purpura fulminansを...

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1117 Purpura Fulminansを 伴 った 劇 症 型 肺 炎 球 菌 感 染 症 の1例 1)旭中央病院内科 ,2)麻酔科,3)中央検査科 4)東京医科歯科大学第1内科学 大西 基 喜1)清 可 方2)岩 香 織1) 大 河 内康 実4)大 健 二3) (平成6年5月9日 受 付) (平成6年5月20日 受 理) Key words: purpura fulminans, pneumococcus, sepsis 1)序 肺 炎 球 菌 に よ る敗 血 症 は比 較 的 稀 で は あ るが, 生 じた場 合 の致 命 率 は比 較 的 高 く,脾 臓 摘 出 後 や 鎌 状 赤 血 球 症 な どの 基 礎 疾 患 が あ る と一 層 危 険 と され て い る1).更 に稀 で は あ る が,な ん らか の 基 礎 病 変 が あ る場 合,こ の敗血症 に伴って四肢末梢に 対 称 的壊 疽 を生 じ る場 合 が あ り,文 献 的 に はsym- metrical peripheral gangreneあ る い はpurpura fulminansと 呼 称 さ れ て い る2)3).われ わ れ は,こ の きわ め て稀 な肺 炎 球 菌 敗 血 症 に と も な うpurpura fulminansが,ア ル コー ル 多 飲,HCVキ ャ リア と い う以 外 は し ご く健 常 な 成 人 に生 じた 例 を経 験 し たので文献的考察を加 えて報告する. 2)症 67歳,男 性。 主 訴:四 肢の しびれ。 既往歴:特 記 す べ き こ とな し. 家族歴:類 症 な し,な んらかの感染症罹患者 も い な い. 生 活 歴:コ ンピューター関係の会社に勤務後, 退 職,悠 々 自適 なが ら多趣 味 で活 動 的 な人 で あ る. ま た 喫 煙 者(20~30本/日)で アルコール多飲者(日 本 酒3合/日)で もある.人 間 ドックを毎年受けて い るが,肝 機 能 も含 め て 特 に異 常 を 指 摘 され た こ とは な い. 現 病 歴:入 院 一 週 間前 よ り鼻 汁 な どの 感 冒様 症 状 ある も3日 で 軽 快,咽 頭 痛,発 熱 は なか っ た. 入 院 前 日 に 口渇 を感 じ,水 分 を多 く摂 取 した.夕 方 よ り食 欲 が な か っ た.入 院 当 日(1992年12月30 日)も 倦 怠感 あ り,就 床 し て い た が,朝8時 頃よ り,両 手 両 足 の しび れ を 自覚 し,当 院救急棟 を受 診 した. 現 症:血 圧110/60mm Hg,脈 拍94/分,体 36.2℃,意 識 清 明,顔 面,口 唇 にや や チ ア ノー ゼ あ り.扁 桃 に発 赤 腫 脹 を認 め た.胸 腹部に異常な し.四 肢 に冷 感 あ った が,視 診上は来棟時に異常 を認 め なか っ た. 検 査:血 液 検 査 上,高 度 の 炎 症,disseminated intravascular coagulation (以 下DIC) 肝 酵 素 の上 昇 が 認 め られ た.ま た血液ガス検査に Table 1 Laboratory findings on admission Hematology Coagulation RBC 404 x 104 /mm3 PT 14.6 sec Hb15.8 g/dlFib 262.8 mg/dl WBC 115 x 102 /mm3 FDP 817.0 fcg/ml Plt 5.3 x 104 /mm3 ATIII 53 % ESR4 mm/lhr Blood Gas Analysis Biochemistry (room air) GOT85 IU/L PH 7.336 GPT21 IU/L pCO2 28.1 mmHg LDH 1,283 IU/L p02 92.0 mmHg CPK1,221 IU/L HCO3 15.0 mmol/L BUN42 mg/dl BE-8.9 mmol/L Cr3.0 mg/dl BS147 mg/dl CRP >12 mg/di 別 刷 請求 先:(〒289-25)千 葉 県旭 市 イ の1326番 地 旭中央病院内科 大西 基喜 平 成6年9月20日

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Page 1: Purpura Fulminansを 伴った劇症型肺炎球菌感染症の1例journal.kansensho.or.jp/kansensho/backnumber/fulltext/68/...1117 Purpura Fulminansを 伴った劇症型肺炎球菌感染症の1例

1117

Purpura Fulminansを 伴 った劇 症 型 肺 炎球 菌感 染 症 の1例

1)旭中央病院内科,2)麻酔科,3)中央検査科4)東京医科歯科大学第1内 科学

大 西 基 喜1)清 水 可 方2)岩 田 香 織1)

大 河 内康 実4)大 江 健 二3)

(平成6年5月9日 受付)

(平成6年5月20日 受理)

Key words: purpura fulminans, pneumococcus, sepsis

1)序 文

肺炎球菌による敗血症は比較的稀ではあるが,

生 じた場合の致命率は比較的高 く,脾 臓摘出後や

鎌状赤血球症などの基礎疾患があると一層危険 と

されている1).更に稀ではあるが,な んらかの基礎

病変がある場合,こ の敗血症 に伴って四肢末梢に

対称的壊疽を生 じる場合があ り,文献的にはsym-

metrical peripheral gangreneあ るいはpurpura

fulminansと 呼称されている2)3).われわれは,こ の

きわめて稀な肺炎球菌敗血症にともなうpurpura

fulminansが,ア ルコール多飲,HCVキ ャリアと

いう以外はしごく健常な成人に生 じた例を経験 し

たので文献的考察を加 えて報告する.

2)症 例

67歳,男 性。

主訴:四 肢の しびれ。

既往歴:特 記すべきことなし.

家族歴:類 症なし,な んらかの感染症罹患者 も

いない.

生活歴:コ ンピューター関係の会社に勤務後,

退職,悠 々 自適なが ら多趣味で活動的な人である.

また喫煙者(20~30本/日)で アルコール多飲者(日

本酒3合/日)で もある.人 間 ドックを毎年受けて

いるが,肝 機能 も含めて特に異常を指摘されたこ

とはない.

現病歴:入 院一週間前 より鼻汁などの感冒様症

状 あ る も3日 で 軽 快,咽 頭 痛,発 熱 は なか っ た.

入 院 前 日 に 口渇 を感 じ,水 分 を多 く摂 取 した.夕

方 よ り食 欲 が な か っ た.入 院 当 日(1992年12月30

日)も 倦 怠感 あ り,就 床 し て い た が,朝8時 頃 よ

り,両 手 両 足 の しび れ を 自覚 し,当 院 救 急 棟 を受

診 した.

現 症:血 圧110/60mm Hg,脈 拍94/分,体 温

36.2℃,意 識 清 明,顔 面,口 唇 にや や チ ア ノー ゼ

あ り.扁 桃 に発 赤 腫 脹 を認 め た.胸 腹 部 に 異 常 な

し.四 肢 に冷 感 あ った が,視 診 上 は来 棟 時 に異 常

を認 め なか っ た.

検 査:血 液 検 査 上,高 度 の 炎 症,disseminated

intravascular coagulation (以下DIC),腎 障 害,

肝 酵 素 の上 昇 が 認 め られ た.ま た 血 液 ガ ス 検 査 に

Table 1 Laboratory findings on admission

Hematology Coagulation

RBC 404 x 104 /mm3 PT 14.6 sec

Hb15.8 g/dlFib 262.8 mg/dl

WBC 115 x 102 /mm3 FDP 817.0 fcg/ml

Plt 5.3 x 104 /mm3 ATIII 53 %

ESR4 mm/lhr Blood Gas Analysis

Biochemistry (room air)

GOT85 IU/L PH 7.336

GPT21 IU/L pCO2 28.1 mmHg

LDH 1,283 IU/L p02 92.0 mmHg

CPK1,221 IU/L HCO3 15.0 mmol/L

BUN42 mg/dl BE-8.9 mmol/L

Cr3.0 mg/dl

BS147 mg/dl

CRP >12 mg/di別刷請求先:(〒289-25)千 葉 県旭市イの1326番 地

旭中央病院内科 大西 基喜

平成6年9月20日

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1118 大西 基喜 他

て 代 謝 性 ア シ ドー シ ス を認 め た(Table 1).胸 部

レ線 上 は 異 常 を認 め な か っ た .

経 過:入 院 時,シ ョッ ク,腎 不 全,DIC,横 紋 筋

融 解 症 と診 断 さ れ,そ の 基 盤 と して 敗 血 症 が 最 も

疑 わ れ た.補 液,昇 圧,ア ン ピ シ リン(ABPC)12

g/日 投 与 等 で初 期 治 療 を 開 始 した が,入 院 時 よ り

時 間 を逐 って 四肢 に 末 梢 ほ ど強 い 紫 斑,チ ア ノー

ゼ が 生 じ,翌 日 に は 広 範 に 四肢 が 暗 紫 色 とな った

(Fig-1).CPKも 翌31日 著 増 し15,000以 上 と(緊

急検 査 の)測 定 上 限 を越 え,敗 血 症 に伴 う骨 格 筋

の 壊 死 性 病 変 の 進 行 に よ る もの と診 断 さ れ た.皮

膚 の 変 化 や 四肢 の壊 死 が 進 行 す る一 方 で,入 院 翌

日 よ りadult respiratory distress syndrome

(ARDS)を 発 症,呼 吸 不 全 が 進 行 し,1993年1月

1日(第3病 日)よ り人 工 呼 吸器 管 理 とな っ た.

入 院 時 の 血 液 培 養 及 び 尿 培 養 よ りStreptococcus

Pneumoniaeが 分 離 され,同 菌 に よ る敗 血 症 と診

断.多 臓 器 不 全 の管 理 と抗 生 剤 の 大 量 投 与 を続 行

Fig. 1 marked cyanosis and purpura of left hand and lower extremity on the

second hospital day.

Fig. 2 acral gangrene on the 27th hospital day immediately before amputation

of right hand and both legs.

感染症学雑誌 第68巻 第9号

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PurpuraFulminansを 伴 っ た肺 炎球 菌 感 染例 1119

Table 2 Serial change of protein C antigen and

protein S

し徐々に全身状態の改善がみられた.菌 の抗生剤

の感受性試験か らペニシリンG(PCG)中 等度耐

性株 と判断され,そ れをもとにABPCは6g/日 と

し,セ フ トリアキソン(CTRX)49/日 を加 え治療

した.ま たその後の検索で菌の血清型は23型 と判

明した.四 肢 の壊疽 については敗血症であること

を考慮 し,直 ちに切断な どの外科的処置は採 らず

保存的に経過観察 し,全 身状態の改善 と炎症所見

の鎮静化を待 って,1月27日 両下腿,右 前腕切断

術 を施行 した.そ の直前の四肢の状態をFig.2に

示す.そ の後更に4月23日 左第4指 を,ま た8月

9日 左第5指 を切断した.壊 疽部は乾性の もので,

その部の菌の培養は陰性であった.ま た病理学的

検索では末梢血管の血栓形成が著 しかった.患 者

は最終的に肢,手 指切断以外の後遺症なしに第248

病 日の9月3日 退院となった.

急性期 に認められた肝障害はその後血液生化学

上全 く認められなかったが,血 清のHCV抗 体 は

陽性であることが判明した.腹 部超音波検査では

異常が認められなかった ものの,ア ルコール多飲

者であることを考え併せると軽度の慢性肝障害は

否定できない.

また入院時か らの保存血清 をもとにプロテイン

C抗 原量 とプロテインS(EIA)を 経時的に測定し

た(Table2)が,当 初低値であったプロテインC

は炎症の鎮静化 とともに正常化 した.プ ロテイン

Sの 低下 はなかった.

3)考 察

本例は肺炎球菌 による敗血症および多臓器不全

があり,次 第に四肢 に広範に紫斑,チ アノーゼを

生じ,最 終的に四肢末梢に乾性壊疽を生 じた1例

である.肺 炎球菌敗血症に伴 って四肢末梢 に対称

的壊疽 を生じる場合があり,文 献的にはpurpura

fulminansあ るいはsymmetrical peripheral gan-

greneと して散発的に報告がみられる.こ れ らの

報告では指趾先端などの変化が主であり,本 例の

ような広範なチアノーゼを生 じた例 は少ないが,

経過 および最終像 としての乾性壊疽 はpurpura

fulminansと 考えて良い ものと思われる.

purpura fulminansは 敗血症,シ ョツク,DIC等

を基礎病像 として,当 初出血性の皮膚病変か ら始

まり,壊 疽へ と進行する激 しい熱性の病変で,四

肢末梢の対称的分布を示す.呼 吸不全,腎 不全,

肝不全など,多 臓器不全 をしばしば合併する.発

症年齢は乳幼児 と成人 との2つ のピークがある.

成人型は急性の細菌感染症か ら敗血症へ と進むタ

イプで,乳 幼児型はウイルスなどの熱性病変から

数日後に生 じるやや慢性の型である.性差はない.

紫斑 は多彩な色調を呈 し融合性,四 肢末端が特に

侵 されるが,躯 幹や顔面に生じることもある.通

常対称的である.浮 腫は殆 ど伴わないとされる.

成人の場合基礎病変のあることが一般的で,Jo-

hansenら3)の10例 の肺炎球菌 によるpurpurafu1-

minansの 検討では慢性アルコール中毒(6例),

鎌状赤血球症(2),イ ンスリン依存性糖尿病(2),

脾摘例(2)で あった.死 亡率は高 く,文 献上急

性型:40~50%,慢 性型:30%程 度 とされている.

欧米では比較的報告 も多い(但 し人種 について

の記載は殆 どない)が,本 邦ではすべて一例報告

ときわめて少ない.し か も大部分 は乳幼児例4)~7)

等で成人例 については検索し得た限 りではわずか

1例 しかな く,そ れ も再生不良性貧血の症例であ

り,原 因菌もXanthomonas maltophiliaと されて

いる8).従 って本例 のごとく特 に異常を指摘 され

た ことのない健常な成人 に生じた例 は欧米で も珍

しいが,本 邦では未報告例 も含めてほとんどない

のではないか と推察 される.ま た菌 についても肺

炎球菌例は欧米では比較的多 く報告 されているに

も関わ らず,本 邦では初めての報告である.報 告

数についてのこの彼我の差が,実 際の症例数の差

を反映 しているか どうかは分か らないが,も し実

際に本邦で少ないのであれば,菌 の問題なのか,

人種や民族で菌への抵抗性や反応性が異なるの

か,な ど興味深い問題が提起されることになる.

平成6年9月20日

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1120 大西 基喜 他

病原体については細菌 の場合,Chuら2)の68例

の検討では髄膜炎菌が12例 と最多であったが,近

年の報告は肺炎球菌が多い.し かし病因,病 態生

理については解明されていることは少ない.菌 の

側か らは毒素,特 に肺炎球菌 に関 して言 えば,

pneumolysin, neuraminidase, purpura-

producing Principle等 の毒素が注 目され1),一 方

で生体 においてそれ に呼応 した免疫複合体11)や

Shwartzman類 似 の反応2)などが考 え られ てい

る.さ らにDIC,あ るいはす くなくとも80%以 上

の症例で5万 以下の血小板減少が生 じてお り,そ

れ を基 本 的 な病 態 とみ な して い る報 告 も多

い2)9).実際病理学的に確認 された例では本例のよ

うに広範な血栓の存在が認められており,血 栓形

成が主要な病理的変化 と考 えられている.た だ

Johansenら10)は 交感神経節のブロックで後遺症

を残 さず治癒 した例 を報告 し,当 初の末梢の変化

が可逆的であり,血 栓形成 に先だっ血管収縮の機

転を推測している.ま た血管拡張剤の有効性 も報

告されてお り11),それ もこの考えの傍証にな りう

る.も しそうなら,血 管収縮の機転 とDICと の関

連は今後議論の対象 となりうる.し かしなが ら現

在の所,こ れ らの一連の過程 を統合 した真の病態

生理は不明 といわざるをえない.

ホス ト側の因子については,先 天性のプロテイ

ンC欠 乏症の患者が新生児期に,あ るいは成人の

場合でもpurpura fulminansを 起 こし得 ることが

知 られている6)7).しかし全体 としては先天性の凝

固因子異常は報告 としては少数であり,む しろ脾

摘,ア ルコール中毒,肝 障害,AIDSな ど,一 般的

な感染の危険因子保有者の報告が多 く,凝 固因子

のみが主要因 ともいえない.本 例 はプロテインC

が病初期に低下を示 したがその後正常化 した.プ

ロテインCがDICに 伴って減少することが報告

されており13),本例の変化 も低下症 というよりは

そのような変化 と考 えられ る.ま た本例 のアル

コール多飲,HCVキ ャリアという点が一応危険

因子と考えられるが,こ の程度の危険因子の保有

者がきわめて多い ことを考慮すれば,そ れだけで

この稀 な病態 を説明す ることはで きない と思われ

た.

なお本症例の肺炎球菌の血清型は23型 で,PCG

中等度耐性株であったが,こ れまで重症な肺炎球

菌についてその血清型で論 じたものはあって も,

purpura fulminansに ついて型別で論 じた文献は

ない.こ の点 も今後検討されるべきであろう.

治療 に関しては抗生剤,シ ョック対策,多 臓器

不全の管理が主なもの となるが,上 述の血管拡張

を促す治療 も充分考慮すべ きである.本 例では残

念なが らその点 の配慮は充分でなかった.ま た

ショック治療で血管収縮性の薬剤を使 うことが多

いが,そ れによる壊疽の進行 も報告 されており14),

そうした薬剤を最小限にとどめる工夫 も必要 と考

えられる.壊 疽部に関 してはJohansenら3)は10例

の経験から,殆 ど乾性 のままミイラ化 し,2次 感

染を生 じないため,早 期手術 はできるだけ避ける

べきだとしている.本 症例 も確かに同様の経過を

た どってお り,手 術時期については慎重 に決定す

べきであると考えられた.

稿を終えるにあたり,臨床的検討にご協力を戴いた.茅

ケ崎徳州会病院内科,古 川恵一先生,菌 の毒素につきご検

討戴いた,東 京都衛生研究所細菌第二研究科,五 十嵐英夫

先生,ま た肺炎球菌の血清型判定を行って戴いた,順 天堂

大学付属病院臨床検査部,小 栗豊子先生に深謝致します.

本例の要旨は第42回日本感染症学会東日本地方会総会

(平成5年10月,青 森)で 報告した.

文 献1) Mourice, A. M.: Streptococcus Pneumoniae. In

Principles and Practice of Infectious Diseases

3rd ed. (Mandell, G.L., Douglas, R. G. & Ben-nett, J. E. ed.), p. 1539-1550, Churchill Living-stone, New York, 1990.

2) Chu, D. Z. J. & Blaisdell, F. W.: Purpura ful-

minans. Am. J. Surg., 143: 356-362, 1982.3) Johansen, K. & Hansen, S. T.: Symmetrical

peripheral gangrene (Purpura fulminans) com-plicating pneumococcal sepsis. Amer. J. Surg.,165: 642-645, 1993.

4) 磯 山恵 一, 小 林 瑛 児: 小 児 にみ られ た電 撃性 紫斑

病. 小 児 科診 療, 47: 959-963, 1984.

5) 牧野 久 美, 藤 井 徹, 冨満 晃 宏: 電 撃 性 紫斑 病 の

1例. 形 成外 科, 31: 367-371, 1988.

6) 岡 敏 明, 外7名: 新生 児 期 よ り電 撃 性 紫斑 病 を

反 復 した 先 天 性 プ ロテ インC欠 損 症 の 長 期 生 存

者 例 クマ リンの 長期 内服 に よ る管 理. 臨 血, 30:

599-600, 1989.

7) 新 藤 啓 司, 外10名: 生 後1日 目に電 撃 性紫斑 病 で

感染症学雑誌 第68巻 第9号

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Purpura Fulminansを 伴 った 肺 炎球 菌 感 染例 1121

発 症 し脳 出血, DICを 合 併 した先 天 性 プ ロ テ イ ン

C欠 乏 症 の1例. 臨 血, 31: 1436, 1990.

8) Kato, N. & Morioka, T.: Purpura fulminanssecondary to Xanthomonas maltiphilia sepsisin an adult with aplastic anemia. J. Dermatol.,

18: 225-229, 1991.9) Bisno, A. L. & Freeman, J. C.: The syndrome

of asplenia, pneumococcal sepsis and dis-

seminated intravascular coagulation. Ann.Intern. Med., 72: 389-396, 1970.

10) Johansen, K., Murphy, T., Pavlin, E. & Ledbet-ter, D.: Digital ischemia complicating

pneumococcal sepsis. Reversal with sympa-thetic blockade. Crit Care Med., 19: 114-116,1991.

11) Denning, D. W., Gilliland, L., Hewlett, A.,

Hughes, L. O. & Reid, C. D. L.: Peripheral sym-metrical gangrene successfully treated withepoprostenol and tissue plasminogen activator.

Lancet, 2: 1401-1402, 1986.12) Hautekeete, M. L., Berneman, Z. N., Bridts, C.,

Buyssens, N. & Peetermans, M. E.: Purpurafulminans in pneumococcal sepsis. Arch. Intern.

Med., 146: 497-499, 1986.

13) Marlar, R. A., Endres-Brooks, J. & Miller, C.:Serial studies of protein C and its plasma in-hibitor in patients with disseminated intravas-cular coagulation. Blood, 66: 59-63, 1985.

14) Winkler, M. J. & Trunkey, D.: Dopamine gan-

grene: association with disseminated intravas-cular coagulation. Am. J. Surg., 142: 588-590,1981.

Purpura Fulminans Complicating Pneumococcal Sepsis: A Case Report

Motoki OHNISHI1), Yoshikata SHIMIZU2), Kaori IWATA1),Yasumi OOKOCHI4) & Kenji OOE3)

Department of Medicine1), Anaesthesia2) and Pathology3), Asahi General HospitalFirst Department of Internal Medicine, Tokyo Medical and Dental University, School of Medicine4)

An unusual case of a 67-year-old man is reported with fulminant pneumococcal sepsis. He

had been healthy before, and the identified predisposing factors were only that he was a chronic

alcohol drinker and was a HCV carrier. He presented signs of acute renal failure, liver dysfunc-

tion, adult respiratory distress syndrome and disseminated intravascular coagulation. Subse-

quently purpura fulminans (symmetrical peripheral gangrene) with major extremity involvementdeveloped. He finally survived with amputation of both legs, right forearm and two fingers of lefthand.

Purpura fulminans is a rare catastophic disease, with initial hemorrhagic skin lesions that

progress to gangrene. It usually follows an infectious illness, and although it most commonlyoccurs in children, it can occur in adults with predisposing factors such as alcoholic, asplenia,

AIDS and so on. In adults, pneumococcus and meningococcus are microorganisms that have been

reported most frequently as caused agents in Europe and America. But in Japan the previouslyreported adult case was the only one complicating Xanthomonas maltophilia sepsis, and none

accompanying pneumococcal sepsis.

Congenital protein C deficiency is recognized to be able to cause purpura fulminans espe-

cially in patients with risk factors. In our case, protein C antigen was decreased in the acute stagebut gradually increased later toward normal, so this decrease was thought to be concomitant

with the initial disseminated intravascular coagulation rather than compatible with protein C

deficiency.

平成6年9月20日