st. luke’s quality and healthcare report · 8/3/2015 ·...
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わが国における診療ガイドライン黎明期
1.1980年代:臨床疫学と公衆衛生学
2.1990年代:厚生労働省の貢献
3.2000年代:学会とMinds
4.展望
Mar. 8, 2015 1T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 2
聖路加国際病院(1976年~1980年)
Cambridge Hospital(1981年~1984年)
プライマリ・ケア内科学(Primary Care Internal Medicine)
医学教育
公衆衛生学
医療人類学臨床疫学
人文科学EBM
NBM
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 3
Clinical Fellow at Department of Medicine, Cambridge Hospital, 1981-1984
レジデント「Mr. Tのトレッドミルテストが陽性でした。」
-指導医「トレッドミルテストの感度は?」
「80%程度でしょうか。」
-「特異度は?」
「90%でしょうか。」
-「入院時の冠状動脈疾患の予測確率は?」
「50%程度と思っていました。」
-「トレッドミルテストが陽性という結果を踏まえると、
冠状動脈疾患の可能性はどれくらいになる?」
「検査前オッズが1で陽性尤度比が8ですから、検査後オッズが8。したがって、検査後確率は8/(8+1)で、約90%です。」
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臨床現場での疫学の応用と普及
1.質の高い(標準的な)診療を行うために、臨床現場
で疫学(+生物統計学)の基本知識が必要
1)患者を診察する医師にとって
2)医療施設の管理者にとって
2.質の高い臨床研究を行うために、疫学(+生物統
計学)の基本知識が必要
1)臨床研究者にとって
2)研究支援組織として
3.教育機関としての公衆衛生大学院が必要
Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 4
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 5
Canadian Task Force on
the Periodic Health
Examination, 1979initiated and supported by
The Department of National Health
and Welfare, Canada
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 6
カナダ政府厚生省支援の健診評価(Can Med Assoc J 1979;121:1193-1254)
1.疾患の「負担」を2つの側面から評価した
①個人への負担:失われた生存年数、障害期間、痛みや苦痛、
治療に要する費用、家族への負担
②社会への負担:死亡率、罹病率、治療に要する費用
2.健診項目の有効性を示す証拠の強さを分類した
Ⅰ :少なくとも一つのランダム化比較試験
Ⅱ‐1:コホート試験あるいは症例対照試験
Ⅱ‐2 :複数の時点・場所での比較試験
対照のない試験でドラマチックな結果が出た試験(ペニシリンなど)
Ⅲ :臨床経験や記述研究、専門委員会報告などに基づく権威者の意見
3.推奨(勧告)の強さを分類した
A:健診項目として考慮されるべき十分な(good)根拠がある
B:健診項目として考慮されるべきかなりの(fair)根拠がある
C:健診項目とするだけの根拠はないが、他の理由でそうすることもある
D:検診項目から削除するだけのかなりの根拠がある
E:検診項目から削除するだけの十分な根拠がある
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 7
US Preventive Services
Task Forces, 1989
(日本語訳、1993年)
USPSTF(1984年設置)初代委員長
Robert S. Lawrence, MDCambridge Hospital内科部長
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 8
エビデンスの質(レベル)
Ⅰa 複数のランダム化比較試験のメタ分析による
Ⅰb 少なくとも1つのランダム化比較試験による
Ⅱa 少なくとも1つの非ランダム化比較試験による
Ⅱb 少なくとも1つの他の準実験的研究による
Ⅲ コホート研究や症例対照研究、横断研究などの
分析疫学的研究による
Ⅳ 症例報告やケース・シリーズなどの記述研究による
Ⅴ 患者データに基づかない、専門委員会の報告や
権威者の意見による
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 9
US Preventive Services Task Force(米国予防医療特別委員会、1989年)
プライマリ・ケアの場で、“有効である”として推奨されている健診は、
1.喫煙
2.BMI>30の肥満
3.脂質異常症
4.高血圧
その他の項目の多くが、ハイリスク群への実施を勧めるか、エビデンスが不十分で勧めるとも勧めないとも言えない。
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わが国における診療ガイドライン黎明期
1.1980年代:臨床疫学と公衆衛生学
2.1990年代:厚生労働省の貢献
3.2000年代:学会とMinds
4.展望
Mar. 8, 2015 10T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 11
厚生労働省関係の動き、1996-2011年
1996年 医療技術評価の在り方に関する検討会
1998年 医療技術評価推進検討会
1998年 がん検診の有効性評価に関する研究班報告書
2001年 保健医療技術情報普及支援検討会
2003年 日本医療機能評価機構医療情報サービス
事業(Minds)
2004年 癌治療学会診療ガイドライン作成開始
2004年 基本的健康診査の健診項目のエビデンスに基づく
評価に係わる研究
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医療技術評価の在り方に関する検討会報告書 1997年6月27日
<検討会委員>
池上直已 今井正信
岩久正明 岩崎榮
亀田俊忠 川田千恵子
小池昭彦 斎藤憲彬
○竹中浩治 長谷川俊彦
久重哲徳 廣井良典
福井次矢 山崎摩耶
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 13
医療技術評価の在り方に関する検討会報告書 1997年6月27日
1.医療技術評価とは
「個人や集団の健康増進、疾病予防、検査、治療、リハビリテーション及び長期療養の改善のための保険医療技術の普及と利用の意思決定支援を目的として行うものであり、当該医療技術を適用した場合の効果・影響について、とくに健康結果を中止とした医学的な側面、経済的な側面及び社会的な側面から、総合的かつ包括的に評価する活動」
<評価の指標>
・医学的な側面:健康改善に有効かどうか、健康改善に要する期間、健康障害の発生率等
・経済的な側面:費用効果分析、費用効用分析、費用便益分析等の方法
・社会的な側面:社会に及ぼす影響、倫理的側面
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 14
医療技術評価の在り方に関する検討会報告書 1997年6月27日
2.医療技術評価の位置づけとその関連領域
Quality Assurance(QA)、Quality Improvement(QI)
構造(Structure)、過程(Process)、結果(Outcome)の指標化
⇒質の保障と改善
Doing right things right(正しいことを正しく行う)
3.医療技術評価の現状諸外国の状況:米国、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、英国、フランス
4.我が国における医療技術評価の利用医療政策:根拠のある医療政策(Evidence Based Health Policy)
医療現場:診療ガイドラインの作成と利用が必要、Evidence Based Medicine
医療現場での有効性評価・医療の質向上への取り組みが必要
(クリティカルパスの導入)
一般社会における利用:情報提供⇒患者満足、社会全体の合意形成
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 15
医療技術評価の在り方に関する検討会報告書 1997年6月27日
5.医療技術評価の推進に向けて取り組むべきこと
1)医療技術評価の効率的な実施
(1)医療技術評価の動向の把握と評価対象の優先付け
(2)既存の評価の体系的な整理
(3)国際的な動向の把握と協力
国際医療技術評価学会(ISTAHC)
コクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)
2)医療技術評価の基盤としての情報化
医学的、経済的な情報を系統的に収集、蓄積、作成する必要性
電子カルテ・クリティカルパスなどのツール、医療の質の評価方法
3)関係者の理解と協力について
科学的、批判的な視点での客観的評価の推進、医学教育や研修
医療技術の研究や開発の費用の一部を当該技術の評価に
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 16
「医療技術評価推進検討会」報告書1999年3月23日
<検討会委員>
青柳 俊 岩崎榮
垣添忠生 猿田享男
○高久史麿 仲村英一
長谷川俊彦 久重哲徳
廣井良典 福井次矢
宮城征四郎 矢崎義雄
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 17
「医療技術評価推進検討会」報告書 1999年3月23日
2.主な内容(1)EBMの推進
(2)治療ガイドラインの作成・普及①患者の多さ、②疾患の重篤度、③社会的な関心となる問題などを勘案、
デルファイ法で、1位本態性高血圧、2位糖尿病、3位喘息、4位急性心筋
梗塞、5位白内障、6位慢性関節リウマチ、7位脳梗塞、8位腰痛症、9位
胃潰瘍、10位脳出血となった
(3)総合的推進に向けての調整
例:Agency for Health Care Policy and Research(AHCPR、現在のAHRQ)、
National Guideline Clearinghouse(NGC)、National Coordinating Center
for health Technology Assessment
(4)臨床研究の推進並びに国民の理解及び協力日本人患者の転帰等を追いかけた大規模な臨床研究が必要
(5)情報ネットワークの必要性
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 18
厚生労働科学研究費補助金
1.健康科学総合研究事業「最新の科学的知見に基づいた保険事業に係わる調査研究」
基本的健康診査の健診項目のエビデンスに基づく評価に係わる研究
平成16年度~17年度 研究者:福井次矢他
2.医療安全・医療技術評価総合研究事業「EBMに
基づいた健康診査の評価とガイドライン作成に関する研究」
平成18年度~19年度研究者:新保卓郎、福井次矢他
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T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 19
検診25項目のエビデンス(まとめ)
• レベル1 11項目
効果あり 9項目
効果なし 2項目
• レベル3 1項目
• レベル5 1項目
• レベル6 6項目
• エビデンスなし 6項目
Mar. 8, 2015
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T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 20
推奨の決め方
エビデンスのレベル
Good
Fair
Poor
Net Benefit(正味利得)
大 中等度 小 ゼロ/害
A B C D
B B C D
Ins Ins Ins Ins
A: 強く勧められる B: 勧められる C: エビデンスはあるがどちらともいえない D: 勧められない Ins: エビデンスがない
Mar. 8, 2015
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T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 21
推奨についての結果
問診(喫煙) A
問診(飲酒) B
問診(うつ病) B
問診(自殺) Ins
身長・体重(BMI) B
血圧 A
身体診察 Ins
聴力(問診) Ins
聴力検査(一般) D
聴力(高齢者) C
視力検査(一般人) Ins
視力検査(高齢者) B
認知症問診 Ins
検尿(尿蛋白) Ins
検尿(尿糖) Ins
血液一般 Ins
空腹時血糖、HbA1c B
脂質 B
尿酸 Ins
肝機能 Ins
HBV抗原 C
HCV抗原 C
心電図、負荷心電図 Ins
胸部エックス線 Ins
Mar. 8, 2015
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わが国における診療ガイドライン黎明期
1.1980年代:臨床疫学と公衆衛生学
2.1990年代:厚生労働省の貢献
3.2000年代:学会とMinds
4.展望
Mar. 8, 2015 22T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 23
診療ガイドラインの作成:学会とMinds
癌治療学会
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
Mindsの活動開始
現在
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わが国における診療ガイドライン黎明期
1.1980年代:臨床疫学と公衆衛生学
2.1990年代:厚生労働省の貢献
3.2000年代:学会とMinds
4.展望
Mar. 8, 2015 24T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
![Page 25: St. Luke’s Quality and Healthcare Report · 8/3/2015 · 科学的、批判的な視点での客観的評価の推進、医学教育や研修 医療技術の研究や開発の費用の一部を当該技術の評価に](https://reader035.vdocuments.pub/reader035/viewer/2022071118/600c5f119b506747866e37a5/html5/thumbnails/25.jpg)
Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 25
なぜ医師はガイドラインに従わないのか?
1. 知らない
2. 使い慣れていない
3. 納得できない
4. 自己効力感の欠如
5. 結果予期の欠如
6. 惰性を打破する能力
7. 外的障壁:ガイドライン、患者、環境
Cabana MD, et al. Why don’t physicians follow clinical practice guidelines? JAMA 1999;282:1458-1467
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Mar. 8, 2015 T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital 26
診療看護(プロセス)
基礎医学・病態生理
医療者側要因
患者の意向
臨床研究の結果
診療ガイドライン
最良のアウトカム
法律・経済・倫理
実際に行われた診療行為やアウトカムを知る(Quality Indicatorを用いて)PDCA Cycle
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わが国における診療ガイドライン黎明期
1.1980年代:臨床疫学と公衆衛生学
2.1990年代:厚生労働省の貢献
3.2000年代:学会とMinds
4.展望
Mar. 8, 2015 27T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital