横型soi高速ダイオードの逆回復動作におけるダイ...

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EDD-10-93 SPC-10-15 横型SOI高速ダイオードの逆回復動作におけるダイナミックアバラン シェ現象の解析とその抑制構造の検討 山本 貴生* 加藤 久登 戸倉 規仁(㈱デンソー) 中川 明夫(中川コンサルティング事務所) AnalysisofdynamicavalanchephenomenoninSOIlater andproposalofnoveldevicestructuresuppressl Takao%mamoto*,HisatoKato,NorihitoTbkura(DENS andAkioNakagawa(NakngawaConsultingOffice WehavestudiedthedynamicavalanchephenomenoninSOHa mixed一mOdedevicesimulation.Itisfoundthatthelocalizedim oxideedge,Whereahighdensityofholecurrentflowsandahi propose,forthe丘rsttime,thatthep・tyPeanOdeextensionreglO out the stored carriers beneath the anode prdifEusionlay reductionoftheelectriC丘eldandtheremarknblesuppressio reglOn does notcause anylnCreaSein anodeinjectione臨c proposed SOIlateraldiode structureis promlSlngaS a generationmicro-inverters・ キーワード:インバータ,SOI,横型ダイオード,逆回復,ダイナミックアバランシェ,デバイスシミュレーション (Inverter,SOI,LateralDiode,Reverserecovery,Dynamicavalanche, 1.はじめに 1軸m程度の厚膜シリコン層を持つSOI基板を使用し, 横型ダイオード(LDiode),LIGBT,及び制御回路等をト レンチ分離技術によりモノリシック化したSOIインバータ ICが開発され(1,2),実用化されている。SOIインバータIC のハイパワー化や高効率化を図るためには,LDiode LIGBTを低オン電圧化,高速化することが必要である。 図1に,インバータに使用される一般的な高速ダイオー ドの逆回復(リカバリ)動作の模式的な波形を示す。ダイ オードのアノード電流hは、まず順方向電流IFを通電した 後,リカバリ動作に移る。リカバリ特性に関する性能指標 は,設定されたdi/dt条件における逆回復電荷Qrr,逆回復 時間trr,そして逆回復ピーク電流IMであり(3),共に小さ くすることが求められる。 LDiodeや高速化するには,まずQrrを小さくする必要が ある。そのためには,順方向動作時のアノード注入効率を 低く設計することが必要で,p■/p+ァノード構造を採用す ることで可能になる(4-6)。また,trrを短縮するには,LIGBT time 図1ダイオードの一般的なリカバリ動作波形,実線: ダイナミックアバランシェなし,点線:ダイナミックア バランシェあり を高速動作させ,di/dtを大きくすることで可能になるが, 同時にIRMも増加する。さらにdi/dtを大きくすると,ダイ 57 2010/11/29◎2010I

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EDD-10-93

SPC-10-150

横型SOI高速ダイオードの逆回復動作におけるダイナミックアバラン

シェ現象の解析とその抑制構造の検討

山本 貴生*  加藤 久登  戸倉 規仁(㈱デンソー)

中川 明夫(中川コンサルティング事務所)

AnalysisofdynamicavalanchephenomenoninSOIlateralhighSpeeddiodeduringreverserecovery

andproposalofnoveldevicestructuresuppresslngthedynamicavalanche

Takao%mamoto*,HisatoKato,NorihitoTbkura(DENSOCORPORATION)

andAkioNakagawa(NakngawaConsultingOffice)

WehavestudiedthedynamicavalanchephenomenoninSOHateraldiodeduringthereverserecoveryusing

mixed一mOdedevicesimulation.Itisfoundthatthelocalizedimpactionizationoccursneartheanode-Side丘eld

oxideedge,WhereahighdensityofholecurrentflowsandahighelectriC丘eldappearssimultaneOuSly・We

propose,forthe丘rsttime,thatthep・tyPeanOdeextensionreglOnalongthetrenchside-Walleffbctivelysweep

out the stored carriers beneath the anode prdifEusionlayer during the reverse recovery,reSultinginthe

reductionoftheelectriC丘eldandtheremarknblesuppressionofthedynamicavalanche.Theanodeextension

reglOn does notcause anylnCreaSein anodeinjectione臨ciencylntheforwardbias operation・Thus,the

proposed SOIlateraldiode structureis promlSlngaS a highspeed andhighlyrugged diodein the next

generationmicro-inverters・

キーワード:インバータ,SOI,横型ダイオード,逆回復,ダイナミックアバランシェ,デバイスシミュレーション

(Inverter,SOI,LateralDiode,Reverserecovery,Dynamicavalanche,Devicesimulation)

1.はじめに

1軸m程度の厚膜シリコン層を持つSOI基板を使用し,

横型ダイオード(LDiode),LIGBT,及び制御回路等をト

レンチ分離技術によりモノリシック化したSOIインバータ

ICが開発され(1,2),実用化されている。SOIインバータIC

のハイパワー化や高効率化を図るためには,LDiode と

LIGBTを低オン電圧化,高速化することが必要である。

図1に,インバータに使用される一般的な高速ダイオー

ドの逆回復(リカバリ)動作の模式的な波形を示す。ダイ

オードのアノード電流hは、まず順方向電流IFを通電した

後,リカバリ動作に移る。リカバリ特性に関する性能指標

は,設定されたdi/dt条件における逆回復電荷Qrr,逆回復

時間trr,そして逆回復ピーク電流IMであり(3),共に小さ

くすることが求められる。

LDiodeや高速化するには,まずQrrを小さくする必要が

ある。そのためには,順方向動作時のアノード注入効率を

低く設計することが必要で,p■/p+ァノード構造を採用す

ることで可能になる(4-6)。また,trrを短縮するには,LIGBT

time

図1ダイオードの一般的なリカバリ動作波形,実線:

ダイナミックアバランシェなし,点線:ダイナミックア

バランシェあり

を高速動作させ,di/dtを大きくすることで可能になるが,

同時にIRMも増加する。さらにdi/dtを大きくすると,ダイ

- 57 一

2010/11/29◎2010IEEJapan

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ナミックアバランシェ(3)に起因する2ndpeakが現れると共

にIMの増加が顕著になり(6),破壊に至るという問題があ

る。中川らの報告では,6セルからなる素子面積0.74mm2

のLDiodeのリカバリ特性は,電源電圧Vcc,順方向電流IF,

di/dtがそれぞれ300V,5A(電流密度は約650A/cm2),

.30A/psecの時,IRM,trrはそれぞれ5.5A,300nsecと良

好な高速特性を示しているが,リカバリ波形には1stpeak

よりも高い2ndpeakが現れている(2)。

リカバリ動作時のデバイス内部の動作解析やダイナミッ

クアバランシェ現象(3)に関して,縦型ダイオードの報告例は

多いが(7),SOI型LDiodeの報告例は極めて少なく(6),ダイ

ナミックアバランシェに関して詳しく論じられていない。

本報告では,デバイスシミュレータを使用して,まず従

来構造のSOI型LDiodeについてリカバリ特性を計算し,

ダイナミックアバランシェが顕在化する時のデバイス内部

の動作を詳しく解析した。次に,この解析と理解に基づい

てダイナミックアバランシェを抑制する新しい構造を提案

し,その効果をシミュレーションで検証した。

2.従来型SOILDiodeのリカバリ動作解析

く2・1〉デバイス構造とシミュレーション解析

まず,図2(a)に従来技術に基づいてLDiodeとLIGBTを

SOI基板に集積したデバイスの概略構造図を示す。定格耐

圧600Vを想定し,n‾シリコン層の厚さと埋め込み酸化膜

(BOx)の厚さを,それぞれ15pm,叫mに設定した。デ

バイス表面の電界緩和には,Scro11-ShapedResistiveField

Plate(SRFP)8)を想定した構造を採用し,高速化のために,

LDiodeのアノードには低濃度pウエルと高濃度p+層から

なる低注入効率のp‾/p+アノード構造を採用した(5)。

図2(b)に,シミュレーションに使用したLDiodeのデバ

イス構造を示す。耐圧600Vを得るため,n‾ドリフト層の

!て    1.mdc     >」<      L氾BT     >;

(b)

図2 従来型LDiodeとLIGBTのデバイス構造,(a)

LDi。deとLIGBTをSOI基板上に集積したデバイス構造,

(b)シミュレーションに用いたLDiode構造

図3 LDiodeとLIGPTからなるリカバリ特性評価の

ための回路構成(Mixed-mOdesimulation)

横幅と不純物濃度を,それぞれ9軸m,7×1014cm‾3に設定

した。また,順方向電流2A時の電流密度を報告例(2)の650A

/cm2に等しくするため,奥行き(AreaFactor)を3.4mm

に設定し,LDiodeの総面積を0.31mm2とした。p‾/p十ア

ノード構造については,低濃度pクエル内に高濃度p+層を

形成し,アノード電極にコンタクトする低濃度pウエル表

面と高濃度p+層表面の面積比は3:1に設定した。一方,LIGBTの構造は,n‾ドリフト層の構造はLDiode

と同様とし,ゲート酸化膜厚を80nm,LIGBTの総面積を

LDiodeに対して6.9倍の2.16mm2に設定した。

図3に,LDiodeのリカバリ特性の解析を行うための

Mixed-mOdeシミュレーションの回路構成を示し,図2に

示したLIGBTでLDiodeを駆動する。電源電圧Vcc=280V,

負荷インダクタンス=5mH,ゲート抵抗Rgはアノード電流

IAのdi/dtに応じて設定した。スイッチング動作のシーケン

スは,ゲートにダブルパルスを印加し,1stpulseの立ち下

がりでIJI)iodeにフリーホイーリング電流を供給し,2nd

pulseの立ち上がりでLDiodeをリカバリ動作させ,その時

の過渡特性を解析した。シミュレータはDESSIS(9)を使用し

た。

〈2・2〉シミュレーション結果とリカバリ動作解析

図4に,従来型LI)iodeのリカバリ特性を示す。Osecで,

軸を介してLIGBTのゲートにステップ電圧を印加する。

Rg=1.5kE2の場合,ターンオン前の時刻tl(=10nsec)にお

いて,LDiodeに2Aのフリーホイーリング電流が流れてい

る。約40nsec経過後LIGBTがターンオンし,LDiodeのア

ノード電流IAは-80A/LLSeCのdi/dtで減少する特性を示し

た。他方,Rg=3kE2の場合,di/dtは-43A/psecであり,

Rgの設定によりdi/dtを可変できることを確認した。なお,

図4に示したRg=3knの場合の波形は,便宜上左方向へ

40nsecシフトさせてあり,IAが低下を始める時刻が約

40nsecになるように操作して示してある。

1.5k臼の場合,IAは115nsec付近でピーク値を取るが,

その形状が歪んでいることからダイナミックアバランシェ

が発生していると考えられる。リカバリ動作時のIAは,空

乏化によりn‾ドリフト層に蓄積されたキャリアの排出と,

一 58 -

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図4 従来型LDiodeのリカバリ特性,dudtは-80A/LLSeC

(Rg=1.5kE2),-43A/LLSeC(Rg=3kn)

ダイナミックアバランシェによりデバイス内部で新たに生

成されたキャリアの供給の和で与えられる。そこで,n‾ド

リフト層に蓄積されたホールの掃き出しのみによる電流ピークを調べるために,DESSISのPhysicsの一項目である

衝突イオン化(ImpactIonization)機能をオフにした条件

にて計算し,結果を図4に示す。図より,IAはt2(=112nsec)

でシャープなどーク波形を呈することが確認された。これ

に対し,衝突イオン化機能をオンにした場合の波形はt2に

おいて変曲点を呈しており,この点をlstpeak(=-1.57A,

112nsec)と見なした。

衝突イオン化機能をオンにした場合の,lstpeak以降の

波形は,5nsec経過したt3(=117nsec)において最大値を

取ることから,これを2ndpeak(=・1.59A)と判断した。

その後,IAは370nsecまで単調減少する。一方,3knの場

合,t2’(=148nsec)で1stpeak(=-1.14A)を取るが,2nd

peakは発生せず475nsecまで単調減少する。なお,図4に

示したアノード電圧VAXの波形は,約-200Vにおいて折線

的に変化するが,これはLIGBTのターンオン特性に起因し

ている。

Rg=1.5kE2の場合に発生する2ndpeakはダイナミックア

バランシェに起因すると考えられるが,そのメカニズムを

詳しく調べるために,図4に示した6つの時刻tl(ON状

態,2.OA),t2(1stpeak,-1.57A),t3(2ndpeak,-1.59A),

t4(テール初期,-0.76A),t5(テール中央,-0.40A),t6(OFF

状態,OA)において,6つのパラメーター電位Ⅴ,衝突イ

オン化率Ⅰ.Ⅰ.,電界強度E,ホール濃度Np,およびホール

電流密度JpLに着目してLDiodeの内部状態を分析し,そ

の結果を図5に二次元マップで,図6に点AにおけるE,

Jp及びⅠエの時間変化をグラフで示す。

2ndpeakを挟むt2~t4の期間に注目すると,図5の電位

分布等の変化から,空乏化はまず低濃度pクエルからBOx

界面に向かって拡がるが,2ndpeak一のt3においても5pm

程度であり,空乏層の拡がりは遅い。このため,t3における

電界強度分布は低濃度pウエルのコーナ部からフィールド

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図5 tl~t6における従来型LDiodeのアノード領域の電位,衝突イオン化率,電界強度,ホール濃度,およびホール

電流密度分布の時間変化,dudt=-80A/LIS(Rg=1.5kE2)

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図6 従来型LDiodeのA点における電界強度E,ホー

ル電流密度Jp,衝突イオン化率Ⅰ上の時間変化,

di/dt=-80A/甚S(Rg=1.5kE2)

酸化膜端部にかけて集中し,A点のシリコン表面で2.90×

105V/cmに達する。また,t3におけるホール電流密度分布

は,n‾ドリフト層から掃き出されたホールが,低濃度pウ

エルに向かって集中して流れ,A点のシリコン表面で2.35

×105A/cm2に達する。この結果,t3においてA点で1.70×

1027pairs/sec・cm3の衝突イオン化が発生し,これがダイナ

ミックアバランシェの原因であることが明らかになった。

t4付近でBOxに到達した空乏層は,その後はカソード方

向に向きを変え,BOxに並行に拡がる。図6から,ダイナ

ミックアバランシェが発生するのはt2~t4の期間に限られ

ているが,その直接の原因はA点がこの期間だけ高電界に

なり,衝突イオン化率が著しく高くなるためであった。

テール中央部のt5(=300nsec)においても,A点のホー

ル電流密度が6.13×104A/cm2と極めて高い値を保っている

理由は,蓄積ホールが継続してA点を通過してアノードへ

掃き出されるからである。しかし,電界強度が7.07×

104V/cmまで低下することで衝突イオン化は激減し,ダイ

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ナミックアバランシェは発生していない。一方で,Rg=3kE2の場合,図4に示す1st peakのt2’

(=148nsec,一1.14A)とテール初期のt4,(=180nsec,-0.75A)

におけるLDiodeの内部状態を,EとⅠ.I.のみについて図7

に示す。図7のt2’及び図5のt3におけるEとⅠ.Ⅰ.の比較か

ら,Eは2.90×105V/cmから1.78×105V/cmへ約2/3に低

下し,I.Ⅰ.は1.70×1027pairs/sec・cm3から1.02×

1025pairs/sec・cm3へ約2桁減少する。これらの減少は,di/dt

が一80A小Sから-43A小Sへ約1/2緩和したことに因る。

3.ダイナミックアバランシェの制御

LDiodeのリカバリ動作におけるダイナミックアバラン

シェの制御について考える。<2.2>より,ダイナミックアバ

ランシェが発生する条件は,図5に示す様に,A点におい

て高いホール電流密度と高い電界強度が同時に発生するこ

とであることが確認された。高速ダイオードを実現するた

めには,高いdiノdtにおいても,A点におけるEを低く抑え

ることが最も効果的であると考えられる。

〈3・1〉 ダイナミックアバランシェ抑制の考え方

LDiodeのアノード領域の構造を工夫することで,リカバ

リ過程におけるA点の電界を緩和する方法を検討する。図

5に示す電位分布等の時間変化から,従来型LDiodeの空乏

化は図8に示す実線の夫印①~⑤の順で進行し,これは図5

の時刻t2~t6に対応する。図5に示す電位分布の推移から

空乏化は二段階で進行し,①→②→③は縦方向,③→④→

⑤は横方向に進む。

ここで,もし,点線の矢印①~⑤の順で直線的に進行さ

せることができれば,空乏化を遠くすることができる。す

なわち,リカバリ時に一次元ダイオードと等価な動作をさ

せるという考え方である。著者らは,図8に示すようにト

レンチ側面にp型のアノード延長領域を配置することで,一次元ダイオードと等価な動作が実現できると考えた。

図7 t2,とt4,における従来型LDiode内部の衝突イオン化

率と電界強度分布の時間変化,dudt=-43A/LIS(Rg=3kn)

- 60 -

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図8 p型アノード延長領域を付加し,一次元ダイオー

ド構造に近づけたLDiode構造と空乏化過程の促進

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〈3・2〉アノード延長型SOILDiodeの提案

図9に,シミュレーションに用いたアノード延長領域を

備えたSOILDiode(以下,アノード延長型LDiode)のデ

バイス構造を示す。アノード延長領域の表面不純物濃度と

厚さは1×1020cm‾3,1Ltm(Type-I)に設定した。なお,P

型のアノード延長領域を除けば,図2(b)の従来型LDiode

と同一構造である。シミュレーション解析の要領は<2.1>と

同様であり,LDiodeとLIGBTを組み合わせてリカバリ特

性解析を行った。

rathode An(ld亡

図9 シミュレーションに用いたアノード延長型

LDiodeの構造

〈3・3〉シミュレーション結果とリカバリ動作解析

図10に,アノード延長型LDiodeのリカバリ特性を,従

来型LDiode(図4の波形)と比較して示す。ただし,di/dt

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図10 アノード延長型LDiodeと従来型LDiodeのリカ

バリ特性比較,di/dt=-80A/LLSeC(Rg=1.5kE2)

は-80A/psec(Rg=1.5kE2)の場合のみとした。

図10より,アノード延長型の1stpeakはt2”(=103nsec,

-1.51A)であり,従来型のt2(=112nsec,-1.57A)よりも

9nsecだけ早いが,t2,,までのアノード電流波形はほぼ重な

る。t2”以降,両者の波形は分離し,従来型は2nd peakの

t3(=117nsec,-1.59A)まで増加し,その後減少に転じる。

一方,アノード延長型はt2”以降単調減少するが,5nsec後

のt3”(=108nsec,-1.49A)で変曲点を取る。この変曲点を

2ndpeakと見なした。両者のQrrは184nC,205nCであ

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図11 tl~t6におけるアノード延長型LDiodeのアノード領域の電位,衝突イオン化率,電界強度,ホール濃度,

およびホール電流密度分布の時間変化,dudt=-80A小S(Rg=1.5kE2)

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、・-li111e=heC)

図12 アノード延長型LDiodeのA点における電界強度

E,ホール電流密度Jp,衝突イオン化率Ⅰ.Ⅰ.の時間変化,

di/dt=-80A/甚S(Rg=1.5kE2)

り,アノード延長構造により,衝突イオン化による新たな

キャリア生成が21nCだけ低減されることが分かった。

次に,<2.2>と同じ要領で,アノード延長型LDiodeのリ

カバリ動作について,6つの時刻-tl~t6-と6つのパラメ

ーターⅤ,Ⅰ.Ⅰ.,E,Np,Jp一に着目して内部状態を分析し

た結果を,図11に二次元マップで,図12に点Aにおける

E,Jp及びⅠエの時間変化をグラフで示す。

アノード延長型のt2”~t4の期間に着目すると,図11の

電位分布等の変化から,t2”(=103nsec)において既にアノ

ード延長領域からn‾ドリフト層に向かって空乏層が5.軸m

拡がっている。5nsec後,2ndpeakのt3,,(=108nsec)に

おいては,空乏層は横方向に9.叫m拡がっており,約

0.旬m/nsecの速度で,リカバリ開始と同時に急速に空乏化

することが分かった。また,t3’’におけるA点のE,Jp及び

Ⅰエは,それぞれ2.11×105V/cm,1.76×105A/cm2及び6.95

×1025pairs/sec・cm3であり,図5に示した従来型LDiode

と比べると,Eは0.8×105V/cmだけ減少し,Jpは3/4に,

Ⅰ.Ⅰ.は1/24に大幅に減少した。

さらに,E,Ⅰ上の時間変化を図6と図12で比較すると,

ピーク値が低下するだけでなく,大きな値を取る期間も短

縮している。即ち,2ndpeakが著しく小さくなったのは,

アノード延長領域の働きによりリカバリ初期の空乏化が促

進され,A点の電界強度が減少し,衝突イオン化率が大幅

に低下してダイナミックアバランシェが抑制されたことに

因ると結論づけられる。

テール初期のt4(=200nsec,-0.65A)において,図11

より,空乏層は約3叫mに拡がり,電界緩和はさらに進ん

でいるが,A点のJpは1.10×105A/cm2と極めて高い状態

が続き,図5に示した従来型LDiodeと同様に,継続して蓄

積ホールがA点を通過してアノードへ掃き出されている。

ピークから十分時間が経過したt5(=300nsec,-0.35A)に

おいては,図5と図11の比較から両者の差は小さい。

4.アノード延長領域のデバイス物理

<3.3>では,アノード延長型LDiodeの一例について詳細に

分析した。ここでは,アノード延長領域とデバイス動作の

関係をデバイス物理に基づいて考察し,さらにリカバリ特

性に与えるアノード延長領域の構造依存性について明らか

にする。

く4・1〉アノード延長領域とアノード注入効率の関係

図8に示すように,従来構造のLDiodeにp型のアノー

ド延長領域を付加することは,p‾/p十アノード構造の低注

入効率化を阻害する可能性があり,逆回復電荷Qrrの増加

が懸念される。

そこで,まず図5と図11に示した時刻tl(=10nsec)に

おける順バイアス時のホール濃度分布を,図13(a),仏)に再

掲する。順方向電流IFは共に2.02Aに設定されており,こ

の時の順方向電圧VFはそれぞれ2.18V,2.16Vで殆ど等し

い。図13(a),(b)より,全体的にはアノード近傍のホール濃

度分布はほぼ等しく,B点のホール濃度Npも共に1.8×

1017/cm3で等しい。ホール濃度が大きく異なるのは,トレ

ンチ側壁の近傍のみである。

(a) (b)

図13 tlにおけるアノード付近のホール濃度分布の比

較,(a)従来型LDiode,(b)アノード延長型LDiode

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図14 順バイアス時の順方向電圧降下VF,B点のホール濃度Np,逆回復電荷Qrrのアノード延長領域の

位置依存性

- 62 -

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また,図13(b)よりp型のアノード延長領域(1×1020cm-3)

とnAドリフト層(7×1014cm‾3)からなるpn接合面におい

て,ホール濃度差が2桁以上あり,かつホールの濃度勾配

も殆ど無いことから少数キャリア注入は生じていない。図

13(b)のC-D線に沿ったホールの擬フェルミポテンシャル

の変化も殆ど無いことからも裏付けられた。

次に,アノード延長領域(1×1020cm-3)の構造が注入効

率を増加させない条件を明らかにするために,アノード延

長領域の位置をトレンチから0~14.5匹mの範囲で移動させ

た場合のシミュレーション解析を行った。図14に,3つの

パラメーター順方向電圧降下VF,B点のホール濃度Np,

逆回復電荷Qrr-の位置依存性を示す。図14より,軸mま

では変化が僅かであるが,これを越えるとVF及びQrrが増

加する。従って,トレンチ側壁~高濃度p+層の範囲にアノード延長領域を配置する必要がある。

く4・2〉アノード延長領域とp‾/p十アノード構造の関係

拡散でキャリア伝導が支配される順バイアス条件下で

は,図13から,アノード領域においてはp‾/p+ァノード

構造がキャリア注入現象を支配しており,低濃度pウェル

より奥に位置するアノード延長領域は,キャリア伝導に寄

与しない。一方,ドリフトでキャリア伝導が支配される逆バイアス

のリカバリ動作条件下では,アノード延長領域がアノードp

層として働くため一次元ダイオード構造と見なせる。そし

て,リカバリの初期段階において,トレンチ近傍~アノー

ド下部に蓄積したホールはアノード延長領域に速やかに掃

き出されて空乏化し,その後のnlドリフト層の空乏化が早

く開始すると共に,蓄積ホールは低濃度pウエルに掃き出

される。この結果,電界の上昇が緩和されてダイナミック

アバランシェが抑制される。すなわち,アノード延長領域

は,順バイアスと逆バイアスでキャリア伝導への関わり方

が異なることを利用し,リカバリ初期過程のごく短時間の

みデバイス動作に関与してダイナミックアバランシェを抑

制するという巧妙なメカニズムを生み出している。

次に,低濃度pウエルとアノード延長領域がデバイス動

作に与える影響を詳しく分析するために,p‾/p+ァノード

構造の低注入効率を機能させない条件1低濃度pウェルを

(a) (b)

図15 低濃度pウエルをアノード電極に接続しない場合

の順バイアス時のホール濃度分私(a)従来型LDiode,

(b)アノード延長型LDiode

アノード電極に接続しない(open)設定一の下で,従来型

とアノード延長型の順バイアスにおけるホール濃度分布を

対比して図15(a),(b)に示す。順方向電流IFは共に2.02A

に設定されている。この時の電圧降下VFはそれぞれ1.76V,

1.78Vで殆ど等しい。デバイス内部において,B点のホール

濃度Npは,それぞれ8.0×1017/cm3,6.75×1017/cm3でほ

ぼ等しく,B点から左側の領域におけるホール濃度分布も

ほぼ等しい。図13(a),O))に示したNp(=1.6×1017/cm3)

と比べると4倍以上の高濃度である。一方,図15(a),払)

に示すB点から右側の領域において,トレンチ近傍のホー

ル濃度は,(a)よりも払)の方が低い。これは,p型のアノー

ド延長領域とn▼ドリフト層からなるpn接合が順バイアス

されないために,ホール注入が起こらないことが原因であ

る。

これらの結果から,アノードの注入効率はアノード延長領

域の有無によらずp‾/p+ァノード構造で決定されること

が明らかになった。そして,アノード延長領域は,順バイ

アス時の静特性と逆バイアス時のリカバリ特性を共に損な

うことなく,大きなd〟dtの下でもダイナミックアバランシ

エの発生を押さえ,これに伴うQrrの増加も抑制される。

く4・3〉アノード延長領域のドーピング条件の影響

図9に示したLDiode構造において,アノード延長領域の

表面不純物濃度と厚さを取pe-Ⅰ(1×1020cm‾3,lpm)から

Type-P(1×1018cm-3,3pm)に変えた場合のリカバリ特性

の変化を図16に示す。図より,Type-IとType-Pの1st

peak(t2”,103nsec)を比較すると0.09Aと僅かな増加で

あった。またtlにおけるType-PのIF,VF Npがそれぞれ

2・02A,2・18V,1・59×1017cm‾3であり,図13(b)に示すType-Ⅰ

とほぼ等しかった。一方,2ndpeak(t3”,108nsec)の増

加も0.07Aと僅かであり,取pe-Pにおいてもダイナミック

アバランシェは十分に抑制されており,リカバリ特性はア

ノード延長領域のドーピング条件に殆ど影響されないこと

が明らかになった。

図16 アノード延長領域のドーピング条件がリカバリ特

性に与える影響,Type-Ⅰ:1×1020cmJ3/lpm,Type・P:

1×1018cm‾3/3LLm,di/dt=-80A小sec(Rg=1.5kE2)

- 63 -

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3,4章においては,LDiodeのシリコン層表面からBOx

界面に至る長いアノード延長領域を備えたデバイス構造を

解析対象としたが,明らかになったアノード延長領域の効

果は,BOxまで届かない短いアノード延長領域の場合でも,

相応の効果が期待できる。一例として,低濃度pクエルの

トレンチ側にdeepPクエルを追加した構造が,ダイナミッ

クアバランシェの抑制に有効であることが実験により検証

されている(10)。

5.まとめ

デバイスシミュレーションを使用して,従来技術で構成

したSOILDiodeを大きなdi/dtでリカバリ動作させた時に

発生するダイナミックアバランシェ現象を詳しく分析し

た。その結果,従来構造では,リカバリ開始直後において,

アノード領域に蓄積したホールの抜けが悪く空乏化が遅

れ,アノード領域の電界強度が高くなり,アノード側のフ

ィールド酸化膜端部のシリコン表面(A点)において,高

密度の衝突イオン化が発生することがダイナミックアバラ

ンシェの原因であることを明らかにした。

この理解に基づいて,リカバリ開始直後にアノード領域

の空乏化を促進することを狙ってトレンチ側壁にp型アノード延長領域を付加した構造を提案し,デバイスシミュレ

ーションを使用してダイナミックアバランシェを効果的に

抑制できることを初めて明らかにした。そして,p型アノー

ド延長領域とp‾/p+アノード構造を組み合わせたアノー

ド延長型LDiodeは,ダイナミックアバランシェを発生する

ことなく,高速スイッチング動作に適した構造であること

を示した。

謝辞

本研究を進める上で,常に支援を頂いている加藤之啓常

務,岩森則行部長,並びに白木聡室長に感謝いたします。

また,議論をして頂いた高橋茂樹,蛭間淳之の両氏に謝意

を表します。

文   献

(1)A,Nakagawa:“ImpactofDielectricIsolatlOnTbchnologyonPower

ICs”,Proe.ISPSD’9Lpp.16-21(May1991)

(2)A.Nakagawa,H.Funaki,Y Yamaguchi,and F.Suzuki:

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InverterICs”,Proc.ISPSD’99,pp,321-324(May1999)

(3)パワーデバイス・パワーICハンドブック,オーム社,電気学会編,p.84,

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(4)平山,舟木,山口,中川.「横型SOI高速ダイオードの逆回復特性」,

電気学会,電子デバイス研究会資料,EI)D-98-61,pp.21-26

(1998-2-19)

(5)A.Nakagawa,H.Funakl,Y.Yamaguchi,andK.Hirayama‥“Design

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(6)H.Funakl,YYamaguchi,K.Hirayama,andA.Nakagawa‘Lateral

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64 -

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(9)ISETCAI)ReleaselO.ODESSIS(2005)

(10)鈴木,木村,櫻井,高橋,白木,戸倉,杉山.「アノード構造を改良

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子デバイス/半導体電力変換合同研究会資料,EDD-10-094/

SPC-10-151(2010-11-29)