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Vol.17 No. 90 電波研究所季報 May 1971 pp.249-263 解説 UDC517. 5 PN 系列ー特に M 系列について 吉谷清澄特 (昭和 45, 11, 27受理〉 目次 まえがき I 部概論 1. PN系列 1.1. 自己相関関数 1. 2. 定義および性質 1.3. PN系列の種類 1. 4. j 1. 5. 変換 PN系列 1.6. PN系列の Fourier解析 2. M 系列 2.1. 定義および性質 2.2. 発生法 まえがき PN系列(Pseudo-Noise 列〉の 1 穫である M 系列(MaximumLength Sequ- enc es ;最大周期系列均〉は,その不規則性,鋭い自己 相関性および発生の容易さなどの特徴により,擬似雑音, 擬似乱数あるいは符号として各方面に幅広く利用きれい ている。 ところで,この種の系列についての解説はいくつかあ るようであるが,そのほとんどが応用面を目的とした論 文の一部分であるために,数学的背景を省略した簡単な ものにとどまっている。 ここではそのような事情に留意し, PN系列,そのう ち特に M 系列について,その数学的側面をも含めてな るべくていねいに解説することを試みた。 内容は,一般的説明と利用面を扱った第 l 部および数 学的背景にふれた第 E 部からなっている。 したがって,これらの系列の利用のみを目的とする読 者は第 I 部だけを読まれればじゅうぶんであろう。 事通信機器部遜借方式研究室 249 2.3. 3. 応用 I 部特論(数学的側面〉 4. 線形回帰系列序論 4.1. 母関数および特性多項式 4.2. 回帰系列の周期 5. M 系列 5.1. 原始 P乗根 5. 2. 原始多項式と M 系列 5.3. M 系列の諸性質の証明 あとがき なお, PN 系列に初めて接する方々にも理解しやす いように予備知識をほとんど、仮定しないで、書いであるた め,中にはくどすぎる個所もたぶんにあるが,その点読 者の諒解を得たい。 I 部概 1. p N 系列{1)(2) 1. 1. 自己相関関数 本文全体を通して対象にする系列は,その要素が‘ o または‘ 1 ’からなるいわゆる“ 2 元系列”(binary sequences )である。以下,文中の“系列”という言葉 はすべて 2 元系列を意味するものとする。 まず初めに,系列の“自己相関関数”(autocorrela- tionfunction )について説明する。 いま,任意の周期 p(正の整数〉をもっ任意の系列を 便宜上 *l Pseudo-Random Sequences ;擬似乱数系列ともいう。 2直訳すれば“最大長系列”であるが,通常は本文のような表現が周 いられている。

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Page 1: PN系列ー特に M系列について - NICT...Vol.17 No. 90 電波研究所季報 May 1971 pp.249-263 解説 UDC 517. 5 PN系列ー特にM系列について 吉谷清澄特 (昭和

Vol.17 No. 90 電波研究所季報 May 1971 pp.249-263

解説

UDC 517. 5

PN系列ー特に M系列について

吉谷清澄特

(昭和 45,11, 27受理〉

目次

まえがき

第 I部概論

1. PN系列

1.1. 自己相関関数

1. 2. 定義および性質

1.3. PN系列の種類

1. 4. 例j

1. 5. 変換 PN系列

1.6. PN系列の Fourier解析

2. M 系列

2.1. 定義および性質

2.2. 発生法

まえがき

PN系列(Pseudo-Noise Sequences<~!;擬似雑音系

列〉の 1穫である M 系列(MaximumLength Sequ-

enc es;最大周期系列均〉は,その不規則性,鋭い自己

相関性および発生の容易さなどの特徴により,擬似雑音,

擬似乱数あるいは符号として各方面に幅広く利用きれい

ている。

ところで,この種の系列についての解説はいくつかあ

るようであるが,そのほとんどが応用面を目的とした論

文の一部分であるために,数学的背景を省略した簡単な

ものにとどまっている。

ここではそのような事情に留意し, PN系列,そのう

ち特に M 系列について,その数学的側面をも含めてな

るべくていねいに解説することを試みた。

内容は,一般的説明と利用面を扱った第l部および数

学的背景にふれた第E部からなっている。

したがって,これらの系列の利用のみを目的とする読

者は第I部だけを読まれればじゅうぶんであろう。

事通信機器部遜借方式研究室

249

2.3. 例

3.応 用

第I部特論(数学的側面〉

4.線形回帰系列序論

4.1. 母関数および特性多項式

4.2. 回帰系列の周期

5. M 系列

5.1. 原始 P乗根

5. 2. 原始多項式と M 系列

5.3. M 系列の諸性質の証明

あとがき

なお, PN系列に初めて接する方々にも理解しやす

いように予備知識をほとんど、仮定しないで、書いであるた

め,中にはくどすぎる個所もたぶんにあるが,その点読

者の諒解を得たい。

第I部概 論

1. p N系列{1)(2)

1. 1. 自己相関関数

本文全体を通して対象にする系列は,その要素が‘o’または‘ 1’からなるいわゆる“2元系列”(binary

sequences)である。以下,文中の“系列”という言葉

はすべて2元系列を意味するものとする。

まず初めに,系列の“自己相関関数”(autocorrela-

tion function)について説明する。

いま,任意の周期 p(正の整数〉をもっ任意の系列を

便宜上

*l Pseudo-Random Sequences ;擬似乱数系列ともいう。

寧2直訳すれば“最大長系列”であるが,通常は本文のような表現が周

いられている。

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{a;)= (ao, ah・・・, ap-1> ao, a1,…), a1=0,l制 (1)

で表示する。

次に系列{aけから1周期分をとり出したものを

Ao=Caa, ah・・・, ap 1〕 (2)

で,またこの Aoのすべての要素を左方へ任意に h回

巡回シフトして得られるものを

Ak=(ak> ak+I> ・・・,aト 1) (3)

で,それぞれ表示する。

定義1(自己相関関数)

このとき,もとの周期系列{引の自己相関関数 p(の

を次式で定義する均。

b 日

p(k)=~二立=~ O;S;k三三 p-1 仏)店十β p

ただし, a,β は Aoと Akを各項ごとに比較した場

t:=a;と a;吋 2:.ti~一致する個所の総数(5)

β=a;と a;叶とが一致しない個所の総数

を意味する。

μ)式はまた次のように表わすこともできる。

i>-1 p(k〕=〔p-2J:~ (a; EB a;吋〉〕IP (6)

ただし@は exclusive-orすなわち mod2和の記

号で

(0, ai=ai+k a;EB a;+k=!

11,向キ a;+k

(7)

である。なお(め式における 2]は通常の和を意味し,ま

たぬの添字 iはすべて modp*3で考えるものとする。

(定義終り)

ところで自己相関関数 p(k)は一般的には系列の種類

や周期およびシフト回数 hの関数になるのであるが,

系列によっては次式で、示されるような特異な性質をもつ

ものがある。

fl, k三 0(mod p〕p(k) =I (s)

lK/p,k事 O(mod p),O三三 \K\亘p-1

このような系列は“ 2値自己相関関数系列”(tw←level autocorrelation function sequences)あるし、は単

に,“ 2値系列”とよばれる。

この解説の主題である PN系列は, 2値系列の 1種

になっている。

電波研究所季報

ところで, 2値系列は実は“組合せ理論”(comb也会

torial theory)における“差集合”(d近erencesets)

と等価な関係にあり,さらに実験計画法における“釣

合不完備プロック計画”(balancedincomplete block

design〕いわゆる“BIBD”とも密接な関係をもっ。

これらについては文献(1)(2)仲間仰などを参照された

L、。

1. 2. 定義および性質

以上の準備のもとに, PN系列の定義叫を次に述べる。

定義2 (PN系列)

次の四つの性質を満たす系列を PN系列とよぶ。

(PNー1〕周期性(periodicity)

周期系列である。

(PN-2)均一性(bal担 ceproperty)

1周期内において' o’の出現回数と' 1’の出現回数と

はたかだか1しか違わなし、。

(PN-3)連なり性(runproperty〕

1周期内において同じ要素が連続するものどおしを分類

した場合,それらのうちの 1/2H・5は連なり数時hのも

のである。

さらに,連なり数 hのものの中では,' 0’の h個連

なりと‘1’の k{回連なりとか半分ずつ存在する。

(PN-4)自己相関性(autocorrelationproperty)

l 1 k = 0 (mod p) (9)

-1/p, k事 0 (mod p〕

(定義終り〉

ところで,上記の性質のうち (PN-1)を除く (PN

-2), (PN-3)および (PN-4)は,硬貨を無作為に投

げて得られる‘表’(1), '裏’( 0)のランダム系列持7ー

いわゆる“Bernoulli試行列”にふさわしい内容のも

のである。

すなわち, (PN-2)および (PN-3〕は‘表’と‘裏’

がそれぞれ 1/2の確率で互いに独立的に出現すること

を規定しさらに (PN-4)は,系列自身とそのシフト

系列とがほとんど無相関であることを規定している。

本1a,=O,lは, a,=Oまたは由=1を意味する。以下同様。

P-1

*2 p(k)=~ GiGi+kで定義する場合もあるが《1>,本質的な差はない。

柑 i=mp+r,m.r=整数, o;;;;r三三ρ-1であ’るとき iar (mod tゆとすること。したがって,すべての整数はOから P-1の p個の

整数値に類別される。 haO (mod P)は k=mPを意味する。

叫これらの定義がそのまま PN系列の性質にもなっている。また,こ

れらの性質の窓味は次章2.3の例により具体的に理解される。

*5 kの値は,己の値が整数値になる範囲のものである。

本6“速なり数 h”主は,同じ要素が h個連続して出現するものを意

味する。

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Vol.17 No. 90 May 1971

一方, (PN-1)はこれに反して,周期性という,真の

ランダム系列にはあり得ない性質を規定している。

以上の説明で示されたように, PN系列には (PN-2),

(PN-3)および(PN-4)という“雑音的”な性質と,

(PN-1)という“非雑音的”な性質とが共に存在し

ているのである。

ここで注意すべきことは, (PN-2),(PN-3)および

(PN-4)の三つの性質が互いに独立的であることであ

る。

このことは 1.4の具体例によって確かめられるであろ

う。なお参考までに, PN系列の自己相関関数 ρ(めの

だいたいの様子を第1図に示す。

Jlk~

じ~ I I • ~1f>L I I 0 I I I I I |ーー一一一一 I I I I I I iJ I 1-----

第1図判 PN系列の自己相関関数 p(k), ((•)式〉

これをみてもわかるように, p(k)は k=O(mod p)

のところでのみ p臼 k値‘1’をとり,他の hのところ

では‘ーl/p’という, Pを大きくとればほとんど類、相

関とみなせる値になっている。

これが PN系列の“鋭いく自己)相関性”とよばれ

るもので, PN系列の(擬似〉雑音性を端的に示すもの

である。

1.3. PN系列の種類

PN系列としてよく知られているものに次の4種類

がある。

( i) M 系列(1)-(5)

2徳一1の形の周期をもっ。

(これについては次章以下で詳しく説明する。〉

( ii ) Legendre系列ωω〈めの(平方剰余系列)

4k-1形の素数の周期をもっ。

(発生法〉

/ハ快3 r 1, iが modDの平方剰余勢4であa.:=1ー』=<・¥Pl lるとき;-1,その他

(iii〕 Hall系列(1)(2)(8)

4k-1=4m2十27形の素数の周期をもっ。

これは Legendre系列の一部である。

(iv〕 双子素数系列(1)(2)(9)

q,q十2が共に素数であるとき q(q+2)の周期をもっ。

(発生法〉

251

1 (~)( ~ )時{一一一一J ' (i, q)対=1I q q十21

a;=f 1 I 1 i = O (mod q十2)

‘-1, その他

ところで‘上に示した系列は‘ 1’および‘-1’を要

素としてもっているが,これを‘0’および’1’の系列

に変換するには,‘1’→‘0’,‘-1’→‘1’なる変換を

施せばよい。(1.5参照〉

また( i)~(iv)の系列は全然、別種の PN系列になる

わけではなく,中には互いに重複し合っているものもあ

る。

なおここで注意すべきことは, M 系列はすべて PN

系列であるが,他の系列の場合,中には PN系列では

ないものもあるということである。 (次節(ω参照〉

1. 4. 例ω

参考までに PN系列の簡単な具体例を(a)に示す。

また{b){c)(d)は 1.2の PN系列の性質 (PN-2),(PN

-3)および (PNーのが互いに独立的であることを示し,

いずれも PN系列ではない例である。

(司(1110100) (M系列)

(PN-1〕~(PN-4)のすべてを満たすo

(b) (11011100010) (Legendre系列)

(PN-1), (PN-2)および (PN-4)を満たすが (PN

-3)は満たさない。

(c) (1111101110010)

(PN-1)および (PN-4〕哨を満たすが (PN-2)およ

び (PN-3)は満たさない。

(d) (10110010〕

(PN-1), (PN-2)および (PN-3)を満たすが (PN

-4)は満たさない。 第1表系列要素の変換表

PN系列 変換 PN系列

1. 5. 変換 PN系列

いま第1表のような

対応関係を考えるとす 一一一る。 (組〉 ・印は績の記号

このとき, PN系列を第1表により変換して得られる

ホ7ラγダム系列に対する統一的な定義ほ確立し七いない。

•• kくOのときは“右方”へ巡回タフ卜するζとを意味する。なお,

図ではー1/pの値を誇張して示してある。

判“Legendreの記号”

判互いに索な{つまり 1以外の公約数をもたない)数を i,pKしたと

き, x•=i(modP)が解をもてば.己の t を modp の“平方剰

余”(quadraticresidue)で射るという。

“二つの整数 i,qの最大公約数ゼ表わす記号,Lたがって (i,q)=lは

tと qが互いに索であることを意味する。

同この場合 p(k)=+l/P主なる。

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電波研究所季報

自由

一方, nが Pの整数倍でない場合には

p-1 I] e;2刊 k/P=-1k=l

252

系列を,便宜上“変換 PN系列”とよぶことにする。

ここで変換 PN系列の自己相関関数を p’(めで表わ

すと,これは(4)式および第1表から次式のようになるこ

とがわかる。となるので,帥式は次のようになる。

1 p-1 p’(k)=τ.2:1 aiai+k,

P i=O

ところで変換 PN系列と PN系列とは前述したよう

に,同ーの自己相関関数をもつから,帥式~制)式は PN

系列に対しでもそのまま成り立つ。

以上の結果をまとめると次のようになる。

PN系列の周波数スペクトル成分=

(19)

1Cnl2=1._(1+1-) =共1p ¥ pt P'

-"\乍平IICnJ一一予一

なぜなら, a,=a;+kであれば aiai+k=l, また a;詩

的吋であれば a;a;+k=ー1となり,これらの総和がち

ょうどい)式の分子に等しくなるからである。

したがって変換 PN系列の自己相関関数は PN系列

のものとまったく同ーのものになり,次式が成り立つ。

a,=l,ー1

(11) (modp)

nu 草L

M

ゐμa

J

’’ L

um

T4

il 一一、、,ノ

志MW

〆Lnv

k=O

申。(modp)

(modp)

PN系列の電力スペクトノレ成分:

御三O

n事O

I I/p, ICnl=I

l、伝干I/p,

(modp)

PN系列の Fourier解析

PN系列を Fourier解析するために,周期 9の変換

PN系列を次のように“インパルス7U”として表示し

た場合を考える。

1. 6.

(modp) n=O

nu 詰an

9u

hU晶

’,J

2

可ノ

AY

i

4

1

1

噌E

---AU晶

f‘、

(l

一一。4.“ C

上記の結果をみると, PN系列の周波数スベクトルお

よび電力スベクトルは,自己相関関数の場合と同様に周

期9の高調波以外の成分において平坦な特性になってい

ることがわかる。

(mod p) (幼

このとき(12)式を Fourier級数展開すると,その Fou-

rier係数は次式のようになる。

a‘=1, -1 I] a,a(t-i),

次に,変換 PN系列を今度は次のように“パルス列”

として表示した場合を考える。

。時1 p-1

Cn=すzPoa1ej2•n I IP' j=ゾ才

I] a;u(t-i),

この式から仏の絶対値を計算する。

1 p-1 p-1 c .. 12=-,;,2J a1ej2司 IIP 2J ame-;

P-1=0 m=O

倒a,=l, -1

ただし1 P-1 P-1 =-,;,-2J 2J a向 e;2吋 (I m) IP

Y“l=O m=O /l, i ~玉 tく i-Hu(t-£) =I

¥0,その他

似)式で‘表示されるパルス列は“PN波形”とよばれ

る(2)。この場合の Fourier解析は周知のとおり先の結

果に関数形

似)p

-u晶旬

,u

、‘11

’k

m

a

m

a

↓2吋P

M

Itt

110

-pl-z

b‘JR

1一戸一一

ここでくlQ式および(11)式を用いると

唱。-1¥C,.¥2=+2J p’くのe;2川 IP

Pk=O 制〔自説旦)

1 {咽-~ーll ,,j2'11k/P' p¥ p在11- I を乗ずるだけでよい。したがって次の結果が得られる。

PN波形の周波数スペクトル成分:

(!$

(mod p)

くmodめ

弛 三O

10.1~ /q三〔ザ)時O白骨

。司

したがって,匁が 9の整数倍である場合には

(modp)

(modp)

¥c .. 12す(1一平)す略言。時三OIC.,I =l/P,

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Vol.17 No. 90 May 1971

PN波形の電力スペクトノレ成分:

I 1 lh2• n""'O (mod p)

IC」2={‘ . , ・ー ω I PH「sin(πn/世)12 ,-, l~l己主治三LI ,岬0 (modp)

また, PN波形の自己柑関関数んか〉は次式で表わ

される。

f 1ー皇芋2+1. |ヶ|孟1

PwCャ) ={ •

1-t 1くH計一1

なお参考までに, PN系列および PN波形の電力ス

ベクトノレと, PN波形の自己相関関数のだいたいの様子

をそれぞれ第2図,第3図および第4図に示す。

なおこれらの図においては, 1/p2およびーl/pの値

を誇張して示しであることに注意されたい。

帥後l

2. M 系 列m-(5)

2. 1. 定義および性質叫

定義3(M系列〕

1.2で述べた性質 (PN-1)~(PN-4)を含む次の五

つの性質(M-1)~(M-5)を満たす系列を M 系列とよ

ぶ。

(M-1) 周期性

P=2”-1なる形の周期をもっ制。

(M-2) 均一性

1 周期内において,

'1’の出現回数=2nー1=CP+l)/2

'o’の出現回数=2”ー1-l=(P-1〕/2

(M-3〕連なり性

1周期内における連なり数 k(正時一2)の出現回数

は 2n-トlであり,このうち 1’の連なりと‘0’の

連なりは半分ずつ存在する。また,速なり数 hのも

のの出現率は 2寸である。

そのほか,連なり数作一1)の' O’の連なり,お

よび連なり数刊の' 1’の連なりがそれぞれ1回ずつ

出現する。

(M-4) 自己相関性

( 1, k==O (mod P) p(k) =l 倒

l-1/(2”-1〕=-1/p,k手O (modp)

(M-5) Delay-and-Add性

系列の1周期分 Ao=(ao,a1,・・・, av 1)と,これを

253

山一山…11叫1I40

t~mr lとで

第4図 PN波形の自己相関関数 Pw(τ),〈〔27〕式)

任意、に h回シフトした Ak=(ak,ak+l,…, ak-l〕制と

の各項ごとの mod2和から得られる系列は,再び Ao

の適当な巡回シフト系列になる。

すなわち,

A。EBAk =Cao EB ak, a1 EB ak+l,…, av-1 EB ak-1)

=(a;,a叫,…, a;-1)

=A;, Oくiく金 倒

となるような, Aoの巡回シフト系列 A;が存在する。

(定義終的

ところで上記の性質のうち最後の(M-5〕Delay-担d

-Add性なるものは,他の PN系列にはみられない特

異なものである。この性質と(M-2)均一性とを用いる

と, M 系列は誤り訂正能力喝をもっ巡回符号の 1種に

なり得ることがわかる。

M 系列には上記のほかに次のような性質もある(1)(5)。

いま周期 9のM 系列(ao,a1, .. ., av-1> ao, ah…)が

あるとすると,これを逆向きに並べて得られる系列

(av-1> av-2,…, ah ao, av-1,…〕 納

判ほかの τに関しては, 1周期分の繰返しになる。く第4図参照〉

叫これらの性質の意味は 2.3の例により具体的に理解される。また M系列がこれらの性質をもっ己主の証明は第E節 5.2に示されている。

*"nの意味は次節で明らかになる。

制この系列も M 系列になることはいうまでもない。

制Ao.Ai.-・-.A,-1をそれぞれ符号ベFトルとみなせ呼,このときρ筏号閑距離(Hamming 距離)はか- I になり,したがって 2•-•-1

個以下の誤りを訂正できる。

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254

もまた M 系列になることは容易にわかる到。

また,周期 P=2"-IのM 系列から h個(=21,1孟

l亘p-1)おきにとり出して得られる系列

(a0, ak, a2k,…), k=21, 1亘z;;;;;p-1 帥

は,再びもとの M 系列の適当なシフト系列になる。

一方, P}こ素で,かっ 21には等しくない数 h’をと

るとこのときの系列

(a0, ak', azk',…), (k',p〕=1,k'キ21,

1三玉1三三P-1 事場

は,もとの M 系列のシフト系列にはならないが,やは

り周期 P=2”-1の M 系列になる。

2.2. 発生法勾

2. 2.1. 直接計算による発生

周期 P=2"-Iの M 系列 {a;)=(ao,a1,…, ap-i. ao,

ai.…)は次に示される n次線形回帰方程式湖(lin句 r

recurring 岡田tion)により生成される制。

n a, ""'z~ c,a,_1 (mod 2), i=い十I,・ (3a)l'5

ただし“初期値”(ao,ai.・・・, a,._1)は,すべてが‘0’

である場合(以後これを allOと略記する〉を除けば任

意に ・o’または‘1’を与えてよし、。また叫個の定数

Co, C1,…, c”は次に示されるような時次原始多項式喝

の係数である。

n f(.z)=Lj Ct.Z1,

l=O

Co=ら=1

C1=0,I, 0くZ<n

(34)

ところで納式の Ci, '勺 C”が一定であれば,初期値

を変えて得られる M 系列どおしは互いにシフトした関

係になる。(第E部5.3参照)

電子計算機による M 系列の発生には倒式をそのまま

用いればよし、。

2.2.2. シフトレジスタによる発生

帥式をみると,周期 2"-1の M 系列は第5図のよ

うなフィードパック付 n段シフトレジスタにより簡単

に発生できることがわかる。

ここで第5図の回路の働きを簡単に説明する。

( i〕いま,ある時刻 foにおける時個の :flip-flop

.x,.,ι-I,・.., .ZJの内容がそれぞれ aトi.aト2,…, aげで

あったとする。(第5図)

電波研究所季報

•• x町・a .. x,

口:flip-flop柑 @:{ ~:~ ~~;= EB :mo<i2和

第5図 M 系列発生 n段γフトレ'/ ;Aタホ8

(ii) このとき次の clock叫がくると,んの内容 a;-1

が Xn-1に, Xn-1の内容 a;-2が仇 2に,…, X2の内畦

容 a…1が X1に,それぞれ移され, ιにはlヨ帆-l

""'a;(制)式〕がフィードバックされる。

Xn Xn-1 •2 x,

第6図 (第5図)の次の状態図

このとき同時に, .ZJの内容 a,_,.が出力される。

(iii)上の動作が完了すると,時刻 t0+Ll(Ll=clock

間隔)におけるシフトレジスタの状態は第6図のように

なる。

そこで flip-flop.Xi, X2, ・・-,仇に初期値 ao,a1,・・,

a.-1を(allOを除いて)任意に与えて,上記の(i)~

(出〉の動作を繰り返えすと,その結果周期 P=2”-1*

の M 系列が順次出力される。

以上の説明でもわかるように, M 系列は原始多項式

さえ既知であれば,回帰方程式(泊)式あるいは第5図のシ

フトレジスタ回路のいずれを用いてもきわめて簡単に発

生できる。

M 系列が PN系列の 1穫として他のものよりも重要

視され,各方面で活用されている最大の理由は,この

“発生の容易さ”にあるといえるのである。

本1一般に PN系列の逆向き系列もまた PN系列である。

叫ここで述べる方法のほかに“母関数”を用いる方法もある。 く第E部

4.1参照)

*•n 階線形差分方程式 (lin回r difference equation)でもある。

制したがって M 系列は“回帰系列”の1種である。なお M 系列が

(33)式および(34)式により生成される理由は第E部で詳しく述べる。

判乗法は 0・a=O.1・l=lで行なう。〈第E部2.1(41)式参照)柑第E部5.2および付録I参照。本7・0’または‘1’のどちらか一方の状態をとる回路。

叫この回路は“有限状態オートマト Y”の1種である。

叫これにより各部の動作が開始される。

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Vol.17 No. 90 May 1971

ところで M 系列発生の“鍵”ともいうべき原始多

項式についてはすでに多くの研究がなされており,特に

文献(3)には n=34次(周期=約 1.6x 1010の M 系

列を発生〉までのものが多数示されている。

この解説の付録にもすぐ利用できるように,いくつか

の原始多項式を示しておいた。

なお, M 系列を高速で発生させる方法が文献(II)に示

されている。

2.3. 例

1. 1. 2. 1および 2.2で述べたことを具体的に理解す

るために,ごく簡単な例として4次の原始多項式により

発生される周期 15(=24-1)の M 系列をとりあげる。

2.3.1. 直接計算による発生

まず4次の原始多項式 f(x)=1~ c1x1の係数は付録

にあるように

(co, c1, c2, c3, c4) =(l, 1, 0, 0, 1)

であるから,納式を参考にするとこの場合の回帰方程式

は次式になる。

a,=a;-1 ffi a;-4・ i=4,5,・・

ここで初期値として便宜上向=a1=偽=0,a3=lを

与えると,この条件のもとで例式により生成される M

系列は次のようになる。

('000111101011001’0001・・…・〉帥樹甑髄

これをみると‘’内のものが1周期分の系列であり,

周期が 24-1=15になっていることがわかる。

2.3.2. シフトレジスタによる発生

制式および第5図を参考にすると,この場合の M 系

列発生回路は第7図のようになる。

~ X;s Xz X1

第7図周期 15の M 系列発生回路

そこでこの回路において創.p-flop(x4, .%3, X2, X1)の

初期値を 2.3.1の場合にならって(1,0,0,0)とすると,

各時刻における(拘,.%3,.%2,.%1)の状態は(2.2.2の(i)

事第5図の回路により発生し得る系列の最大の周期はおー1であるこk

は容易にわかる。〈なお第E郎4.2参照)

255

~(iii)を参考にすれば〉次のように変化してい〈こと

がわかる。

(.%4.%3.%2.%1)の内容の変化

1000→ 1100→ 11~0→ 1111→ 0111 -+ 1011 -参0101

-令 1010→ 1101 → 0110→ 00~.1 → 1001 → 0100→ 0010

00~~. :

→以後繰返し

これから出力系列となる .%1の内容〈…のついた部

分)をとり出すと次のような M 系列が得られる。

(‘000111101011001’0001・・・) 初期値

車場

これは当然のことながら先の結果納式に一致している。

なお側式をみると(均約・.%2.%1)の状態が, I周期の聞に

すべての可能な状態(1から 15までのすべての整数の

2進表示〕を経過していることが確かめられる。

制 2. 3. 3. (M-1)~(M-5)の検証

次にいま得られた働式の M 系列の1周期分

A6 = (000111101011001) 帥

車時 が2.1の性質(M-1)~(M-5)を実際に満たしている

かどうかを調べてみる。

(M-1) 周期性

周期 P=l5=24-1をもっ。

(M-2) 均一性

'1’の出現回数=8=24-1

'O’の出現回数=7=2'・1-1

(M-3)連なり性

連なりを分類すると次のようになる。

I ooo ! 1111 J o i 1 j o ! 1i I oo J 1

したがって

分類数=8

。,u一一回4

因。,“。a

nu

噌ム

’’BEa

‘BEE

-、の’もの

噌E

--数h

y z

d

’, 連

出現率=す=2-1

e,e

n4 =

因。,“計、E

EEE

,EEEJ

噌E4

噌E

--

AU

i

AU

A

r--‘E

・E・、のもの

の4数h

リra

ふJ連

出現率=す=2-2

連なり数3のもの' 000’ 1回計1団

連なり数4のもの' 1111’1回計1回

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お6

(M-5) Delay-and-Add性

Aoとこれを左方へ1回巡回シフトした系列 A1

との mod2和を計算する。

A。=(000111101011001)

ffi) A1 = (001111010110010)

Aoffi A1 =(001000111101011)

このとき右辺は Aoを左方へ 12回巡回シフトしたも

のになっているから,これは A12に等しい。

・.~ ffi A1 =A12

Ao= (000111101011001)

ffi) A2= (011110101100100)

Aoffi A2=(01100100011110l)

人 AoffiA2=A9

同様にして AoE9 A3, ・・・, Ao E9 A1sにいって計算す

ると Aoが Delay-and-Add性を満たしていることが

わかる。

(M-4) 自己相関性

(Mーのおよび (M-ー5)により任意の k(Oくk<14

15)に対して l]0(a1 E9 a1+k)=8, O < kく15

これと(め式から

p(k〕=(15-2x8)/15=ー1/15

= -1/(24-1), 0くhく15

p(O)=l

となる。

以上により倒式が (M-1)~(M-ーのをすべて満たして

いることが確かめられた。

この例によって, PN系列の性質 (PN-1)~(PNーの

およびM 系列の性質(M-1)~(M-5)を具体的に理解

されたことと思う。

3. M 系列の利用

PN系列の代表的存在である M 系列は,その発生の

容易さから各方面にいろいろな形で利用されているが,

その中から主なものをあげると次のように分類できる。

(i) 鋭い自己相関性を利用したもの:レーダ(2)C12),

符号ωω

(ii)雑音性を利用したもの:擬似白色雑音源(13)(14)

〈出) M 系列固有の性質を利用したもの:符号誤り

率測定(15)

なお擬似乱数として利用する場合には,周期をなるべ

く大きくとり,そのうちの一部分を使用するほうがよい

電波研究所季報

であろう。

第 E部特論(数学的側面〉

第 I部では PN系列および M系列の一般的な説明

を行なった。

これに対してこの第E部では,特に M 系列について

その理論的背景にふれることを目的としている。

ところで M 系列の理論は“円分剰余類”(cycloto・

mic cose旬〉,“差集合”などの概念を用いて代数的に

構成するのが,全体的な見通しもよくきくので具合がよ

い。しかしそれには代数学についての予備知識をある程

度仮定しなければならず,この解説の初期の目的にそわ

なくなる。

そこで,ここでは予備知識をほとんど必要としない,

線形回帰系列論を利用した説明を試みた。

4. 線形回帰系列序論(1)(5)

初めに系列の要素である' O’および 1’についての

代数的説明をしておく。

いま, Oおよび1の二つの元からなる集合{0,1)を考

え,この集合の元について次のような二つの結合関係ー

“加法”および“乗法”ーを定義する。

(加法)剖 (乗法〉

+Io 1 ・Io 1 (41)

このとき集合{O,l}は“有限体

なり,通常これを GF(2)で表示する。

GF(2)= {0,1) (4P)

GF(2)においては例式から次式が成り立つ。

-0=0 同鵠

-1=1

4.1. 線形回帰系列と母関数

2.2の納式にならって,次のような錫次線形回帰方

叫 m。d2和である.

軒ある適当な集合があり, Eの集合の各元に対していわゆる“四郎算法”

〈加減乗除〉が自由にできるとき,この集合を“体”(field)とよぷ.

こ自主き,集合の元の偶数が有限ならば有限体,そうでなければ無限

体あるいは単に体主主ぷ。たとえば有理数全体の集合Qは体である.

なお GFは GaloiField {ガロ7体〉の頭文字である。詳しくは代

数学の参考書E,たkえば文献ωなど参照。

柑・.・ 0+0=0,1+1=0

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Vol.17 No. 90

程式を考える。

11 a;=~ c1a,_1

l=l

May 1971

(mod 2), i=n, n十I,・

c”=l, C1=0,l, 1三三l;;玉n-1

a1=0,l

このとき初期値 (ao,al> ・・・, an-1)を与えた場合,こ

の式から生成される系列を“線形回帰系列” (lin伺 r

recurrent sequences)とよび,これを 1.1の(1)式にな

らって次式で表示する。

{a;} = (ao, a1,…, On-I> On, a”は,…), a1=0, 1 (4母

また,(441式の C1を係数とする叫次多項式

11 /(x)=1~0 c1X1, co=Cn=l, c1=0,l, 1亘1自-1

白骨

を回帰系列 {a;) の (n次〉“特性多項式”(characte-

ristic polynomial)とよぶ。

さらに,(喝式の各要素を係数とするベキ級数

Cゆ

G(.x)=.:E a;x1 i=O

白骨

を回帰系列 {adの“母関数”(generatingfunction)

とよぶ。すると回帰系列 {a;) と母関数 G(.x)とは明ら

かに1対 1に対応づけられることになり,母関数は回帰

系列を調べるうえで有効な概念となる。

ところで例式,納式および制式をみるとわかるように,

母関数 G(x)と特性多項式 f(x)とは互いに密接な関

係にあることが予想される。次にこの関係を明らかにす

る。

いま G(.x)の係数 a;が例式により決定されるものと

すると, G(.x)は(ω)式および例式から次のように変形で

きる。

11-l 00 11 G(.x〕=:Ea;.zi +~ (~ c1a;-1)x

1=0 i=11 1=1

11-l 11 00

=~o a,.xLf-~1 c1.x~~11 a,_,,xi-1

11-l 11 00

=~ a,.x• 十~ c,.x' ~ ak.xk i=O /tj k=n-l

11-lη-1 oo n-l-1 =.I: a;x• +~ c1x1 〔~ akxk - ~ ak.xk〕i=O l=l k=O k=O

+ Cn.Xπ~ akxk k=O

257

11-l 11-l 11-l-l 11 づヨ a,x;-l~ k召叫が叫G(xう~ C1JC1

ここで右辺第3項を左辺に移すと左辺は次のようにな

る。

11 11 G(x〕〔1-1~ c1x1〕=GC:t¥Ic}c川 =G(x)f(x)

納式を用いると跡式は次のようになる。

ただし

G(x) =_!!_坐Lf(x)

11-1 11-l 11-l-l h(x)= ~ a1.zi+ ~ ~ c1akxl+k

i=O l三1k~

胸骨l

(5~

この(司式が回帰系列 {a;) の母関数 G(.x)と特性多項

式 f(耳)との関係を表わす式である。

したがって特性多項式 f(的(鱒式〕が決まり,初期

値 (ao,a1,…, On-1)が与えられれば,回帰系列{a;}は

仰)式の回帰方程式あるいは制)式の母関数のいずれを用い

ても生成できることがわかる。

なお制式をみればわかるように,帥式の分母 f(.x)の

次数が時次であるのに対し,分子 h(x)の次数は (n-

1)次以下であることに注意されたし、。

4.2. 回帰系列の周期

前節で明らかにされたように,回帰系列 {a;) は特性

多項式/(.x)および初期値 (ao,a1,…, a徳一i)が与えら

れれば一意に決定される。このとき例式または胸)式によ

り生成される回帰系列は,その名のとおり必ず周期性を

もつことが次の定理により示される。

定理1

骨次特性多項式 J(x〕により生成される回帰系列{a;}

は必ず周期性をもち,かっその周期 Pはたかだか 2”

-1である。

1三玉9孟2”-1 同

(証明〉

いろいろな証明法があるが,ここでは直観的にわかり

やすい方法で証明する。

いま(ω)式に注目すると, a;は右辺の骨組(時-tuple)

c1a;-1> c2a; 2,…, C旬a,_”により一意的に決定される。

制符号の反転は(43)式による。以下同様。

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258

ところで,仕組.pieのとり得る可能な状態の総数はznであるから,係数 (Ci.C2,・・・, cρ が一定であれば,初

期値(ao,a1,…, an-1〕をどのように与えても,先の n-

tupleの状態はたかだか 2”個の状態経過の中で必ず最

初の状態にもどってしまう。このことは,とりもなおさ

ず系列{a;}が周期系列になることを示している。

ところでn-tupleが allOである場合(たとえば初

期値が allO)には,生成される系列は常に0だけから

なる O系列(00・・・)となる。このようなものを除外する

ことにすると n-tuple の可能な状態数は zn~l になる。

したがって上記の回帰系列{a,}は周期 p(1孟P三三

2徳一1)をもつことが結論される。

(証明終り〉

定理1で回帰系列の周期性が示されたが,次に述べる

定理2はその周期の値を決定するものである。

定理2

時次の既約券1な特性多項式 f(x)により生成される回

帰系列{a;)の周期は, f (x〕で割り切れるような多項

式 (,;P十1)の 9の最小値で与えられる。

{a;)の周期=inf(p;f(x〕J,;P十1) 同勢2

さらにこのときの周期は初期値 Cao,a1,…, a十 1)に

は依存しない。

(証明〉

4. 1の記号をそのまま用いる。

( i〕 {叫が周期 Fをもっと仮定する。

h(x)/ f(x) =G(x)=(ao十a1X'十・・・十ap-JXPーI)

+xP(ao+a1x十…+ap-JXト 1)-:-・ .

=Cao十a1x-:-・・・-:-ap_1,;P-1)(1 +〆

+z2P十・・・〉

=Cao「!-a1x-:-・・・+ap-JXト I〕/Cl+が〉

(制〉

したがって

h(x)(l+xP)/ /(x)=(ao+a1x十・・・十ap-JXP-1)

この式において,前節で示した d(h)くd(f)制なる

ことと f(x)の既約性を用いると/(x)ICl+xつが結

論される。

(ii) /(x)l(l-1ーが〕を仮定する。

h(x)(l+が)/f(x) =bo-l-b1x十・・・-:-bp-JXP-1

とおくと

h(x)/ f(x) =Cbo-l~b1x -:-··・十bp“1Xト1)/(1-J-,;P)

電波研究所季報

=(bo+b1x+…十bp-1X'1)(1 -トx•

+z2P十・・・〉

=(bo+b1x+…+bp-1X' 1)ー:-xP(bo+b1x

+…+bp-JXト 1)ー!ー・

00

・G(x)=Eo a戸=bo+b1X十十bp1x• ー 1

十bcx• Fトb1zP+I+・・・

この式において同じ次数の係数を等しいとおくと

b;=a,=a;+•=a;+2P= ……, i=O, 1,2,…

となる。したがつて{a;}

り,結局{a,}の周期はこのような 9の最小値で与え

られることが結論される。さらに,この周期 9が初期

値 (ao,a1,…,an-1)に依存しないことは,上記の証明の

過程をみれば明らかである。 (証明終り)

5. M 系列

5. 1. 原始 p乗棋

4.2の定理1および定理2によると, n次の既約な特

性多項式を適当にとれば,それにより生成される回帰系

列{a;}は最大周期 zn-1をもち得ることがわかる。

この節および次節では,そのような特性多項式がどん

な性質のものであるかについて説明する。

いま周期 P=2n-1をもっ系列(引を生成する n次

の特性多項式/(叫が存在するものとすると,定理 2

から次式が成り立つ。

/(x)l(x'十 1), P=2徳 一1 (54)

これは(zP+l)を既約多項式の積に因数分解したと

き,そのうちのある因子が f(x)であることを示して

いる。そこで(,;P-:-1)の因数分解について考えると,

これは

zP+l=O 帥

あるいは

x'=l (5母

の根がすべて求められれば可能となる。

ところが,制式の根は一見してわかるとおり 1の p

判 GF(2)の係数をもつより低次の多項式に因数分解できない多項式の

こと。なお f(ゆが可約(非既約)である場合の周期については文献

( 1)(5)を参照されたい。

判 h inf”は“下限”を意味する記号。また, f(エ)lg(x〕は' f(x〕が

g(x)を割り切ることを意味する H Landauの記号”である。

同〔l+xP)〔1十XP+x'P+・・・・・・)=1判 d(f〕は jてx)の次数(degree)を意味する記号である。

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の累乗として生成される。

また,このような根 rk'は 9乗して初めて 1に等し

くなる(このことを“{立数”(order〕9をもっという〕

ことも,先の説明から容易にわかる。

このとき,例式で表わされるような位数 9をもっ根

rk'を1の“原始 9乗根”(primitiveroot)とよぶ。

次に, Pが与えられた場合, 1の原始 9乗根がいく

つ存在するかということについて調べることにする。

これは(印)式をみればわかるように, 1三玉h’<Pで (k',

P)=lすなわち 9に素である整数 k'の個数に等しい。

このf回数を rp(p)とすると,これは“Euler・の関数”

259 1971

乗根であり全部で 9個存在するが,このうちで GF(2)

に属するものは根’1’だけである。すなわち(司式は

GF(2)の範閤だけでは完全に解くことはできない。

この制限をなくすために, GF(2)に 1以外のすべて

の1の 9乗根を追加して新しい集合をつくる。このよ

うにして得られる集合は全部で?個到の元を含み,こ

れもまた有限体となる*2。これを通常 GF(2つで表わ

す制。

May No.90 Vol.17

このようにすると伺式は GF(2つにおいてすべての

根をもち,それらはよく知られているように次式で表わ

される。

ゆ〕=Pi~(i-去)(sカk=O,l,・・・, p-1 rk=e;2,k IP,

(61)"制”ま

=甘 q;•;-l(q;-1)i=l

P=2n-1. i=、/一:工E

次に制式において h カ~p に素である場合を考える。

このような hを k'で表わすと,根 r/ただし

制(k’,P)=l rk' =e2d k’IP, 、‘ノ解分数因素のA

y

rt、、

数素一一q

nuz

mπ4

一一ay

により求めることができる問、

ここで P=2n-Iの場合には次式が成り立つ{16)。

の 9個の累乗

rk' =e;2,k' 1P, η'2=eJ2<2kl IP, ・・・,

(同

すなわち, 1の原始(2偽ー1)乗根の個数は帽の整数

倍だけ存在する。

叫|φ(2”-1)

制)rk'P =ej2,Pkl IP( =1)

は互いに相異なる 9個の, 1の 9乗根となる。

なぜ、なら,もし 1均 m,1 :;=;;,i,m;;玉Pに対して

5.2. 原始多項式と M系列

前節の説明によって多項式(xP-!-1)は, rp(p)個の

原始 P乗根と p-rp(p)個のその他の 9乗根(位数ぐ

p)をもつことがわかった。

そこで少(2”ー1)個の原始(2”-1)乗根のうちの時

個を根としてもち,かつ係数が GF(わであるような部

次多項式ーこれを“原始多項式”(primitivepolyno-

mial)とよぶωーを f(的で表わすと,

I l ,.‘ rk =γh

となったとすると,倒式から

(mod p)

となる。ところが (k',P)=lであるから,上式が成り

立つためには

(mod p)

(mod p〕

lk'/P = mk'/P

(l一例)k'= 0

したがって

lk’E mk’

倒P=2π-1 f(X) ¥,_;P十1,

および(mod P)

となることが必要であるが,これは先の条件のもとでは

不可能である。

以上のことから次の結論が得られるo

xP=lのすべての根(制式〉は,根

l-m =O

*' 2+P-1=2+2•-1-1=2• 判一般に qを素数とすると. q”個の元をもっ集合は有限体 GF(qn)になることが証明されるは酌。

叫己の GF(2•) を, XP+l の“分解体”(decomposition field) あるいは GFくめの“拡大体’(extensionfield)とよぴ,これに

対して GF(2)を“基礎体”(groundfield)とよぷ。詳しくは文

献(16)などを参照されたい。

キ4この式は任意の正の整数に対して成り立つ。

く例) P=15のとき, 15に索な数は {1,2,4,7,8, ll, 13, 14}の8個,

一方紙15)=ψ(3・5)=(3-1)(5-1)=8

P'<2”-1 /(x)¥xv'+l,

九’=e;2.k'IP, (k',P)=l, 1三玉h’くp,P=2n-I

加)

の適当な累乗(制式〉に等しくなる。

いいかえるとs すべての' lの9乗根’は絢)式の η’

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260

が成り立つことは容易にわかる。さらに,この/(,;)は

既約であることも証明できる(3)(16)。

したがって, 4.2の定理2制式,(回)式および例式を用

いると, n次の原始多項式を特性多項式にすれば,これ

により生成される回帰系列同}は“最大周期 2”-1”

をもち,次節でこれが M 系列になることがわかる。

ところで,互いにシフト関係にある M 系列を同種の

M 系列であるとみなすと,周期 2”-1の相異なる M

系列の数は,上記の結論から骨次の原始多項式の数だ

けであることがわかる。すなわち,この個数は納式によ

!P(2”-1)/n

で求められる。

以上の説明によって, M 系列が原始多項式により生

成される理由についてだいたい理解されたことと恩う。

5.3. M 系列の諸性質の証明

この節では,第I部2.1で述べた(M-1)~(M-5)の

性質を前節で、述べた M 系列が事実もっていることにつ

いての証明をする。

前節までの説明からわかるように,周期 P=2”ー1を

もっ M 系列{a;}=(ao, a1,…, aP-1> ao, a1,…〉がある

とすると,このときの n-tuple(a.ト伽向ー肘l,…, a;-1)

の状態は, 1周期の聞にすべての可能な状態( 1から

2”-1までのすべての整数を2進表示したもの)を各々

1回ずつ経過する。

このことをわかりやすくするために, 1周期内におけ

る n-tupleの状態を便宜上次のように行列表示する。

(冊ーtuple)

aoa1・・・・・・・・・・・・a何 I

a1a2・・・・・・・・・・・・an

a;-πa,_旬+1・・・・・・a;-1I, a,=0,1

a‘ー旬+lai-n+2・.....a,

ap-10J・・・・・ .... an 2

すると例式の各行は, l願序は別にして, 1から 2n-l

までのすべての2進表示を表わしている。

また(時式の各列は M 系列{a;)のシフト系列になっ

ていることもわかる。

以下の証明はこれらの事実をもとにして行なう。

(M-1)周期性

1色申

電波研究所季報

明らかに周期 P=2”-1をもっ。

(M-2)均一性

各行の2進数において,いちばん左のほうを2進数の

最下位とみなせば, 1から 2”-1の聞に奇数(最下位

=1)は γ-1個,偶数(最下位=0)は 2”ー1-1個存在

するから, (ao,a1,…,ap-1)において‘1’は 2n-1回,

・o’は 2錨ー1-1回それぞれ出現する。

(M-3)速なり性

M 系列の 1周期分 (ao,a1,…,ap-1)を制式の各行の

ように n-tupleずつに区切る。このとき各行において

連なり数 hのものが何回出現するかを調べる。

まず速なり数 k(l三玉h豆綿一2)の' 1’の連なりにつ

いて調べる。これを便宜上,事時式の n-tupleにおいて

(Oll・・・lOXX…X) ' 1三三h三三n-2

k n-k-2

の形で勘定すると, X印は任意にとれるから,この形の

ものは 2”ート2個存在する。このことは‘0’の場合に

ついても同様に成り立つから,結局速なり数 k(l亘K

;S;;n-2)の出現回数は次式で与えられる。

2•-k-l (時

すると連なり数 hのものに含まれる‘0’および‘1’

の個数は全部で

n-2 71 k2"-k 1=2n 2叫k=l

だけある。したがって残りの部分は 2"-1ー(2π-2n)=

2n-lとなる。このうも,連なり数恨の' 1’の連なり

があることは明らかである。すると最後の残りは連なり

数 (nーめのものであるが,これは (M-2)の均一性に

より‘0’の速なりであることがわかる。

以上のことから,速なりの分類数は

au nL 一一。AL

Lv’

。,“

A

a

L

2r目(6暗

事。 であり,これと(同式から速なり数 hの出現率は

2"-k 1/2"-1=2-k, 1三三h三玉時一2 (6時

となることがわかる。

(M-5〕 Delay-and-Add性

前述したとおり, M 系列は特性多項式の係数 ci,c2,

・, c”が一定であれば,初期値 (ao,a1,…,a,_1)によ

り一意的に決定される。そこでいま初期値 (ao,ai. ・・・,

a十 1〕による系列を Aoとする。このとき他の任意の初

期値を考えると,これは例式のいずれかの行に必ず一致

するはずであるから,これを (ak,ak+I,…, ak刊ー1)と

表示することができる。

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Vol.17 No. 90 May 1971

このとき初期値 (ak,ak+I,…,a偶吋ー1)による系列 Ak

は明らかに Aoの h回シフト系列になっている。

ところで Aoおよび Akは同じ回帰方程式

a,=亙c1a,_1 (mod 2)帥

を満たすから当然次式が成り立つ。

仇 =c1a.十 d-c2a”-2十…十cnao (mod 2〕帥

ak+旬:= C1ak+徳一1-トc2ak刊ー2+・・・+cπak (mod 2) 同

帥同の両式を mod2加算すると

仇十ak+n= c1(an-1+ak柑ー1)十c2(an-2+ak+”-2)十・.

-l-cη(aa十ak) (mod 2)伸

となる。ここで n-tuple{ao EB ak> a1 EB ak+I,…,a勾 1EB a,+十 1)について考えると,これもやはり例式のいずれ

かの行に一致するから,これを (aha•+I,…, ai+n-1)で

表わすことができる。

すると同式から次式が成り立つ。

a,悼= c1ai+n-l +c2ai+n-2+…+en的(mod2)似)

ところで初期値 (a.,a叶I,…,a;+n-1)による系列ん

もやはり Aoの i回シフト系列である。

以上のことから結局次式が得られる。

A。EBAk=A; 。時

ここでもちろん OくtくPであり,かっ t持hである。

(": i=kとすると Aoは0系列になってしまう。〉

(M-6) 自己相関性

自己相関関数の定義((6)式), (M-2)および(M-5)

により明らかである。 (証明終り)

あとがき

第I部においては PN系列についての一般的説明を

行なった。そのうち特に M 系列については,その発生

法を具体的に述ぺ,付録Iを用いることにより直ちに利

用できるようにした。

一方第E部においては, M系列の数学的側面を線形

回帰系列論を用いてわかりやすく説明した。そのうち

M 系列と原始多項式との関係については詳しく説明し

た。ただし予備知識をほとんど仮定しないという条件

のために,内容がある面に限定されたことを断わってお

く。

なお,この解説で、述べなかったことのうちで特に重要

と思われる関連事項は,だいたし、次のようなことであ

261

る。

0 M 系列と円分剰余類(cyclotomiccosets)との関

係(l)

0 M 系列と,差集合および実験計画法における BI

BDとの関係(1)(2)(10)(17)(18)

0 M 系列の誤り訂正符号における立場ω

。 M 系列の部分系列ω

。 行列法による M 系列の解析(4)

0 線形回帰系列詳論(1)(4)【5)

なお PN系列 (M系列も含む)についての詳しい成

書としては文献( 1〕が,また利用面に主眼をおいたもの

としては文献(2)などがあげられる。

おわりに,日ごろ指導いただく生島当研究室長ならび

にこの解説を作成する際有益な意見を下さった角川通信

系研究室長に深謝する。また文献(14)の存在を知らせて

下さった鈴木音声研究室長にも厚くお礼申し上げる。

参考文献

( 1 ) Golomb, S. W., Shift Register Sequences, Hol-

den-Day Inc., 1967.

( 2 ) Golomb, S. W., ed. Digital Communications

with Space Applications, Prentic←Hall Inc.,

1964.

( 3 ) Peteson, W. W吋 Eロor-CoηectingCodes,閲T.

Press, 1961.

( 4 ) Elspas, B., The Theory of Autonomous Linear

Sequential Networks, I. R. E. Tr担 s.CT., CT-6,

1, pp. 45~60, Mar., 1959.

( 5) Zieler,N.,Linear Recurring Sequences, Linear

Sequential Switching Circuits, Kauts W., ed. Hol-

den-Day Inc., 1965.

( 6) Paley, R. E. A. C., On Orthogonal Matric四,

Jour. Math. Phys., 12, pp. 311~320, 1933.

( 7) Plotkin, M., Bin訂 y Codes with Spec証ied

Minimum Dlstance, IRE. Tr釦 s.IT, IT-6, 4,

Sept. 1960.

( 8) Hall, Jr. M., A Survey of Difference Sets, Proc.

American Math. Soc., 7. pp. 975~986, 1956.

( 9) Brauer, A., On A New Class of Hadamard

Determinants, Mathematishe Zeitschrift, 58.

pp. 219~225, 1953.

(10〕 Gordon,B. et al., Some New Difference Sets,

Canadian Jour. Math., 14. pp. 614~625, 1962,

(11〕松岡毅,千葉信行, M 系列発生の高速化,信学

論仏) 53-A.2, p.120,昭和45.2.

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262

(12) 阪本,滝,宮川ほか,符号化パルスレーダ一方式,

電通学誌, 46,2, pr. 155~162,昭和38.2.

(13) 相良節夫,同定問題,計測と制御, 8,4, pp. 268

~280,昭和44.4.

(14) 青島伸治,五十嵐寿一, M 系列の相関を用いた

音響測定,音響学誌, 24, 4, pp. 197~206,昭和

43. 7.

(15) 笠原芳郎,笠原正雄,最大周期系列を用いた符号

誤り測定の一方式,電通学誌, 48,5, pp. 877~883,

昭和40.5.

(16) Van der Waerden B. L.パ銀林浩訳〉,現代代数

学 J.L 東京図書,昭和35.

(17〕 増山元三郎,実験計画法,岩波講座現代応用数学,

岩波書店,昭和32.

(18〕 山本純恭, BIBDと CodingTheory,数理科学,

8, 6, pp. 62~66,昭和45.6.

なお上記の文献は本文で引用したものであって, PN

系列に関する完全なリストではない。

付録I 原始多項式係数表

文献( 3 )pp.254~270にある, 34次までの既約多項式

表からいくつかの原始多項式を適当に選び出したものを

次表に示す。

電波研究所季報

(表の見方〉

表には,原始多項式

f(x)=c.x人:-c十 ix"-1+…十CtX十co (A.1〕

の係数 c.,九一t.... , Ci, Coを, Coのほうから3桁ずつ区

切り,その各々の3桁の2進数を8進数に変換したもの

を示してある。

(例〉

10次のところにある‘2157’は

2 1 5 7

であるから,原始多項式

f(x〕=x10+xs十xS-j”が-:-xLt-x+l

を意味している。

8進特2進変換表

S進数i2進数

o I ooo 1 I 001 2 I 010 3 I 011 4 I 100 5 I 101 6 I 110 7 I 111

なお(A.1〕式が原始多項式であれば,これらの係数

を逆向きにして得られる多項式

g(x〕 = CcXヘLc1x•-1+…十CηtX十Cn (A.2〕

もまた原始多項式である。

この g(x)により生成される M 系列は, f(x)によ

る M 系列を逆向きに並べたものになる。

原始多項式係数表

次数|周 期 係 数 (8 進表示〉

3 7 13,

4 15 23,

5 31 45, 67, 75,

6 63 103, 147, 155,

7 127 203, 211, 217, 235, 277, 313, 325, 345, 367,

8 255 435, 453, 537, 543, 545 551,

9 511 1021, 1055, 1131, 1157, 1167 1175

10 1023 2011 2033, 2157, 2443, 2745, 3471,

11 2047 4005, 4445 5023, 5263, 6211, 7363,

12 4095 10123, 11417, 12515, 13505, 14127, 15053

13 8191 20033, 23261, 24623, 30741, 32535, 37505,

14 1. 6(4勺 42103, 51761, 55753, 60153, 71147 67401,

15 3. 2( 4) 100003, 110013, 120265, 133663, 142305, 164705,

16 6.3(4〕 210013, 233303, 307572, 311405, 347433, 375213,

17 1. 3( 5) 400011, 411335, 444257, 527427, 646775, 714303,

18 2. 5( 5) 1000201, 1002241, 1025711, 1703601,

19 5(5) 2000047, 2020471 2227023 2331067 2570103, 3610353,

20 1(6) 4000011, 4001051, 4004515, 4442235 6000031,

21 2(6) 10000005, 10020045, 10040205, 10040315, 10103075,

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Vol.17 No. 90 May 1971

22 I 4(6)

23 I 7. 9( 6)

24 I 1. 6( 1〕2s I 3. 2c 1)

26 I 7. 3( 1) 21 I 1. 3( s) 2s I 2. sc s)

29 I s Cs) 30 I IC 9〕

31 I 2 C 9〕

32 I 4(9)

33 I 7. 9( 9) 34 I 1. 6(10)

20000003, 20001043, 20070217, 20401207, 20430607,

40000041, 40000063, 40006341, 40103271, 40435651,

100000207, 113763063, 125245661,

200000011, 200000017, 200010031, 200402017, 201014171,

400000107, 402365755, 426225667, 473167545,

1000000047, 1001007071, 1020024171, 1102210617,

2000000011, 2000025051, 2020006031, 2104210431,

4000000005, 4001040115, 4004204435, 4400000045,

10040000007, 10115131333, 10343244533, 11326212703,

20000000011, 20000000017, 20000020411, 21042104211,

40020000007, 40035532523, 40460216667, 42003247143,

100000020001, 100020024001, 100020224401, 104000420001

201000000007, 201472024107, 225213433257, 227712240037,

*約 1.6x1()4を意味,以下同様

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