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SLEに伴う腎疾患とANCA関連 およびIgG4関連疾患について (Ⅰ)SLE腎疾患 (1)SLEの診断 (2)ループス腎炎の新分類と予後 (3)抗リン脂質抗体症候群と腎病変 (4)SLEに伴うTTP (Ⅱ)ANCA関連疾患
(Ⅲ)IgG4関連疾患
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SLE分類のための1997年診断基準 (米国リウマチ学会)
1. 頬部紅斑 2. ディスコイド疹 3. 光線過敏症 4. 口腔潰瘍 5. 非びらん性関節炎 6. 漿膜炎 a) 胸膜炎 または b) 心膜炎 7. 腎障害 a) 0.5g/日以上のまたは3+以上の持続性蛋白尿 または b) 細胞性円柱 8. 精神障害 a) 痙攣 または b) 精神障害 9. 血液異常 a) 溶血性貧血 b) 白血球減少症<4,000μ/L c) リンパ球減少症<1,500μ/L または d) 血小板減少症<100,000μ/L 10. 免疫異常 a) 抗二本鎖DNA抗体陽性 b) 抗Sm抗体陽性 c) 抗リン脂質抗体陽性 1) IgGまたはIgM抗カルジオリピン抗体陽性 2) ループス抗凝固因子陽性 3) 梅毒血清反応生物学的偽陽性 のいずれかによる 11. 抗核抗体陽性
【診断の決定】 上記の11項目のうち4項目以上を満たす場合SLEと診断する
ISN/RPSによる2003年ループス腎炎分類
Ⅰ型:微小メサンギウムループス腎炎 Ⅱ型:メサンギウム増殖性腎炎 Ⅲ型:巣状ループス腎炎 Ⅳ型:び漫性ループス腎炎 Ⅳ-S型:び漫性分節性ループス腎炎 Ⅳ-G型:び漫性全節性ループス腎炎 Ⅴ型:膜性ループス腎炎 Ⅵ型:進行した硬化性ループス腎炎
ループス腎炎分類と腎機能予後
Kidney Int 66:2382-2388, 2004
抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断基準案 (サッポロ基準のシドニー改変、2006年)
臨床所見 1. 血栓症 画像診断、ドプラー検査または病理学的に確認されたもので、血管炎 による 閉塞を除く 2. 妊娠合併症 a. 妊娠10週以降で、他に原因のない正常形態胎児の死亡、または b. 妊娠中毒症、子癇または胎盤機能不全による妊娠34週以前の形態学的 異常のない胎児の1回異常の早産、または c. 妊娠10週以前の3回以上つづけての形態学的、内分泌学的および染色体 異常のない流産 検査基準 1. 標準化されたELISA法によるIgGまたはIgM型抗カルジオリピン抗体(中等 度以上の力価または健常人の99%-tile以上) 2. IgGまたはIgM型抗β2-グリコプロティンI抗体陽性(健常人の99%-tile以上) 3. 国際血栓止血学会のループスアンチコアグラント・ガイドラインに沿った測定 法で、ループスアンチコアグラントが陽性
【診断の決定】 臨床所見の1項目以上が存在し、かつ検査項目のうち1項目以上が12週の間隔をあけて2回以上証明されるとき抗リン脂質抗体症候群と分類する。
1. APS(抗リン脂質症候群) 2. HUS(溶血性尿毒症症候群) ① 下痢を伴う典型例 ② 下痢を伴わない非典型例 3. TTP(血栓性血小板減少性紫斑病) ① SLEなどの膠原病に伴うTTP ② 特発性のTTP
血栓性微小血管障害(TMA)を示す疾患
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) (Ⅰ) 5主徴 1. 血小板減少 2. 微小血管性溶血性貧血(MAHA) 3. 精神症状(変動性) 4. 腎機能障害(TMA) 5. 熱発 (Ⅱ) 分類 1. 原発性 2. 続発性(SLE,妊娠に伴うもの,薬剤性など)
SLE及びその近縁疾患の治療 1. SLEの治療 ① ステロイド治療が主体、重症例はステロイドパスル療法 ② 難治例やステロイドの副作用出現例では免疫抑制剤の併用 特にサイクロフォスファマイド大量点滴間欠投与(エンドキサンパスル) ③ さらに重症例は血漿交換、免疫吸着、大量ガンマグロブリン投与や モノクローナル抗体(抗CD20など)療法 2. APSの治療 ① ワーファリン投与が原則 ② 軽症例やワーファリン禁忌例ではアスピリンの投与 ③ 重要例では血漿交換や免疫吸着 3. TTPの治療 ① 単純血漿交換または血漿輸注 ② 抗CD20(リツキサンTM)の投与
SLE及び近縁疾患のまとめ
・ SLEでは高頻度に障害が認められる。 ・ ループス腎炎に対するISN/RPS2003年の新分類では末 期像のⅥ型を除くとⅣ型が最も腎予後が不良であり、強力 な治療が必要である。 ・ SLEに伴うことが多い抗リン脂質抗体症候群(APS)の腎 病変は血栓性微小血管障害(TMA)の像を示す。 ・ APSは非定型的SLEに認められることが多く、かならずし
もSLEの活動性と一致しない。
・ APSの治療としては一般的にはワーファリンが使用される
が軽症例ではアスピリンが代用されることもある。
ANCA関連疾患について
(Ⅰ)ANCAとその対応抗原 (Ⅱ)ANCAと疾患 1.Wegener肉芽腫症 2.顕微鏡的血管炎 3.半月体形成性腎炎 (Ⅲ)ANCA最近の話題 1.肺疾患とANCA 2.抗糸球体基底膜腎炎とANCA 3.全身性強皮症とANCA 4.抗甲状腺薬とANCA (Ⅳ)ANCAの病因論 (Ⅴ)ANCA関連疾患の予後と治療
ANCA:Anti-neutorophil cytoplasmic autoantibody
PR3:Protenase 3, MPO:Myeloperoxydase CSS:Churg-Strauss syndrome 炎症と免疫 17:32, 1999, 一部改変
抗好中球細胞質抗体
蛍光抗体染色像 ANCA対応抗原 関連する疾患 c-ANCA PR3 Wegener肉芽腫症 (細胞質が均一に染色) p-ANCA MPO 顕微鏡的血管炎 (核の周辺のみ線状に染色) 半月体形成性腎炎 アレルギー性肉芽腫 性血管炎(CSS)
Double negative ANCA
・ 蛍光抗体法でANCA陽性の血清のうちでELISAで PR3-ANCAおよびMPO-ANCAがともに陰性のもの が約10%の症例で認められこれをDouble negative ANCAと呼ぶ。 ・ このANCAは血管炎以外に、炎症性腸疾患、自己免疫 性肝炎、感染症などで検出される。 ・ 対応抗原としてはBPI, elastase, cathepsin-Gなどが ある。
PR3-ANCAとWegener肉芽腫症
・ PR3-ANCAは Wegener肉芽腫症で80-90%の陽性率 を示し、他の疾患での出現率は低く、 Wegener肉芽腫症 のマーカー抗体である。 ・ 活動期のWegener肉芽腫症で特に抗体価が高く、抗体 価の推移で治療効果の判定が可能である。 ・ 臨床的に再発の前に抗体価が上昇するので、再発の予 測としても有用である。
MPO-ANCAと顕微鏡的血管炎 半月体形成性腎炎
・ 近年報告例が急増している。
・ 高齢者に多い。
・ 半月体形成性腎炎は糸球体という毛細血管の血管炎と 考えられる。 ・ 他の自己抗体陽性例が多い(抗核抗体、抗甲状腺抗体 など)。 ・ 抗体価と疾患活動性が一致しない例もある。
ANCA関連血管炎における肺病変 p-ANCA (n=14)
C-ANCA (n=13)
合計 (n=27)
肺胞出血 11(79%) 8(62%) 19(70%)
血管病変 11(79%) 10(77%) 21(78%)
肺毛細血管炎 9(64%) 8(62%) 17(63%)
気道病変 間質性病変
3(21%) 8(57%)
8(62%) 13(100%)
11(41%) 21(78%)
びまん性肺胞障害 9(64%) 7(54%) 16(59%)
胸膜病変 2(21%) 5(38%) 7(26%)
Am J Clin Pathol 104:7-16, 1995
肺疾患とANCA関連腎炎
・ 肺出血、間質性肺炎の合併例が多い。 ・ ANCA関連腎炎の死因の約50%が上記の合併症による。 ・ 肺病変先行例が37.0%、同時例が40.7%、腎病変先行 例が18.5%。
Goodpasture 症候群
Goodpastureが1919年に血痰、貧血、急速に 進行する腎炎を合併した症例を報告したことに はじまる肺腎症候群
Goodpasture 症候群のまとめ
・ 腎糸球体基底膜(GBM)、および共通する抗原性持つと考 えられる肺胞上皮に対する自己抗体によってひき起こされ る疾患。 ・ 臨床的には急速進行性腎炎、肺胞出血を示し、ANCA関連 疾患と同様肺腎症候群を呈し、特に予後不良の疾患である。 ・ 肺胞出血を伴わない例は抗GBM型急速進行性腎炎症候 群といわれており、腎の予後は不良である。 ・ 糸球体ではIgGがlinear patternを示し沈着 ・ 治療法は血漿交換+ステロイドパルス治療が初期治療とし て推奨されている。
抗糸球体基底膜抗体とANCA
・ 抗糸球体基底膜腎炎の20~30%の例でANCA陽性である。 ・ ANCAによる糸球体障害で新しい基底膜抗原が露出し、抗 糸球体基底膜抗体が産成される可能性がある。 ・ ANCAと抗糸球体基底膜抗体同時陽性症例は抗糸球体基 底膜抗体単独陽性例に比し高年齢であるが、予後はやや 良好という報告がある。
全身性強皮症とANCA関連腎炎
・ 全身性強皮症で正常血圧腎クリーゼを示す。 ・ MPO-ANCA陽性で腎組織は半月体形成性腎炎を示す。 ・ 治療法は高血圧性腎クリーゼの際のACE阻害剤ではなく ステロイドなどの免疫抑制治療が必要である。
抗甲状腺薬とANCA関連腎炎
・ 抗甲状腺薬特にPTU(Propyluracil)投与時に発生。
・ MPO-ANCA陽性で、肺出血、半月体形成性腎炎を示す。
・ 発生機序として modified self 仮説がある。
・ modified self 仮説:PTUが白血球のMPOと結合し、その 構造が変化し、非自己と見なし(modified self)それに対し MPO-ANCAが産生される。
ANCA関連疾患の治療
・ ステロイド剤 経口剤、 パルス療法(大量点滴静注法)
・ 免疫抑制剤
エンドキサンの経口、パルス療法
イムラン、ブレディニン、シクロスポリンの経口
・ 血漿交換
・ 免疫グロブリン大量投与
・ モノクローナル抗体
ANCA関連疾患のまとめ
・ c-ANCA(PR3-ANCA)はWegener肉芽腫症のマーカー 抗体で、その抗体価は疾患活動性と相関する。 ・ p-ANCA(MPO-ANCA)は顕微鏡的血管炎、半月体形成 性腎炎で高率に陽性である。 ・ 肺疾患、抗糸球体基底膜腎炎、全身性強皮症に伴う、ある
いは抗甲状腺薬投与時のMPO-ANCA関連血管炎・腎炎
が最近注目されている。
・ ANCA関連疾患は高齢者に多く、その予後は必ずしも良好 ではなく、早期の診断および適切な治療が必要である。
IgG4関連疾患について 1. 血中IgG4が高値を示し、全身にIgG4
陽性の形質細胞を中心とした浸潤を認める疾患
2. 浸潤した組織では、腫瘤を形成したり著明な線維化を認め、臓器障害を来す
3. しばしば悪性腫瘍と間違えられ手術療法や化学療法が行われることがあり要注意である
4. 成因は不明で自己免疫疾患またはアレルギー疾患と考えられている
5. 治療法としては少量のステロイドが著効することが多い
全身性疾患としてのIgG4関連疾患
札幌医科大学HPより:http://web.sapmed.ac.jp/im1/SubPage/04_Kenkyu/Kaisetsu03.html
IgG4関連疾患のまとめ
・ IgG4関連疾患では血中IgG4が高値(135mg/dl以上)を示
すことが多い。
・ 侵された臓器では多数のIgG4陽性細胞の浸潤を認める。
・ 関連する疾患としては、自己免疫性膵炎、ミクリッツ病、後
腹膜線維症、間質性肺炎、リーデル甲状腺炎、下垂体炎
前立腺炎などで、腎臓では間質性腎炎を示すことが多い。
・ 治療としては、少量のステロイドが著効することが多いが
診断が遅れると、重篤な臓器障害を来すので早期診断・早
期治療が必要である。