「mx-01」強化しスマホ/uc提案を加速 日立のipテレフォニー...

2
テレコミュニケーション_April 2016 ビジネス最前線 Business Frontline 「日立の I P テレフォニー事 業が 撤 退するとか縮小するとか、そうしたこ とは一切ない。それどころか、これか ら2016 年度以降にどう伸ばしていく かと事業計画をまさに論議していると ころだ」 そう話すのは、日立情報通信エン ジニアリングの I P T ソリューション事 業部・副事業部長を務める竹内公敏 氏だ。2016 年度以降の事業計画にお いても、「I P テレフォニー事業の成長 に向けてソリューション提案を強化し ようという方針でいる。そのための仕 込みとなる開発も着々と進めてきた」 という。 PBX 事業は「これまで通り」 日立のPBX 事業について 2月以降、 通信系ディーラーの間で、ある憶測が 広がった。日立製作所が 2月3日の決 算説明会で、事業体制を16 年 4 月1日 付で一新すると発表したのを受けた ものだ。一部報道で、通信ネットワーク 事業を大幅に縮小し、日立製作所が 開発する通信事業者向けハードウェア の自社開発から事実上撤退するなど と伝えられたことから、PBX 事業への 影響を懸念する声が上がったのだ。 だが、新体制の詳細は明らかに なっておらず、また、この発表を直ち に、グループ会社である日立情報通 信エンジニアリングが統括するI P テ レフォニー事業と結びつけて考える のは行き過ぎといえよう。 2 月3 日の発表を整理すると、その 主旨は、情報・通信システム社、電力 システム社など 9 社で構成する従来の 製品別カンパニー制を改めて、電力・ エネルギー、産業・水などマーケット 別に「12のフロントBU(ビジネスユニッ ト)」を置くというもの(図表)。マー ケット別の事業体制に移行すること でフロント営業を強化するのが狙い だ。これに伴い、情報・通信システム 社は金融 B U、公共 B U、および新設 のICT事業統括本部に分割。ICT事 業統括本部は全フロントBUと連携す るという。 なお、日立の I P テレフォニー事業 は 14 年 4 月に、日立 製 作所から、グ ループ会社である日立情報通信エン ジニアリングおよび日立システムズに 事業移管されている。日立情報通信 エンジニアリングが同事業全体を統 日立の IP テレフォニー事業は健在 「MX-01」強化しスマホ /UC 提案を加速 「撤退か縮小か」などという憶測も広がった日立の IP テレフォニー事業だが、 心配は無用だ。スマホ連携/UC提案の活性化に向けて開発体制も増強。 「NETTOWER MX-01」の機能強化版も近く投入する。 文◎坪田弘樹 (本誌) 日立情報通信 エンジニアリング IPT ソリューション事業部 副事業部長 竹内公敏氏 日立情報通信 エンジニアリング IPT ソリューション事業部 IPT ソリューション企画部 技師 遠藤浩氏 図表 4月1日以降の日立グループの事業体制 プロダクト主体の事業群 サービス主体の事業群 BUBUBUBUBUBUBUBUBUBUBUBU12 BU金融・公共・ ヘルスケア アーバン 産業・水 電力・ エネルギー 製品・部品・材料など 社長 兼 CEO グループ会社 インダストリアルプロダクツ BU サービス &プラットフォーム BU 出典:日立製作所 発表資料 EMEACIS●この冊子は「月刊テレコミュニケーション」2016 年 4 月号より抜粋したものです。 ●掲載記事の複写・無断転載を禁じます。

Upload: others

Post on 31-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 「MX-01」強化しスマホ/UC提案を加速 日立のIPテレフォニー ......社は金融BU、公共BU、および新設 のICT事業統括本部に分割。ICT事 業統括本部は全フロントBUと連携す

テレコミュニケーション_April 2016

ビジネス最前線 Business Frontline

 「日立のIPテレフォニー事業が撤退するとか縮小するとか、そうしたことは一切ない。それどころか、これから2016年度以降にどう伸ばしていくかと事業計画をまさに論議しているところだ」 そう話すのは、日立情報通信エンジニアリングのIPTソリューション事業部・副事業部長を務める竹内公敏氏だ。2016年度以降の事業計画においても、「IPテレフォニー事業の成長に向けてソリューション提案を強化しようという方針でいる。そのための仕込みとなる開発も着 と々進めてきた」という。

PBX事業は「これまで通り」

 日立のPBX事業について2月以降、通信系ディーラーの間で、ある憶測が広がった。日立製作所が2月3日の決算説明会で、事業体制を16年4月1日付で一新すると発表したのを受けたものだ。一部報道で、通信ネットワーク事業を大幅に縮小し、日立製作所が開発する通信事業者向けハードウェアの自社開発から事実上撤退するなどと伝えられたことから、PBX事業への影響を懸念する声が上がったのだ。 だが、新体制の詳細は明らかになっておらず、また、この発表を直ち

に、グループ会社である日立情報通信エンジニアリングが統括するIPテレフォニー事業と結びつけて考えるのは行き過ぎといえよう。 2月3日の発表を整理すると、その主旨は、情報・通信システム社、電力システム社など9社で構成する従来の製品別カンパニー制を改めて、電力・エネルギー、産業・水などマーケット別に「12のフロントBU(ビジネスユニット)」を置くというもの(図表)。マーケット別の事業体制に移行することでフロント営業を強化するのが狙いだ。これに伴い、情報・通信システム社は金融BU、公共BU、および新設のICT事業統括本部に分割。ICT事業統括本部は全フロントBUと連携するという。 なお、日立のIPテレフォニー事業は14 年 4月に、日立製作所から、グループ会社である日立情報通信エンジニアリングおよび日立システムズに事業移管されている。日立情報通信エンジニアリングが同事業全体を統

日立のIPテレフォニー事業は健在「MX-01」強化しスマホ/UC提案を加速

「撤退か縮小か」などという憶測も広がった日立のIPテレフォニー事業だが、心配は無用だ。スマホ連携/UC提案の活性化に向けて開発体制も増強。

「NETTOWER MX-01」の機能強化版も近く投入する。 文◎坪田弘樹(本誌)

日立情報通信エンジニアリングIPTソリューション事業部副事業部長竹内公敏氏

日立情報通信エンジニアリング

IPTソリューション事業部IPTソリューション企画部

技師遠藤浩氏

図表 4月1日以降の日立グループの事業体制

プロダクト主体の事業群

サービス主体の事業群

ヘルスケアBU

公共BU

金融BU

ディフェンスBU

アーバン

ソリューションBU

鉄道BU

ビルシステムBU

水BU

産業・流通BU

エネルギー

ソリューションBU

電力BU

原子力BU

12のフロントBU

金融・公共・ヘルスケアアーバン産業・水電力・

エネルギー

製品・部品・材料など

社長 兼 CEO

グループ会社インダストリアルプロダクツBU

サービス&プラットフォームBU

出典:日立製作所 発表資料

中国総代表

アジア・パシフィック総代表

EMEA・CIS総代表

米州総代表

●この冊子は「月刊テレコミュニケーション」2016 年 4月号より抜粋したものです。●掲載記事の複写・無断転載を禁じます。

Page 2: 「MX-01」強化しスマホ/UC提案を加速 日立のIPテレフォニー ......社は金融BU、公共BU、および新設 のICT事業統括本部に分割。ICT事 業統括本部は全フロントBUと連携す

テレコミュニケーション_April 2016

括、製品設計・開発・製造を行い、日立システムズがパートナー向けも含めて販売する体制がスタートしてから間もなく丸2年となる。 日立のIPテレフォニー事業の事業方針は変わらず、竹内氏も「我々の民需向けの事業はこれまで通り。さらなる強化を図る」と断言する。

MX-01の機能強化版を今春投入

 同社は現在、これまでのハードウェア中心のビジネスから「サービスやソリューションを軸とした事業を強くするため、人員も増やし開発体制を強化している」(竹内氏)ところだ。 15 年度は、4月に中小規模向けの

「NETTOWER MX-01」を発売し、前機種MX900IPのリプレースを中心に販売。順調な出だしとなったが、PBX市場全体のトレンドを上回るには至らず横ばいの状態という。16年度は大規模向けのCX-01と同様、MX-01でもスマートフォン内線化やユニファイドコミュニケーション(UC)、業務システム連携といった切り口でソリューション提案を強めていく方針だ。 そのためのベースとなるMX-01の新機能開発がまもなく完了し、4月以降、機能強化版の提供を始める。 機能強化の1つ目はIP内線への対応だ。MX-01はいわゆる“レガシー型

PBX”であり、中堅中小企業ではレガシー型が主流で売れていることもあって、昨春、IP内線端末の収容機能を持たない形でリリースした。 機能強化版では、IP端末を収容できるようになる。VoIP通話アプリをインストールしたスマートフォンの内線収容も可能だ。 もう1つ、16年夏頃の発売予定となるが、CX-01とMX-01のセントレックス構成および IP共通線による連携も可能になる。 複数拠点を持つ大企業では、本社やデータセンターにCX-01を置き、支社・営業所等にはゲートウェイと電話機のみを設置、CX-01に接続して内線電話を使う形態が多い。ただし、この形態では、CX-01やIP網に障害が発生した場合に拠点側の電話も使えなくなる。また、拠点側で事業所用PHSや非常用電話を使いたいといったニーズにも対応できない。 そこで、MX-01を拠点に置き、センター側のCX-01と連携させることで、通常時はCX-01配下のセントレックス構成で動作しながら、CX-01の障害時には拠点内をMX-01でバックアップできるようにする。CX-01とMX-01間のローミング(ある拠点のPBXに登録されたPHS端末を、別拠点のPBX経由で1つの内線番号で呼び出す)も

IP共通線により可能だ。「異なる機種を組み合わせたセントレックス、ローミングができるメーカーは少ない。今回のエンハンスの目玉だ」とIPTソリューション企画部・技師の遠藤浩氏は話す。

医療・介護、ホテルに重点

  こうした機 能 強 化をベースに、MX-01がターゲットとする中堅中小企業/拠点でも内線 IP化、スマホ内線やWeb電話帳を絡めたUC提案を進めていく。「Skype for BusinessやOffice 365との連携や、当社のWeb電話帳ソリューションの案件が徐々に増えてきた。正直これまでは、うちが弱い部分だったが、16年度はここに力を入れていく」と竹内氏は話す。 また、これと平行して、特定業種向けのソリューション開発・提案も進める。ターゲットは医療・介護業界とホテル業界だ。これまでも、ナースコールシステムやホテルシステムとの連携で顧客を開拓してきたが、さらに「スマートフォンやWeb電話帳をもっと活用して、業種特有の働き方や課題に合わせた具体的なソリューションのメニューを増やしていく」という。 例えば、PC/スマートフォンで人を検索し、プレゼンスを見て電話をかけるWeb電話帳は、一般的なオフィスでは効果があり案件も増えている。しかし、働き方やコミュニケーションの仕方が異なる病院にそのまま提案しても受け入れられにくい。スマホやWeb電話帳を“材料”として活用し、業務プロセスにもっと踏み込んだ提案ができるよう、ソリューション開発にさらに注力していく考えだ。

日立情報通信エンジニアリングが提供するWeb電話帳ソリューションの画面。PCのブラウザ画面上で社員の検索やコメント文による状況確認、電話・メールの発信、テキストメモの送付などが行える