ドラッカー早朝skype勉強会 「多角化の本質」
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多角化の本質を理解する
ドラッカー早朝Skype勉強会
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for positive change
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● 企業としては,専門化から可能な限り多くの成果を得る必要がある● 多角化とは,上記の意味において行うべきものである
→ 自らの中核的な専門性と関連のない多角化は卓越した成果をあげられない,ということ● 専門化と多角化のバランスが,事業の範囲を規定する
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1.多角化の条件
「創造する経営者」 第13章より
リーダー的な地位に立てる中核的な領域をもつ必要がある
あらゆる企業は…
独自の専門領域が中核であること
だからこそ,専門化する必要がある
企業としても,個人としても,自らの事業/強みの核は専門性を追究するべきではある
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1.多角化の条件
専門化と多角化に関連がなければ,生産的になりえない
専門化… 専門化だけでは,個人営業の自由業に毛が生えた程度でしかない
・このような状態では事業は成長できない・自滅するのを待つことにもなりかねない
核… だから,企業には核が必要
・意味ある意思決定を行うための核となる一つの領域をもつべき・核は,企業の中での共通語となる・マネジメントが,経営の感触を有し続け,適切な意思決定を行うことを支える
多角化 … 多角化は,急激に変化する市場と技術の世界の中にあって,必要とする弾力性を確保するために必要なもの
「創造する経営者」 第13章より
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2.多角化の条件②
専門領域と多角化を調和させ,一体性を保つために
「マネジメント(下)」 第56章より
多角化を調和させ,一体性を保つための方法は二つしかない
① 共通の市場のもとに,事業・技術・製品・製品ライン・活動を統合する
これらによって高度に多角化しつつ,一体性を保つ
② 共通の技術のもとに,事業・市場・製品・製品ライン・活動を統合する
これらによって高度に多角化しつつ,一体性を保つ
二つの方法のうち,市場による統合の方が成功しやすいとドラッカーは指摘する(「マネジメント(下) 第57章より)
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3.多角化の必要性
多角化が求められるのは
【リーダーシップとして必要】・マネジメントは,「ミッション
の実現に向けて目標を達成し,活力をもって繁栄し続けるうえで必要最小限の多角化は何か」を考える必要がある
【マネジメントスキルとして必要】・生存上,多角化は必要
【仕組みとして必要】・心理的に必要
(同じことの繰り返しでは,営業マンが飽きる)
【仕組みとして必要】・集中しすぎると,過度の専門化
が起こる危険性が増す
【リーダーシップとして必要】・自らの強みを生かし,もてる
資源から最大限のものを引き出すために多角化そのものを考える必要がある
【マネジメントスキルとして必要】・単一市場や単一技術の最高水準
の企業に劣らない業績をもたらすことを可能にする
【マネジメントスキルとして必要】・規模の不適切さに伴う脆さや
弱点を補強するために新分野に進出することが的確な場合には,多角化は最高の戦略になる
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● 顧客は,新たに多角化したものを同一の市場の一部とみなすか?● 生産者は,自分たちの創るものが顧客にとって同一の市場にあるものかを「聞く」必要
がある● 生産者が「同一の市場のものではない」とみなしても,顧客が同一の市場のものとみなす
ことがある
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4.多角化の際に注意すべきこと
顧客視点と戦略が重要である
① 市場が何であるかを決めるのは,生産者ではなく顧客
● 多角化が寄せ集めに過ぎないときは,多角化は機能しない● 多角化戦略は,それぞれの事業が企業全体の中で果たすべき役割について計画を含んで
いる必要がある● 多角化した事業は,それぞれの目的・戦略・計画をもつ必要がある.同時に,明確な
目標をもち,成果と期待を照合していく必要がある● 多角化の成果を最大限に享受するには,ミッションの共有・全体の構想・戦略の統一が
必要
② 市場を核とする多角化が成功するのは戦略が有効な場合だけ
「マネジメント(下)」 第57章より
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5.技術を軸とする多角化 5原則
守るべき5原則
② 核とする技術は際立ったものであること・その技術は,市場において自らの製品にリーダー的な地位を与えるか?
⑤ 技術を基盤とする多角化には,マーケティング上の知識と戦略を必要とすること・顧客に対するマーケティングが必要
③ 核とする技術は,市場において周辺技術ではなく中核技術であること・ある技術が中核技術か,周辺技術
かを評価することは難しい
④ 技術を核とする多角化において戦略を有すること・「その技術の最善の活用方法は何か」を検討することが必要
① 技術は個別具体的であること理論ではなく,スキルであること・多角化の核としての技術は,卓越
した能力をもつ技能であること
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6.富士フィルムの多角化
「化粧品」への参入を分析してみると,おもしろい
消費者イメージ
しかし…
実際には,連結売上高に占める
写真フィルムのウエートはわず
か3%だった
(2007年度)
※カメラのフィルム事業は「イメージ
ソリューション」事業に含まれる
実際に
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中期経営計画の策定(Vision75)・成長事業としての「医療・健康
分野の強化を狙う
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6.富士フィルムの多角化
「化粧品」への参入を分析してみると,おもしろい
もともとあった
中核的な強み
外部環境の変化・1990年代のデジタルカメラ普及・主力商品の弱まり
フィルム事業で培っていた技術・フィルム主成分としての
コラーゲン研究・角質層(皮膚表層)とフィルム
厚みの類似性・コラーゲン劣化メカニズムの
研究・劣化防止策・抗酸化技術
影響
しかも…
もともと医療用フィルムなど,医療に関わる知識の蓄積は社内にあった
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6.富士フィルムの多角化
「化粧品」への参入を分析してみると,おもしろい
それでも…
社内にも懐疑的な意見
しかし
① 中核的な技術があった・コラーゲン研究・抗酸化技術
② 経営計画として策定・中期計画として,医療・
健康分野を強化することが決定した
③ 女性社員は乗り気になる・美容に対して女性は意欲が
高い
④ ターゲットを明確にした・エイジングケア製品として
ブランド依存の強い40代女性をターゲット
共通の技術
ビジョンの共有
目的・戦略・目標
モチベーションの喚起
顧客価値の創造
明確なマーケティング
富士が化粧品市場に進出するのは理にかなっているといえる
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7.企業研究所「が」陳腐化「した」のではない
組織の成員一人ひとりの心構えが問題なのではないか
人間のパーソナリティーには自分が得意とする思考/行動の傾向があるので,研究畑の人にマーケティングを要求することは効率的でないかもしれない
【仕組みとして必要】・集中しすぎると,過度の専門化
が起こる危険性が増す
しかし…
…ので
【 研究職でない,組織の成員に必要な心構え 】・「われわれ」の事業がもつ「中核的な強み」を,組織の成員として理解しておくこと・「中核的な強み」との類似性を,他の分野の中に常に探しておくこと・そのために,積極的に他分野の人と交流すること・物事の本質を理解しようと努めること.例えば,皮膚の構造とフィルムの構造は本質的に
類似性があるというようなことを積極的に追究する・形式知や暗黙知を積極的に組織内で共有すること.その姿勢が,「中核的な強み」の意外な
活用先を掘り出すきっかけになる
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8.組織の専門性の下にあるありがたみ
顧客に貢献できるのは,中核的な技術があるから
● 組織における「中核的な強み」を理解しようと努め● 強みの本質的な部分が類似性をもつ他分野を探す努力を行いつつ● それらは「顧客価値」を創造することに繋がるか?を追究しながら● 組織の継続的な成長に貢献するという姿勢を忘れないこと
↓
いまの事業の中で,大きくなろう
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http://wedge.ismedia.jp/articles/-/303
参考:http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/trail/080627_astalift1/index1.html