surgeries on stable maps between low dimensional manifolds · stable mappings and their...
TRANSCRIPT
Surgeries on stable maps
between low dimensional
manifolds
Naoki Kitazawa
Tokyo Institute of Technology
December 20, 2010
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今日の内容
• モース理論とその一般化
• 写像のsurgery~写像を構成してみよう
• 写像の同値類による分類~surgeryから定義される同値類
• 今後の応用
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モース理論とその一般化
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モース理論
• 多様体の上の良い関数を用いて多様体を調べる。→ 多様体に上手く高さを定めて高さで多様体の形状などを知る。→ 特異点が重要(高さの変化の仕方が変わる。)
• 多様体のトポロジーの発展に貢献してきたし今もトポロジーの様々な分野で重要。
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モース理論のアイデアとその一般化モース理論では多様体上の関数を用いる。→ つまり終域がRであるような写像では終域を一般のユークリッド空間や多様体(但し次元は定義域より小さく)にしてみるとどうなるか→ 多様体という物体を射影すると影(像)が出来る→輪郭が特異点。→ 射影したものからどれだけ多様体がわかるのか?
→最近盛んに行われている研究(M.Golubitsky V.Guillemin,
Stable Mappings and Their Singularities, Grad-
uate Texts in Mathematics(14), Springer-Verlag(1974)
やO.Saeki, Topology of Singular Fibers of
Differentiable Maps, Lecture Notes in Math-
ematics(1854), Springer (2004) に基礎的な内容。)
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Notationm, n; 正の整数でm > n.
M, Mi (i ∈ N); 連結閉C∞ m次元多様体N, Ni (i ∈ N); 境界なしC∞ n次元多様体f : M → N , fi : Mi → Ni; C∞写像S(f); fの特異点集合全体の集合C∞(M, N); MからNへのC∞写像全体のなす空間(位相はC∞ Whitney位相).
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安定写像前に述べた一般化では安定写像という写像が鍵。
• ジェネリックなモース関数を一般化したものとなっており,特異点的に良い性質を持つ。
• 実は良い次元対含低次元では稠密に存在する。
とりあえずこの「安定写像」を調べることは重要。
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安定写像の定義Definition 1 f ∈ C∞(M, N)についてある開近傍Ufがあってその開近傍の各元がfとC∞同値であるときfはC∞安定であるという。
⇒ C∞同値とは大域的にみて特異点や特異値の配置が変わらないことをいう。⇒ 少し変形しても特異点や特異値の型や配置が変わらないものをC∞安定であるという。本講演ではC∞安定写像を単に安定写像と呼ぶことにする。
Remark 1 安定写像の特異点 ⇒ 折り目(最も簡単⇒モース関数の特異点の一般化), カスプ(次に簡単), スワローテイル(3番目に簡単)折り目特異点 ⇒ 最も簡単なのが定値折り目(モース関数で最大最小をとる場所での特異点)
定値折り目特異点のみ持つ写像をspecial generic写像と呼ぶ。用語は詳しくはM.Golubitsky V.Guillemin, Stable Mappingsand Their Singularities, Graduate Texts inMathematics(14), Springer-Verlag(1974)などを参照のこと。
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安定写像は沢山あるが簡単なものを除くと具体的に作るのが難しい…より詳しくは特異点や特異値の像がはっきりしているものを作るのが難しい。⇒ 如何なる数学においてもそうだが…具体例は大事(⇒ 具体例があったからこそ証明された定理もある。⇒ 「佐伯修, 特異点と特性類 — 具体例の果たす重要な役割,日本数学会 2007 年度秋季総合分科会企画特別講演,東北大学,2007.9.21」等を参照のこと。)。そこで⇒ 今回の発表のkeywords,surgeriesの出番。
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写像のsurgery~写像を構成してみよう~
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Surgeryより一般的な定義はN.Kitazawa, Surgeries on maps,
in preparation等にあるが,今回は以下の十分特殊なものを扱う。
Definition 2 QをNのコンパクトなn次元C∞閉部分多様体でfの正則値集合に含まれるものとする。
P := f−1(Q)はMのm次元C∞閉部分多様体になり,MはM − IntPとPを id∂Pで,NはN − IntQ
とQを id∂Qで接合したものと見なせる。今Φ ∈ Diff(∂P )とφ ∈ Diff(∂Q)が,各連結成分
を同じ連結成分にうつし,
∂PΦ−→ ∂P
↓f1 ↓f2
∂Qφ−→ ∂Q
を満たすときf |M−IntP∪
Φ,φ f |P : M−IntP∪
Φ P →N − IntQ
∪φ Qが定義できる。これをfの(Φ, φ)に
よるsurgeryと呼ぶ。
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正則な部分を変えるだけでも多くの写像や定義域の多様体が出来ることが多い(勿論出来ないこともある。)。 ⇒ 前述の論文で簡単な写像や簡単な多様体上の特殊な写像に制限し少しばかり調べた。
本講演では正則値の逆像がもっとも簡単 (S1の非交和)な余次元−1であり次元対が((2,1), つまりこれは曲面上のMorse理論), (3,2), (4,3)の場合を中心に扱う。暫くP ;正則値内の連結なコンパクトn次元C∞閉部分多様体
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Pが簡単な場合P := DnまたはP := S1 × Dn−1のときは前述の私の論文にある。
P := S1 × D2 (n = 3)だと⇒ 終域が連結で向き付け可能な閉多様体のとき終域ではDehn surgeryを行うことになる。⇒ たくさん作れそう!
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P ∼= S1 × D2で(m, n) = (4,3)の場合
Theorem 1 (K) ν ∈ Ω4とする。次を満たす,連結な向き付け可能閉4次元C∞多様
体から連結かつ向き付け可能な閉3次元C∞多様体への安定写像の族fλ : Mλ → Nλλ∈Λがある。
1. λ0がありMλ0∈ νとなるようにできる(Mλ0
は適当に向き付けそして属するoriented cobor-
dismを考える。)。
2. Nλは全ての連結な3次元C∞閉多様体(diffeo
typeで考える。)で,Nλ16= Nλ2
(λ1 6= λ2)である。
3. λ1 6= λ2ならばfλ1とfλ2
は同値ではない。
4. 二つの写像fλ1とfλ2
についてある連結かつ向き付け可能閉3次元C∞多様体Nλ1,λ2
とC∞埋め14
込みei : Nλi→ Nλ1,λ2
(i = 1,2)がありe1fλ1
とe2 fλ2は(定義域の多様体に適当に向きを入
れることで)oriented bordantとなる。
⇒ 数少ない例だけでsurgeryで沢山の安定写像を作れる!
写像の同値類による分類~surgeryから自然に出
てくる同値類
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写像の分類写像の特異点論では特異点という観点からみて同じと考えてよい写像を同じと見なして分類することが重要。
Example 1 C∞同値
さて,今回定義したsurgeryからも自然に同値類が作れる。
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surgeryからすぐ定義できる同値類Definition 3 安定写像f1とf2がS同値。⇔ f1 (f2)(と同値な安定写像)がf2(f1)にsurgery
を行うことで得られる。
次で少し弱い同値類を定義する。R(K),R(Ki)で閉正則近傍が定義できかつ一意に存在するようなコンパクト集合K ∈ N , Ki ∈ Ni の(十分小さな)閉正則近傍とする ⇒ 本講演で扱う安定写像の特異値集合も一例。
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より弱い同値類
Definition 4 安定写像f1とf2がL同値。⇔以下が成り立つ。
1. f1 |S(f1): S(f1) → IntR(f1(S(f1)))とf2 |S(f2)
:
S(f2) → IntR(f2(S(f2)))はC∞同値。
2. Ni−R(fi(S(fi)))はいくつかの境界(∂R(fi(S(fi))))
が空でない連結なn次元C∞閉部分多様体の非交和となる。さて前の条件のφを∂R(f1(S(f1)))から∂R(f2(S(f2)))
へ制限できるが,前者の連結成分の集合をC11 , · · · , Cp
1,後者の連結成分の集合をC1
2 , · · · , Cp2とφ(Cl
1) =
Cl2を満たすようにラベル付けできる。今任意の前のn次元多様体の連結成分につい
て次が成り立つ。
Aを任意の1, · · · , pの部分集合とする。
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N1 − R(f1(S(f1)))の連結成分でA = k | Ck
1 ∈ C1なるC1 ⊂ C11 , · · · , Cp
1の元の非交和を境界とするものがある。
⇔N2 − R(f2(S(f2)))の連結成分で
A = k | Ck2 ∈ C2なるC2 ⊂ C1
2 , · · · , Cp2
の元の非交和を境界とするものがある。
ここで挙げた2つの連結成分はφに関し対応しているという。
⇒ 特異点,特異値の近くそして正則値集合の連結成分の(特異値との)位置関係が同じ。
Corollary 1 S同値 ⇒ L同値
同値類について調べようここで分けた同値類について以下のような問題が考えられる。
1. 二つの写像が同値か(非常に基本的な問題)
2. 多様体上に,与えられた同値類に属する写像があるか?
以下でこれらの問題に対する部分的な解答(となっているかは微妙であるが…)を,個々にではないが与えたい。
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(m, n) = (3,2)の場合…特異点についてTheorem 2 (m, n) = (3,2)とする。
1. f : M → Nが安定。 ⇒ 特異点は折り目またはカスプ。
2. 安定な折り目写像f : M → Nが存在する。
詳しくはH.I.Levine, Elimination of cusps, Topol-
ogy 3, suppl. 2 (1965), 263-296.を参照のこと
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(m, n) = (3,2)の場合…写像のクラスDefinition 5 f : M → Nは安定とする。もし次を満たすときfはparalellで有るという。
N(f(S(f)))をf(S(f))の十分小さな正則近傍とする。このときN − N(f(S(f)))は, 連結なコンパクト曲面の非交和で,それぞれの成分Sで, f−1(S)はS上のtkS1束となるが, このf−1(S)がk個のS上
のS1束の非交和になっている。
Theorem 3 (K) f1 : M1 → N1とf2 : M2 →N2がparalellでf1 ∼l f2とする。もし(選んだ閉正則近傍の境界の微分同相に)関し対応する連結成分のオイラー数が等しいならばf1 ∼s f2。
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(m, n) = (4,3)の場合…特異点についてTheorem 4 (m, n) = (4,3)とする。
1. f : M → Nが安定。 ⇒ fの特異点は折り目,カスプ,またはスワローテイル。
2. もしMが向き付け可能ならば,スワローテイルのない安定写像f : M → Nが存在する。
詳しくはO.Saeki, Topology of Singular Fibers
of Differentiable Maps, Lecture Notes in Math-
ematics(1854), Springer(2004)やY.Ando, On
the elimination of Morin singularities, J. Math.
soc. Japan 37(1985), 471-487.等を参照のこと。
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(m, n) = (4,3)の場合わかったことDefinition 6 f : M → Nが安定とする。S(f)の任意の連結成分の自己交叉数が0のとき(向きによらない), fの特異点集合は自明な位置にあるという。
Theorem 5 (K) (m, n) = (4,3)でM1,M2,N1,N2
が向き付け可能とする。二つの安定写像f1 : M1 → N1,f2 : M2 → N2が
次を満たすとする。
1. f1とf2がspecial generic。
2. S(f1)とS(f2)が同じ個数のS2の連結和からなる。
3. f1とf2の特異点集合は自明な位置にある.
このときf1 ∼l f2かつf1 ∼s f2.
逆にf1が安定なspecial generic写像で特異点集合は自明な位置にあるとする。そしてf2がf1とL(S)
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同値とする。このときf2も安定なspecial generic写像で特異点集合は自明な位置にある。
Example 2 特異点集合がS2なるspecial generic
写像はすべて l同値かつs同値
⇒ 定理の同値類は最も簡単なタイプ。
定理の証明の概略像の有る部分は境界がS2の非交和なるコンパクト3
次元多様体。⇒ Dehn surgeryを考えるとsurgeryで移りあうことが分かる。⇒「自明な特異点集合」ということからS2の部分を埋めてD3へと伸ばせる。⇒ Heegaard splittingを考える。ハンドル体上の向き付け可能なS1束は自明なもののみ。
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今後の展望~多様体のグループ分けへ~
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今後の問題…多様体のグループ分け現在興味を持っている問題のひとつに,多様体特に低次元に属する3,4次元の閉多様体のグループへの分類がある。
Example 3 (3次元多様体のグループ分け) グラフ多様体…向き付け可能な3次元多様体の一種。以前から分かっていたことグラフ多様体で基本群が自明 ⇒ S3と同相つまり
基本群が自明なものが常にグラフ多様体であることが分かればPoincare conjectureは正しいことに
なる。
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グループ分けの有効性前の例 ⇒ グラフ多様体,双曲多様体(グラフ多様体でないものの例)。⇒ Poincare conjectureは正しいことが分かったが,グラフ多様体でない,例えば双曲構造を持つものが見つかれば成立しなかった。
4次元 ⇒ 微分Poincare予想含むdiffeo typeの情報に関する問題⇒ ここにグループ分けを上手く利用できないか?
実は⇒ 安定写像の特異点という観点から多様体をいくつかのグループに分けられる。
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安定写像の特異点と3,4次元多様体のグループ安定写像は低次元対では稠密に存在する。特異点の型⇒ foldのみ((3,2)), foldまたはcusp((4,3)
で向き付け可能なとき)
⇒ 多様体の分類へ。3次元の場合は折り目写像のみ考えればよい。⇒ あとで触れる。
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4次元の場合((4,3)対)4次元の場合のみ述べる。
Theorem 6 (Saeki,Sakuma) (m, n) = (4,3),
Mが向き付け可能とする。
1. π1(M) ∼= 0とする。全ての向き付け可能3次元C∞多様体Nに対し,
安定な special generic写像f : M → Nがある。⇔MはS4 または S2 × S2の連結和または有限個のS2 × S2と非自明なS2上のS2束の連結和に微分同相。
2. 全ての向き付け可能3次元C∞多様体Nに対する安定写像は必ずカスプを持つ。⇔Mの交叉形式は±(1)または± 2 × 2単位行列(向き付ける).
写像の特異点のタイプ (現れるか消せるか)で多様体を分類できる。
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(⇒詳しくはO.Saeki, Topology of special generic
maps of manifolds into Euclidean spaces, Topol-
ogy Appl.49(1993), 265-293, O.Saeki, Fold
maps on 4-manifolds, Comment. Math. Helv.
78 (2003), 627-647やK.Sakuma, On the Topol-
ogy of Simple Fold Maps, Tokyo J. Math.
Vol.17, No.1(1994) 21-31.
を参照のこと。)
Example 4 同相であるが一方にはspecial generic
mapを作れるがもう一方には作れない(折り目写像は作れる)という例が知られている。
詳しくは「福田拓生・泉屋周一・石川剛郎編, 特異点の数理1 幾何学と特異点”, 共立出版(2001)」などを参照のこと。
より細かな分類⇒ より細かく分けるには。
Theorem 7 (Saeki 1996) (m, n) = (3,2)で定義域が向き付け可能の場合安定な折り目写像はいつもあるが,逆像の各連結和に特異点が高々1点しかないものの存在の必要十分条件は定義域の多様体がグラフ多様体であることと同値。
詳しくはO.Saeki, Simple stable maps of 3-
manifolds into surfaces, Topology 35 (1996),
671-698を参照のこと。⇒ 特異点のみならず逆像とくに特異値(射影したものの影の輪郭部分)の逆像(verticalな部分)の情報まで込めることでそれなりに分類できることを示唆。(⇒「逆像とくに特異値の逆像と定義域多様体の関係」も当然今後の課題の一つ。)
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導入した同値類を使う
導入した同値類は特異点さらには(特異値の)逆像に注目したときよりかなり細かく分類できるとされる。⇒ 同値類をうまくグループ分けして,あるグループの同値類に属する写像があるかないかで分ける。
Example 5 1. 殆どの4次元の向き付け可能C∞
閉多様体上には3次元C∞多様体 (境界なし)への折り目写像が作れる。⇒ 安定な折り目写像を同値類で分けて…。
2. (安定な)special generic写像を許容する多様体は限られている。special genericなものを同値類で細かく分けると…。⇒ 前の定理はもっとも簡単なクラス。
⇒ いずれにしてもまずはもう少し同値類を調べることが大事。
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御清聴ありがとうございました!
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