平和教育のカリキュラムkyoiku.kyokyo-u.ac.jp/gakka/murakami/peg/peg14curriculum.pdf平和教育のカリキュラム...

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平和教育のカリキュラム ○ポイント カリキュラム開発 それぞれの平和教育実践を平和教育の枠組み (全体像)の中で位置づける指針作り (1)学習目標の構成 (2)学校段階に応じた知識理解の目標 (3)平和教育で育成する態度 (4)平和教育の教科領域/学習領域 1

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Page 1: 平和教育のカリキュラムkyoiku.kyokyo-u.ac.jp/gakka/murakami/PEG/peg14curriculum.pdf平和教育のカリキュラム ポイント •カリキュラム開発 –それぞれの平和教育実践を平和教育の枠組み

平和教育のカリキュラム

○ポイント

• カリキュラム開発

–それぞれの平和教育実践を平和教育の枠組み(全体像)の中で位置づける指針作り

(1)学習目標の構成

(2)学校段階に応じた知識理解の目標

(3)平和教育で育成する態度

(4)平和教育の教科領域/学習領域

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(1)学習目標の構成

知識目標 (知識の理解)

けんかや対立の原因と解決法 →戦争と子ども、難民の子どもたち、軍縮・平和への取組 → 積極的平和、構造的暴力、人間の安全保障、平和の文化

態度目標 (態度の形成)

人間としての尊厳、興味・関心、異文化の共感的理解、社会参加

技能目標 (技能の習得)

情報活用、意思伝達、批判的思考、意志決定

体験目標 出会う、やってみる、参加する

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①幼稚園児、小学校1・2年生~ ◎絶対的な視点 自分中心、今が原点、物事はプラスかマイナス、○か×、敵か味方、悪か正義、の二者択一

■命の大切さを教える、被害者や弱者への共感性

②小学5・6年生、中学1年生~ ◎空間的視点 第3者の立場で考えられる。同じ現象でも、立場を変えるとプラスやマイナスになる。

■双方向の平和教育、複数の立場から見る平和学習

③中学3年生、高校1・2年生~ ◎時空間な視点 社会は様々な集団・組織に属した人々による行動で構成される。組織・構造のどこにいるかで認識が違うことの理解。

■正義や公平さが、時間軸により異なる。

④高校3年生・大学生~ ◎アクションリサ-チ的な視点 マイナスの評価も状況変化でプラス評価。世界は多様な要因で複雑に展開。身近な場所での平和構築への参加

■課題解決的な平和教育

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(2)学校段階に応じた知識理解の目標 小学校段階 中学校段階 高等学校段階

知識の目標

①日本の過去の戦争体験を理解する。

①日本の戦争体験を加害と被害の両方の立場から理解する。

①日本の戦争体験を加害・被害の双方向的な立場から理解する。

②身近な暴力やいじめが、紛争や戦争につながっていることを理解する。

②地域における戦争の歴史を理解する。

②地域紛争や戦争を歴史的流れの中で理解する。

③命の大切さや人権尊重の視点から戦争を理解する。

③差別や貧困や格差のない「積極的平和」の視点から平和問題を理解する。

③積極的平和や構造的暴力など広い視点から平和問題を理解する。

④核廃絶や軍縮など、平和の課題を理解する。

④地域にある平和諸問題を理解し、それらの関連性を考察する。

④地球的な平和諸問題を理解し、それらの関連性を総合的に考察する。

⑤平和構築への世界各国の取組と、日本の役割を理解する。

⑤平和構築に貢献しようとする人々や団体の活動を理解する。

⑤平和問題を克服するための世界的な努力や試みと、日本の役割を理解する。

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(3)平和教育で育成する態度

• 価値志向的態度、違いへの寛容/多文化主義、共存/協力、共感、他者の尊敬/平等への感覚

• 個人間のよい関係、他者についての豊富な情報

• 民主主義的信念、政治的efficacy(効能)

• 紛争解決技能、和解/許し

• 向社会的技能の傾向

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平和教育で低減する態度

• 暴力 → 非暴力的解決

• 攻撃性 → 寛容、丁寧、理解

• delinquency(怠慢) → 興味・関心

• 偏見;ステレオタイプ → 異文化理解

• 自民族中心主義 → 人道主義、地球市民

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(4)平和教育の教科領域/学習領域

①教科教育論からのアプローチ • 道徳教育: ヒューマニズムの感性、他者と共生と協力、公共の精神

• 社会科(歴史、公民科、地理)

• 言語系教科: 文学、論説、表現 • 理系教科: 論理的・批判的思考力、核や環境など自然科学の知識と理解

• 芸術系教科: 想像・創造と共感、平和的な感性、戦争の事実への接近(言語では表しきれない戦争の悲惨な事実)、創作活動を通した自己の表現、異文化理解(民族芸術)

• 特別活動: 修学旅行、文化祭、ボランティア活動、体験学習

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• 社会科歴史: 戦争体験継承の方法、平和な歴史をつくる主体の形成、戦争の歴史的事実の学習

• 社会科公民科: 憲法・人権教育、コンフリクトの解決、現代の戦争と国際紛争、グローバリズムと国際経済(とりわけ貧困・搾取や資源に関すること)、平和思想

• 社会科地理: 異文化理解、開発・環境教育

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②広義の政治教育論からのアプローチ –市民性教育

–政治的教養、平和で民主的な国家及び社会の形成者

③生涯学習論・社会教育論からのアプローチ

–地域の戦争学習(戦争展、戦跡発掘等)、地域における国際交流、平和博物館、市民の平和学習

④教育行政論からのアプローチ –自治体の平和事業・施策

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尖閣問題の学習

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• 尖閣問題を題材に作文や資料作成

–暴力的な反日デモには納得できない半面、誰もが「戦争だけはダメ」と主張し、日中間で横たわっている問題をどうすれば解決できるのかを子どもたちが模索(石垣市立登野城小学校)

–資料集の作成(石垣市教育委員会・学校指導課)

• 中3の公民で、日中関係史をして、領土問題の授業

– トランスセンドメソッドの理論を応用して、授業(国益を超えて、両国にウィンウインの関係を樹立する方法の模索)(立命館宇治高校)

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参考文献・資料

• 竹内久顕「平和教育学への予備的考察(3)-平和教育学の課題と方法」『東京女子大学紀要論集』61(2) 2011-03

• Baruch Nevo and Iris Brem 2002,"Peace Education Programs and the Evaluation of their Effectiveness", in Gavriel Salomon and Baruch Nevo, Peace Education: the Concept, Principles, and Practices around the World.

• 『グローバル時代に対応した国際理解教育のカリキュラム開発に関する理論的・実践的研究』平成15年度~平成17年度 科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))研究成果報告書 平成18年4月

• 特集「尖閣最前線・石垣島はいま」第3回尖閣問題を題材に

作文や資料作成 小中学校で尐しずつ新しい動き出始めるJ-CASTニュース 2013年01月04日14時00分

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