「インクルージョンの理念から、 入所施設の新しい役割 を...
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第3分科会「一人ひとりが満足のゆく施設生活を送る」
「インクルージョンの理念から、
入所施設の新しい役割
を考える」
東洋英和女学院大学 石渡 和実
障害者自立支援法の第1条「目的」
「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的と
する」
まさに理念は、すべての人を地域に包みこむインクルージョン
「地域福祉の推進」
障害者・家族の「生活」の変化は?
「復活してしまった、
『否定される命』」
(石渡和実)
「自立支援法は、障害を個人の責任に帰してしまった」(藤井克徳)
障害者自立支援法違憲訴訟(2008.10.31)
第三次までに計71人が「憲法違反」と提訴
応益負担は「憲法25条の生存権侵害」、2009年1月・10月に第二次・第三次提訴
「正直、勝訴は難しいが法律の問題点を社会に認知してもらう」「史上最悪の立法」など
障害者自立支援法訴訟の和解
2009.10月12日 新内閣誕生後厚生労働省が和解を提案
→画期的な出来事
2010.1月7日 国(厚労省)との合意へ、憲法13条・14条・25条の理念を再確認
2010.4月21日 全国14地裁での和解が成立、遅くとも平成25年8月までに新法施行
「障がい者制度改革推進会議」(2010年1月12日設置)
月2~3回ペース、1回が4時間以上
事前のおびただしい資料提出
殺到する傍聴者や目で聴くテレビ
異なる障害の一人ひとりに情報保障
知的障害者のイエローカード
権利条約の多様性の尊重
真に当事者中心の政策立案へ
障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)
(2010.6.7.)①障害者基本法の抜本的
改正(2011年度)
②障害を理由とする差別の禁止法制定(2013年)③障害者総合福祉法制定
(2013年8月までの実施)
地域で暮らす障害者の活躍
障がい者施策推進会議
障害者自立支援法訴訟
↓
障害者ならではの視点
↓
市民の意識改革
日本社会の価値観の変革に
「施設」と「地域」の違いは?ー「施設」は地域の社会資源ー
「施設」
×自己完結する
「すべて丸抱え」
(八谷重之)
○専門家集団
○安心・安全
「地域」
○多種多彩
暮らし、活動、人
○自己決定
×素人集団
×不安・危険
入所施設に求める新たな役割①被虐待児への支援
障害児施設の被虐待児増 今後の生活構築
「障害児は障害がない子より4~10倍も虐待を受けやすい」
(H12厚生科学研究)
自閉症など発達障害児に顕著 『子ども虐待という第四の発達障害』
(杉山登志郎2007)
入所施設に求める新たな役割②虐待を受けた知的障害者と依存症
(嗜虐addiction)、犯罪との関係
被虐待児の自己否定 「生まれてこない方がよかったんだ」「生きる意味がない」性的虐待を受けてきた女性「性依存症(addiction)」性犯罪の被害者・犯罪者に
「嗜虐(addiction)」という課題アルコール・薬物依存等の問題も
入所施設に求める新たな役割③「犯罪」と知的障害者(更生保護)
軽度発達障害やアスペルガーへの注目で
1.「罪を犯した」知的障害者の社会復帰 アスペルガーによる「思いがけな
い」事件 「生きづらさ」への支援2.知的障害児と犯罪者の親
将来も親の役割を果たせない3.知的障害者と犯罪被害者 性犯罪・消費者被害なども拡大
入所施設に求める新たな役割④地域移行をめざす
「24時間型生活支援施設」
「自分らしい暮らし」の構築別人のような穏やかな表情前向きなチャレンジングな日々
家族と離れる「地域移行」の実現→23区内に入所施設の新設増
地域移行できる人が移行しきれていない
地域生活のためのバックアップ①居住の場の支援
GHを運営するNPOなどに協力
職員の資質向上、緊急時支援
↑
運営する法人や世話人次第で
入居者の生活の質が決まってしまう
安心・安全すら選べない厳しさ
地域生活のためのバックアップ②就労生活の支援
就業・生活支援センター増→就業生活の継続は安定した地域の暮らしが基盤
暮らしの3要素の支援:PWL→満足のゆく、豊な暮らし遊ぶ(play)働く(work)学ぶ(learn)
地域生活のためのバックアップ③余暇活動支援
「余暇活動」より「自己実現活動」「家族支援活動」?
(関哉直人弁護士)
日中活動の意義
「自分らしく生きる」を支える
「働くことや趣味も含め「社会参加の場」
地域生活のためのバックアップ④家族支援
親や同居家族の負担軽減
相談、ショートステイ、「医療行為」
など
「家族ぐるみの支援」が必要な「多問題家族」の増加
→それぞれが異なる支援課題
地域生活のためのバックアップ⑤「親亡き後」の安心
成年後見制度の活用なども併せて地域のネットワーク構築
親の会がNPO法人を立ち上げ法人後見 →親族後見から第三者
後見、更に市民後見
成年後見制度だけでは支えられないところをどうするか
「将来にわたるあんしん施策」平成22年3月 横浜市健康福祉局
「一律の現金給付」から「将来にわたるあんしん」へ
「在宅心身障害者手当」を廃止(21年度予算 約18億3千万)
↓「将来にわたるあんしん施策」にその財源を転換(平成22年度)
「後見的支援」とは
民法上の成年後見制度のみではなく、支援を要する障害者の権利擁護の視点に立って、地域において安心した生活を送ることができるよう行う支援
後見的支援の仕組みの図
コピー
後見的支援 運営法人
後見的支援の仕組み(新規)
あんしん マネジャー
区役所・地域活動ホーム等
成 年 後 見 制 度
既存の公的制度
あんしん キーパー
障害者本 人
③
①
あんしんサポーター②
情報交換
定期訪問
日常生活での見守り
本人に寄り添った支援
情報交換
登録
①あんしんキーパー
日常生活の見守り近隣住民等、地域の人日中活動先の職員やホームヘルパー等本人の変化に気づき、変わったことがあったら③あんしんマネージャー等に報告
②あんしんサポーター
定期訪問(例えば月1回等)
地域福祉に関心のある地域住民等
本人の状況を確認し、報告書を作成
必要に応じて本人の意思を代弁
③あんしんマネジャー本人のニーズに合わせ定期訪問
福祉専門職(相談経験5年以上)
本人の状況・社会資源把握
公的機関や相談機関に支援要請
(本人主体の視点で発言)
権利擁護
本人の「希望と目標に基づいた生活」を支援
あんしん施策のプロジェクト
①後見的支援の推進
後見制度を基盤とした
ネットワーク構築
②「多機能型拠点の整備」
医療的ケアを要する人の
日中活動
③移動支援施策の再構築
横浜のあんしん施策の意義
新たな「ささえあい」を行政責任で
ネットワークに金も出してあらゆる障害者の
地域生活支援を実現必要な人材養成
ノーマライゼーションとインクルージョン
ノーマライゼーション
「共に生きる」
インクルージョン
「共に生き、
共に支え合う」
インクルージョンと『共生』(松友了:1996)
『地域で暮らす』とは、単に『施設や病院でない所での生活』ではないはずであり、家族と一緒の生活(在宅・居宅)、住宅が立て込んでいる所での生活でもない。
国際連盟(II)の「完全な市民権(Full Citizenship)」
物理的な環境や生活様式の問題ではなく、重要なのは社会における地位(position) と役割(role)が保障され、関係性(relationship)が保てる事
完全な市民権
1.地位;居場所2.役割;社会貢献、3.関係性;支え、支えられる、ささえあい
エンパワメントの定義(バーバラ・ソロモン)
「スティグマ(烙印)の対象となり、否定的な評価を受けてパワーが欠如した状態になった人々に対し、そこから脱するための一連の援助」
厚生省『身体障害者ケアガイドライン』(1996年3月)
社会的に不利な状況に置かれた人々の自己実現をめざしており、その人の有するハンディキャップやマイナス面に注目するのではなく、長所、力、強さに着目して援助すること
ケアガイドライン
サービス利用者が自分の能力や長所に気付き、自分に自信がもてるようになり、ニーズを満たすために主体的に取り組めるようになることを目指します。
ケアガイドラインエンパワメントの理念においては、援助者はサービス利用者と同等の立場に立つパートナーということになります
→寄り添う支援、協働
強さ(長所)活用モデル(Strengths Model)(カンザス大学で理論化)
1980年代に精神障害者の地域生活支援の手法として開発
①背景にある考え方
1.エコロジー(生態学)的視点:人は環境との関係性によって変化し、成長する
2.回復力:自分自身を取り戻し、自分の人生を再設計し、意味のあるものにしていく「人生の旅路(Life's Journey)」「回復への旅路(Journey of Recovery)」を重視
①背景にある考え方
3.希望(hope):夢(dream)をもつことが「旅発ち」へとつながり、新しい人生へ
4.エンパワメント:この結果、利用者が個人的にも社会的にも政治的にも力を高める地域生活の支援→地域社会は自己実現のための
最大の「オアシス」に
強さ活用モデルの原則(リチャード・ゴスチャ)
1.人は、学び、成長し、変化しうる能力を持っている
2.焦点を当てるべきところは、個人の欠点ではなく、長所(強さ)である
3.人は、援助プロセスでの主役である(当事者主体)
強さ活用モデルの原則
4.援助関係を保つことは、第一になすべきことであり、必要不可欠なことである
5.私たちの第一の働き場所は、地域(community)にある
6.地域は資源の宝庫(oasis of resources)である
エンパワメントのポイント
1.人間観の変化:支援を受ける人々が「かけがえのない存在」に
2.支援方法の変化:訓練・指導ではなく当事者主体で「寄り添う」
3.社会の変化:地域の人々を巻き込んで「支え合う」社会変革を
エンパワメントの意義
1.障害がある人が力を付けてエンパワメントされる
2.支援に関わった支援者・専門職もエンパワメントされる
3.その地域がエンパワメントされる →「地域の福祉力」
が高まる