「安全性診断サービス」の現状確認から得た 「運用...

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5 ビジネスコミュニケーション 2015 Vol.52 No.6 現場における ITIL 達成率の現状 「安全性診断サービス」での診断結果を 「ITIL 達成率」 として表現している。ITIL 達成率とは、ITIL から提示 されている活動の適用状況ではなく、ドキュメントの 成長度(口頭、メモ、組織が管理しているドキュメント、 会社が管理しているドキュメント、改善されている) を分析している。よって、ITIL 活動の適用状況だけで は測れない実態が把握できる。 実施してきた安全性診断サービスを整理したのものを 1 に示す。全てが同じチェック項目で診断した結果で はないが、安全性診断サービスの診断結果では 30%後半 から 40%後半で各 ITIL ライフサイクルが実行されてい る。このレベルの ITIL 達成率は業務に必要なドキュメン トの多くはメモで管理されている状態で、組織として承 認されていないドキュメントに書かれた内容でシステム 運用が実行されていることを表している。 多くの例では、「システム運用手順書はあるが更新し ていない」「メモの方が正しい」「作業に慣れているため、 作業効率を向上するためにシステム運用手順書を見る ことはない」などが多く聞かれる。 ITIL ベースの体系化した運用テンプレート 有効的なドキュメントが作成されていない実態を踏 まえて、ITIL ベースに体系化された運用テンプレート を考案した。 この運用テンプレートは、安全性診断サービスの チェックリスト(ITIL のサービスライフサイクルの詳 細な活動手順)からドキュメントを体系化しているた め、運用テンプレートの記述枠を埋めることで、ITIL 準拠が可能となる。 すべての運用テンプレートでドキュメントを作成す ることで、安全性診断サービスの診断結果である ITIL 達成率は 60~ 80%と飛躍的に向上することが可能 となる。 安全性診断サービスと伴に運用テンプレートで活動 を定義した上でのシステム運用活動を実施することを お勧めする。 ITIL®が提示した「サービス」「価値」を基本にしてサービスマネージメントを基にした「安全性診断サービス」を開始し てから 1 年となる。実施した結果から多くの現場で「必要なドキュメントが作成されていない」ことが判明した。 「安全性診断サービス」の現状確認から得た 「運用テンプレート」 「安全性診断サービス」の現状確認から得た 「運用テンプレート」 「安全性診断サービス」の現状確認から得た 「運用テンプレート」 SD-186 CIをコントロールするレベルの定義 SD-187 CIをコントロールするレベルの決定 SD-188 CIの定期的なレビュー計画の作成 SD-189 CIの定期的なレビュー SD-190 CIの定期的なレビュー結果の文書化 SD-191 CIの定期的なレビューでの不具合発生した場合の対処 SD-192 CIの識別 SD-193 サービス継続性管理プロセスの定義 SD-194 構成のバージョン、仕様の追跡 SD-195 命名/番号付け規則の定義 SD-196 命名/番号付け規則の文書化 SD-197 命名/番号付け規則における将来の成長性の考慮 SD-198 CIごとの命名 SD-199 CIの識別子およびバージョンによる一意な識別 SD-200 物理的な装置の全CIへの構成識別子のラベル付け SD-201 ラベルの精度維持に関する立案 SD-202 ラベルの精度維持に関する計画 SD-203 ラベルの精度維持に関する文書化 SD-204 固定資産管理プロセスのラベルとの組み合わせ SD-205 属性の定義 SD-206 属性の文書化 SD-207 CIを説明する必須文書の規定 SD-208 CIを説明する委任文書の規定 SD-209 サービス・ライフサイクルの各段階における責任の定義 SD-210 サービス・ライフサイクルの各段階における責任の文書化 SD-211 CI間の関係、依存性に関する情報の文書化 SD-212 CI間の関係、依存性に関する情報の保持 SD-213 CI間の関係に関する情報の定義 業務影響分析 リスク分析 開始段階 方針設定 要件定義段階 適用範囲 文書内容の例 サービス活動/段階 資源配分 統制組織 品質計画 具体的活動項目 サービスストラテジ (SS) サービストランジション (ST) サービスオペレーション (SO) ITIL達成率 サービスデザイン (SD) 継続的サービス改善 (CSI) 80% 60% 40% 20% 0% 100% 38% 38% 35% 43% 26% 図1 平均的な ITIL 達成率 ㈱BCコンサルティング システム安全検証センター(SSVC) シニアコンサルタント 中村 真二 ㈱BCコンサルティング システム安全検証センター(SSVC) E-mail:[email protected] お問い合わせ先 表1 運用テンプレート一覧

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Page 1: 「安全性診断サービス」の現状確認から得た 「運用 ...ITIL®が提示した「サービス」と「価値」を基本にしてサービスマネージメントを基にした「安全性診断サービス」を開始し

5ビジネスコミュニケーション 2015 Vol.52 No.6

現場における ITILⓇ 達成率の現状「安全性診断サービス」での診断結果を「ITIL 達成率」として表現している。ITIL達成率とは、ITILから提示されている活動の適用状況ではなく、ドキュメントの成長度(口頭、メモ、組織が管理しているドキュメント、会社が管理しているドキュメント、改善されている)を分析している。よって、ITIL活動の適用状況だけでは測れない実態が把握できる。実施してきた安全性診断サービスを整理したのものを図 1に示す。全てが同じチェック項目で診断した結果ではないが、安全性診断サービスの診断結果では 30%後半から 40%後半で各 ITILライフサイクルが実行されている。このレベルの ITIL達成率は業務に必要なドキュメントの多くはメモで管理されている状態で、組織として承認されていないドキュメントに書かれた内容でシステム運用が実行されていることを表している。多くの例では、「システム運用手順書はあるが更新していない」「メモの方が正しい」「作業に慣れているため、作業効率を向上するためにシステム運用手順書を見ることはない」などが多く聞かれる。

ITILⓇ ベースの体系化した運用テンプレート有効的なドキュメントが作成されていない実態を踏

まえて、ITILベースに体系化された運用テンプレートを考案した。この運用テンプレートは、安全性診断サービスの

チェックリスト(ITILのサービスライフサイクルの詳細な活動手順)からドキュメントを体系化しているため、運用テンプレートの記述枠を埋めることで、ITIL

準拠が可能となる。すべての運用テンプレートでドキュメントを作成す

ることで、安全性診断サービスの診断結果である ITIL

達成率は 60%~ 80%と飛躍的に向上することが可能となる。安全性診断サービスと伴に運用テンプレートで活動

を定義した上でのシステム運用活動を実施することをお勧めする。

ITIL®が提示した「サービス」と「価値」を基本にしてサービスマネージメントを基にした「安全性診断サービス」を開始してから 1年となる。実施した結果から多くの現場で「必要なドキュメントが作成されていない」ことが判明した。

「安全性診断サービス」の現状確認から得た「運用テンプレート」

「安全性診断サービス」の現状確認から得た「運用テンプレート」

「安全性診断サービス」の現状確認から得た「運用テンプレート」

SD-186 CIをコントロールするレベルの定義SD-187 CIをコントロールするレベルの決定SD-188 CIの定期的なレビュー計画の作成SD-189 CIの定期的なレビューSD-190 CIの定期的なレビュー結果の文書化SD-191 CIの定期的なレビューでの不具合発生した場合の対処SD-192 CIの識別SD-193 サービス継続性管理プロセスの定義SD-194 構成のバージョン、仕様の追跡SD-195 命名/番号付け規則の定義SD-196 命名/番号付け規則の文書化SD-197 命名/番号付け規則における将来の成長性の考慮SD-198 CIごとの命名SD-199 CIの識別子およびバージョンによる一意な識別SD-200 物理的な装置の全CIへの構成識別子のラベル付けSD-201 ラベルの精度維持に関する立案SD-202 ラベルの精度維持に関する計画SD-203 ラベルの精度維持に関する文書化SD-204 固定資産管理プロセスのラベルとの組み合わせSD-205 属性の定義SD-206 属性の文書化SD-207 CIを説明する必須文書の規定SD-208 CIを説明する委任文書の規定SD-209 サービス・ライフサイクルの各段階における責任の定義SD-210 サービス・ライフサイクルの各段階における責任の文書化SD-211 CI間の関係、依存性に関する情報の文書化SD-212 CI間の関係、依存性に関する情報の保持SD-213 CI間の関係に関する情報の定義

業務影響分析

リスク分析

開始段階

方針設定

要件定義段階

適用範囲

文書内容の例サービス活動/段階

資源配分

統制組織

品質計画

具体的活動項目

ITサービス継続性管理

サービスストラテジ(SS)

サービストランジション(ST)

サービスオペレーション(SO)

ITIL達成率

サービスデザイン(SD)

継続的サービス改善(CSI)

80%

60%

40%

20%

0%

100%

38%

38%

35%43%

26%

図1 平均的な ITIL 達成率

㈱BCコンサルティング システム安全検証センター(SSVC)

        シニアコンサルタント 中村 真二

㈱BCコンサルティングシステム安全検証センター(SSVC)E-mail:[email protected]

お問い合わせ先

表1 運用テンプレート一覧