求められる効果的な対策雷害防止技術...求められる効果的な対策雷害防止技術...

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められる 図1 雷害対策から見た再 生可能エネルギーの分類 図2 雷サージ侵入経路 退大学学 太陽光パネルにおける放電様相 【広告特集】 2011年 平成23年 7月8日 金曜日 沿沿

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Page 1: 求められる効果的な対策雷害防止技術...求められる効果的な対策雷害防止技術 図1 雷害対策から見た再 生可能エネルギーの分類 図2 雷サージ侵入経路

求められる効果的な対策雷害防止技術図1 雷害対策から見た再生可能エネルギーの分類

図2 雷サージ侵入経路

 全電力に占める風力発電・太陽光発電・燃料電池な

どの割合は今後増大するものと考えられる。それには

スマートグリッド

次世代電力網

の導入も含めて、

確実な運転が前提となる。しかしながら、雷の被害を

受けた影響で発電事業から撤退していることがあるこ

とはあまり知られていない。したがって、再生可能エネ

ルギーを普及させるには、それらの合理的な雷害対策

手法の確立が喫緊の課題である。再生可能エネルギー

は設置場所・発電方式がさまざまである。ここでは雷

害対策の基本を踏まえ、再生可能エネルギーにおける

雷害対策手法の概要について述べる。

関岡昇三教授湘南工科大学工学部電気電子工学科

▼風力発電の雷害対策

▼太陽光発電の雷害対策

▼燃料電池の雷害対策

太陽光パネルにおける放電様相

( ) 【広告特集】 2011年 平成23年 7月8日 金曜日   

 「地震・雷・火事・親

父」と言われるように雷

は人間にとって脅威であ

ったが、避雷針の普及や

雷性状の把握、雷害対策

技術の向上などにより大

きな雷害は減少してきて

いる。しかしながら、情

報化社会に対応するため

機器は電子化され、雷に

対して弱くなった。また

IT機器の誤動作・停止

によるデータ消滅にもつ

ながり、甚大な損害を被

る危険性がある。

 東日本大震災の影響で

原子力による発電量を節

電あるいはほかの発電方

法によって補わなければ

ならず、電力不足は深刻

な問題となっている。と

ころで、経済成長と環境

問題は互いに牽制し合う

けん

立場にあり、電力はそれ

らの間で板挟みになって

いる。グリーンニューデ

ィールは経済成長と環境

問題を一挙に解決する一

つの政策とし

て提唱され

た。

 スマートグ

リッドを用い

た再生可能エ

ネルギーの大

量導入はわが

国においても

現状打破の一

つの政策とし

て有効である

ことから、太

陽光発電や風

力発電といっ

た再生可能エネルギーが

全電力に占める割合は今

後増加すると考えられ

る。しかしながら、雷に

よる再生可能エネルギー

やスマートグリッドにお

ける障害が電力システム

に与える影響について深

く議論されておらず、再

生可能エネルギーやその

周辺機器における雷害対

策手法の確立が重要であ

る。

 雷害対策では雷サージ

侵入経路や雷サージの性

質の把握が重要である。

これらを考慮した上で雷

害対策の基本である雷遮し

蔽・インピーダンス

へい流

抵抗

低減・雷過電圧

抑制を使い分ける必要が

ある。

 図1に再生可能エネル

ギーの分類を示す。回転

機はサージ耐力が大き

く、発電機自体の雷害の

報告事例は少ない。それ

に対して静止器はサージ

耐力が比較的小さいもの

が多い。また、屋外に発

電機構が設置されている

場合、高い雷サージが侵

入する確率は高い。屋内

設備で回転機により発電

する場合は、火力発電に

おける耐雷設計手法に従

えば良い。

 図2に家屋における落

雷個所と雷サージ侵入経

路を示す。侵入経路とし

て送配電線や通信線など

の架空線、アンテナ・避

雷針などへの直撃雷、接

地の3カ所に分類でき

る。これら三つの侵入経

路の内、直撃雷が最も過

酷である。架空線からの

侵入では、侵入点が入り

口のみであるので、そこ

で対策を施せばよい。た

だし、避雷器やサージ保

護デバイス

SPD

保護範囲があるので、重

要な機器を中心にほかの

個所にも設置する必要が

ある。接地からの侵入で

は落雷点と直接つながっ

ていないため大きな被害

となることは少ないが、

見落としがちであるので

注意が必要である。これ

らのことを踏まえて、代

表的な再生可能エネルギ

ーの雷害対策について述

べる。

 燃料電池における雷被

害は顕著ではないが、電

気温水器の被害が報告さ

れていることを考える

と、今後燃料電池が普及

すると雷害が顕在化する

ものと考えられる。燃料

電池では配管や金属製外

箱が接地されていること

から、接地からの雷サー

ジ侵入について対策を施

す必要がある。大地から

の侵入は落雷点における

雷電流によって接地点に

大地電位上昇が生じるこ

とによる。落雷点から遠

ざかるほど電位が減少す

ることから、近くに大電

流が流入する個所がある

場合には必ず対策をしな

ければならない。

 燃料電池において最も

危険なのは火災である。

したがって燃料改質装置

などの水素を扱う個所に

おいて絶縁破壊による火

花が出ないように適切な

SPDを設置しなければ

ならない。

 以上、個々の再生可能

エネルギーの雷害対策に

ついて述べた。最後に共

通事項について述べる。

まず接地の等電位ボンデ

ィングによって電位差を

小さくすることが基本と

なる。これによりSPD

の保護効果も増す。ただ

し、SPDの保護範囲に

注意する必要がある。再

生可能エネルギーは送配

電線と連系する場合が多

い。したがって、送配電

線との協調が図れていな

いといけない。

 従来絶縁協調のように

雷過電圧については考慮

されていたが、冬季雷の

ようにエネルギーに関し

ても適切に分担する必要

がある。接地抵抗や避雷

器・SPDなどの特性に

ついても両者間で協調を

とる必要がある。

 わが国では多くの風力

発電システムが日本海沿

いに建設されていること

から、異常な雷である冬

季雷も雷害対策の対象と

なる。夏季では制御系に

おける障害が、冬季では

ブレードの損傷が発電停

止を引き起こす要因とな

っている。風力発電シス

テムは屋外に設置されて

いることから落雷対策が

重要である。ブレード落

雷対策としてブレードに

レセプターが設置されて

いる。

 また、風力タワーの近

傍に建設する独立避雷塔

に落雷するようにする方

法もある。しかしながら、

レセプターや独立避雷塔

が必ずしも風力発電シス

テムを保護できているわ

けではない。冬季雷では

上向き雷が多く、回転球

体法が適用できない。冬

季雷放電進展モデルを用

いた上向き雷を対象とし

た雷遮蔽評価手法が実用

化されており、風向きな

どを考慮して独立避雷塔

の効果的な配置を検討で

きるようになった。

 冬季雷では国際電気標

準会議

IEC

の想定

値である300C

クー

ロン

を超える雷電流が

いくつも観測されてい

る。キャップ式レセプタ

ーが効果的であると言わ

れているが、効果の確認

が必要である。

 太陽光発電も屋外に設

置されるため、雷遮蔽が

重要である。太陽光発電

はセルの耐圧が低いため

誘導雷を対象として対策

を行ってきた。屋内実験

レベルではあるが、太陽

光パネルへの放電につい

て実験的検討を行った。

ただしフレームは接地し

ている。強化ガラス上で

沿面放電が生じフレーム

に到達している。したが

って、太陽光パネルへの

直撃雷はフレームへの落

雷と考えてよい可能性が

ある。

 実際、パネル自体の被

害は少ない。接地やその

周辺を強化することによ

り、直撃雷対策が可能で

あると考える。フレーム

を接地しない場合は

程度高い電圧を印加して

も放電は発生しなかっ

た。アンテナや避雷針に

より雷遮蔽が行われる場

合、フレームを接地する

必要はないと考えられ

る。