oris pro cell migration and invasion assays … note 2 サンプルおよび試薬 the oris pro cell...

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Application Note IN Cell Analyzer 2000 Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays による細胞遊走アッセイ 71-3535-11 細胞の遊走と浸潤は、創傷治癒やガン細胞の転移といった 生理学的、病理学的プロセスにおいて重要な役割を果たし ます [1] 。これらのプロセスには、新規治療方法の開発に 向けた新たなターゲット分子が関与する可能性があり、ハ イスループットの化合物スクリーニングに適した生理学的な アッセイが求められます [2] The Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays Platypus Technologies)は、96 ウェルプレートで Cell exclusion assays による化合物スクリーニングを行うため に有用なツールです。アッセイプレートの各ウェルの中央 には Biocompatible Gel BCG)がスポットされており、 播種した接着細胞が接着しないようになっています。細胞 播種後に BCG は溶解され、ウェル中央の検出領域に向かっ て細胞の遊走がはじまります( 1 )。細胞の動きは、本 稿で示すようにプレート底面で2次元に展開されます。 IN Cell Analyzer 2000 2048×2048 pixel CCD を搭載し、2 次元の遊走アッセイを行なううえで有効 です。2 ×、 4 ×レンズを用いることで、 7.6mm 四方(2×)、 3.8mm 四方(4 ×)の視野サイズで細胞個々がカウントで きる程度の解像度が得られます。96 ウェルプレートのウェ ルサイズに対して、2 × レンズでホールウェル、4× レンズ 70% 以上をカバーし、少ない視野数で測定が行えるた め、スループットが向上します( 2 )。 はじめに 1 Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays 2 96 ウェルプレートの1ウェルに対する IN Cell Analyzer 2000 large CCD)の視野サイズ 96 ウェルプレートの 1 ウェル(赤)に対して、青い四角が 2× レンズ、黄 色い四角が 4 ×レンズの視野サイズです。

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Page 1: Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays … Note 2 サンプルおよび試薬 The Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays (Platypus Technologies) Human umbilical vein endothelial

Application Note IN Cell Analyzer 2000

Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays による細胞遊走アッセイ

71-3535-11

細胞の遊走と浸潤は、創傷治癒やガン細胞の転移といった

生理学的、病理学的プロセスにおいて重要な役割を果たし

ます [1]。これらのプロセスには、新規治療方法の開発に

向けた新たなターゲット分子が関与する可能性があり、ハ

イスループットの化合物スクリーニングに適した生理学的な

アッセイが求められます [2]。The Oris Pro Cell Migrat ion and Invasion Assays

(Platypus Technologies)は、96 ウェルプレートで Cell exclusion assays による化合物スクリーニングを行うため

に有用なツールです。アッセイプレートの各ウェルの中央

には Biocompatible Gel(BCG)がスポットされており、

播種した接着細胞が接着しないようになっています。細胞

播種後にBCG は溶解され、ウェル中央の検出領域に向かっ

て細胞の遊走がはじまります( 図 1 )。細胞の動きは、本

稿で示すようにプレート底面で2次元に展開されます。

IN Cell Analyzer 2000 は 2048×2048 pixel ラ ー ジ

CCD を搭載し、2 次元の遊走アッセイを行なううえで有効

です。2 ×、4 ×レンズを用いることで、7.6mm 四方(2×)、

3.8mm 四方(4 ×)の視野サイズで細胞個々がカウントで

きる程度の解像度が得られます。96 ウェルプレートのウェ

ルサイズに対して、2 ×レンズでホールウェル、4× レンズ

で 70% 以上をカバーし、少ない視野数で測定が行えるた

め、スループットが向上します( 図 2 )。

はじめに

図 1 Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays

図 2 96 ウェルプレートの1ウェルに対する IN Cell Analyzer 2000(large CCD)の視野サイズ

96 ウェルプレートの 1 ウェル(赤)に対して、青い四角が 2× レンズ、黄

色い四角が 4 ×レンズの視野サイズです。

Page 2: Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays … Note 2 サンプルおよび試薬 The Oris Pro Cell Migration and Invasion Assays (Platypus Technologies) Human umbilical vein endothelial

Application Note

● 2

サンプルおよび試薬The Oris Pro Cell Migrat ion and Invasion Assays (Platypus Technologies)Human umbilical vein endothelial cells (HUVEC)Cytochalasin DTRITC-phalloidinDAPI

方法Collagen I を塗布した Oris Pro plates に対して Human umbilical vein endothelial cells(HUVEC) を 各 ウ ェ ル

25,000 細胞播種しました。1 時間後、アクチン重合阻害剤

Cytochalasin D (0.0078 µM ~2 µM)およびコントロール

として 0.1% DMSO を含む培地に置換しました。18 時間イ

ンキュベーションの後、0.25% glutaraldehydeで 15 分固

定し、0.1% Triton-X 100 で膜透過処理、TRITC-phalloidinおよび DAPI で染色しました。IN Cell Analyzer 2000 によ

り 4 ×レンズで各ウェル1 視野ずつ測定しました( 図 3 )。

図 5 視野全体による解析と検出領域を指定した解析における細胞遊走阻害解析結果の違い

(A)視野全体を対象にした解析結果。(B)検出領域のみを対象にした解析結果。細胞数(●)のデータは DAPI イメージから核数をカウントしました。

細胞のカバー率(●)および細胞のいない領域割合(●)は TRITC イメージから算出しました。n=8、エラーバーは SD を示します。

IN Cell Investigator ソフトウェアにより、様々な解析を試

みました。はじめに、視野全体の細胞数や細胞カバー率を

解析しました。続いて、2 µM Cytochalasin D 処理したウェ

ルについて、遊走が生じる前の画像から細胞のいない検出

領域を設定し、各画像における検出領域内の細胞数や細胞

カバー率を解析しました( 図 4、5 )。 表 1 が示すように、

視野全体の細胞数(Count of Nuclei)を除いて、全ての解

析オプションで Z スコアは 0.5 を上回りました。検出領域

を指定した解析では、視野全体の解析結果に比べ Z スコア

が大きく上昇しています。IN Cell Investigator softwareでは、

これらのデータを一度の解析で算出し、最適な測定方法を

検討することができます。

結果

図 4 Cytochalasin D 処理による細胞遊走への影響(TRITC-phalloidin 染色サンプ

ル画像)

下段は検出領域を設定して解析した場合の画像認識の様子をオーバーレイしたもので

す。(黄ライン)リファレンスイメージによる検出領域、(緑ライン)検出領域中の細胞、

(青ライン)細胞のいない領域。

実験内容

図 3 4 ×レンズによるサムネイル画像

96 ウェルプレートの E-F 列。TRITC-phalloidin 染色画像。

Plate Column

Plat

e Ro

w

Cytochalasin D Concentration (nM)

E

F

G

H

0 8 16 32 64125

250500

10002000

0 μM 2 μM0.125 μM

0 μM 2 μM0.125 μM

0.01 0.1 10

2000

4000

6000

8000

10000

0

20

40

60

80

100

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Cou

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Nucl

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Cell-free

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IN Cell Analyzer 2000

3 ●

表 1 視野全体による解析と検出領域を指定した解析における Z スコアの比較

ハイコンテントアナイシス(HCA)は、細胞アッセイから

情報リッチなデータを得ることができます。DAPI による

核染色では細胞の数やポジションを測定するのみならず、

個々の細胞の状態や細胞周期をモニターすることができま

す。 図6 では Cytochalasin D による DNA 含量および核の

構造(蛍光強度(SD))への影響を比較しました。その結果、

Cytochalasin D により Mitotic 細胞の増加が見られました。

細胞遊走アッセイを画像ベースで行う利点は、このように

細胞集団の様子が評価できることです。本アッセイでは、

遊走を測定する検出領域の内外における細胞のサブポピュ

レーションを比較することもできます( 図7 )。核のテクス

チャと DNA 含量を比較したところ、検出領域の内側で細胞

分裂が活発に起きている傾向が見られました( 図8 )。

検出領域のみを対象にした解析結果の比較

Measurements from Whole Image Z scoreCount of Nuclei 0.34% Area with Cells 0.54% Area Cell-free 0.73

Measurements from Detection Zone Z scoreCount of Nuclei 0.79% Area with Cells 0.82% Area Cell-free 0.73

図6 Cytochalasin D 処理による DNA 含量および核のテクスチャへ

の影響

(X 軸)細胞核あたりの蛍光強度の標準偏差(核のテクスチャ)。(Y軸)細胞核あたりの蛍光強度×面積(DNA 含量)。左より 0、0.25、2 μM Cytochalasin D 処理。8 ウェル分の反復試験データを一つのス

キャッタープロットにまとめました。各プロットは画像とリンクし、

対応する細胞のイメージが確認できます。

図7 細胞のサブポピュレーション解析

TRITC-phalloidin 標識細胞の画像。(A)検出領域外の認識。(B)検出領

域内の認識。黄ラインは検出領域の境界線、緑ラインは各細胞の認識の様

子を示します。

図8 各領域における Cytochalasin D による DNA 含量および核の

テクスチャへの影響

(X 軸)細胞核あたり蛍光強度の標準偏差(核のテクスチャ)。(Y 軸)

細胞核あたりの蛍光強度×面積(DNA 含量)。(左)コントロール。(右)

2 μM Cytochalasin D 処理。8 ウェル分の反復試験データを一つのス

キャッタープロットにまとめました。(上段)総細胞。(中段)検出領

域内の細胞。(下段)検出領域外の細胞。

0 μM 2 μM0.25 μM

DAPI

TRITC

G-02

A B

0μM Cyt.D-All Cells 2μM Cyt.D-All Cells

0μM Cyt.D-Inside Detection Zone 2μM Cyt.D-Inside Detection Zone

0μM Cyt.D-Outside Detection Zone 2μM Cyt.D-Outside Detection Zone

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リファレンス

1. Ridley et al., 2003. Science. 302(5651):1704-1709.2. Carragher, 2009. Clin. Exp. Metastasis. 26:381-397.

・ Oris Pro Cell Migration 96-well Assay plates を使用した、

IN Cell Analyzer 2000 ラージ CCD システムによる細胞遊

走アッセイを行った結果、高い Z スコアでの評価が可能

でした。

・ 4 ×(または 2 ×レンズ)においても、細胞個々を解析す

るに十分な解像度であることが確認されました。

・ IN Cell Investigator ソフトウェアにより視野全体または特

定の検出領域のみを対象にした測定を一度に実施し、アッ

セイ方法の最適化が検討できます。

・ 細胞遊走評価に併せて、DNA 含量から細胞周期解析を行っ

た結果、遊走している検出領域中の細胞において活発に

細胞分裂を起こしている傾向が見られました。

まとめ