同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6...

10
5 目   次 はじめに 序 章 大局的視点で時代の変化を考える 1.昭和・平成型の企業パラダイムはどう変わるか 12 2.事業コンセプトを実行するクリエイティブな組織文化とは 13 3.プロダクト・アウトから顧客価値創出へ 15 4.なぜ人事制度の改革が必要か 17 第1章 役割貢献を支える賃金・人事制度の考え方 1.本質的に顧客志向・成果重視の個人事業主 24 2.従業員の仕事と賃金、顧客価値の関係 25 3.従業員が顧客価値に特別な関心を払わない理由 28 4.年功給、能力給、職務給、成果給のしくみが顧客価値に対する無関心を助長する 29 5.経営戦略と人事、評価・報酬の連動 34 第2章 新時代の待遇制度=役割給の賃金制度のつくり方 1.月例給与、賞与、退職金の役割 40 2.非正社員に対する不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)への配慮 42 3.賃金制度(基本給)を構成する4つの評価軸 48 4.3つの従業員区分方法=等級制度 51 5.役割等級の考え方 52 6.役割・貢献度の評価と賃金・賞与とのつながり 56 7.役割等級のつくり方 59 第3章 簡易版・ゾーン型の範囲給を使った役割給の決め方 1.ゾーン型範囲給と「段階接近法」のしくみ 66 2.ゾーン型範囲給と昇給ルールの作り方 69 3.役割給のしくみを「モデル昇給グラフ」で見える化する 75 4.役割給の昇給調整、水準調整とベースアップのやり方 84 5.役割と貢献度に基づく昇給評価の進め方 87 11 23 39 65 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め方

Upload: others

Post on 04-Jul-2020

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

5

■目   次■はじめに

序 章 大局的視点で時代の変化を考える

1.昭和・平成型の企業パラダイムはどう変わるか 122.事業コンセプトを実行するクリエイティブな組織文化とは 133.プロダクト・アウトから顧客価値創出へ 154.なぜ人事制度の改革が必要か 17

第1章 役割貢献を支える賃金・人事制度の考え方

1.本質的に顧客志向・成果重視の個人事業主 242.従業員の仕事と賃金、顧客価値の関係 253.従業員が顧客価値に特別な関心を払わない理由 284.年功給、能力給、職務給、成果給のしくみが顧客価値に対する無関心を助長する 295.経営戦略と人事、評価・報酬の連動 34

第2章 新時代の待遇制度=役割給の賃金制度のつくり方

1.月例給与、賞与、退職金の役割 402.非正社員に対する不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)への配慮 423.賃金制度(基本給)を構成する4つの評価軸 484.3つの従業員区分方法=等級制度 515.役割等級の考え方 526.役割・貢献度の評価と賃金・賞与とのつながり 567.役割等級のつくり方 59

第3章 簡易版・ゾーン型の範囲給を使った役割給の決め方

1.ゾーン型範囲給と「段階接近法」のしくみ 662.ゾーン型範囲給と昇給ルールの作り方 693.役割給のしくみを「モデル昇給グラフ」で見える化する 754.役割給の昇給調整、水準調整とベースアップのやり方 845.役割と貢献度に基づく昇給評価の進め方 87

11

23

39

65

同一労働同一賃金完全対応!役割貢献の評価と賃金・賞与の決め方

Page 2: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

6

第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方

1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表 942.ゾーン型等級別賃金表への移行方法と号俸改定ルール 993.ゾーン型等級別賃金表のしくみと具体的なつくり方 1094.世間相場と学歴差を配慮した新卒初任給の決め方 1215.号俸改定の実務と昇給のシミュレーション 1256.人材マネジメントのループと昇格の判定方法 1347.年齢別昇給カーブを展開した「標準昇給図表」 1438.中途採用初任給の実務 148

第5章 ランク型賃金表を使った役割給の決め方

1.ランク型賃金表による役割給の導入方法 1542.等級別評価レートと号俸改定基準 1593.ランク型賃金表の特長と応用方法 1674.ランク型賃金表を活用したパート時給の決め方 1765.ランク型賃金表を活用した高年齢者の継続雇用賃金の決め方 1866.加給を使った基本給・時給のベース改定の進め方 194

第6章 合理的な諸手当の整理方法

1.等級別賃金表を支える諸手当の役割 2042.労働時間関連手当(仕事の量と賃金) 2063.職種関連手当(仕事の種類と賃金) 2134.地域・異動関連手当(仕事の場所と賃金) 2155.生活関連手当(生活条件と賃金) 217

第7章 企業業績と役割貢献に連動した賞与の決め方

1.賞与のあるべき姿と現状とのギャップを理解する 2222.賞与総額の決め方にはどんなものがあるか 2243.損益計算書の構造と業績連動賞与のしくみ 2274.業績好調の時は労働分配率を低減させ「賞与準備金積立」を行う 2375.役割・貢献度の評価に連動した個人別賞与の配分方法 2446.安定賞与(基本給比例分)を廃止・縮小し、貢献賞与に一本化する 2517.経営にとっての配分点数表と1点単価の意味 2568.パートタイマー等の賞与の支給方法 258

93

153

203

221

Page 3: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

7

第8章 人を育て、組織力で顧客価値を創出する評価の進め方

1.評価の目的と人事管理、経営に及ぼす効果 2642.評価の制度設計、運用の基本フレームを確認する 2673.効果的な評価制度のフレームをデザインする 2714.企業の外部に評価基準を求める 2745.構成員が結束しパワーアップできる戦略方針を描く 2776.目標による管理(MBO)の導入と全社目標の設定 2817.組織の課題認識を共有し、個人目標を設定する方法 2858.従業員の組織行動レベルを高める行動基準の設定方法 3049.進捗確認と振り返り面談 30810.業績評価(またはスキル評価)と行動評価の進め方 31211.評価の調整方法と等級別の評価SABCDの決め方 32312.これからの評価制度の運用のあり方(まとめ) 326

263

Page 4: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

8

■図 表 目 次■

序 章

図表序-1 人事は流行に従う? 11図表序-2 報酬の4つの次元 19

第1章

図表1-1 自営業者の事業の仕組み 24図表1-2 会社の事業の仕組み 26図表1-3 顧客価値創出を軸とする3つの信頼関係 31図表1-4 顧客価値創出のための「役割貢献人事制度」のフレーム 33図表1-5 何のために、何を評価すべきか? 35

第2章

図表2-1 賃金・処遇を決定するための4つの仕組み 49図表2-2 社員を区分する3通りの方法 51図表2-3 ブロードバンドの「役割給」へ 54図表2-4 役割等級と評価、報酬の関係 56図表2-5 組織の責任・権限構造から役割レベルを判別 57図表2-6 職位階層と成果責任のとらえ方(営業部門の例) 58図表2-7 役割等級の定義(正社員6区分モデル) 60図表2-8 組織系統別の役職呼称(例) 62図表2-9 役割レベルのとらえ方 63

第3章

図表3-1 範囲給をゾーンに分ける 66図表3-2 範囲給をゾーンに分ける 68図表3-3 等級別の範囲給(バンド)の設定ロジック(例) 70図表3-4 役割給のゾーン別・評価別昇給ルール 73図表3-5 ゾーン別・評価別昇給率(%)の試算(Ⅰ~Ⅲ等級) 75図表3-6① Ⅰ等級の評価別モデル賃金(Ⅰ等級の昇給単位1,600円の場合) 76図表3-6② Ⅰ等級のモデル昇給グラフ 77図表3-7 基本給の昇給試算表(社員15名のサンプル) 79図表3-8 ゾーン型範囲給によるモデル昇給グラフと実在者プロット例

(図表3-3の範囲給に対応) 82図表3-9 役割に対する貢献度の評価方法 88

第4章

図表4-1 等級別・ゾーン型賃金バンド設定のロジック(例) 96図表4-2 Ⅰ等級の賃金表 97図表4-3 ゾーン型等級別賃金表(V・Ⅵ等級短期決済型) 101図表4-4 号俸改定のルール 102図表4-5 段階接近法による基本給の絶対額管理 104図表4-6 号俸改定ルールの変型 108図表4-7 「A能力モデル」を基準に賃金表の下限(初号値)を設定する 110図表4-8 等級別賃金表の下限額(初号値)と号差平均の設定方法 113

Page 5: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

9

図表4-9 各等級のゾーン別上限額とゾーン幅 115図表4-10 役職別にみた所定内給与と現金給与 120図表4-11 学卒初任給の基準等級・号数 122図表4-12 基幹業務採用の初任給の設定方法 123図表4-13 号俸改定のSABCDの決め方 126図表4-14 号俸改定の実務 129図表4-15 等級別昇給額の計算(例) 130図表4-16 P社の各等級のゾーン別人員分布(人) 131図表4-17 10年間の昇給シミュレーション(P社) 132図表4-18 年功賃金から役割給への転換 132図表4-19 資格制度による処遇の弊害(O社の事例) 135図表4-20 昇格・降格時の基本給の読み替え 136図表4-21 Eゾーンにおける等級別の昇給金額の比較 137図表4-22 組織が健全に発展・成長するための人材マネジメントのループ 139図表4-23 標準昇給図表Ⅰ・Ⅱ等級と実在者プロット例 144図表4-24 ゾーン型賃金表に基づく基本給のバンドとモデル昇給グラフ(P社) 147

第5章

図表5-1 多様な雇用形態を統合した役割等級説明書(例) 155図表5-2 ランク型賃金表(モデル例) 157図表5-3 等級別評価レートと号俸改定基準 160図表5-4 ランク型賃金表(抜粋)と号俸改定のしくみ 161図表5-5 対応ランク枠外で昇格するときの号俸の取扱い 165図表5-6 昇格基準 166図表5-7 ランク型賃金表に基づく基本給のバンドとモデル昇給グラフ(例) 169図表5-8 ランク型賃金表に基づくモデル昇給試算(Ⅰ等級) 170図表5-9 各等級のゾーン別上限額(ターゲット金額)とゾーン幅 171図表5-10 新卒初任給とAモデル人材の歩み 173図表5-11 職能給と役割給のギャップを吸収するランク型賃金表 174図表5-12 ランク型賃金表を用いたパート時給の設定方法 178図表5-13 P1・P2・P3等級のモデル昇給グラフ(時給) 180図表5-14 パートタイマーの等級区分と評価基準(例) 182図表5-15 人材活用の自由度に見合う就労可能賃率の設定例 185図表5-16 継続雇用賃金表 189図表5-17 継続雇用賃金表のランクと賃率の運用基準 190図表5-18 実績評価による継続雇用賃金の改定基準 193図表5-19 号俸改定とベース改定 195図表5-20 賃金表の書き換えによるベース改定事例 197図表5-21 加給によるベース改定事例(基本給表) 200

第6章

図表6-1 標準的な賃金体系 205図表6-2 時間外手当、みなし残業手当、管理職手当の関係 209図表6-3 管理職手当の設定方法(例) 210

第7章

図表7-1 なぜ賞与の見直し・改革が必要か 223

Page 6: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

10

図表7-2 給与・賞与の支給基準は企業の生産性で決まる 226図表7-3 会社の売上・コスト・利益の構成比率(例) 228図表7-4 営業利益準拠の業績連動賞与のモデル手法 229図表7-5 K社のM年度経営実績とN年度経営計画 231図表7-6 実際の営業利益に年間賞与が連動する 236図表7-7 賞与原資が一定基準を超えたら賞与配分率を抑制する 238図表7-8 営業利益準拠の業績連動賞与では1人当たり売上高が増えると賞与総額、

営業利益はどうなるか?(K社の事例) 242図表7-9 賃金比例方式の賞与配分(事例) 245図表7-10 貢献度の大きさとは 246図表7-11 貢献賞与の配分基準と1点単価による貢献賞与額の違い 248図表7-12 安定賞与+貢献賞与から貢献賞与の1本化へ 253図表7-13 安定賞与+貢献賞与の併用方式と貢献賞与のみの方式との比較 254図表7-14 3種類の賞与の配分点数表(2段階一致モデル) 255図表7-15 貢献賞与の個人配分の実際(K社・半期の例) 257図表7-16 パートタイマーの貢献賞与の試算例(K社・半期の例) 260

第8章

図表8-1 評価制度の目的と人事管理、経営に及ぼす効果 265図表8-2 評価組織の整備 270図表8-3 組織階層による責任・権限の上下関係 271図表8-4 業績評価、スキル評価、行動評価とは 272図表8-5 等級別評価ウェイト(例) 274図表8-6 経営ビジョンを考える8つの領域 278図表8-7 スターバックスの戦略ストーリー 279図表8-8 戦略目標(ターゲット)に対する効果的な重点業務活動(トリガー)

を指標化する 282図表8-9 バランス・スコアカードによる活動指標の整理 283図表8-10 バリューチェーンによる活動指標の整理 285図表8-11 部署の取組み課題に個人を参画・コミットさせる 287図表8-12 組織課題の分析と個人の取組み課題の検討(C社〇商品事業部の作成例) 289図表8-13 部署別の「役割責任マップⓇ」の課業一覧(A社情報制作部の作成例) 290図表8-14 部下一人ひとりの状況に応じてリーダーシップを発揮する 291図表8-15 職種別スキル評価基準一覧(B社営業部の作成例) 295図表8-16① キャリアアップシート(目標設定)のイメージ(例) 296図表8-16② キャリアアップシート 298図表8-17 キャリアアップシートの行動評価と行動基準のイメージ(例) 306図表8-18 行動評価項目の検討例 307図表8-19 振り返り欄のイメージ(例) 310図表8-20 評価欄の作成イメージ(例) 313図表8-20 (続き) 314図表8-21 業績評価の基準(例) 315図表8-22 難易度のレベルマッピングの作成例 318図表8-23 役割等級別の基礎点に評価点をプラスした評価レート 327図表8-24 役割等級別レートと職務レベルとの対応表 328

Page 7: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

簡易版・ゾーン型の範囲給を使った役割給の決め方第3章

1.ゾーン型範囲給と「段階接近法」のしくみ2.ゾーン型範囲給と昇給ルールのつくり方3.�役割給のしくみを「モデル昇給グラフ」で見える

化する4.�役割給の昇給調整、水準調整とベースアップのやり方

5.役割と貢献度に基づく昇給評価の進め方

Page 8: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

66

ゾーン型範囲給と「段階接近法」のしくみ1ゾーン型の範囲給(バンド)の中で貢献度に応じた賃金を実現する「段階接近法Ⓡ」

本章では、役割と貢献度に基づく賃金(役割給)の基本的な考え方を説明するために、一般

的な号俸表のような「賃金表」を使わないで、基本給の上限・下限を決めるだけの簡易な「ゾー

ン型範囲給」の手法を説明します。

これは、あらかじめ図表3-1のように貢献度レベルの評価SABCDに合わせて範囲給を5

つの「ゾーン」に区分します。このゾーンを活用して、範囲給の中で基本給の高さと貢献度の

評価とを比較して、常に両者のバランスをとるように昇給・昇給停止・マイナス昇給を行い、

合理的に基本給の絶対額をコントロールします(段階接近法)。

範囲給のほかは「職能給」とか「年齢

給」「勤続給」などの他の基本給項目は

使いません。この範囲給一本で基本給を

決めます。

一般的な「職能給」では、評価SABCD

によって毎年号俸をプラスする昇給を行

います。「年齢給」「勤続給」の場合は年

齢や勤続年数が増える都度、「職能給」

は習熟度が高まる都度昇給します。これ

らを毎年定期的に行うという意味で「定

期昇給」と呼びます。職能給には、原則

としてマイナス昇給はありません。

これに対して段階接近法では、個々の

社員が「どのゾーンにいて」「どんな貢

献度の評価をとるか」で、昇給、昇給停

止、マイナス昇給を行います。

例えば、いままでの基本給を図表3-

1の賃金表の上に読み替えたところ、右

のように基本給の低い下山さんはCゾー

ン、中山さんはBゾーン、給料が高い上

ゾーン型の範囲給(バンド)の中で貢献度に応じた賃金を実現する「段階接近法

範囲給をゾーンに分ける図表3-1

範囲給(バンド)

ゾーン 金額

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

上山さん

中山さん

下山さん

(S)

S

(A)

(B)

(C)

(D)

A

B

C

D

上限額

下限額

高い

低い

Page 9: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

67

簡易版・ゾーン型の範囲給を使った役割給の決め方

第3章

山さんはAゾーンに位置づけられたとしましょう。新しい基本給の運用方法は次のようにな

ります。

① いまの基本給のゾーンよりも高い評価をとると上のゾーンへ向かって昇給します。

貢献度の評価は、SABCDの5段階評価(Bが標準)を毎年行います。

例えば、基本給の低い下山さんはB以上の評価をとるとBゾーンへ向かって昇給し、中

山さんはA以上の評価をとるとAゾーンへ向かって昇給します。そして基本給の高い上

山さんは、最高のS評価を採らないとSゾーンへは昇給できません。

上のゾーンに昇給するには、いまの基本給ゾーンより高い評価をとる必要があり、高い

ゾーンにいる人ほど、高い貢献をしないと上のゾーンには昇給できません。

② 基本給のゾーンと同じ評価だとゾーンの上限まで昇給し、そこで昇給停止になります。

表では、各ゾーンの上限を下から(D)、(C)、(B)、(A)、(S)と表示しています。

例えば、下山さんはC評価でCゾーンの上限(××円)まで少しずつ昇給できますが、

C評価はそこで昇給停止となります。同じく中山さんはB評価ではBゾーンの上限(××

円)まで、上山さんもA評価ではAゾーンの上限(××円)までしか昇給できません。

つまり自分の基本給ゾーンと同じ評価だと、そのゾーンの上限までで昇給停止となります。

③� いまの基本給のゾーンよりも低い評価をとると昇給停止またはマイナス昇給になります。

例えば、基本給の低いCゾーンの下山さんは、最低のD評価をとると昇給できません。

同じくBゾーンの中山さんはC評価では昇給停止、D評価をとるとCゾーンへ向かってマ

イナス昇給になります。基本給の高いAゾーンの上山さんは、B評価では昇給停止、C以

下の評価でマイナス昇給となります。

このように、基本給が高いゾーンにいる人ほど、求められる貢献度のハードルが高くな

り、ゾーンよりも低い評価をとってしまうと、いままでの給料を維持できなくなります。

貢献度に応じたゾーン別の上限額に基本給が収れんする

今度は、図表3-2をみてください。

いま、新入社員の入口さんが賃金表の一番低い金額(初任給)からスタートしました。

この新入社員が、もし普通のB評価をとり続けるような平均的な社員だと、普通に昇給して

最後はBゾーンの上限(B)で昇給停止となります。

ところが、これが10年に1人という超優秀な逸材で、最高のS評価をとり続けたとすると、

基本給はぐんぐん昇給し、ある程度年数がかかりますが、最後には賃金表の最高額であるS

ゾーンの上限(S)まで昇給します(実際はSゾーンの上限(S)に届く前に、上位等級の役割

貢献度に応じたゾーン別の上限額に基本給が収れんする

Page 10: 同一労働同一賃金完全対応! 役割貢献の評価と賃金・賞与の決め … · 6 第4章 ゾーン型賃金表を使った役割給の決め方 93 1.「ブロードバンドの役割給」を実現するゾーン型の等級別賃金表

68

に昇格していると思います

が)。

逆に、採用を間違ってし

まい、残念ながらD評価ば

かりとるような社員だと、

昇給は抑制され、Dゾーン

の上限(D)で早くも昇給

停止となります。

このように、年数ととも

にその社員の貢献度レベル

に見合う基本給が決まって

いきます。

ここでは毎年同じ評価を

続けるかのような説明をし

ましたが、実際は毎年、各

人の評価は変化します。例

えば、はじめはC評価が続

いていたような新入社員で

も、途中から急にやる気を

出してB評価をとるように

なり、いつの間にか優秀な社員に成長してA評価をとるようになることもあります。この場

合はAゾーンの上限まで昇給できるのです(もちろん、油断すれば再びマイナス昇給の対象

になることもあり得ます)。

反対に、はじめは張り切ってB評価やA評価をとっていたのに、途中からやる気がなくなっ

てC評価ばかり続けば、最後はCゾーンの上限で基本給は固定します(この場合も、再び一念

発起すれば上のゾーンに上がることもできます)。

このように、長い目で見ればその人の本当の実力のレベルに最後は基本給が収れんしていく

と考えてよいでしょう。

いかがですか? これが、「段階接近法Ⓡ」と呼ばれる役割給の賃金管理手法です。

この手法を活用することによって、次のような特徴を持つ「ブロードバンドの役割給」を非

常にシンプルな手法で実現することができるようになります。

範囲給をゾーンに分ける図表3-2

範囲給(バンド)

ゾーン 金額

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

××円〇〇円……〇〇円

入口さん(キャラクター)

S評価の上限

A評価の上限

B評価の上限

D評価の上限

C評価の上限

(S)

(A)

(B)

(C)

(D)

S

A

B

C

D

上限額

下限額

高い

低い