同じ考え方の流れ、キヤノンからテトラパックへ長がお見えになっていて、この方が私の話にたいへん興味をもたれて...

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環境を考える経済人の会 21 11 回千葉商科大学寄付講座 府」 日本テトラパック会長 山路敬三氏 2003.12.10 りました公開講 りますが、今日 も素敵なゲストにおいでいただいています。本日は日本テトラパック会長、国際連合 大学ゼロエミッションフォーラムの会長という重要な役職におつきになっておいでの 最先端をいらし て、例えば複写 題でしたが、誰 れたのが 1989 年と伺っています。ということで、最先端をいっている環境対応型の経営者でいらっ しゃいます。そういう理由で、さまざまな環境賞の第 1 回目の受賞を遂げられている 方でもあります。社内外で尊敬されている存在でいらっしゃるということで、私も前 路会長にお話を伺います。「美しい経営と そのケーススタディ」というテーマです。よろしくお願いいたします。 。現在は日本テ トラパックという会社に勤めております。テトラパックというのは、スウェーデンの 会社です。皆さん、牛乳とかジュースの紙パックというと思い浮かべていただけると のもの、あの正 から来た名前で なっています。 テトラパックとキヤノンとは全く関係がございません。キヤノンはレンズ、カメラ、 複写機、プリンタをつくっている会社ですが、私はキヤノンにおりました際に、今ご ンズというテレ ームが入ってお いろんなズーム レンズをつくったり、その設計理論をつくったということで、学位をいただいたりし ました。 カメラや複写機の会社ですから、テトラパックとは全く関係がないのですが、たま たまスウェーデンの王立科学技術アカデミーの外国人会員にしてくれるということで、 会員になるといろいろパーティに招いてくれますのでこれはおもしろいかと思って入 りました。入る前は何もしなくていいということだったのですが、入ったら突然スウ ェーデンで講演をしてくれということで、約束と違うと思ったのですが、スウェーデ ンにまいりました。その会場にたまたまスウェーデンの会社であるテトラパックの社 「地球環境時代の企業・人・政 「美しい経営とそのケーススタディ」 宮崎緑 「地球環境時代の企業・人・政府」ということで進めてまい 座もだいぶ回を重ねて、毎回すばらしいお話を聞かせていただいてお 方です。もともとはキヤノンのご出身で、レンズがご専門の技術系の ていた山路敬三さんをお招きしております。山路さんは世界に先駆け 機をはじめとする OA 機器のリサイクルというのはたいへん大きな問 も手をつけていない頃からそれに取り組まれました。最初に取り組ま から存じ上げていたのですが、今日はその山 同じ考え方の流れ、キヤノンからテトラパックへ 山路敬三 皆さんこんにちは。ただ今ご紹介いただきました山路です 思いますが、とくに昔、三角形の紙パックがございましたね。三角形 四面体をテトラといいますので、社名のテトラパックというのはそこ す。三角形のパックは大変少なくなり、屋根型と長方形のものが中心に 紹介にありましたようにレンズの設計者をしており、とくにズームレ ビなどでも放送に使われており、皆さんもお持ちのカメラなどにもズ りますが、そのズームレンズの最初の時期にその設計を始めまして、 © B-LIFE21 2003-2004 千葉商科大学寄付講座 1

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  • 環境を考える経済人の会 21 第 11 回千葉商科大学寄付講座 府」

    日本テトラパック会長 山路敬三氏 2003.12.10

    りました公開講

    りますが、今日

    も素敵なゲストにおいでいただいています。本日は日本テトラパック会長、国際連合

    大学ゼロエミッションフォーラムの会長という重要な役職におつきになっておいでの

    最先端をいらし

    て、例えば複写

    題でしたが、誰

    れたのが 1989年と伺っています。ということで、最先端をいっている環境対応型の経営者でいらっ

    しゃいます。そういう理由で、さまざまな環境賞の第 1 回目の受賞を遂げられている方でもあります。社内外で尊敬されている存在でいらっしゃるということで、私も前

    路会長にお話を伺います。「美しい経営と

    そのケーススタディ」というテーマです。よろしくお願いいたします。

    。現在は日本テ

    トラパックという会社に勤めております。テトラパックというのは、スウェーデンの

    会社です。皆さん、牛乳とかジュースの紙パックというと思い浮かべていただけると

    のもの、あの正

    から来た名前で

    なっています。 テトラパックとキヤノンとは全く関係がございません。キヤノンはレンズ、カメラ、

    複写機、プリンタをつくっている会社ですが、私はキヤノンにおりました際に、今ご

    ンズというテレ

    ームが入ってお

    いろんなズーム

    レンズをつくったり、その設計理論をつくったということで、学位をいただいたりし

    ました。 カメラや複写機の会社ですから、テトラパックとは全く関係がないのですが、たま

    たまスウェーデンの王立科学技術アカデミーの外国人会員にしてくれるということで、

    会員になるといろいろパーティに招いてくれますのでこれはおもしろいかと思って入

    りました。入る前は何もしなくていいということだったのですが、入ったら突然スウ

    ェーデンで講演をしてくれということで、約束と違うと思ったのですが、スウェーデ

    ンにまいりました。その会場にたまたまスウェーデンの会社であるテトラパックの社

    「地球環境時代の企業・人・政

    「美しい経営とそのケーススタディ」

    宮崎緑 「地球環境時代の企業・人・政府」ということで進めてまい

    座もだいぶ回を重ねて、毎回すばらしいお話を聞かせていただいてお

    方です。もともとはキヤノンのご出身で、レンズがご専門の技術系の

    ていた山路敬三さんをお招きしております。山路さんは世界に先駆け

    機をはじめとする OA 機器のリサイクルというのはたいへん大きな問も手をつけていない頃からそれに取り組まれました。最初に取り組ま

    から存じ上げていたのですが、今日はその山

    同じ考え方の流れ、キヤノンからテトラパックへ 山路敬三 皆さんこんにちは。ただ今ご紹介いただきました山路です

    思いますが、とくに昔、三角形の紙パックがございましたね。三角形

    四面体をテトラといいますので、社名のテトラパックというのはそこ

    す。三角形のパックは大変少なくなり、屋根型と長方形のものが中心に

    紹介にありましたようにレンズの設計者をしており、とくにズームレ

    ビなどでも放送に使われており、皆さんもお持ちのカメラなどにもズ

    りますが、そのズームレンズの最初の時期にその設計を始めまして、

    © B-LIFE21 2003-2004 千葉商科大学寄付講座 1

  • 長がお見えになっていて、この方が私の話にたいへん興味をもたれて

    を辞めてテトラパックの会長になってくれと言われました。しかし、

    長、副会長をしており

    、是非キヤノン

    その頃はまだ社

    ました時期で、キヤノンを辞めるわけにはいきませんので、お

    断りしました。 私は英語ができ

    中に詰めるもの

    は「経営という

    のはそういうものではない。どの企業でも、何をつくっていても何を売っていても、

    経営というのは同じじゃないですか」と言われました。「ああ、そういうものか」と思

    でしたが、むこ

    ればいいじゃないか」と言われました。これも

    た業態とか語学

    ンが現役でした

    からできないということで断っていたのです。 という時点で、

    。車と秘書と場

    いいという体ですから、これはおもしろくない。

    これでは早く老け込むと思い、それでは毎日会社に行くようなところがいいのではな

    いかと思い、テトラパックに入りました。今日も、こちらにテトラパックの人間が来

    れてしまうかも

    私は非常に気に

    入りました。それは、50 年以上前の創業のときからの基本理念で、「牛乳をいつでもどこでも誰でも飲めるようにする」というのが第一の精神です。テトラパック創業者

    ンに詰めて売ら

    ていないところ

    ないところでも

    どんな国にも持っていかれる、これを志したということで、非常に崇高な理念であっ

    たと思います。 う一つの理念は、ちょっと考えさせられるのですが、「飲料を包んでいる容器とい

    うものは、そのかかったコスト以上のメリットを社会に還元しなければならない」と

    と、容器というだけではつまら

    ない、もっと他のメリットを社会に還元しなければならない、そういうことです。つ

    まり、50 年以上前から環境問題や社会問題に関心のあった会社であるということを知りました。そのようなことで、私もキヤノンにいた頃から環境問題に関心がありまし

    たので、それでは同じ考え方の流れだろうということで、テトラパックに入ったわけ

    です。 経営とは「未知への挑戦」であり、失敗を恐れてはいけない 今日は、今申し上げたのを前置きにいたしまして、「美しい経営とそのケーススタデ

    その理由として「キヤノンにまだ現役でいるから」ということと、「

    ないから外国の会社はだめだよ」、「レンズと紙パックとは大違いだ。

    もフィルムと水では全く違うじゃないか」、と言いました。しかし先方

    いまして、それは賛成したのですが、外国語のほうは賛成できません

    うの社長が「英語のほうは通訳を付け

    また、「まあ、そんなものか」とも思って、経営というものはそういっ

    とかには関係ないという点に関しては賛成したのですが、まだキヤノ

    キヤノンも役員に定年制があり、その定年制に達して相談役になる

    再考する機会がありました。相談役というのはおもしろくないですね

    所が付いていて、あとは何していても

    ておりますが、そんな理由で入ったというとテトラパックの方に怒ら

    しれませんので、内緒にしておいて下さい。 そのようなわけでいった会社もいい会社で、この会社の基本理念を

    が国連の食糧機構の理事をやっておられたのですが、当時、牛乳はビ

    れていました。ビンではあまり長持ちしませんので、あまり牛の飼っ

    には持っていけないわけです。それを地球上どこでも、牛を飼ってい

    いうものです。要するにコストをかけて容器をつくる

    © B-LIFE21 2003-2004 千葉商科大学寄付講座 2

  • ィ」と題して時間の限りお話させていただきたいと思います。 皆さんは「経営」というと、自分のところからずいぶん離れたお話

    れません。しかし今日は、皆さんが是非経営者になったつもりで私の

    のかたちでいつかは経営に携わるかもしれません。大きな会社も小さ

    しょう。あるいは、一つの家内工業ということもあるでしょう。しか

    ての考え方というのは、どこにいらしても変わらないと思います。そ

    だと思うかもし

    話を聞いていた

    だきたいと思います。皆さんも最高学府に学んでいらっしゃるわけですから、何らか

    な会社もあるで

    し、経営者とし

    のような気持ち

    でお聞きいただきたいと思います。これからお話することは、全て皆さんに差し上げ

    た資料にございます。したがってこの資料をご覧になりながらお聞きいただきたいと

    いうことを考え

    営というのは管

    のは英語では

    Administration です。経営は Management です。Management で Administration のことをい。管理という

    たいと思います。

    ません。皆さん

    もアルバイトでファストフードの店員などをやったことがあると思います。そういっ

    た時には決められたマニュアル通りにやらなければいけない。そこではゼロディフェ

    いけない、失

    質的な考え方で

    しかし経営というのはそうではありません。いつでも「未知への挑戦」、これに溢れ

    たものでなければ経営とは言えません。皆さんは若いですから、これからいろんなこ

    れたことを決められた通りにやるだけではつまらないですね。

    ということをし

    は、「未知への

    挑戦」である、その時は「失敗がつきもの」だとお考えになるといい。そうすれば安

    心してそれ 組めます。もちろん何かやる時には準備が必要で、なるべく失敗し

    はあるものだと

    。やってみて悪

    かったら違うやり方でやる。その時は「失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れ

    る」。要するにやらなければ何にもならない。やってみることが大切であるということ

    です。 皆さん方は ISO14001 を学生主導で取得された最初の大学であると伺っています。三橋先生からそのときの本を頂戴して、拝読いたしました。たいへん感動いたしまし

    た。そういった時は「未知への挑戦」であったと思います。いろんな失敗もあったと

    思います。しかし失敗するから成功が次に出てくるんだとお考えになるといいと思い

    ます。

    思います。 まず、経営というものはどんなものか、その本質的なものは何かと

    てみたいと思います。経営と管理というものを対比してみました。経

    理と混同されますので、私はこれを峻別したいと思います。管理という

    代用するということもありますが、それを二つに分けたと考えて下さ

    のは、「決められたことを決められた通りにやる」ことであると定義し

    そういった仕事をやっている時は、ゼロディフェクトでなければいけ

    クトでなければいけないということです。要するに、間違いがあっては

    敗してはいけないんだ、「失敗を恐れる」ということ。これが管理の本

    あります。

    とをなさる時に、決めら

    何か新しい新鮮味のあることを考えついて、それを加えてやっていく

    たくなると思います。それが若さの特権だと思います。そういった時に

    に取り

    ないに越したことはないのですが、必ず未知のものをやる時には失敗

    考えるのがいいと思います。 したがってそういった場合のやり方は「トライアンドエラー」です

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  • 経営とは壮大な社会実験ということ 次に、トヨタ自動車の磯村巌さんという 2002 年当時副会長だった方

    うことです。「一番評価するのは新しいことに挑戦して成果をあげた人

    は当然です。しかしその次に評価されるのは「挑戦して失敗した人」

    ヨタの生き方です。三番目が「現状維持で成果をあげた人」何もしな

    が日経ビジネス

    に書かれたものをご紹介しましょう。「まず挑戦せよ。失敗は現状維持より尊い」とい

    である。」これ

    です。これがト

    いで成果をあげ

    た人よりも、新しいことに挑戦して失敗した人の方をトヨタは評価する。これがトヨ

    タ自動車の非常に強いところの根源であると思います。一番ダメなのは「何もせずに

    験というのは未

    す。経営は科学的な実験ではなく、社会における実験です。そして経営

    をするためにはいろんなリソースを使います。リソースというのは人や物や時間や空

    間です。したがって、そうしたリソースを使った壮大な社会実験であるというのが、

    経営の定義です。

    何も成果をあげなかった人」です。これは当然です。 そうすると経営というのは壮大な社会実験と言えると思います。実

    知への挑戦で

    そうなりますと、実験ですから、当然科学的なアプローチが必要に

    から、社会に対する実験ですから、人間に対するアプローチが必要に

    をまた分析してみます

    なります。それ

    なります。それ

    と、いろいろ分析はあると思いますが私はこれが大切だと思っ

    たことを書いたわけですが、それぞれ三つ書きました。科学的なアプローチで一番大

    切なのは、仮説が先行するということです。それが経営の方では理念が主導するとい

    を世界中のいた

    クの理念だった

    仮説にあたるも

    のであると思うわけです。 もう一つは革新的なところに独創性がなければいけない。これは科学的なアプロー

    チにはこれが大事である。何も独創性がないというのではだめです。独創性があって

    も一番大切なところに独創性があるというのが必要です。このために経営のほうでは

    ノントリビアルということが要求されます。トリビアルというのは、最近テレビなど

    で「トリビアの泉」というのもあり、トリビアな知識も役に立つなという話もあり、

    おもしろい話がいろいろ出てまいりますけれども、経営の場は厳しい場ですから、し

    たがってノントリビアルでなければいけない。「つまらない」とか「普通」という意味

    うことです。先ほどテトラパックの例で申し上げましたように、牛乳

    るところでいつでも誰でも飲めるようにするということがテトラパッ

    わけです。その全体で飲めるようにするというのは、科学的な面では

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  • のトリビアルではいけない。そうではない、非凡であることがノントリビアルという

    で論旨を通して

    いけるような整合性が必要であるということです。途中で話が狂ったりしたら、これ

    としてのやらな

    。 その次には人間ですからとにかく向上思考。先へ行って、上へ上へと上がっていこ

    う、あるいは新しいもの新しいものと目指していこうという向上思考が大切です。こ

    必要になって

    んもこれから世

    もできません。

    何人かのグループでやる、あるいは何人かのアドバイスがいるようになると思います

    とが必要になり

    うことになるの

    かりやすい経営

    でなければいけない。誰に説明してもわかってくれて、そして共感してもらえるよう

    な、そんなものでなければいけないと思います。いいことでもわかりにくいと共感し

    てもらえません。ですから、わかりやすいということが全てに先行すると思います。

    性と倫理性ですが、これを合わせて、

    マネジメントシステムでなければいけないということを

    申し上げたいと思います。このそれぞれについて、もう少し説明を加えたいと思いま

    す。 容器というものは、かかったコスト以上のメリットを 社会に還元しなければならない

    ことです。 その次は科学的アプローチですから推論が全部、一からずっと十ま

    はもう科学論理の行き方としては一番いけないわけです。

    それから、人間的なアプローチになりますと、まず必要なのは人間

    ければならないこと、これを守ること。倫理性が一番大切になります

    の向上思考については時代の流れをつくるということが経営のほうでは

    きます。いつでも時代の流れを読んでそれを先行する。 人間的アプローチの三番目は共感性です。共感性というのは、皆さ

    の中に出られていろんなことをしようとするときは、一人ではあまり何

    が、その時はそれらの人に自分のやることに共感してもらうというこ

    ます。共感してもらえないようなことはやっても上手くいかないとい

    ではないかと思います。共感を得るためには、その経営というのはわ

    それから、ここでちょっと抜かしましたが、整合

    私は美しいシステム、美しい

    まず、仮説先行の話からまいります。 科学というのは仮説を立てます。去年の秋にノーベル賞をもらった小柴先生は、私

    と理学部の物理の時に同級生でした。ですから小柴先生の話をさせていただきますと、

    小柴先生の場合には、ニュートリノというもののいろんな性能を調べたわけですが、

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  • その「ニュートリノが存在する」ということで、先生は一つの仮説を

    までわかっているような現象が、その仮説を使えば説明できるかどう

    一生懸命考えたそうです。そして、今までわかった現象だけでなく、

    振る舞いをするのではないかという新現象が予測されます。この二つ

    は実験でそれを検証するという段階です。彼の場合は、これは神岡鉱

    な実験設備を置いて実験し、見事にそれを検証したわけです。検証できますと

    立てました。今

    かということを

    仮設に基づくと

    ニュートリノというのはこういう時に見られるのではないか、こういう時にこういう

    ができたら今度

    山の地下に大き

    、最初

    に出した仮説「ニュートリノは存在する」ということはさらに拡張する、または上手

    くいかなかった場合には変更しなければならないということも、出てまいります。 業理念です。そ

    明がまずできなければいけない。これは過去

    もある。いずれ

    その過去の実績

    に基づいて新しい計画を立てるということです。 いのです。先ほ

    純なことでもい

    った。ではこれ

    からここでも飲めるようにしよう」ということになって、それを実際にしていく。グ

    ローバリゼーションなども、そこで行われるようになっていくわけです。理念を成功

    、容器というも

    というように、

    念を変更すると

    いうこともしなければなりません。 このように、企業理念というものをはっきりと立てて、それに基づいて仕事をする

    の景気というのは変動しがち

    です。その世の中の景気変動に従ってフレキシブルに、あるときはリストラをする、

    あるときは設備投資をするということで世の中を乗り切っていく、景気の波を乗り切

    っていくということも大切ですが、一本筋が通っていないと会社としては上手くいき

    ません。筋が通っていないと、将来必要になる人、設備などを調子の悪いときに捨て

    てしまうことがあります。捨ててしまうようなことがあってはいけない。ということ

    で、企業理念というものをはっきりと打ち立てることが必要です。

    これは科学の場合ですが、経営の場合にはその仮説に当たるのは企

    の企業理念によりますと、まず過去の説

    上手くいかなかったことの説明もあります。上手くいったことの説明

    にしてもその企業の過去の実績を説明できなければいけない。そして

    ここで企業理念というと難しいように思いますが、経営者の夢でい

    どの牛乳が世界中のどこでもいつでも誰でも飲めるようにという、単

    いのです。それがあると、「これまではどこで飲めてどこでは飲めなか

    させた場合にはその理念をさらに拡張していく。先ほどあったように

    のは、かかったコスト以上のメリットを社会に還元しなければならない

    拡張することもできるわけです。また、上手くいかなかった時には理

    となると、勢い長期的な思考の経営になります。世の中

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  • その次ですが、今度はノントリビアルの話です。このノントリビア

    は、小柴先生も含めて私ども当時の物理学教室の中で、新しい論文の

    葉です。トリビアルかノントリビアルであるかということです。当時

    発に動いていた時期だと思います。その時期に、論文がたくさん出て

    全部読んでいてはしようがないということで、みんなで手分けして読

    読んだ人がその論文をトリビアルだといったら、その論文は誰も読み

    ルの話というの

    評価に使った言

    は物理学に新し

    い論文が次々出てきて、非常に盛んな時期でした。今も盛んですが、当時はもっと活

    きます。それを

    みます。そして

    ません。トリビ

    アル(無駄)だといわれた、つまらない論文は、読む価値もないということで、誰も

    読まなくなります。皆さんも、トリビアルなことばかりやっていると、誰にも相手に

    も考えつかなか

    で、新しいもの

    に物理のロマ

    ンが感じられるような、夢のある論文であるということが、ノントリビアルの由縁で

    ないです。100探し当てると、

    ことをみんなで

    考えたものです。 企業におけるノントリビアルの意味は当然競争優位の戦略ということになります。

    しても差別化す

    た経営者、何と

    す。「あの経営

    者がいるあの会社はすばらしい会社だ。それじゃあ、あの会社が出す製品はすばらし

    いものに違いない」ということで、社長にファンが世間にたくさんできる。こうなっ

    ンティティが得られたということになって、

    最良の宣伝になる。ノントリビアルなことを製品にしてもビジネスモデルにしても販

    売の仕方にしても何でもいいですが、それに対してノントリビアルだということが言

    われると、その企業のものが売れるようになる。固定的なお客様がついてくるように

    なるということです。 時の流れを先に見つけて、それを創り上げる

    されなくなるんじゃないかと思います。 ノントリビアルというのは本質的なところに核心があるのです。誰

    った領域、逆説を言うくらいの誰も見向きもしなかったようなところ

    を見つける、そしてそれが物理学にとって本質的なものであった、非常

    あります。ノントリビアルと言われたような論文というのは非常に少

    編の論文がきてもその1編もないくらいです。しかしそういった論文を

    本当にみんなでむさぼるように読んで、さらにそれの上をいくような

    差別化戦略という言葉があります。製品でも企業のビジネスモデルに

    ることが大切です。その差別化が、企業の経営者が非常に差別化され

    いいますか、カリスマ性があると、お客様がファンになってくれるので

    たらしめたもので、コーポレートアイデ

    © B-LIFE21 2003-2004 千葉商科大学寄付講座 7

  • 次は向上思考です。これは時代の流れをつくる経営ということにな

    と思います。時の流れというものがあります。この頃は流れがすぐ変わ

    非常に流れをつかむのも難しい。あるいはフレキシブルであるという

    の大きな時の流れをつかんで、二つありますが、それに乗る経営と自

    いく経営とあります。時の流れに逆らったら、そんな会社は生き抜い

    自明の理ですが、その時の流れに乗った経営だと、会社はつぶれない

    ってもらいたい

    ったりします。

    ことも必要であ

    るかもしれませんが、大きな時の流れというものはなかなか変わらないものです。そ

    分で創り出して

    ていけないのは

    にしてもあまり

    儲からない。本当にいい会社になるには、時の流れを先に見つけてそれを創り上げる

    経営です。それが必要です。競争優位の資格をこれによって得ていくということです。 ろコンサルタン

    流れを感じるの

    くに社長です。

    人物に接する。

    ですから、社長がわざわざ来てくれたというと、訪問した相手先ではそれまで取って

    おいたような話もしてくれたり、見せてくれたりします。そうしたことで時代の流れ

    を一番敏感にキャッチできるのは、その会社の経営者です。ですから、経営者が自分

    でその業界の時の流れを創り出さなければいけないということで、これは経営者の仕

    事で一番大事なことだと思います。

    では時代の流れは誰が予見するかということですが、これはいろい

    ト会社とかありますが、実はその企業の属している業界で、一番時の

    は、感じなければいけない、感じるチャンスがあるのは経営者です。と

    社長は外に出歩くことも多い。世界中に出歩くことも多く、いろんな

    ためにはいろんなことを書きましたが、結構大切なので、少し話しま

    まず、経営者の

    そして先ほど申し上げた「一人では何もできない」ということですが、わかりやす

    く語って部下の共感と協力を得るということが成功の必要条件になるわけです。その

    す。 話すことは明瞭でなければいけない。明瞭とはやさしく、わかりや

    たことは、自信

    を持って話せますし、やさしく話せます。よく企業の場 、企業理念や戦略というも

    のを企画部門に任せるということがありますが、これはいけません。基本的な戦略、

    企画はやはり社長がつくらなければいけません。そうでないと、部下に自信を持って

    わかりやすく話せません。企画部門がこう言っているということだけでは、自信を持

    って話せません。自分で理解して、自分で体得して、自分で創り上げて自信を持って

    話すことが必要です。 もう一つ大切なのは一義的ということです。誰が聞いても同じ意味に聞こえるとい

    うことが大切です。人間というものは、社長が言ったことを A 部長は A の部門で都合

    すく話すということです。本当にわかっていること、自分が考え出し

    © B-LIFE21 2003-2004 千葉商科大学寄付講座 8

  • がいいように解釈します。B 部長は B という部門で自分の都合のいい傾向があります。しか

    ように解釈する

    し社長として話すことは誰が聞いても同じに受け取れるように

    もう一つは、社長が責任をとるつもりだったらはっきり言うのです。部下がある提

    かはっきり言わ

    じっくり考えて

    た時には社長は

    「これは俺が許可したので、成功した」、失敗した時には「だから十分検討してからや

    れといったのに。十分検討しなかったから上手くいかなかった」という責任逃れのよ

    ということも必

    ったらいいか方

    法も話す。そしていつでもストレートシンキングで話してください。思惑を抜いて話

    」ということを

    思惑を抜いて言

    それから、ダイレクトトーキング。伝えたいことは伝えたい相手に直接話す。部課

    長会か何かを開催し、そこで社長が話して、全部に徹底したと思ったら間違いです。

    うに解釈されます。また社長の話方が

    。伝えたい相手

    んが B さんに耳打ちする。それをまた B さんが C さんに耳打ちする、最後の人が何を聞いたかを聞いてみると、最初の人がいったことと大違いのゲームがありますが、あれはゲームでは

    。 それから、できるだけキーワードをつけて話す、キーチャートをつけて話すという

    こと。この発表の仕方というのは非常に大切です。ですからこの発表の仕方は情熱を

    持ってわかりやすく共感を得るように、責任を取るつもりで話すことが大切だという

    ことを申し上げたわけです。 経営に求められるプロフェッショナルとしての良心

    話さなければいけません。

    案をしてきたとします。そのとき社長がその提案を採用するかしない

    なければいけません。「この提案はたいへん重要な提案である。だから

    やりなさい」という言い方は、一番悪いやり方です。これは、成功し

    うなことになりがちです。 あとは論理的に話すということ。共感を得るためには情熱的に話す

    要ですが、内容は論理的にいわなければならないということです。 さらにわかりやすく話すためには、ある程度の例を出して、どうや

    すということです。「こういうことを言ったら彼はどう考えるだろうか

    考えてはいけません。言わなければわからないことは、ストレートに

    うということです。

    先ほど申し上げたように、自分の都合のいいよ

    悪いと、自分の都合の悪いところは都合のいいように解釈してしまう

    に直接話さないといけません。これはよく「伝言ゲーム」などで A さ

    なくて日常の会社の中ではしょっちゅう起きることです

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  • 次は、整合性です。物理論文の評価尺度の2番目に「美しい」とい

    す。物理論文の第一関門は「トリビアルかノントリビアルか」という

    リビアルといわれた中で、滅多にないのですが「美しい」と言われる論

    う言葉をお聞きなったことがあると思いますが、量子論では物質とい

    で見ると粒子である、ある面で見ると波動である。粒子と波動は、場

    方が違うが同じものであるということが物理学の量子論の基本的な原

    うことがありま

    ことで、ノント

    文があります。

    例えば物理学には非常に美しい方程式がいくつもあります。その一つは、量子論とい

    うものはある面

    合によって現れ

    理なのです。そ

    れを表現する光粒子の法則というものがありますが、これは E=hνという式、非常に簡単な式です。この E というのは物質が粒子として振舞う時の質量(重さ)です。そ

    という乗数でつ

    ます。非常に美

    E=mc といいます。相対性理論の場合には、物質(モノ)とエネルギーは同一である。E というのは物質の持つエネルギーです。乗数は mc2 で

    ネルギーに関係

    て、物質とエネ

    ルギー、この二つのも ける美しい法則です。こういうのが本当に美しいと

    いう領域ではないかと思います。 そして経営の場合にも「美しい経営」であってほしいと思います。これは理念主導

    の経営展開の整合性がよくて、チェックシステムがあり、情報の流通性が確保されて

    いるということが第一です。

    れから、νは波動として動く時の振動数です。この質量と振動数が hながっているわけです。この h というのをプランクの乗数と言っていしい式だと私は思います。

    それから、もう一つ、有名なアインシュタインの相対性理論があります。これ2

    ということから出ています

    す。c というのは光の速度です。その光の速度の2乗が物質の持つエするということです。この二つの式はアインシュタインの法則と言っ

    のを結び付

    次は、倫理性についても美しいシステムと結びつくわけですが、倫理は人間として

    の社会的活動の基本です。これが組織のサステナビリティを担保するものである。こ

    の倫理性が崩れたら組織のサステナビリティはない。いつも栄えるということを保証

    しているのがこの倫理性であると思っています。 これはマネジメントシステムとしてしっかりと確立されるべきものであります。と

    いうことは、皆さん、ISO14001 取得のときに出てきた Plan, Do, Check, Action の四つのサイクルによって、自立的に管理されているものでなければいけないということで

    す。 経営の場合はここに書いた通り、プロフェッショナルとしての良心、限界を極める挑

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  • 戦に似たものが必要であるということです。これは経営に携わってい

    プロですね。社長はプロの中の親分ということになるわけです。また

    てなくても技術屋さんは技術のプロ、会計をやっている人は会計のプ

    フェッショナルであるということを考えて、プロフェッショナルとし

    いた行動をするということです。そしてその行動をするためには必ず

    あります。近道をたどると必ず悪いことをするということです。先ほ

    は必ず良心にもとるよ

    るものは経営の

    、経営に携わっ

    ロ、販売をして

    いる人は販売のプロ、どの人も企業で仕事に携わっている人は自分はその分野のプロ

    ての良心に基づ

    いろんな困難が

    ど話に出たトヨ

    タさんでさえ、最近の新聞で試験問題をトヨタの人がインターネットで漏らしたとい

    うことがありましたが、何か早く効果をあげようとするとそうした近道をする。近道

    うなことが多いのです。良心にもとらないようにやるには、非

    常にいろいろな苦労をしなければならない。そのためには苦労の限界まで挑戦してみ

    保と責任と自律がベースとい

    うことは当然のことです。 心とかたちが整った美しいコーポレートガバナンス

    ることが必要だということです。それから、透明性の確

    次に、美しいシステムはもう一つ、美しいコーポレートガバナンス

    って成り立つものです。これはちょっと難しい話になりますが、簡単

    営者はまず経営方針と目標をつくるんだということです。それを株主

    な て

    いったステークホルダーに会社の方針と目標をすべて話して、それを

    て、次のステークホルダー・ミーティング、例えば株主総会の時に、

    価尺度でそれを評価

    というものによ

    に申しますと経

    総会で、資本を

    出してくれる人の前で、利害関係者の前で、開示します。それに賛同した人に株主に

    なっていただく、従業員になっていただく、あるいは取引先に っ いただく。そう

    きちんと実行し

    自分で作った評

    する。それを発表するということです。例えばこういうことを達

    成しますという目標を立てたら、1年後にそれに対して何%達成したかということを

    自分の評価尺度に基づいて評価するのです。企業の評価というのは、評価する会社が

    あります。それは株価にたいへん影響があります。そうした評価会社は、最近のその

    会社の業績、キャッシュフローで評価する。また、リストラしたら良いとか、A、B、C といった評価がつくわけです。そういうもので評価されるのではなくて、やはり自分の会社の評価は自分の評価尺度を持つべきである。それによって評価をすることが

    大切だということです。 そして、自分で目標を立て、それに向かって実行して何年経っても到達しなかった

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  • 場合は、自分の尺度によって評価してもだめだということで、やめる

    自立

    というくらいの

    の精神がなければだめです。これが本当のコーポレートガバナンスであると思い

    コーポレートガバナンスには二つあります。今申し上げたのは心の方です。形(か

    てしまう。役員

    を実行する。社

    る、あるいは役員

    の給料を決める委員会をつくるなどいろいろありますが、そういう形から入るものと

    心から入るものとありますが、私はまず心が大切であると申し上げたわけです。

    ます。

    たち)もあります。形はアメリカのように役員会と執行役員と分離し

    会の方は社外役員を入れてきて、戦略をつくる。執行役員の方はそれ

    外役員を迎えた役員会の方では、企画をする、執行役員の評価をす

    さて、次ですが、ではどのようにこれを経営していくかというと、まず第一に時の

    に沿うように理念をつくり、戦略を立てる。

    が尺度になる。

    理念と戦略をつくって実践に移していく

    ということになります。 市場を見る、自然に学ぶ、良心に問う3E 企業

    以上をもちまして、私の話の第一部の「美しい経営」について終わりまして、これ

    からそのケーススタディを申し上げたいと思います。 では、21 世紀の企業としてはどういう時の流れを考えたらいいか。その時の流れを

    いろんな方向から眺めてみたいと思います。

    流れを自分でつくるということ。時の流れ

    その際はノントリビアルとわかりやすさと美しいかどうか、この三つ

    この三つを尺度にして、時の流れを見た上で

    上図は左が 20 世紀型、右は 21 世紀型です。皆さんいろんなお話で聞かれていると思いますが、20 世紀型の方は、まず企業価値、株価ですね。これは短期的経済面の業績

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  • に偏重し過ぎている。その影響するところがたくさんあります。業績

    なると何とか業績をあげていこうということで、非合法な経済活動が

    うになります。見せかけの利益をつくるなんていうことが、アメリカ

    はより強く、弱いものはより弱く、貧しいものはより貧しいという方

    です。それからマーケットシェアなどにつきましても、シェアの高い

    占有率が増え、低いところはもっと減っていって、格差が拡大してい

    で左右されると

    頻発してくるよ

    のエンロン社な

    どでも行われました。それから貧富の格差が拡大していくということです。強いもの

    向にいったわけ

    ところはもっと

    きます。そうな

    りますと、人間の許容力、忍耐力の限界がありますね。今テロとかいろんなことが起

    きております。あれは宗教的な問題などいろいろあると思いますが、あれの根幹にあ

    力、忍耐力の限

    の企業価値を得るようなやり方ですと、地球資源、地球環

    あるいは自然環

    境というものは無限に容量が広くて、汚染というものは何とか浄化してくれるんだと

    のはお金がモノ

    来世代が市場に

    参加でき ですから、どこかで弱い人、未来世代の声を代弁してあげられ

    るような市場経済になっていなければいけない。同時に、先ほどの、人間の許容力の

    ことで、人間社

    自然環境への配慮が必要である。全体を通して言えば、こちらは持続可能な社会

    で、なんとか 21 世紀は持続可能な社会にもっていこうということです。 そうししますと、市場経済の流れの先をいくためには、Economy, Ecology, Ethics の

    三つを統合した企業にならなければいけないというのが私の持論です。エコノミーだ

    けではいけない。環境と企業倫理に目覚めた企業にならなければいけないということ

    です。

    るのはやはり、貧富の格差であると思います。そういった人間の許容

    界を越している。そういう状況まで来ているわけです。 それからもう一つは、こ

    境というものは有限ではなくて無限にあるんだ、石油は無限にある、

    いうことを仮定しているのです。 もう一つあるのは、経済的弱者は市場に参加できない。市場という

    を言う世界ですから、弱い人、弱い国は参加できない。もう一つは未

    ないのです。

    限界を越えている、地球資源、地球環境の限界を越えつつあるという

    会と

    上図は一つの例です。まず経済的には当然ですが主役はお金です。経済学に基づい

    て市場を見ながら進むと。手段は効率化、合理化をマキシマムにして、成果としては

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  • 資本生産性を改善するということになります。 それから環境問題については、エコロジー、自然に学ぶという態度が必要になりま

    それからインプット、アウトプット、これをライフサイクルでミニマムにするとい

    アウトプットと

    が使われて最後

    。それがライフサイクルでミニマムになること

    が必要ですよということです。成果としては資源エネルギーの生産性が改善されると

    いうことと自然の保護ということの二つです。 そして倫理学が

    挑戦すること、

    ムにするという

    うものが生じる

    かもしれませんが、そういったことは無理をしない。無理をするとどこかにロスが出

    アというのは製

    ビスのよさというもので自然ととれるという状態に保っておくという

    自分に力のついた領域、そうした領域の製品は他社にも売っていただく。競合相手

    との間で共存する、共生するというパートナーシップの企業行動もオプティマムな企

    いということで

    場合には、その

    人やグループというのは浮かばれなくなります。そういったことのないような、人間

    本来の資質というものを一番最大に発揮できるような、それにはエシカルリフォーム

    必要ではないかと思うわけです。 私はサステナビリティ・マトリクスというものをまとめようと考えて、今の話をし

    ー、エシックス。この三つが

    これからの 21 世紀社会の基本的デマンドになるというのが、私の考えです。グローバルな市場についてはエコノミーではマキシマムな経営を行う。エコロジーではミニマ

    きたいと思いま

    高成長を目指した各企業の心構えが日本経済を救う 次は、日本経済における時の流れですが、不況脱出がたいへん長期化しています。

    デフレや超低金利。株価の暴落とか、金融サービス、建設、不動産は非常に良くあり

    ません。まだまだ続くでしょう。しかしいずれは脱出するでしょうけれども、少子高

    齢化、あるいは人口が減るということで、低成長時代が続くのではないかと思います。

    とくに、人口減少ということで国内の消費市場の拡大は望めないと思います。例えば

    新しい携帯電話などが出ますと一時的にはバッと売れることはあるでしょうが、少な

    くとも国内では長続きはしないということです。すぐ一巡してしまうと思います。

    す。

    うことです。インプットとは投入した資源、エネルギーのことです。

    はそれによってできた製品ということではなく、廃棄物あるいは製品

    に廃棄されるものがアウトプットです

    それから最後の倫理的なリフォームですが、これは人が対象です。

    大切、プロとしての良心を貫徹すること、そしてそのためには限界に

    企業活動をオプティマムにすることが大切だと思います。オプティマ

    ことは、企業活動で企業を強くしようと思うと、シェアの争奪戦とい

    てくるということで、オプティマムにすると。例えばマーケットシェ

    品の良さ、サー

    ことであります。

    業行動の一つです。 そして、それによって人間の資質、人間の貴重な資源を無駄にしな

    す。例えば良心に恥じるような行動をとって、それが非合法であった

    ています。まず、基本デマンドはエコノミー、エコロジ

    ムに経営を行う。エシックスではオプティマムな経営をするのだと書

    す。

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  • ではこういう状態で、われわれは何をなすべきか。もう日本経済が

    社だけは高成長させるんだと、この心構えが企業としては

    どうなっても自

    大切です。逆に言うと、各

    。 日本企業というのはいろいろあります。外需企業、内需企業、その中の一つとして、

    考えています。

    んバブル崩壊の

    たと思います。そして、外需

    企業は、今から 10 年位前に異常な円高が起きましたが、1ドル 79 円くらいになるようなたいへんな円高でした。これで影響を受けました。

    産の方は私もよ

    していません。

    しれないという

    、だいたい、政

    府が買い上げるという思想がおかしいのです。われわれ外需企業にとっては、悪い部

    ります。それを

    、したがって、

    そうなりますと、輸入品で輸入できるようなものや外資がたくさん入ってきました

    がその部分のシェアが拡大していって、そして国内市場、消費市場は飽和状態にある

    間が一日に食べ

    っていると思い

    外需企業については当面 120 円、今は 110 円。それくらいなら大したことありません。先ほど申し上げたように 80 円を超えるような円高になってもなんとか耐えました

    うジャンルの企

    な不況の原因に

    製造業と非製造

    業に分けて対策を考えられますけれども、それは間違いで、むしろ外需企業と内需企

    業、それと金融サービス、建設、不動産。この三つに分けて対策を考える方が正しい

    やっていました

    前から言ってい

    るのですが、ようやく食品会社などでも中国やその他の東南アジア諸国に参入すると

    ころが増えてきました。それから、外需企業については、キヤノンにいた時に布石を

    打っていたのですが、日本のほかにアメリカとヨーロッパに日本と同じ構造の企業を

    つくる。つまり研究開発から生産と販売までもった企業をつくるんだと。そしてアメ

    リカの研究所で出た成果はアメリカで生産する。ヨーロッパで出た成果はヨーロッパ

    で生産して、そして相互に輸出をするんだという体制が 10~15 年続きますと、アメリカやヨーロッパの子会社も大きくなってまいりまして、三極から輸出するものがそれ

    ぞれトレードバランス、同じ量だけの、同じ金額の輸出ができるようになると。そう

    企業がその心構えで成長すれば、日本経済は救われるということです

    金融サービス、建設、不動産というのがありますが、これは一つ別枠で

    不況の原因というのは、バブル崩壊が中心でした。内需企業はもちろ

    影響もありますが、一番大きな影響は大競争時代であっ

    今後どうなるかということですが、この金融サービス、建設、不動

    くわかりませんが、内需企業で言いますと、まだまだ保護政策が解消

    例えば、牛肉。海外から輸入した牛肉は BSE の影響を受けているかもので政府が買い上げてくれる。それにまつわる不祥事が起きましたが

    品を仕入れてしまったら、それは自己責任で焼却するということにな

    政府が守るということ自体おかしなことです。保護政策は解消されず

    低生産性でコスト高も変わりません。

    と思います。これは人口が増えませんので、例えば、食料品ですと人

    られる量、飲める量は限られております。したがって、飽和状態にな

    ます。

    から。私が申し上げたいのは、不況の原因が三つあって、それぞれ違

    業が対応していると。そうなると、それぞれが自分が受けた一番深刻

    基づいて対処しなければいけないんだと思います。よく経済界の方は

    と思います。 まず内需企業はグローバル市場に参入する。これは今まで内需だけ

    がグローバルな市場に参入するということが必要であります。何年か

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  • なると、先ほどの円高によって、あるいは円安によって業績が大きく

    とがなくなりま

    揺れたというこ

    す。こういう構造にもっていくべきである。これが外需企業の行き方

    内需企業の国内はもちろん全てについて多角化をしなければならないと思います。

    ては成長市場に参入する。例えば中国に参入して中国人のためにモノを

    りますが、こ

    内需企業は進出する場合には、日本の資本 100%で進出するべきであると考えます。ペンティアムのようなメモリについて、とくに日本が世界を制覇していたわけですが、

    は、なぜかとい

    つくらなかった

    体工場は設備投

    日本の半導体の海外工場も国

    内の工場も含めて、日本の半導体会社の生産だけで、世界中が満たされるという段階

    なくなっていた

    きに新しい環境

    文明を導入すべきです。今までは集中、枯渇原料によったものを分散して非枯渇型に

    するということですね。これは今日本や欧米で行われている文明を、そのままこれか

    分散型の発電シ

    るいはすでに電話については分散型を導入して

    くべきですし、

    道路をつくるよりも鉄道をつくる手伝いをしてあげるということが必要だと思います。

    そのような新しい環境文明を導入するお手伝いをすべきだと思います。 、つまり安心、安全、ハイテクを加えたもの

    が、一つは差別

    化市場に参入するということ。とくにエコノミー的にこれは引き合うと思います。日

    本のプラスチックの会社は、基本のプラスチックから少し樹脂の結合の仕方を変更し

    くってくれるのです。ところが海外の

    者が来ています

    が、彼らの仕事は日本で新しい原材料を要求してつくって、それを海外に輸出すると

    いうのが一つの仕事です。それからもう一つは、機械の中に自動的にその機械の状態

    を感知するようなセンサーを組み込まなければいけないのですが、そのセンサーは日

    本に多くあるのです。日本のメーカーはセンサーが得意です。そういうセンサーを日

    本で調べて、それを持ち込むというのも仕事の一つです。 それから、エコロジー的には、日本の製品が耐久消費財は全世界を制覇しました。

    そういう日本の耐久消費財がいまや、エコデザインに変更しております。そうしたエ

    コデザインに変更された商品を先進国に大いに普及させることが大切であると思いま

    であると思います。

    途上国につい

    つくって中国で売るということなのです。その進出の仕方はいろいろあ

    こでは省きます。

    いまや、それは韓国や中国の企業にその座を奪われてきました。それ

    うと、内需企業に徹しておりまして半導体工場を中国や韓国、台湾に

    からだと私は思います。例えば中国に大工場をつくるとすると、半導

    資が何千億円とかかります。そういう大工場ができて、

    に早くなっていたら、中国や韓国、台湾が半導体工場をつくる余地は

    と思います。早く出なかったというのが間違いですね。 それから、次はエコロジカルを見ますと、内需産業が外国に出ると

    らの途上国に持っていくというのは間違いだと思います。できるだけ

    ステムを持っていくべきであって、あ

    非常に上手くいっています。したがって、電力についても分散型でい

    そしてエシックス的には日本の上品質

    を売るのだということになるのだと思います。 次は、日本の内需企業が先進国に進出したらどうかということです

    た樹脂などをつくってほしいと言いますと、つ

    会社はそういったものをつくってはくれません。 例えばテトラパックには今、スウェーデンの研究所から二人の技術

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  • す。 それから、エシックス的には日本の健康、長寿を売るんだということが大事だと思

    います。

    来 のように、日本

    ライフ(生活の

    質)を求める社会になっています。それから社会的責任を重視するようになっている。

    CSR(企業の社会的責任)ということも言われております。ところが、こういうことてはヨーロッパ

    早くからプリン

    介いただきまし

    らです。そし

    てヨーロッパを中心にして、世界中にリサイクル網をつくり上げたということです。

    ィ・オブ・ライ

    んでおります。

    いつけ、追い越

    せ」時代の到来であり、日本の一番得意な時代が来たということも言えるのではない

    かと思います。新しい事業をつくったりするチャンスであります。そのためには今申

    技術の種を見つ

    いは研究開発拠

    ます。 少子高齢化については、国内では ボットというものがたいへん脚光を浴びてくる

    と思います。高度情報化については超量産、IT では人工思考ということが出てくると動化、情報化ということになります。超自動化と

    カンバン方式で

    部品をつくって

    しまうという、これだけ必要だということが IT で割り出したら、その数だけその場で部品をつくるというのが、超自動化です。

    生産になるわけ

    常にコストが削減されるわけです。 テクを使った品

    質の良いもの、それから超多様化。お客様個別の使用に合うような、オンデマンド製

    品ということになるわけです。 機能利用というのは耐久消費財を買ってきて使うのではなくて、それを借りて使う。

    借りて使うとなると、イニシャルコストというものがあまり高くありませんから、い

    ろんな耐久消費財を同時に使用できるようになるというメリットがユーザーにはある

    わけです。 環境面から見ますと、耐久消費財ですから、電力で動きます。そうした電力に応じ

    た値段をメーカーに払うことになります。ユーザーとしては電力代、メーカーに払う

    日本社会の時の流れは、第二の「追いつけ、追い越せ」時代の到

    次は、日本社会における時の流れです。これは皆さんよくおわかり

    の社会は少子高齢化、環境保全型、高度情報化、クオリティ・オブ・

    は日本が先行しているかというとそうではなくて、少子高齢化につい

    が先行しています。環境もヨーロッパが先行しています。キヤノンが

    タ・カートリッジのリサイクルを実施したと先ほど宮崎先生からご紹

    たが、それというのも、キヤノンがヨーロッパで環境の洗礼を受けたか

    それから、情報化についてはアメリカが先行しております。クオリテ

    フについてはヨーロッパが中心でした。CSR についてもヨーロッパが進このように先進地域があるわけですから、日本にとっては第二の「追

    し上げたヨーロッパやアメリカによって、内容によって違いますが、

    けるため、あるいは事業のネタを捉えるためのアンテナを置く、ある

    点をそういったところに置く、これが戦略になるのではないかと思い

    思います。超量産というのは、超自

    いうのは、今まで自動化のラインに持ち込むものは、トヨタだったら

    部品を持ち込んでいました。それを、メインの組み立てラインの横で

    情報化というのは、そういう情報を使うというのは、オンデマンド

    です。非

    それから、クオリティ・オブ・ライフ志向では、超品質です。ハイ

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  • レンタルフィーを節約するためには、なるべく有効にその機能を使うということが必

    す。 に生産をしていく。これは在庫を必

    要としませんし、経済的にもいいし、環境的に非常にいい。 たすためには安

    逆に言うと、安心と安全を販売しているんだという販売の仕方があ

    お客様に売ると

    いうことになります。 もう一つ必要なのは、グローバルではプロパテント経営というのが必要になると思

    います。

    要です。それが電力の節約になります。そうした機能販売のやり方で

    オンデマンドで市場からの要求に応じて、個別

    それから超品質というのはエシックス的ですね。社会的な責任を果

    心と安全である。

    ると思います。そのためにはできるだけ近いところで製造したものを

    このように時の流れを分解しながら見ていきますと、一般論になりますが、上記の

    ようなサステナビリティ・マトリクスというものができてくるわけです。もちろん、

    が、この中から

    いうことになり

    自然界の生態系に習うゼロエミッションの考え方

    最後に、お手元に差し上げている資料にゼロエミッションの話が残っていると思い

    ます。これは簡単にお話しておきますと、ゼロエミッションの簡単な考え方を示した

    ものです。当初から生態系に習うという考え方がありました。生態系に習うというこ

    とは、こんなところに出てくるのです。例えば、自然界。サハラ砂漠を考えてもらい

    ますと、そこで植物が生えています。それが草食動物の食料になるわけですから、植

    物を生産者と見ることができます。生産者である植物が自分で増殖をします。そして

    自分の業界にあったように基本方針、理念は変えなければいけません

    選ぶあるいはこれに追加してつくっていくような考え方が成り立つと

    ます。

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  • それを草食動物が食べるということで、草食動物は消費者になるわけ

    が廃棄物を出します。つまり排泄物、食べ残し、自分の死骸。その廃

    ル業者は微生物です。微生物が解体、分解する。微生物のそうした作

    るということで、ゼロエミッションの方では産業でもこうしたことが

    ということで、A の産業の廃棄物を B の産業の原材料にして、B の産の産業の原材料にする。そして C の産業の廃棄物を A の産業の原材料

    とここに肉食動物がいまして、この役割というのは草食動物、つまり

    ロールする、消費の抑制をする力が一つあると見られます。つまり、

    いと草食動物がいくらでも増えてしまう。草食動物が植物を食べ尽く

    分も破滅する。こういうことが起こら

    です。草食動物

    棄物のリサイク

    用で肥料ができ

    て、その肥料を使って植物がまた生長するということで、またそのサイクルが回され

    成り立つだろう

    業の廃棄物を Cとして使えるよ

    うにすると、ABC で一つのサイクルができるわけです。そういうゼロエミッションのクラスターづくりというものを一生懸命考えたのですが、そのほか、サハラ砂漠です

    消費者をコント

    肉食動物がいな

    してしまうと自

    ないように、肉食動物で消費の調整をしている

    という考え方もあると思います。それだけで足りない場合は、例えば天変地異によっ

    。自然界というのはなかなか残酷なもので、そうし

    自然界のバラン

    スの取れた合理的な仕組みとして自然のゼロエミッションシステムができているとい

    うことができると思います。 ていました。い

    んな学問をつく

    自然界を極めました。極めましたら今度は自然を征服・支配して、自分の

    便利さのために、福祉向上のために使おうとしたのです。ところがその過程で、ナチ

    ュラルゼロエミッションである自然界を破壊し始めたわけです。そしてその破壊もこ

    れ以上進んではいけない、あるいは資源の乱獲をこれ以上進めてはいけないというこ

    とで、人類はいまや目覚めて、生態系、自然界に復帰していこうという考えも少し出

    てきました。

    て調節するということもあります

    たことで消費の抑制、調整をしているのです。 ゼロエミッションの場合には、生態系がありますね。長年の進化で

    人間は二本足で立って歩き始めるまでは、この生態系の中で暮らし

    つか離脱しました。離脱しただけではなく、人類は頭が良いのでいろ

    り出して、

    まず第一にやることは、生態系を壊してしまったところを修復するということです。

    これは今もいろんなところで行われています。 次は、自然界のゼロエミッションのやり方を極めるということ。極めたら、それを

    応用してゼロエミッションの社会をつくっていこう。このゼロエミッションの社会と

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  • 福祉を向上させた社会とをうまくどこかで調和させるということになるんじゃないか

    と思います。

    これは生産の場で、今は見込み生産、見込み販売です。それからコ

    めに集中生産して大量輸送する。これは自然

    ストを下げるた

    界ではどうしているかというと、種の保

    存のために生産をする。食の確保が満たされるだけの生産をする。これはオンデマン

    思います。オンデマンド生産をしますと、非常に

    資源とエネルギーの生産性を上げることになります。 この集中生産、大量輸送も生活圏の中での生産、調整が生態系の中では行われてい

    ます。今、地産地消ということで、その土地で取れたものはその土地で消費するとい

    うことが謳われるようになってきています。

    ドの生産をしているのではないかと

    る環境税 というと、お金がないから購

    いうことが言え

    るのではないか。例えばアフリカのワニやカバが大きな口を開けていてそこに小鳥が

    きて、ワニやカバの歯の間に挟まったクズを食べています。そのときワニやカバは小

    鳥のなすがままにさせている。そういう小鳥はワニやカバにとっては歯ブラシのよう

    なものなのです。しかし、自然界ではその歯ブラシを自分のものに所有しようとはし

    ない。小鳥の果たしてくれる機能だけを利用しているのだということで、やはり機能

    販売ということをわれわれの社会でも考えていく必要があります。 それから先ほど大量消費、消費の自由が社会では行われているのですが、先ほど来

    申し上げた肉食動物のようなあるいは天変地異のような自然の摂理による消費の抑制

    消費抑制の自然の摂理に比べたら、はるかにやわらかい制度であ

    今度は消費の場合です。自然界ではどうやっているか

    入できないわけですけれども、考え方によっては、共生関係にあると

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  • が行われている。しかし、今日本などが少子高齢化になって、人口が

    うことも自然の摂理の一つかもしれませんが、それでは寂しい。われ

    か制度的に消費の抑制ができないかと考えています。何らかの規制を

    けて化石燃料の消費を減らすなどです。何か制度で抑制できないかとい

    これに対しては反対されている人がたくさんいます。しかし、反対し

    ては「自然の摂理というのはもっと厳しいんだよ。消費を抑制するため

    減りそうだとい

    われとしては何

    することで消費

    を抑制する、あるいは税制を検討する。例えば環境税をつける。あるいは炭素税をつ

    うことですが、

    ている人に対し

    には強制的な

    人減らしまで将来的にはしなければならないかもしれないんだよ。そうではなくてこ

    ういう制度で自然に消費が減っていくことができれば、非常にめでたいのではないか」

    やわらかなもの

    、動植物、自然エネルギー、太陽光、

    している。枯渇エネルギー、資源を大量に

    使用した社会から将来は非枯渇性の資源、エネルギーを利用した経済に徐々に移り変

    わっていかなければいけないのではないかと思います。 生産して消費してリサイクルの段階を考えます。

    と申し上げたい。環境税や炭素税は、自然の摂理に比べればはるかに

    だと言いたいと思います。 それから、自然の場合にはなくならない資源

    水力、風力、地熱、こういったものを利用

    今は、分別回収して集中処理していますが、それをできるだけ先ほどの地産地消と

    同じように、その土地で廃棄したものはその土地で処理する。そしてエネルギーに変

    える。肥料に変えるとか燃料に変えるとか、地廃地処ということをしていくことがい

    いのではないかと思います。 最後の方は駆け足になってしまいましたが、時間が参りましたので私の話はこれで

    宮崎 どうもありがとうございました。時間がきてしまったのですが、せっかくの機

    会なので質問を受けたいと思います。 会場 お話の中でもあったオンデマンドのことなのですが、以前いらしたキヤノンの

    セル方式が有名ですね。その中で、キヤノンでのセル方式についてお伺いしたいので

    すが。

    終わりにしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

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  • て方式ですね。

    その組み立ての方式を変えたものです。以前はカメラでも複写機でもプリンタでも工

    と並んでいて、

    れてくると、そ

    ものに組み立て

    ると、それが次のところに流れていくという方式ですね。それが非常に効率がいいと

    いわれて主流だったのです。それに対して、セル生産方式というのは、三つの理由が

    視したものであ

    日中同じことをやらせている。人間の向上

    ではないかとい

    高齢化で少なく

    なってくるのではないかということもありました。 たのを、何工程

    した。人間性無

    ではないか。そ

    れによって成果主義賃金というものも変えていくことができるのではないか。高い報

    酬がもらいたいから、おもしろいから、組み立てに従事している方は 1 工程ではなくうように習熟していって、他工程までやってい

    さるようになる

    り出してみます

    と、ベルトライン方式というのは一機種の大量生産にはいいのですが、多機種少量生

    産には向いていないのです。多機種少量生産ですとそんなに大勢並ばなくてもできる

    う情報がきます

    リカの方からそ

    ういった情報が日本の工場に入ってきます。そうすると、明日はそれに見合って、も

    う少し売れそうだから、もう少しこれをつくろうということで、作業ができます。つ

    ンド生産方式に

    すと在庫も少なくてすむし、つくったものが全部売れます

    もいいのです。

    また社会的にも自分のほしいものがすぐ手に入るということでいいのですが、ただ一

    つ問題なのは、何工程もこなすわけですから、作業員のその日の健康状態、精神状態

    によって、いい製品ができたり悪い製品ができたりするのではないかというのが一番

    の心配です。ですから朝起きる時にお父さんとケンカして出てきたとか、友達とケン

    カしちゃったとかでムシャクシャしていると、それが生産に影響しないようにすると

    いうことが、一番のテーマです。 そのためにキヤノンなどではいろいろ工夫していて、工場に出勤して作業所に入る

    前に大きな鏡があり、鏡の前に立って自分の顔をじっくり見るのです。そうすると、

    山路 セル生産方式というのは、ベルトラインに並んで生産する組み立

    場に長いベルトラインがあり、そのベルトラインの横に作業者がずらり

    そのベルトラインの上をカメラや複写機などの半組み立てのものが流

    こに自分の担当する部品が置いてありまして、その部品を流れてきた

    ありました。一つはそういうベルトライン方式というのは人間性を無

    るということ。人間の能力を無視して、一

    心も、向上しようにも向上のしようがないということで、よくないの

    うことが一つです。だんだん、そういう作業をやってくれる人も少子

    そしてその次に考えられたことは、これまで1工程だけをやってい

    か部品を取り付けるのをやってもらったらどうかということになりま

    視ではないということと、習熟度によって工程数を増やしていけるの

    2工程、2工程だけでなく3工程とい

    ただけるようになるのではないか、最後には全部一人で組み立てて下

    のではないか、ということを考えて始めたのがセル生産方式です。や

    機種もあるのです。これが理由の二つ目です。 そうなりますと、販売の方から今日はこれだけ在庫品が売れたとい

    と、販売の方というのは、例えばアメリカで売っているとすればアメ

    まり、必要な分だけつくるというかたちになります。それでオンデマ

    なり、オンデマンド生産で

    から捨てるものもない。そういうメリットがあり、環境的にも経済的に

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    けない」という

    開けて入ります

    って、何秒か経

    つと次のスイッチが入って、次の線まで到達していないとブザーが鳴ります。ブザー

    一されてきて、

    。 ペースを占有し

    ますが、セル生産方式ですと非常にフレキシブルにできます。作業面積が少なくてす

    む。その開いたところを他の用途に使えるというメリットがあります。非常に今の時

    宮崎 ありがとうございました。「美しい経営」の「美しい」の中身、自然の摂理と比

    較したたいへん深いお話に感銘を受けました。今日はすばらしいお話をいただきまし

    て本当にありがとうございました。

    「これは普段の顔じゃない。ムシャクシャした顔だ。直さなくちゃい

    ことで、鏡を見ているうちに心が和んでくる。その次の工程はドアを

    とそこの廊下に5m間隔の線があり、その間を歩くと、スイッチが入

    がなったら、もう一度もとの所に戻って歩き出す。だんだんと精神が統

    仕事をするという段階に到達するわけです。それがセル生産方式です

    もう一つのメリットは、大量生産の時にはベルトラインが大きなス

    流にあった生産方式であると言えます。