opensource and value creation by community

48
1 慶應義塾大学特別講義 オープンソースとコミュニ ティによる価値の創造 6/10/'11 よしおかひろたか (楽天株式会社 ) [email protected] http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok/ http://twitter.com/hyoshiok

Post on 18-Oct-2014

1.563 views

Category:

Technology


2 download

DESCRIPTION

Power of Opensource and Value Creation by community,Study sessionsLecture at Keio University, July 10, 2011

TRANSCRIPT

Page 1: Opensource and Value  creation by community

1

慶應義塾大学特別講義

オープンソースとコミュニティによる価値の創造

6/10/'11

よしおかひろたか(楽天株式会社 )

[email protected]

http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok/

http://twitter.com/hyoshiok

Page 2: Opensource and Value  creation by community

2

本日のアジェンダ

●オープンソースとコミュニティによる価値の創造

●オープンイノベーション●勉強会、コミュニティ、エンジニアのキャリア

Page 3: Opensource and Value  creation by community

3

自己紹介

●よしおかひろたか● 楽天株式会社、技術理事● カーネル読書会主宰、● 勉強会勉強会スタッフ

[email protected]●未来のいつか /hyosihokの日記

● http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok● ユメのチカラ(前職時代のブログ)

● http://blog.miraclelinux.com/yume/

●Twitter:hyoshiok

Page 4: Opensource and Value  creation by community

4

Debug Hacks

Debug Hacks --デバッグを極めるテクニック&ツール

吉岡 弘隆,大和 一洋 ,大岩 尚宏,安部 東洋 ,吉田 俊輔

ISBN:978-4-87311-404-0

オライリー・ジャパン

2009年4月22日5刷が決まりました

Page 5: Opensource and Value  creation by community

5

目的

●オープンソースとコミュニティによる価値の創造について

● オープンイノベーション● エンジニアのキャリアを考える

Page 6: Opensource and Value  creation by community

6

IT産業の流れ

● 垂直統合 ~80年代ころまで● 水平分散 ~80年代ころから● オープンシステム● オープンソースの時代 ~98年頃から

Page 7: Opensource and Value  creation by community

7

インターネットの時代

● ネットワークの向こう側の誰かとコラボレーション● 2ch● ニコ動● Wikiペディア● OSS● 勉強会● Facebook, twitter, ...

Page 8: Opensource and Value  creation by community

8

● ブログ● SNS● 同じ嗜好性を持った人たちを見つけるコストが劇的に下がった

Page 9: Opensource and Value  creation by community

9

フリーソフトウェア

● GNUプロジェクト、1985年● Linux、1991年● Open Source Software、1998年

Page 10: Opensource and Value  creation by community

10

GNUプロジェクト

● テープで配布● 送付手数料をFSFに送金● テープで配布(CDROMですらなかった)

● ソフトウェア開発はバザールモデルでなかった

Page 11: Opensource and Value  creation by community

11

インターネットの勃興

● XMosaic -- 1993● Windows 95 -- 1995● Netscapeのソースコード公開 -- 1998

Page 12: Opensource and Value  creation by community

12

OSS – Open Source Software

● OSSとフリーソフトウェア● 98年、Netscape社のソースコード公開● オープンソースソフトウェア

● フリーソフトウェア(Free Software)の反商業的響きを嫌った。

● Free Software:ソフトウェアの自由という価値を強調

● OSS:ソフトウェアの自由以外にも価値がある

Page 13: Opensource and Value  creation by community

13

OSS

● OSS:ソースコードを公開して、利用、変更、再配布できるライセンス

● その価値は何か?● ソフトウェアの自由● ソフトウェア開発モデルとしての広域分散協調型ソフトウェア開発(バザールモデル)

● ソフトウェアを公開すると自律的に進化するということを発見した● Cathedral and Bazaar(伽藍とバザール)

● Eric Raymond

Page 14: Opensource and Value  creation by community

14

OSS

● OSSという言葉● Free Software陣営の「自由」を過度に強調する姿勢が反商業的と感じた人々

● Free Softwareの「自由」以外にも価値がある

● Free Softwareには無料というイメージ● 新しい概念には新しい言葉が必要● 1998年2月にOSSという言葉が定義された

Page 15: Opensource and Value  creation by community

15

バザール

● ソフトウェア開発モデル● 参加&経験

● 利用者の増大が開発者の増大へ● いい経験● ネットワークの向こう側の人々を信頼する

● コミュニティによる開発● 開発主体が組織でない● 個人によって開発される● 自発的な意志、志願した個人(ボランティア)

Page 16: Opensource and Value  creation by community

16

コミュニティの形成

● コミュニティって何?● 日本では、地域とか会社(組織)が担う場合が多い

● 同じ志を持った人々の集まり● インターネット

● コミュニティ形成コストを劇的に下げた● 魅力的なコミュニティ

● 利用者コミュニティ● 開発者コミュニティ

Page 17: Opensource and Value  creation by community

17

バザールモデル

● ソフトウェア工学へのアンチテーゼ● 明確な管理主体、プロジェクトマネージャー、スケジュール、予算管理、リソース管理、…、が存在しない?

● コミュニティの存在が前提● 情報を公開すると進化するというパラダイム

● 優しい独裁者

Page 18: Opensource and Value  creation by community

18

あちら側を信頼するか

● オープンソース型開発(バザールモデル)● 見たこともあったこともない人たちとコラボレーションする

● 年齢も職業も性別も国籍も宗教も思想信条も関係ない

● インターネットが生んだ奇跡

Page 19: Opensource and Value  creation by community

19

コミュニティマネジメント論

●コミュニティをどう運営するか●コミュニティは管理可能か●どのように影響力を持つのか●従来の組織論とどう違うのか●企業がコミュニティに参加するには、コミュニティの動作原理を理解しないといけない

Page 20: Opensource and Value  creation by community

20

バザール開発モデル

● コミュニティによるソフトウェア開発のベストプラクティス● release early, release often● メーリングリストによる議論● コード管理システム● コミュニティへの影響力は貢献に比例● 技術力だけではなくコミュニケーション能力、リーダシップが必要

● 優しい独裁者

Page 21: Opensource and Value  creation by community

21

技術者のロールモデル

● かつては社内にいた● オープンイノベーション時代は外にいる

● どう発見するのか

Page 22: Opensource and Value  creation by community

22

好きなものを見つける方法論

●勉強会というコミュニティ

Page 23: Opensource and Value  creation by community

23

勉強会の隆盛

300件/月以上開催

id:hanazukinと愉快な仲間達による人力作業によって編集公開されている。

IT勉強会カレンダー

Page 24: Opensource and Value  creation by community

24

勉強会とオープンソース

●勉強会が生み出す価値● 知識の獲得● 人的ネットワーク● 価値創造エンジン

●オープンソースと勉強会の相性のよさ● 勉強会というリアルな場で議論● オープンイノベーションの駆動エンジン● イノベーションの外部化(Inovation Happens

Elsewhere) vs N.I.H (Not Invented Here)

Page 25: Opensource and Value  creation by community

25

勉強会のイメージ

• 主催者が個人的興味の延長で開催• ボランティアによって運営• 無償ないしは廉価

– 商用セミナー、教育コースとの違い

• 技術者の人的ネットワーク、知識獲得のプラットフォーム、キャリア形成のツール

Page 26: Opensource and Value  creation by community

26

事例:カーネル読書会

• Linuxおよびオープンソース技術に関する勉強会– 1999年4月から。10年続いている。

• 第100回開催した。Linusも参加してくれた。

–中学生から50代まで、素人からカーネルハッカーまで、毎回数十人参加

– よしおかが主宰。横浜Linux Users Group (YLUG)有志と運営http://ylug.jp

Page 27: Opensource and Value  creation by community

27

カーネル読書会って何?

●YLUG(横浜Linux Users Group)の有志が不定期に開催しているLinuxやOSSにまつわる勉強会みたいなもの。

● Linux Kernelなどの濃い話題から、オタワに行ったときの旅行記まで幅広い話題を扱う

● http://ylug.jp/ を参照のこと● 1時間ほどのセミナー(途中での質疑応答が活発)

● ビアバッシュ(ピザとビールの懇親会)あるいは近所の居酒屋での懇親会がデフォルト。重要な話は飲み会で決まる

Page 28: Opensource and Value  creation by community

28

いつから開催

●第1回、1999年4月28日(溝の口)●第100回にはLinusさんを呼んだ、2009年10月22日(秋葉原)●第107回、5月31日、@楽天

Page 29: Opensource and Value  creation by community

29

誰が話すの?

●お題提供者は様々●1時間ほどお話をしてもらって、質疑応答が非常に活発なのが特徴●海外からの発表者もいる。Andrew Morton, Jonathan Corbet, Andi Kleen, Dan Aloni, Wim Coekaerts, 順不同

Page 30: Opensource and Value  creation by community

30

誰が参加するのか

●誰でも参加自由●中学生から50代のおじさんまで

Page 31: Opensource and Value  creation by community

31

どこで開催するのか

●いろいろなところ●最近では楽天が多い●過去には、日本SGIホール、NTTデータ、ミラクル・リナックス、楽天、大きなセミナールームがある会社の協力が必要

Page 32: Opensource and Value  creation by community

32

告知、参加登録

●告知● YLUGメーリングリスト他適宜● Twitter @hyoshiok● よしおかの日記他

●参加登録● かつてはメーリングリストに投稿(ダチョウアルゴリズム)

● 宴会君 http://utage.org/enkai/● ATND http://atnd.org/● など

Page 33: Opensource and Value  creation by community

33

ニコ動、Google Video、中継

●第67回glibc malloc(小崎さん)からGoogle Videoに残っている(2006年9月22日)●第72回TOMOYO Linux Night(2007年2月8日)●第74回SE-PostgreSQL(海外さん)でニコ動(2007年5月7日)●第83回高速なRuby用仮想マシン(笹田さん)でustream中継(2007年12月27日)●資料は公開が大原則●情報発信はチカラだ

Page 34: Opensource and Value  creation by community

34

社外勉強会を社内で開催

• 楽天でカーネル読書会を開催した– 大変だったこと

• 申請書類がいっぱい。(空調、ゲストカード、イベント申請、エレベータ、会場、開錠…)

• 社内ワークフロー、誰に何を頼めばいいかわからない

– うれしかったこと• ボランティアがいっぱい立候補してくれた(多分10人以上)楽天カーネル隊を結成♪

• 社内ワークフローとか、教えてくれる人がいた• エライ人が理解を示してくれた(社内スポンサー)• ビアバッシュ(ピザとビールのパーティ)ができた

Page 35: Opensource and Value  creation by community

35

カーネル読書会@楽天

• 社外勉強会を社内でやると…• メリット(社員にとって、会社にとって)

– 自社での開催なので、参加の敷居が低い。最新技術動向の入手。議論の場の提供。外部からの刺激による開発者の活性化。モチベーションアップ。外部人材との交流。企業イメージ向上。

• リスク、コスト– 情報流出⇒会場以外には入れない– 会場提供⇒直接的な費用はほとんど発生しない– 勤務時間外⇒コストはほとんどかからない

• メリット>コスト

Page 36: Opensource and Value  creation by community

36

カーネル読書会の奇跡

●カーネル読書会の奇跡● 勉強会が当たり前の社会になった● フラットに議論するプラットフォームになった

● カーネル読書会ファミリー(笑)がLinux Kernelにいっぱい貢献している

● カーネル読書会発表者のコミット数の総和は1000を越える?(TOMOYO/NILFS/Fault Injection/...)

● Kernel Summitへの参加者も

Page 37: Opensource and Value  creation by community

37

わたしの野望

●技術を日本語で議論したかった(Done)●Linux kernelへの貢献(Done)●Linusを呼ぶ(Done)●カーネル読書会+他の勉強会とのコラボ(Done)●技術者が楽しく生き生きとして豊かな社会←イマココ

Page 38: Opensource and Value  creation by community

38

OSSとビジネス

●フリーソフトウェアの商業的価値を再発見したのがOSS●バザールに企業が参加

● 例:Linux開発に企業が参加

Page 39: Opensource and Value  creation by community

39

企業とコミュニティ

●メリットは● 利益?● 金銭的なメリット以外のもの● 社外のイノベーションを取りこめる● インターネットのサービスはほとんどOSSで構築されている

Page 40: Opensource and Value  creation by community

40

企業間のコラボレーション

●OSSはかくすものがない● ソースコードが公開されている● 開発プロセスが公開されている● 抜け駆けができない

●信頼感がコストを下げる● 囚人のジレンマ(騙すことにインセンティブがある構造なのか)

●協力することがメリットを生む● 開発コストを削減

Page 41: Opensource and Value  creation by community

41

あちら側を信頼するか

●オープンソース型開発(バザールモデル)

● 見たこともあったこともない人たちとコラボレーションする

● 年齢も職業も性別も国籍も宗教も思想信条も関係ない

● インターネットが生んだ奇跡

Page 42: Opensource and Value  creation by community

42

自社技術優先主義の終焉

●自社技術優先主義(Not Invented Here症候群)● うちの技術にこだわる(垂直統合時代の技術革新)● プロプライエタリな技術● 技術を囲い込み独占する事によって利益を上げる● 人モノ金を自前で用意する● 中央研究所モデル

●特徴● コストがかかる● 時間がかかる● 変化に追従できない(陳腐化する)

Page 43: Opensource and Value  creation by community

43

オープンイノベーション

●OSSの時代● 技術革新は外にある。 IHE - Innovation

Happens Elsewhere●技術は囲い込めない(技術は会社のものではなく、コミュニティのものだ)●企業はどのようにオープンイノベーションと向かいあうのか

Page 44: Opensource and Value  creation by community

44

パラダイムシフト

●技術が一社独占から共有材へ● 技術革新が加速する● 経済的である(開発コストが激減する)● 安全である● 多くの人の利益になる(誰も困らない)

Page 45: Opensource and Value  creation by community

45

技術者のロールモデル

●かつては社内にいた●オープンイノベーション時代は外にいる

● コミュニティにいる

Page 46: Opensource and Value  creation by community

46

ソフトウェア産業のビジネスモデル

●垂直統合型ビジネスモデル●水平分散型ビジネスモデル

● マイクロソフト型ビジネス●オープンイノベーション時代のビジネスモデルは?

● Google型、Facebook型、…

Page 47: Opensource and Value  creation by community

47http://blog.topprospect.com/wp-content/uploads/2011/06/Talent_traffic.gif

Page 48: Opensource and Value  creation by community

48

まとめ

●オープンソースとコミュニティによる価値の創造について紹介した