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日本のプロ野球球団の 収入増加の要因について
~パ・リーグの事例を元に~
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4年 大野 目次 第1章 はじめに 第 2 章 スポーツビジネスの収入構造 第 1 節 チケット収入 第 2 節 グッズ収入 第 3 節 放映権収入 第 4 節 スポンサー収入 第 3 章 NPB の成り立ち 第 4 章 パ・リーグの改革 第 1 節 北海道日本ハムファイターズ 第 2 節 東北楽天ゴールデンイーグルス 第 3 節 千葉ロッテマリーンズ 第 4 節 埼玉西武ライオンズ 第 5 節 オリックス・バファローズ 第 6 節 福岡ソフトバンクホークス 第 5 章 結論
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第1章 はじめに プロ野球と言えば多くの方々から愛されており、アメリカ発祥のスポーツだが日本でも
かなり定着してきているものである。 1994 年には日本プロ野球史上初めてリーグ最終戦で勝率が同率で首位に並んだチーム同士
での優勝決定の直接対決が行われた「10.8 決戦」というものがあったが、この試合の視聴
率が関東地区で 48.8%、名古屋地区では 54.0%とスポーツの試合中継では異例の数字をた
たき出した。この数字からいかに当時日本国民が野球について興味があったかが分かると
思う。 しかし、現在では球場に足を運ぶ観客も減り、昔はテレビでの地上波放送が当たり前であ
ったが今は CS 放送がほとんどである。昔のように野球中継が当たり前のようにやっておら
ず、国民からの注目度も下がっていってしまっているのが現状だ。さらに、一流選手が続々
とメジャーリーグに移籍し、日本のプロ野球がメジャーリーグのマイナー扱いされてしま
う日もそう遠くない。 サッカーJ リーグが誕生するまで日本の国民的スポーツは野球であった。しかし、その野
球も 1992 年以降衰退の兆しを見せている。 そんな中でもここ数年パ・リーグが成長の兆しを見せている。
昔は「人気のセ、実力のパ」とも言われパ・リーグの球場には座席を広く使い試合を見ずに
寝ているなんて人が多くいたことからこのように言われてきたが、近年では「人気のパ、実
力のパ」と言われており人気面でもセ・リーグに劣らないほどまで成長を見せている。 野球人気衰退の兆しの中でパ・リーグの球団はどのようにして売り上げを伸ばしてきたの
だろうか。また今後も生き残るためには今後どのような要素が必要なのだろうか。本論文で
はパ・リーグ各球団の取り組みなどを参考にしながらその要因を探り、方法を考察していき
たいと思う。
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第 2 章 スポーツビジネスの収入構造 第 1 節 チケット収入
スポーツ業界では主に、チケット収入、グッズ収入、放映権収入、スポンサー収入の 4 つ
から成り立っている。この収入の 4 つの要素についてまずはスポーツビジネスという全体
から見てみる。 チケット収入は収入全体の 30~50%をおおよそ占めておりとても重要な要素になってい
る。1そのため、観客に入場料を払っていただき少しでも多い試合数見ていただきたいとい
う思いがある。というのもチームによってはガラガラのスタジアムは格好が悪いとばかり
に無料のチケットを大量に配っているというのだ。これでは席は埋まるかもしれないが利
益にならず、黒字を伸ばすのは難しいと思われる。さらには入場者のカウントをいい加減に
している球団もあるようだ。無料の観客がたくさんいて、観客が何人入っているか把握して
いない。このような状態ではビジネスを成功させようと思っても損益分岐点がどこなのか
ということが全く分かりません。例えば 1 人 1500 円の入場料で 4 万人の観客が入ったとす
る。これを 500 円だけ上げて 2000 円の入場料にし、同じ人数の観客が入ったとすると 2000万円差が出る。たった 500 円だけでこの差になるのだ。無料のチケットを配ることは興味
がない観客層への宣伝となり長期的にはいいものになるのかもしれないが、客単価を下げ
るということになってしまうのでできるだけ無料のチケットを減らすということがスポー
ツビジネスを成り立たせるためには大事な要素になってくる。 無料のチケット少なくするほかにも客単価を上げる方法はいくつかある。プレミアムシ
ートやグッズ付きのシート、などの高価格のシートを多く作ったり、できるだけプレイガイ
ドを通さずにチケット販売をすることだ。近年では福岡ソフトバンクホークスや千葉ロッ
テマリーンズなどがやったホームランテラス席などがいい例である。 試合でのホームランの数を増やし、観客もより臨場感のある試合を楽しめるため人気のシ
ートとなっている。チームを強くし、席数を増やすことで客単価を上げる実に良い方法だと
思う。 しかし、高価格のチケットを増やすことは今まで見に来ていたファンの反感を買うので
はないかという疑問が浮かぶかもしれない。だが、中にはお金がかかってもいいからもっと
近くでもっといい席でもっといい環境で見たいという観客もいるのだ。自分自身年間で 50~60 試合ほど見に行っているのだが、確かに安いチケットのほうがお財布事情的には優し
く取れることならそこで見たいと思う。しかしプロ野球の座席の中で一番安い席は外野席
や立ち見になる。みんなで選手を応援することが楽しみだという熱心な野球ファンなら好
んで安い外野席を選択するかもしれない。しかし中には家族連れや、仕事帰りに見に来たな
どという様々な観客がいる。多少高くてもゆっくり快適に野球を見たいという観客が少な
からずいるのだ。すべてのチケット値段を上げるわけではなく、そのような方たちに向けて
一部の座席のチケットを高くするのだ。 1 藤井純一 pp36-37
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さらにプレイガイドを通さず販売するということも大事になってくる。現在ではほとん
どの球団がプレイガイドを通してチケットの販売を行っている。これの何が問題なのかと
いうと手数料である。チケット一枚につきおおよそ 7~12%の手数料が取られている。チケ
ット大量に売ったのはよいのだが手数料がかなりの率かかり収入自体はそんなに増えなか
ったということが起きてしまうのだ。 では手数料をかけずにチケット売るにはどのようにすればいいのか。それは自社でチケ
ット販売サービスを作りそれを通して販売することだ。2筆者自身ファイターズのファンク
ラブに入っているのだがファイターズでは独自でチケット販売を行っている。従来は試合
の数日前までしか前売り券を販売しないなどということが多かったのだが試合の二時間前
まで販売を行っているのだ。当日券の列に並んで買う必要もなくとても便利になっている。
さらにチケットを購入する際に自分の好きな座席を選択できるようになっていたり、オス
スメの区間を提示してくれるのだ。この機能によって「もっと前の座席がいい」「最後まで
見ることができず途中で抜けるから端の座席がいい」などといった個人の都合に合わせた
座席選びが可能となっている。さらにチケットを QR 表示することにチケットをもってい
かなくてはいけないという面倒くささをなくすことができたのだ。自社で販売することに
よって日々観客のニーズに合わせた販売サービスを作ることができる。 手数料がかからずチケット収入が増え、観客からの評価も上がる。プレイガイドを通さず
販売することによって様々な利益が生まれるのだ。 チケットの販売種類を増やし、上げることのできるチケットの価格を上げ、独自のチケッ
トサービスを通して販売をする。これらの要素がチケット収入を増やす上において大事に
なってくる。 第 2 節 グッズ収入 チームの収入源でチケット収入の他に大きな収入はグッズ収入となる。グッズはチーム
にもよるが北海道日本ハムファイターズの場合は売り上げ全体の約 7~12%の 8 億~10 億
円となっている。このうち材料費や製造費などの原価を差し引いたものが 4 億~5 億円とな
っている。これからも分かるように決して侮ってはいけないような額になるのだ そんなグッズの開発には大きく 2 種類ある。自社開発とロイヤリティを払ったうえで外
部業者が担当をするものだ。 自社開発の場合は社内で綿密に計画を練って開発・販売をしなくてはならない。
社員が開発、発注、入荷を確認しその上で小売りの部署へと配送、在庫管理までをするとい
ったように全てを独自でオペレーションする必要があるのだ。この自社開発の長所は顧客
の求める商品の情報が直接上がってきやすいことや粗利率が高いこと、さらに新しい商品
の開発がしやすく必要な経費も正確に把握できるため効率的な運用が可能であるという点
がある。しかしその反面不良在庫のリスクを抱えたり配送や小売りなど少しでも関わった
2 藤井純一 pp44-54
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ものに対して給料を支払わなくてはならないという短所もある。 一方外部委託の長所は在庫のリスクを抱えなくていいこと、社員などを直接雇用する必
要がないこと、運用面の経費までを考慮する必要がないということがある。一方で短所は観
客の声が入って来にくく開発のスピードが遅くなってしまうこと、粗利が少ないことが挙
げられる。3全てを外部に委託してしまうと利益があまり少なくなってしまうためできるだ
けデメリットも覚悟して自社で開発、販売したほうが良いと筆者は考える。 グッズというのは応援する際にぜひとも身に着けておきたいものである。自分の好きな
選手のグッズがあるかどうかワクワクしながらショップに足を運び商品を探すものだ。よ
く試合を見に行っている筆者の立場から考えるとグッズはスタメン選手などの中心選手の
グッズは大量に用意し種類も多く販売したほうが良いと思う。しかしタオルやユニフォー
ムなどの看板グッズは 2 軍にいる若い選手のグッズも販売したほうが良いと思う。 もちろん数量は中心選手よりは少なめになってしまうが。よく見に行っているファンは意
外と中心ではない実力をつけている若手の選手が好きであるという印象がある。なので、タ
オルなどの簡単なものは全選手用意していても良いと思うユニフォームに関しては無地の
ものにその選手の名前や番号のものを貼り付けることができるサービスを行うことで全選
手のユニフォームを無理やり準備する必要がなくなるのだ。もちろんその貼り付けのサー
ビスを行うスタッフや機械の配置が必要となってしまうが無理やり作り在庫を抱えるより
はよっぽど良いと思う。 このような対応をできるように細やかな発注をかけられるようにするためにも自社開発
にして柔軟に迅速に対応ができるようにすることがグッズ収入を増やすことにおいて重要
な要素になってくると考える。 第 3 節 放映権収入
放映権収入も大きな収入の要素になっていると説明したがでは放映権とは何なのか。放
映権とは「放送放映権の略語であり、テレビ放送において他社から借り受けたり、配給され
たニュース、スポーツ、イベントを独占的に放映できる権利のこと」4である。スポーツを
はじめとしたあらゆるコンテンツを多くの視聴者の方に楽しんでもらおうとソフトを供給
することで発生する放映権料が放映権収入ということだ。経営の安定を図るためにもこの
収入は大事なものになる。 この放映権の契約も様々なものがあり、制作の仕方なども違うのだ。セ・リーグとパ・リ
ーグとでも違う。セ・リーグでは制作から放送までをテレビ局にお願いしている。ここで「中
継とかって全部テレビ局に任せるものじゃないの?」と思われる方も多いと思う。実は制作
をテレビ局に任せてしまうとその映像の著作権はテレビ局のものになってしまうのだ。例
えば今年の好プレー集やホームラン集を作りそれを DVD にして販売するとする。もしテレ
3 藤井純一 pp136-138 4 藤井純一 P88
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ビ局に制作を任せてしまっていると該当する場面の映像を全てテレビ局に確認してもらう
必要がありさらに販売しても利益は全てテレビ局のものになってしまう。そこでパ・リーグ
はその著作権を自分たちで確保するために制作を各チームで行うようになった。スタジア
ムにテレビカメラを配置して、撮影した映像を録画して残し、その映像をテレビ局に販売し
たり DVD にしたりするのだ。そこにかかる経費なども全てそのチーム持ちになるのだがそ
れを差し引いても十分な利益になるという。多少の労力はかかるかもしれないが自分たち
で行えば利益が生み出しやすくなる。 放映権料は視聴料が上がると高くなる。テレビ局にたくさんの試合を放映してもらえス
ポンサーも多くつく。逆に視聴率が下がると放映権料は安くなり放送もされなくなりスポ
ンサーも離れて行ってしまうのだ。あまりにも視聴率の低下が顕著だとその中継にスポン
サーがつかず放送を打ち切られてしまう可能性が高くなる。この放映権の販売を単に利益
の確保と考えるのではなくファン拡大の機会ととらえることが重要である。テレビ局に放
映権を買ってもらうためにまとめて買ってもらうことで安くなるようにすることでより多
くの放映権を買ってもらえるようにする。放送回数が多くなることでファンが増える確率
も高くなると思う。このようにコストにばかりとらわれるのではなく目の前のファンを獲
得するということにも目を向けて考えることが重要となってくる。さらにシーズンの試合
だけではなくオープン戦の試合なども放送してもらったりするなどとして別の収入減を確
保することも重要となってくる。5 第 4 節 スポンサー収入 スポンサー収入はプロ野球球団の収入の中でも平均して全体の 30%の収入を占めており
とても大事な要素であるということがわかる。 スポンサーになるにはかなりのコストがかかるといわれている。そこまでして企業がス
ポンサーになるのはイメージアップを図りたいからである。スポーツには明るさや強さ、純
粋さというイメージを含んでおりその印象を消費者に植え付けることができれば広告宣伝
費を補ってあまりが出るほどの利益が期待できるのだ。 そんなスポンサーには数種類の契約の形態がある。チーム全体につくスポンサーとして
はオーナー企業、ユニフォームスポンサー、バックネット裏看板スポンサー、シーズンスポ
ンサー、サプライヤースポンサー、スポットスポンサーがある。この他にも選手個人につく
スポンサーもある。 スポーツビジネスにはこのスポンサーが欠かせなくなっているのだがこのスポンサーを
いかに見つけるのが大事になって来る。バブル崩壊前は大幅な黒字を税金でとられるくら
いならとりあえず宣伝費で出しておけといったような軽い気持ちでスポンサーになる企業
が多くスポンサー探しに困ることはなかったようだ。バブル崩壊後はそのような流れはな
くなり、野球を見に来ている客層はどのあたりでそれは自社の製品の売り込みに適してい
5 藤井純一 pp88-94,96-97
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るのかなどといったことを慎重に検討するため広告を出す企業が少なくなったのだ。 そんな中で球団は広告代理店にスポンサー探しを依頼している。しかし広告代理店を仲
介するとおよそ 15~30%の手数料を取られてしまう。さらには広告代理店を通すことでス
ポンサーとの関係も希薄になってしまう。自社で動かないと愛着が感じられないので効果
がないとわかるとすぐに撤退されたり、短期の契約ばかりになってしまう。スポンサーを探
すには自社で動いた方が手数料もかからずいいと思われる。 さらにスポンサーとの契約年数と額も重要になってくる。短期の高額契約よりも長期の
少額契約の方が良いと考えられている。短期の高額契約だと先でも述べたように税金対策
で広告宣伝費に充てているのかもしれない。このようなスポンサーに頼っていると撤退さ
れたときに大きな痛手を受けてしまう。10 社とスポンサーを結ぶより 100 社の合計で同じ
金額のスポンサー契約を結ぶ方が例え穴ができたとしても埋めることが容易いのだ。長期
間携わってもらうことによりチーム状況を理解してもらうことができ勝ち負けや有名選手
の有無などに関係ないスポンサーシップを結ぶことができるのだ。 さらに長期間の契約を結ぶことによりイベントでもスポンサーに対して「A と B はやっ
たので C をやってみてはどうでしょう」といった提案型営業が可能になるのだ。スポンサ
ーのリスク回避にもなる。6 スポンサー契約は自社でスポンサーを探し、長期の少額契約を多くの企業と結ぶことが
重要だと感じた。 6 藤井純一 pp100-124
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第 3 章 NPB の成り立ち
では、今回取り上げるプロ野球というものがどのようにして現在の形になっていったの
かをみていく。 プロ野球はセ・リーグ 6 チーム、パ・リーグ 6 チームの全 12 チームが現在所属している。
日本のプロ野球の歴史としては以下のように定められていた。日本の野球はアマチュア・ス
ポーツ、とくに学生スポーツとして発展した。そのために、プロスポーツとしてはかえって
発達を遅らせた。しかし、プロ野球ができなければ、真の野球技の発達はないとの見解から
早稲田大学野球部の橋戸信、押川清、河野安通志らの提唱によって 1920 年(大正 9)末、
東京芝浦に日本運動協会が設立され、22 年秋には日本最初のプロ・チームとして、早稲田
大学チームと試合した。しかし、このプロ・チームは育たないで終わった。当時日本を代表
する学生野球は発展の限度に達し、アマチュアの域を超える傾向が多分にみられた。1931年(昭和 6)には、アメリカから一流大リーガーを招いて、東京六大学のチームと対戦した
が、32 年文部省が野球統制令を出して、プロとの試合を禁じたため、34 年秋に来日したベ
ーブ・ルース、ルー・ゲーリッグ、ジミー・フォックスら全アメリカ軍と対戦するために、
社会人から全日本軍が編成された。この全日本のチームを母体として同年 12 月、大日本東
京野球倶楽部、すなわち今日の読売ジャイアンツ(巨人)が結成された。当時ほかに相手に
なる職業チームがなかったため、翌春第 1 回の渡米を試み、プロ球団として技を磨いてい
る間に、正力松太郎は、プロ球団創設のため共鳴する資本家を求め、1936 年巨人(東京巨
人)のほかに大阪タイガース、東京セネタース、阪急、名古屋金鯱、大東京、名古屋の 7 チ
ームが生まれた。続いて日本職業野球連盟(1939 年日本野球連盟に改称)が結成されたが、
第二次世界大戦のため活動を休止した。 1945 年(昭和 20)11 月連盟復活が決まり、以後、隆盛の一途をたどったが、49 年末、
新球団加入をめぐり 8 球団を二分して 2 リーグとしたため、日本野球連盟は解散した。巨
人、阪神を中心とするセントラル・リーグ(セ・リーグ)と南海、阪急、大映、東急と新球
団の毎日以下のパシフィック・リーグ(パ・リーグ)となった。ついで、1951 年にはコミ
ッショナーを決定し、また統一契約書を作成した。これらはアメリカの野球に倣ってプロ野
球としての体裁を整えたものである。しかし、コミッショナー制度と選手との統一契約書は、
いちおうの混乱を防いではいるが、規約そのものは十分なものでない。また、1985 年には、
選手会労組として日本プロ野球選手会が設立され、諸要求を定め、日本野球機構と交渉して
いる。7 日本のプロ野球の現在の体制ができたのは 1949 年から 1951 年辺りとなっている。
7 https://kotobank.jp/word/%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83-622812#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29
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第 4 章 パ・リーグの改革 第 1 節 北海道日本ハムファイターズ
本章では球団の現在までの道のりと改革について見ていく。 まずは、ファイターズから見ていく。ファイターズは 2004 年より東京から北海道に本拠
地を移し、名称も現在の「北海道日本ハムファイターズ」になった。東京にはファイターズ
のほかにセ・リーグのジャイアンツ、スワローズの人気球団がフランチャイズを構えており
人口が多い東京本拠地という地の利がありながら観客動員数を伸ばすことができなかった。
パ・リーグはテレビ放送権利料収入がわずかでマーチャンダイジングやスポンサーシップ
からの収入も微々たるものであるため、観客動員数が少なければ経営的に致命傷となって
しまう。そこでファイターズは新天地での飛躍を期して札幌への移転を決意した。 ファイターズにとって札幌への移転は 3 つ利益があった。それは、球場使用料の軽減、観
客動員数増加の期待、北海道企業の球団経営参画だ。 札幌ドームはワールドカップ以降、その使用は不定期なコンサートの開催とコンサドー
レ札幌の試合に頼るのみで赤字転落が確実であった。さらにドーム球場を持ちながらプロ
野球チームを持っていないのは札幌だけということもありファイターズと札幌ドームの思
惑が一致し移転計画は進んだ。 そしてファイターズ、日本ハムは赤字補填についても切り替え短期間で黒字に持ってい
くということを目標にし、経営改善に着手した。パ・リーグ球団の多くは赤字が初めから見
込まれており、親会社が球団の決算期に赤字分を補填して収支ゼロにするのが習わしであ
った。しかし、ファイターズは日本ハムからの補填額を固定化、いわゆる予算化することに
した。このようにすることにより、日本ハムはファーターズのスポンサーになったことにな
るのだ。この方法はファイターズが親会社に負担をかけずに、いち早く黒字経営に持ってい
くという決意にも捉えられる。そして、黒字経営に持っていくためのきっかけを作ってくれ
た選手が新庄だ。新庄選手は「ファンサービスファースト」の精神を掲げ、野球の本場アメ
リカで経験したファンサービスをよりエンターテイメント化したのだ。野球の試合に「かぶ
りもの」をして登場しファンを沸かせた。しかしこのパフォーマンスは公式の野球試合にそ
ぐわないという批判もあったが、結果的にはそれまでプロ野球と無縁であった女性たちを
虜にした。オヤジ中心であったプロ野球の観客を、札幌ドームの半分以上を女性ファンが占
めるというような状態に持って行ったのだ。この新庄選手のパフォーマンスの人気を利用
しファンの固定化を図ろうとした。 野球はもちろん勝負の世界であり、弱すぎるチームを応援しようという気は起きない。
そこで戦力の補強のために「GM 制」というものを導入した。役割の分担と責任の所在を好
むアメリカ人の気質を反映したシステムで MLB では一般的な制度となっている。マネージ
ャーはオーナーから予算をもらいその範囲内で優勝に必要なチーム編成を行うというもの
である。オーナーが GM に予算を渡し、GM が監督に戦力を与え、監督がそれを駆使して
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戦っていく。こうすることによって優勝を逃した際に誰に責任があるのかということが明
確になり来シーズンの戦力補強に活きるのだ。ファイターズはこの制度を取り入れ有効的
に活用したことにより、優勝争いの常連にまで成長した。8 親会社からの補填額の予算化、GM 制による責任の明確化による戦力補強がポイントだ
と分かった。
株式会社北海道日本ハムファイターズ 第 14 期決算公告|プロ野球チーム運営(https://pl-bs.net/fighters/ 2018/12/29 アクセス)を参考に筆者作成 このグラフを見ると 2012 年と 2017 年の利益が群を抜いていることが分かる。これはそ
れぞれダルビッシュ有選手と大谷翔平選手がそれぞれメジャーリーグにポスティングシス
テムを使って移籍した年なのだ。ポスティングシステムを利用して獲得した移籍金がその
まま収入に入るのだ。ドラフトで獲得した選手をしっかりと育成して自チームの中心の選
手にさせチームを強くさせつつ、将来的にメジャー移籍を許可し多額の移籍金をもらいそ
のお金で育成のための施設やファン満足度を上げるための施設や施策などを行っていくこ
とがさらなる収入増加につながるのだ。 やはりというべきか強いチームでいることが収入増加に大きく結びつくということが分
かった。 さらにファイターズは現在大きなプロジェクトを進めている。それが新球場の開設だ。年
間 13 億円という高額な球場使用料を払い、収入の大半を札幌ドーム側に持っていかれてし
まうという関係から脱却し、よりファンへ収益を還元するためにこの案を選んだのだ。9新
8 大坪正則 pp32-43 9 https://megalodon.jp/2017-1122-2130-
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
北海道日本ハムファイターズ
当期純利益
(百万円)
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球場は 2023 年に完成予定だ。そんな新球場は「ボールパーク化」をテーマに進めている。 屋根が開閉式になっていたり、温泉に入りながら観戦できたりなど様々な面白い試みを考
えており、完成がとても楽しみだ。さらにこの新球場の建設に伴い新しい駅の開発も進んで
おり、完成後はますます売り上げが伸びていくに違いない。10 第 2 節 東北楽天ゴールデンイーグルス
東北楽天ゴールデンイーグルスは 2005 年から新規参入した 12 球団でも最も歴史が浅い
球団である。そんなまっさらなイーグルスだからこそできた経営戦略がある。 イーグルスはまず球場の営業権を取得した。イーグルスが本拠地を構えることに決めた
仙台の県営宮城球場は老朽化が進みとても観客を呼んで試合ができるような環境ではなか
った。大改修費が必要だが宮城県にはとてもそんな財力がなかった。そこでイーグルスが全
面負担をするという見返りに球場の営業権の譲渡を得たのだ。各球団の主な収入源のうち
球場内の物品の販売や広告看板販売などは球団と球場が別資本の場合権利の奪い合いにな
る。場合によっては球団の実入りが大きく減少してしまうというケースが過去にはあった
のだ。そのため球場の営業権を獲得し広告看板の販売など自分たちの思い通りの営業がで
き利益を分配することがなくなったイーグルスは参入初年度にキャッシュフローで黒字を
叩き出したのだ。この現状に各球団の社長が「なぜイーグルスのようにならないんだ」と親
会社から叱責を食らったそうだ。その後 11 球団がイーグルスに一体どのような経営戦略を
行ったのか聞き取りを行ったところ共通して「うちではできない」と漏らしたそうだ。11 球団と球場の経営の一体化は収入増加の大きなポイントになると分かった。 第 3 節 千葉ロッテマリーンズ マリーンズはすべてに対して消極的な球団であった。 戦力強化に消極的なため成績は低くそのため客足が伸びない、球場を保有する県や市も
どのようにプロスポーツについて対処すれば住民や球団にとっていいかわからず無為無策
が進み改修や増設などの資金投入を積極的にしない。マリンスタジアムは千葉県が保有し、
東京湾に面しているため漁業補償県が絡み売店設置や広告看板でも大きな制限がついてお
り、球団が顧客増加のために考えた企画も条例を理由に多くが新しいことや煩わしいこと
をやりたがらない行政によってボツにされた。 球場がある海浜幕張駅までの電車の本数を増やすよう JR 東日本は協力しない、駅から球
場まで 1 キロほどあり歩くとなるとなかなか敬遠したくなる距離なのだがそこを行き来す
るバスもバス会社が協力的でないため球団の希望通りにならないなどマリーンズが強く説
得しないということもあったが、全てがマリーンズにとって不利に働き受けられる恩恵が
56/https://www.nikkansports.com:443/baseball/news/1652082.html 10 https://sp.fighters.co.jp/news/detail/00001446.html 11 大坪正則 pp49-52
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少なかったのだ。 球界一の低観客動員力であることが変わらず、チケット販売収入が少ないにもかかわら
ず球場営業権も握られテレビ放送、マーチャンダイジング、スポンサーシップからの収入も
限定的で赤字額はかなりの額に膨れ上がっていた。 こんな状況に風を吹き込んだのがボビー・バレンタインだ。マリーンズは日本で一番早く
GM 制を取り入れ、MLB で 8 年間監督を務めたバレンタイン監督を招聘した。バレンタイ
ンは 2004 年のストライキ問題の時にファンを 26 番目の選手と位置づけ(ベンチの選手登
録は 25 人のため)ファンの参加を促し、地域密着の応援を一気に推し進める副産物を生み
出した。アメリカから持ち込んだファンサービスの精神はこれに合致し、バレンタインはす
ぐにファンを虜にし、味方につけた。マリンスタジアムには観客が急増し、同時に彼の人気
も上がっていき、ファンが彼を支える体制が整った。そして翌年の 2005 年には日本一を達
成し、彼の支持はますます高まった。 この年からマリーンズは問題であった周辺の環境整備を始めた。まずは営業時間と効率
性から行った。球団の営業日は試合がある日だけ、年間 72 試合おおよそ 5 日に 1 回、試合
時間も 4 時間もあれば終わる。普通の企業と比べても営業日が約 1/3、営業時間は約 1/2 で
あり、6 倍の効率で働かなければ普通の企業に追いつかない。試合数は増やせないためそう
なると営業時間を延ばすしかない。観客に試合開始相当前から来てもらい、試合が終了した
後も夜遅くまで周辺に滞在してもらうということが必要なのだ。そのためには球場やその
周辺をエンターテイメントの場に変えなくてはならない。球場から最寄り駅までのバスを
長い時間待っているときにエンターテイメントを用意することでお金を落としてくれる。 このような場を実現するには球場の経営権を獲得することが不可欠であった。マリーン
ズは 2006 年に千葉市と交渉してマリンスタジアムの指定管理者になった。球団と球場の経
営が一体化でき、マリンスタジアムとその周辺はボールパークになった。さらに CRM を導
入することでファンの会員化を促進してリピーターを増やそうとした。これらの行いによ
り 2007 年末には 2004 年末と比較して赤字が半減したのだ。12 ここでも球場と球団の経営の一体化ということがポイントで出てきた。今回は歴史があ
る球団が行えたということもあり先ほど考えていた新規参入が前提条件という仮説が崩れ
ることになった。さらにボールパーク化による顧客の長期滞在、地域密着の応援も大きなポ
イントになると感じた。
12 大坪正則 pp64-79
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第 4 節 埼玉西武ライオンズ 親会社である西武鉄道の裏金問題により一時期は売却までささやかれていた。しかし、当
時のオーナー達が次々と辞任していき新たなオーナーが就任した後からライオンズは変わ
っていったのだ。 2006 年に松坂大輔がポスティングシステムを利用しメジャーに移籍した際に 60 億円を
獲得した。この金額は当時の支配下登録選手全員の年俸総額の約 2 年分に値する額でライ
オンズにとってはとても大きな利益になった。この松坂放出の見返りに得た潤沢な資金を
ファンや球団のため、さらには戦略強化に使うことで親会社の不祥事に端を発した観客動
員力の低下に歯止めをかけることに使用したのだ。 2007 年に地域密着化を図る目的で球団名を「埼玉西武ライオンズ」と改称し、これに合
わせて営業力の強化も図った。球場運営は西武鉄道の子会社の西武レクリエーションが担
うが、球場内の物品販売や広告販売の営業はライオンズが責任を持ち球団と球場の経営の
一体化ができた。 2008年にはファンクラブ会員が購入するチケットの売り上げを分析・向上を目的にCRM
を導入し、さらに球場内の売り場には POS システムを導入した。ファンクラブ会員はもち
ろん会員以外のチケットの保有者の属性と購買嗜好を把握して球場内外で販売する仕入れ
商品に反映させる態勢を整えた。球場内では西武鉄道が一翼を担う PASMO と連携させ将
来的には場外でのチケット販売や商品販売にも連携を広げる予定だ。13球団と球場の経営の
一体化、CRM と POS システムの導入によって不祥事により人気低迷を招いた 2007 年の
危機を脱したのだ。 さらにライオンズは現在 40 周年記念事業としてドームの改修が行われようとしている。
2017 年の来場者数が 12 球団中 10 位と決して高くはない。そんな中でライト層の観客に 来てもらうべく「ボールパーク化」を進めようとしている。改修するのは球場だけでなく練
習施設や選手寮も対象となっている。去年の野上選手に続き今年も浅村選手、炭谷選手の 2選手が FA 宣言をし、他チームに移籍してしまった。ライオンズは選手の流出が続いている
現状があり、それを防ぐためにも施設や整備を整えようとなっているのだ。もちろん快適な
施設を用意すれば育成面でも期待ができるため戦力強化にもつながる。14 CRM による行動分析、育成後のメジャー移籍による多額の移籍金獲得が重要だと分かっ
た。
13 Pp85-92 14 https://toyokeizai.net/articles/-/213804
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第 5 節 オリックス・バファローズ オリックスは 1981 年に阪急ブレーブスを買収し 1991 年シーズンからオリックスブルー
ウェーブと改称した。その後 2005 年から大阪近鉄バファローズとの統合を受けてオリック
ス・バファローズに改名した。 1995 年 1 月に阪神淡路大震災委が起き関西方面に多大な被害をもたらした。そんな中で
当時のオリックスブルーウェーブは「がんばろう神戸」というスローガンを抱え、ユニフォ
ームの右袖に刻み、神戸市民による地域密着の応援を受け一体となってシーズンを戦った。 その結果リーグ優勝、日本一になり神戸市民との絆も強まる形になった。しかし、バファロ
ーズとの合併後に京セラドーム大阪を購入したことにより、本拠地を大阪にも構えること
になった。このことが神戸市民を裏切る結果となり、当時のオリックスブルーウェーブ、大
阪近鉄バファローズの両球団のファンの獲得を期待していたが増えるどころかむしろ減る
形となってしまった。15合併による戦略強化を図ろうとしたがそのことが球界に大問題を呼
ぶ結果となり、すべてが悪い方向へと動いてしまった。 こんなイメージダウンが進んでしまったオリックスが取り組んだのがもう一度地域密着
を図るといったものだった。しかしオリックスはこの地元密着を 1 軍ではなく 2 軍を中心
として行った。2 軍のゲームを本拠地がある神戸の他に近くの関西圏である大阪・京都・奈
良で行うようにした。チケットについてもネット販売は行わず地元のスポーツ店で売って
もらったのだ。ネットでの販売を行わないため手数料もそこまでかからなくて済み、地元の
お店で売っているためその地域のお客さんが中心となって見に来てくれるという期待がで
きる。2 軍というのは若い選手などが多いため、その選手の成長を見届けることでチームに
愛着を持ってもらえるかもしれない。普段は球場に行かないという人たちでも近所でチケ
ットが買えてゲームが見られるということになれば来てもらえるかもしれない。 さらに女性ファンへの施策も進んでいる。CRM を取り入れたことによって女性ファンと
男性ファンでは行動様式が違うことが分かった。その中でも女性は男性と違い選手個人を
応援しているというデータが出てきた。男性は食べ物や飲み物を買いグッズはあまり買わ
ないが、女性は高額でも選手個人のグッズを買うのだ。こんな女性ファンをターゲットにし
て選手の撮影会や人気選手が登壇する女性限定のクリスマスパーティーなどを開催し、フ
ァンクラブにも入ってもらおうとしている。 行動分析によるファンクラブ会員の増加、そしてファンの固定化が重要だと感じた。
15 大坪正則 pp96-105
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第 6 節 福岡ソフトバンクホークス
ソフトバンクホークスは 2005 年よりダイエーから譲渡されたことにより誕生した。 ダイエーホークスは球団と球場の運営の一体化の実施、商標使用の無償化と在福岡流通各
店との連携を行っていた。ダイエーホークスでは商店や飲食店での商標使用を無償化し福
岡市、福岡県での知名度浸透と人気向上を最優先とした。この二つの要素を引き渡されたこ
とにより、ソフトバンクホークスは運営を順調に運ぶことができた。さらに王貞治氏を獲得
できたのも大きい。王氏は同意のうえで取締役、監督、GM を担った。さらに孫オーナーは
王氏に対して権限のほとんどを譲渡したのだ。王氏は言うまでもなく野球界において重要
な存在であり、球団そしてホークスファンは絶対的な信頼を抱いているだろう。王氏の補強
などについてはおそらく文句が出ずむしろ擁護すると考えられる。このような体制を整え
られたことによって孫オーナーは本業に集中でき、余計なことも言わずに済むので現場の
混乱も引き起こさなくて済む。16 ホームランテラス席をいち早く取り入れ、球場の照明を LED にしたりと様々な取り組み
をしているソフトバンクだが現在ではヤフオクドームの施設内に地上 7 階立てのビルを新
たに建設しようしている。飲食店や様々なバラエティーに富んだフロアで構築され中には
HKT48 劇場も入る。ヤフオクドームの外側には全長 100 メートルの滑り台も設置する予定
であり、ますます様々なターゲットへのアピールにつながりそうである。17
16 大坪正則 pp109-120 17 https://full-count.jp/2018/11/26/post256083/
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福岡ソフトバンクホークス株式会社の決算公告 (https://pl-bs.net/softbankhawks/ 2018/12/29 アクセス)を参考に筆者作成 グラフを見ると 2015 年に急激に利益が伸びている。この年からホームランテラス席が設
置された。やはり新たな席を設け客単価を上げることが収入の増加につながることが分か
る。さらにこの年は新たに工藤公康さんが監督に就任し、更には優勝、日本一を達成した。 やはり強さという点も重要な要素になっていることが分かった。
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500
1000
1500
2000
2500
3000
2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
福岡ソフトバンクホークス
当期純利益
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第 6 章 考察 以上、スポーツビジネスの収入構造とパ・リーグの改革の状況を見てきた。それらをもと
に日本のプロ野球の収入増加の方法を考えてみたい。 まず収入の 4 要素を増やす方法を考えると、自チームで賄えるものは自チームで賄うこ
とが収入増加の一番の方法だと思われる。 チケット収入については自社のチケットサイトを作成しプレイガイドを通すと発生する
手数料を無くすこと。無料の配布チケットを削減し、シーズンシートなどの高額の特別なシ
ートを作成することによって客単価を上げること。 グッズ収入については自社開発をし、観客の声にすぐ対応できるようにすること。人気の
主要選手を大量に用意することはもちろん、若手の選手たちのグッズも少量用意し、さらに
無地のユニフォームに名前や背番号のワッペンを無料で張ることのできるサービスなどを
実施すること。 放映権収入についてはただ利益を追求するだけではなくファン拡大のチャンスと捉え安
価でも販売をすること。自分たちで中継の制作し著作権を保有することで DVD などの映像
作品を作ることで後の利益を増やす。シーズンの放映権を全て売り、オープン戦などの試合
も放送することによって更なる利益を得るために契約の仕方を考えること。 スポンサー収入については自分たちでスポンサーを探すことで手数料を削減し、長期で
少額の契約を多数の企業と結ぶこと。以上が収入の 4 要素についての筆者が考える収入増
加の方法である。 しかし最も重要なのは観客を増やすことである。それは 4 要素すべてに貢献するからで
ある。観客を増やすための主要な要素は「強さ」、「施設の快適さ」、「地元密着」であろう。 観客に「また来たい!」と思わせるためには球場飯やグッズなどで呼びかけるのはもちろ
んのことだがまずは「勝つ」ということが重要だと思う。初めて見に行った試合で勝ったら、
おそらく多くの人はこの楽しみをまた味わいたいと再度訪れる可能性が高まるはずだ。そ
の後、その観客を捕まえリピーターにし、ファンにすることによって「今回は負けたけどこ
のチームが好きだからまた応援に来よう」と考えるようになり、勝敗関係なしに応援してく
れるという人が増えるはずだ。「勝つ」という要素を達成するためには「強さ」が必要だと
思うので一つ目の要素としてかなり漠然としたものだが「強さ」を挙げる。 球場にせっかく足を運んで見に来たものの見にくかったり、席が窮屈だったり、食べ物が
充実していなかったりすると満足度が下がり、リピーターの確保に失敗しファンの獲得に
つながらなくなってしまう恐れがある。さらに最寄り駅からの距離が遠かったり、そこまで
の交通手段が不便であったりしてアクセスが悪いと現地に行こうという意欲が起こらず、
興味さえ抱いてくれない可能性がある。そのため「施設の快適さ」というのも重要な要素に
なると考えられる。 興味がない地元の客層に対してなにか活動をして宣伝することによって「地域活動を頑
張っているあのチームの試合見に行ってみようかな」と球場に足を運んでもらう人を増や
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すことができると考える。 これらの要素を達成するためには球団と球場の経営の一体化、GM 制による責任の明確
化、戦力の整備。育成による強化、その後のメジャー移籍による移籍金の獲得。獲得した移
籍金による施設の整備。CRM による顧客の行動分析。以上のものがひつようになると考え
られる。 プロ野球は人気低迷と言われているが来年にはプレミア 12、再来年にはオリンピック、
その翌年には WBC と大きな世界大会がたくさん待っているため、これらの機会を利用し
て野球人気が復活するよう、各球団の努力が期待される。
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参考文献 大坪正則(2011)『パ・リーグがプロ野球を変える ―6 球団に学ぶ経営戦略―』朝日新聞出版 藤井純一(2011)『監督・選手が変わってもなぜ強い?北海道日本ハムファイターズの戦略』
株式会社光文社 東洋経済 ONLINE「オリックス、2 年で観客動員 30%増の秘密」,2015 年 1 月 15 日 https://toyokeizai.net/articles/-/57952 (2018/12/11 アクセス) 日刊スポーツ「日本ハム新球場、8 年後完成目指し球団が建設検討」,2016 年 5 月 24 日 https://megalodon.jp/2017-1122-2130-
56/https://www.nikkansports.com:443/baseball/news/1652082.html (2018/12/11 アク
セス) 東洋経済 ONLINE「西武が「ドーム大改修」に 180 億円投じる真意」,2018 年 3 月 24 日 https://toyokeizai.net/articles/-/213804 (2018/12/11 アクセス) 北海道日本ハムファイターズ公式サイト https://sp.fighters.co.jp/news/detail/00001446.html (2018/12/11 アクセス) full-count「鷹、ヤフオクドーム“大改革” 7 階建ビル建設、高さ 40M から滑る滑り台
も」,2018 年 11 月 26 日 https://full-count.jp/2018/11/26/post256083/ (2018/12/11 アクセス)