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ROLAND BERGER LIFE SCIENCE STUDY Digital Therapeutics ~第 3 の治療法~ 諏訪 雄栄 八木 慎太郎

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ROLAND BERGER LIFE SCIENCE STUDY

Digital Therapeutics ~第 3の治療法~

諏訪 雄栄 八木 慎太郎

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2 ROLAND BERGER STUDY / LIFE SCIENCE JAPAN

エグゼクティブサマリー

成長著しいデジタルヘルス領域において、近年特に注目されているカテゴリーがある。

Digital Therapeutics(デジタル療法)と呼ばれるものだ。治療用アプリがその代表例だが、

他のデジタルヘルス製品と異なる点は、患者を対象とした臨床試験で、そのアプリの有効性

が科学的に認められ、各国の規制当局に承認された製品であるという点だ。それらデジタル

製品は、医学的なエビデンスに基づいて、医師から患者に「処方」される。これまでの医療

では十分にカバー出来ていなかった、病院外での患者支援や、人工知能を活用した新しい治

療方法等をもたらすことで、治療の選択肢を広げ、結果として医療の質向上に貢献する。

Digital Therapeuticsの世界市場規模は、2018年時点で 20億米ドルと決して大きくはないも

のの、2024年の市場規模は 1200億米ドルを超える見込みであり、今後の急成長が期待され

ている。斯様な市場において、欧米では、2010年に初の治療用アプリが FDAの承認を取得

して以降、多数の企業が治療用アプリ等の開発、実用化に成功している。一方で、日本では

未だ実用化された製品はなく、2019年に国内初の治療用アプリが承認申請されたばかりで

ある。この 10年間の遅れを取り戻すためには、日本企業が自ら事業機会を探り、ビジネス

モデルを構築することが求められている。

事業機会を見極める方法の一つとして、市場構造をその背景とともに理解し、今後の新たな

ニーズを捉える方法が挙げられる。グローバルデータの疾患領域別内訳では、生活習慣病に

起因する疾患群と、メンタルヘルスを対象とした事業が全体の 2/3を占めている。これら疾

患領域の背景には、病院外での生活指導や健康状態のモニタリングが治療において重要であ

るという共通点が見えてくる。この点を鑑みると、自宅における薬物血中濃度が、治療効果

を大きく左右する抗がん剤治療等にも事業機会があるのではないかと考えられる。

また、別のアプローチ法として、Digital Therapeuticsの特徴を踏まえて、疾患毎の市場ポテ

ンシャルを分析し、事業機会を見極めることも可能である。我々は、市場ポテンシャルに加

えて、当該領域へのアクセスの難易度や受容性等も総合的に考慮して、てんかん、アルツハ

イマー病、腫瘍領域に潜在的な事業機会が存在するのではないかと考えた。これら疾患の共

通点は、病気の発症や発作の早期発見が重要な点であり、早期発見が実現すれば、治療の期

間短縮や簡便化により、医療費の削減にもつながる魅力的な領域と言えるだろう。

では、これから Digital Therapeutics市場に参入するにはどういったアプローチをとるべきだ

ろうか。参入の際のポイントは、「製品開発」と「エビデンスの収集」である。製品開発に

は、医療関係者の知見と ITエンジニアの技術が必要不可欠である。また、エビデンスの収集

については、医療機関との広いつながり、治験プロトコル設計の経験、そして資金が必要で

ある。これらの要素を総合的に満たす参入アプローチの一つが、製薬企業や医療機器メーカ

ーとベンチャー企業の協業である。製品開発に関しては、創薬や医療機器製造と比較して、

簡単に行えるため、医療関係者と ITエンジニアが共同でベンチャー企業を立ち上げ、様々な

製品を開発している。但し、エビデンスの収集に関しては、一朝一夕にはいかないため、多

くのベンチャー企業にとって高い参入障壁となっているのが現状だ。一方で、製薬企業や医

療機器メーカーは、IT技術に関して特別な強みがない代わりに、エビデンスの収集に必要な

要素を持ち合わせている。協業により相補的な関係を築くことで、いかに強固なビジネスモ

デルを構築出来るかが成功への鍵となるだろう。

本稿では、我々の調査結果を元に、事業機会の見極め、適切な参入アプローチの検討を行っ

た上で、「Digital Therapeutics事業は魅力的な市場なのかどうか」を判断するための基本的

な考え方を提供する。

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3 ROLAND BERGER STUDY / LIFE SCIENCE JAPAN

Table of Contents

エグゼクティブサマリー ......................................................................................................................... 2

1. Digital Therapeutics~第 3の治療法~ .......................................................................................... 4

1.1 Digital Therapeuticsがもたらす価値 ..................................................................................... 4

1.2 日本と欧米の Digital Therapeutics格差 ................................................................................. 4

2. データから読み解く新たな事業機会の見極め .............................................................................. 5

2.1 グローバルデータからみる事業機会...................................................................................... 5

2.2 疾患領域別の市場ポテンシャルからみる事業機会 ................................................................ 6

3. 参入アプローチ ............................................................................................................................. 8

3.1 臨床試験の壁 .......................................................................................................................... 8

3.2 協業による強固なビジネスモデルの確立 .............................................................................. 8

4. おわりに ........................................................................................................................................ 9

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1. Digital Therapeutics~第 3の治療法~

1.1 Digital Therapeuticsがもたらす価値

デジタル技術の進歩に伴い、デジタルヘルスの市場規模は年々拡大している。世界のデジタ

ルヘルス市場は 2020年におよそ 2000億米ドルに達する見込みだ。その中でも近年特に注

目を集めつつあるのが Digital Therapeutics(デジタル療法、以下 DTx)と呼ばれるカテゴリ

ーである。

DTxは、従来の医薬品や医療機器と同様、臨床試験でその有効性と安全性が科学的に証明さ

れ、各国の規制当局から承認を受けたデジタル技術を用いたアプリ等の製品を指す。世界初

の DTxである「BlueStar」は、米Well Doc社が開発した糖尿病治療用アプリで、患者が

日々の血糖値をアプリに入力することで、個々の状態に応じた食事指導や運動を促すメッセ

ージを発信する。その結果、糖尿病の程度を表す HbA1cの値を抑えられることが臨床試験

で証明された。また、米 Propeller Health社が販売している、喘息や COPDの治療用アプリ

である「Propeller」は、吸入薬とスマホを連携させ、薬を使用した際の状況や使用頻度を管

理することで、発作の予防や治療薬の変更に貢献している。このように治療の選択肢を広げ

ることで、医療の質向上に寄与する DTxは、医薬品、医療機器に次いで第 3の新しい治療法

として注目を浴びているのである。

1.2 日本と欧米の Digital Therapeutics格差

DTxの世界市場規模は、2018年時点で 20億米ドルと決して大きくはないが、2024年の市

場規模は 1200億米ドルを超える見込みであり、多くの事業機会が眠っているカテゴリーと

言える。米国では、前述した BlueStarが 2010年に FDAから承認を受けたことを皮切り

に、DTxを開発するベンチャー企業が急増している。同様に、欧州でも既に複数の DTxが実

用化されており、徐々に参入企業は増加している。一方、日本では 2019年 5月にベンチャ

ー企業であるキュアアップが、禁煙治療用アプリで国内初の承認申請を行ったところであ

り、欧米に大きく遅れを取っている。

果たして、日本はこの 10年間の遅れを取り戻すことが出来るのであろうか。米国では、

DTxの普及を目的とした「Digital Therapeutics Alliance」という非営利の団体が結成されて

おり、多くの企業と FDAを含めた議論が活性化しつつある。日本においても、2019年 10

月、7社の大手製薬企業やベンチャー企業により「日本デジタルセラピュ―ティクス推進研

究会」が発足しているものの、危機感を持たずして事業機会を待っているだけでは、過去の

バイオテクノロジー競争において見られたように、日本がこの分野において欧米だけでなく

中国等アジア諸国にも後塵を拝する可能性は大いにあり得る。斯様な事態を避けるために

も、自ら事業機会を探り、ビジネスモデルを構築することが重要であり、そのためには「事

業機会の見極め」、「適切な参入アプローチ」が成功への鍵であると考える。

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2. データから読み解く新たな事業機会の見極め

2.1 グローバルデータからみる事業機会

現在の市場構造を理解するために、2018年における DTxの事業内訳を、「疾患領域」、

「製品形態」、「エンドユーザー」、「地域」別に示す(図①)。

疾患領域別の内訳を見てみると、糖尿病、肥満、心血管疾患、メンタルヘルス領域が全体の

2/3を占めている。これら領域の共通点は、薬物療法に加えて、生活指導や認知行動療法の

重要性が高く、より密な患者指導や健康状態のモニタリングが治療に有効である点が挙げら

れる。その点で、病院外や自宅で治療介入が出来る DTxとは相性が抜群なのである。この考

えに基づけば、例えば持続的な血中薬物濃度のコントロールが重要となる、抗がん剤治療や

感染症治療等にも事業機会の可能性は大いにあると考えられる。また、メンタルヘルス領域

のように、心理的なサポートを要する疾患においては、DTxのいつでも、どこにいてもアク

セス出来るという点が強みとして挙げられる。心理的なサポートを要する疾患は、悪性腫瘍

をはじめ非常に多く、さらに患者のみならず患者家族の心理サポートまで含めると幅広い需

要がありそうだ。

製品形態は、アプリ等のソフトウェアとデバイスに大別でき、その内訳はソフトウェアが 7

割弱を占めている。後者には、摂取可能な超小型のセンサーを内服薬に埋め込み、服薬時間

を記録・管理する製品等がある。既にスマホをはじめとした電子デバイスの普及が進んでい

る今、スケールメリットを狙うのであれば、アプリをインストールするだけで利用可能なソ

フトウェア市場に軍配が上がるだろう。

エンドユーザー別では、ソフトウェア市場のほとんどの製品が BtoCであることを反映し

て、BtoCの割合が高くなっている。弊社視点 No.138でも論じたように、デジタル技術の進

歩によって医療の在り方が、医療機関を中心としたマス対象の医療から、患者中心の個別化

された医療へ転換していることの表れかもしれない。患者個別の治療法を提供するという流

れは、DTxに限った話ではないが、今後さらに加速していくことが予測されるため、製品開

発においての重要なポイントとなるだろう。

このように、DTxの実用化が進んでいる諸外国の市場構造、トレンドを理解することは、今

後実用化が進む日本を含むアジア市場における事業機会を見出す良いモデルとなる。慢性疾

患やメンタルヘルス領域を中心に普及が進んでいる背景を理解することで、新たな事業機会

を見出すことが出来ると考える。

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2.2 疾患領域別の市場ポテンシャルからみる事業機会

潜在的な事業機会をより定量的に分析することは出来ないだろうか。我々は、特定の疾患領

域における DTxの「市場ポテンシャル」、「アクセシビリティ」を調査した(図②)。市場

ポテンシャルは、各疾患領域の患者数や、DTxが代替し得る割合等を総合的に考慮して評価

している。また、DTxは臨床試験が必須であるため、該当領域の患者や医療提供者へアクセ

スする際の難易度や、新しい治療に対する受容性を総合してアクセシビリティとしている。

糖尿病や肥満、メンタルヘルス等既にメインとなっている事業領域が高い市場ポテンシャル

を持っていることは想定通りだが、一方で、まだ市場規模の小さいてんかんやアルツハイマ

ー病、腫瘍領域も同等の市場ポテンシャルを有している。これらの疾患は、病気の早期発見

や発作の予測が重要な課題であるため、現行の治療法へ適切なタイミングでつなげる前段階

治療として DTxが有効であると考えられる。特にてんかんに関しては、いつ発作が起こるか

わからない不安を抱えながら日常生活を送っている患者にとって新しい治療法への期待が大

きいことは間違いない。フランスのスタートアップ企業である Bio Serenity社は、生体セン

サーを搭載したシャツ「ウェアラブル脳波センサー」を既に欧州で実用化させており、発作

を一早く察知し、服薬を促すことで高い治療効果を発揮している。

また、市場ポテンシャルはやや劣るものの、ペインコントロールも魅力的な事業領域と言え

るだろう。ペインコントロールに関しては、鎮痛薬の服薬タイミングの最適化や、慢性疼痛

に対する心理的支援が課題として挙げられる。アプリを活用した、個々の患者の状態に応じ

た服薬指導や来院時期をアドバイスするアプローチや、VRリラクゼーションビデオを活用

した心理的な疼痛軽減アプローチが考えられる。後者については、米ヘルスケア VR領域の

リーダーである Applied VR社が、VRによる疼痛軽減効果を複数論文で発表しており、承認

に向けた準備を進めている。

このように、疾患領域ごとに市場ポテンシャルを分析し、各疾患領域が直面している課題を

見極めることでも、新しい事業機会を見出すことは可能だ。もちろん、水面下で数多くの企

業が同じ事業機会を狙っている可能性は十分あり得る。しかし、承認までに時間を要する

DTx市場においては、適切な参入アプローチを選択することが極めて重要となる。次章で

は、その参入アプローチについて述べる。

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図 1:グローバル DTxの事業内訳(2018年)

Source: Allied Market Research; Roland Berger

図 2:特定の疾患領域における DTxの魅力度評価

Source: Market reports; Roland Berger

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3. 参入アプローチ

3.1 臨床試験の壁

DTxの実用化に向けては、製品開発、臨床試験を通したエビデンスの収集、規制当局からの

承認、上市後の保険適用、といくつものハードルがある。この中でも、特に参入の際にポイ

ントとなる、「製品開発」、「エビデンスの収集」に焦点を当てる。

まず、製品開発において必要な要素は、臨床現場の課題を熟知した「医療関係者の知見」、

デジタル技術を用いて課題の解決策を製品化する「ITエンジニアの技術」である。また、エ

ビデンスの収集においては、臨床試験を行うための「医療機関との広いつながり」、承認に

向けた「治験プロトコル設計の経験」、そして臨床試験を行うための「資金」が必要であ

る。では、これらの要素を総合的に満たすにはどういった参入アプローチが望ましいだろう

か。

現在 DTxのメインプレイヤーは、ベンチャー企業であり、その多くが、臨床医や製薬領域の

関係者によって設立されている。DTxのリーディングカンパニーであるWell Doc社は、製

薬企業出身者が会社を設立、医師やエンジニアをチームに招き、製品開発を行っている。国

内においても、前述のキュアアップ、不眠症治療用アプリを開発しているサスメドともに創

業者は臨床医であり、チームメンバーにエンジニアを擁している。このように、臨床現場の

感覚を持った医療関係者とエンジニアが協力することで、製品開発は可能だ。一方で、エビ

デンスの収集に関しては、経験、つながり、資金ともに不十分であることが少なくない。さ

らに、従来の医薬品や医療機器と毛色の異なるアプリ等の有効性を科学的に検証しなければ

ならない難しさもある。資金面については、投資会社や投資家から支援を受けている企業が

ほとんどであるが、依然として承認に向けた臨床試験がボトルネックとなり、実用化まで時

間が掛かっているという現状だ。

3.2 協業による強固なビジネスモデルの確立

そこで、DTx領域でも最近注目を集めているのが、製薬分野等の大手企業がベンチャー企業

と共同で製品開発から実用化までを行うアプローチである。製薬企業は、デジタル技術に関

する知見を持ち合わせていない代わりに、医薬品等で薬事承認を得る経験に長けており、治

験プロトコル設計におけるノウハウや医療機関に対するネットワークは豊富だ。2018年 3

月には、ノバルティスが、アルコールや覚醒剤中毒に対する DTxの開発企業である米 Pear

Therapeutics社と提携を発表しているだけでなく、国内企業においても 2019年に入り、大

塚製薬がうつ病の DTxを開発している米 Click Therapeutics社と、塩野義製薬が小児の注意

欠陥・多動性障害(ADHD)の領域で米 Akili Interactive Labs社と提携を発表している。こ

れらの提携によって、実用化までの期間は大幅に短縮される見込みだ。また、製薬企業にと

っても、既に自社が販売している医薬品と DTxを併用する治療法を開発することでシナジー

効果を生み出すことが期待出来る。

今後は、製薬企業や医療機器メーカーが主体となり、必要なデジタル技術を持つ IT企業や医

療関係者を巻き込んで製品開発を一から手掛ける参入アプローチも出てくると考えられる。

いずれにせよ、参入しようとしている事業領域において、製品開発から実用化までに必要な

キープレイヤーを幅広い視点で抽出し、早い段階から巻き込むことが成功への鍵である。

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4. おわりに

本稿では、今後の成長が期待されている DTxについて、現在の市場構造を踏まえた事業機会

の見極め、適切な参入アプローチについて論じてきた。承認後の普及や、保険適用まで考慮

すると、企業同士の協業だけでなく、行政や医師会、保険会社等様々なステークホルダーの

理解やエコシステムの構築等課題は多い。しかし、デジタルヘルスの中でも、まだ競争の激

化していない、未開拓領域の多いカテゴリーであり、いち早く事業機会を見出すことで、市

場を牽引する立場になれる可能性は大いにあり得る。加えて、従来の治療法ではアクセス出

来なかった範囲をカバーする DTxは、患者にとって心強い存在となり、医療の幅に広がりを

もたらす可能性を秘めている。そのような可能性を拓き、DTx市場への参入を考えている企

業は是非一緒に議論させて頂きたい。

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執筆者 ご意見・ご質問等、お待ちしております。

諏訪 雄栄(シンガポールオフィス)

パートナー ライフサイエンス/メドテック 日本/ASEAN リーダーシップ

京都大学法学部卒業後、ローランド・ベルガーに参画。東京オフィス勤務の後、デュ

ッセルドルフオフィスに在籍し日本企業のグローバル戦略立案と実行を現地で支援。

その後ノバルティス・ファーマに参画、日本向け新製品開発戦略に従事した後、ロー

ランド・ベルガーに復職。ジャカルタオフィスを経てシンガポールオフィスに在籍。

ライフサイエンス企業を中心に幅広い業種のクライアントに対し、約 17年間の戦略

コンサルティングを提供してきた経験を有する。

八木 慎太郎

コンサルタント(医師)

聖マリアンナ医科大学医学部卒、日本赤十字社医療センター、東京慈恵会医科大学附

属病院脳神経外科を経て、ローランド・ベルガーに参画。製薬業界・医療機器業界を

中心に、中期経営計画策定、事業再生等のプロジェクト経験を有する。

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ローランド・ベルガー ライフサイエンス/メドテックチームのご紹介 ローランド・ベルガーのライフサイエンス/メドテックチームは、世界各国オフィスに所属する約 50名のパー

トナー、プリンシパルをリーダーとして構成される産業プラクティスです。日本においては、業界出身者(大手

製薬企業・大手医療機器メーカー)、医師免許保有者、アカデミア/研究機関出身者を中心に経験豊富な

コンサルタントからなるコアメンバーが、クライアント企業の戦略立案・実行を力強くサポートしています

ライフサイエンス/メドテック日本 コアメンバー

徳本直紀(プリンシパル)、藤原亮太(プリンシパル)、儀間清昭(シニアコンサルタント)、

尾﨑宥文(コンサルタント/医師)、北脇優子(コンサルタント/医師)、星野悠樹(コンサルタント/医師)、

田尻健(コンサルタント)、八木慎太郎(コンサルタント/医師)

発行

株式会社 ローランド・ベルガー

〒107-6023

東京都港区赤坂 1-12-32

アーク森ビル 23階

Roland Berger Ltd.

Tel: +81-3-3587-6660

Fax: +81-3-3587-6670

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This study has been prepared for general guidance only. The reader should not act on any information

provided in this study without receiving specific professional advice.

Roland Berger Strategy Consultants GmbH shall not be liable for any damages

resulting from the use of information contained in the study.

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