ossパッチ提供の舞台裏 - サイバートラスト株式会社 · 2019-10-17 · linux...
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Copyright Cybertrust Japan Co., Ltd. All rights reserved.公開
OSSパッチ提供の舞台裏
2019/06/21サイバートラスト株式会社
豊岡 拓
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Outline
● なぜOSSパッチ提供をするのか?● どうやってOSSパッチ投稿をしているのか?● まとめ
社外秘Copyright Cybertrust Japan Co., Ltd. All rights reserved.
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なぜOSSパッチ提供をするのか?
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ターゲット向けソフトウェア(クロス)ツールチェイン等
組込みLinuxにおけるOSS
BusyboxQemu
Glibc
Syslog
Init
Linux kernel
Binutils
GCC
Yocto (ビルドシステム)
各OSSコミュニティ
機能追加・修正
機能追加・修正
SoCベンダー提供BSP 最終製品
● 組込みLinuxを構成するOSSは、それぞれの「コミュニティ」で開発されている
● そこで開発されたものは「Upstream」と呼ばれる
● 最終製品に組み込まれる時には、いくつかの機能追加・修正をされることが多い
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ターゲット向けソフトウェア(クロス)ツールチェイン等
OSSパッチ提供とは
BusyboxQemu
Glibc
Syslog
Init
Linux kernel
Binutils
GCC
Yocto (ビルドシステム)
各OSSコミュニティ
機能追加・修正
機能追加・修正
● OSSの上流=Upstreamに対して独自の開発成果を持ち込む
● それがOSSパッチ提供○ upstream化、mainline化と
も呼ばれる
SoCベンダー提供BSP 最終製品
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● 例えば、2017年のLinuxカーネルの組織別パッチ貢献数を見ると...● 企業からの貢献がほとんど ⇒企業戦略と結びついている
誰がOSSパッチ提供をしているのか
順位 組織名 パッチ数
1 Intel 10833 (13.1%)
2 none 6819 (8.2%)
3 RedHat 5965 (7.2%)
4 Linaro 4636 (5.6%)
5 unknown 3408 (4.1%)
6 IBM 3359 (4.1%)
7 consultants 2743 (3.3%)
8 Samsung 2633 (3.2%)
9 SUSE 2481 (3.0%)
10 Google 2477 (3.0%)
順位 組織名 パッチ数
11 AMD 2215 (2.7%)
12 Renesas Electronics 1680 (2.0%)
13 Mellanox 1649 (2.0%)
14 Oracle 1402 (1.7%)
15 Huawei Technologies 1275 (1.5%)
16 Broadcom 1267 (1.5%)
17 ARM 1256 (1.5%)
18 Texas Instruments 1136 (1.4%)
19 Free Electrons 969 (1.2%)
20 NXP Semiconductors 839 (1.0%)2017 State of Linux Kernel Developmentより: https://www.linuxfoundation.org/2017-linux-kernel-report-landing-page/
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● 人、会社、それぞれの理由がある
● 企業: 自社の戦略を様々なレベルで実現するため○ 独自開発部分のメンテナンスコスト削減○ 自社技術の標準化○ 自社だけで不可能な技術開発の実現○ 同一業界内でのプラットフォーム共通化○ etc.
なぜOSSパッチ提供をするのか
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● IoT機器のセキュリティメンテナンス○ 課題
■ OSのセキュリティ修正を取り込みたい● IoTデバイスのセキュリティ対策は法規制の動きもある● Upstreamでは既知の脆弱性に対応しているが、製品出荷時のOSバージョンでは対応できていない...
■ 一方、OSをアップデートするためのコストが大きい● OSに独自改造を加えていたり、独自のデバイスドライバがあるため、バージョンアップの度に移植作
業が必要○ (Linuxカーネルでは独自ドライバ向けインタフェースの互換性は保証されない)
○ 解決■ 独自改造部分をUpstream化する■ コミュニティの中でメンテナンスすることで、OSアップデートをスムーズに行えるようになり、製品
をセキュアに保てる■ Upstream化で貢献し、一方で他の人たちによる成果物(セキュリティ修正)の恩恵を享受できる
なぜOSSパッチ提供をするのか
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● 「自社で独自に開発したコードを公開したら競争力がなくなってしまうのでは?」○ 最終製品のメーカーにとってOSは非競争領域○ 非競争領域で重視されること
■ 使いやすさ■ 標準的であること(↔ベンダーロックイン)■ 信頼性■ コスト
● 非競争領域はOSSを上手に活用して構築し、競争領域へ注力することが大事
競争領域と非競争領域
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どうやってOSSパッチ投稿をしているのか?
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● 過去に実施したLinuxカーネルへのパッチ提供の流れをご紹介
● パッチの内容○ カーネルのトレース(動作履歴保存)サブシステムにスナップショット取得機能を追
加する、というパッチ
● 動機○ 高信頼性を求められる製品で独自に追加したRAS機能が多く、次世代製品での移
植コストが課題
➡パッチ提供でLinuxの標準機能化し、次世代製品でそのまま活用したい
実際のOSSパッチ提供の例
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● 独自機能をUpstreamに対するパッチ=差分として用意する○ パッチには、そのパッチが何であるか、どのような目的やメリットがあるかを説明し
たメッセージを付ける
● 投稿先を探す○ Linuxカーネルの場合、LKMLと呼ばれるメーリングリスト
● メンテナーを探す○ Linuxカーネルは非常に大きなOSSのため、Linus Torvalds氏が全部の面倒を見て
いるわけではない。各サブシステムごとに「メンテナー」が存在する○ Linuxのトレース・サブシステムの場合はSteven Rostedt氏→宛先に必ず入れる
● 準備ができたら、メールにパッチを含めて、メーリングリストに投稿する
パッチの準備、投稿
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実際に投稿したメール(パッチ)
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● 1ヶ月くらいして返事が来た(すぐに返事が来るとは限らない)
● パッチをレビューしてもらい、いくつかの指摘事項をもらった
● コードの内容だけでなく「この機能はそもそもこうあるべきではないのか」という指摘ももらえた
レビュー
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● 指摘を反映し、4つのパッチに分割したv2パッチシリーズとして再投稿。○ 1つ目のパッチはすぐにaccept○ 2つ目以降はレビューで指摘を受け、再々投稿
■ 途中で既存コードのリファクタリングをお願いされることもある
● 最終的にv4で全部acceptされた○ メンテナーのツリーから最終的にLinusのツリー(upstream)へと取り込まれる
再投稿
Subject: [PATCH v2 -tip 0/4] tracing: make a snapshot feature available from userspace
Hiraku Toyooka (4): tracing: add description of snapshot to Documentation/trace/ftrace.txt tracing: make a snapshot feature available from userspace tracing: add a resize function for making one buffer equivalent to the other buffer tracing: change tracer's integer flags to bool
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● 例1: 仕様だけ出してコードを出さない● 例2: 全くテストされていないパッチを出す● 例3: 要求された変更に(理由なく)対応せずにパッチを出し直す● 例4: パッチを取り込んでもらった後、その変更部分に関する問合せを無視する
注意点(やるべきでないこと)
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● なぜOSSパッチ提供をするのか
➡企業の場合、自社の戦略を様々なレベルで実現するため
● どうやってOSSパッチ提供をしているのか➡コミュニティへパッチの原案を投稿し、レビュープロセスにより改善されたものがUpstreamに取り込まれる
まとめ
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信頼とともに
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