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法人税実務事例検討
平成29年4月1日以後に取得した
営業権の減価償却費の計算について
EY税理士法人 顧問
税理士 石田 昌朗
本事例における留意点
平成29年度税制改正により、平成29年4月1日以後に取得した営業権の減価償却費の計算
において、取得した事業年度の償却限度額の計算上、月割計算をする必要がある。
事 例
当社(3月決算法人)は、資本関係のない第三者であるA社から販売事業を買収することと
し、A社の販売事業を事業譲渡により平成29年11月30日に取得しました。
ところで、A社の販売事業に係る取引先名簿や取引契約だけでなく、販売事業に係る売掛金
や買掛金の残高も事業譲渡により取得していますが、販売事業の取得により当社が計上した資
産及び負債とA社に支払った事業譲渡の対価には1億円ほどの差があり、A社の販売事業にお
ける超過収益力、いわゆる営業権を1億円と評価して譲渡対価を支払っていることから、この
1億円は取得したA社の販売事業の営業権として計上し、その全額を減価償却費として会計処
理しました。税務上はどのように処理すればよろしいですか。
会計上、のれん(営業権)は、原則として20年以内にその支出の効果の及ぶ期間にわた
って定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することとされていますが、本事例で
は全額を償却しています。
【当社の会計処理:取得時】
諸資産 ○○ ╱ 諸負債 ○○
営業権 100,000,000円 ╱ 現金預金 ○○
【当社の会計処理:期末時】
営業権減価償却費 100,000,000円 ╱ 営業権 100,000,000円
(2 ) 国 税 速 報平成30年3月12日 第6501号 第3種郵便物認可
Ⅰ 本事例における法令等の検討
1 営業権の取扱い
営業権については、法人税法施行令第
13条第8号ヲ 減価償却資産の範囲 に
おいて無形固定資産として掲げられていま
す。
また、無形固定資産は定額法により減価
償却費の計算をすることとされています
(法令48の2①四)。
2 営業権の耐用年数
平成19年4月1日以後に取得された営
業権は、減価償却資産の耐用年数等に関す
る省令の別表第三(無形減価償却資産の耐
用年数表)により耐用年数が5年と定めら
れています。
3 事業年度の中途で事業の用に供した
減価償却資産の償却限度額の特例
減価償却資産の償却については、その資
産を法人の事業の用に供したときから償却
を開始することになっているので、事業年
度の中途において事業の用に供した減価償
却資産(旧定額法、旧定率法、定額法、定
率法又は取替法を採用しているもの)の償
却限度額は、その事業の用に供した日から
その事業年度終了の日までの期間の月数分
によって計算することとされています(法
令59①)。
【算式】
償却限
度額=当該事業年度の全期
間分の償却限度額×事業の用に供した日から事業年度末日までの月数
当該事業年度の月数
上記算式中の分子、分母の月数は、暦に従って計算し、1月未満の端数があると
きは、その端数を切り上げて1月とします(法令59②)。
平成29年度税制改正前は、この事業年
度の中途で事業の用に供した減価償却資産
から営業権が除外されていたことから、事
業年度末日に取得した営業権の償却限度額
は、その事業年度の償却限度額の1/12で
はなく、その償却限度額そのものでした。
平成29年度税制改正により、営業権の
償却方法について、取得した事業年度の償
却限度額の計算上、月割計算をすることと
されましたので、参 として改正税法のす
べて(平成29年版)を記載します。
(営業権の償却限度額並びに資産調整
勘定及び差額負債調整勘定の損金及び
益金算入額の計算方法の見直し)
営業権の償却限度額並びに資産調整
勘定及び差額負債調整勘定の損金及び
益金算入額の計算方法について、企業
結合に関する会計基準においてはのれ
んを「20年以内のその効果の及ぶ期
間にわたって、定額法その他の合理的
な方法により規則的に償却する」こと
とされており、その実務が定着してい
Ⅰ
(3 )国 税 速 報平成30年3月12日 第6501号 第3種郵便物認可
ることを踏まえ、以下に述べるとおり
初年度において月割計算をすることと
されました。
① 営業権の償却限度額
事業年度の中途においてその事業
の用に供した営業権のその事業年度
の償却限度額について、月割計算を
行うこととされました(法令59①
一)。
② 資産調整勘定及び差額負債調整勘
定の損金及び益金算入額
イ 資産調整勘定の金額及び差額負
債調整勘定の金額について、これ
らの金額が生じた非適格合併等の
日の属する事業年度において減額
して損金の額及び益金の額に算入
しなければならない金額は、当初
計上額を60で除してこれに非適
格合併等の日から事業年度終了の
日までの期間の月数を乗じて計算
した金額とされました(法法62
の8④⑦)。
ロ 適格合併により引継ぎを受けた
資産調整勘定の金額及び差額負債
調整勘定の金額について、その適
格合併の日の属する事業年度にお
いて減額して損金の額及び益金の
額に算入しなければならない金額
は、被合併法人における当初計上
額を60で除してこれに適格合併
の日から事業年度終了の日までの
期間の月数を乗じて計算した金額
とされました(法令123の10 )。
【適用関係】
①の改正は、法人が平成29年4月
1日以後に取得をする減価償却資産に
ついて適用し、法人が同日前に取得を
した減価償却資産については、従前ど
おりとされています(改正法令附則
8)。
②イの改正は、平成29年4月1日
以後に行われる非適格合併等について
適用し、同日前に行われた非適格合併
等については、従前どおりとされてい
ます(改正法附則19)。
②ロの改正は、平成29年4月1日
以後に行われる適格合併について適用
し、同日前に行われた適格合併につい
ては、従前どおりとされています(改
正法令附則17)。
(改正税法のすべて(平成29年版)352ペ
ージ・大蔵財務協会)
Ⅱ 本事例における取扱いの検討
1 営業権の償却限度額
営業権の取得価額は1億円であり、かつ、
平成29年11月30日に取得し事業の用に
供したと認められることから、上記Ⅰ1の
とおり、無形固定資産として定額法により
償却限度額を計算することとなります。
そして、営業権は減価償却資産の耐用年
数等に関する省令の別表第三(無形減価償
却資産の耐用年数表)により耐用年数が5
年と定められています。
したがって、1億円×0.20×5月/12
月=8,333,333円が平成30年3月期の償
却限度額となります。
Ⅱ
(4 ) 国 税 速 報平成30年3月12日 第6501号 第3種郵便物認可
2 税務処理について
営業権の償却限度額が8,333,333円であ
るところ、貴社は営業権の取得価額である
1億円の全額を損金経理により減価償却費
として計上していますので、差額の
91,666,667円が減価償却超過額となり、
平成30年3月期の所得金額の計算におい
て加算することになります。
(貴社)
【会計処理:期末時】
営業権減価償却費 100,000,000円 ╱ 営業権 100,000,000円
【税務処理:期末時】
営業権減価償却費 8,333,333円 ╱ 営業権 8,333,333円
【税務修正】
営業権減価償却超過額 91,666,667円 ╱ 営業権減価償却超過 91,666,667円
貴社の申告調整>
【別表4】
【別表5⑴】
(5 )国 税 速 報平成30年3月12日 第6501号 第3種郵便物認可
[参 考] 平成29年度税制改正前である
平成29年3月31日に営業権を
1億円で取得した場合
1 営業権の償却限度額
営業権の取得価額は1億円であり、かつ、
平成29年3月31日に取得し事業の用に供
したと認められることから、無形固定資産
として定額法により償却限度額を計算する
こととなります。
また、平成29年度税制改正前の「事業
年度の中途で事業の用に供した減価償却資
産の償却限度額の特例」では、営業権を除
くこととされており、営業権はその事業年
度分の減価償却費が償却限度額になります。
そして、営業権は減価償却資産の耐用年
数等に関する省令の別表第三(無形減価償
却資産の耐用年数表)により耐用年数が5
年と定められています。
したがって、1億円×0.20=20,000,000
円が平成29年3月期の償却限度額となり
ます。
2 税務処理について
営業権の償却限度額が20,000,000円で
あるところ、貴社は営業権の取得価額であ
る1億円の全額を損金経理により減価償却
費として計上していますので、差額の
80,000,000円が減価償却超過額となり、
平成29年3月期の所得金額の計算におい
て加算することになります。
(貴社)
【会計処理:平成29年3月期末時】
営業権減価償却費 100,000,000円 ╱ 営業権 100,000,000円
【税務処理:平成29年3月期末時】
営業権減価償却費 20,000,000円 ╱ 営業権 20,000,000円
【税務修正】
営業権減価償却超過額 80,000,000円 ╱ 営業権減価償却超過 80,000,000円
(6 ) 国 税 速 報平成30年3月12日 第6501号 第3種郵便物認可
貴社の申告調整>
【別表4】
※ 平成29年度税制改正前は、営業権を取得した事業年度の償却限度額の計算上、月割計算
はしないこととされていました。
【別表5⑴】
(了)
(7 )国 税 速 報平成30年3月12日 第6501号 第3種郵便物認可