「アナログ難しそう、でも何が難しいの?」 · 2010. 4. 2. ·...
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2007/1/26 A. Matsuzawa, Titech., EDS Fair 2007 1
「アナログ難しそう、でも何が難しいの?」
東京工業大学
大学院理工学研究科電子物理工学専攻
松澤 昭
2007/1/26 A. Matsuzawa, Titech., EDS Fair 2007 2
内容
• アナログ設計の重要性
• アナログ設計の難しさ
• アナログ設計ツール
• アナ・デジ混載SoC開発のポイント
• アナログ設計者になるには
• 会場からの質問
2007/1/26 A. Matsuzawa, Titech., EDS Fair 2007 3
アナログの重要性
Variable Gain Amp.Variable
Gain Amp.Analog
FilterAnalog
FilterA to D
ConverterA to D
ConverterDigital
FIR FilterDigital
FIR FilterViterbiError
Correction
ViterbiError
Correction
ClockRecoveryClock
RecoveryVoltage
ControlledOscillator
Voltage ControlledOscillatorData In
(Erroneous)
Data Out(No error)
Analog circuit
Digital circuit
Pickup signal
Variable Gain Amp.Variable
Gain Amp.Analog
FilterAnalog
FilterA to D
ConverterA to D
ConverterDigital
FIR FilterDigital
FIR FilterViterbiError
Correction
ViterbiError
Correction
ClockRecoveryClock
RecoveryVoltage
ControlledOscillator
Voltage ControlledOscillatorData In
(Erroneous)
Data Out(No error)
Analog circuit
Digital circuit
Pickup signal
PixelOperationProcessor
PixelOperationProcessor
IOProcessor
IOProcessor
AVDecode
Processor
AVDecode
Processor
Back -EndBack -End
SystemCont-roller
SystemCont-roller
CPU1CPU1CPU2CPU2
VCOVCO
ADCADC
Gm-CFilterGm-CFilter
PRMLRead
Channel
PRMLRead
ChannelServo DSPServo DSP
AnalogFront EndAnalog
Front End
Front-EndFront-EndAnalog FE+Digital R/C
世界初のDVD用アナ・デジ混載完全ワンチップSoC
DVDからの信号をアナログ処理後A/D変換し、デジタル処理を行うことでDVD信号をきれいにし、誤りの無い再生を行っている
DVDシステムにおけるアナログ・デジタル混載回路
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アナログの重要性
高周波アナログ
ベースバンドアナログ
イメージャー
ディスプレー
電源
インターフェース
携帯電話には高周波をはじめとする様々なアナログ回路が使用されている。
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複雑な設計
アナログの難しさ
②性能と精度が直結している事
①感度が高い=不安定な回路を利用している事
不安定
性能 精度
設計(扱う)要因=多い、不確定
回路方式や仕様が多い
ばらつきが性能を決定する
要求誤差やノイズが極端に低い
パラメータが多い、完全把握困難
モデリングが困難アナログ回路
外的要因の影響が大きい
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デジタル回路とアナログ回路(困難①)
V(9)0
0.4
0.8
1.2
1.6
2.0
V(9)
(V)
ID(M9)0
50u
100u
150u
200u
250uID
(M9)
(A)
0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0
V9 (V)
電圧特性
電流特性
デジタル
デジタル
デジタルデジタル
アナログ
アナログ
変化が少ない 感度が高い→変化が大きい
変化が少ない
デジタル:変化が少ない安定領域高い電圧マージンを得るため貫通電流をゼロにするため
アナログ:変化が大きい不安定な領域高い利得を得るため
困難(①)=不安定なものを安定的に設計する事
同じ回路でもデジタルとアナログでは使用方法が異なる。アナログは感度が高いことが必要であり、これは不安定ということでもある。
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アナログの難しさ:精度の範囲
10 V
1 V
100 mV
10 mV
1 mV
100 uV
10 uV
1 uV
電源電圧
VT変動
GSM受信機の
ダイナミックレンジ
妨害波信号
所望波信号
100 nV
量子化ノイズ
熱雑音
イメージセンサーのダイナミックレンジ
デジタル回路での精度はせいぜい2桁程度だが、アナログ回路では(不安定な回路で、もの凄い) 7桁の精度が必要
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精度の改善
VDD
Vin1
Vin2A
+-
-+
Va VoVin1
Vin2A
+-
-+
Va Vo
シングル増幅 差動増幅 ミスマッチキャンセル
VT変動が直接影響する VT変動が直接影響しない
+/- 150 mV程度の精度 +/- 10 mV程度の精度
VTミスマッチが精度を決定
VTミスマッチが直接影響しない
+/- 100 uV程度の精度
クロストークバランスが影響
回路技術の進歩により精度は3桁向上。しかし、素子の絶対精度よりも相対精度(マッチング)が重要になる。(デジタルには無い概念)
バランス(差動)を保証する設計は非常に困難レイアウト依存性(Xtalkのバランス、相対バラツキ「ずれ!」等)
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アナログの難しさ(2)
●方式が多い●仕様が多い
○ばらつきが性能を決定する○要求誤差やノイズが極端に低い○基板や、電源などの配線が性能に関わる○LSIの外部の回路が性能に大きく関わる
○デジタルノイズの影響が大きい
●微細化が性能向上に必ずしも寄与しない○低電圧化により使用できない
回路が増えている
○あり合わせのデジタルプロセスで作らないといけない
○その上、限界性能を要求するから・・・・・
性能&精度(&不安定)のトレードオフ
不安定
性能 精度
○複雑なトレードオフ●パラメータが多く、
しかも完全には把握できない●モデリングが困難
(精度とシミュレーション速度)○シミュレーションが困難
○設計法が不明確
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アナログの方式は多い
一つの機能(例えばADC、一つ)に対して、複数の方式がある。SoCにADCを搭載したい!といっても、どの方式をとるのか見極めが必要・
機能方式によって、要求されるプロセス性能(バラツキ等)が異なる。一概で、ズバッと言えない事がアナログ設計者の悩み。どんなプロセスが良いの、どのパラメータを重視するの等・・
Resolution (bit)
4 6 8 10 12 14 16
10M
1M
100k
10k
100M
1G
10G
20184 6 8 10 12 14 16
10M
1M
100k
10k
100M
1G
10G
2018
Con
vers
ion
freq
uenc
y (H
z)
Successiveapproximation
Integrating
Flash
Sub-range
Multi-bitsigma-delta
Pipeline
Single-bit sigma-delta
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アナログ回路の仕様
仕様 参考値電圧利得 80dB入力信号レンジ 0V~Vdd-1.2V出力信号レンジ 0.3V~Vdd-0.3Vオフセット電圧 (システマティック) 0.1mVオフセット電圧 (ランダム) 2mV (標準偏差)同相入力電圧除去比 80dB電源電圧変動除去比 60dB(1kHz)出力抵抗 100 ohm (Buffer) スルーレイト 20V/us利得帯域幅積 100MHz
等価入力雑音電圧 100nV/(Hz)1/2
低動作電圧 2.5V消費電力 1mW
占有面積 0.03mm2
vin+
vin- vout
Vdd
Vss
Iss1 Iss2
M1 M2
M3 M4
M5
R
Cc CLvin+
vin- vout
Vdd
Vss
Iss1 Iss2
M1 M2
M3 M4
M5
R
Cc CL
OPアンプ回路 仕様の一例
こんな簡単な回路でも多くの仕様があり、設計を難しくしている。
仕様は設計で満たすべき必須条件設計者は全ての仕様を同時に考える必要がある!
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パイプライン型ADCの分解能毎の消費電流と変換速度限界
12bit1
10
100
1000
0.01 0.1 1 10
Ids[mA]
fc[M
Hz]
90nm 0.13μm 0.18μm 0.25μm 0.35μm
10bit
高分解能では微細化するほど信号振幅が下がり、容量が大きくなるので変換周波数は下がる。→微細化はアナログ特性の向上に対して必ずしも有効ではない。
電流 (mA)
変換
周波
数(M
Hz)
0.35um
0.25um
0.18um
0.13um
90nm
分解能 10bit
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アナログ設計ツール
• ツールは発展途上
– シミュレーション方法が未開拓
• ツールがあってもデータが無ければ
• フローが重要
シミュレーション必要精度vs要求モデリング必要精度vsシミュレーション時間
必要精度vs要求パラメータ
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アナ・デジ混載SoC開発のポイント
• アナログ回路を減らし、アナログへの要求性能も緩くする– できるだけデジタル回路を用いる– 過度に性能の高いアナログ回路を用いない
• デジタル補正技術を用いる
• アナログ性能が良く、データが豊富なプロセスを用いる– 高精度デバイス– Deep Nwell(基板ノイズ対策)
• 十分なシミュレーションの実施– アナログを含んだシステムレベルの検証– ポストレイアウト検証
• 実績のある開発者を用いる• 必要な開発時間をかけ開発手順を守る• デザインレビューの充実
搭載したアナログはデリケートに扱う事!
干渉、電源電圧保証、メタル密度と容量
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アナ・デジ混載SoCでのデジタル補正技術
Ana
log
Buf
fers
OffsetAdjustVGA 5th order
Gm-C Filter
DAC
DAC
7bitADC
OffsetControl
Defect
WobbleFilter
Frequency&
PhaseComparator
FIRFilter
LMS
ViterbiDetector
LoopFilters
DACs
VCO
ClockControlSystem
Clocks
1/N
LevelDetector
ExtractedData
WobbleDetect
Pick upOutputs
ExtractedClock
…
ServoPre-Processor
Servo Error Signals
GainControlDefectDetect
[RF input] [Analog Filter output]
[FIR output]digitalcontrol
...
DigitalCalibration
SoCは開発期間の短縮と安定動作が求められる。
→不確定なところや、ばらつくところにはあらかじめデジタル補正回路を入れておく。SoCは高性能マイコンがあるので容易に実現可能
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アナログ素子のデジタル的使い方
VCO DCO
電圧制御発振器は発振周波数を制御するために電圧可変容量素子を用いていた。しかしながら電圧によって容量が変化し易いということはノイズに弱いということである。そこで、電圧ではなくスイッチにより個数を切り替えて容量を変化させるという提案がある。
アナログ的な容量調整 → ディジタル的に容量調整
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アナログ設計者になるには
知識– 基礎– 周辺
解析と合成は別経験
– 失敗の克服– 成功経験
才能– スポーツや芸能・技能と同じ– 論理的な思考– 直感
根気– めげない
ポジティブ– でないと、やっていけない。
感性– 美しい– おもしろい