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1 1 平成27年1月1日(毎月1日発行)第34巻1号(通巻378号) Contents 2015 ・H!NT 新価値創造展2014 ・ネットで受講できる、双方向での本格的な大学講義 (日本オープンオンライン教育推進協議会) ・フリーWi-Fiの面的整備で外国人観光客の利便性を向上 (広島市) ・ICTを活用し、時計修理の生産性を向上 (共栄産業株式会社) ・iタウンページを活用し、新規の顧客開拓策を強化 (中央鍼マッサージ治療室) ・お客さまに寄り添い、想いをうけとめる応対 (B-コミュニケーション株式会社) ・丁寧な応対を心がけ、お客さまの気持ちを少しでも癒やしたい (トランスコスモス株式会社) ・正確な情報をしっかり伝えることで、自社の信頼につなげる (日本ケミファ株式会社) ・メディエーションで活用されるIPI分析 ~構造を分析し、対応する~ ・気をつけたい三つの省エネ話法 ■ICT利活用推進 新春のご挨拶 ■電話応対教育(CS向上) System& Application browser

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平成27年

1月1日(

毎月1日発行)第34巻

1号(通巻378号

Contents

2015

・H!NT 新価値創造展2014・ネットで受講できる、双方向での本格的な大学講義 (日本オープンオンライン教育推進協議会)・フリーWi-Fiの面的整備で外国人観光客の利便性を向上(広島市)・ICTを活用し、時計修理の生産性を向上(共栄産業株式会社)・iタウンページを活用し、新規の顧客開拓策を強化(中央鍼マッサージ治療室)

・お客さまに寄り添い、想いをうけとめる応対(B-コミュニケーション株式会社)・丁寧な応対を心がけ、お客さまの気持ちを少しでも癒やしたい (トランスコスモス株式会社)・正確な情報をしっかり伝えることで、自社の信頼につなげる (日本ケミファ株式会社)・メディエーションで活用されるIPI分析 ~構造を分析し、対応する~・気をつけたい三つの省エネ話法

■ICT利活用推進

新春のご挨拶

■電話応対教育(CS向上)

System&Application

browser

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価」との比較、粗利算出が可能で、製造コストの見える化に大きく貢献します。また導入先それぞれの状況にあわせたカスタマイズにも対応。導入費用が比較的低廉なこともあり、現在全国で約345の中小食品加工会社での導入実績があります。

 データやアプリなどを社内に設置したサーバで一括管理する「クライアント仮想化」は、情報漏洩などのセキュリティリスクに対して、対策を講じることにより、あらゆる場所でのPC利用を可能とし、業務効率化を実現します。またBCP(事業継続プラン)対策を考える上でも大きなメリットがあることから、採り入れる大企業が増えています。こうしたクライアント仮想化がもたらすメリットを中小企業にも拡大するソリューションが、NOKIOOの「nokiooサーバnano」です。仮想化技術には、幅広い実績のある「CITRIX」の製品群を採用。専用のサーバルームが不要なコンパクトなサーバに仮想化環境をプリインストールして提供することにより、PC10台規模での仮想化環境が初期費用50万円から、

2015.1 ホームページにも掲載しています。[ ユーザ協会 イベントレポート ]で検索! 22015.11

 「新価値創造展」は、中小企業やベンチャー企業が抱える課題の解決を支援する「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」が、新市場や新産業の創出に向けた異分野合流や新商品開発などを“新価値創造”として重視し、そうした取り組みを進める中小企業の「出会いの場」として開催するものです。 会場となった東京ビッグサイト・東展示棟には、全国、そして海外から、500を超える企業や団体が、アイデア、ソリューション、商品を出展。会場内の各ブースでは、出展内容が自社の発展につながるかどうかを見極めようとする来場者が、説明員と熱心に話し込んでいました。 またメインステージでは「新価値」「ものづくり」についての講演も多数開催され、多くの聴講者で賑わいました。

 食品加工業の販売管理システムには、通常の販売・購買・在庫管理の他に「トレーサビリティ」「賞味期限管理」など、食の安心・安全に関わる管理が求められます。プラネックスの「豪商」は、在庫管理や取引事務といった一般の販売管理システムの機能にそれら食品加工業向け機能をプラスし、受・発注、購買、販売、債権、会計ソフトとの連動、在庫、製造の管理まで、ワンパッケージでカバーするソリューションです。とくに利益に直結する原価管理業務においては、レシピに基づいた「標準製造原価」と、歩留まりも反映した「実際製造原

という低コストを実現しています。

 「カンタンマップ for iPad」は、iPadの標準地図に、業務に必要なさまざまな詳細地図を重ね合わせ、付加情報を書き込んで保存、活用するソリューションです。書き込む情報は、設定ファイルを編集して選択肢を設けるなど、自在にカスタマイズ可能。iPadのカメラで撮影した画像を地点情報に紐付け、その画像に手書きでメモを記すこともできます。こうして取得した情報は、社内データベースへの書き込み/書き戻しにも対応しているため、これまでの「紙の地図、ノートPC、デジタルカメラを持ち出して現地調査し、帰社後にまとめる」といったフローを過去のものとしました。現在、土木建設、インフラ管理、不動産など、地図情報を利用するあらゆる業種での利用が広がっているとのことです。

ICTイベントレポート

豪商株式会社プラネックス

nokiooサーバnano株式会社NOKIOO

カンタンマップ for iPadあっとクリエーション株式会社

★記事は2014年12月現在の取材や情報に基づいて制作しています。各社の商品及び価格、サービスについてのお問い合わせは、各社のホームページ・担当窓口より直接お問い合わせください。

ホームページ:http://www.goushou.com/

ホームページ:http://nano.nokioo.jp/index.html

ホームページ:http://www.at-creation.co.jp/system/iPad.html

公益財団法人 日本電信電話ユーザ協会会長

山本 惠朗

平成27年

新春のご挨拶 新年あけましておめでとうございます。 旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。おかげさまで、ビジネス・コミュニケーション能力の向上を目指す様々な取り組みや、ご利用者にとって有用な情報通信サービスに関わる情報など、多くの皆様にご活用いただき、順調に事業を展開することができました。 皆様に心から感謝を申し上げます。

 さて、ビジネスの社会においても、ICTの普及・浸透により、コミュニケーションの姿は大きく変わり、メールや映像等を利用するケースが増えて、好感を得られる電話応対の重要性は益々高まってきています。 当協会が電話応対教育事業の一つとして平成21年に開始した「電話応対技能検定」の受験者数は、延べ1万6千名を超え、さらに昨年1月に入門レベルとして新設した「4級資格試験」も、事業開始当初より多くの方に受験いただき、電話応対に対する関心を一層深めることができました。 昨年11月に石川県金沢市で開催した「第53回電話応対コンクール」には、全国から延べ1万3千名を超える方に参加をいただき、「第18回企業電話応対コンテスト」においても全国427の事業所からのお申し込みがあり、当協会が推し進める電話応対教育事業の裾野の広がりを日々実感しております。

 また、当協会事業活動のもう一方の柱であるICT利活用推進に関しては、スマートフォン、タブレットの急激な普及によるデバイスの進化やソーシャルサービスの定着・ネットワーク環境の統合化(クラウド・ワイヤレス)により、いつでもどこでも必要な情報にアクセス出来る環境が実現され始め、益々人々の身近なものとなりました。このような中、企業活動においてはその利用や活用において、ICTリテラシー(利用能力)やモラルの普及など重要性を深く意識する年でもありました。

 本年も、情報通信技術・サービスを利用したコミュニケーション文化の振興を図るとともに、情報通信技術・サービスの利用者の利便増進に寄与し、地域社会の発展に貢献できるよう努めて参る所存でございますので、引き続きご賛同とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。  皆様のご健勝とご発展をお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。

11月19日(水)~21日(金)の3日間、東京ビッグサイトで、「H!NT 新価値創造展2014」が開催されました。「ウェルネス社会」「グリーンコミュニティ」「スマートファクトリー」という3つのカテゴリに分けられた出展内容から、中小企業の課題解決に役立つものをセレクトし、レポートします。

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42015.1 2015.13 ホームページにも掲載しています。[ ユーザ協会 お勧めICTソリューション ]で検索! ホームページにも掲載しています。[ ユーザ協会 お勧めICTソリューション ]で検索!

 「ICTを本格的に活用したオンライン教育への取り組みは、2001年にアメリカ・マサチューセッツ工科大学が発表し、2003年に本格始動した『オープンコースウェア』からはじまったと言えるでしょう」(事務局長・福原 美三氏)

 このオープンコースウェアは、大学の講義をインターネットで公開し、誰でも受講できるという試みでした。 「日本でも、2005年から主要6大学がこの取り組みに参加しました。これにより、オープンエデュケーション、つまりネット接続環境さえあれば無償で講義が受けられるという考え方が大きく進みました。また学習者同士のコミュニケーションができる環境作りも行われてきました。こうした流れを受け、2012年に登場し、いま世界で大きなブームとなっているのが、私たちが推進する『MOOC(大規模公開オンライン講座)』なのです」(福原氏)

誰もが無償で学べる教育システム

 MOOCは、インターネット上で誰もが効率よく学習できるよう考えられた無償の教育システムのことです。MOOCは2012年、スタンフォード大学の教授らによって設立された教育技術の営利団体「Coursera(コーセラ)」が、複数大学のさまざまなコースで実施されている講義を無償で配信したことで、その名を広く知られるようになりました。 「2012年にコーセラがはじまると、大勢の受講者が参加しました。そもそも海外では、いったん社会に出て働きはじめて『自分に足りない知識』に気づいた人が、もう一度大学に入り直して学び直す風土があります。MOOCはそのような風土にマッチし、働きながらもう一度高等教育の場に身を置くことを可能としたのです。また家庭の事情などで勉学を途中であきらめ、肉体労働やパートタイマーで生活を維持している人でも、MOOCに参加し、課題をクリアして修了証をもらうことで、かなわなかった夢に手が届くようになります。このように『学習したい』という意志を持つさまざまな人々の支持を受けたことで、コーセラは人気を集めたのです」(福原氏)

これまでのビデオ講座とMOOCの違い

 MOOCの特徴は、講座ごとに作られた短時間の動画と学習確認の小テスト、そして決められた課題の提出による評価という流れにあります。動画は1本あたり5~10分で、「一話完結」です。 「つまり就寝前のちょっとした時間、電車での移動中など、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこでも学習の場とできるのです。また学習者がお互いにわからないことを質問し、ディスカッションするための掲示板も設けられています。こうして小テストを含む4週間のカリキュラムを済ませたあと、総合課題の提出となります。ここで十分な理解度があると認められれば、修了証の発行となるのです。大学レベルの講義ですから、その内容はかなり高く、修了証をもらうにはしっかり勉強しなければなりません。ここが、これまでの『見るだけ』のビデオ講座などとの大きな違いです」(福原氏) そしてMOOCのもうひとつの特徴は、原則として、受講料が不要であること。つまり学習の意欲さえあれば、誰でも高等教育を受けることができ、修了証により、その理解度が証明されるのです。

日本語をベースとするJMOOC こうした特徴を持つコーセラが成功したことで、MOOCプラットフォームは、翌2013年には欧州、そして中国にも広がります。 「もちろん、こうした海外のMOOCを日本にいて受講することも可能です。しかし、たとえば私たちにいちばん身近な外国語である英語を使ったMOOCでも、大学レベルの講義となると、日常会話は何不自由なくできる語学力を持つ人でも内容をしっかり理解し議論に参加するのは困難です。私たち日本人が、こうした流れに乗り、諸外国に遅れることのない教育レベルを維持するには、日本語をベースとする日本生まれのMOOCが不可欠です。そこで私たちは2013年に『一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)』を立ち上げ、2014年4月の3講座開設を皮切りに、日本語によるMOOCプラットフォームの運営をスタートしたのです」(福原氏)

会員登録するだけで誰でも受講可能

 現在、MOOCの日本版プラットフォームであるJMOOCはどうなっているのでしょうか? 「JMOOCには現在、特別会員としてNTTドコモなど8社が参画しています。正会員として加盟しているのは、大学や大学院33校、企業36社

などです。2014年4月の3講座の開講後、20以上の講座が開かれ、多くの受講者が学んでいます。また一部の講座では『反転学習』として、受講者が集まり、講師に直接対話して知識や理解を深める内容も含んでいます。講座の内容は、『経営(マネジメント)入門』『統計学Ⅰ』といったビジネスにかかわりの深いものから、『俳句』『マンガ・アニメ・ゲーム論』など主に教養を身につけるものまで、さまざまです」(福原氏) こうした各種講座は、JMOOCのホームページ上で会員登録し、受講受付期間に応募すれば、誰でも受講できます。 「受講者の多くは、ご自分の現状に満足せず、積極的に新しい知識を吸収したいという方々のようです。現在、登録者は9万人超で、2/3がPCから、残りの1/3がスマホやタブレットからのアクセスです。ただ、先ほど申し上げたように、修了証を手にするには自分自身でしっかり学習する必要があります。そのため、総合課題にも合格して修了証をもらえる人の比率は約10~25%と高くはありません。ただこの中には『1週目を受けてみたけど、自分の期待している内容と違っていた』と考え、受講を中止した人も含まれているはずですから、実質的な修了率はこの数字よりも大きいと思っています」(福原氏)

統一基準による認定のため、就職や転職においても有利

 さらに福原氏は、JMOOCの国境を越えた展開についても思いを馳せます。 「いま、JMOOCをアジア各国の言葉に翻訳する動きも出てきています。翻訳したJMOOCを使い現地で優秀な人材を育て、その人材を日本の大学や企業に招き、さらに教育するという流れは、優秀な人材の確保を可能とし、アジアに進出する日本の企業の大きな助けにもなるはずです。またアジアでのMOOCの展開は、各国の教育レベルの底上げにも寄与します。これまで日本はODA(オフィシャルデベロップメントアシスタンス:政府開発援助)という経済的な援助により各国の成長を手助けしてきましたが、今後はアジアのリーダーとして、“教育”という目に見えないものにも力を注ぐことで、ともに成長していくことができると思います」(福原氏) 福原氏によると、先行する欧米では、MOOCの講座数は数百に上っているということです。スタートしたばかりのJMOOCが、そのレベルに追いつくにはまだ時間がかかるはずです。しかし日本においても近い将来、誰でも得たい知識をどこにいても得られる、そんな時代が到来することになるでしょう。その日が待ち遠しいですね。

教育の分野においても、これまでさまざまなソリューションを用い、ICTを活用しようという動きがありました。ただ、その多くは単なる「ビデオ講座」の域を出ず、大きな広がりを見せることはありませんでした。その原因は、講義が一方通行であったこと、受講にお金がかかったことなど、さまざまな要因が考えられます。しかし現在、そうしたこれまでのソリューションの弱点を克服し、ICTの支援により、大学レベルの高等教育を「誰でも、無料で、場所を選ばず」受けられる環境づくりがはじまっていることをご存じでしょうか。

日本オープンオンライン教育推進協議会

お勧めICTソリューション

ネットで受講できる、双方向での本格的な大学講義

▲事務局長・福原 美三氏

▲JMOOCパンフレット ▲JMOOC登録学習者数

▲JMOOC(gacco)の開講講座例 gaccoとは大学教授陣による本格的な講義を、 誰でも無料で受けられるウェブサービス 左:東京大学 本郷先生 「日本中世の自由と平等」 中:慶應義塾大学 村井先生 「インターネット」 右:早稲田大学 栗崎先生 「国際安全保障論」

▲反転学習コースの模様

▲JMOOCのロゴ

10,000

(人)

20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000

4月3月 7月6月5月 9月8月 10月 11月2014年2月

91,000人

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 この同社のシステムは、業務効率化が大きく評価され、2013年の「経済産業省IT経営実践認定企業」に認定されています。 「ワークフローをそのままICTに置き換えたのではなく、コンサルタントのアドバイスにより業務の流れを見直した上でICTを導入したことが、この受賞につながったのではないかと考えています」(小林氏)

 そしていま、同社はさらなる業務改革に踏み切っています。 「段階的な修理作業の分業制を採り入れ、さらに効率化を図っています。また『修理不完全』による再修理を減らすため、検品チームがしっかり動作確認するとともに、再修理となった事例を共有することで、修理工程の精度アップにも取り組んでいます」(秋田氏) 同社には、時計職人を目指す若い人材が着 と々集まっているといいます。今後も同社のさらなるICT活用に、注目したいと思います。

2015.15 ホームページにも掲載しています。[ユーザ協会 ICT導入事例 ]で検索! 62015.1ホームページ(会員ページ)には更に詳しい情報を掲載しています。[ ユーザ協会 ICT導入事例 ]で検索!

▲代表取締役社長・小林 正博氏

会社概要共栄産業株式会社1968年(昭和43年)8月東京都豊島区巣鴨1-11-1巣鴨ダイヤビル小林 正博150名時計の輸入、販売、修理http://www.kyoeico.com/

会社名設立本社

代表取締役社長従業員数事業内容URL

 一見、“アナログ的”に思われがちな「時計修理」の世界でも、ICTによる業務改革を進めている会社があります。東京で、超高級時計の修理も手がける共栄産業株式会社に、ICT導入の成果をうかがいました。 「弊社は1968年に創業し、当初は輸入腕時計への時計用バッテリー販売を主な業務としていました。時計修理が本業となったのは、大手時計メーカーで“マイスター”と呼ばれた人物を取締役として迎えてからです。彼が時計修理の世界で非常に著名であったため、師事したい、ぜひ彼の下で働きたいという時計職人が弊社の門を叩くようになり、この分野の事業が大きく拡大したのです」(代表取締役社長・小林 正博氏)

 しかし時計修理業の船出は順調なものではありませんでした。 「知名度が上がり、高級時計の修理依頼が多く寄せられるようになりましたが、修理部門は人件費がかさみ、月200~400万円の赤字が続いていました。その主な理由は、不十分な業務管理によるものでした」(小林氏) 「修理待ちの時計はラックに積まれ、そこから職人が選ぶというスタイルで、修理のペースも職人によりまちまちでした。また管理にはデータベース管理ソフトを使っていましたが、修理業務全般の状況も、個 の々依頼品の状況も、把握が困難でした」(取締役 部長・秋田 秀仁氏)

 小林氏、秋田氏はこうした事態の改善の解決を図るべく、外部のコンサルタントを招聘し、業務改革を進めました。

 「自動車メーカーでの生産業務改革の経験もあるコンサルタントをお招きしました。そこから2年間かけての『改善』が始まったのです」(秋田氏) コンサルタントの指摘は、修理待ち製品の整理や納期ごとのラベルによる色分け、さらに各種工具類の位置を固定化し、修理品が一定数たまってから次の工程の作業スペースに移動させることで、職人の手間を省力化することなど、多岐にわたりました。 「同時に私たちの意識改革も求められました。いままでは修理待ちの在庫が『しばらく仕事がある』という安心感につながっていました。しかし実際に売り上げとなるのは、修理が完了し、納品してからです。そのため、コンサルタントから、在庫の数よりも、修理の数を重視する姿勢を求められました。こうしたコンサルタントの意見により、現場の業務と経営の意識改革が同時に得られたことは、大きな成果でした」(秋田氏)

 ICTを活用した工程管理の導入も、このワークフロー見直しを受け、進められることになりました。 「入庫した修理品にバーコードを貼り、それを各工程でチェックする仕組みを作り、社内外のPCで確認できるようにすることで、修理工程を“見える化”しました」(秋田氏) 「データ化することで、それまで職人ごとにバラバラだった修理時間の均質化が可能となり、月間の修理対応台数は大きく飛躍しました。また修理を取り次ぐデパートなどからも、PCを使い納期が確認できるようになったことで、顧客満足度の向上にもつながりました」(秋田氏)

ICTを活用し、時計修理の生産性を向上

ICT導入事例 Part33

共栄産業株式会社

▲時計修理部

▲ICT活用で修理工程の精度 アップに貢献

▲生産業務改革で改善 された道具

●導入の狙い:時計修理部門の人件費による赤字改善●導入の効果:ICTによる工程管理で無駄をなくし、売上増を実現

▲時計職人のみなさん ▲パーツ管理棚

不十分な業務管理が原因で赤字部門に

外部コンサルタントを招聘し、業務改革を推進

ICTによる工程管理を導入し、業務をさらに効率化

分業制を採り入れ、さらなる効率化を目指す

▲取締役 部長・秋田 秀仁氏

日本グループが提供する店舗向けのWi-Fiサービスを活用した「Hiroshima Free Wi-Fi Lite」を創設し、民間施設にフリーWi-Fi環境を整備するなど、官民連携でフリーWi-Fiのエリアを拡大しています。

フリーWi-Fiを購買活動へつなげ、地域活性化の原動力に

 実証実験により、観光客の動線やサービスの利用状況などを蓄積させ、多くの観光客に長く滞在してもらうための方法を明確にしていくことが当面の課題になります。出原氏はこう語ります。 「観光客の長期滞在は、食事や宿泊、さらには買物といった購買活動の増加にもつながります。つまり、地域活性化の原動力となるのです。また、地域の活性化を持続させるには、実証実験という短期的な協働にとどまらず、終了後も、行政の掲げるビジョンの下、引き続きその実現に向けてパートナーであり続ける民間企業との連携が欠かせないと思っています」 東京五輪を見据え、多くの外国人観光客などを「おもてなし」するための各種施策。自治体だけではなく、民間とのパートナーシップによって持続的な地域の発展をめざす広島市の取り組みは、他の自治体にとっても、非常に示唆に富んだ施策だといえるのではないでしょうか。

難しいからです。しかし、そんな状況を打破する追い風が 吹きました。        1「HiroshimaFree Wi-Fiの活用を検討し始めたタイミングで、NTT西日本から市内にフリーWi-Fi

環境を整備する協業の申し出があったのです。NTT西日本は、すでに広島市内の商店街で面的にフリーWi-Fiの環境整備を行っているなど、ノウハウを持っていましたので“渡りに舟”という状況でした。それに、既存のHiroshima Free Wi-Fiと組み合わせれば、非常にインパクトの強い施策になるのではないかと考えたのです」(出原氏)

公共施設・店舗向けのサービスをシームレスに接続し利便性を向上

 元々、広島市は、NTTブロードバンドプラットフォーム(以下、NTTBP)が提供するサービスにより7つの公共施設でHiroshima Free Wi-Fiを提供していました。また、Hiroshima Free Wi-Fiは、NTTBPが提供するフリーWi-Fi接続アプリ「Japan Connected-free Wi-Fi」に平成25年12月から対応しており、同じくこのアプリに対応しているフリーWi-Fiサービスとシームレスにつなぐことで、成田国際空港等の国内主要ゲートウェイとの一体性を確保しています。 平成26年9月30日、広島市とNTT西日本、NTTBPは、広島市中心部を重点エリアとしたフリーWi-Fi環境の面的拡大などの実証実験を行う協定を締結。10月1日から、これまでの取り組みに加え、NTT西

▲広島市 経済観光局 観光政策部 観光プロモーション 担当課長・出原 充浩氏

組織概要広島市広島県広島市中区国泰寺町1-6-34松井 一實http://www.city.hiroshima.lg.jp

組織名所在地市長URL

フリーWi-Fiの面的整備で外国人観光客の利便性を向上

ICT導入事例 Part32

広島市

●導入の狙い:外国人観光客の市内回遊・長期滞在の促進●導入の効果:官民協業によりフリーWi-Fi環境の面的整備を実現

 世界遺産である原爆ドームをはじめ、多くの観光資源を持つ広島市。そのような資源がありながら、観光客の滞在時間が短いという課題を抱えていました。 そこで広島市は、公共施設へのフリーWi-Fi環境の整備を行い、観光客の利便性向上を図ることを決定。広島市 経済観光局 観光政策部 観光プロモーション担当課長の出原 充浩氏は「平成25年8月から平和記念資料館などの7つの公共施設で、フリーWi-Fiサービス『Hiroshima Free Wi-Fi』の運用を開始しました。これによりフリーWi-Fi環境は整備できたのですが、点だけの整備になっているという課題もありました。さらに、2020年の東京五輪の開催決定を受け、特に外国人観光客の増加に向けて、広島市内を回遊・長期滞在してもらうためにHiroshima Free Wi-Fiの活用を検討していました」と語ります。

公共施設だけの“点”ではなく、“面”的なフリーWi-Fi環境整備の実施へ

 そこで考えたのが、市所有の施設だけを点で整備するのではなく、大半の観光客が移動するJR広島駅から原爆ドームまでの、直線距離にして約2kmのコンパクトなエリアを一気にカバーすることで、観光客が長期滞在しても便利に過ごせる環境づくりです。 とはいえ、広島市単独で、公共施設以外へのフリーWi-Fi環境の整備を行うのは容易ではありません。自治体単独の取り組みでは、民間施設への環境整備などを進めることは

▲ロゴマーク伝統文様「青海波(せいがいは)」が、 瀬戸内の海とWi-Fiの電波を表しています

広島市Hiroshima City

▲Hiroshima Free Wi-Fi利用登録画面

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 このような動機により導入された「iタウンページ プレミアムプラン」。ではその効果は、どのように現れているのでしょう。 「新規のお客さまに聞いた来店のきっかけで、『電話帳やホームページ(iタウンページ)を見て』が目に見えて伸びており、手応えを感じています。今後は、弊社の広告を目にした人にどうアプローチすべきかをさらに検討し、より効果的なキャッチコピーや写真の選択についても考えていきたいと思っています」(藤本氏) 鍼灸やマッサージという東洋医学と、最先端のICTの融合は、利用者にとっても良質な施術を受けやすい環境が広がることにつながります。ICTがもたらすそうした未来に、期待したいと思います。

 「新たに導入したのは『iタウンページ プレミアムプラン』というサービスです。このプランに加入することで、iタウンページ内に、より目立つ形で掲載され、そこから弊社のサービスや営業時間がわかりやすくまとめられた広告ページへリンク可能になります。またGoogleの検索キーワード連動広告『アドワーズ』への広告出稿仲介とコンサルティングも利用できるところにも魅力を感じました。そして何よりも、このサービスがこれまで長いお付き合いのあるタウンページから提供されている点が決め手となりました。タウンページであれば、弊社としても信頼が置けますし、お客さまにも安心してご利用いただけますから」(藤本氏)

 またiタウンページだけでなく、iタウンページが連携する「gooタウンページ」「BIGLOBE電話帳」「So-net電話帳」などのポータルサイトや、NTTドコモのサービス「iコンシェル」からの流入も、導入に踏み切る大きな動機になったそうです。 「導入するにあたり、スマホとの親和性の高さに着目しました。新規のお客さまは、まずお電話でお問い合わせいただくことがほとんどです。iタウンページは、検索結果や広告がスマホに最適化されて見やすく表示される上、画面にタッチすることでそのままお電話いただけます。このフローが弊社のお客さま像にピッタリ合致すると考えました」(藤本氏)

82015.1 2015.17 ホームページにも掲載しています。[ ユーザ協会 電話応対教育 コラム ]で検索!ホームページ(会員ページ)には更に詳しい情報を掲載しています。[ ユーザ協会 ICT導入事例 ]で検索!

▲アクセスする端末によってページが最適化される ▲施術の様子

白井 裕美氏 B-コミュニケーション株式会社ビジネスコンサルティング事業本部 品質支援グループインストラクタ。電話応対技能検定 指導者級資格保持者。

プロフィール

次号の講師は、 株式会社ソアテック宮下 憲子さん(電話応対技能検定 指導者級資格保持者)をご紹介。ホスピタリティマインドに溢れ、いつも期待以上の対応をしてくださる、とてもとても頼りになる方です。

 以前、OA機器メーカーでお客さま対応をしていたときのことです。 お客さまから、「機械が故障している」というお電話がありました。 よくある故障だったため、「ありえない現象ですので、サービスマンをすぐに手配します」と、いつもどおりの対応をしました。すると少しの無言の後、「そのありえない現象がお前のとこの機械でおこっとるんじゃ~!!」と、突然、お客さまのご不満が大爆発したのです。 私の応対がお客さまを怒らせてしまいました。 「ありえない」という言葉がいけなかったのかと思い、それからは「あってはいけない現象」と言い換えて応対するようにしていたのですが・・・ 後日、この応対の録音を聞くことがあり、愕然としました。 相槌はお客さまの言葉に重なり、私

がお客さまの話をしっかり聴いていないことが、ハッキリと伝わる応対だったのです。 お客さまは、「ありえない」という言葉にお怒りになったのではなかったのです。早く修理の手配をすることよりも、お使いの機器に起こっている現象や、お電話をくださるまでに、どんなに不便な思いをなさったのかという話に私が耳を傾けることを求めていらっしゃったのです。

 お客さまは、何を求めて電話をかけていらっしゃるのか。 お客さまのお申し出を伺うと、起こっている事実や対処の方法はわかります。しかし、お申し出の内容は同じであっても、お客さまお一人お一人求めている対応は異なります。 「お客さまが求めていることをわかろうとする」、大切なことを教えていただいた出来事でした。

 現在は、教育支援コンサルティングという立場で、企業の人材育成のお手伝いをしています。お客さま応対をしていた時とは違う視点で、お客さま満足について、日々、たくさんのことを学ばせていただいています。 『お客さまに寄り添う応対』『親切でわかりやすい応対』など、どの企業も自社にあったキーワードを掲げて、さまざまな取り組みをされていますが、目指しているのはみな同じ、『お客さま満足』です。 ご依頼くださる企業(お客さま)の立場に立ち、その企業のお客さまの目線を持つことを忘れずに、これからもみなさまの人材育成のお手伝いをさせていただきたいと思っています。 『お客さまの大切なお客さまが笑顔で満足していただけること』それが今の私の喜びです。 

正解は13ページをご覧ください。

このコーナーでは、「もしもし検定」の試験で出題された問題の中から、毎回1問ずつ掲載していきます。

次の電話は取引先から上司へかかってきた電話です。やってはいけない応対を記載してありますが、1つだけ適切な応対があります。どれでしょう。次の中から選びなさい。

1.上司が席を外していたので「こちらからおかけ直しいたします」と言った。2.上司がクレーム対応で忙しそうだったので、「今は電話に出られない」と断った。 3.上司がお客さまと外出したので「何時に戻るかわかりません」と答えた。4.上司から「大事な会議なので電話は取り次がないように」と言われたが、 急用だというのでメモで取り次いだ。

お客さまから学ぶCS向上

お客さまに寄り添い、想いをうけとめる応対お客さまにはすべて伝わっています

目指すは同じ、お客さま満足

大切なのは、「わかる」のではなく、「わかろう」とすること

※3級問題より

B-コミュニケーション株式会社

▲取締役・藤本 定義氏

会社概要中央鍼マッサージ治療室北海道札幌市中央区南2条西2丁目札専会館5階ほか全4店舗http://www1.ocn.ne.jp/~chuou-hm/http://itp.ne.jp/ap/0112411785/

会社名所在地

URLiタウンページ

iタウンページを活用し、新規の顧客開拓策を強化

ICT導入事例 Part34

中央鍼マッサージ治療室

●導入の狙い:新規顧客の獲得のため●導入の効果:iタウンページ経由の問い合わせが増加

 コミュニケーション手段の変化にともない、企業からお客さまへのアプローチにも、変革が求められています。今回は北海道札幌市の中央鍼マッサージ治療室に、そうした取り組みをうかがいました。 「当社では『終業は18時もしくは18時30分、日曜・祝日は休み』という一般企業に近い勤務体系をポリシーとし、治療師も固定給で雇用しています。弊社には視覚障がい者の治療師もおりますが、『障がい者だからといって悪い労働条件に甘んじることなく、健常者と同じように働けることを示したい』という創業者の理念がそこには込められています」(取締役・藤本 定義氏)

 現在、マッサージ業界にも、他の業界と同じく“新規参入”や“価格破壊”の波が押し寄せています。 「弊社がそうした新規参入社と価格で勝負してしまうと、創業者がかかげた企業理念を危うくすることにもなりかねません。やはり価格ではなく、確かな技術でお客さまにお応えしたいのです」(藤本氏) 新規顧客の獲得はこれまで、路上看板等に頼っていました。 「しかし路上の看板等は、各種規制で設置が困難になりつつあり、これまでとは異なった方法により、新規でいらっしゃるお客さまの獲得策を探ることにしました」(藤本氏)

 こうした状況を打開するため、藤本氏が選択したのは、インターネットを使った集客でした。 「手作りで制作した自社サイトは力不足で、集客には限界がありました。そのような中、『iタウンページ』が集客に役立つ新たなサービスを始めたと知り、利用してみることにしたのです」(藤本氏) iタウンページは「NTTタウンページ」が手がけるネット上の電話帳で、同社もこのiタウンページに広告を出稿していました。

マッサージ業界にも押し寄せる時代の波

新規顧客の獲得のためにICTの活用を選択

iタウンページ経由での問い合わせが増加

スマホとの親和性の高さも導入の後押しに

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が、スキル向上と大きな関連を持っています。そのため、弊社ではESも重視し、本人のやる気次第で契約社員から正社員にステップアップするキャリアパスを用意したり、育児休業制度を整えるなどの環境づくりを行っています。経験を積んだベテランは会社の財産ですから」(金城氏)

今後の展望について、教えてください。

 「冒頭申し上げたように、沖縄県はコンタクトセンターを設置する上で、いくつものメリットがあります。弊社の業務も現在さらに拡大中で、この傾向はしばらく続くことになると思います。またコンタクトセンターという部署は、従来会社の『コストセンター』的なとらえられかたをしていましたが、現在はお客さまの“生の声”を聞ける『マーケティングの最前線』とお考えになる企業さまが増えています。弊社はそうした企業さまの声に応えることができるコンタクトセンターづくりに、さらに尽力していく所存です」(吉竹氏)

本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

電話応対でCS向上

会社名設立本店所在地代表取締役社長兼COO資本金業務内容URL

トランスコスモス株式会社1985年(昭和60年)6月18日東京都渋谷区渋谷3-25-18奥田 昌孝290億円ビジネス・プロセス・アウトソーシング サービスhttp://www.trans-cosmos.co.jp/

会社概要

まず御社の概要について、教えてください。

 「弊社は、世界18カ国129拠点でビジネス・プロセス・アウトソーシング サービスを展開し、ここ沖縄県ではコンタクトセンターを4カ所設置し、70社以上のお客さまのコンタクトセンター事業を受託しています」(マーケティングチェーンマネジメントセンター那覇 センター長代理・吉竹 真一郎氏)

沖縄県に立地するメリットには、どのようなものがあるのでしょう?

 「ひとつは、県行政の情報産業に対する支援策を享受できることです。沖縄県では、コンタクトセンターのように雇用に貢献する業種では、通信インフラを格安で利用できます。また沖縄県は大都市圏に比べ、人件費も面積あたりのオフィスの賃料も割安です。さらに、BCP的な観点も見逃せません。沖縄県は、地理的な距離が東京や大阪などの大都市圏と離れている上、本土に比べ地震が少なく、また電力も県内の火力発電所から安定的に供給されています。そのため、本土が大規模災害に見舞われても、業務へ

の影響が少ないと考えます」(吉竹氏)

そうしたメリットは、コンタクトセンターを委託する企業さまにも魅力ですね。

 「はい。トランスコスモスでは、まずお客さまの抱える課題やご要望をおうかがいし、沖縄に設置することでお客さまの期待に応えられる場合には積極的にご提案しています。またこうした状況をよくご存じのお客さま企業から、『沖縄に設置したい』というご指名をいただくこともあります」(吉竹氏)

今回おうかがいした「MCMセンター那覇」は、トランスコスモス初の自社ビルとおうかがいしています。

 「他のテナントとして入居しているセンターとは異なり、こちらはコンタクトセンターとしての理想を考えて設計しています。ICカードを使った入退管理システム、監視カメラ、フラッパーゲートなどのセキュリティ対策と、自家発電装置も備えた耐障害性で、主に金融機関のお客さまから高いご

評価をいただいています。また従業員満足(ES)にも力を注ぎ、ビル内の託児所、広いリフレッシュルーム、ビル内駐車場なども特長です」(吉竹氏)

こちらのセンターで受託されている「CO・OP共済」が、「サービス産業生産性協議会」の「2013年度JCSI日本版顧客満足度指数」の生命保険分野で「顧客満足度(以下、CS)第1位」に選ばれましたね。今回の選出には、こちらのセンターが大きく貢献していると思います。ふだん、どのようなことに気を遣い、お客さまへの受け答えをされているのでしょう?

 「こちらでは、全国展開するコープ共済連さまの、西日本エリアからのご請求受付を担当しています。今回の結果は、たいへんありがたいことだと思っています。共済のご請求でお問い合わせされるお客さまは、ご病気やケガによるご心配ごとがあったり、お気落ちされていることがほとんどです。私たちはご請求を受け付ける立場ですが、単に事務的に処理を進めるのではなく、お客さまと言葉のキャッチボールを交わし、そうしたご心配、お気落ちを少しでも癒やす

ことができればといつも心がけながら応対させていただいています」(マーケティングチェーンマネジメントセンター那覇 3-24係 スーパーバイザー・金城 美穂氏)

「CO・OP共済」には、一般の生命保険とはやや異なる部分があるとおうかがいしています。

 「はい。共済は生命保険に比べ、『相互扶助』という性格が強くなっています。そのため、お客さまが加入されている商品について、お客さまが気づかない保障があればこちらからご案内し、請求忘れ、請求漏れがないよう気配りしているのです」(金城氏)

それには、スタッフの商品知識が要求されますね。

 「新人スタッフは、まず1カ月かけて商品について学び、その後、先輩スタッフの音声をモニタリング、それからOJTに入り、スキルの向上と商品知識を蓄えることになります。お困りごとのあるお客さまを『どう支援できるか』という考えのもと、みな積極的にそうした知識を付けていこうという意識がありますね」(金城氏)

ほか、応対面で気をつけていることはありますか?

 「共済の手続きは、説明が複雑になったり、ご用意いただく書類が多くなったりすることが少なくありません。またお客さまにはご高齢の方もいらっ

しゃいます。そのため、お客さまへのご説明でも、『きちんと伝わっているかどうか』を確認するため、ご説明をかみ砕き、さらに要所要所でご説明を区切り、お客さまがご理解いただいたかを確認して次に進むよう、心がけています」(コミュニケーター・下 貴代氏)

応対品質向上やCS向上についての取り組みについてお聞かせいただけますか?

 「6名の品質管理担当が、コープ共済連さまを担当するコミュニケーター約220名の音声を3カ月に一度確認し、品質をチェックしています。また確認後には全員と約30分~1時間の面談を行い、よかった点、悪かった点を共有し、レベルアップを手助けしています。またCSを向上させるには、受け答えするコミュニケーターひとりひとりのモチベーションが大きなカギになりますし、長期的に見て離職率を下げること

お客さま対応を行うコンタクトセンターを、本社所在地や大都市エリアではなく、遠隔地に設ける例が増えています。沖縄県那覇市で日本コープ共済生活協同組合連合会(以下、コープ共済連)さまの「CO・OP共済」のコンタクトセンターを受託運営するトランスコスモス株式会社に、そのメリットをうかがいました。

▲自社ビル

▲マーケティングチェーンマネジメントセンター那覇 センター長代理・吉竹 真一郎氏

トランスコスモス株式会社

▲マーケティングチェーンマネジメントセンター那覇 3-24係 スーパーバイザー・金城 美穂氏

▲コミュニケーター・下 貴代氏

▲品質チェックの様子

▲約220名のコミュニケーターが応対するコンタクトセンター

丁寧な応対を心がけ、お客さまの気持ちを少しでも癒やしたい

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会社名設立本社所在地代表取締役社長資本金業務内容

URL

日本ケミファ株式会社1950年(昭和25年)6月16日東京都千代田区岩本町2-2-3山口 一城43億400万円(平成26年3月末現在)医療用医薬品・臨床検査薬の製造・販売および輸出入業健康・医療関連事業http://www.chemiphar.co.jp/

会社概要

日本、そして世界には、数多くの製薬会社があります。そのなかで、御社がどのような特徴をお持ちなのか、教えていただけますか?

 「弊社は1950年に創業、以来65年にわたり、『医薬品を中核にトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する』という企業理念のもと、医療用医薬品を中心に事業展開を行ってきました。医療用医薬品は、大きく2種類に分けられます。ひとつは、従来になかった薬効を持つ『新(先発)医薬品』で、もうひとつが先発医薬品と同じ有効成分を含む『後発医薬品』です。後者については、ジェネリックという呼び方で、現在政府もその利用を促しているので、ご存じの方も多いでしょう。製薬メーカーの多くは、このどちらかを専業にしていますが、弊社は双方を手がけている数少ないメーカーで、開発か

ら製造、販売まで、グループ内で一貫して取り組んでおります」(信頼性保証総括部 安全管理部長 兼 くすり相談室長・松井 豊氏)

松井さまの肩書きには、「くすり相談室長」とあります。こちらがお問い合わせ窓口となるわけですね。

 「はい。多くの製薬メーカーはこうし

た窓口を独立の部署として持っていたり、外部のコールセンターにゆだねたりするのですが、これを製品の安全管理を手がける『安全管理部』のなかに設置しているのが弊社の特徴となります」(松井氏)

そうなった経緯、また「くすり相談室」が「安全管理部」のなかにあることのメリットを教えていただけますか。

 「製薬メーカー各社がこうした窓口を設置するきっかけは、平成6年の厚生労働省管轄法人における『消費者くすり相談窓口』の開設です。これにあわせ、各製薬メーカーもお客さま対応を行う相談窓口開設の検討をはじめました。弊社はそれ以前から『学術部』という部署でお問い合わせ対応を行っていましたが、この流れを受け、平成9年に『安全管理部』に窓口を設置したのです。その後、他社のように、この部署を独立させるかという議論もありました。しかし薬の本来の役割は『病気を治すこと』でありますし、その薬を正しく使っていただくためには薬効や使い方、副作用について、お問い合わせいただいた方にきちんとご理解いただくことが重要です。お問い合わせ窓口が『安全管理部』のなかにあることで、私たちの役目が医療関係者からのお問い合わせに応対することだけではなく、その向こうにいらっしゃる患者さんの健康に資することだと常に自覚することができます。そしてさまざまな情報を、スタッフが共有できるというメリットも、重要です。そうした考えにより、

この体制を貫いているのです。この窓口の名称は平成21年に『くすり相談室』となりましたが、その本質は変わることなく、現在に至っております」(松井氏)

現在、「くすり相談室」はどのような体制で運営されているのでしょうか?

 「スタッフは10名で、全員が副作用対応もしくは包装資材の校正を主とする安全管理業務と兼務しております。それぞれが日常の業務をこなしつつ、いただいたお電話に対応しています。薬剤師の資格を持つ者も多数おりますし、安全管理部として弊社の製品の情報に精通していることが、お電話に正確な対応ができるメリットとなっております。いただくお電話は月に500~600本ほどで、その多くは薬剤師や医師といった医療関係の方々からのものですね」(信頼性保証総括部 安全管理部 くすり相談室・山上 和美氏)

いただいたお電話への応対で、とくに気を配っているところはありますか?

 「まず、お電話の向こう側にいらっしゃる方が『どのようなことで困っているのか』をきちんと把握することです。薬剤師の先生からのお問い合わせで

は、ご相談の内容のほか、その答えを急いで求めているのか、それともお待ちいただくことができるのか。患者さんであれば、ご病気にかかわるデリケートな内容で、口に出しにくいことがあるのかもしれません。そうしたお客さまの真意をくみ取り、正確にアドバイス差し上げることを心がけております」(山上氏)

そのような応対には、高いコミュニケーション能力が必要ですね。

 「はい。その能力を高めるには、日々 の勉強や努力が必要ですが、やはり自分たちの取り組みだけでは限界があります。そこで私たちは、『もしもし検定』を活用し、そうした能力の向上に取り組んでいます。また『もしもし検定』は、コミュニケーション能力だけでなく、個人情報保護法、ビジネスマナーといった、電話で相談や問い合わせを受ける上で必要な知識も同時に学べるところが大きなメリットとなっています」(山上氏)

 「私たちの取り扱う商品が健康にかかわる『医薬品』である以上、まず最優先されるべきは、お答えする内容の正確さです。これについては、『くすり相談室』が安全管理部にあること、そして週1回の事例検討による最新知識の習得で、自信をもってご用意できます。ただ、そうした正確な知識も“伝える技術”がなければ、お客さまに正確にご理解いただけない可能性があるのです。そうしたスキルを身に付けることが必要だと考えたことが、『もしもし検定』を受ける動機のひとつとなりました」(松井氏)

電話応対のスキルを高める練習なども、定期的に行っているのでしょうか?

 「はい。まず毎日朝練で早口言葉、よく使う患者さん向けのフレーズなどを、発声練習をかねて行っています。また先ほど申し上げた事例検討のあとには、録音された実際の対応を皆で聞いて、その応対品質や内容についてディスカッションしています。さらに長期的には、スタッフそれぞれが『もしもし検定』の3級、2級、1級へとステップアップするようカリキュラムを組み、トレーニングを行っております」(山上氏)

ほかにも、医薬品ということで、回答に気を遣う部分があるかとは思いますが?

 「はい。お問い合わせの内容について、できる限り調べ、また電話を受けたスタッフ以外の知識もあわせ、詳しく回答しています。たとえばジェネリック医薬品は承認プロセス上、先発品と比較

して情報量が多くありません。しかしお問い合わせに対しては、文献などから、できうる限りのお答えを差し上げるようにしています。またインターネットなどでお薬の副作用を調べ、不安に思いお電話をいただく例もあります。そうした場合もその可能性などについて、私たちが知っている情報をしっかりお伝えすることで、不安な思いを解消できるよう、尽力しています」(山上氏)

安全管理部のお仕事をしながら、そうしたお問い合わせに向き合っていくのは、たいへんなご苦労があるのではないですか?

 「はい。でもこの『くすり相談室』が安全管理部にあることで、医療関係者や患者さんからの実際のご相談内容をしっかりと把握し、社内に共有できるというメリットがあるのです。実際にお問い合わせいただいた内容は営業本部にも共有し、そちらの業務にも活用しています。安全管理部に『くすり相談室』を置くこと、つまり安全と品質を同時に押し進める私たちの姿勢が、弊社の信頼につながっていくと確信しているのです」(松井氏)

本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

●電話応対技能検定実施機関:オフィスKEI株式会社 http://officekei.tokyo/

▲信頼性保証総括部 安全管理部長 兼 くすり相談室長・松井 豊氏

▲信頼性保証総括部 安全管理部 くすり相談室・山上 和美氏

▲企業CMでもおなじみのマスコットキャラクター「くすり屋のヤギさんとくまのベアトリスさん」

▲くすり相談室

電話応対でCS向上

医薬品は私たちの病気を治し、健康をサポートする大切な役割を持っています。しかし使い方を誤れば、逆に健康被害につながることもあります。今回は「くすり相談室」を運営する日本ケミファ株式会社で、お問い合わせへの対応や取り組みについて、お話をうかがいました。

日本ケミファ株式会社

正確な情報をしっかり伝えることで、自社の信頼につなげる日本ケミファ株式会社

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 IPI分析とは、Issue(イシュー:争点)、Position(ポジション:立場・主張)、Interest(インタレスト:ニーズ・要求)の頭文字をとった分析法のことです。このIPI分析をメディエーションに活用する場合、当事者の話から「(I)争点、(P)立場・主張、(I)ニーズ・要求」を抽出し、その構造を分析し、内容ごとに対応を考えます。 たとえば、これを以前ご紹介した「業務終了時のお茶の片付け事件」に当てはめてみましょう。まず「争点」は、「新人であるHさんは、業務終了後にお茶の片付けをすべきか否か」でした。次にHさんの「立場・主張」は、「お茶の片付けをしたくない」というものでした。そしてHさんの「ニーズ・要求」は、「先輩から認めてもらいたい、職場のルール作りに自分も参加貢献したい」というものでした。 Hさんは「立場・主張」において「片付けをしたくない」と、はっきりとNOを宣言しています。メディエーターはこの時、ふたつの作業をします。まず、問いを言い換え、「業務終了後のお茶の片付けについて、ご意

稲葉 一人氏

※メディエーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

 メディエーション ~トラブル解決のコミュニケーション~

第三者が当事者同士の話し合いを促し、トラブルを解決に導くメディエーション(調停)。前回は、第三者として調停に関わるメディエーターに必要な資質と対話に介入するうえでの注意点について、あらためて考えてみました。今回は、IPI分析を使った、メディエーションにおける構造の分析の仕方とその際の注意点についてお話したいと思います。トラブル収拾の極意を学び、当事者同士の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

メディエーション ~トラブル解決のコミュニケーション~ 第23回

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールの他、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じて海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

第23回

見の対立があるのですね」と問いかけます。次に、答えを言い換えます。「お茶の片付けについて、異論がおありだということですね」と。 このような言い換えを「パラフレーズ」と言います。こうした言い換えをすることで、誠実に、そして正確に話を理解しようと努めていることが相手に伝わり、相手との信頼関係が増します。また言い換えることにより、相手も自分の話を整理し、気づきを深められる効果があります。そして次にメディエーターは、「開かれた質問(自由回答のできる質問)」をすることで、「ニーズ・要求」の糸口を探します。 この「ニーズ・要求」には、「有形的なもの(お金や昇進、地位など)」と「無形的なもの(認めてもらいたい、好かれたい、など)」のふたつがあります。今回Hさんが求めた「ニーズ・要求」は後者になります。そしてここにメディエーションの課題が存在します。メディエーターはしばしば、有形的な要求を無形的なものへと変えてしまうことがあります。

 たとえば、当事者は「金銭的な要

求」をしているのにも関わらず、社内のルールとして「金銭的な解決はしない」と定めている場合、メディエーターは解決を求めるがあまり、「具体的(有形的)なニーズ」を「非具体的(無形的)なニーズ」に変えてしまうことがあるのです。具体的には、「あなたのお金の要求ですが、本当は、このような問題へのご自身の意見を会社内部で尊重してもらいたい、ということなのではないですか」と誘導してしまうということです。 有形的なニーズと無形的なニーズは両立しません。そのため、時にメディエーターは、処理しやすい無形的なニーズを見つけることで、大切な有形的なニーズを否定しまうことがあるのです。これは作られた無形的ニーズや、メディエーターの心理的介入といわれる問題でもあります。 しかしまた、当事者が対話を通して、多くのことに気付くのも事実です。それは対話を通して当事者の人間力が高まったからであり、自らが気付き、発見したものです。そしてその過程を外から支え、応援する、それがメディエーターの役割なのです。

チャレンジ!もしもし検定の答え:(4) もしもし検定ホームページには、詳しい解説を掲載しています。[ もしもし検定 過去問 ]で検索!

142015.1 2015.113 ホームページにも掲載しています。[ ユーザ協会 電話応対関連トピック ]で検索!ホームページにも掲載しています。[ ユーザ協会 メディエーション ]で検索!

プロフィール

構造の分析に適したIPI分析

解決を求めるがあまりに起きる、心理的な介入

メディエーションで活用されるIPI分析~構造を分析し、対応する~

岡部 達昭氏プロフィール

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

第19回

コミュニケーション力を

~アナウンサーの ノウハウから~

鍛える

コミュニケーション力を鍛える ~アナウンサーのノウハウから~ 第19回

気をつけたい三つの省エネ話法

きれいで聞きやすい声、完璧な言葉遣い、確かな業務知識、よどみなく流れるような説明。自信に溢れたこうした応対は耳には心地よく、何となく「分かった」気になります。ところが、肝心の内容がしっかり伝わってこないのです。それどころか、捌かれたという不快感が残ることさえあります。ベテランに多いこうした応対の原因は、気づかずに陥っている、話し方の三つの省エネにあるのです。

 使いなれた言葉には、無意識のうちに簡略化しようという力が働きます。「お名前をどうぞ!」「ご住所をどうぞ!」「お品物がまだ届いていないと言うことで・・・」などのように、言葉を最後まで言わずに止めてしまって、あとはお客さまに預けてしまうのです。いかにも雑に聞こえます。「お名前をお聞かせください」「ご住所を教えていただけませんか」「お品物がまだ届いておりませんでしょうか」と、語尾を省略することなく最後まできちんと話すことで、言葉の丁寧さだけではなく、お客さまを大切にする心の丁寧さを感じさせます。

 電話では、聞き手は話し手が話すリズムに同調しながら聞いています。話し手が「間」をとって考えれば、聞き手もその「間」で同じように考えます。ですから、話し手がセンテンスの切れ目で句点を打てば、その一瞬の「間」で、聞き手は言葉の意味を理解

しているのです。と言うことは、話し手が「間」の省エネをすれば、聞き手には伝えたことが伝わりにくくなるのです。 忙しいコールセンターやコンタクトセンターなどでは、掛ってくる「呼」の応対に急きたてられます。話し方も、早口というより「間」を省略してしまうのです。中でも、業務知識が豊富で判断も早いベテラン応対者は、考える「間」もなく、流暢に言葉が出てきます。その流暢さに引っ張られてお客さまは分かったような気になりますが、実は分かっていないことが結構あるのです。それに、「間」がないと質問もできませんね。

 日本語は音の高低、つまり抑揚によって表情や意味が変わってくる言葉です。言葉の意味を強調したり、お礼やお詫び、お願いなどの言葉を言うときには、息の言葉や裏声なども使いますが、高低の抑揚が大き

くものを言います。 通常、私たちが話をするときには、2オクターブぐらいの高低の幅で表情を作りながら話しています。それが省エネ話法で話しますと、使う音の帯域が狭くなります。そのため無表情で事務的に聞こえるのです。

 効率化優先で電話応対業務が集約される中、責任を持たされるプロの皆さんは、知らず知らずのうちに省エネへと追い込まれているのです。ことに「間」と「抑揚」の省エネについては、気がついている人は少ないように思います。それは流暢な応対の裏返しでもあるからです。そしてもう一点。同じ言葉を何度も繰り返していると、言葉は慣れになり表情を失います。たとえマニュアル言葉であっても、その言葉の意味を大切に伝えれば、自ずと「間」も生まれ、抑揚にも変化がつくはずです。そして、語尾の省エネもなくなるでしょう。

 語尾の省エネ

 「間」の省エネ   抑揚の省エネ

おちい

さば