希土類元素の使用低減化を目指した 青色蛍光体の開発...•...

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1 新潟大学工学部化学システム工学科 教授 佐藤 峰夫 新潟大学自然科学研究科 准教授 戸田 健司 新潟大学工学部 技術専門職員 上松和義 新潟大学超域研究機構 助教 石垣 希土類元素の使用低減化を目指した 青色蛍光体の開発

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Page 1: 希土類元素の使用低減化を目指した 青色蛍光体の開発...• 現在、BAMとNSPを比較すると、希土類イオ ン賦活の低減が達成できた。しかし、母体組

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新潟大学工学部化学システム工学科 教授 佐藤 峰夫

新潟大学自然科学研究科 准教授 戸田 健司

新潟大学工学部 技術専門職員 上松和義

新潟大学超域研究機構 助教 石垣 雅

希土類元素の使用低減化を目指した 青色蛍光体の開発

Page 2: 希土類元素の使用低減化を目指した 青色蛍光体の開発...• 現在、BAMとNSPを比較すると、希土類イオ ン賦活の低減が達成できた。しかし、母体組

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蛍光体 ・・・ 外部からのエネルギー(紫外線や電子線など) を吸収し、可視光に変換する物質

蛍光灯 白色LED プラズマディスプレイ 避難誘導標式

蛍光体の用途

波長

紫 赤

380nm 780nm

蛍光体とは

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白色LEDについて

青色LED YAG:Ce3+

現在主流の白色LED 青色LED

+ 黄色蛍光体 YAG:Ce3+

長寿命

高速応答

水銀フリー

設計の自由度が高い

環境負荷の低減

白色LEDの利点

Blue Green

Red

Yellow

光の三原色

赤み成分が少なく、色の再現性(演色性)が悪い

赤+緑+青

青+黄 → 白色光

→ 擬似白色光

YAG:Ce3+は緑

がかった黄色光

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演色性の改善

R・G・B蛍光体

近紫外LED

白色光

三波長型白色LED 近紫外LED

+ RGB蛍光体

光の三原色による真の白色光

高演色性を実現可能

赤色蛍光体Y2O2S:Eu3+ 緑色蛍光体SrAl2O4:Eu2+ 青色蛍光体BaMgAl10O17:Eu2+(BAM)

→ 白色

近紫外領域の吸収効率が悪い

近紫外領域に吸収を持つ

蛍光体の開発が重要

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研究内容

・NSPはNASICON類似型イオン伝導体として報告があるが蛍光体母体としての報告例はない ・イオン伝導体に蛍光特性を持たせた例は少なく、本研究室で去年イオン伝導体であるLi3Sc2(PO4)3(LSP)3)にEu2+

を賦活し青色発光することを報告

LiをNaとしたリン酸塩系新規蛍光体母体 NSPにEu2+を賦活し、その特性評価を調査した。

3) T Suzuki et al.,Solid State Ionics, 113-115 (1998) ,89-96

Na3Sc2(PO4)3(NSP)

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実験方法

Fig. Crystal structure of Na3Sc2(PO4)3

ScO6

PO4

Na

Na2CO3+Sc2O6+NH4H2(PO4)3+Eu2O3

Mixed in ethanol

Sample Na3Sc2(PO4)3:Eu2+

Preheated at 300 ゜C for 2h

Heated at 1050~1200 ゜C for 12h in Ar / H2

c b

a

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300 400 500

蛍光特性

Fig. Excitation and emission spectra of NSP

λex=380nm λem=450nm 1200 ゜C焼成

1150 ゜C焼成

1100 ゜C焼成

1050 ゜C焼成

Inte

nsity

/ a.

u.

Wavelength / nm 448

449

450

451

452

453

454

455

456

457

1100 1120 1140 1160 1180 1200

Temperature / ゜C W

avel

engt

h / n

m

焼成温度の上昇で NSPの発光が増大 またピークシフトが 見られる

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実用材料との比較

300 400 500

Inte

nsity

/ a.

u.

Wavelength / nm Fig. Excitation and emission spectra of NSP

and BaMgAl10O17:Eu2+(BAM)

BAM NSP1200 ゜C NSP1150 ゜C

BAMとNSPを比較すると1150 ゜Cでは、同程度、 1200 ゜CにおいてはBAMに勝る。

BaMgAl10O17:Eu2+(BAM) 約30年三波長形蛍光ランプ

の青色源として今現在も使用されている蛍光体

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熱特性

Fig. Temperature dependence of luminescence intensity of the samples.

Rel

ativ

e in

tens

ity /

%

Temperature / ºC NSPは高温でも 高い発光強度を維持

BAM:Eu2+(TOKYO KAGAKU)

Na2.85Eu0.15Sc2(PO4)3

100゜C 150゜C BAM 94% 93% NSP 87% 83%

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新材料の特徴・従来材料との比較

• BAMの問題点であった、希土類元素の使用量を低減した。

• NSPとBAMを比較すると近紫外領域の吸収効率、発光の点でNSPが高い性能を発揮しており三波長型白色LEDへの応用が期待できる。

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想定される用途

• 材料の特徴を生かし、3波長型白色LEDに適

用することで、近紫外領域の吸収効率の点でメリットが大きいと考えられる。

• 上記以外に、蛍光ランプ用青色蛍光体にも応用が期待できる。

• また、達成された発光に着目すると、野菜等の栽培用照明や特殊集魚灯といった分野や用途に展開することも可能と思われる。

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実用化に向けた課題

• 現在、BAMとNSPを比較すると、希土類イオ

ン賦活の低減が達成できた。しかし、母体組成中Scのコスト面が未解決である。

• 実用化に向けて、再現性の精度を100%に向上できるよう技術を確立する必要もあり。

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企業への期待

• 未解決の再現性については、企業の有能な設備により克服できると考えている。

• また、白色LEDを開発中の企業、光学分野へ

の展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :リン酸塩蛍光体 • 出願番号 :特願2012-043025 • 出願人 :国立大学法人新潟大学 • 発明者 :佐藤峰夫、他4名

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お問い合わせ先

新潟大学 産学地域連携推進機構

産学地域連携推進センター

TEL 025-262 - 7344

FAX 025-262 - 7513

e-mail [email protected]