札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ...

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札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 平成 31 3 株式会社ノーザンクロス

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Page 1: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

札幌圏における文化ツーリズム調査及び

モニターツアー運営業務

報 告 書

平成 31年 3月

株式会社ノーザンクロス

Page 2: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

<目 次>

1.業務の概要

(1)業務の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(2)本業務における「文化ツーリズム」の考え方・・・・・・・・・・・ 1

(3)業務の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

2.文化ツーリズムに関する国の施策・動向

(1)観光庁の調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

(1)他地域事例調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(2)調査対象と調査項目・内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(3)他地域事例のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

(4)他地域事例の詳細・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

4.札幌圏の文化ツーリズム現況調査

(1)現況調査の目的・手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

(2)ヒアリングによる調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

(3)個別ヒアリング概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

(4)ヒアリング記録のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

(5)意見交換会概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

(6)意見交換会での発言要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

(7)札幌市統計調査結果の考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68

5.モニターツアー及び関連調査

(1)モニターツアーの開催概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

(2)アンケート調査等の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81

(3)アンケート結果 (モニターツアーへの反応)・・・・・・・・・・ 82

(4)アンケート結果 (札幌圏の文化ツーリズムに関する意識調査)・・ 84

(5)アンケート回答の詳細 (モニターツアーアンケート)・・・・・・ 85

(6)アンケート回答の詳細 (トークイベントアンケート)・・・・・・ 92

6.今後の展望と検討課題

(1)概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95

(2)札幌圏の文化ツーリズム振興に向けた検討課題・・・・・・・・・ 96

(3)札幌圏の文化ツーリズムに関する展開案・・・・・・・・・・・・ 97

(4)札幌圏の文化ツーリズムに関する取組案・・・・・・・・・・・・ 100

(5)おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

Page 3: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

別表

(1)他地域事例調査における着目ポイントと対象事例の一覧・・・・・

(3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査 関連)

別表1

(2)札幌圏現況調査における着目ポイントと有識者意見・現況・・・・

(4.札幌圏の文化ツーリズム現況調査 関連)

別表2

Page 4: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

1.業務の概要

1 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

1.業務の概要

(1) 業務の背景と目的

現在、札幌観光の魅力としては「食」が圧倒的な優位にある。食以外にも、歴史

的建造物や文化施設など、観光活用に資するポテンシャルをひめた多くの魅力的な都

市資源が所在しているが、文化観光コンテンツとして体系的に発信する段階には至っ

ていない。

近年では国の施策でも「文化」の観光活用が強調されるなど、改めて地域固有の

歴史・文化・芸術の持つ観光資源としての魅力を見つめなおし、札幌市の文化芸術の

豊かさを市内外にアピールする方策という面でも、「食」に加えてこれらの観光資源

の魅力をいかに提示すべきか、検討していく時機にあるといえる。

以上の背景をふまえ本業務では、地域の文化資源を活かした観光事業に関する先

進的な取り組み事例の調査、札幌圏の観光事業者・文化関係者等へのヒアリングやワ

ークショップ、モニターツアー実施を通じて、札幌圏の多彩な文化施設・文化事業の

魅力を活かした新たな「文化ツーリズム」の可能性とともに、今後の事業構築に向け

た課題等の検討材料を提示することを目的とする。

(2) 本業務における「文化ツーリズム」の考え方

1) 一般的な用語法

「文化ツーリズム」という用語に統一的な定義はないが、国では平成 19年「観光

立国推進基本計画」において、ニューツーリズムの一つの分野として「文化観光」を

「日本の歴史、伝統といった文化的な要素に対する知的欲求を満たすことを目的とす

る観光」と定義している。

2) 札幌市の施策をふまえた本調査における考え方

札幌市は 2015年「札幌観光まちづくりプラン」(p.41)において、「地域の特徴的

なまちづくりや市民の暮らしに根ざした魅力的な都市観光を創造する」ためのステッ

プとして「デザインやアート、スポーツなど様々な分野の人がアイデアを出し合い、

観光資源を進化させ、札幌を訪れる人に感動を与えること」が重要であるとしている。

さらに、2018 年の「札幌観光まちづくりプラン改訂版」では、「観光まちづくり」

を「市民がその地域ならではの風土や文化などを積極的に楽しみ、その魅力的なライ

フスタイルを訪れる人々と共有し、市民と来訪者とのふれあいやつながりを深めるこ

とにより、滞在性や再訪性の高い都市観光の創造と観光関連産業の持続的な成長を目

指す取組」(p.40)としたうえで、以下の3ステップの循環により、産民学官が連携

する観光まちづくりの実現を目指すこととしている。

Page 5: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

1.業務の概要

2 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

○ 地域の特性を生かした魅力の創造

○ 市民が都市観光を自ら楽しみ育てる環境づくり

○ 観光関連産業の持続的成長を支える担い手づくり

具体的には、この目標像に向けて、2018 年から 2022年までの期間について、以下

の4つの基本方針に基づいて、取り組むこととしている(p.49)。なお、基本方針2

では、「様々な札幌のツーリズム(着地型観光サービス)が醸成されてきており、今

後はこれを活用していく段階であるという視点」が追加され、改定がなされている。

○ 基本方針1 札幌・北海道の魅力を生かした観光の創造

○ 基本方針2 受入サービス・おもてなしの向上と着地型観光の促進

○ 基本方針3 滞在・周遊・再訪を促進する情報提供の強化

○ 基本方針4 未来を創造していくプロモーションの展開

これらの基本方針のもと、主な方向性として打ち出されている項目のうち、特に

札幌圏の多彩な文化施設・文化事業の魅力を活かした新たな展開という観点から関わ

りが深いと思われる項目を以下に抜粋する(pp.52-53)。

1-3 文化・スポーツ観光の創出

○ 定番観光資源の歴史性や文化性をクローズアップし、眺めるだけではない、

厚みのある観光を提供します。

1-5 特色あるイベント展開による集客交流の促進と周遊促進

○ 芸術の森、札幌コンサートホールKitara、モエレ沼公園、市民交流

プラザ(平成 30(2018)年 10月オープン予定)、パシフィック・ミュージ

ック・フェスティバル(PMF)、サッポロ・シティ・ジャズ、国際芸術祭

など、札幌の文化芸術の魅力を生かした都市観光を推進します。

1-7 観光コンテンツの魅力アップ及びプロモーションの促進

○ モエレ沼公園・さとらんど周辺、歴史的建造物など、観光資源としての魅

力をさらに高めるために、これらの地域のまちづくりについて観光の視点

でマネジメントしていくことを検討します。

夜景などの観光コンテンツの魅力を高めるとともに、新しい観光コンテン

ツを創出することで、地域の魅力あふれるまちづくりと観光振興の一体的

な推進を図ります。

Page 6: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

1.業務の概要

3 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

2-1 着地型観光コンテンツのPRと担い手育成

○ 体験観光などの着地型観光コンテンツの担い手の起業支援や人材育成に取

り組みます。

○ 着地型観光コンテンツを活用した集客、滞在を促進するため、魅力発信・

PR活動に取り組みます。

以上をふまえると、札幌における文化ツーリズムに求められているのは、札幌の

多様な文化資源の魅力を活かし、札幌市民も楽しめるような着地型・体験型のコンテ

ンツを提供することで、滞在性や再訪性の高い都市観光の充実に寄与することだとい

える。

そこで、本業務では、札幌における「文化ツーリズム」の可能性を、現時点では

潜在的な状況に留まっているものも含めて、広く探るため、「文化ツーリズム」を歴

史や伝統に留まらず、「地域固有の多様な文化資源をめぐる中で、それを支えてきた

『人』や『場所」など背景にある「ストーリー」を体感し、ツーリズムを通じて地域

への愛着の向上を図るもの」と捉えることとする。

なお、一定のテーマ性を持った「ストーリー」を構築できるよう、「文化ツーリズ

ム」を構成する柱となる展開軸を札幌の地域特性も勘案して以下の 2点と仮定したう

えで、調査検討を行っていく。

展開軸1

歴史文化

◆仮テーマ

「建築物(文化財)を核とする地域の歴史のストーリーテリング」

◆目指す内容

長い時間軸の中で蓄積された、縄文時代の遺跡やアイヌ文化、開拓使設置以来約 150

年間の急速な近代化・都市化の歩みなどの魅力の中で、特に文化財に焦点を当てそ

の魅力を掘り起こし、国内外からの観光客に向けた観光スポットを形成すること。

展開軸2

アート・ クリエイティブ

◆仮テーマ

「知的欲求を満足させる文化芸術・クリエイティブ体験」

◆目指す内容

既に札幌市民が親しんでいる各種の文化イベントや文化施設等での体験型事業につ

いて、題材や広報手段の工夫を加え、市外(主に国内を想定)から訪れる人向けの

魅力度やアクセスを向上させることで、観光コンテンツの幅を広げること。

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1.業務の概要

4 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(3) 業務の構成

本事業では、札幌における文化ツーリズムの可能性を探るため、①他都市の文化ツ

ーリズム事例調査、②札幌圏の文化ツーリズム実態調査、③モニターツアーの実施・

検証を行うとともに、これらの結果を分析し、④札幌圏における文化ツーリズム事業

の今後の展開に関する提案を行う。業務内容と本報告書の章立てとの対応関係は下図

のとおりである。

(業務の構成及び報告書各章との対応関係)

①札幌圏の文化ツーリズム実態調査

(第3章)

・有識者ヒアリング調査 ・有識者意見交換会(ワークショップ)の開催 ・統計資料を元にした観光客意識分析

③モニターツアーの実施・検証

(第4章)

・モニターツアー企画・実施 ・参加者アンケート等の分析・検証

④今後の展開に関する提案

(第5章)

・札幌圏の文化ツーリズム振興に向けた検討課題 ・札幌圏の文化ツーリズムに関する展開案

②他都市の文化ツーリズム事例調査

(第2章)

・観光庁調査 ・他都市事例に関する文献調査

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2.文化ツーリズムに関する国の施策・動向

5 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

2.文化ツーリズムに関する国の施策・動向

国においては、観光立国推進基本法に基づいて、観光資源の活用による地域の特性を

活かした魅力ある観光地の形成に取り組んでおり、本調査で定義する「文化ツーリズム」

のように、地域の観光資源を活かしたテーマ性の高い体験型プログラムの造成を支援し

ている。

(1)観光庁の調査

観光庁では、強いテーマ性、体験型・交流型による地域の観光資源を活かした新し

い展開として、着地型の滞在プログラムの造成、普及促進など「ニューツーリズムの

振興」、平成 28年度以降は「テーマ別観光による地方誘客事業」に取り組んできた。

これらの取組の中では、「テーマ別観光に取り組むためのプロセス」の要点が以下の

とおり指摘されており、先進地の持つノウハウや知見を関連する官民のステークホル

ダーと共有し、観光客のニーズ抽出やターゲット層の把握などの基礎調査を行い明確

なターゲティングや課題を抽出したうえで、満足度の高い商品を造成することが強調

されている。

① ネットワーク構築

共通資源を持つ地域間の産学等の多様な主体による連携

② マーケティング調査

・ 基礎調査やモニターツアーの実施

・ 観光客のニーズ抽出やターゲット層の把握

・ 観光資源や地域の抱える現状や課題の抽出

③ 受入環境整備

・ 多言語対応マニュアル化

・ ガイド人材育成

・ 受入環境整備

④ 情報発信・PR

・ 旅行博出展

・ ホームページ、ガイドマップの作成

【出典】

観光庁 ニューツーリズムの振興:

http://www.mlit.go.jp/kankocho/page05_000044.html

観光庁 テーマ別観光による地方誘客事業:

http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/theme_betsu.html

観光庁 テーマ別観光へ取り組むためのプロセス:

http://www.mlit.go.jp/common/001281629.jpg

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2.文化ツーリズムに関する国の施策・動向

6 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(白紙ページ)

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

7 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

(1) 他地域事例調査

1) 対象選定の考え方

国内他地域における先進事例の調査にあたっては、札幌での今後の展開の参考例を

提示できるよう、以下の4点の着目ポイントのいずれかを満たす事例を選定した。

① 地域の多様な文化資源を活用した体験ツアー

地域固有の多様な文化資源を発掘し活用するという視点で企画されている事例

例) ・歴史文化を深く知るガイドツアー

・地域の伝統工芸や産業を活かしたものづくり体験

・特別感のある体験

② 持続的な事業スキーム

単発的な事業ではなく母体となる組織が存在し、観光事業としての収益性にも配

慮しながら、地域の文化ツーリズムのコンテンツ開発に取り組んでいる事例

例) ・公的機関の観光事業を軸とした体制

・市民主体のまちづくり NPO活動等を基盤とした体制

・民間事業者の収益事業

・収益性に配慮したまち歩き・体験ツアー商品の価格設定

③ 連携・市民参加

文化資源を有する地域の活動団体や事業者とのネットワーク、有識者や住民ガイ

ドとの連携による運営に取り組んでいる事例

例) ・他団体や有識者との連携による企画運営

・継続的なガイド育成の仕組み

・市民公募による資源の掘り起こし

④ 効果的な情報発信

個人旅行化の流れに対応した着地型観光の情報発信として、ウェブサイトや SNS

等を通じたコンテンツ紹介に効果的に取り組んでいる事例

例) ・容易な検索・予約システム

・ホームページ・SNS等を活用した情報発信

・宿泊施設を窓口とする誘客

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

8 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(2) 調査対象と調査項目・内容

前節で設定した「対象選定の考え方」に基づいて、以下の6事例を抽出した。

① 金沢 金沢クリエイティブツーリズム

② 弘前 まち歩きひろさきレッツゴー(路地裏探偵団)

③ 名古屋 大ナゴヤツアーズ

④ 関東圏 関東ポケカル

⑤ 長崎 長崎さるく

⑥ 福岡 福岡市公式シティガイド YOKA NAVI(よかなび)

各事例と前節で設定した4つの着目ポイント(地域の多様な文化資源を活用した体

験ツアー、持続的な事業スキーム、連携・市民参加、効果的な情報発信)ごとの事業

概要は【別表1】のとおりである。

対象事例から考察した文化ツーリズムの優良事例の特徴や課題を「(3)先進事例の

考察」に記載する。

各事例についての詳細は、以下の項目ごとに事業概要を整理し、「(4) 先進事例の

詳細」に記載する。

① 開催主体

② 事業概要

③ 実施体制

• 事務局

• 協力・連携団体等

• その他個人との連携

④ 活動の背景

⑤ 事業構成

⑥ 取組事例

⑦ 情報発信

なお、本章の記載内容については、文献調査から執筆者が分析したものであり、

各主催者へのヒアリングや記載内容の確認は行っていないことに留意されたい。

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

9 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(3) 他地域事例のまとめ

他地域事例調査の考察から、設定した調査のポイントごとに文化ツーリズムの可能

性と課題を以下にまとめる。

① 地域の多様な文化資源を活用した体験ツアー

地域固有の多様な文化資源を発掘し活用するという視点で企画すること、地域の有識

者やアーティスト、あるいは市民ガイドなどの地域のひとと触れあう仕組みや、普段

立ち入れない場所の公開など、特別感を与える企画を掘り起こしていくことが必要で

ある。

A)歴史文化を深く知るガイドツアー

特徴 歴史的建造物や文化財、史跡、景観ポイントなどそれぞれ単体を紹介するので

はなく、歴史文化を深く知る明確なテーマを設定し、ツアーガイドによる案内

を行う。

参考事例 【長崎さるく】では、歴史的資産を中心にストーリー立てられた 32 のまち歩

きガイドコースが通年で用意されている。事前予約制だが柔軟な時間設定、

1,000~2,000 円程度の参加しやすい料金設定となっている。また、さらにま

ちを深く探求できるメニューとして専門家による講座や体験を加えたツアー

がある。これらは、シーズンごとに公募され審査に通過した企画を実施するこ

とで、常に新鮮で多様なコンテンツが提供されている。 札幌展開

に向けた

課題

知的欲求を刺激する深いテーマ設定とそれらを掘り起こす仕組みづくり、ガイ

ドの確保・育成を合わせて考える必要がある。

B)地域の伝統工芸や産業を活かしたものづくり体験

特徴 地域の伝統工芸や企業文化などを取り入れたものづくり体験は文化ツーリズ

ムのコンテンツとなり得る。

参考事例 【大ナゴヤツアーズ】では、タイル製造日本一のまちでの工場見学・オリジナ

ルのタイルを使った鍋敷き作りをツアーとしている。 【まち歩きひろさきレッツゴー】では、弘前から世界的ブランドとなった「ブ

ナコ」を使った器づくり、津軽の手しごと「こぎん刺し」体験などが実施されて

いる。 札幌展開

に向けた

課題

どこでもできるものではなく、地域ならではの素材、伝統文化、企業のものづ

くり技術などがあってこそ実施が可能なプログラムである。他の地域に負けな

い訴求力のある素材や商品と関連づけて企画する必要がある。 C)特別感のある体験

特徴 地域ならではの文化資源を活かし、かつツアー商品の価値を高めるプログラム

の一つとして、普段見ることができない地域に根差した作家のアトリエや建築

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

10 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

を開放し、ツアーコースに取り入れることが考えられる。作家や設計者との直

接的な交流も特別感を得るものとなる。

参考事例 【金沢クリエイティブツーリズム】では、不定期でアトリエ・建築訪問を実施

する他、金沢アートコンシェルジュ(オーダーツアー)、パスポートによる自

由見学タイプのオープンスタジオデーを実施している。一方、これらのツアー

を企画・実施するには、アーティストや建築家などとの人的ネットワーク・信

頼関係が必要不可欠であり、金沢では事業推進の中枢を担う NPO法人にアート

マネジメントなどに長けた人材がいることがポイントとなっている。

【大ナゴヤツアーズ】が実施したプログラムにも、普段は入れない採石場見学

と石のコースターづくり、建築設計事務所で模型づくりなど特別な体験にこだ

わったものがある。

札幌展開

に向けた

課題

既存の観光施設や場所だけではなく、日常のまちに埋もれている特別な体験を

探し出す視点が重要である。

② 持続的な事業スキーム

持続的・自立的な事業運営を成立させるためには、母体となる組織が存在し、観光事

業としての収益性にも配慮しながら、地域の文化ツーリズムのコンテンツ開発に取り

組む必要がある。

A)事業体制 1 公的機関の観光事業を軸とした体制

特徴 公的機関の事業の中に、文化ツーリズムによる観光客誘致の柱を明確にたて、

その事業に市民・民間団体が関与する体制をつくることで、持続的な事業のた

めの安定的な経済基盤を構築している。

参考事例 【まち歩きひろさきレッツゴー】は、公益社団法人弘前観光コンベンション協

会を事業主体に、弘前市と周辺市町村による実行委員会が運営する基本体制と

なっている。ガイドの個性を活かし街角の裏話を伝える弘前路地裏探偵団も、

元々はコンベンション協会がプロデュースしたものである。

【長崎さるく】は、市民が主体となってコースづくり・ツアーガイドを実施す

る取り組みだが、前身の長崎さるく博’06 を立ち上げる段階から、行政が裏

支えし、経済団体、公的団体、市民団体をまとめて組織化してきた。また、現

状、事業推進に関する運営事務局機能は、社団法人長崎国際観光コンベンショ

ン協会に置かれている。 札幌展開

に向けた

課題

文化ツーリズム事業の推進にあたっては、まず、事業の目的・目標指標等を明

確にした上で、行政と企業、市民の役割の議論や推進体制のデザインが必要で

ある。

B)事業体制 2 市民主体のまちづくり NPO活動等を基盤とした体制

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

11 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

特徴 NPOなどのまちづくり活動を母体に、ボランタリーな力を活かしながら自立運

営を目指すことも考えられる。

参考事例 【金沢クリエイティブツーリズム】は、運営事務局を NPO法人金沢アートグミ

が担い、そこを核として大学教員、建築士、デザイナー、地域プランナーおよ

び市内の工芸作家やアーティスト、ボランティアガイドなどの個人が企画・運

営に関わっている。

【大ナゴヤツアーズ】は、まちを面白くしたい市民が自主的に集まりイベント

や講演会等を企画実施する大ナゴヤ大学から派生したツアー事業である。運営

母体は、大ナゴヤ大学同様 NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワーク

が担っており、プログラムの掘り起こしなどもボランタリーな市民活動が支え

ている。 札幌展開

に向けた

課題

柱となる人材や組織の存在あるいは育成が前提条件となる。

初期段階では、ツアー事業だけで収益性を担保するのが難しいことから、経済

的支援の仕組みづくりなどが課題となる。

C)事業体制 3 民間事業者の収益事業

特徴 着地型観光事業者が収益事業として実施する取組みである。

参考事例 【関東ポケカル】は、株式会社が主体となって、収益事業として取り組んでい

る事例である。月間で 200件の多様なメニューが提供されている。 札幌展開

に向けた

課題

A)、B)同様に、ある程度の事業規模が確保できないと、収益性の担保が難し

いと推察される。また、公的団体が推進する文化ツーリズムの方針と整合性の

ある施策を実施するためには、補助金や連携協定などを通じて、一定のインセ

ンティブを付与する仕組みを用意する必要があるだろう。

D)収益性に配慮したまち歩き・体験ツアー商品の価格設定

特徴 持続的な事業運営を行うためには、安定した事務局体制のほか、ツアーの実施

と事務局経費の両方を賄うことのできる価格設定での商品開発が必要となる。

参考事例 公的な「まちづくり」や「市民参加」に重きをおいていると思われる「A)事

業体制 1 公的機関の観光事業を軸とした体制」の【まち歩きひろさきレッツ

ゴー】や【長崎さるく】では、2時間 1,000円台からのツアーを提供している。

一方、事業としての継続性を重視していると思われる「C)事業体制 3 民間事

業者の収益事業」の【関東ポケカル】や「B)事業体制 2 市民主体のまちづく

り NPO活動等を基盤とした体制」の【金沢クリエイティブツーリズム】や【大

ナゴヤツアーズ】では、2時間 2,000 円台からのツアーを提供している。 札幌展開

に向けた

課題

収支のバランスがとれた事業を構築し、観光事業として自走化を目指すという

観点では、後者の参考事例のように、一定以上の価格帯で集客可能なコンテン

ツを掘り起こしていく必要がある。

一方、市民が主体的に地域の魅力を発掘し、紹介していくといったプロセスを

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

12 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

通じて地域のまちづくりに与える社会的インパクトを重視し、より市民参加型

の事業構築を行う場合には、具体的な社会的インパクトに関して目標設定を行

う必要があるだろう。

③ 連携・市民参加

文化資源を活かしたツアー事業を通じて、持続的に観光による経済を盛り上げ、魅力

的な都市をプロモーションしていくためには、常に新しいコンテンツを掘り起こして

ツアープログラム化していくための人材と仕組みづくりが必要である。

A)他団体や有識者との連携による企画運営

特徴 主催者のネットワークを活かして、美術館や博物館などの文化施設、民間事業

者、まちづくり団体、大学等の教育機関など、地域の様々な団体と連携し、そ

れぞれが得意とする分野のツアーを企し、特別な場所の公開や有識者ガイドな

ど協力を得ることで、地域の観光コンテンツの掘り起こしや特別感のある体験

を作り出している。

参考事例 【大ナゴヤツアーズ】では、テーマに応じてその道のプロがガイドとなること

で、特別感のある体験を提供している。

札幌展開

に向けた

課題

文化ツーリズムのコンテンツを掘り起こしていくという面では、必須となる要

素であり、事務局の人的ネットワークが求められる。

また、取組みに協力することで、各団体にどのようなメリットがあるか説得力

を持って伝えていくことも協力を得るために重要であると考えられる。

B)継続的なガイド育成の仕組み

特徴 ツアーの価値を高め売れる商品にするためには、まちの深い魅力や知識を伝え

ることができる地域のガイドの役割が大きい。

参考事例 【長崎さるく】では、毎年ガイド研修を実施し、コースごとに「さるくガイド」

を養成している。ガイドはすべて市民で、ガイド自らの創意工夫により、まちへ

の愛着や日常生活の話がされるのが特徴である。また、市内の大学のカリキュ

ラムに「さるく学入門」が組み込まれ大学生のガイドを養成するとともに、ツア

ープログラムを企画している。

【まち歩きひろさきレッツゴー】では、幅広い分野・世代のメンバーが「路地

裏探偵団」として活動し、ガイドひとりひとりのキャラクター・人間力を活か

して、個性的なツアーを企画・実施している。 札幌展開

に向けた

課題

既存の観光ボランティアスタッフとの連携や商品として提供するにあたって

の適切なガイド技術の共有・蓄積、継続的なガイド育成手法の構築、ツアーメ

ニューとガイドをマッチングする事業運営体制などが課題である。

C)市民公募による資源の掘り起こし

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

13 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

特徴 各種の団体が組織として保持している文化ツーリズムの資源だけでなく、市民

ひとりひとりの生活体験に根ざした資源の掘り起こしが行われ、地域として持

続的に観光資源の掘り起こしを行うために公募企画が実施されている。

参考事例 【長崎さるく】では、個人・団体・企業などから広くコンテンツの企画を募集

している。採用された企画は、企画者自身が当日のガイドを実施することとな

る。また、目安として参加者 10 名未満の場合、次期は同様の企画を実施しな

いという厳しいルールも設けられており、プログラムのクオリティ向上につな

げている。

札幌展開

に向けた

課題

ガイド育成の仕組みづくりと同様、事業の運営体制、行政と企業・市民との連

携方法とあわせて考えていく必要がある。

④ 効果的な情報発信

個人旅行化の流れに対応した着地型観光の情報発信として、ウェブサイトや SNS 等を

通じたコンテンツ紹介に効果的に取り組んでいくことが必要である。

A)容易な検索・予約システム

特徴 先進事例に共通して、ホームページ上の専用フォームでツアープログラムを検

索・予約できるシステムを実装している。

参考事例 特に【福岡市公式シティガイド YOKA NAVI】では、旅行者の閲覧を想定し、ス

マートフォンでの閲覧・利用に最適化した設計がされている。この検索システ

ムは、食や自然体験、みやげなどの観光コンテンツ、文化関連施設・文化財情

報とあわせて公式ウェブサイト上に掲載されている。

【長崎さるく】では、通年で用意されているまち歩きプログラムのページに、

関連するコース情報を掲載し、他の観光行動への誘導を図っている。

札幌展開

に向けた

課題

中長期的な視点に立ち、コンテンツの掘り起こしの仕組みとあわせてホームペ

ージの全体システムを検討する必要がある。その際には、施設単位での情報発

信ではなく、横断的にパッケージ化された文化・観光情報の発信が求められる。

B)ホームページ・SNS等を活用した情報発信

特徴 情報の更新性が高く、体験プログラムの魅力・イメージを伝えるレポートなど

を掲載することが効果的である。

参考事例 【大ナゴヤツアーズ】では、最新情報の発信は twitterを、Facebook、Instagram

には募集告知のほか、開催後の様子を記録した写真を Instagramで掲載してい

る。

【関東ポケカル】では、ツアー後のレポートを「ポケカルおでかけ通信」とし

てまとめており、一部過去のツアー状況を閲覧できる。

Page 17: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

14 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

札幌展開

に向けた

課題

これらの運営には、多くのマンパワーを要するため、トータルのホームページ

の管理・運営体制とあわせて検討する必要がある。

C)宿泊施設を窓口とする誘客

特徴 事業手法の一つとして、ホテルやゲストハウスなどと連携して、宿泊施設の滞

在者をメインターゲットとしたツアー事業が考えられる。宿泊施設のレセプシ

ョンをツアー窓口にすることで、滞在者をまち歩きツーリズムに促すことがで

きる。

参考事例 【金沢クリエイティブツーリズム】では、HATCHi(リノベーションホテル)を

拠点に、毎週土曜日 16:00から 2時間のプログラム(チェックインから夕食ま

での時間)で周辺に点在するクリエイティブなスポットを巡るツアーを実施し

ている。 札幌展開

に向けた

課題

このような事業を展開するには、ガイドの手配などが課題となると想定され

る。まずは、第一段階として宿泊施設に周辺地域の文化的資源をまわるツアー

コースを紹介するマップツールなどを配備することも考えられるだろう。

Page 18: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

15 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

4) 他地域事例の詳細

前節「(3) 他地域事例のまとめ」で提示した各事例の詳細情報を以下に記載する。

なお、記載内容については、主催者の公式ウェブサイトを中心に文献調査を行った

もので、主催者等への確認は行っていない。参考資料や画像の出典は本節末尾に一括

して掲載している。

① 金沢 金沢クリエイティブツーリズム

② 弘前 まち歩きひろさきレッツゴー(路地裏探偵団)

③ 名古屋 大ナゴヤツアーズ

④ 関東圏 関東ポケカル

⑤ 長崎 長崎さるく

⑥ 福岡 福岡市公式シティガイド YOKA NAVI(よかなび)

各事例についての詳細は、以下の項目に分けて事業概要を整理し、情報が入手でき

なかった項目については、空欄とした。

① 開催主体

② 事業概要

③ 実施体制

• 事務局

• 協力・連携団体等

• その他個人との連携

④ 活動の背景

⑤ 事業構成

⑥ 取組事例

⑦ 情報発信

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

16 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

① 金沢クリエイティブツーリズム

1 開催主体

主体 NPO 法人金沢クリエイティブツーリズム推進機構

事業開始年 2009年

公式サイト http://www.kanazawacreativetourism.jp/

2 事業概要

概要 市内に点在しているアーティストや工芸作家のスタジオやアトリエ、近代

建築や町家・茶室など、文化的なスポットを巡りながら、「創造都市金沢」

の深い魅力を味わう試み。

3 実施体制

事務局 <NPO 法人金沢アートグミ>

• 「金沢まちづくり市民研究機構」で 2006 年から 3年間に渡りアートに

よるコミュニケーションの研究を行ってきたメンバーが中心となって

生まれた NPO 法人。

• 2009 年 4 月に金沢の北國銀行武蔵ヶ辻支店の 3 階にギャラリーをオー

プンし、この場所を拠点に、展覧会、シンポジウム、ワークショップ

など、様々なイベントを催している。

• また、北陸地方のアートの「今」がわかる情報を発信。金沢を中心に

北陸の展覧会、ギャラリーを紹介し、人とアートと街のためのコミュ

ニケーションのきっかけをつくっている。2017 年 1 月に認定 NPO 法人

を取得。

協力・連携団

体等

NPO 法人趣都金澤、株式会社ノエチカなどが補助的立場で対応をしている。

また、金沢 21世紀美術館との連動企画も多い。

その他個人

との連携

テーマ・内容に応じて、大学教員、建築士、デザイナー、地域プランナー

および市内の工芸作家やアーティスト、ボランティアガイドなどの個人が

企画・運営のスタッフとして関わっている。

4 活動の背景

活動の背景 • 金沢市が 2009年にユネスコ創造都市ネットワークに認定されたのを受

け、同年に活動を開始した NPO 法人金沢アートグミの中で、創造都市

のあり方を検討。同じ工芸部門で創造都市となった米サンタフェ市が

推進する”creative tourism”の概念を参考に、まちなか回遊型の方

向性が、金沢のアート資源の分布状況とこれまでのアートプロジェク

トに合致するとして「金沢クリエイティブツーリズム」構築に向けた

Page 20: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

17 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

動きがスタートした。

• 金沢 21 世紀美術館のコンセプトの中に、新たな「まちの広場」や「ま

ちに開かれた公園のような美術館」が謳われ、これに呼応して美術館

と連携し来館者をまちなかに呼び、アートスペースを回遊させる動き

が興った。

• 2009 年から社会実験として「チャリ de アート」を開始。コンセプト

は「アートスペースを巡るのに相応しいアートなレンタサイクル」だ

った。前年の「金沢アートプラットフォーム」(まちなかに多数の作品

展示)で、適切な移動手段としてレンタサイクルへの期待の高まりをき

っかけに事業化。(※現在は、独立した運営団体は存在しない)

5 事業構成

事業構成 アートスポットを発掘整理し、それらを繋げたり公開したりするツーリズ

ム事業と、アートスポットを回遊するのに相応しいアート感覚溢れるレン

タサイクルを運行するチャリ deアート事業の2つの事業部門で構成されて

いる。

公開されている直近の事業報告書(平成 29年度)では、以下の4つの方針

に基づき事業が展開されている。

<事業方針―1:ツアーの定常開催/ツアー資源の発掘・充実>

◇金沢クリエイティブツアーの開催

• HATCHi 発着ツアー:毎週土曜日夕方の定期開催、11カ月間で 13回

開催。25名の参加(うち外国人 3名)。

• オーダーメイドツアー:2つのコースがあり、アトリエ探検が 3回

で合計 33名の参加、味見コースは 3回で合計 8名の参加。

◇作家との交流サロン

• ローカルツーリズムを話し合うトークイベントを開催(約 50 名の

参加)。ゲストに、アトリエ探検のモニタリングを実施、ツーリズ

ムの資源性と課題についてアドバイス。

◇オープンスタジオデー

• 金沢市内で制作する作家のスタジオを自由にパスポートで巡るツ

アー(平成 29年度は実施なし)。

◇モニタリングツアーとコースの設定

• スタッフによるスタディツアーの開催。新たなエリアでのエスコー

トツアーとして、毎月 1回のまちあるきツアーを企画開催(毎回 10

名前後の参加者)。

• その他、アーティストのニーズ確認調査。

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

18 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

<事業方針―2:客層開拓>

◇利用者の意向調査結果の分析

• 少人数ツアー終了後にアンケート調査を実施。

◇webでの情報発信強化

• SNSを活用した開催内容の告知。

• TRIP ADVISORでの参加者の評価・コメント など

◇市内宿泊施設への「アトリエ探検コース」の告知営業推進

• 東京のラグジュアリーホテルのコンシェルジュとそのパートナー

エージェントのモニタリングツアーの実施(インバウンドツアーの

企画依頼へ展開)。

• ホテル・ゲストハウスにツアーリーフレットを配備。

<事業方針―3:人材育成>

◇ガイド養成講座

• 金沢 21 世紀工芸祭の「KOGEIさんぽのボランティアガイド講座」を

実施。

◇外国人対応ガイドの確保「市内限定通訳案内士」への呼びかけ

• ボランティアガイド講座受講生が外国人客のエスコート役を担当。

<事業方針―4:事務局体制の充実>

◇常勤スタッフの雇用

• 月 70 時間程度の勤務が可能なスタッフを雇用(ツアーのエスコー

ト、情報発信、会計事務を担当、事業人件費は約 60万円)

6 取組事例

オープン

スタジオ

デー

金沢市内で制作する気鋭の作家のスタジオを一般に開放し、自由に見て回

る予約不要のプログラム。

フリープログラムは、参加費 1,000 円のパスポート制となっている。その

他、別途参加費 5,000 円(昼食付)のスタジオ&ギャラリーバスツアー、

参加費 2,000 円(お茶付)のスタジオバスツアー、参加費 1,000 円(お茶

付)の自転車ツアープログラムが用意されている(2015 年)。

オープンスタジオデーの様子

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

19 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

HATCHi 発着

ツアー

HATCHi(株式会社リビタが運営するシェア型リノベーションホテル)周辺

に点在するクリエイティブなスポットを巡るツアー。

毎週土曜日 16:00 から 2 時間のプログラムで、シェアホテル滞在者をメイ

ンターゲットにチェックインから夕食までの 2時間を想定している。

料金は、2,500 円/人(2人以上のグループの場合は 2,000 円/人)、定員は 8

名。

金沢アート

コンシェル

ジュ(オーダ

ーツアー)

事前予約制(3 日前まで)のツアーで、「アトリエ探検コース」と「まちあ

るき味見コース」の 2つのプログラムがある。

いずれのコースも 2名からの参加が可能で小人数ツアーに対応している。

アトリエ探検コースは、普段は入ることができない作家のアトリエを訪問

する 3 時間半のコース。作品が生まれる空間の中で、作家本人とコミュニ

ケーションできるのが魅力となっている。料金は 6,000円/人。

まちあるき味見コースは、2時間半でまちなかに点在する創造的な文化スポ

ットをめぐるガイドツアー。陶芸工房や甘味処、骨董屋、町家を改装した

図書館、ギャラリーやオルタナティブスペース等々、金沢の暮らしに息づ

く創造性を味見するコースとなっている。料金は、3,000 円/人。

金沢アトリ

エ訪問/金沢

建築訪問/

クリツー厳

選ツアー

不定期的に個別ツアーとして、金沢 21世紀美術館の展覧会と連動したギャ

ラリーツアーや建築家協会やボランティアガイド、設計者と連携した建

築・街並みツアーなどを実施している。

HATCHiエントランス空間 HATCHi発着ツアーの様子

アトリエ探検コース まちあるき味見コース

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

20 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

金沢クリエイティブツーリズムの実績(2017年 7月~2018年 5月)

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

21 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

7 情報発信

ウェブサイ

ホームページはマガジンスタイルのアーカイブとして運用し、最新情報の

発信は Facebookをメインに活用している。

金沢アートコンシェルジュについては、専用の予約フォームを設けている。

金沢クリエイティブツーリズム推進機構 ホームページトップ画面

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

22 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

8 課題

ツアーの

開催体制

常勤スタッフを配置し、各種ツアーの受入体制も整ってきたと成果報告さ

れているが、一方で増加する外国人参加者へのエスコートの充実が課題と

なっているようである。外国人のオーダーメイドツアーの料金設定、通訳

案内士のガイド料金について検討課題とされている。

顧客獲得の

ための情報

発信

告知効果の小さいリーフレット媒体に代わる手法が求められている。

ツアー体験者の口コミを活かした顧客獲得のための情報発信手法が必要と

なっている。

具体的には、参加者への TRIP ADVISORでの評価・コメントの徹底、宿泊施

設コンシェルジュのモニタリング、参加者メーリングリスト作成などが考

えられている。

ツアープラ

ンの企画

個別の宿泊施設やエージェントに対応して、オリジナルのツアープランを

提示していく必要があるとされている。特別ツアーの企画収入が活動基盤

の強化につながっている。

その際に、アーティスト側のニーズやまちあるきのツアー資源もあわせて、

データベースを構築していくことが必要となっている。

財源の確保 平成 29 年度の経常収益はトータル 565,385円で、内訳は正会員会費 60,000

円、ツアー収益 290,500 円、チャリ収益 46,800 円、企画収益 80,000 円、

雑収益 88,079 円となっている。NPO の賛助会員費は全くなく、協賛企業の

獲得と個人年会費徴収が課題となっている。

事業費は、人件費に 630,000 円、その他経費に 204,979 円が支出されてお

り、単年度ではバランスがとれていない状況である。

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

23 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

② まち歩きひろさきレッツゴー/路地裏探偵団

1 開催主体

主体 津軽・ひろさき街歩き観光推進実行委員会

事業開始年 2010年

公式サイト http://machi-aruki.sakura.ne.jp/

2 事業概要

概要 弘前市を中心とした広域をフィールドに募集型企画旅行形式で「徒歩で街

歩き」「タクシーで巡る」「季節限定」「食を楽しむ」「伝統文化・工芸体験」

などのツアーを行うほか、市民がその個性を活かして生活空間や路地裏を

メインフィールドに街歩き観光を実施するツアーガイド等を実施。

3 実施体制

事務局 津軽・ひろさき街歩き観光推進実行委員会は、弘前市を中心とした「街歩

き観光」の取り組みに、周辺の黒石市、平川市、大鰐町、藤崎町、西目屋

村、田舎館村が加わって新たに発足した中南津軽地域 7市町村による組織。

公益社団法人弘前観光コンベンション協会内に事務局を設置。

ガイドツアーの企画運営は、公益社団法人弘前観光コンベンション協会内

の事務局が担っており、協会の旅行業運営事業に位置付けられている。

平成 29 年度から、着地型旅行商品販売事業の中で、街歩きツアー約 30 コ

ースの企画・販売と団体の体験型メニューの受入を実施している。

ツアー料金は、1,000円程度のものから、移動実費・体験講師料・材料費な

どを含めて 10,000円程度のものまで幅広いが、収支規模は約 1,100 万円程

度となっており、企画運営費にかかる人件費などは自治体からの補助金に

よるものが大きいと想定される。公益的団体であることが運営基盤を安定

的にしている。

協力・連携

団体等

ツアーガイドについては、テーマ・地域に応じて様々な団体と連携してい

る。

・「弘前城 2時間 1本勝負!」「禅林街界隈 寺町さんぽ」など:弘前観光ボラン

ティアガイドの会

・「和菓子づくり&日本庭園でいただく抹茶」「弘前の代官山!代官町雑貨屋めぐ

り」「どてまち まるごと探検隊!」など:たびすけ 合同会社西谷

・「農家蔵・農家庭園めぐり」:NPO 法人尾上蔵保存利活用促進会

・「謎解きプログラム!小さな園の大きな秘密」:平川市観光協会

・「江戸陣屋めぐりツアー」「本格ねぷたうちわ制作体験!」など:NPO法人横

町十文字まちそだて会

・「いいでば大鰐!いで湯の郷の魅力発見まちあるき」:OH‼鰐 元気隊

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

24 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

・「【座学】絵図を見ながら 弘前城下を空想散歩」:弘前大学教職大学院 教

その他個人

との連携

「弘前路地裏探偵団」という有志によるガイドの個性を活かしたツアーが

行われている。

平成 29年度事業報告書(公益社団法人弘前観光コンベンション協会)

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

25 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

4 活動の背景

活動の背景 -

5 事業構成

事業構成 <まち歩きひろさきレッツゴー>

実行委員会が実施・運営する募集型企画旅行メニュー。

ツアーコースは、「徒歩で街歩き」「タクシーで巡る」「季節限定」「食を楽

しむ」「伝統文化・工芸体験」の6つの目的別にカテゴリされている。

<弘前路地裏探偵団>

弘前の土地の人情や生活文化が最も凝縮した自分たちの生活空間や路地裏

をメインフィールドに街歩き観光を実施するツアーガイドである(平成 22

年 3月設立)。

弘前観光コンベンション協会の事務局長・坂本嵩氏が平成 21年からスター

トした「ひろさき街歩き事業」の中で「弘前路地裏探偵団」をプロデュー

ス。

6 取組事例

伝統文化・工

芸体験型の

ツアー

(まち歩き

ひろさきレ

ッツゴー)

地域の伝統文化や工芸体験を組み込んだツアーとして以下のプログラムが

実施されている(平成 31年 2月 web掲載情報)。

◆ブナコ製作体験タクシープラン

• 開催日・時間:通年、午前 9:15~13:05 午後 1:00~4:50(4 時間

程度)

• 内容:日本のインテリアブランドになった「ブナコ」製品。テーブ

ルウェア、照明、インテリアグッズ商品の中から、使いやすいサイ

ズの器作りを体験できる。(工場に隣接する BUNACO CAFE での昼食

を含んだプログラム。)

• 料金:16,000円/人

• 移動:タクシー

• 募集人員:20名(最小催行人数:2名~)

• 予約方法:参加日の 2週間前まで HP又は電話で予約。

ブナコ製作体験プログラムの様子

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

26 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

◆津軽の手しごと「こぎん刺し」体験とレトロ洋館散歩

• 開催日・時間:通年、午後 1:30~4:00

• 内容:中心商店街の土手町界隈に点在する教会や洋風建築などを見

学しながらまちなか散策をした後に、地元ご用達の手芸店で津軽地

方に伝わるひし形模様が特徴の刺し子手法を体験するプログラム。

弘前路地裏探偵団のお母さんガイドチームが案内役。

• 料金:2,500 円/人

• 移動:徒歩

• 募集人員:1~10名

• 予約方法:参加日の 3日前まで HP又は電話で予約。

◆和菓子づくり&日本庭園でいただく抹茶

• 開催日・時間:通年、午前 9:00~12:00 午後 1:00~5:00 (2時

間程度)

• 内容:和菓子屋職人の手ほどきによる日本伝統の和菓子を手作り体

験(季節の生菓子を3~4つ)。体験後、藤田記念庭園を散策する

プログラム。

• 料金:4,000 円/人

• 移動:徒歩

• 募集人員:3~10名

• 予約方法:参加日の 7日前まで電話で予約。

こぎん刺し体験プログラムの様子

和菓子づくり体験プログラムの様子

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

27 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

◆本格ねぷたうちわ制作体験!

• 開催日・時間:平成 30 年は年 2 回、午後 1:30~3:30 (2 時間程

度)

• 内容:実際のねぷたまつりで運行された絵と竹骨を使い世界でひと

つだけのオリジナルうちわを制作するプログラム。

• 料金:2,000 円/人(スイーツセット付)

• 募集人員:15名まで

• 予約方法:参加日の 5日前まで HP又は電話で予約。

弘前路地裏

探偵団のツ

アー

弘前の土地の人情や生活文化が最も凝縮した自分たちの生活空間や路地裏

をメインフィールドに街歩き観光を実施するガイド事業。

ガイドには、公務員、弘前市内のホテルの支配人、WEBデザイナー、O

L、主婦まで幅広い分野・世代のメンバーが集まっているのが特徴で、ガ

イドひとりひとりのキャラクター・人間力を活かすことを強みとしている。

鬼軍曹ライライ・酒場探偵とったん・ナイトライダー小山など、タレント

のようなユニークなニックネームを持つガイドがいたり、「お母さんガイド

チーム アパ・テ・ドラ」のように個別の集まりを組んでいるものもいる。

◆夕暮れ路地裏散歩

• 開催日・時間:3月 1日~11月 30日 毎週木曜日 午後 5:30~7:00

• 内容:ガイドブックに載っていない名店、街角の裏話を個性的な探

偵団メンバーがガイド。

ねぷたうちわ制作体験プログラムの様子

路地裏探偵団のガイド

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

28 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

• 料金:1,500 円/人(飲食なし)

• 移動方法:徒歩

• 募集人員:10名(最小催行人数:1名)

• 予約方法:参加日の 3日前まで HP又は電話で予約。

冬期間限定

の文化的ツ

アー

◆冬の夜の洋館“迷宮”散歩

• 開催日・時間:平成 30 年 12 月 17 日~平成 31 年 2 月 28 日、毎週

日曜日 午後 5:30~7:00

• 内容:路地裏探偵団による夕暮れ路地裏散歩の冬期限定版スペシャ

ルツアー。飲み屋街のある路地裏から、イルミネーションと雪景色

の中の教会を探訪。

• 料金:1,500 円/人

• 移動方法:徒歩

• 募集人員:10名(最小催行人数:1名)

• 予約方法:参加日の 3日前まで HP又は電話で予約。

◆いながだでの田舎あるぎ~冬の田んぼアートコース!~

開催日・時間:平成 31年 2月 8日~11日、午前 10:00~午後 9:00の間の 30

分間

内容:まっさらな雪の上に足跡で幻想的な模様を描く「スノーアート」の

制作・展示を中心としたイベントにあわせたガイドツアー。田舎館村で活

冬期間限定でまわる教会・洋館建築

夕暮れ路地裏散歩の様子

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

29 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

動しているまちあるきガイド団体「田舎あるぎ衆」による観光ガイド。

料金:500円/人(展望所入館料含む)

移動方法:徒歩

募集人員:10名(最小催行人数:1名)

予約方法:参加日の前日まで HP又は電話で予約。(当日予約も可)

津軽まちあ

るき博覧会

2018

平成 30 年 9月 1日から 10月 31日まで、中南津軽地域 7市町村(弘前市、

黒石市、平川市、大鰐町、藤崎町、西目屋村、田舎館村)の街並みをパビ

リオンに見立て、7市町村すべてのまちあるきコンテンツを集約した「津軽

まちあるき博覧会 2018~FUKAGU‐ASAGU」を開催。イベントを通じて、新た

な観光資源の掘り起こしやツアープログラムの企画、関係主体とのネット

ワーク化を図っている。

田舎舘村のスノーアート

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

30 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

7 情報発信

ウェブサイ

街歩きツアーガイド情報は、ホームページ上で「目的」「日時」「スポット」

別に検索でき、ホームページの専用フォームで予約可能である。

まち歩きひろさきレッツゴーのツアー検索画面

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

31 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

③ 大ナゴヤツアーズ

1 開催主体

主体 大ナゴヤツアーズ実行委員会

事業開始年 2017年

公式サイト http://dai-nagoyatours.jp/unei.html

2 事業概要

概要 名古屋を中心とした生活圏(大ナゴヤ圏)にある、誇れる文化や、その土

地らしい面白さ、魅力的な人をセレクトし、「体験」「学び」「見学」「まち

歩き」などを通し、参加者自らが感動できるプログラムを企画・運営する。

ツアーには 1名から参加可能で、定員は 20名ほどの少人数制、参加費 2,000

円~、1時間~1日の日帰り体験プログラムとなっている。

料亭の若女将から酒蔵の蔵元まで、その道のプロだからこそ、ここでしか

出来ない体験を提供するバラエティ豊かなガイドが案内することも特徴で

ある。

3 実施体制

事務局 実行委員会の母体である NPO 法人大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワ

ークは、社会教育の推進、まちづくりの推進を図る活動などに取り組む NPO

団体。特定非営利活動法人シブヤ大学ノウハウ移転を通じた姉妹校として、

2009年 9月に一般市民の寄付金により開校し、企業、市民、行政と連携し

た地域振興に関するワークショップや講座を実施。

2017年度の登録学生数は 4,552人、うち 20代~30代が約半数。

「大ナゴヤ大学」で企画・実施した体験プログラムをセレクトショップの

ように集め商品・パッケージ化し、「大ナゴヤツアーズ」として事業化。

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

32 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

大ナゴヤ大学の概要

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

33 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

協力・連携

団体等

<やっとかめ文化祭実行委員会>

「芸どころ名古屋」の歴史・文化を、名古屋の街中で体感することができる

イベントの実施・運営団体。大ナゴヤツアーズの運営母体である NPO 法人

も構成団体となっている。(その他、名古屋市、(公財)名古屋市文化振興事

業団、(公財)名古屋観光コンベンションビューロー、中日新聞社、名古屋

観光ブランド協会)

地元作家が企画するストリート歌舞伎の演目や国の重要無形文化財にも指

定されている、尾張万歳などを織り交ぜ、伝統芸能と歴史文化だけじゃな

い、名古屋のまちそのものを体感するプログラムを約1か月の期間、名古

屋市内各所で開催。

文化祭の人気イベントのひとつである「まち歩きなごや」の企画・運営に

大ナゴヤ大学が協力している。

<公益財団法人名古屋観光コンベンションビューロー>

(財)名古屋観光コンベンションビューローは、名古屋ゆかりの武将や武家

文化など、歴史的な魅力を発掘し魅力ある観光資源にしようとするプロジ

ェクトに助成を行う「武将都市ナゴヤ」魅力発掘事業を実施。

そのプロジェクトの一つである、名阪近鉄旅行の企画の「武将都市ナゴヤ」

おもてなしバスツアーの実施を当日のコーディネートなども含めて大ナゴ

ヤ大学がサポート。

その他個人

との連携

-

4 活動の背景

活動の背景 「大ナゴヤツアーズ」は、「大ナゴヤ大学」の活動から派生して立ち上げら

れた体験プログラムである。

(大ナゴヤ大学は、「名古屋のいいところを発掘し、地域のファンを増やし

ていきたい」「住んでいる人に名古屋を『自分ごと』として考えてもらいた

い」という思いを原点に、まち・地域全体をキャンパスとして社会教育に

関する多様な講演会やイベントなどを通じて、地域密着型の生涯学習、新

たなコミュニティづくりに取り組む活動体。)

5 事業構成

事業構成 <募集プログラム>

名古屋を中心とした生活圏(大ナゴヤ圏)にある、誇れる文化や、その土

地らしい面白さ、魅力的な人をセレクトし、「体験」「学び」「見学」「まち

歩き」などを通し、参加者自らが感動できるプログラムを企画・運営する。

<オーダーツアー>

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

34 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

過去に実施したツアーを団体旅行、会社の研修旅行等にあわせてオーダー

メイドで運営。大ナゴヤツアーズでの最低参加費 2000円×定員 20名(2時

間ツアーで 40,000円(税別)~)を基本に価格設定。

6 取組事例

◆なごや歴史探検!かつて海だった街 熱田の記憶を巡る

~旧東海道、新田開拓地からモノ作りに繋がるストーリーまで~

開催日時:2018 年 3月 8日(木)10:00-12:00(雨天決行)

定員:15名

移動手段:徒歩

参加費用:0円(モニターツアー、参加条件あり)

参加条件:スマートフォンをお持ちで「なごや歴史探検」のアプリをイン

ストールしていただける方、モニターとしての参加した感想などアンケー

トにご協力いただける方(◎本ツアーは名古屋市教育委員会文化財保護

室・なごや歴史文化活用協議会とのコラボレーションモニターツアーです)

案内役:名古屋市文化財保護室の学芸員・纐纈さん

内容:名古屋の名所、熱田神宮を中心に、鈴之御前社、宮の渡し跡など新

田開拓をした跡などを、「なごや歴史探検」アプリを使いながら立ち寄りス

ポットを巡り、かつて海だった街 熱田の記憶を思い起こしながら街を歩く

プログラム。

◆鮮やかなモザイクタイル 30種類!オリジナル鍋敷き作りツアー

~タイル製造日本一のまち多治見の工場見学から、タイルたっぷりお土産

付きまで~

開催日時:2018 年 11月 17日(土)10:00-12:30(雨天決行)

定員:20人(最少催行 5名)

参加費用:3000 円(オリジナル鍋敷き、タイルお土産、保険料含)

案内役:小澤枝里子さん / 株式会社 オザワモザイクワークス 企画室

内容:モザイクタイルの製造日本一のまち、多治見市笠原町。モザイクタ

イル工場のオザワモザイクワークスの小澤さんのガイドのもと、色鮮やか

なモザイクタイルがたくさん作られる現場に潜入し、タイル鍋敷きをオリ

なごや歴史探検!かつて海だった街 熱田の記憶を巡る イメージ画像

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

35 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

ジナルで作るプログラム。タイルを選び放題のお土産あり。

7 情報発信

ウェブサイ

ホームページ TOP にツアー詳細検索ツール、テーマ別カテゴリ、特集が組

まれている。

SNS Twitter で最新情報の発信を行う。

Facebook、Instagramには募集告知のほか、開催後のようすを記録した写真

を掲載している。

大ナゴヤツアーズ ホームページ (トップ画面と活動の概要)

オリジナル鍋敷き作りツアー イメージ画像

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

36 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

④ 関東ポケカル

1 開催主体

主体 株式会社ポケカル

事業開始年 2007年

公式サイト https://www.poke.co.jp/

2 事業概要

概要 ポケカルとは「ポケットカルチャー」の略。「ポケットに入れて持ち運べる

ようなお手軽さで、様々な文化・新しい世界に触れていただきたい」とい

う創業の思いに由来する。

株式会社ポケカル(旅行業登録番号業者)は、日帰りの体験型ツアーなど

を企画・販売する旅行系イベント会社。現地集合・現地解散を基本とする

旅行商品を、月間約 200コース造成し、提供している。

東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木の関東圏でのツアーを中心に企画。

通常のツアーでは味わえない、『非日常』『初めて』をお客様に体験いただ

くことが、ポケカルのツアーのコンセプトになっている。

3~4 時間の開催時間で、現地集合・現地解散ツアーのほか、バスツアー、

体験教室、公演イベントなど、『日帰り』で楽しめるツアーを提供。

ランチ付き観光スポット見学コース、ガイド付きまち歩きコースから、ア

ートイベントめぐりや文化財めぐりコースまで幅広いテーマからツアーを

選べる。

3 実施体制

事務局 株式会社ポケカルは、日帰りの体験型ツアーの他、エンターテインメント

企画運営業務、イベント・演劇・セミナーの企画、製作、公演、運営に関

するマーケティング業務などの事業も行っている。

協力・連携

団体等

<東急電鉄>

2017年より東急電鉄とポケカル社は、着地型観光事業における資本業務提

携契約を締結。東急線沿線の観光資源を中心とした体験型ツアーの企画や、

東急グループの経営資源を活用した旅行商品の販売強化を目指している。

その他個人

との連携

-

4 活動の背景

活動の背景 -

5 事業構成

事業構成 <募集プログラム>

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

37 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

3~4 時間の開催時間で、現地集合・現地解散ツアーのほか、バスツアー、

体験教室、公演イベントなど、『日帰り』で楽しめるツアーを提供。

<オーダーツアー>

過去に実施したツアーを団体旅行、会社の研修旅行等にあわせてオーダー

メイドで運営。

6 取組事例

1)募集プロ

グラム

◆人気グルメ食べ歩き!昭和レトロな街並み「谷根千」下町さんぽ

~地元みやげ 5セット付き!

• 開催日:3月~6月第 2・3金曜 9:50-14:00

• 移動手段:徒歩

• 最小催行人数:各日 10名より

• 料金:4,980 円~(ランチ+地元みやげ 5点セット+ガイド)

地元を知り尽くした地域密着の人力車夫「音羽屋の近藤さん」による、知

られざる谷根千エリア紹介ツアー。有名スポット「谷中銀座商店街」、風情

ある寺町から、隠れたグルメの名店、オンリーワンの雑貨店をめぐる。谷

中せんべいなど地元おみやげ 5 点つき、昼食には下町の本格フレンチ店ラ

ンチが楽しめる。

◆【プロガイドと行く古地図でめぐる鬼平犯科帳シリーズ 全三部作】第

一回

長谷川平蔵が作った石川島人足寄場から日本橋編 ~人気名店たいめいけ

んのランチ~

• 開催日:3月 16、19日、4月 11日、13日、16日、20日 9:30~14:00

• 移動手段:徒歩

• 最小催行人数:各日 10名より

• 料金:7,500 円~(お食事+古地図+イヤホンガイド+ガイド付)

全三回《古地図でめぐる鬼平犯科帳シリーズ》第 1 回は、長谷川平蔵が老

中・松平定信に提案され設置された人足寄場跡や、本所にあった長谷川平

蔵屋敷跡など、物語ゆかりの地へ古地図をもとにめぐる。他にも、池波正

太郎の書斎を復元・展示した「池波正太郎記念文庫」も見学する。

人気グルメ食べ歩き!昭和レトロな街並み「谷根千」下町さんぽ イメージ画像

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

38 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

7 情報発信

ウェブサイ

ホームページ TOP にツアー詳細検索ツールを設け、日程、価格帯、人数、

キーワードからツアー検索ができるほか、テーマ別カテゴリ、特集が組ま

れている。ツアー後のレポートを「ポケカルおでかけ通信」としてまとめ

ており、一部過去のツアー状況を閲覧できる。

また、じゃらん net など旅行情報 WEB サイトにもツアー企画を掲載し、ス

マホアプリを導入するなど、検索システムを活用したツアー広報を行って

いる。

新聞広告 読売新聞、東京新聞、産経新聞、毎日新聞、朝日新聞などにツアー広告を

掲載し、ツアー行程や食事内容など、さらに詳しい情報を公式サイトで参

照できるようにしている。

その他 ホームページのほかスマートフォンのアプリからもツアー申込できる。そ

のほか、会員向け情報誌や DM等でも発信。

ポケカル

ホームページ検索画像

ツアー紹介バナー

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

39 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

ポケカルおでかけ通信 検索画面

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

40 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

⑤ 長崎さるく

1 開催主体

主体 社団法人 長崎国際観光コンベンション協会

事業開始 2006年

公式サイト https://www.saruku.info/

2 事業概要

概要 市民が企画し実行する、地域資源を活用したオープンエリア型のまち歩き

ツーリズム。地域住民が主体となった観光の取り組みとして、「コミュニテ

ィ・ベースド・ツーリズム(CBT)」とも言われる。

さるく事業の市民への浸透度や継続性の観点からみて、日本における CBT

の成功事例の一つとされる。

マップを片手に自由にまち歩きする「遊さるく」、ガイド付きの「通さるく」、

「専門家の講座や食事などが付いた「学さるく」の 3 本柱で事業が構成さ

れている。

この事業で培われたネットワークが東日本大震災で長崎に避難してきた人

たちの支援に力を発揮したことも、観光の枠を超えて地域の課題解決に役

立つ市民力になったと評価されている。

「長崎さるく博’06」は、まち歩きの仕組み、観光資源の発掘方法が評価

されて、2006年のグッドデザイン賞を受賞している。

3 実施体制

事務局 運営事務局:社団法人 長崎国際観光コンベンション協会

協力・連携

団体等

<長崎純心大>

コンベンション協会と地域連携協定を結んでおり、大学のカリキュラムに

「さるく学入門」が組み込まれている。

平成 29 年 9月学生 97名が下記の「さるくガイド」として登録している。

その他個人

との連携

「まち歩き」企画は市民の参加によって具体化される。

コースは、地元住民や市民プロデューサーがまちを丹念に歩いてお薦めス

ポットを厳選してストーリーに仕立て上げ、各コースのマップを作成。

また、毎年ガイド研修を実施し、コースごとに「さるくガイド」を養成。

ガイドは、すべて市民で、シニアから大学生までの老若男女問わず登録さ

れている。観光施設の解説に留まらず、ガイド自らの創意工夫により、ま

ちへの愛着や日常生活の話がされるのが特徴。

平成 29 年 9月の段階で、さるくガイドは 452名となり、うち女性は 229名。

さるくガイドはホームページ上で各人の顔写真とともに、メッセージや得

意コースが紹介されている。

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

41 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

4 活動の背景

経緯 平成 16 年(2004 年)2月に、中長期的に観光客数が減少する状況を打開す

るために、長崎市の「まち」と「人」を活かし、個人化、体験重視化、女

性主体化といった観光スタイルに対応することを重視した「長崎市観光

2006 アクションプラン」を提示。

このプランは、市民を中心とした策定委員会及び推進委員会で策定された

もので、同委員会は、委員長が商工会議所会頭、長崎市内の報道機関、経

済団体、公的団体、市民団体、有識者からなる全 110 名の委員で構成され

ていた。9 名のワーキングチームメンバーが地域活動の実践者で、コミュ

ニティのネットワークがあったこと、長崎市側のプロジェクトの実務責任

者と市民との協働関係があった。

アクションプランの具体策として、まち歩きを主体とした住民参加型の仕

組み「長崎さるく」の実施を検討。市内複数の観光施設が竣工する平成 18

年(2006年)を実施年と決定。

準備期間中の平成 16年(2004年)10月に「プレプレさるく博」(1カ月間で

通さるく 4 コース、学さるく 4 テーマ、長崎体験 3 テーマを実施)、平成 17

年(2005 年)に「プレさるく博」(3 カ月間で通さるく 15 コース、学さるく

14 テーマ、長崎体験 5 テーマを実施)を開催し、行政と市民との協働によ

る体制を構築している。

平成 18 年(2006年)に、「長崎さるく博’06」を実施。

平成 19 年(2007 年)からは、社団法人長崎国際観光コンベンション協会が

運営事務局となり通年実施型へ転換。(平成 19年の参加者数は半減)

その後、コースの拡充や内容のリニューアル、ガイドの発掘・養成が持続

的に行われ、平成 22 年(2010 年)には、さるく博’06 並みの参加者数まで

回復。

平成 21 年(2009 年)には、さるく博の初期の頃から関わった市民プロデュ

ーサーが中心となり、「NPO法人長崎コンプラドール」を設立。

さるくガイドによるツアーの様子

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

42 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

<長崎さるく博’06> ・平成 18 年 4 月 1 日(土)~平成 18 年 10 月 29 日(日)の 212 日間にわたって実施された日本ではじめて

のまち歩き博覧会。 ・市民プロデューサー95 名、さるくガイド 325 名、さるくサポーター184 名により実施 ・開催までの 2 年間で、試験的に「さるく」を実施する中で、あえてテーマは絞らずにあらゆる資源をコンテ

ンツ化。 ・マップ片手に個人で自由に歩く「遊さるく」が 42 コース、ガイドツアー「通さるく」が 31 コース、専門家

の講座とガイドツアーがセットになった「学さるく」が 74 テーマ。他にもグラバー園や出島、稲佐山、中

島川などの名所を拠点に会場イベントや記念イベントなどが実施された。 ・また、伝統工芸や仕事場の一角を店主自身が案内する 19 か所の「さるく見聞館」、ツアーの途中でトイレ使

用や休憩のために立ち寄ることができるホテルやレストラン、喫茶店など 118 店が「さるく茶屋」として協

力し、様々なかたちで市民、地元企業や商店の参加が行われた。 ・「通さるく」は、期間中 4,479 本のコースが実行され、48,748 人の参加者数となった(一日平均:21 コース、

229 人)。 ・トータルで 723 万人がまち歩きをし、延べ参加者数は 1,023 万人となった。 ・予約制イベントの全参加者数の 68.3%にあたる 33,261 人が長崎県民で、さらにそのうちの 26,309 人(全体

の 54.0%)が長崎市民であったことも特徴である。

長崎さるく博’06ダイジェスト記録

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

43 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

5 事業構成

事業構成 <通さるく>

地元ガイドと一緒に歴史的資産を中心にまち歩きを楽しむ

<学さるく>

長崎ならではのテーマについての専門家による講座や体験

<遊さるく>

個人で自由に周遊するためのエリアやコース紹介(マップ等)

<さるく見聞館>

旧家や老舗のお店などをオーナーの協力のもと開放

6 取組事例

1)通さるく 地元ガイドと一緒にまち歩きを楽しむ予約制のコース(コース選択型のプ

ランが希望日の 3日前、フリープランが 7日前までに予約必要)。32の通常

コースの他、期間限定コースが設けられており、概ね 2 時間程度の所要時

間となっている。コースの多くが、まちの歴史的資産を中心にストーリー

立てられたまち歩きコンテンツである。

• 参加料:1,000円~2,000円程度(大人/中学生以上)

1名での参加の場合はプラス 1,000円。

(小学生は半額、未就学児は無料、ガイド料・保険料等込み)

※2時間程度のフリープランの場合、2,000円

長崎通さるく コース一覧

コース名 料金(円) 1 丸山ぶらぶら思案橋 ~三昧の音もとめて花街巡遊~ 1,300

2 長崎原爆資料館めぐり 1,000

3 長崎は今日も異国だった ~港がみえる坂から大浦天主堂へ~【世界遺産】 1,800

4 眼鏡橋から中通りへ ~長崎レトロのふれあい歩き~ 1,500

5 長崎三社参り ~諏訪神社・松森天満宮から伊勢宮~ 1,100

6 海舟と龍馬の鼓動を感じて ~本蓮寺・聖福寺・立山役所へ~ 1,300

7 日本一の清流と伝統的な町並み・神浦 ~のんびり・ゆったり・そぞろ歩き~ 1,100

8 長崎のチャイナタウン ~唐人屋敷から新地へ~ 1,200

9 長崎「明治日本の産業革命遺産」【世界遺産】 1,500

10 原子野に思いをはせて ~旧長崎医大から山王神社へ~ 1,000

11 なごみの寺町散策① ~光源寺から興福寺へ~ 1,200

12 東山手の“異国”散歩 ~オランダ坂と洋館めぐり~ 1,500

13 アンゼラスの鐘の丘を訪ねて ~原爆落下中心地・平和公園から浦上天主堂~ 1,000

14 茂木みなと散歩 ~漆喰塀の旧家を眺めつつ~ 1,100

15 二十六聖人の道を歩く ~浦上街道を西坂の丘へ~ 1,000

16 長崎のへそ・昔と今の物語 ~出島から奉行所跡へ~ 1,000

17 長崎はローマだった ~古の教会跡と西坂の丘~ 1,200

18 夕陽が美しいキリシタンの里 ~遠藤周作が魅せられた町~【世界遺産】 1,800

19 出島タイムスリップ ~扇形の宝の島~ 1,000

20 浜の町・アーケードと路地散歩 ~幕末維新の舞台を追って~ 1,200

21 長崎居留地プレミアムさるく ~国宝大浦天主堂とグラバー園をめぐる~【世界遺産】 2,200

22 龍馬が見上げた長崎の空 ~風頭から亀山社中跡へ~ 2,000

23 四百年の歴史を誇る植木技術と庭園 ~古賀・植木の里散策~ 1,000

24 みなと長崎潮風散歩 ~長崎港から長崎水辺の森公園へ~ 1,000

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

44 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

25 被爆校舎で耳をすませば ~原爆落下中心地から城山小学校へ~ 1,000

26 ロシアと稲佐・交流支えたお栄の道 ~江の浦界隈から国際墓地へ~ 1,000

27 なごみの寺町散策② ~延命寺から崇福寺へ~ 1,200

28 深堀城下町探訪 ~語り継がれる深堀義士伝の町~ 1,000

29 シーボルトの寄り道 ~あじさいの里 鳴滝散歩~ 1,000

30 長崎街道矢上宿歴史探訪 ~江戸と長崎を結ぶ道~ 1,100

31 元祖長崎 ~桜馬場・夫婦川から新大工~ 1,100

32 歴史浪漫散策 ~グラバー園~【世界遺産】 1,000

6 取組事例

2)学さるく 「学さるく」には、長崎ならではのテーマについて、専門家による講座や

体験を通して、さらに深く探求できる事前予約制のメニュー。通年型のも

のと期日が限定されたものがある。

• 参加料:500円~3,000円程度。

また、個人・団体・企業などから広く学さるくコンテンツの企画を募集し

ている。企画が採用されると、企画者が広報用素材・配布資料の作成、当

日のガイド、アンケートまで実施することとなる。

目安として参加者 10名未満の場合、次期は同様の企画を実施しないという

ルールが設けられている。

事務局手数料として、参加者一人当たり一律 300円と決められている。

学さるくの HP掲載ページ

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

45 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

長崎学さるくの企画応募用紙と記入例

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

46 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

6 取組事例

3)遊さるく 個人で自由に周遊する「遊さるく」のために、15のエリア、計 32コースが

紹介されている。(コースは、通さるくとリンクしたものとなっている)

長崎さるく HP掲載画面とコースマップ

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

47 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

6 取組事例

4)さるく見

聞館

長崎のまちの伝統や文化、くらしを伝える新しいまち歩きスポットとして、

旧家や老舗のお店などを中心に、今ではあまりお目にかかれない道具や珍

しいもの、仕事場の一角などを見ることが出来る 19の店や施設を「さるく

見聞館」として指定し、オーナー(それぞれの場所で館長という)の協力

のもと開放している。

さるく見聞館一覧

店・施設名 見聞館名 概要

1 岩永梅壽軒 和菓子見聞館 和菓子を中心とした木型、カステラ釜などの道具類

2 川凧店 長崎ハタ見聞館 県指定の伝統工芸品である凧の作業場、古道具・資料

3 江崎べっ甲店 べっ甲見聞館 日本で一番古いべっ甲専門店、歴史資料・道具

4 老舗菊水 大徳寺 焼餅見聞館 大徳寺資料、古写真、明治初期創業時からのレトロ看板

5 ツル茶ん レトロ見聞館 九州で最古の喫茶店、古写真、レトロマッチコレクションなど

6 理容たていし くんちミニチュア見聞館 長崎くんちの出し物、かさぼこなどのミニチュア

7 瑠璃庵 長崎ガラス見聞館 ステンドグラスの製造工程の見学、製作体験

8 四海楼ちゃんぽん

ミュージアム

ちゃんぽん見聞館 明治 32年創業のちゃんぽんの発祥の地、古資料

9 万寿庵 まんじゅう見聞館 長崎街道の古写真、歴史資料、和菓子の木型、秤などの道具

10 高野屋 からすみ見聞館 からすみの製造工程、古写真、大田蜀山人の狂歌など

11 鍵屋薬品本舗 くすり見聞館 漢方小児家伝薬「肥児丸」の製造工程、道具類など

12 文明堂総本店 カステラ見聞館 歴史資料、ガラス等古美術品、昭和初期の長崎案内地図など

13 きっちんせいじ 電車マニア見聞館 路面電車を活用したレストラン、路面電車の古写真

14 十八銀行史料展示室 銀行見聞館 十八銀行の歴史資料

15 坂本屋 卓袱見聞館 長崎卓袱料理の代表の一つである豚の角煮「東坡煮(とうば

に)」の製造工程、徳川時代のすずりなど

16 長崎路面電車資料館 路面電車見聞館 路面電車に関する歴史、古写真、部品、模型

17 千寿庵 長崎屋 有平糖見聞館 南蛮菓子の有平糖(あるへいとう)の製造工程、道具

18 三菱重工業(株)

長崎造船所史料館

長崎造船所見聞館 長崎造船所で製作または使用した各種の大型機器、歴史資料

19 平野楽器店 和楽器見聞館 古くから伝わる和楽器の修理道具

さるく見聞館 HP掲載情報

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

48 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

⑥ 福岡市公式シティガイド YOKA NAVI(よかなび)

1 開催主体

主体 公益財団法人 福岡観光コンベンションビューロー

事業開始年 -

公式サイト https://yokanavi.com/

2 事業概要

概要 「よかなび」は、福岡の観光情報、おすすめ観光モデルコースなど、福岡

に来る人・来た人へ幅広く観光情報を提供するサービスサイト。

3 実施体制

事務局 <公益財団法人 福岡観光コンベンションビューロー>

• 福岡市及び周辺地域との緊密な連携のもとに、観光客の誘致、コンベ

ンション(国際・国内の各種会議、展示会等をいう。)の誘致等を行う

ことにより、福岡市における観光及びコンベンションの振興を図り、

もって国際、国内観光の振興による人的交流の促進並びに地域経済の

活性化及び文化の向上に寄与することを目的としている。

• PR事業の一環として、「よかなび」を運営。

協力・連携団

体等

福岡市観光案内ボランティア事務局、文化施設、博多伝統芸能振興会など。

事務局である福岡観光コンベンションビューローだけでなく、地域の官民

各種団体が実施する体験・まち歩きメニューを紹介している。

その他個人

との連携

-

4 活動の背景

活動の背景 -

5 事業構成

事業構成 <ワンストップ型ウェブサイトの運営>

本サイトは、旅行者の閲覧を想定し、スマートフォンでの閲覧・利用に最

適化した設計で構築。写真を大きくレイアウトし、初めて福岡を訪れる人々

にとって旅行欲を直感的に掻き立てるレイアウトとなっている。

6 取組事例

1)ワンスト

ップ型ウェ

ブサイトの

運営

「福岡を知る」「福岡を楽しむ」「目的から探す」をメインのカテゴリにし

て、観光情報・観光モデルコースを総合的に紹介している。博多の歴史・

伝統・文化を体感する「博多旧市街」、福岡から直行で行ける「Re島 PROJECT」

などテーマに応じた体験プログラムを掲載しているのも特徴である。また、

トップページでは「今日・明日・すぐに行ける」エンターテイメント等の

Page 52: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

49 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

チケットを購入できる Tickets Today ともリンクされている。

コンテンツとしては、トップページに大きく現在の時間を表示し、その時

間帯におすすめの観光情報を表示するなど、「今、福岡で何をしよう?」と

いう主にスマートフォンユーザーを想定した観光情報の提供を行ってい

る。

いわゆる自治体の公式観光ウェブサイトながら、地域の様々な主体が開催

しているまち歩きや体験メニューを一括検索できるシステムを備えている

のが特徴的である。なお、申込み等は主催者団体のウェブサイトに誘導す

る仕組みとなっている。

国内外への情報発信として、5 言語(日本語、英語、韓国語、中国語、台湾

語)で展開するとともに、主要情報については、フランス語、スペイン語、

ドイツ語、オランダ語、タイ語の 5言語でも展開。

よかなび HPトップ画面

Page 53: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

50 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

③取組実績

よかなび HP観光ツアー情報画面

Page 54: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

51 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

<調査対象別出典一覧>

◆金沢クリエイティブツーリズム

金沢クリエイティブツーリズム推進機構 HP http://www.kanazawacreativetourism.jp/ ノエチカ HP http://noetica.co.jp/works/262/ 金沢アートグミ HP http://gallery.artgummi.com/ 内閣府 NPO 法人ポータルサイト (2017 年度事業報告書等)

https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/detail/ 017000275

HATCHi(リノベーションホテル)HP https://www.thesharehotels.com/hatchi/ ◆まち歩きひろさきレッツゴー(路地裏探偵団)

弘前観光コンベンション協会 HP https://www.hirosaki-kanko.or.jp/web/index.html 津軽まちあるき http://machi-aruki.sakura.ne.jp/ 夕暮れ路地裏散歩 https://www.hirosaki-kanko.or.jp/sphone/edit.html

?id=cat01_guidecourse01 ◆大ナゴヤツアーズ

大ナゴヤツアーズ公式サイト http://dai-nagoyatours.jp/about.html 大ナゴヤ大学 HP http://dai-nagoya.univnet.jp/ 大ナゴヤ大学 2017 年度活動報告書 http://dai-nagoya.univnet.jp/files/pdf/h29report.pdf 【SPECIAL INTERVIEW|加藤幹泰 /大ナゴヤツアーズ】(LIVERARY 記事)

https://liverary-mag.com/feature/57381.html

やっとかめ文化祭 HP https://yattokame.jp/2018/about ◆関東ポケカル

ポケカル公式サイト https://www.poke.co.jp/ 日本経済新聞 WEB 版プレスリリース記事

(2017.05.18) https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP445414_Y7A510C1000000/

◆長崎さるく

長崎さるく HP https://www.saruku.info/ 長崎市公式観光サイト あっと!ながさき https://www.at-nagasaki.jp/beginner/7/ ながさき旅ネット https://www.nagasaki-tabinet.com/tour/62493/ CBT 成功への道:長崎さるく研究より (北海道大学研究論文)

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/66699/1/CATS11_13.pdf

長崎さるくの取り組み http://www.city.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/9760.pdf

長崎純心大学 HP http://www.n-junshin.ac.jp/univ/information/news/saruku_2017.html

長崎国際観光コンベンション協会 http://nitca.at-nagasaki.jp/ 国土交通省観光まちづくり事例 http://www.mlit.go.jp/common/000213064.pdf ◆福岡市公式シティガイド YOKA NAVI

福岡市の公式シティガイド YOKA NAVI https://yokanavi.com/ 福岡市公式 HP(観光・魅力・イベントページ) http://www.city.fukuoka.lg.jp/promotion/index.html

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3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査

52 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(白紙ページ)

Page 56: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

53 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

4.札幌圏の文化ツーリズム現況調査

(1) 現況調査の目的・手法

本章では、札幌圏における文化ツーリズム関連事業の現況を把握するため、札幌圏

で文化ツーリズムのコンテンツとなりうる事業を展開している事業者や施設管理者

等への個別ヒアリング及び有識者による意見交換会の結果をまとめる。これにより、

既存事業、事業シーズ、今後の文化ツーリズム事業展開時のステイクホルダー、公的

支援に対するニーズ等の把握を行う。

さらに、これらの意見を補強するものとして、札幌市の観光統計等をもとに、札幌

観光の全体像の中での「文化ツーリズム」に対する観光客の意識を探る。

(2) ヒアリングによる調査

ヒアリングの手法としては、関係者のネットワーキングを図るという目的も考慮し

て、対象者の事業に関する取組を掘り下げる「個別ヒアリング」と、様々な専門性か

らの意見を共有する「有識者意見交換会」を採用した。

以上の2種の意見聴取で得られた有識者の意見や札幌圏での既存の取組事例、事業

シーズの概要について、前章で整理した4点に「理念」を追加した以下5点の考察ポ

イントに分類した。その結果は【別表2】のとおりである。

• 理念

• 地域の多様な文化資源を活用した体験型ツアー

• 持続的な事業スキーム

• 連携・市民参加

• 情報発信

「個別ヒアリング」及び「有識者意見交換会」それぞれの対象者や意見の詳細等は

次節以降に記載する。

Page 57: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

54 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(3) 個別ヒアリング概要

1) 対象者

札幌圏での文化ツーリズムのコンテンツとなりうる事業を展開している事業者や

施設管理者等を中心に「着地型観光事業者・旅行代理店」「宿泊事業者」「施設管理者」

「市民活動団体」「広報・広告プランニング、情報発信関係者」「ものづくり体験プロ

グラム企画者」等とし、調査対象者を下表のとおりとする。

団体・所属など 対象者名 個別ヒアリング内容 対象カテゴリ

1 ㈱CBツアーズ 戎谷 侑男

嶋田 浩彦

具体的なバスツアー企画、商品化

の可能性

着地型観光事業者、旅

行代理店

2 ㈱JTB 中川 晶子

3 ㈱北海道宝島旅行社 鈴木 宏一郎 インバウンド FIT・滞在交流型プログラ

ムとの連携、他の観光事業者情報

4 ㈱ニトリホールディングス 天池 風太 広域文化ツーリズムの可能性と課題

5 合同会社 Staylink 河嶋 峻 ゲストハウス、市内ホテル宿泊者のニー

ズ、情報連携の仕方

宿泊事業者

6 札幌市内ホテル連絡協議会 柴谷 学

7 北海道大学総合博物館 山下 俊介 北大総合博物館での取組、北大キャン

パス内の重要文化財とのツアー連

携可能性

施設管理者

8 北海道大学施設部 田中 陽二

森本 智博

池上 真紀

9 北海道庁総務部総務課

経済部観光局

新開 孝一

西村 泰則

斎藤 亜希

リニューアルする赤レンガ庁舎のコンテンツ

と市内文化財との連携可能性

10 サッポロビール博物館 久保 喜章 有料コンテンツの価値づけ、来館

者受け入れ体制づくり

11 モエレ・ファン・クラブ 斎藤 浩二 持続可能な市民活動のしくみ

公園施設を活用した独自のコンテンツ

地域資源活用団体

12 北海道教育大学岩見沢校 臼井 栄三 効果的な広報

ツーリズムのターゲット

広報・情報発信

13 (有)叶多プランニング 平塚 智恵美 クラフト体験などのプログラム、イベント企

画、地域との連携までに至る過程

と事業展開の可能性

ものづくり体験プログ

ラム企画者 14 軟石や 小原 恵

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

55 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

2) ヒアリング項目

ヒアリング時に提示する項目は、大きく以下の5点に整理した上で、対象者の個別

の状況に応じて具体的な実態を把握できるように聞き取り調査を行った。

1)文化ツーリズム振興に関わるこれまでの取組実績について

地域資源を活かし、歴史、文化、芸術に親しみを持つきっかけになるようなイベ

ント、ガイドツアー、体験講座の実施事例がございましたら、ターゲット層、参

加受入れ人数、参加者からの評判等具体的な内容をお聞かせください。

2)利用者の観光動向について

利用者が求めているもの、最近特に人気、流行になっていると実感するコンテン

ツや、意識している情報発信先があればお聞かせください。

3)現況の課題

現在取り組まれていることで、仕組み、連携、情報発信、資源の発掘、プログラ

ムづくりに関わる課題、困りごとになっていることがあればお聞かせください。

4)今後の展望

今後、実現したいこと、市民や他団体との連携企画の可能性、ほか、文化ツーリ

ズムに関する取組に期待されることがあればお聞かせください。

5)公的機関への期待・要望 等

文化ツーリズムに関する取組で、行政に対して望むこと、ご意見等あればお聞か

せください。

ヒアリング項目

Page 59: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

56 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(4) ヒアリング記録のまとめ

以下の記録については、対象者別・5つの項目別には整理せず、札幌圏における取

り組み事例と今後の文化ツーリズムの可能性に焦点をあて、その中で内容に応じた小

項目を立ててとりまとめている。

1) 文化ツーリズムに関する札幌圏での取り組み事例

① モエレ沼公園の芸術・環境的価値を活かしたツアー

アーティストが同行するガイドツアー

香川県立ミュージアム、アルテピアッツァ美唄、モエレ・ファン・クラブの協力に

より、2018年 5月に「イサム・ノグチとの思い出~安田侃と行く高松の旅 3日間」

が実施されている。募集人数は 40 名で、料金も一般のツアーより高めの設定だ

ったが人気が高くすぐに定員に達した。参加者の属性は、60~70代の女性が中心

で、8割が女性参加者だった。彫刻家の安田侃さんが同行し、イサム・ノグチ庭

園美術館をガイドすることが特別なツアーの価値となった。

バックヤードツアー

モエレ沼公園では、公園自体の芸術的価値を活かし、様々なツアーやイベントが

実施されてきている。子ども向けのコンサート、紙飛行機世界チャンピオンの指

導よるワークショップ、伐採木を使った楽器づくりの他、普段入れない海の噴水

の地下や雪冷房倉庫を見せるバックヤードツアーも行われた。また、自転車でモ

エレ沼公園をもっと楽しもうというグループが、大通公園のブラックスライドマ

ントラからモエレ沼公園まで自転車で行くイベントを企画・実施した。

施設をつなぐバスツアー

また、季節的なプログラムとして、観光事業者によりモエレ沼公園とアルテピア

ッツァ美唄をつなぐバスツアープログラムが実施されている。海外観光客に人気

があり、特にロケ地になったことから韓国人の反響が大きい。

② 札幌と小樽をつなぐ特別感のある体験型ツアー

2019年 5月に、札幌と小樽の文化施設・文化財をつなぐ「芸術&食満喫ツアー」

が実施された。告知後に4日で満席という反応だった。ツアープログラムは、参

加者が自ら珈琲を焙煎し持ち帰る、劇場のバックヤードを鑑賞、小樽市博物館館

長の建物解説、通常は宿泊客しか入れない大広間でお茶を飲むなど、特別な体験

にこだわったものだった。

③ 生き方や価値観を見直す太古に触れる縄文ツアー

3、4年前から、縄文文化を深く知る多数のツアープログラム「縄文旅」が実施さ

れている。客層は、6割女性、4割男性、60~70代の方が多く、リピーターも多

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

57 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

い。考古学の専門家が同行し、また、現地の施設では学芸員の方が加わり多様な

知見から歴史文化を学ぶことができるものである。

④ 博物館と産地をつなぐ食の歴史文化ツアー

2016年 7月、8月に、「ビールのルーツを探る大人の社会科見学、ホップ摘み in

上富良野」が実施された。博物館でのガイドツアーと実際に原料となるホップの

産地で収穫を行う体験型のプログラムだった。

2) 文化ツーリズムの可能性と課題

① 文化ツーリズムの理念、基本的な取り組み方

旅は文化を求めにきているのだと思う。札幌の旅情報だと、イベントに合わせた

ことを謳っているが、その土地の歴史文化、コンテクストを伝えるのが文化ツー

リズムではないか。必ず名物を買いたい、食べたい、と思う人だけではない。

他の文化施設でも、各施設のクオリティを高めるということに尽きるのではない

か。はじめにツーリズム振興ありきでは、薄っぺらいのではないか。まずはコン

テンツの充実が重要である。

アートは本来、お金を払って楽しんで、心の豊かさを実感するものだと思う。肉

体の栄養と同じように心の栄養が、生きている実感を生む。

面白さは時代とともに変わるが、WOW!という感覚が面白さの大きな部分になる

と予感している。一生に一度の体験は誰でもしたいと思うだろう。

札幌での取り組みでは、まだ人を掘り起こせていないと思う。社会の行動を起こ

すときに、今までと同じではつまらない。でも、人が行う極限のことがあれば、

人は呼べる。アクティビティやアートが抜けていると人は来ない。今までじゃな

い人が来るようになるには、分析が必要である。

いわゆる観光ではなく、その町の暮らし、真髄に触れるものが文化ツーリズムに

含まれるといい。

文化振興を考えていくときに、平坦に揃えていくより、ディープに尖っているか

も考えてほしい。初めは反応がなくても、半年くらい辛抱していると、広がって

ファンが増えることになる。

② 札幌ならではのツアーコンテンツ

<アートとランドスケープをテーマにしたツアー>

「モエレ沼公園」、「真駒内滝野霊園の安藤忠雄の頭大仏」、「アルテピアッツァ美

唄」を巡るツアーを企画したところ、非常に響いて、商品ができるという手ごた

えがあった。

モエレ沼公園は札幌市民の誇り、と言ってもいいと思うが、ランドスケープに付

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

58 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

加価値をつけるとすると、ヘリで大地の彫刻を体験するなど、人気になるのでは

ないか。丘珠空港が近いので規制はあるかもしれないが。

丘珠発着のセスナ旅行がある。上からモエレ沼公園を見る楽しみもあると思う。

<演劇を取り入れたツアー>

札幌は演劇文化もあるので、ツーリズムに演劇を取り入れてみてはどうか。例え

ば、ツアーガイドを俳優にする、ということも面白いのではないか。札幌市全域

を舞台としてバスで巡る。札幌演劇シーズンや札幌国際芸術祭のプログラムで実

施してもいいのではないか。

<既存文化施設・文化財の活かし方>

文化財の見せ方については、どんな文脈で伝えるかが大事だと思う。一軒の歴史

的建造物を見に行きませんか、という内容だと、その建造物に興味のある人にし

か響かないが、もう少し別のレイヤーを加えて、全体の中の一つとして文化財も

みられるという内容だと、参加者が増えると思う。

札幌で商品になりそうな歴史文化資産はあまり思いつかない。地元の人が面白い、

誇りを感じていないのに、旅行者に紹介できるだろうか。

札幌の施設ではピリカコタンは素晴らしい。とはいえ、無理に札幌でアイヌ文化

を押し出す必要はないと思う。ピリカコタンの匂いは、たとえアイヌの遺構がた

くさんみられる北大でも、札幌のほかの場所では感じることはできないだろう。

単体で持っていて活かしきれていない文化・観光施設を面で活用していきたい。

札幌と小樽もエリアを広げてみると、つなげられるものがあると思う。小樽にし

かない、札幌にしかない、違う魅力を見せて、相乗効果が上がるようにしたい。

施設では、マルシェをやったり、カフェをしたり、ゴスペル、ジャズ等のイベン

トも行なった。聞ける、飲める、食べられるといった体験を付加して、人が集ま

る時期を狙って開催している。常時開催だと飽きられてしまう。資料館や豊平館

でも同様の取組みができるのではないか。

観光に文化財を活かすことは持続可能な手段としてあると思うが、それだけでは

良い状態で次世代に引き継げないのではないか。慎重に考えなければならない。

月に1回、どっぷりオペラに浸る日、というのもあったらいい。間口を広げる講

座がないとはいりにくい。自分のジャンルではない人には敬意を持てないもので、

どっぷりつかることで理解してもらうということが大切ではないか。

芸術の森の砂澤ビッキの作品で、木の柱が朽ちていくまでを見せるものがあるが、

市民がもっとその意味を語ることができれば良いと思う。作品が持つ「人生を変

える力」をアピールするべき。今の伝え方だと、暇なひとがきてしまう。

<特別感のあるコンテンツづくり>

札幌での文化ツーリズムに関する体験型プログラムはそもそも少ない状況であ

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

59 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

る。アート、歴史、文化は、ただ見るだけではお金にならないからだ。

飲食、物販、体験がお金を生む。そう考えると文化財はお金がつきにくい。あえ

て収益を生むことができるとしたら、ガイドをつけることだろうか。ただ、ボラ

ンティアガイドはスキルにバラつきがあり、お金が絡むビジネスの質が保てない。

札幌も丘珠でのヘリコプター体験などは、参加したくなるのではないか。

コンテンツに特別感がないとお金は払わない。普段見られないもの、普段できな

いことができれば値段は上げられる。自分ではできないことを商品にする。行け

ないところに入れる、持ち帰ることのできる体験が必要だと思う。

バスツアーは、自分で運転しないのでお酒も飲めるのがよい。札幌の周辺を含め

るとワイン、ウイスキー、ビールなどツアーに組み合わせることができるお酒の

コンテンツが豊富にある。その際には、バスが入り込めるか、観覧する際の滞在

場所が確保できるかなども検討が必要になる。

豊平館でビールの歴史講座を行った。90 分講座、30 分試飲という内容で、大変

好評をいただいた。

昨今、作家やアーティストとの距離が近づきすぎることに懸念がある。いつでも

会えるのでは、特別感がなくなってしまう。ストーリーを演出してあげる、作家

に憧れを抱くような工夫があったほうが人は会いに行きたくなるのではないか。

<ものづくり体験との組み合わせ>

札幌にものづくり体験に期待してやってくる人がどれだけいるだろうか。広いエ

リアで考えて、例えば旭川で現地の木材を切って、地元の技術を活かした木工品

などを作ろう、というのはあるかもしれない。

ツアーのプログラムで観光客に向けたものづくり体験コンテンツを用意するこ

とは可能だと思う。大人数は入らないが、民間のギャラリースペースでできる。

また、SCARTS、エルプラザの工房、芸術の森のアトリエの活用も可能だと思う。

羊毛フェルト、機織りも体験型でできる。段ボールで簡単に機織りができる。募

集して、作家がやりたいと言ってくれれば実現が可能だ。

木彫りの熊も最初から最後まで完成させるのは大変だが、ミニチュアにして、途

中まで作っておいて、そのあとの磨く作業からキーホルダー制作を体験する等は

簡単にできるのではないか。作家を遠方から呼ぶための費用確保が課題となる。

北海道のクラフトは海外のお客様に人気があると思う。外国の観光客の行動も変

わってきた。大量買も控えめになって、体験にも積極的に参加している。子ども

に参加させている。良いと思ったものに投資する傾向が見られる。

ツアーの運営と作家とのコーディネートを分担すればツアーを企画できる。

軟石スポットに案内するツアーも企画したいが、どうやって売り込むか、受け入

れ態勢はどうしたらいいかが課題である。

軟石のワークショップをやってから、軟石を身近に感じる人が増えた。結果的に

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

60 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

軟石の建物を見つけたり、興味を持ったりするきっかけになった。観る、触る、

というような感覚につながる体験は人の印象に残るのではないか。

<ターゲットの明確化>

ツアーのターゲットを絞ってはどうか。例えば女性の40代に設定するなどはな

いか。あまり広範囲に向いていると、魅力が薄まるのではないか。若い人向けに

はそのターゲットに当てはまるルート、デザインがある。

無料で入場できる公園施設で富裕層向けのツアーを作るか、というとちょっと考

えられない。

アジア圏の旅行者がたくさん買い物をしている姿をよく見るが、いつまでもこの

状態ではない。これからは変化していくと思う。個人客が増えて、買い物だけで

はない、その土地の歴史文化を知りたいと思うようになっていくと思う。

② ガイドのあり方と人材育成

自分が関わる観光まちづくりの事業では、地元の人を育成するようにしている。

ガイドさんが資源をつなげることで、知識が深まる。ガイドの育成は、脚本家、

発声のトレーナーについてもらって、シナリオも用意して、話し方や立ち振る舞

いの講習をしている。

観光ボランティアをもっと大事にした方が良い。市民からのアイデアは素晴らし

いものが出る。人と接しているぶん生の実態が聞ける。自分たちも普段からお客

様と接している。実際に現場の話の方が重要なことが多い。

③ コンテンツの掘り起こし・事業スキーム

札幌圏の魅力の掘り起こしは、観光目線か文化目線か、マーケティング戦略を考

えていくと良いのではないか。市が音頭をとると、公平性が求められるが、公募、

コンペをする方が形骸化せずに良いと思う。活動を応援する基金づくり、補助を

行うのはどうだろうか。市民で考えるスタイルを目指した方が良い。

まち歩きには札幌ならではのコンテンツが必要である。札幌を学術的に深められ

る活動と連携した方が良い。

地域で頑張っている人にスポットが当たって、その人が喜んで、周りもすごいと

思う、それが運営を続けるモチベーションを保っていくのではないか。

札幌のすごい人にスポットを当てて、年数回のツアー企画から初めてみてはどう

か。札幌にもコンテンツになりうる活動を行っている団体はあると思うが、つな

がって大きな取組にしようと声をかける旗振り役がいないと感じる。

活動を支援するといって、はじめに助成金などのお金をつけてしまうのも、自力

での活動持続を難しくしてしまう原因にもなる。主体がどこか。誰のために、な

んのためにやるのか。地元を盛り上げたい、という熱い思いが、人を集めて活動

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

61 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

を継続させる力になる。行政が支えるとしたら、そういう人を支援することでは

ないか。それは旅行会社、民間事業者に求めるものではない。

まず市民が誇りをもって札幌の暮らしを楽しんで、外から来た人に自慢できるく

らいになるような取り組みを働きかけてみてはどうか。素晴らしいコンテンツを

地元の人を通じて提供し、札幌に住みたい、札幌は素晴らしい、とい思ってもら

えるかが本質ではないか。

ゲストハウスの中で行うイベントと街に出るツアーを組み合わせることも可能

性があると思う。

単発ではなく定期的なツアー企画を考えるなら、年間のスケジュールを考えてプ

ログラムを組むべきだろう。

エリアで特化してやってみることは有意義と感じるところもある。苗穂、創成東、

ポイントをつなげる仕組みにアートを入れるなど、点をつなぐ工夫が必要だろう。

エリアを絞ると実施しやすい。

行政側には支援などを期待してはいけないと思う。運営が続かない。活動に干渉

することも遠慮してもらいたい。ルールを訴えるのではなく、私たちの活動を続

けるモチベーションを高めるような関わりを、行政が行ってくれるとより良い。

④ 交通アクセスの向上

文化ツーリズムにはアクセスの課題が大きい。民間バス会社の運行本数を増やす、

シャトル便の回数増やすなどが解決策だろうか。

各バス会社と地下鉄が連携してアクセスを高める必要がある。

じょうてつバスが、定山渓日帰り入浴券付で、1日乗り放題の路線バス「温泉日

帰りパック」を 2,000円で出している。こういった交通事業者の取組みと連携し

て、周遊型コンテンツを組み立てることは出来ないだろうか?

デマンド型交通は実用化まで時間がかかる。バスをルート化して走らせるのが目

指すところだと思う。例えば、レッドラインは開拓使の歴史をめぐるルート、グ

リーンラインは自然と芸術、など。全てカバーするには札幌はエリアが広い。し

かし、お客様に提供するとしたら料金も路線バス程度の 210円前後に抑えないと

ならないだろう。事業者にとっては経営の話に関わる。コンテンツだけの拾い上

げだけではなく、交通も必要である。

⑤ 情報発信の質の向上と強化

ゲストハウスの滞在者に対して、札幌の観光地を紹介するのが難しい。食事の紹

介がメインになってしまう。ツアー情報やまち歩きのコンテンツをゲストハウス

で紹介することで、タウンツーリズムへ促すことができるかもしれない。

観光統一マップを作成してくれると、ホテルでは活用ができると思う。ただ、実

際に人を動かすとすると交通が必要。さらにルートの説明がないとたどり着けな

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

62 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

い。札幌は広いので、エリアを分けてルートを紹介するのは良いと思う。

産業になり得るには、編集する人が必要になる。広報の仕方、質をしっかり考え

れば、人は動くと思う。

「文化コンダクター」がいると良い。「この人が勧めるなら観てみよう」、そうい

う影響力のある人が必要ではないか。市民が誇りに思う、地元の人間が勧める芸

術イベントなど、文化芸術を伝える、媒介になる人が必要だと思う。

作品展示をメインに考えているだけだと、伝えないと広がらない、見に来てくれ

ない。伝える側のマネージャーが必要である。

お客さま目線でなく、建物の都合による情報発信をしている施設が多い。指定管

理者の都合ではないか。サイト自体は複数あるが、現在は検索が非常にしにくい。

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

63 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(5) 意見交換会概要

1) 目的

今後の札幌圏における文化ツーリズムの事業展開において、札幌市の連携先候補と

なりうる地域の旅行事業者、文化事業担当者等を対象として、情報共有や意見交換の

機会となるワークショップを実施し、札幌ならではの文化ツーリズムのコンテンツや

ターゲット、持続的な事業のためのスキーム、市民やガイドの関わり、情報発信の方

法などについて幅広く示唆を得ることを目的とする。

2) 開催日時・場所

日時:2019 年 3月 25 日(月)15:00~17:00

場所:旧永山邸 2階・和室 B(札幌市中央区北 2条東 6丁目)

3) プログラム(議題)

① 開会のごあいさつ(札幌市の観光動向)

② 参加者の皆さんのご紹介

③ 文化ツーリズムに関する基礎調査のご報告

ヒアリング調査、札幌圏での取り組み

国内他地域での先進的な取り組み

文化ツーリズムの展望と課題

モニターツアーの結果

④ 意見交換会

札幌ならではの文化ツーリズムのコンテンツ

(儲かる商品、今ある資源のつなぎ方、市民以外・インバウンド向けのメニュー)

持続的に定期観光・通年化するための事業スキーム

(収益性、企画・実施体制、交通インフラ)

文化ツーリズムと市民との関わり

(ガイドとの関係、コンテンツを掘り起こす仕組み)

情報発信の方法

⑤ 閉会

Page 67: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

64 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

4) 参加者

意見交換会の参加者は、「着地型観光事業者、旅行代理店」「広報・情報発信」「ガ

イド」「コンテンツデザイン」「地域まちづくり」のカテゴリから 13名を対象とした。

団体・所属 役職 対象者名 対象カテゴリ

1 ㈱CBツアーズ 代表取締役社長 戎谷 侑男

着地型観光事業者・旅行代

理店

2 ㈱CBツアーズ 企画部 部長 嶋田 浩彦

3 ㈱JTB法人事業本部

事業推進部

地域交流事業チーム

グループリーダー 中川 晶子

4 北海道教育大学岩見沢校 講師 臼井 栄三 広報・情報発信

5 クライメイト PR PRプランナー 山岸 奈津子

6 フリーライター 新目 七恵

7 フリーライター 石田 美恵

8 札幌商工会議所

ボランティアガイド

星川 均 ガイド

9 札幌建築鑑賞会 代表 杉浦 正人

10 株式会社 クラグラ 代表 児玉 潤二郎 コンテンツデザイン

11 デザインアドミニストレーター 引地 幸生

12 ぽすとかん

/株式会社メディアグレス

代表

吉村 卓也 地域まちづくり

13 一般社団法人

札幌下町づくり社

代表理事 柴田 寿治

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

65 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(6) 意見交換会での発言要旨

ツアーではガイドさんの話を聞きたいという要望がある。現地ガイドさんのくら

し、生活、生き方がツアーに表現されている。そこに触れたいのでは。

30年間ガイドをやってきた。今、注目を浴びることに戸惑いもある。

札幌市内にある隠れた文化に注目させるには、ストーリーが必要だと思う。明治

天皇札幌行幸の際に歩いた道をたどるなども考えられるのではないか。マニアッ

クなツアーは定期開催が難しいと思うが。

北の街路樹ツアーもいいのではと考えている。北海道は外国産の樹木が多い。

ツアーを企画するときに、まず自分で観に行っている。商品にするには付加価値

をつける。そこに来ているお客さんをみないと、どういう内容にしたらよいかわ

からない。例えば、マンホールに興味を持つ人もいる。伝える工夫をして発信す

れば、それが文化になる。

バスツアーだと、札幌市内をめぐるのでは自分でも行ける範囲なので人が集まら

ない。せめて小樽も含めた範囲でないと。ひとりで見てもつまらないという人に

ガイドの力が必要になる。

ガイドの話から知的欲求が刺激される。地元の人がツアーに参加する場合でも、

その人から外に魅力を発信するきっかけになればよい。

伝え方、編集の力が必要。

他にはない、独自の価値が文化をつくる。札幌も独自の魅力を明快に伝えられる

ようにできるといい。

前回のモニターツアーを考えた時に、札幌の成り立ちを知らない外国の方が参加

した場合、自分と同じように楽しめただろうか。まちの概要、アウトラインを獲

得するツアーと、知的欲求を満たすような知識を深く掘り下げるツアーなど、参

加者ごとに説明の内容も変えていく必要があるのでは。

広く親しんでもらえる内容も大切だが、マニアックさもユニークさの一つとして

大事にしたい。

ニーズに合わせたツアー内容やガイドさんの手配、コースを周るときの交通手段、

その時に応じて検討が必要。

リピーターにどう文化ツーリズムを打ち出すか。「〇〇さんのガイドで行く~ツ

アー」などわかりやすい。二条市場などのお店の人が街の様子を伝える、住んで

いる人がまちの歴史を伝えるなどできれば魅力アップにつながるかもしれない。

人が大事。ツアーが出会いと感謝の接点になればよい。

言語対応もガイドの大切な役割。海外の方は自国の文化について知識がある。私

たちはどうだろうか。

文化ツーリズムでどれだけの効果を狙っているのか。いつもトップクラスのガイ

ドを充てるのは難しいと思う。目指すところは何か。例えば京都に勝つことか。

Page 69: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

66 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

どれだけの人を動かすか見えないと広報できない。

ぽすとかんは南区に住んでいる人の価値観を大切にしている。いろんな人が集ま

って、南区の魅力に引き付けられて住む人が増えるといい。

文化ツーリズムを考える時に、文化に対するターゲットを何に絞るか。地元、道

外、海外の観光客がいる。いずれにしても札幌が好きということが前提になるの

では。観光も体験もお土産も、楽しいことでないと継続していかない。

謎解きイベントは世界中で人気がある。SNSで情報をキャッチして参加している

ようだ。イベントのファンが多い。ゲーミフィケーション、学びを遊びにする考

え方は観光とも相性が良いと思う。20~30代の参加者が多い。親子で参加する人

も少なくない。京都のバスルート、地下鉄をつかった謎解きもある。

地域の魅力を遊びで伝えられる。

映画も観光と相性が良いと思う。ロケ地、ゆかりのあるお店めぐりで映画の追体

験をしているようだ。

ロケ地めぐりはタクシー乗客のニーズもある。ロケ地情報を共有したい。

インターネットの記事はすぐに反応が出る。検索もしやすい。

現地ガイドさんの話を聞くことは取材でも大事にしている。記事をきっかけにど

うやって市民に伝えていくか考えたい。

四国でイサム・ノグチゆかりの地を訪ねるツアーに参加した。学芸員さんが同行

していて、自由な見学と専門家への質問が適宜できて、バランスが良かった。

札幌はあずましい(気持ちがよい)まちだと思う。厳しい環境を長い時間をかけ

て自分たちの居心地がよい環境に変えていった歴史がある。そのような札幌の歴

史的価値、文化に触れられるものがあるはず。札幌のくらしの豊かさを感じるコ

ンテンツがつくれれば良い。

文化が果たす社会的役割もある。

芸術祭でも札幌の歴史文化に刺激を受けてアーティストが集まってくる。

ツアーメニュー開発の立ち上げの時は、もっと野心的でよいのではないか。WOW!

(驚き、感動)を感じる圧倒的な感情を引き起こすような何かが必要では。びっ

くりするような体験が印象に残る。知識だけにならないツアー内容の工夫も必要。

文化ツーリズムという名称が受け入れにくい。カタカナを使わずに、文化であそ

ぶ、というような名称ではどうか。あそぶは英語で play。演奏する、演じるとい

う意味もある。

モエレ沼公園、さとらんど、札幌市民でも行ったことが無い人がいる。ガイドさ

んを呼んで事前に座学を開くなど、地元の人が行くきっかけづくりも必要。

音楽と食とワインをつなげたイベントに参加した。解説を聞くと、産地に行って

みたいと思うようになった。ツアーに行くきっかけづくりになるのでは。

法的にも儲かる商品にするための仕組みがないと、旅行会社はなかなか動かない

のでは。札幌にはたくさん魅力あるスポットがある。どう組み立てるかが肝心で

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

67 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

は。

函館歴史文化観光検定(はこだて検定)は有料でも受験する人がたくさんいるら

しい。札幌でも実施すると、ガイドの力を上げるきっかけになるのではないか。

サウスウエスト航空の CA は、旅行者の気分を盛り上げる工夫をしてくれる。乗

るのが楽しみになる。上級のガイド知識に加えて、どれだけ人を楽しませるかも

大切ではないか。

番屋の見学に行くツアーがある。丁寧な説明とは言えないが、ガイドの人気があ

る。人柄に惹かれる、ということもある。

札幌の資源を魅力的にすることと同時に、札幌ならではのホスピタリティの実践

も求められる。

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

68 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(7) 札幌市統計調査結果の考察

道外在住者の札幌の文化ツーリズムに対するイメージを、来札観光客満足度調査

(札幌市経済観光局観光・MICE 推進部観光・MICE 推進課・平成 30 年 2 月調査)か

ら検証する。

1) 来札観光客満足度調査からみた札幌の文化ツーリズム

<アンケート調査の構成>

・対象:過去 1 年以内に札幌を訪れた 18 歳以上の道外在住者

・サンプル数:1,000

・設問数:50 問程度

・調査方法:インターネットによるアンケート調査

・調査実施期間:平成 30 年 1 月 22 日(月)~24 日(水)

・回答者の居住地:関東(44.9%)、近畿(22.6%)、東海(11.7%)、東北(6.3%)

・出典:札幌市経済観光局観光・MICE 推進部観光・MICE 推進課

(平成 30年 2月調査)

https://www.city.sapporo.jp/keizai/kanko/program/documents/29houkokusyo.pdf

① 訪問した観光スポット(問 2-15、p.23)

札幌都心部の定番的な観光スポットである2つの重要文化財「時計台 (66.5%)」

「北海道庁旧本庁舎(赤れんが)(33.0%)」が上位にある。一方で、文化関連施

設は観光スポットとしての訪問者が非常に少ないことがわかる。

66.5 63.3

40.8

33.0 31.2

30.7 18.9

16.6 14.8

13.2 10.8

9.0 9.0 8.5 8.4 7.9 7.7 7.3 7.0 6.9 6.8 6.7 6.7 6.2 5.5 4.6 4.1 4.1 3.8 3.5 3.3 3.1 2.8 2.7 2.7 2.5 2.3 2.1 2.0 2.5

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

時計台

大通公園

すすきの

北海道庁旧本庁舎(赤れんが)

ラーメン横丁

さっぽろテレビ塔

サッポロビール園

北海道大学

羊ヶ丘展望台

白い恋人パーク

百貨店

札幌ドーム

定山渓温泉

JRタワー展望室

狸小路

もいわ山

二条市場

旭山記念公園

札幌市北3条広場(アカプラ)

中島公園

サッポロビール博物館

サッポロファクトリー

中央卸売市場場外市場

札幌ら~めん共和国

大倉山ジャンプ競技場

円山動物園

北大植物園

円山エリア

スキー場

北海道開拓の村・北海道開拓記念館

モエレ沼公園

ステラプレイス

大通ビッセ

札幌芸術の森

ゴルフ場

札幌市資料館

札幌大通地下ギャラリー

500m美術館

千歳鶴酒ミュージアム

家電量販店

その他

( %)

訪問した観光スポット(回答率 2%以上のもの、N=1,000)

●は文化関連施設・文化財

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

69 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

② 訪問した観光スポットについての評価(問 2-16 p.25)

訪問した観光スポットの評価について、【サッポロビール博物館】【定山渓温泉】

【サッポロビール園】【二条市場】【旭山記念公園】【JRタワー展望室】【北海道庁

旧本庁舎(赤れんが)】【ラーメン横丁】【羊ケ丘展望台】【札幌ドーム】において

「満足」「まあ満足」の合計が 90%以上と、高い満足度となっている。

一方で【時計台】では「やや不満」「不満」の合計が 20%を超えている。

48.5

60.0

47.1

36.4

46.6

40.0

27.3

41.3

35.8

51.1

34.9

43.3

45.5

52.7

34.1

46.8

28.6

31.9

26.1

23.1

47.8

31.0

50.0

23.1

22.6

47.1

35.6

46.6

55.8

45.2

51.8

63.9

49.4

54.7

38.9

54.8

46.3

43.9

36.4

54.9

41.8

60.0

56.5

62.1

64.8

38.8

54.8

35.5

55.4

51.6

4.4

2.2

5.3

5.2

5.5

8.2

4.2

8.0

8.1

6.7

7.8

10.4

6.8

10.9

7.1

6.3

4.3

10.1

6.5

8.3

13.4

10.7

9.7

15.0

17.0

0.5

2.6

1.4

0.9

1.0

0.6

3.8

1.0

2.5

1.4

1.6

1.9

1.2

3.2

2.0

5.7

2.2

0.5

1.4

3.6

0.3

1.4

3.3

1.8

2.9

2.5

5.7

1.4

3.8

1.9

2.4

1.6

4.6

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

サッ ポロビール博物館

定山渓温泉

サッ ポロビール園

二条市場

旭山記念公園

J R タワー展望室

北海道庁旧本庁舎( 赤れんが)

ラーメ ン横丁

羊ヶ丘展望台

札幌ド ーム

北海道大学

中央卸売市場場外市場

白い恋人パーク

大倉山ジャンプ競技場

すすきの

もいわ山

札幌市北3条広場( アカプラ)

中島公園

大通公園

百貨店

サッ ポロファ クト リ ー

狸小路

札幌ら~めん共和国

さっぽろテレビ塔

時計台

満足 まあ満足 やや不満 不満 わからない

訪問した観光スポットに対する評価(回答数 50名以上)

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

70 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

③ 再訪時の目的や楽しみ(問 4-3 p.41)

札幌再訪時の目的や楽しみについて、全体では「美味しいものを食べる(79.5%)」

と回答した割合が最も高く、次いで「温泉(41.8%)」「札幌市内の観光イベント(さ

っぽろ雪まつり、さっぽろオータムフェスト等)(38.1%)」の順となっている。

「芸術・文化・歴史を楽しむ」は、8.7%と低い。

性別では、【男性】においては「スポーツをして楽しむ(スキー、ゴルフなど)」

「スポーツ観戦(プロ野球、サッカー、ゴルフなど)」が、【女性】においては「買

い物」「温泉」「景色・景観」と回答する割合が高く、男女間で差がみられる。

年代別では、【18~29 歳】においては「買い物」「夜景」が、【70歳以上】におい

ては「景色・景観」と回答する割合が、他の年代に比べて高くなっている。

再訪時の目的や楽しみ(N=892)

平成28年度

調査結果(増減)

82.0%(-2.5)

34.2%(+7.6)

34.0%(+4.1)

35.3%(+1.9)

33.9%(-0.7)

21.6%(+6.4)

-

6.1%(-1.2)

3.2%(-1.7)

1.7%(-0.4)

8.3%(+5.4)

11.0%(-1.6)

9.4%(-0.7)

3.5%(+2.6)

4.4%(+1.3)

-

-

79.5

41.8

38.1

37.2

33.2

28.0

18.6

13.7

9.4

8.7

6.1

5.7

4.9

1.5

1.2

0.9

1.3

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

美味しいものを食べる

温泉

札幌市内の観光イベント(さっぽろ雪まつり、さっぽろオータムフェスト等)

景色・景観

市内の観光スポット

買い物

夜景

ドライブを楽しむ

スポーツをして楽しむ(スキー、ゴルフなど)

芸術・文化・歴史を楽しむ

ライブ・コンサート

スポーツ観戦(プロ野球、サッカー、ゴルフなど)

地元住民との交流

学会

会議

インセンティブツアー(企業の報奨旅行)

その他

(%)

札幌滞在中の目的や楽しみ[性別・年代別]

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

71 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

④ 札幌と聞いて思い浮かぶ言葉(問 5-1、p.43-44)

大分類ごとの回答数は『食』に関するものが最も多く 1,341件、次いで『観光ス

ポット』に関するもの(996 件)、『自然・景観』に関するもの(390 件)、『祭り・

イベント』に関するもの(380 件)、『その他』(238 件)、『街並み・都市』に関す

るもの(203 件)の順となっている。

言葉ごとにみると、「ラーメン(49.3%)」と回答した割合が最も高く、次いで「さ

っぽろ雪まつり(35.9%)」「時計台(35.6%)」「すすきの・繁華街・夜の街(21.3%)」

の順となっている。

『食』の分類では、ラーメンの割合が特に高く、他にもジンギスカンやカニ・寿

司などを含む海産物や海の幸、ビール・ビール園、スイーツ・洋菓子・おみやげ

なども多く挙げられている。

『街並み・都市』の分類では、「(北海道一の)都会・大都会、(北海道の)中心・

北の都(7.5%)」と回答した割合が最も高く、次いで「整然とした・きれいな街並

み・景色、碁盤の目(3.7%)」「イルミネーション・夜景(2.3%)」「大通・大通周辺

の街並み(2.0%)」の順となっている。

『自然・景観』の分類では、「雪・雪景色・白(17.9%)」や「寒い・冬(10.2%)」

など、雪や冬に関する項目が多く挙げられている。

『観光スポット』の分類では、「時計台」以下 13項目で 1.0%以上の回答率を得て

おり、特に大通・すすきの周辺のイメージが高いことがうかがえるほか、文化財・

文化関連施設としては、「時計台」「北海道大学・ポプラ並木・札幌農学校」「北

海道庁・北海道庁旧庁舎(赤れんが庁舎)」「モエレ沼公園・中島公園など」が挙

げられている。

『祭り・イベント』の分類では、「さっぽろ雪まつり」が 35.9%と高い回答率を得

ている一方、その他のイベントの認知度は低いことがうかがえる。

表 5-1-1 札幌のイメージ・大分類

No. 分類 件数(件) 回答率(%)

1 食 1,341 37.8

2 街並み・都市 203 5.7

3 自然・景観 390 11.0

4 観光スポット 996 28.1

5 祭り・イベント 380 10.7

6 その他 238 6.7

合計 3,548 100.0

※回答者 981名、回答総数 3,548件(平均約 3.5件/名)

※『食』『街並み・都市』『自然・景観』『観光スポット』『祭り・イベント』『その他』

の 6つの項目に沿って分類

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

72 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

表 5-1-2 札幌のイメージ(1.0%以上の回答率が得られたもの)

●は文化関連施設・文化財

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

73 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

⑤ 来札観光客満足度調査からみた札幌の文化ツーリズムのイメージまとめ

「札幌再訪時の目的や楽しみ」では「食」に関する項目が圧倒的に高く、札幌と

聞いて思い浮かぶ言葉でも「食」が最も多い回答数となっている。

一方で、観光スポットとしての文化関連施設の認知度が非常に低い。

札幌と聞いて思い浮かぶ言葉は「食」の次に「観光スポット」が多く、また、「街

並み」「自然・景観」「芸術・文化・歴史を楽しむ」も一定数ある。

→札幌観光のイメージは「食」に付随するものが大きい。

「時計台」「道庁赤れんが」などの文化財に来札観光者の多くが訪れていることが

わかる。

観光スポットとして認知されている文化財・文化関連施設としては、「時計台」「道

庁赤れんが」のほか「北海道大学・ポプラ並木・札幌農学校」「モエレ沼公園・

中島公園など」が挙げられている。

評価は「時計台」に対して「やや不満」「不満」の割合が他の観光スポットと比

べて最も多い結果となっている。

→知名度の高い「時計台」や「道庁赤れんが」を歴史文化ツーリズムの一つの

拠点とし、周辺の施設とつなぐようなストーリーを展開することで多くの観

光客を文化ツーリズムへ誘導できる可能性がある。

→一方で、改めて「時計台」に対する不満の理由を調査することで、観光客の

期待、求めていることを明確にし、文化財の活用方法の改善やツーリズムの

コンテンツづくりに活かす可能性がある。

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4.札幌圏の文化ツーリズム実態調査

74 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(白紙ページ)

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5.モニターツアー及び関連調査

75 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

5.モニターツアー及び関連調査

(1) モニターツアーの開催概要

1) 目的

他地域事例の調査や有識者へのヒアリング等からの考察をふまえて、札幌市中心部

において、旧永山武四郎邸をコースに組み込んだ文化ツーリズムのモニターツアーを

企画・運営するとともに、参加者を対象にアンケート調査を行い、結果から顧客ニー

ズを洗い出し、今後の文化ツーリズムにおける可能性や修正すべき点を検討する。

2) ツアー企画

① 企画(魅力的な文化ツーリズム商品についての仮説)

他地域事例の調査や有識者へのヒアリング等からの考察のうち、主に以下の点を考

慮して企画を行った。

項目 内容 考慮した点

実施日時 2019 年 3 月 3 日(日) 13:00-16:00

業務仕様にて規定

募集人数 30 名 業務仕様にて規定 募集対象 札幌市内・外在住の個人旅行者

(日本語話者) 業務仕様にて規定

参加費 無料 モニターツアーのため アンケートで価格の意識

調査を行う 移動手段 貸切バス利用 冬期開催のため

夏場であれば、徒歩移動が

可能な小規模エリアで実

施 解説ガイド 札幌建築鑑賞会 杉浦正人氏 有識者による解説 ツアー概要 創成東エリアに多く遺る文化施設

を中心にめぐり、水脈に関わる産業

遺産をまちあるきガイドの解説を

交えて見学しながら、札幌の成り立

ちと歴史文化に親しむ

歴史文化を深く知るガイ

ドツアー 単体の施設等の紹介では

ない明確なテーマ設定に

よるツアー

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5.モニターツアー及び関連調査

76 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

② ツアー行程

時間 場所 行程 行動内容 備考 12:45 札幌市役所前 集合・受付 参加者受付順乗車

13:00

出発 ~創成川、遠友夜学

校跡地車窓見学

市役所~創成川~ 遠友夜学校跡地~ 千歳鶴酒ミュージアムへ

<移動> 解説ガイド杉浦氏より 水脈の遺構解説

13:10 13:40

①千歳鶴 酒ミュージアム

館内見学 地下水試飲 酒造り道具見学

館内見学 試飲体験

13:45 14:50

②旧永山邸 ※徒歩移動

館内イベント体験 産業の遺構パネル見

ガイドツアー、イベント

見学、カフェ利用、お手

洗い休憩

カフェ利用 館内見学 体験参加

15:00 15:30 15:40

③札幌開拓使麦酒 醸造所見学館

※集合 ※出発

施設外観・周辺鑑賞 館内見学

施設見学、試飲 ★車内にてアンケート 記入

建物鑑賞 試飲体験 周辺見学

15:45 16:00

④市民交流プラザ前 (見学無料)

軟石、レンガレリーフ

など館内見学 現地解散

★降車時アンケート回収 ツアー終了

館内見学 施設解説

③ 告知

以下の手法で告知を行った。

• 札幌市文化部ホームページ

• ようこそさっぽろ Facebook

• ようこそさっぽろ Twitter

• 札幌市観光 MICE 推進部 Twitter

• 旧永山邸ホームページ

• 旧永山邸 Facebook

• チラシ(旧永山邸、大通情報ステーション、札幌駅観光案内所等)

また、2月 22日付北海道新聞朝刊にも紹介記事が掲載された。

Page 80: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

5.モニターツアー及び関連調査

77 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

モニターツアー参加者募集チラシ

Page 81: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

5.モニターツアー及び関連調査

78 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

3) モニターツアーの記録

◇開催日時:2019年 3月 3日(日)13:00-16:00

◇一般抽選当選者:25名(うち、当日キャンセル 2名)

◇当日参加者:一般参加者 23名、関係者 13名

◆千歳鶴酒ミュージアム

◆旧永山武四郎邸及び旧三菱鉱業寮

・集合場所の市役所を出発し、創成川沿い~遠友夜学校跡地を通って水脈の遺構をたどり、

創成東エリアのまちの概要をガイドからの説明を聞きながら千歳鶴酒ミュージアムへ向

かった。

・酒造りにつかわれている地下水の試飲体験、酒造り道具など見学しながら、千歳鶴のたど

ってきた歴史背景、水脈に関わる札幌の産業のあゆみについてガイドから解説を行った。

・旧永山邸及び旧三菱鉱業寮の建築様式、意匠の見どころや、建築された時代背景につ

いてガイドより解説を行った後、自由見学とした。

・自由見学では、ガイドへ建物や開拓使の歴史について質問をしたり、当日開催されて

いた「ひなまつり会」の展示鑑賞、内覧、カフェ利用をしたり、各自自由に館内での

時間を過ごした。

Page 82: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

5.モニターツアー及び関連調査

79 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

◆札幌開拓使麦酒醸造所見学館

◆札幌市民交流プラザ(さっぽろ創成スクエア)

・サッポロファクトリーレンガ館の外観から、創建時の建物の役割や開拓使時代の遺構を

レンガの観察を通してガイドより紹介し、サッポロファクトリー敷地内に設置されてい

る解説パネルの説明を交えて見学を行った。

・開拓使時代の歴史の流れや札幌でビールづくりが始まる背景についても、見学館のパネ

ルを観ながらガイドから説明を行った。

・敷地から見える道路、東 4 丁目線のようすから昔のまちの地図や地形の特徴もガイドよ

り解説した。

・現在の施設建設前にあった歴史的建造物(王子サーモン館)の記憶を残すレンガモニュメ

ントの鑑賞を行い、開拓使時代の市街地中心部のようすや周辺にある歴史の遺構をガイド

より紹介した。

・札幌軟石が用いられているスペースにて軟石に触れてみるなど体験を交えながら、札幌軟

石の特徴、建材として利用された背景、今も残る代表的な軟石を用いた札幌市内にある建

築をガイドより解説を行った。

・様々なジャンルの北海道・札幌の魅力を伝える図書を配架している札幌市図書・情報館な

ど、札幌市民交流プラザ内の施設を紹介した。

Page 83: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

5.モニターツアー及び関連調査

80 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

旧永山邸ひなまつり会の様子

旧永山邸ひなまつり会イベントチラシ

Page 84: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

5.モニターツアー及び関連調査

81 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(2) アンケート調査等の実施

1) 目的

文化ツーリズムのモニターツアー参加者を対象にしたアンケート調査、有識者への

ヒアリングを行い、モニターツアー企画・運営について振り返り、可能性や改善点を

明らかにする。

さらに、モニターツアーのアンケートと札幌市が別途開催したトークイベントのア

ンケートから「札幌圏の文化ツーリズム」に関する意識調査を行う。

2) 調査概要

① モニターツアーアンケート

◇調査対象

3月 3日開催「創成東地区の水脈と開拓使の歴史をめぐるモニターツアー」

参加者 28名

◇調査方法

3月 3日開催モニターツアー解散場所移動前に車内にてアンケート用紙を配布し、解

散場所到着降車時に回収。

② モニターツアー有識者ヒアリング

◇調査対象

市内の観光事業者等若干名

◇調査方法

個別ヒアリングや意見交換会等の機会に有識者からの意見を聴取

③ トークイベントアンケート

◇調査対象

2月 5日開催「トークイベント『さっぽろ雪まつり』を作る人たちの物語」

参加者 20名

◇調査方法

2月 5日開催トークイベント終了時に回収。

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5.モニターツアー及び関連調査

82 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(3) アンケート結果(モニターツアーへの反応)

1) 概要

① 可能性

・企画時の仮説どおり、有識者ガイドによる解説で札幌の歴史を深く理解することが

できた点で参加者の満足度が高い

・1,000 円程度であれば、有料での参加も検討するという意見が多い

② 改善点

・商品価値を出すためには、さらに特別感のある体験が必要である

・背景知識のない参加者(観光客)に対して、導入説明を充実させる必要がある

2) 参加者アンケートの意見

Q4 の満足度に関する設問では、3/4が「とても良い」「良い」と回答した一方、1

/4が「あまり良くない」「良くない」と回答しており、参加者によって受けた印象

が異なることがわかる。また、Q5の満足度の理由に関する自由記載では、ガイドによ

る話題提供が評価されている一方で複数の改善意見も提出されている。特に、基本的

な背景知識や全体テーマに関する概要の説明を求める傾向がある。また、「有料なら

もう少し検討がいる」など、旅行商品としての価値向上を求める声もある。

Q5.Q4で回答した満足度の理由(抜粋)

◎評価された点

〇ガイドによる話題提供

・ガイドさんの話、余談がおもしろかった。

・札幌の歴史など説明が詳しくてとても分かりやすかった

・普段何気なく目にしている札幌の施設や建物の歴史を学べたから。

・創成東エリアの歴史の一端に触れることができた。豊平川とのかかわりも非常に興味深かった。

・古地図を参考にしながらお話を聞くことで、創成東エリアの歴史がより具体的なイメージを伴っ

て理解できた。

・今まで見るだけが多かったが、要所で簡潔な説明をいただき、札幌の水とまちの成り立ちのかか

わりが少しわかり良かったです。

◎要検討点

〇改善意見~基本知識の共有

・各所の説明をゆっくりきくことができなかった。

・まず座学で簡単にレクチャーしてから現地廻った方がよい

・正直、素人には難しかった。事前の説明や知識がなければ、何についてこの話をしているのか

よくわからなかった。

・札幌市の成り立ちや歴史について、ある程度知識があれば満足度が高まったかと思う。もう少し

対象者を明確にすべきでは?

・テーマがぶれている。話が理解しにくい。もっと深い知識が欲しかった。

〇改善意見~その他

・無料だから。有料ならもう少し検討がいる。すべての人が興味あるとは思えず、お話等聞いて、

改めて興味出ると思う。解説も検討する必要あり。

・もしも有料なら来ない

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5.モニターツアー及び関連調査

83 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

3) 個別ヒアリング等で有識者に聴取したモニターツアーに対する意見

参加者アンケートのほか、企画・実施内容について、個別ヒアリングや意見交換

会等の機会に有識者からの意見を聴取した。

企画内容については、旅行商品としての価値向上のためには、「特別感」と「背景

知識のない観光客に対しての導入説明」の強化が必要であるとの指摘が得られた。

有識者意見の要旨

モニターツアーについて、内容は面白かった。道外、海外の人が参加したら、と考

えると、札幌のまちの背景を前提情報として持っていない市民に対して、たとえば

豊平川をどう読むかわからないような人に対して、文脈を伝えるのが難しかったの

ではないか。ダイジェストを入れても良かったと思った。まちの成り立ちや、札幌

が日本や北海道に対してどのような役割を担っていったか、入りやすい窓口を設け

ていれば良かったのではないか。ツアーの企画を考えるときに、日本、北海道、札

幌の導入を常に意識している。

永山邸だとカフェをメインに文化財の価値を知る、というのは良いと思う。デザイ

ンも凝っている。カンディハウスにも関わっている伊賀信さんが監修していると聞

いた。観光客目線でいうと、そこでしか体験できない何かがあるか重要だと思う。

バスの企画をビジネスで考えると、付加価値をつけて高く、というのがモットー。

ガイドにも謝金をお支払いする。専門的な話をするので。5千円は上回るように意

識している。お金を払う価値のある演出や体験をつけるようにしている。

豊平館、歴史的建造物、どんな意味合いを持たせるか、歴史的にどんな役割を担っ

てきたか体験して知るコンテンツであれば人を呼べるのではないか。

モニターツアーはリアルブラタモリだと思った。島義勇の歴史などにターゲットを

絞って演出するなどもよかったのではないか。

モニターツアーのコンテンツは良い。でも、商品にすると参加者はいくら払うのか。

札幌の歴史に興味のある人は来るだろう。そういう、いわばマニアックな人は集ま

る。しかし、価値のある商品になっているか。特別な体験があると参加したい動機

につながるかもしれない。アーティストと一緒に作品を作る等も、そこでしかできな

い体験なら参加したいと思うだろう。ただモニターツアーをやって、ワークショップ

でアイデアを出しても、商品はできない。

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5.モニターツアー及び関連調査

84 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(4) アンケート結果(札幌圏の文化ツーリズムに関する意識調査)

1) 概要

モニターツアー及びトークイベントで実施したアンケートの調査結果から、札幌の

文化ツーリズムに対する札幌市民を中心とした潜在顧客層のニーズを以下に整理す

る。

① ツアーのテーマとプログラム

札幌の歴史文化のストーリーをたどるテーマに加え、「ここでしかできない体験」

や「専門家の話から知識を深める体験」を織り交ぜたツアープログラムが求めら

れている。

→参加者の関心を高める準備として、ツアー序盤に歴史文化の概要説明など基礎

知識を共有しておく工夫も必要である。

② ツアー価格

「無料もしくは参加料が安い」「ツアー料金は~1,000円を想定」

→モニターツアー同様のプログラムでは、1,000円前後が参加しやすい価格。

→有料開催の場合は体験やガイドの質を高め、参加者の満足度を得られるプログ

ラムが必要と考えられる。

③ 開催場所

「都心部での開催」「便利な場所での開催」

→わかりやすく、行き帰りに交通アクセスが容易な場所での開催が望ましい。

④ 時間

体験にかける時間は 1~2時間から 3~4時間の時間帯が 60%以上を占め、比較的短時

間での希望が多い

⑤ 広報・情報発信

「新聞記事」「ようこそさっぽろ Facebook・twitter」「札幌市広報部 twitter」

→札幌市が運営する SNS を見てモニターツアーに参加した人が一定数あり、今後

の情報発信力に期待できる。

→SNSは友人、知人間で情報を共有しやすく、情報拡散にも期待できる。

→デジタルツールになじまない受け手に対して、チラシや新聞など紙媒体の利用

も必要な場合がある

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5.モニターツアー及び関連調査

85 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(5) アンケート回答の詳細(モニターツアーアンケート)

1) 調査用紙

モニターツアーアンケート調査用紙

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5.モニターツアー及び関連調査

86 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

2) 調査結果

◇調査実施日:2019 年 3月 3日(日)

◇回答数:28件

① 周知・参加動機・満足度

Q1 募集前に掲載された新聞記事の情報発信効果が大きかった。また、友人、知人からの口コミ情報も参加動機

に影響があるとみられる。

Q2 「歴史文化に興味がある」「創成東エリアの歴史についてよく知りたい」が合わせて 50%を占めることから、

テーマに対するニーズが一定数ある可能性がうかがえる。

Q3①、②、③ ツアーで周る 3 つの施設、いずれも半数以上の参加者が「行ったことがない」と回答した。

Q4 「とても良い」「良い」合わせて 75%となった。

一方、「あまりよくない」「良くない」が 25%を占める。満足度の回答について詳細は Q5。

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5.モニターツアー及び関連調査

87 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

Q5.Q4で回答した満足度の理由

◎評価された点

〇ガイドによる話題提供

・ガイドさんの話、余談がおもしろかった。

・札幌の歴史など説明が詳しくてとても分かりやすかった

・普段何気なく目にしている札幌の施設や建物の歴史を学べたから。

・創成東エリアの歴史の一端に触れることができた。豊平川とのかかわりも非常に興味深かった。

・古地図を参考にしながらお話を聞くことで、創成東エリアの歴史がより具体的なイメージを伴っ

て理解できた。

・今まで知らなかったマニアックなことを知ることができた。

・今まで見るだけが多かったが、要所で簡潔な説明をいただき、札幌の水とまちの成り立ちのかか

わりが少しわかり良かったです。

・今まで全く知らなかったことをたくさん知ることができたから。

〇ツアーでのまち巡り

・個人で各ミュージアムを訪れてもさらっと見て終わってしまうが、バスで連れて行ってもらって

よかった。ブラタモリをよく見ているが、それを体験できた気分で楽しかった。

・短時間、都心部での開催。

〇目的のある参加

・歴史的建造物、文化財をめぐるのがおもしろいから。

◎要検討点

〇改善意見~時間配分

・時間が足りない。倍の時間でもいい。もっと自由に観光もしたい。

・旧永山邸での時間の使い方がよくわからなかった。レストランで 25分待ったのに、集合時間が

来てしまい、何も飲食することができず残念な思いをした。

・千歳鶴ミュージアムでも、説明を聞くのか試飲を楽しむのか、だれからも時間配分などの説明が

なく、ただ時間が過ぎていった。

・時間配分が 1か所あたり長め(40~50分は長い)

〇改善意見~基本知識の共有

・各所の説明をゆっくりきくことができなかった。

・まず座学で簡単にレクチャーしてから現地廻った方がよい

・自由行動を伴うと、知りたいことが聞けないなど提供される情報が不公平になるので、ガイド中

心にした方がよい。

・正直、素人には難しかった。事前の説明や知識がなければ、何についてこの話をしているのかよ

くわからなかった。

・札幌市の成り立ちや歴史について、ある程度知識があれば満足度が高まったかと思う。もう少し

対象者を明確にすべきでは?

・テーマがぶれている。話が理解しにくい。もっと深い知識が欲しかった。

〇改善意見~その他

・無料だから。有料ならもう少し検討がいる。すべての人が興味あるとは思えず、お話等聞いて、

改めて興味出ると思う。解説も検討する必要あり。

・もしも有料なら来ない

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5.モニターツアー及び関連調査

88 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

② 料金・文化施設やイベント参加頻度

③ 希望するコンテンツ内容

Q6

ツアー料金は 1,000円が最も多く、500円~1,000円の価格帯では有料開催の可能性もあると考えられる。

Q8 興味のあるテーマ設定がニーズを満たす体験コンテンツの要件となりえることがうかがえる。また、「無料、

または参加費が安い」を希望する結果から、価格は抑えたほうが参加しやすい印象を持つ傾向にあることがわかる。

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5.モニターツアー及び関連調査

89 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

④ 参加者属性

Q9① 50代~70代の参加者が 80%以上を占めた。若者世代が参加できる工夫について検討が必要。

札幌市内居住の参加者がほとんどとなった。市外から

の参加者を増やす工夫について検討が必要。

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5.モニターツアー及び関連調査

90 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

⑤ 札幌市内体験コンテンツのニーズ

札幌市内で行ってみたいと思わせる体験コンテンツが多様にある中で、「ガイドツアー」「解説ツアー」「講座」

を希望する傾向がみられることから、体験前の導入をスムースにするガイド役がさらに求められると推測される。

Q12. 札幌を訪れる観光客にお勧めしたい札幌のスポットやイベント 〇スポット~歴史的建造物・文化財

時計台、豊平館、北海道神宮、北海道大学、資料館、知事公館、道庁赤れんが 〇スポット~文化施設

hitaru、キタラ 〇スポット~自然・景観

モエレ沼公園、藻岩山、平岡梅林、北 3 条通、サクシュコトニ川、雪で遊びたい人向けに豊平川河川敷、すすきの寺町めぐり

〇スポット~その他 JR タワー

〇文化・歴史関連 札幌軟石関連、遠友夜学校の歴史、食文化

〇イベント PMF、ライラックまつり、雪まつり

体験コンテンツが旅行先を決定する際に少なからず影響する可能性があることがわかる。

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5.モニターツアー及び関連調査

91 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

体験にかける時間は 1~2 時間から 3~4 時間の時間

帯が 60%以上を占め、比較的短時間での希望が多い。一方、半日~全日は 25%程度あり、プログラムの内容によっては時間をかけても参加する動機につなが

ることも予測される。

Q18. その他、意見、感想

〇希望するプログラム

・いろんなところをめぐるスタンプラリーの様なツアー。

・このようなまちあるきツアーをインバウンドのお客様向けに開催すると面白いと思います。 (英語ガイド付きで)

・次回も参加希望したい。具体的に絞ったテーマが欲しい。

〇改善意見~要望/予備知識の事前共有

・バスの中でも構わないので、ゆっくり話が聞きたい。

・これから観光客に展開する観点で、予備知識がない人に向けて出発前に大きな流れのレク

チャーがあったらよい。

・インバウンド向けに案内表示と QR コードの活用でもよいと思われる。

・もっと要点まとめてほしい。ディープすぎて話が分からない。

・対象が札幌市民か、広く旅行者にするのか、どちらもか、わけて実施してみては。

〇改善意見~要望/参加者のグループサイズ

・ガイドさんの説明を聞くには、10~15 名程度のツアー人数がよい。予備知識の有無によっ

て、参加者の構成を分けることも一考。

〇改善意見~要望/ツアーの価値づけ

・詳しい人に話を聞いたり、普段は立ち入り禁止の場所にも特別に入れたりするとよい。

〇その他意見・感想

・札幌に住んでいるのに何もわからず、今日の説明でとてもよくわった。

・司会の方が質問して案内役の人が答えるなどが聞きやすいと思う。

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5.モニターツアー及び関連調査

92 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(6) アンケート回答の詳細(トークイベントアンケート)

以下の関連イベントにおけるアンケート 20 件についての分析を行う。 関連イベント概要

トークイベント「さっぽろ雪まつり」を作る人たちの物語 ◎実施日 2019 年 2 月 5 日(日)14 時 00 分~15 時 30 分 ◎場 所 札幌市民交流プラザ 札幌市図書・情報館 1 階

◎対 象 トークイベント参加者 ◎アンケート回答数 20 件 ◎主 催 札幌市

モニターツアー参加者募集チラシ

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5.モニターツアー及び関連調査

93 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

※モニターツアーのアンケート結果は前項参照

<情報入手> モニターツアーでは新聞記事を見て応募した

参加者が圧倒的に多いが、雪まつりイベント

参加者は「ようこそさっぽろ Facebook・

twitter」、「札幌市広報部 twitter」などで情

報を入手している。モニターツアーでも「よ

うこそさっぽろ Facebook」、「観光 MICE 推進

部 twitter」も一定数あり、行政が持つ SNS

などの媒体利用も有力な情報発信になるとみ

られる。

<参加動機と満足度> モニターツアーでは「創成東の歴史について知りたい」「歴史文化に関心がある」「ガイドの話が

聞きたい」、雪まつりイベントでは「雪まつりについてよく知りたい」「専門家の話が聞きたい」

が多数を占めていることから、ともに「ここでしかできない体験」や「専門家の話から知識を深

める体験」を求めて参加している傾向がうかがえる。イベントのコンセプトを興味のある参加者

にしっかり届けられるようなテーマや概要説明を設定し、コンテンツに関心の高い参加者を集め

ることが満足度の向上につながると考えられる。

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5.モニターツアー及び関連調査

94 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

<参加を希望する体験コンテンツの傾向> Q6「参加してみたい内容」では「興味のある分野を知ることができる」が最も多く、「無料もしくは参加料

が安い」「便利な場所での開催」が次いで上位になった。参加者が何に興味をもっているかの聴取と、使用

料が安く便利な場所にある会場の調査、公共施設やイベント開催に適している民間施設との協力強化も今後

イベント企画を推進する上で必要となってくると考えられる。具体的な体験内容では、ガイドツアー、講座、

専門家との交流など、人を通しての交流に関心が高い傾向がみられ、ガイド役の人材育成も文化ツーリズム

推進の課題になると考えられる。

Q10. 札幌を訪れる観光客にお勧めしたい札幌のスポットやイベント

<スポット>

時計台、豊平館、札幌芸術の森、モエレ沼公園、藻岩山、円山動物園、真駒内滝野霊園、北海道開拓の村、 豊平峡温泉、大倉山(ジャンプ台、ミュージアム)、中島公園、北海道大学、幌見峠からの夜景、円山原生林、

三角山~大倉山探勝路、羊ヶ丘展望台、百年記念塔

<イベント>

しのろランタン祭り、PMF、サッポロシティジャズ、札幌国際芸術祭、ライラックまつり、オータムフェスト、

ビアガーデン、大通公園の四季のイベント、滝野すずらん公園でのスノーシュー体験、RSR、ファイターズ戦、

コンサドーレ戦、ワカサギ釣り

<掘り起こし可能な札幌のスポット・コンテンツ> 参加者の回答で多様なスポット、イベントが出されていることから、趣味趣向に応じて対象を絞り、ニー

ズに合致した企画を行う必要があるだろう。代表的な文化財のほか、公園、景観も魅力ある資源として捉

えられる傾向がみられ、今後、ツアーコンテンツとして有力な資源になる可能性がうかがえる。

<現状の文化関連イベントに関心を持つ参加者の属性> どちらも 50 代以上の参加者の割合が多く、比較的時間にゆとりのある世代がメインになっていることがわ

かる。また、参加者の居住地は札幌市内が圧倒的に多い。今後は若い世代の参加を促す工夫や札幌市外から

の参加者をどう呼び込むかが課題になるとみられる。

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6.今後の展望と検討課題

95 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

6.今後の展望と検討課題

(1) 概要

本章では、これまでの調査結果を総合的に捉え、「札幌における文化ツーリズム」

の現状及び可能性と課題をとりまとめる。

本調査では、第1章で「文化ツーリズム」の定義を、歴史や伝統に留まらず、「地

域固有の多様な文化資源をめぐる中で、それを支えてきた「人」や「場所」など背景

にあるストーリーを体感し、ツーリズムを通じて地域への愛着の向上を図るもの」と

設定した。

第2章では、国の調査から事業スキームのモデルケースを提示した。

第3章では、国内他地域の複数の優良事例を文献調査により例示した。

第4章では、札幌市を拠点とする有識者へのヒアリング等で得た情報を中心に、札

幌圏の主として民間事業者における現状の取組を把握し、多様な視点からシーズの発

掘・提示を行うとともに、観光統計から札幌観光における「文化ツーリズム」のイメ

ージや文化施設の認知度を確認した。

第5章では、創成東地区でのまちあるきモニターツアーの企画運営を通じて、札幌

での文化ツーリズム事業のプロトタイプ案を提示するとともに、参加者アンケート等

の分析を通じて、類似ツアー商品造成に向けた課題の洗い出しや参加者ニーズの検討

を行った。

以下では、前章までの考察を振り返りながら、札幌圏の文化ツーリズムが持つ強

み・弱み等の特性を明らかにし、その上で札幌圏の特徴的な文化資源を活かしたツア

ー案や、今後の文化ツーリズム振興において中長期的に検討していくことが望ましい

と考えられる要素を提示する。

なお、本業務では、現況調査として幅広く文化ツーリズムとして発展可能性のある

事業やアイデアを掘り起こし提示したが、具体的な実現可能性や収益性の判断は行っ

ていない。したがって、札幌市が文化ツーリズムの振興に取り組むにあたっては、今

後より詳細にニーズの調査・分析を行ったうえで、本事業で見いだされたシーズとの

マッチングを行い、実施する事業や支援策を選定することが望ましい。

また、その際には、第2章でとりあげた先進地での事例や仕組みを参照しながら、

今回の調査では主たる調査対象には含めなかった札幌市等の行政が有する文化財や

文化芸術施設の活用を含めて検討していくべきだろう。

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6.今後の展望と検討課題

96 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(2) 札幌圏の文化ツーリズム振興に向けた検討課題

第2章で触れた観光庁による調査結果や第3章で取り上げた他地域の事例などを

参考にすると、札幌で持続的な取り組みを行うためには、以下にあげる項目を実現し

ていく必要があるだろう。

このうち、第3章にまとめた市内ヒアリング・意見交換会では、今後ツアー商品等

を造成していくことを念頭に、まずは本格的なマーケティング調査に取り組むことの

必要性が指摘されている。

◇ネットワーク構築

・ 資源を持つ地域内外の産学官の多様な主体による連携

◇マーケティング調査

・ 観光資源や地域の抱える現状や課題の抽出

・ 観光客のニーズ抽出やターゲット層の把握

・ モニターツアーの実施

・ 集客目標の設定

◇受入環境整備

・ 多言語対応

・ ガイド人材育成

・ その他の環境整備

◇情報発信・PR

・ 旅行博等でのプロモーション

・ ホームページ、ガイドマップの作成

次節からは、これらの要素に対応した展開のアイデアを提案する。

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6.今後の展望と検討課題

97 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(3) 札幌圏の文化ツーリズムに関する展開案

1) 札幌の文化ツーリズムの強み・弱み(SWOT分析)

本市の現状や他地域の先進事例の事例研究をふまえて、札幌市における文化ツ

ーリズムの強み・弱み等を以下のとおり整理する。ただし、今回の調査ではステ

ークホルダーを含めての検討を行っていないことから、今後の展開を進めていく

中で、改めて認識を共有する必要があることを付言する。

内部環境 外部環境

強み(Strength) 機会(Opportunity)

+ • 寒冷積雪地での急速な都市化、開拓史など独

自の歴史がある

• 多数の文化施設やイベントに代表される豊富

な文化資源がある

• 時計台や道庁赤レンガ庁舎などの文化財が人

気の観光名所となっている

• モエレ沼公園や芸術の森など、ランドスケー

プと共にアートが楽しめる施設がある

• さっぽろ雪まつりに代表される誘客力の強い

大規模イベントがある

• ボランティアガイド等の観光分野での市民参

加の実績がある

• 海外旅行客数が増加傾向にある

• ニューツーリズム、コト消費に対するニ

ーズが高まっている

• 人気の観光資源である「食」と連携する

ことでの誘客が期待される

• 2019 年ラグビーワールドカップ、2020

年東京オリパラ等の大型イベントによる

誘客がある

弱み(Weakness) 脅威(Threat)

− • 一部の文化財施設や文化施設、イベント等し

か観光資源として認識されていない

• そのために旅をしたい、と思わせる尖った文

化イベント等が少ない

• 各種施設をつなぐ札幌の文化の「ストーリー」

が提示されていない

• 文化施設が市内に点在しており、周遊型の交

通アクセスが不十分である

• 寒冷期のまちあるきが難しい

• 効果的なマーケティング・情報提供が不足し

ている

• 市民が地域の文化の魅力を認識していない

• 高付加価値のガイドツアーに対応できるガイ

ドのさらなる育成が必要

• 国内観光客数が減少傾向にある

• 後発事例であることから、国内の先行事

例との差別化が必要になる

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6.今後の展望と検討課題

98 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

2) 札幌の文化ツーリズム振興の方向性

今回の調査からは以下の方向性が示唆される。

① 札幌市における文化ツーリズムの現状や課題

札幌観光に期待することや札幌へのイメージとしては、「食」に関する内容が圧倒

的に高く、観光資源としての札幌の「文化」への関心は相対的に低い。

一方で、「時計台」「道庁赤れんが」といったまちなかの文化財は認知度が高く、

来札観光者の多くが訪れている。

これらの観光動向を活かし、拠点施設と周辺の文化資源をつなぐストーリー展開

とコース設定を行うことで、観光客を文化ツーリズムへ誘導できる可能性がある。

市内中心部(上記拠点施設の徒歩圏内)でのまちあるき(ウォーキングツアー)、

モエレ沼等の郊外施設、小樽など近隣市町村を含めたバスツアーなど、移動手法と所

要時間に応じたコース設定の可能性がある。

② 観光文化施策における文化ツーリズム振興の目標・ターゲットの明確化

今回の調査では文化ツーリズムの可能性を幅広く検討するため、歴史から芸術ま

で、様々な要素を洗い出したが、今後、札幌市として文化ツーリズムの振興を図る上

で、歴史的建造物や文化施設などの文化的資源を観光活用するという大方針のもと、

どの段階で、どのようなターゲット層を対象に何を達成するべきか枠組みを示す必要

がある。

例えば、宿泊需要の喚起という面では、夜間開館している文化財施設等を活用し

たイベント開催を検討することが、夜の観光コンテンツ充実につながる可能性がある。

③ 「ストーリー」の提示とモニターツアーの展開

本調査で想定した「歴史文化」の展開軸においては、土地の持つ歴史的価値やコ

ンテクスト、都市の文化・暮らし・真髄を如何に伝えるかストーリー提示が求められ

るだろう。これについては、札幌市が今後策定予定の「札幌市歴史文化基本構想」と

リンクさせることや、整備に向けた検討を進めている(仮称)札幌博物館における札

幌独自の自然・歴史・文化的資産の体系的な収集・保存・調査・研究活動などの学術

的な取組みと連動していくことが有益だろう。

もう一つの展開軸である「アート・クリエイティブ」については、既存の資源を

活用するだけでなく、ディープで尖った驚きのある札幌オリジナルのコンテンツを常

に創り出していく視点が重要である。

いずれの展開軸においても、具体的なテーマと対象とする顧客層(居住地、テー

マに関する知識量等)に応じて分割し、提案する「ストーリー」を検討する必要があ

る。また、独自の魅力を鮮明に伝えるための編集力・情報発信力が必要であり、観光

情報の発信方法等、対外的な広報戦略をストーリーづくりと共に進める必要がある。

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6.今後の展望と検討課題

99 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

④ 中長期的な体制づくりと受入環境整備

これらの取組は短期的な効果を想定するのではなく、中長期的に持続可能な事業

体制の構築、そしてガイド等の人材育成、交通手段の整備、多言語対応等の受入環境

整備を進めていく必要がある。

⑤ 地域社会の参画と評価の視点

また、文化ツーリズムの振興においては、外からの来訪者に対する観光施策と、

市民がまちの魅力を知り、誇りを持って語ることができる地域づくりの両面から取り

組む必要があるだろう。

したがって、文化ツーリズムの事業評価にあたっては、短期的な収益事業化や経

済波及効果だけを評価するだけのではなく、地域の文化を正しく伝えているか、住民

が納得できる魅力の発信になっているか、といった社会的インパクトを評価に取り入

れることが望ましい。

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6.今後の展望と検討課題

100 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(4) 札幌圏の文化ツーリズムに関する取組案

札幌圏の文化ツーリズムとして位置づけて PR することが可能な既存の事業や、今

後のプロトタイプ事業のアイデア、仕組みづくりに関する検討すべき要素については

以下のとおりである。

1) 発展性のある既存事例

① モエレ沼公園の芸術・環境的価値を活かしたツアー

モエレ沼公園とその基本設計を手掛けたイサム・ノグチの作品・思想を知るツアー

が実施されている。モエレ沼公園単体でも、普段入ることができない雪冷房倉庫など

のバックヤードツアーを組み合わせることで特別なコンテンツになる。一方で、イサ

ム・ノグチという芸術家の足跡をたどるという視点に立てば、モエレ沼公園と香川

県・牟礼町にあるイサム・ノグチ庭園美術館を結ぶという企画も広域の文化ツーリズ

ムとなり得る。また、彫刻とランドスケープの一体的な環境価値という点で、モエレ

沼公園とアルテピアッツァ美唄には共通点があり、それらを結ぶプログラムも実施さ

れている。

② 札幌と小樽の文化施設・文化財をつなぐツアー

札幌と小樽の文化施設・文化財をつなぐツアーが実施されている。劇場のバックヤ

ードの鑑賞や専門家による建物解説、通常は入ることができない歴史的建造物での空

間体験など特別感を付加することが商品価値となっている。この取り組みは、複数の

企業による任意の協議体が母体となっており今後の展開性も高い。

③ 生き方や価値観を見直す太古に触れる縄文ツアー

縄文文化を深く知る多数のツアーが実施されており、今後東北地方と北海道をつな

ぐプログラムも企画されている。縄文文化に関わる埋蔵物や遺跡はまだまだ公開され

ていないものも多く、また、世界遺産の認定の可能性もあり、海外観光客も含めたタ

ーゲットへの文化ツーリズムの大きなコンテンツとなり得る。

④ 博物館と産地をつなぐ食の歴史文化ツアー

札幌の豊平川の豊かな水資源が育んだ産業・ものづくりの歴史をテーマとしたコン

テンツがある。恒常的な博物館施設でのガイドツアーだけでなく、原料の産地めぐ

り・収穫体験を組み合わせることで、大人の知的欲求をさらに満たすようなプログラ

ムも実施されている。

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6.今後の展望と検討課題

101 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

2) プロトタイプ事業案

札幌圏の活動団体等の実績を活かした取り組みの案として以下があげられる。

【他地域調査の優良事例をローカライズしたもの】

① まちの歴史や生活文化を深く知るガイドツアー

まちの歴史・生活文化を深く知る明確なテーマを設定し、それらにまつわる歴史的

建造物や文化財、史跡、景観ポイントなどをつなぎ、専門的で知識欲を満たすガイド

を行うことで文化ツーリズムの商品コンテンツとなり得る。

具体的な例として、歴史に残る著名な人物が歩いた道をたどるなど、現時点まで残

っている建築物だけでなく、史実を体感できるような、隠れた文化に注目させるスト

ーリーが必要である。

これらのツアーは、参加者の背景知識に応じて、間口を広げることが満足度向上の

ために重要である。道外や海外の観光客を対象とする場合は、導入部に入門編として

まちの成り立ち・概要などをわかりやすく伝えるダイジェスト情報を加えるなどの工

夫が必要である。

② 地場の作家・素材・技術を活かしたものづくり体験プログラム

地域の作家や企業と連携することにより、ものづくり体験を組み込んだツアーが考

えられる。プログラムを企画する上で、開拓期に主要建造物の資材として使われた札

幌軟石を活用したワークショップと軟石活用スポットを巡るツアーなど、その土地で

しか体験できないことにこだわる視点が重要である。

また、実現するためにはツアーの企画・プロモーション、作家とのコーディネート

など役割に応じて人材の連携体制が必要である。

【札幌の独自性を活かしたもの】

③ ランドスケープ(自然、風景)と文化の融合を軸としたツーリズム

モエレ沼公園など、ランドスケープと文化が融合した空間を活かす取組みが考えら

れる。

モエレ沼公園では、現状でその芸術・環境的価値を活かしたツアーが実施されてい

るが、それ以外にも、札幌ならではの四季折々の景観とアート・空間デザインなどを

テーマとしてプログラム化することが考えられる。海外エージェントを対象としたモ

ニターツアーでは、日本の宗教・文化、建築空間、土地の風景が融合した「真駒内滝

野霊園の安藤忠雄の頭大仏」が高く評価されたという話があった。

モエレ沼公園のランドスケープに付加価値をつける方法としては、航空規制などの

課題をクリアできれば、ヘリコプターで大地の彫刻の全体像を体験するといった商品

企画もあり得る。

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6.今後の展望と検討課題

102 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

④ 札幌の演劇文化を活かしたプログラム

札幌には地域に密着した演劇文化があり、この独自の文化をツーリズムに取り入れ

ることが考えられる。アイデアとして、「俳優がガイドになったツアー」「札幌市全域

を舞台として行く先々でパフォーマンスを鑑賞するバスツアー」などが考えられる。

また、文化財の活用方法としては、単に歴史的建造物を鑑賞するのではなく、その

建築空間を舞台に演劇を上演するといった付加価値向上の取組みも考えられるだろ

う。

⑤ クリエイティブな発想による独自のコンテンツづくり

他地域との差別化という観点からは、今ある文化施設・文化財を活かす視点だけで

なく、多様な観光のあり方から新しいオリジナルのツーリズムを作り出していくこと

も一つの手法として考えられる。例えば、近年、若い世代や親子を対象に、学びを遊

びにするゲーミフィケーションの考え方で、まちを舞台に謎解きイベントなどをコン

テンツ化し、誘客につなげる事例も生まれている。

また、観光と相性の良い映画をコンテンツとして、ロケ地、ゆかりのあるお店めぐ

りを訴求する情報発信もあり得るだろう。

このような独自のコンテンツづくりには、継続的にアイデアを出し合える多分野の

人材による企画体制の構築が重要である。

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6.今後の展望と検討課題

103 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

3) 持続可能な文化ツーリズム振興のための仕組みづくり

中長期的に取り組むことが望ましい要素として以下があげられる。

① 市民参加によるコンテンツの掘り起こし

文化ツーリズムの振興には、外からの来訪者に対する観光産業の活性化とあわせて、

市民力を活かしコンテンツとなり得るまちの魅力を再発見する地域づくりのプロセ

スが重要である。その方法の一つとして、幅広く個人・団体・企業などからツアープ

ログラム化のアイデアを集める仕組みづくりが考えられる。

具体的には、先進地で実践されているようなツアー企画を公募し企画者自身が当日

のガイドまで実施するスタイルや、文化ツーリズムの先駆的な取り組みを応援する基

金づくり、補助事業などが検討できるだろう。

② 観光ボランティアガイドとの連携とガイドスキル向上のプログラム

文化資源を活かしたツアーの価値を高め、売れるコンテンツにするためには、知的

欲求を刺激するまちの深い魅力や知識、普段みることができない場所や人との交流へ

の架け橋となる専門性のある地域のガイドの役割が大きい。

まず、現状で活躍する商工会議所の観光ボランティアガイドや歴史的建造物の専門

的な案内役とどのように連携していくか検討する必要がある。ツアーを企画する観光

事業者・文化関係者とガイドを担う人材が情報共有する場をつくることが第一歩とな

るだろう。

その上で、まちの知識だけでなく、話し方や立ち振る舞い、多言語対応、ホスピタリ

ティの考え方・技術を含めて、継続的にガイドを養成する仕組みづくりが求められる。

このようなガイドツアーを事業として継続させるためには、ツアーの内容に応じて、

ガイドをマッチングする事業運営体制の構築が大きな課題である。

③ 受入環境の整備(交通アクセス・多言語対応)

継続的な文化ツーリズムの事業化に向けては、ハード面での環境整備も求められる

ことになるだろう。例えば、文化施設を周遊するコンテンツづくりであれば、あわせ

て交通アクセスの向上を考えていかなければならない。

具体的には、民間バス会社との連携による運行本数の増便、エリアごとのシャトル

便のルート新設、バスと地下鉄の連携強化などが考えられるが、事業を構築する上で

は観光事業者、交通事業者が協働して社会実験を行い、課題点を明確にしながら進め

ていく必要があるだろう。

また、年々増加傾向にある海外旅行客にも楽しんでもらうためには、コンテンツや

施設の多言語対応について、検討していく必要がある。

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6.今後の展望と検討課題

104 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

④ 文化ツーリズムに関する総合的なプロモーション戦略

文化ツーリズムに関連する情報を、他の食や自然体験、みやげなどの観光コンテン

ツ、文化関連施設・文化財情報とあわせて一括して掲載するウェブサイトの構築は今

や必要不可欠である。あわせて、ホームページ上の専用フォームでツアープログラム

を検索・予約できるユーザビリティの高いシステムも重要である。

また、ホームページや SNS を活用して常に新しい情報を提供することはもとより、

体験プログラムの魅力・イメージを伝えるレポートなどの掲載も効果的である。

これらの運営には、多くのマンパワーを要するため、観光情報を掲載するトータルの

ホームページの管理・運営体制とあわせて検討する必要がある。

⑤ 観光事業者、文化関係者等による事業体制構築に向けた取り組み

上述の文化ツーリズムの振興に向けて第一歩を踏み出すためには、何より行政、観

光事業者、交通事業者、文化関係者、地域づくり団体、観光ガイド実践者など、多様

なノウハウ、企画力を持つ人的資源の協働関係をつくることが必要である。

行政側は文化ツーリズムの大きな枠組みを示し、積極的な民間事業者を支援する立

場から事業者間をゆるやかにつなぐラウンドテーブルを設置し、それらを発展的に事

業主体の基盤としていくことが考えられるだろう。

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6.今後の展望と検討課題

105 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

(5) おわりに

1) 持続可能な観光へ向けて

おわりに、札幌圏での文化ツーリズムの取り組みを進めていくうえでの参考として、

「持続可能な観光」に関する世界的潮流にも少し触れておきたい。

二神は、国連世界観光機関(WTO)が提示する「持続可能な観光」の定義を翻訳し

ながら、観光の発展においては、環境、経済、社会文化的な領域の適切な均衡が必要

になり、具体的には、以下の3つの要件が規定されていることを指摘している。

① 環境資源を最適に利用しなければならない。

② ホストコミュニティの社会文化的真正性を尊重しなければならない。

③ 存続可能な長期的経済活動を保証しなければならない。

【出典】

二神真美、観光分野における持続可能性指標開発の系譜、『観光文化』216号、p.9-16

https://www.jtb.or.jp/wp-content/content/img/publish/bunka/bunka216_P9-13.pdf

また、2015 年 9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための 2030ア

ジェンダ」では、2016 年から 2030 年までの国際目標として「持続可能な開発目標

(SDGs)」が定められている。この中で、文化ツーリズムに特に強く関連する目標と

しては、以下の 3項目があげられるだろう。

(ゴール 8 働きがいも、経済成長も)

8.9 2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持

続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

(ゴール 11 住み続けられるまちづくりを)

11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。

(ゴール 12 つくる責任、つかう責任)

12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に

対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入す

る。

【出典】

外務省、Japan SDGs Action Platform

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html

外務省、持続可能な開発のための 2030アジェンダ仮訳

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf

これらの方針を受けて、WTO などを中心に、持続可能な観光指標の開発と指標を通

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6.今後の展望と検討課題

106 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

じたモニタリングに関する研究や提案などが行われてきた。これらの指標は体系的に

整理されており、国土交通省による調査研究では、複数の指標体系を翻訳のうえ紹介

している。

指標体系の一例として、WTO が作成したガイドブックにおける体系区分及びその下

位項目は、下表のとおりとなっている。これらの下位項目に対して、具体的な構成要

素や対応する指標が整理されている。

これらの項目は、観光施策全体を対象にしたものであり、都市観光型である札幌圏

の文化ツーリズムを検討する際には、全てが強い関連性を持つ性質のものではないが、

今後の計画や評価における観点として参照することができるだろう。

【体系区分】

【下位項目】 ※(☆)は基本的な項目

受け入れ側社会の幸福

観光に関する地域社会の満足度(☆)

コミュニティに対する観光の影響(☆)

地元住民による主要資産へのアクセス

ジェンダー平等

児童関係

文化財の維持

建築遺産の保持

地域社会の観光参画

地域社会の関与と意識

観光客の満足度

観光客満足度の維持(☆)

アクセシビリティ

健康と安全

健康

疾病のエピデミックや国際的な伝染への対処

観光客の警護

地域社会の安全

観光による経済的便益の獲得

観光の季節性(☆)

漏出(リーケージ)

雇用

自然保護への貢献としての観光

観光による経済的便益(☆)

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6.今後の展望と検討課題

107 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

観光と貧困緩和

観光事業の競争力

貴重な自然資源の保護

重要な生態系の保護

海洋水質

希少な天然資源の管理

エネルギー管理(☆)

気候変動と観光

水資源の利用と保全(☆)

飲料水の品質(☆)

観光活動による環境への影響の制限

下水処理(☆)

固形廃棄物(ごみ)管理(☆)

大気汚染

騒音レベル管理

観光施設及びインフラによる景観への影響の管理

観光客の活動管理

利用頻度の管理(☆)

イベントの管理

観光地計画と管理

地方/地域計画への観光部門の統合

開発管理(☆)

観光関連輸送

航空輸送

観光商品・サービス設計

周遊観光、ルートの立案

多様な体験の提供

持続可能な観光のためのマーケティング

観光地イメージの保全

観光管理とサービスの持続可能性

観光事業における持続可能性と環境管理政策及びその実践

下記出典資料「表 2-1 UNWTOガイドブックにおける主な体系軸(区分・項目・構成要素等)」

の一部を引用して作成

【出典】

国土交通省国土交通政策研究所、持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究、国土交通

政策研究第 146号、2018年、pp.9-16

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6.今後の展望と検討課題

108 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

http://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk146.pdf

文化ツーリズムの振興においては、こういった「持続可能な観光」の世界的な動き

とも接続を図りながら、外からの来訪者に対する観光施策と、市民がまちの魅力を知

り、誇りを持って語ることができる地域づくりの両面から取り組むことが有益だろう。

2) 札幌の文化ツーリズムが目指す姿

都市としての札幌の成り立ちを振り返れば、明治 2年に国が主導した開拓使の設置

から、アジア初の冬季オリンピック開催をマイルストーンとした高度成長期を経て、

150 年あまりの間に急激な都市化を経験した計画都市として、政治を中心とした札幌

の歴史や人物にスポットライトがあてられることが多い。

一方で、北海道全体を見ると、縄文文化については、北海道・北東北の縄文遺跡郡

の世界遺産登録を目指す動きがあり、アイヌ文化については、観光振興を支援する新

法の策定が見込まれるなど、独自の歴史や文化への注目が高まっている。

このような北海道全体の文化に対する関心の高まりの中で、道内他都市との連携と

互恵的な差別化を図りながら、札幌という土地に住んだ「ひと」の社会と文化にあら

ためて着目した歴史を振り返り、等身大の物語として誠実に伝え直す試みが、札幌の

文化ツーリズムには求められているといえるだろう。

そして、その実現にあたっては、先に触れた持続可能な観光という世界的な潮流に

自らを位置づけながら、多くの人を集める観光資源の充実という視点だけではなく、

現在の札幌に暮らす人のアイデンティティ形成にも寄与する取り組みとして位置づ

け、構築されることを望むものである。

Page 112: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

別表1 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務

別表1 他地域事例調査における着目ポイントと対象事例の一覧 (3.国内他地域の文化ツーリズム事例調査)

事例調査における着目ポイント 事例1 金沢

金沢クリエイティブツーリズム

事例2 弘前

まち歩きひろさきレッツゴー

(路地裏探偵団)

事例3 名古屋

大ナゴヤツアーズ

事例4 関東圏

関東ポケカル

事例5 長崎

長崎さるく

事例6 福岡

福岡市公式シティガイド

YOKA NAVI(よかなび)

地域の多様な文化資源を活用した体験ツアー

歴史文化を深く知るガイドツアー

単体の施設等の紹介ではない

明確なテーマ設定によるツアーと

有識者ガイドによる解説

金沢の暮らしに息づく創造性

を味見するツアー(まちあるき

味見コース)

市民有志ガイドの個性を活か

した路地裏ツアー(弘前路地裏

探偵団)

有識者ガイドによるツアー(料

亭の若女将から酒蔵の蔵元ま

で、その道のプロが案内)

有識者ガイドによるツアー

専門ガイドによるツアー

歴史的資産を中心としたコー

スツアー(通さるく)

専門家の講座(学さくる)

地域の伝統工芸や産業を活かした

ものづくり体験

その土地ならではの体験・お土産

- 伝統工芸体験(津軽の手しごと

「こぎん刺し」体験)

工場見学(タイル製造日本一の

まちでの工場見学と鍋敷き作

り)

- -

特別感のある体験

普段は入ることができない場所な

ど、特別な体験を提供

作家のアトリエ探検

建築訪問

冬期限定ツアー(雪景色に着目

したまち歩きや冬の田んぼア

ート見学)

会社や工場、施設見学

その道のプロによるガイド

「非日常」、「初めて」を気軽に

体験がコンセプトの 200 以上

の多種多様な企画

専門家の講座(学さくる)

さるく見聞館(旧家や老舗の一

角を開放)

持続的な事業スキーム

事業体制 NPO が運営 観光協会が運営

(実行委員会形式)

NPO が運営

(実行委員会形式)

株式会社の収益事業 観光協会が運営 観光協会が運営

収益性(まち歩き・体験ツアー商

品の価格設定)

3,000 円~6,000 円

※半日程度

1,000 円~10,000 円

※2 時間から日帰り程度

3,000 円~10,000 円

※半日程度

5,000 円~15,000 円

※日帰りバスツアーも含む

1,000 円~2,000 円

※2 時間程度

500 円~5,000 円

※2 時間から半日程度

移動手段 徒歩 徒歩/タクシーツアー 徒歩 徒歩/バスツアー 徒歩

連携・市民参加

他団体や有識者と連携した企画運

美術館との連動企画

工芸作家と連携したアトリエ

訪問

テーマごとに有識者や市民ボ

ランティアが企画運営に関与

周辺自治体を含めた広域観光

(タクシーツアー)

テーマごとにまちづくり団体

や企業と連携したツアー企

画・運営

テーマごとに有識者や市民ボ

ランティアが企画運営に関与

企業の代表者が自らガイドと

なって自社の見学ツアー等を

企画・案内

多様な事業者と連携した情報

発信・商品販売

大学との連携(ガイド養成)

さるく見聞館(旧家や老舗の連

携による観光スポット発掘)

継続的なガイド育成の仕組み 金沢 21 世紀工芸祭のボランテ

ィアガイド育成講座の運営

市民ガイドの育成(弘前路地裏

探偵団)

- - 市民ガイドの育成(さるくガイ

ド)

市民公募による資源の掘り起こし - 市民有志ガイドによるツアー

の企画運営

- - 企画を市民公募

市民ガイドによる運営

効果的な情報発信

ホームページ・SNS等を活用した

情報発信・検索・予約システム

専用フォームで検索・予約

Facebook で最新情報

ホームページでアーカイブ

専用フォームで検索・予約

-

専用フォームで検索・予約

Twitter で最新情報

Facebook、Instagram で告知

+アーカイブ

専用フォームで検索・予約

ホームページでアーカイブ

専用フォームで検索・予約

ホームページでアーカイブ(遊

さるく:ツアーコースをマップ

等で紹介)

専用フォームで検索・予約

スマートフォン対応

今日何ができるかをワンス

トップで提示

宿泊施設を窓口とする誘客 連携ホテルでのチェックイン

後の 2時間ツアー

- - - - -

Page 113: 札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツ …...札幌圏における文化ツーリズム調査及び モニターツアー運営業務 報 告 書 平成

別表2 札幌圏における文化ツーリズム調査及びモニターツアー運営業務 別表2 札幌圏現況調査における着目ポイントと有識者意見・現況 (4.札幌圏における文化ツーリズムの実態調査)※網掛けは意見交換会での発言

着目ポイント 有識者意見 札幌圏の取組事例 札幌圏の取組シーズ(アイデア)

理念

文化ツーリズムのあり方

札幌はイベントにあわせた発信が多いが、土地の歴史文化、文脈を伝える必要がある

厳しい自然環境をあずましい(居心地のよい)都市に変えた歴史、札幌のくらしの豊かさを伝える

芸術作品であれば、心の栄養となり豊かさが実感できるもの、一生に一度の体験を提供する

地域の多様な文化資源を活用した体験ツアー

歴史文化を深く知るガイドツアー

単体の施設等の紹介ではない

明確なテーマ設定によるツアーと

有識者ガイドによる解説

今後は、海外旅行客も個人客が増えて買物だけでなく、その土地の歴史文化を求めるようになる

文化財は、建造物としての価値だけでなく、歴史の中のどのような文脈で伝えるかが重要

札幌の隠れた文化に注目を促すストーリーが必要

間口を広げる、導入部分の取組みが不足している

施設単体としての価値だけでなく、体験(音楽・飲食等)で付加価値をつける取組みが必要

謎解きなど、ゲーミフィケーションの学びを遊びにする考え方は観光とも相性が良い

札幌と小樽など、広域エリアでそれぞれの街の魅力を連携して伝えることで相乗効果が出る

苗穂・創成東など、小規模なエリアでのテーマ設定があれば、「まち歩き」ができる

現地ガイドの暮らし、生き方に触れるツアーが求められている

モエレ沼公園とアルテピアッツァ美唄をつ

なぐバスツアー

博物館長による施設解説

縄文文化を深く知るツアー

産地とつなぐ食の歴史文化ツアー

ランドスケープ(自然)とアートの融合

空からモエレ沼公園を楽しむ

演劇を取り入れる(俳優がガイド)

開拓使の歴史

ビール

明治天皇札幌行幸

北の街路樹

映画ロケ地

地域の伝統工芸や産業を活かした

ものづくり体験

その土地ならではの体験・お土産

札幌にものづくり体験を期待、イメージしている観光客は現状では少ないのではないか

「北海道」のクラフトは海外観光客からの人気も集め始めたところ

地元コーヒー店での焙煎体験 札幌軟石

羊毛フェルト、機織り体験

木彫りの熊

特別感のある体験

普段は入ることができない場所な

ど、特別な体験を提供

商品価値を高めるには、自分ではいけない場所、できないことを提供する必要がある

芸術の持つ「人生を変える力」をもっとアピールすべき

施設や作品、作家のストーリーを演出し、憧れを抱かせる「編集する人」が必要

モエレ沼公園のバックヤードツアー

劇場のバックヤードツアー

著名作家が同行するツアー

-

持続的な事業スキーム

事業体制 大きな取組にしようと声をかける旗振り役がいない

市が旗振役となる場合、公募による補助など、市民で考えるスタイルを目指すべき

行政には、地元の熱意ある人の活動が、自走化できる仕組みで支援してほしい

収益性 観光(収益性)と文化(社会的価値)の二つの視点のどちらに軸足を置くか検討が必要

マニアックすぎるツアーは定期開催が難しい

バスツアーの場合、札幌市内だけでは自分でも行けるので集客できず、広域連携が必要

交通インフラの整備 札幌は広いので、周遊ルートを作る場合には、交通事業者と連携したバスルート造成等も

同時に検討していく必要がある

映画のロケ地は観光タクシーでニーズがあるので、運転手と情報共有してほしい

連携・市民参加

他団体や有識者と連携した企画運営 ものづくり体験はツアーの運営と作家とのコーディネートを分担すれば運営が可能だと思う

学術的に「札幌ならでは」を深められる活動と連携するとよい

継続的なガイド育成の仕組み 地元の人を育成してガイドになってもらうとよい

現場の情報を把握している既存のボランティアガイドを大事にしたほうがよい

市民公募による資源の掘り起こし 市が旗振役となる場合、公募による補助など、市民で考えるスタイルを目指すべき(再掲)

地元の人が面白いと感じない歴史文化資産は、商品にならない

地域の「すごい人」にスポットを当てる企画からスタートしては

地域の人の価値観を大切に、暮らしの魅力を伝えたい

情報発信

ホームページ・SNS等を活用した

情報発信・検索・予約システム

札幌は文化施設ごとの情報発信が多く、今日何ができるかの選択肢がわからない

宿泊施設を窓口とする誘客 年間スケジュールを組んで定期プログラム化されれば、案内しやすい

宿泊施設周辺エリアのマップガイドなどがあれば、案内しやすい

- ゲストハウスでの案内や主催イベントとツ

アーの組み合わせ

【その他の指摘事項】※今後の事業展開に向けた観点での意見

マーケティング

・ 「文化ツーリズム」振興の目的と集客目標の設定が必要

・ 観光客のニーズ抽出やターゲット層の把握が必要

・ 間口を広げるべきか、深く掘り下げるべきか、は参加者の背景知識が

どの程度かでも変わってくる

・ インバウンドも視野に入れる場合は多言語対応の検討も必要