて本市の地域資源の整理を進めることを提案したい。

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9.3 企業広報におけるPR手法の導入

3つ目に、市の情報が市内外の人々に届きやすくするため、価値を付与して戦略的に

発信するための手法として「企業広報におけるPR手法の導入」について提案する。

これは、行政による単独の活動ではなく、様々なメディア、市民、企業・団体を巻き

込む仕組みをつくり、これらのような取組みを実施することによって、よりシティセー

ルス活動の可能性を広げるものである。

図表 31 本市に導入可能な、企業広報におけるPR手法

項目 詳細

報道対応の活発化

(メディアを巻き込む)

・目的:パブリシティ 25における話題化

・手法:①プレスリリースのデザイン化(記者の目を引くようにするため)

②メディア向けに季刊(年4回)のレター配信

(季節先取りの情報で、特集記事等が組みやすいようにするため)

③メディア向け、ブロガー向け等に市内のツアーを開催

(市内での休日の過ごし方、暮らし方などの体験型提案を行う)

・効果:有料で出す宣伝広告と異なり、無料で報道されるだけでなく、公的

な立場で論じられるものであるため、信頼性の高い情報として市

民、消費者や取引先に受け止められる効果が見込める。また、媒体

に出るまでは時間がかかるが、一度露出されると連鎖的に他の媒体

へ掲載・放映される可能性が高い。

広報媒体の積極的活用

(市民等周囲の人を巻き込

む)

・目的:情報発信力の強化

(年齢層を問わず、より多くの人に情報が届くように試みるもの)

・手法:①シティセールス専用ホームページの開設

② 新の動向に沿った、新規媒体の導入

(動画、ブログ、facebook や LINE などの SNS)

・効果:より多くの媒体を用いて情報発信することで、1人でも多くの人に

シティセールスについての興味を持ってもらうきっかけとなり、情

報が目に留まる可能性が高まる。併せて、 新の動向に沿った、新

規媒体を導入することで、「他を巻き込む」、自分と関係のあること

として捉える「自分ごと化」の広報活動を促すことが期待でき、シ

ティセールスが行政単独の一方向性のものとなりにくい。また、新

規媒体の導入によって本市の弱点でもある、若い世代向けの情報発

信の強化も可能となり、全体に市政への関心が高まる可能性が高

い。

官民連携の強化

(企業を巻き込む)

・目的:企業のファンを取り込んだ、春日部ファンの創出

・手法:①民間企業との連携による製品(メニュー)開発・販促活動

②地元の食材・名産のインターネット販売サイトの立上げ

25 記者に記事として取り上げられ、無料でメディアに流される、製品やサービスに関する報道。

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③地元の大型商業施設とのイベント連携

④アンテナショップの立上げ

・効果:市独自の事業としてでなく、民間企業と連携して行うことで、企業

が持つマーケティングにおけるノウハウを活用することができ、よ

り多くの人に興味を持ってもらえる可能性が高い。また、地元にお

ける食材や名産の販売において、佐賀県武雄市が行っているような

販売サイトの立上げ・管理・運営を市が行うことで消費者からの信

頼性を獲得し、地元企業の活性化に結びつく活動を行うことも可能

である。併せて、地元の百貨店および大型ショッピングモールで連

携してイベントを行うことで、市民と近い距離でのシティセールス

を展開することも可能であり、アンテナショップの設置はネット上

だけでなく、実際の店舗を構えることで直接まちへ足を運んでもら

う、交流人口増加策の1つの手法とも考えられる。

9.4 庁内広報の推進

4つ目の提案として、職員を巻き込む仕組みづくりとして、伝えたいことをわかりや

すく伝えられるスキルを組織として身につけ、情報を効果的に頻繁に出すことのできる

体制を整えるために、「庁内広報の推進」について以下に記す。

図表 32 庁内広報の推進

項目 詳細

シティセールス情報の庁内

周知

・目的:シティセールス意識の組織規模の強化

・内容:①庁内グループウェア(インフォメーション機能)を用いた定期的

な情報発信

②庁内グループウェア(アンケート機能)を用いた、定期的な職員

からの情報収集

・効果:「どのようなシティセールス活動を行っているのか」、「市として何

を売り込んでいるのか」など、市のシティセールス活動の状況を定

期的に情報発信し、職員から情報収集を行うことで、職員における

シティセールス活動の「自分ごと化」を図る。

シティセールスマニュアル

の発行

・目的:組織規模でのシティセールススキルの向上

・内容:①広報媒体の種類・特長・使い方の整理

②情報発信のコツ(イベント周知の時には開催日まで数回に分けて

情報発信を行う、など)

③情報提供をする担当窓口(担当者名など)名簿の掲載

(新聞・雑誌・テレビなどのメディアに限らず、駅・大型商業施

設なども含んだもの)

・効果:これまでは、個々人で情報発信のコツやスキルを持っており、その

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職員が異動するとやり方がわからない、情報発信力が弱くなったと

いった状況にあった。そこで、情報発信のコツや工夫の仕方など、

職員間で情報共有を図ることで、組織規模のスキル向上を目指す。

広報研修の実施 ・目的:デザインスキルなど専門的なスキルの向上

・内容:①ポスター、チラシのデザイン講座の開催

②ニュースリリースの書き方講座の開催

・効果:ポイントを押さえたデザインのコツについて、専門スキルをもつ講

師から伝授してもらうことで、ポスターやチラシ、パンフレットな

どのデザインの刷新・デザインの統一化(→組織イメージの統一化

につながり、市民の印象も統一したものになるため、情報発信力の

強化も期待できる。)を図る。また、ニュースリリースの書き方に

ついても、何をどのような順番で書くと効果的か、について教示し

てもらうことで、報道されやすい情報発信が期待できる。

特に、「シティセールスマニュアルの発行」については、主要なイベントの担当課へ

のヒアリング調査の際に「広報手法のスキルが個々人のノウハウに留まってしまい、効

果的な周知方法がわからない」として、その必要性を提示されたものである。

これらを行うことで、本市全体の広報スキルアップが期待できるものである。

9.5 広報効果測定の実施

5つ目に、シティセールス活動の現状把握、市の対外的評価の把握、成果目標の設定

および活動の見直し、といった、より効果的なシティセールス活動を常に実施するため

に、効果測定の実施について提案する。

図表 33 効果測定の実施

項目 詳細

メディアへの露出状況の把

握、広告費換算

・目的:シティセールス活動の成果の数値化

・内容:①報道内容のクリッピング(良いニュース)

②報道内容(記事やテレビ番組)の広告費への換算 26

・効果:シティセールス活動の成果や目標を数値的に把握・設定できる。ま

た、ニュースリリースや記者発表などの報道効果を数値化すること

ができるため、シティセールス活動を行う意義について、庁内や対

外的にアピールすることができる。

26 広告費換算とは、メディアで報道された効果を測定するための1つの方法とされ、各メディアによって

明確に定められている広告設定料金を基に、広報活動によってメディア露出したスペース・時間を「広告

費」に置き換えて金額を導き出し、活動の成果として示すことを目的とする。広報・PR効果測定を具体

的に表すものは現在、確固たるものが確立されておらず、PR先進国の欧州諸国でもはっきりとした定義

がない。そのような中、広告費換算は、広報・PR活動の成果を可視化するために用いられている主たる

手法と言える。

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ニュースリリースの配信数

の把握

・目的:シティセールス活動経過の数値化

・内容:月間、年間のニュースリリース配信数および内容(題名)の把握

・効果:シティセールス活動の成果を示す際、どれだけ売り込みを行った上

で成果に結びついたかを示す基準となる。1つの活動に対してどれ

だけの効果が見込めるかの目安ともなる。

ランキング各種、イメージ

調査結果の把握

・目的:市の対外的評価およびイメージの把握

・内容:①ランキング各種・イメージ調査の結果把握

②各結果を統計として蓄積し、分析

・効果:シティセールス活動を行うことで、対外的評価およびイメージ評価

にどのような効果があるか、活動を行う目安や成果提示につなが

る。また、シティセールスや広報の担当者は、市の売り込みや情報

発信を行う上で、組織にありながら常に客観的な視点を持つべきで

あるため、市としてどのようなイメージを対外的に持たれているか

を把握しておくことは、担当者として必要不可欠である。

これらからは、成果目標の設定から活動の見直しまで行うことで、より良い広報活動

の実施につながるということが期待できる。

9.6 活動スケジュールの設定

6つ目に、先を見据えたシティセールス活動を進める上で、どのようなことを、どの

タイミングで行うと効果的か、を明確にする「活動スケジュールの設定」について提案

する。活動スケジュールを作成しておくことで、「今、自分たちがどの段階にいるのか」

を明確にすることができ、また、「ゴール、目指すところ」を明らかにしておくことで、

活動の意味・意義を理解しながら取り組むことが可能となる。

今回は準備期間を3年とし、その間に先に述べた提案項目に段階的に取り組むことで、

基盤を整えることができると考える。

なお、その後、本格的な活動期間として、「市民参加型のワークショップの開催」や市

内外の人々を取り込んだ「シティセールスサポーター制度の導入」といった、具体的な

取組みを順次進めていくことが 良であると考える。

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図表 34 活動スケジュール

10 おわりに

後に、従来の広報活動と今回提案したシティセールス活動の違いについて表にする

と、以下のようになる。

図表 35 従来の広報活動とシティセールスの比較

従来 シティセールス

それぞれの部署が、それぞれのイメージで

情報提供

春日部市のイメージが乱立

「○○なまち」「△△なまち」「□□なまち」

全庁的に統一した、一貫性のあるイメージで

情報提供

春日部市のイメージが統一化・強化

「◎◎なまち」

市の認知度向上につながりやすい

広報活動の方向性が不明確 戦略指針による、方向性の明確化により、目標

を定めた、効果的・計画的な活動が可能になる。

職員の広報に関するノウハウやスキルが

ばらばら

市全体としての広報スキル向上により、

メディア露出の拡大、周囲の巻き込み力向上

といった効果が期待できる。

シティセールスをすることで、春日部市を知ってもらえる、春日部市を好きになって

もらえる、そして春日部市を選んでもらえる可能性が向上することが期待される。また、

【活動スケジュールのイメージ】

(1)推進体制の整備

①専管組織の設置

②戦略指針の策定

③全庁的な横断組織の整備

(2)地域資源の整理

(3)企業広報における

PR手法の導入

(4)庁内広報の推進

(5)効果測定の実施

A.報道対応の活発化

平成25年4月

平成26年4月

平成27年4月

B.広報媒体の積極的活用 C.官民連携の強化

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「市は自分たちに、そして、自分たちのまちのために、何をしてくれるのか」が市内外

の人々へと伝わりやすくなる。

以上から、これら6つの提案を通じてシティセールスを進め、シティ・コミュニケー

ション力を身に付けることで、春日部市が1人でも多くの人に選ばれる市となることが

できると考える。

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資 料 編

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1

資料 1 関連用語の整理

【広報(public relation)】

・ ひろく知らせること。また、その知らせ。(広辞苑)

・ 企業・団体が社会全体とのよりよい関係を築き上げるために行う内外に向けてのコ

ミュニケーション活動。対マスコミの情報発信(パブリシティ活動)を中心に企業・

団体側から情報を発信することだけでなく、利害関係者からの情報収集(広聴)も

含める。第二次世界大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)によってもたらされた PR 活

動の概念が、わが国で「広報」という言葉に置き換えられた関係から PR 活動とほぼ

同義語。(広告用語辞典)

・ パブリック・リレーションズと同義語。実際、部署名などに用いられる際には、広

告、宣伝や販売促進まで包含したコミュニケーション活動と解釈されることが多い。

対象に分けて、組織内広報と組織外広報からなるとも言える。(広報PR&IR辞典)

※近年インターネットの普及、ステークホルダーの重複化などによって、その境は

曖昧になっているのが実情。

・ 社内外との双方向コミュニケーション活動によって、常に変化する企業環境に適応

していくこと。(広報・PR概論)

【広告(advertising)】

・ (advertisement の訳語として明治5年頃新たに作られた語)広く世間に告げ知ら

せること。特に、顧客を誘致するために、商品や興行物などについて、多くの人に

知られるようにすること。また、その文書・放送など。(広辞苑)

・ アメリカ・マーケティング協会(AMA)の定義によれば、「広告とは、明示された広

告主によるアイデア、商品、およびサービスの有料形態をとる非人的な提示と促進

である」。AMA の定義に対しては、①広告というよりは広告物を定義している②有料

形態をとらない広告も現実にはある③提示と促進だけでは不適切で広告は情報を伝

え、かつコミュニケーションのきっかけをつくるという大切な機能を表していない

といった批判がある。こうした批判をふまえ、今日では「管理可能な広告媒体を通

して」と表現することが一般である。また、日本語の「広告」は講義に用いられ、

「広告物」を指していることも多いことに注意が必要である。(広告用語辞典)

・ 企業、NPO、個人など名前を明示したスポンサー(広告主)によるすべての有料・

有償形態によるアイデア、商品、サービスなどについての説得的行動かつ非人的な

情報提供活動の総称であり、広告主が管理可能な広告媒体を指す。広告主からのワ

ンウェイ・コミュニケーション媒体。(広報PR&IR辞典)

【宣伝(propaganda)】

・ ①述べ伝えること。②主義主張や商品の効能などを多くの人に説明して、理解・共

鳴させ、ひろめること。③大げさに言いふらすこと。(広辞苑)

・ (1)プロパガンダ(2)日常広告と同義で使う。プロパガンダの意味ではなく、

「広告宣伝」と一つの言葉として用いられることも多い。(広告用語辞典)

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2

・ 広告と同義語的に使用されるが、宣伝は、ある事柄や主義・主張、商品の効能など

を多くの人に強く説明して理解と共感を求めること。(広報PR&IR辞典)

・ 多数の人々の態度や行動に影響を与え、一定の方向に操作しようとする意図的・組

織的な企てのこと。(広報・PR概論)

【ブランド(brand)】

・ (焼印の意)商標。銘柄。特に、名の通った銘柄。(広辞苑)

・ 今日では特定企業の特定の商品なりサービスなりを示す名称やマークをいうように

なった。したがって各企業は、それぞれ独自のブランド政策を考え、商品群の特性

によって、ファミリーブランドやインディビジュアルブランドを適宜使い分け、消

費者に対しては、自社製品のブランドロイヤリティを高めるとともに、他社製品か

らのブランドスイッチを促すような PR 活動を行っている。(ブリタニカ)

・ その商品・サービスに付けられた、他のそれとは区別するための特定の名称。また

その商品・サービスの感覚的・物理的特長の総称。企業はブランドを差別化や商品

の独自性の標識として用い、消費者は品質など商品内容の推定や、購入する商品の

選択の手段として用いる。(広告用語辞典)

【セールス】

・ ①販売すること。特に、外交販売。②売り上げ。売れ行き。③セールスマンの略。

(広辞苑)

【プロモーション】

・ 促進。奨励。特に、商品の販売促進のために行う宣伝。(広辞苑)

【セールス・プロモーション(販売促進)】

・ 広告宣伝・セールスマン活動・販売店援助など需要創造のために行う活動の総称。

販売促進。販促。(広辞苑)

・ 広義には広告をも含めた需要拡大のために行われる活動を指すが、狭義には消費者

や小売業、卸売業などを対象にして、直接的な購買行動の刺激づけを図るための諸

活動。広告などの活動と連動してマーケティング活動の機能を満たすことになる。

(広告用語辞典)

・ 広義的な解釈では、product(製品)、price(価格)、place(流通経路)、promotion

(広義の販売促進)、すなわちマーケティングミックスを、有機的に統合化し標的と

する顧客に積極的に働きかけて需要を刺激し、売上高やマーケットシェアを増大さ

せる一連のコミュニケーション活動を指す。具体的に販売促進を構成する要素は、

広告宣伝(プル型販促)、人的販売(プッシュ型販促)、パブリシティ、SP(狭義の

販売促進)の4つである。単なる売上増進の刺激策ではなく、売り手と買い手との

円滑で有機的なコミュニケーション活動として捉えていく必要がある。(広報PR&

IR辞典)

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資料 2 アンケート調査用紙および結果報告

2.1 職員向けアンケート調査

■ 調査用紙(庁内グループウェア内アンケート機能を利用)

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4

■ 調査結果

□ 調査概要

実施期間:平成 24 年 12 月 20 日(木曜日)~同年 12 月 28 日(金曜日)

調査方法:庁内グループウェア内アンケート機能を利用し、イントラネット経由

で回答を収集。

対 象 者:基本的にパソコンを付与されている全職員(1,631 名)

※再任用・嘱託・臨時(一部)職員を含み、看護師は除く。

回 答 者:270 名

□ 詳細

問1:春日部市の自然、歴史文化、観光などの地域資源について、今までよりさ

らにその魅力を発信(PR)したいものはありますか。

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問2:春日部市の自然、歴史文化、観光などの地域資源について、今までよりさ

らにその魅力を発信(PR)したいもの

問3:情報発信の方法として、以下の7点がよく用いられますが、これらの他に

行っている発信方法はありますか?また、思いつくものはありますか?

【従来からある、情報発信方法】

①広報かすかべに掲載 ②公式ホームページに掲載

③公式ツイッターに掲載 ④安心安全メールによる配信

⑤ニュースリリース(記者クラブへのお知らせ)の提出

⑥パンフレットの配布および配架 ⑦ポスターの貼り出し

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問4:問 3の 7点の情報発信方法の他に行っている、もしくは思いつく発信方法

について

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問5:シティセールス活動に取り組むとして、「このような取組みを行ってほし

い」、「こういう地域資源をこういう風に活かしてほしい」等のご意見

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2.2 主要イベント担当課向けヒアリング調査

■ 調査用紙

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■ 調査結果

□ 調査概要

実施期間:平成 24 年 12 月 27 日(木曜日)、平成 25 年 1 月 17 日(木曜日)

調査方法:研究メンバーで下記部署の課長及び主幹級職員へヒアリング

対象とした部署:本市の主要なイベントの運営を担当している部署

(商工観光課、農政課、市民参加推進課、体育振興課、支所総務課)

□ 詳細

問1:課で行っているイベントにおいて、「ターゲット(来てほしい人の属性)」

を設定していますか?

問2:問1で「設定している」と回答した場合、設定しているターゲットの詳細

について

※回答なし

問3:問1で「設定していない」と回答した場合、以下の質問について

①実際、どのような人がイベントに来ているか

・市内外の方

・市内および近隣市の家族

②本当に来てほしい人はどのような人たちか

・もっと多くの市内外の方

③その他、「設定していない」理由はあるか

・広くPRする場であるため、一人でも多くの人に来てもらいたいから

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問4:イベントの周知方法としては、どのようなことを行っていますか?

問5:問4で「6」および「7」を選ばれた方にお伺いします。配架場所等はど

のような場所になりますか?

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問6:問4で「8」を選ばれた方に伺います。主な売り込み先はどこになります

か?またその方法は何になりますか?

問7:問4の選択肢以外に、周知方法としてどのようなものがあると思います

か?また、実際に取り組んでいることがありましたら、ご記入ください。

・鉄道会社とのPRの連携

(市内各駅のポスターやPRツール掲示、「発車案内板」や春日部駅前

の「電光掲示板」の活用)

・市民課の広報モニターの活用

・防災無線の活用

・県ホームページの活用

・新聞折り込み

・SNS(Facebook、twitter)の活用

・グループウェアのインフォメーション

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問8:イベント開催時に入場者向けアンケートを実施していますか?

問9:周知活動を行うにあたって、日頃感じている問題点や課題はありますか?

問10:問9で「1」を選ばれた方にお伺いします。具体的に当てはまるものは

何ですか?(当てはまるものすべてを選択)

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問11:イベントの内容において、より一層の地域活性化につなげるために、も

っとこうしたい、こうあるべき、と感じることはありますか?

問12:イベント以外に、春日部市の自然、歴史文化、観光などの地域資源につ

いて、今までよりさらにその魅力を発信(PR)したいものはあります

か?

(もっとPRしたいもの)

・都市伝説、パワースポット

・食関係(特産品、名産品、地産品の販売スポット)

・フィルムコミッション

・市民団体の活動

・風景(江戸川沿いの土手の田園風景「風の通るまち」)

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資料 3 先進地実態調査データ

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資料 4 視察報告

4.1 宇都宮市

■ 視察概要

・日 時:平成24(2012)年7月26日(木曜日)13:30~16:30

・場 所:宇都宮市役所 都市ブランド戦略室内打ち合わせスペース

・出席者:宇都宮市都市ブランド戦略室室長 阿部 紀夫 氏

宇都宮市都市ブランド戦略室主査 篠原 永知 氏

■ シティセールスの目的

市民の誇りを獲得し、宇都宮で暮らすことを「愉快」と思う人を一人でも増やしたい

(都市の活性化策)というのが目的。これまでは取組みの7割が市民に向けたものであ

ったため、今後は積極的に市外・県外へPRしていく予定。

■ 推進体制

・統括部門:総合政策部 都市ブランド戦略室(平成21(2009)年4月設置)

・人員配置:4名

・設置目的:平成19(2007)年度に策定された「第5次宇都宮市総合計画」の基本計

画に「都市ブランド確立・アピールプロジェクト」が盛り込まれ、平成

20年「宇都宮ブランド戦略指針」が策定。その実行部隊として、専門

部署が設置されることとなった。

・事務分掌:①宇都宮ブランド戦略の立案・総合調整に関すること。

②宇都宮ブランドの情報発信に関すること。

③シティセールス手法の研究と推進に関すること。

・戦略指針:宇都宮ブランド戦略指針(平成21(2009)年3月策定)

※詳細は「視察先における戦略指針の内容および専門スキル導入方法の

比較」を参照。

■ 活動の流れ

年 段階 詳細

平成19(2007)年準備期間

第5次宇都宮市総合計画 策定

平成20(2008)年 宇都宮ブランド戦略指針 発表

平成21(2009)年本格的な

活動期間

(※3年間

で設定)

都市ブランド戦略室 設置

市民を交えた、12回のワークショップの開催

ブランドメッセージ「住めば愉快だ宇都宮」発表

平成22(2010)年

アンテナショップ「宮カフェ」設置

市民参加のCMやポスターの発表

地元企業・施設向けの「愉快ロゴマーク」利用範囲の拡大開始

宇都宮PRパーソンの募集に伴う「愉快市民証」登録・発行開始

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宇都宮を盛り上げるお店「愉快ショップ」の募集開始

宇都宮をPRするラジオ番組「愉快なラジオ」放送開始

平成23(2011)年

ゆるキャラ「ミヤリー」をPR担当として再活用開始

月替わりで市をアピールする「愉快市長」の任命

2011年PRアワードグランプリ(公益社団法人日本パブリック

リレーションズ協会主催)コーポレート・コミュニケーション部門

優秀賞の受賞

■ 得られた効果について

・民間企業と全面的に組むことで、行政の独りよがりの取り組みにならず、市民を巻

き込みやすい環境が作れた。

・民間企業および市民が前面に出る取り組みとなったため、話題性が高まり、ニュー

スに取り上げられやすいものとなった。(→認知度向上)

効果について ある程度成果が上がっている

成果の原因

地域の独自性(ブランド)が確立できた

メディアの露出度が大幅に増加した

(広告費換算によると、3年間で5億円以上)

イベントの参加者が年々増えている

(例:街コン「宮コン」の参加者が3,000人以上に。)

活動において市民の自主的な参加が増えてきた

(例:ロゴマークの使用数が160ヶ所以上、また「愉快市民」への登録者

数が2,000人以上に。)

ゆるキャラ「ミヤリー」の活用の幅が広がった

■ 視察の様子(写真)

アンテナショップ「宮カフェ」外観

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1F店内

2Fレストラン

視察の様子(都市ブランド戦略室内)

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■照会シート

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4.2 相模原市

■ 視察概要

・日 時:平成24(2012)年8月7日(火曜日)13:30~16:00

・場 所:相模原市役所 シティセールス推進課内スペースおよび会議室

・出席者:相模原市シティセールス推進課長 林 利夫 氏

相模原市シティセールス推進課副主幹 桜澤 淳 氏

相模原市シティセールス推進課主任 原 弘幸 氏

相模原市シティセールス推進課主事 小堀 藍 氏

■ シティセールスの目的

他の多くの政令市が地域の中核都市としての存在感と全国規模の知名度を持つのに

比べ、同市については多くの人にとって特定のイメージを持ちにくいのが実状であった

ため、今後発展していく過程で、効果的に街の魅力を内外、さらには全国に発信してい

く「プロモーション機能」が必要だと考えられたため。

■ 推進体制

・統括部門:総務局 渉外部 シティセールス推進課(平成24(2012)年4月)

・人員配置:5名(内、専門スキルを持つ民間経験者が3名)

・設置目的:平成23(2011)年度に策定したブランド戦略、およびそれに関わるプロ

モーション事業を戦略的、かつ効果的に推進することを目的に設置。

・事務分掌:①市内外へむけたシティセールスの総合的企画立案及び実施

②テレビやインターネット、刊行物を活用した情報発信

③マスコミの取材誘致等

④シティセールス推進に関する業務

・戦略指針:相模原市シティセールス推進指針(平成20(2008)年3月)

※詳細は「視察先における戦略指針の内容および専門スキル導入方法の

比較」を参照。

■ 活動の流れ

年 段階 詳細

平成20

(2008)年

準備期間

相模原市シティセールス推進指針 発表

平成22

(2010)年

全市的な推進体制の整備

→推進本部、推進協議会、プロジェクトチームの設置

シティセールス戦略検討報告書の作成

平成23

(2011)年

本格的な

活動期間

広報広聴課内の一部門として「シティセールス班」の設置

※プロジェクトチームは解散。

サークルKサンクスとの事業展開(いとかわカレー)

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プレスツアー(メディア向け)、ブロガーツアー(一般ブロガー向け)

の開催

facebook を始めとするインターネット事業開始

年4回のニュースレター(メディア向け情報誌)発行

ブランド戦略会議の開催

シティセールス班を「シティセールス推進課」へ格上げし設置

シティセールス専用ポータルサイト開設、グッズ制作

庁内・市内連携による、食堂メニューの開発

横浜ベイスターズと連携し、JTB 協力のツアーを企画

■ 得られた効果について

・戦略指針の策定、推進体制の整備、庁内・市民への周知、本格的な活動へときちん

と段階を踏んで進められているため、全体に無理・無駄がない。

・それぞれの活動が一過性のものでなく、長く続く取り組みとしてじっくり戦略が練

られている。さらに、専門的経験を持つメンバーと生え抜きのメンバーによるアイ

デアの共有・相乗効果を基に、効果的な方法で進められている。

・庁内各課との連携は、事業レベルで巻き込むことで自然と職員の意識を変えるとい

う実現可能な手法をとっている。

効果について ある程度成果が上がっている

成果の原因

地域が活性化した

(情報発信量の増大に伴い、市内の企業に経済効果があった)

地域の独自性(ブランド)が創出できた

市民の「市への愛着心」が向上した

職員の広報意識が向上した

(シティセールス関係の企画において

庁内の連携が取れるようになった)

メディアへの露出が増えた

(費用対効果の高いプロモーション活動が可能となった)

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■ 視察の様子(写真)

相模原市役所 外観

シティセールス推進課前の案内

会議室での視察風景

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館内エレベーターの事業広告

一階ホールのPR展示スペース①

一階ホールのPR展示スペース②

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■照会シート

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◎視察先における戦略指針の内容および専門スキル導入方法の比較

市名 宇都宮市 相模原市

指針名 宇都宮ブランド戦略指針

(平成21年3月策定)

相模原市シティセールス推進指針

(平成20年3月策定)

詳細

■概要

都市の活性化策として、市のブランド力向上

に取り組むための具体的な方針および計画。

■目次

・指針の位置づけ ・都市ブランドとは

・市の現状、課題 ・戦略の基本的な考え方

・戦略の方向性

・戦略の推進方策(体制、スケジュールなど)

■策定の流れ

・平成20(2008)年6月

「宇都宮ブランド戦略本部」設置

(本部長:市長、メンバー:全部局長)

・平成20(2008)年9月

「宇都宮ブランド戦略アドバイザーグルー

プ会議」設置

(市民、企業(経済団体)、有識者、メデ

ィア等10名)

・平成21(2009)年2月

パブリック・コメントの実施

■概要

シティセールスを展開していく際の基本的な

考え方や方向性を示すものとして策定。

■目次

・策定の背景 ・市の現状

・戦略の基本的な考え方

・活かすべき地域資源の整理

・基本方針 ・戦略の方向性 ・推進体制

■策定の流れ

・平成19(2007)年7月

「相模原市シティセールス推進指針策定委

員会」会議開催

(委員長:相模女子大学客員教授、副委員

長:相模原観光協会副会長等8名)

※計8回開催

・平成19(2007)年10月

市民向けのフォーラム開催

・平成20(2008)年2月

パブリック・コメントの実施

専門スキルの

導入方法

平成20年度より博報堂グループとのパート

ナーシップ契約を締結

統括部門に広報を専門とする民間経験者を3

名登用(内1名を課長級)

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資料 5 企業の実態調査データ