takeda r&d · takeda r&d professional file 採用サイト 2015年 4月発行 published in...
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TAKEDAR&D
PROFESSIONAL FILE
採用サイト http://www.takeda.co.jp/recruitment/2015年 4月発行
Published in April 2015
本 社 〒540-8645 大阪市中央区道修町四丁目1番1号 TEL : 06-6204-2111
東京本社 〒103-8668 東京都中央区日本橋二丁目12番10号 TEL : 03-3278-2111
Maltilab Industria eComercio de ProdutosFarmaceuticos Ltda.
メッセージ
グローバルな事業基盤を有する強みを最大化し、健康に貢献する優れた医薬品を世界中の人々へ。
研究拠点
開発拠点
新規進出国・新興国での販売拡大の支援
湘南研究所
米州武田開発センターInc.武田ファーマシューティカルズ・インターナショナルCo.
欧州武田開発センターLtd.
シンガポールオフィス(アジア武田開発センター)
武田上海開発センター CMC研究センター
タケダイズムを原点に国内No.1の製薬企業として豊富な実績と高い信頼を誇るタケダ。長い歴
史の中で培われた普遍の価値観「タケダイズム(誠実:公正・正直・不屈)」
を原点に、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献
する」というミッションの実現に向けて邁進している。今後は70ヵ国以上
に及ぶグローバルな事業基盤を生かして、人々がより健康で明るい毎日を
過ごせるよう、さらなる変革を目指す。
グローバル研究開発体制の強化グローバルなプレゼンスを最大限に生かして研究開発拠点の連
携を図り、パイプライン(研究開始から承認・発売にいたるま
での開発品)を強化していくことで、さまざまな患者さんのニー
ズに合致する医薬品を創出している。
若い人材の活躍に期待タケダには長年日本人に親しまれてきた多くの一般用医薬品や医薬部外
品がある。しかし、それらが売上高に占める割合は1割。残る約 9割を医
療用医薬品が担い、病気に苦しむ世界中の患者さんの元へとお届けして
いる。そんな中、近年特に力を入れているのが、医療ニーズが未だ十分に
満たされていない疾患領域、すなわちアンメットメディカルニーズの新薬
およびワクチンの研究開発だ。「グローバル製薬企業」の旗印のもと、世
界中から若い優れた人材が集い、高度な連携によって時代を切り拓いてく
れることを切望している。
ミレニアム・ファーマシューティカルズ Inc.
武田ファーマシューティカルズ・インターナショナル Inc.
米州武田開発センター Inc.
欧州武田開発センター Ltd.武田ケンブリッジ Limited武田 Pharma A/S
日本開発センター
武田ベンチャー投資 Inc.
武田シンガポール Pte. Limited
アジア武田開発センター Pte. Ltd.
武田ワクチン Pte. Ltd.
武田 GmbH
湘南研究所
CMC研究センター
武田上海開発センター
広東テックプール・バイオファーマ Co., Ltd.
武田カリフォルニア Inc.
武田ワクチン Inc.
02 TAKEDA R&D Professional File 03TAKEDA R&D Professional File
仕事インデックス
いのちの可能性に挑み続けるプロフェッショナルたち。そのチャレンジは世界に広がり、未来へとつながる。人々を苦しめる病に治療の道を拓く創薬。その価値ある営みは、多様な
分野のプロフェッショナル達の連携なしには進まない。タケダの研究開
発部門では、医学・薬学はもちろん、化学、生物学、遺伝子学、分析学、
化学工学など、さまざまな分野の出身者達が、互いに刺激し合いながら、
創薬という一つのゴールに向かって歩み続けている。高度な専門性と広
い視野、無限の好奇心、そしてチームとしての不屈の使命感が、世界最
先端の取り組みを支えている。
医薬品開発創薬研究 販売
新薬候補の探索 開発化合物発見 承認申請 発 売
非臨床試験(動物実験) 臨床試験(Ⅰ~Ⅲ)
工業化に向けた最適化
研究職(CMC研究)
生産技術職
研究職(ワクチン研究) クリニカルサイエンス(ワクチン)
臨床開発職
職 種
流 れ
領 域
研究職(創薬研究)
医薬品の誕生と各職種の役割の違い
STEP1新しい医薬品の「芽」を見出す
有効性が期待される開発候補化合物の「芽」を見出して解析・追究し、検証・評価。
P6 P8
P10 P12
P14 P16
P18 P20
P24P22
研究職(創薬)
STEP2原薬や製剤の「設計・製造」をする
STEP1で創られる開発候補化合物の原薬の製造プロセス及び品質を設計。実験室レベルから商用製造レベルへのスケールアップを目指す工業化研究を行なう。
研究職(CMC研究)
STEP3製造技術を確立し安定的に高品質の医薬品を「生産」する
患者さんの手に届く最終製品(錠剤、カプセル、注射剤)を安定的に生産するための技術を確立。
生産技術職
STEP4臨床試験を実施し「承認申請」をする
ヒトでの臨床試験で有効性・安全性のデータを質・量ともに充実させ、厚生労働省へ医療用医薬品の製造承認申請を行なう。
臨床開発職
世界中の患者さんのもとへ
04 TAKEDA R&D Professional File 05TAKEDA R&D Professional File
創薬は、通常、疾病に応じて標的を定めるところからスタートする。
その定まった標的に対する有用な作用を期待できる化合物を
デザイン、合成するのが合成研究のスペシャリスト達だ。
合成の研究は、それに続く薬効・薬理の研究から
アッセイ結果のフィードバックを受けて、さらに深められていく。
薬効活性の認められるヒット化合物を生み出し、
合成展開と最適化を実施するリード化合物へと進むために、
不屈の探索が繰り返されている。
専門性を深め、他者と連携して高度な成果を。
[ 使 命 ]
合成における中枢疾患領域特有の困難を克服し、メディカルニーズの充足に貢献を。 創薬最上流で研究者たちが担う使命は幅広い。タケダでは、創薬に必要な
スクリーニングや病態モデル関連など各種技術の開発・研究、それらの技術
を基盤とした疾患領域ごとの開発候補化合物の創出、さらに、薬物動態・薬
剤安全性など創薬に欠かせないテーマの追究などを推進している。
池田は、そのなかの中枢疾患領域における候補化合物の創出を担うユニッ
トで、化合物のデザインと合成を担当している。
「中枢疾患はQOL(Quality of Life)を著しく低下させるので、いい治療薬
を求める患者さんの声は切実です。しかし、メカニズムが難しく根本的な治療
薬はまだ実現していないのが実情です。しかも、中枢疾患の薬は、血液脳関門
と呼ばれる障壁を通過して脳に移行できることが絶対条件となるため、デザイ
ンと合成が制限されるということも、この領域特有の難しさとなっています」。
“その二重の難しさを乗り越えてアンメットメディカルニーズに応える”とい
う強い使命感が、日々の高度なパフォーマンスの原動力となっている。
[ 挑 戦 ]
周囲の協力のもと、ひたすら研究に没頭し、だれもが諦めかけた候補化合物の創出に成功。 ある年、タケダの中枢疾患に関連する創薬ユニットは、新たな医薬品候補化
合物の誕生に沸いていた。早速、この化合物とは全く構造の異なる“もう一つ
の候補化合物”を創出して創薬への可能性をさらに高めるためのプロジェクト
の立ち上げが決まり、入社3年目の池田もこれにアサインされた。
「標的とする生体たんぱく質の薬理学的な可能性も不明なのに、短期間で結
果を出すことが求められていました。当初は何の成果も得られず、ハードルの
高さを思い知る毎日。周囲には諦めムードも漂い始めました」。
この困難な日々を支えたのは、大学院時代の博士号取得につながった研究で
培い、入社後にさらに磨きをかけてきた“不屈の精神”だった。
「やがて“もう少しで何かが掴める!”という感触が生まれ、チームメンバーやプ
ロジェクトリーダーの協力のもと、魅入られたように研究に没頭していきまし
た。すると1年が経過しようとしていたある日、忽然と、高いポテンシャルを持っ
たリード化合物が眼前に。夢中で最適化を続け、ついにプロジェクトの立ち上
げから4年越しに、“もう一つの候補化合物”にたどりつくことができました」。
新薬は、膨大な試行錯誤の長いリレーの末に生まれる。合成研究者の使命
である候補化合物の創出も、成功確率は極めて低い。そんななか、わずか入
社6年目にして成功を手にした池田は、かつてない感動を味わった。
「創薬研究にいかにチーム力が必要か。また、全員で得る勝利がいかに味わ
い深いものか。それを肌で知ることができたのは大きな収穫でした」。
[ やりがい ]
縦横の連携に優れたタケダだからこそ、スペシャリストとしてのやりがいも大きなものに。 池田は、タケダでの創薬研究が大学院での薬学研究と大きく違うのは、“人
とのつながり”がとても重要である点だと考えている。
「アカデミックな研究はある意味個人で完結させることもできます。これに対
し創薬は総合的な科学です。他部門の専門家からサジェスチョンをいただいて
自部門の価値を上げる。逆に自部門からの発信で他部門に貢献する。この自他
の相互作用のなかで、研究者としての自分が日々向上していくのを実感してい
ます」。
どんなに優秀な研究者であろうと一人ではとても成し遂げられないことが組
織でなら成し遂げられ、前に立つ者が後進を導く組織文化を引き継いでいくこ
とで組織全体のポテンシャルも高まっていく。
「個々の能力が高く縦横の連携に優れたタケダでは、自分の力も大きく活か
されます。だからこそ、有機化合物のスペシャリストとして医薬品候補化合物
の創出に貢献でき、やりがいもそれだけ大きくなります」。
[ 夢・目標 ]
目指すは、“グローバルネットワークを活かし、タケダの価値を最大化できる人材”。 経験を重ねるに連れ、創薬に向けての組織力の大切さを強く意識するよう
になった池田が、今、自らに課しているのが、“グローバルネットワークを活か
し、タケダの価値を最大化できる人材”となるための努力だ。
「試みの一つとして、国内外の若手合成研究者がTV会議システムを介して
集う研究討論会を、隔月毎に主催しています。国内外のサイトが相互理解を深
めてシナジー創出につなげていく場を提供したいというのが動機です」。
海外とコンタクトをとりながら幹事役をこなす中で自らの英語力も磨き、将
来はより大規模に周囲を巻き込んで、タケダの真のグローバル化に貢献した
いと考えている。
創薬研究
海外グループ会社
チームメンバー
他部署メンバー
池田 周平 研究職(創薬研究) 薬学研究科修了 2009年入社
Q2学生時代でいい経験だったと思うことは?
6年間の研究室生活を通じて、“最後はシンプルな解に帰結する”という経験ができたことです。
Q1学生時代の研究テーマは?
「含窒素天然有機化合物の全合成研究」です。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
妻とテニスをしたり、ジムに通ったり、食べ歩きを楽しんだり。近々家族が増えるので、とても楽しみです。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
日本の会社の良さを残しつつ、ここ数年で急速にグローバル化が進んだこと。めまぐるしく組織が変わり、従業員の過半数以上が外国人となりました。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
日本発の世界的製薬企業を掲げるビジョンに共感し、自身の強みを最大限活かせる場であると感じたため。グローバル化も含め自身の成長機会をタケダに感じました。
池田の仕事ネットワーク
Questions & Answers
外部研究機関 社外パートナー
06 TAKEDA R&D Professional File 07TAKEDA R&D Professional File
薬効・薬理研究は、合成研究とともに、
創薬上流の両輪をなしている。
合成研究によって創出された新たな化合物について、
試験系を確立・実施して解析を行い、結果をフィードバック。
最適なプロファイルを持つ化合物の創出を図っていく。
ヒット化合物からリード化合物へとたどりつける可能性は、
数万分の1とも言われるほど狭き門だ。難関突破に向け、
ムダなくスピーディな、質の高い解析が展開される。
周囲にも運にも恵まれ、研究者として充実の日々。
[ 使 命 ]
有望な化合物から医薬品候補化合物として最適なプロファイルを持つ化合物を選定。 馬場は、前出の池田と同じ、中枢疾患領域における候補化合物の創出を担
うユニットの一員だ。池田たち合成のスペシャリストによって生み出された有
望な化合物の薬効・薬理の、in vitroでの研究を担当している。
「まず、細胞や脳組織サンプルを用いて化合物のプロファイリングを行うため
の試験系を確立します。そして、MOA(Mode of Action:作用機序)解析
を行って詳細なメカニズムを調べたり、予想される副作用を回避するための方
針をメカニズムベースで検討したりします。中枢疾患は動物モデルを使用した
実験だけでは薬効の見極めが難しく、メカニズムベースでの判断はとても重
要です」。
最終目標とする創薬に向け、計算された試行と客観的な評価・判断を繰り
返して、闇に射し込む一条の光明と、その方向を見定めていく。
[ 挑 戦 ]
考え抜いたうえで信念を持って突き進むことで想像以上の大きな成果が。 馬場はある年、チャレンジングな新規プロジェクトにアサインされた。創薬
は、まずどのような標的に対し、どのようなメカニズムで働きかけることを目指
すかを定めたうえでスタートするが、このプロジェクトが注目したメカニズムは
これまでの中枢疾患既存薬のメカニズムとは大きく異なる新しいものだった。
さらに、コンセプトの新しいテーマだったこともあり、薬効・薬理のメンバーは
従来の考えに捕われない若手を中心に編成された。
「そのため、本当にそのターゲット、そのメカニズムで、中枢疾患への薬効が
確認できるかどうかも不確か。しかも、何か対策を講じない限り回避できない
重大な副作用があることもわかっていました。限られた時間内にその両方をク
リアして求められている成果を生むには、綿密な戦略が必要でした」。
馬場をはじめ薬効・薬理チームは、まず薬効を確認したいという意見もある
なか、よりムダなく最短でゴールに近づく方法について熟考し、薬効よりもま
ず先に副作用回避に全力を注ぐことを決定する。
「“考え抜いて正しいと思ったら、信念を貫け。そうすれば結果はついてくる”
という上司のアドバイスに支えられました」。
信念を貫く以上、絶対に定めた期限内に結果を。そんな必死の思いで細胞
ベースのスクリーニングに取り組んでほぼ半年目。突如、副作用を回避する化
合物に行き当たった。上司のアドバイスが現実となった瞬間だった。
「しかも、副作用回避のMOAが明らかになるに連れてまさに奇跡的なメカニズ
ムであるとわかり、プロジェクトメンバーの士気が高まっていきました」。
馬場自身も、低分子化合物がまだ多分に秘めている可能性や、低分子化合
物ならではの薬効・薬理のおもしろさを改めて実感。最短距離の創薬を目指
した実験の進め方、優先順位の付け方への意識も大きく高まった。
「薬効面ではまだ課題もあり、今後の試験にも綿密な戦略が必要です。その
際も、考え抜いて信念を貫いていきたいと思っています」。
[ やりがい ]
夢は、タケダならではの新薬を実現させて、世界中の患者さんやご家族にお届けすること。 高校時代、生物の授業で生体システムの精巧さに感動し、理学部生物学科
に進んで研究のおもしろさにのめりこんでいった馬場。好きな研究を通じて
人々に貢献するには製薬企業が一番だと考え、さらに大学院で研鑽を積んで
夢を叶えた。今は、目指していた通りの仕事に大きなやりがいを感じている。
「入社してすぐのころは、担当したスクリーニングの位置づけ・重要性を理解
しないまま手だけを動かしてしまったこともありました。でも、スクリーニング
の目的を理解することで、ゴールを目指すための重要な過程として楽しめるよ
うになりました」。
中枢疾患は、アンメットニーズがまだまだ高い領域で、既存の医薬品が十分
に効かない患者さんも多い。しかも、患者数は増加の一途をたどっている。
「世界中の英知を結集できるタケダならではの新薬を実現させて、世界中で
困っていらっしゃる患者さんやそのご家族にお届けしなければと思っています」。
[ 夢・目標 ]
グローバルタケダを納得させることのできる、説得力のある研究者を目指して。 グローバル化が進むタケダでは、研究部門で進行中のプロジェクトにおいて
も、様々な考え方をもつステークホルダーを広く納得させることのできる成果
や見通しが求められるようになってきている。
「データセットの取り方一つにも、グローバル会議で全員を説得できるような
論理性や緻密さが求められています。そうした点を考慮しながら実験を計画
し、最短距離でプロジェクトを進めていける研究者を目指しています」。
グローバル会議でしっかりと研究内容をアピールできる薬効・薬理研究者
として、グローバルタケダの創薬を加速していく未来が、馬場を待っている。
創薬研究
GPT(Global Project Team)
チームメンバー
他部署メンバー
馬場 里奈 研究職(創薬研究) 新領域創成科学研究科修了 2009年入社
Q2学生時代に熱中したことは?
大学まではテニス。厳しい練習で忍耐力や体力がつきました。大学院では研究。周囲に恵まれ多様な考え方が学べました。
Q1学生時代の研究テーマは?
がん細胞でPI3K-Akt経路の活性化により転移が起こりやすくなるメカニズムについて、解析を行いました。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
長期休暇は海外旅行を楽しんでいます。ふだんはゆっくりと、映画や買い物などを楽しんでいます。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
「安定した日本企業」から、「拡大するグローバル企業」へと変貌を遂げたこと。急速なグローバル化が進んでいます。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
修士1年のときにタケダのインターンに参加し、個々の創薬への想いに触れて、タケダで働くイメージが湧いたからです。
馬場の仕事ネットワーク
Questions & Answers
外部研究機関
08 TAKEDA R&D Professional File 09TAKEDA R&D Professional File
組織と個々の懸命の努力によって光が当たった医薬品候補化合物。
ここでバトンの一つは、プロセスケミストたちに渡る。
どんなに優れた効果が期待できる化合物でも、
臨床試験用、さらには商用の原薬としての供給が叶わなければ、
新薬への夢は断たれてしまう。
この壁を乗り越えるために。さらには、
新薬の価値を最大限に高め、いち早く患者さんにお届けするために_。
緻密なプロセス研究が、価値ある医薬品の誕生と供給を支えている。
プロセスケミストとして一つでも多く新薬の実現を。
[ 使 命 ]
原薬にたどりつくまでのより優れたプロセスを確立する。 創薬研究における厳しい選択を生き抜いてきた貴重な医薬品候補化合物
は、さらに、前臨床試験(安全性試験)・臨床試験・承認申請という開発の過
程を経て、初めて新薬として世に出ることができる。その最初の難関が、前臨
床試験や初回臨床試験用の原薬(医薬品候補化合物)づくりに向けた新しい
プロセスの確立だ。候補化合物は、ミリグラム単位で合成された特殊な物質
であることも多く、スケールアップ(量産化)は決して容易ではない。渡邊は
この課題を担う研究者の1人として新規合成ルートの発案、新規反応の開発、
合成法や反応条件の最適化などを行って、開発の前進を支えている。
「単に量を拡大するだけでなく、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及
び品質管理の基準)に則り、高品質に、安全に、安定的に、効率的に、環境負
荷も少なく原薬をつくることのできるプロセスを確立することが、われわれの
使命です。さらに、いち早く患者さんにお届けするために、研究開発期間の短
縮化や関連部門との連携強化にも力を入れています」。
[ 挑 戦 ]
入社3年目にして、限られた期間内に、価値ある新プロセスの確立に成功。 先輩のもとでいくつかのプロジェクトを手掛けた後の入社3年目のこと。全
社方針として、候補化合物選定から臨床試験実施申請へと至る前臨床研究の
最適化・期間短縮の取り組みがスタートし、渡邊の部署でも“まず前臨床試
験用に少量の製造プロセスを確立し、次に初回臨床試験用へとスケールアッ
プしてGMP対応も図る”という従来の方式が、ワンステップに短縮されるこ
とになった。渡邊は、この新方式が適用される新たなプロジェクトの一つ、中
枢系医薬品候補化合物のプロセス構築プロジェクトの主担当に、自ら名乗りを
上げた。初の主担当で、わずか数カ月で初回臨床試験に向けた製造法を確立
する_。困難は覚悟のうえだ。高いハードルを越えることで大きく成長したい
という想いからの選択だった。
テーマ自体も高度だった。特に、短工程での合成を実現すべく採用した最
新の有機合成技術に必要な金属触媒の除去が難しい。試行錯誤に割ける時間
はわずかだ。必死で周囲の意見を聞き、過去の文献を調べ上げ、半ば嗅覚に
よってこれはと思う方法を見出したが、ラボスケールでの成功例しか報告され
ていなかった。そこで、比較的容易だが難点もある方法で成功のめどをつけ
た後に、その方法での量産を試してみることに。
「幸いにもこれが大成功。成否の見極めをつける実験を優先させるなど効率
的な研究を心がけたことで、期間も目標通りに短縮できました。上司や先輩の
助言にもどれだけ救われたことか。別のケースにも応用できる再現性のある
プロセスを短期間に確立し、大きな達成感を味わうことができました」。
[ やりがい ]
自ら考えて行動・提案し、医療に貢献できることが、大きな喜び。 やる気を持って仕事に臨んでいれば、年次に関わらず大きな仕事を任せ挑
戦させてくれる。それが、タケダという職場における渡邊の実感だ。
「プロセス研究においては自らの裁量で決定することが多いのでプレッシャー
も感じますが、その分自ら考えて行動し、提案する場面も多いので、常に高い
モチベーションと責任感を持って仕事に取り組めています」。
もちろん、医薬品の開発を通じ、医療に貢献できるという喜びもある。
「製薬の仕事を志すようになったきっかけは家族の病気。病に苦しむ人の役に
立ちたいという想いが、厳しかった大学院での研究の支えでもありました。今
も、仕事を通じ医療の進歩に貢献したいという想いが、数々の難題を乗り越え
ていくための力となっています」。
[ 夢・目標 ]
タケダイズムの精神を大切に広く世界の医療に貢献できる人材に。 少しでも病に苦しむ人の役に立ちたいという想いでタケダに入社したという
渡邊。夢に描くのは、一つでも多くの新薬を世に出すことだ。
「高い倫理性と意識を持った製薬企業のプロのプロセスケミストとして、患者
さんや社会に対して誠実であり続けたいと思っています。そのためにも、 “誠
実=公正・正直・不屈”と表現されるタケダイズムの精神に則って日々の業
務に取り組んでいきます」。
視野や考え方、活躍の場を世界へと広げていくことも今後の課題だ。
「タケダはベスト・イン・クラスの製薬企業になるためにグローバル化が進
み、日々の業務を通じてグローバルなものの考え方や視点が養える環境になっ
ています。プロセスケミストとしての能力を高めるとともに、グローバルで活
躍できる人材へと成長していきたいと考えています」。
医薬品開発
海外関係部門
上司・チームメンバー
製剤技術研究所
開発分析研究所
渡邊 喬 研究職(CMC研究) 製薬研究所 工学研究科修了 2010年入社
Q2学生時代で、いい経験だったと思うことは?
アルバイトを通じて、年代・バックグラウンドの異なる多くの人と出会えたことです。
Q1学生時代の研究テーマは?
「電解酸化によるデンドリマーの合成研究」です。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
家族とゆっくり過ごします。今は妻と2人の子どもの4人家族です。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
定められた業務時間内で効率的に仕事をして高い研究成果を上げていることに驚きました。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
出身高校の近くに事業所があり、身近な存在だったことと、最も自分を成長させることができる企業だと感じられたことです。
渡邊の仕事ネットワーク
Questions & Answers
製造受託機関
医薬研究本部
10 TAKEDA R&D Professional File 11TAKEDA R&D Professional File
医薬品候補化合物が見つかると、高品質で安価な製剤としての
生産を目指し、プロセス研究がスタートする。
これと並行して、化合物を安定化し
吸収を高めたり持続させたりする処方などを追求して、
患者さんに価値を提供する製剤の開発を行うのが、
製剤技術の担当者たちだ。品質管理が難しいたんぱく質などの
高分子を主成分とする抗体医薬やワクチンの隆盛が予想される今、
製剤にも、新たな技術が求められている。
世界的視野に立ち、これからの製剤技術を追求。
[ 使 命 ]
患者さんに対しての価値を提供する製剤の開発を担って。 佐藤が所属する製剤の技術研究を行う部署には、長期安定化、徐放化、吸
収改善、ターゲッティングなどを実現する製剤化(処方化)を追求して医薬品
候補化合物の価値を高め、臨床試験用の注射剤に仕上げるという使命があ
る。これに付随して、申請書類の作成や、商用生産部門への技術移管など、幅
広い役割もカバー。将来を見据えて、シングルユース技術、高活性包装、デ
バイス開発、凍結乾燥工程の改良、抗体の高濃度化など、先端的な製剤技術
の開発にも取り組んでいる。
佐藤自身は現在、炎症をターゲットとした製剤、がんをターゲットとした製剤
の開発などを担当。
「通常は室温で3年間安定が持続する注射剤を目指して適切な処方を追求し
ます。皮下投与の注射剤開発においては、どのような処方が効果的に体内に
吸収されるかの確認なども行います。また、患者さんが自ら投薬する皮下注
射剤の開発においては、使いやすい投与デバイスの設計開発も行います」。
将来に向けての製剤技術開発にも積極的に参画し、シングルユース技術、凍
結乾燥工程の改良、抗体の高濃度化の3テーマに関わっている。
[ 挑 戦 ]
世界にも参考となる例が見当たらない先端的なプロジェクトで好結果が。 製剤技術研究所では、高活性化合物に特化した注射剤製造ラインへのシン
グルユース技術導入を決定してからプロジェクトが組まれ、佐藤もそこへアサ
インされた。シングルユース技術の導入は、原薬製造工程なら国内にも事例
があるが、製剤化工程では海外に数例ある程度。極めて先端的な取り組みだ。
通常、一つのラインで様々な薬液を製剤する場合、切り替えの際に前の薬液
が残存するリスクが生じる。特に高活性化合物はごく微量残っても影響が大き
いが、完璧に洗浄することも、それを確認することも難しい。タンク、チューブ、
フィルターなど液が接する部分を使い捨てとするシングルユース技術なら、こ
の難題を解決できる。薬液のロスも削減されるので、特に高価な抗体医薬な
どのコストダウンにつながる技術としても重要だ。
「チャレンジングだったのは、参考となる先例のないゼロからの開発だったこ
と。確立されたレギュレーションもなく、事前にあらゆることを想定し問題点を
つぶしていくのはとても大変でしたが、やり遂げた喜びも特大でした」。
設備メーカーの内部事情により、アメリカの生産拠点からの納入がぎりぎり
までずれ込んだにも関わらず、関連部門の組織横断的な協力に支えられ、試
験運転に成功。予定通り、佐藤が開発を担当してきた臨床試験用注射剤の製
造が始まっている。
「自分が考えたことがそのまま形になるというかつてない経験ができて、大き
な自信になりました。また次もと、意欲がわきます」。
[ やりがい ]
グローバルな協力体制を活かし優れた薬をいちはやく患者さんのもとへ。 佐藤は入社4年目から海外学会への参加や海外出張を重ね、6年目にはデ
ンマークの関連会社への3か月にわたる長期出張も経験した。
「若くして海外を経験することで、世界第一線の研究者たちからたくさんの刺
激を受けることができるのは、タケダの研究開発職の大きな魅力です」。
国内にいても、参画するプロジェクトの大半は海外との連携で進められる。日々
英語でメールのやりとりをするのはもちろんのこと、電話会議も頻繁だ。
「グローバルな協力体制を活かして、高品質で価値を高めた薬をいちはやく
患者さんのもとに届けて喜んでいただくことができます。プロジェクトリーダー
を通じて臨床試験の経過なども把握できるので、開発中も常に、“この薬を待っ
ておられる患者さん”の存在を感じ、励みにしています」。
[ 夢・目標 ]
周囲と共に成長を続け、一丸となってイノベーションの創出を。 今後の課題の一つは、シングルユース技術における貴重な経験をより大き
く活かしていくことだ。学会でもシングルユース技術への関心が高まり、社内
でも複数の部署で導入に向けた動きがある。佐藤の身辺でも、自身は参画し
ない次の注射剤のプロジェクトで導入が検討されている。
「経験を踏まえた適切なアドバイスなどが行えればと思っています」。
今後、新技術の導入や開発に積極的に挑んでいこうという想いも強まった。
「周囲と共に成長を続け、タケダらしい結束力を発揮して、より良い価値のあ
る薬やインパクトのあるイノベーションを生み出したいですね」。
そして患者さんに喜んでいただくこと。仕事への想いは全てそこへとつながっ
ている。
医薬品開発
佐藤 智美 研究職(CMC研究) 人間文化研究科修了 2007年入社
Q2学生時代で、いい経験だったと思うことは?
水泳、舞台鑑賞、海外旅行です。
Q1学生時代の研究テーマは?
「たんぱく質の構造解析」です。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
旅行、舞台鑑賞。水曜日はフレックス制度を活かして定時より早く退社し、ジムでヨガなどを楽しんでいます。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
海外との業務の多さと、その機会を早くからもらえることです。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
先輩方の仕事ぶりに魅力を感じるとともに、様々なチャレンジングな案件に取り組め、成長できる会社だと感じたからです。
佐藤の仕事ネットワーク
Questions & Answers
海外グループ会社
原薬部門メンバー
治験薬製造委託先
技術検討メンバー
12 TAKEDA R&D Professional File 13TAKEDA R&D Professional File
研究・開発の各担当セクションが進めてきた
臨床試験用原薬・製剤(治験薬)の生産・供給は、
治験フェーズの進行や、商用化の決定などにより、
さらなる量産化の段階を迎える。商用生産の拠点には、
そうした新品目の生産立ち上げや既存品目のプロセス改善を担う、
プロセスケミスト達の姿がある。彼らは、
設備オペレーションを担う製造のプロフェッショナル達と共に、
決して終わることのない高品質・高効率生産の追求を続けている。
製薬の要ともいうべき原薬供給の担い手として。
[ 使 命 ]
高品質な原薬を低コストで、安定的に製造できる体制を築くこと。 医薬品の有効成分である原薬の製造を支援し、タイムリーに出品して製剤
工程へと引き継ぐ。吉岡の所属部門は、この使命達成に向け、様々な動きを
展開している。主な役割は、“製造プロセス開発、現場の製造支援、委託先と
のコミュニケーションなど”と、“製造設備の設計、制御ソフトの開発など”。こ
れを2グループで分担、吉岡自身は前者の役割を担うグループの一員だ。
「今は、ある原薬の新規製造法の立上げ検討を担当しています。実験レベル
での最適化検討を担当するほか、生産計画の調整や申請に関する戦略の立案
等、広範囲な業務に関与しています。最終的に、堅牢な製造体制を構築する
と共に、世界各国での迅速な承認取得につなげる計画です」。
さらに、年々新しくなるガイドラインに対応しながら原薬製造における品質
システムを改革していくプロジェクトのマネジメントも任されている。
「高品質な原薬を低コストで安定的に製造できる体制を築くことが私の使
命。そのために、積極的に新しい課題に取り組んでいます」。
[ 挑 戦 ]
入社4年目で大仕事を一任され、やり遂げたことで、大きく成長。 吉岡は入社以来一貫して“1ランク上の視点で業務を行うよう日々研鑽して
準備を怠らないこと”を意識するとともに、“任された仕事に食らいつき、それ
を乗り越えることで大きな成長を遂げること”を自らに課してきた。そんな吉
岡が今振り返ってみてまさにチャレンジングだったと思う仕事の筆頭が、入社
4年目にフェーズ3治験原薬の製造に主担当として臨んだ際の、一連の業務
だ。これには、プロセスの理解、生産時のGMP(適正製造規範)管理の遵守、
原材料の調達、生産スケジュールのハンドリング、プロジェクトマネジメントな
どの能力が求められ、入社4年目の吉岡にとっては困難づくめの内容だった。
しかもこの原薬は特殊な設備機器でしか製造できない高活性原薬であった。
「通常なら1ランク上の職位の社員が担うような大仕事を任され、スケジュー
ルもタイトだったので、気合いが入りました。製造プロセスに関する報告書や
ガイドラインなどを読み漁り勉強するとともに、それまでに製造中のトラブル
対応で学んでいた計画通りにいかない場合の対応策もフル活用。全力で万全
を尽くし切ることで、幸いにも重責を全うすることができました」。
ほぼ1年間の苦闘が実を結び、無事できあがった原薬がCMC研究部門へ
と運ばれるのをチーム全員で見送った時には、熱いものがこみあげた。
[ やりがい ]
広く取り組めるから、周囲が見える。どんどん任されるから、ますます燃える。 吉岡は、常に幅広く知的好奇心を働かせるタイプだ。そのため、現在の仕
事が広範囲に及んでいることには、特に大きなやりがいを感じている。
「本業である製造プロセスの開発・支援業務はもちろんのこと、品質管理、薬
事、サプライチェーンに至るまで、多岐にわたる視点からプロジェクトをリード
することが求められます。すべてをしっかり理解し、正しく働きかけられるよう
努力することで、日々自分の力を広げ高めていくことができます」。
さらに、実際に動き回るフィールドも、大きく世界へと広がっている。
「入社2年目にアメリカのベンチャー企業が手掛けた医薬品の製造に関わり、
サンディエゴまで技術を学びに行くチャンスに恵まれました。海外からの導入
品を国内で製造していこうという流れがあるので、今後そういうチャンスはま
すます増えていくと思います。国内外を問わず多様なCMO(製造委託先)と
仕事ができるのも魅力です。年次に関係なく能力次第でどんどん外向きの仕
事も任せてもらえるので、ますます頑張ろうという気持ちになります」。
[ 夢・目標 ]
しっかり経験と実績を積み上げ、将来的にはグローバルタケダの戦略を描くリーダーに。 吉岡は、担当している医薬品の開発後期から商用に向けての生産におい
て、だれにも負けない経験と実績を積み上げていきたいと考えている。そし
て、それをベースに、将来的にはタケダ全体の戦略を担う部門でグローバル
に活躍できるリーダーを目指すつもりだ。
「製薬企業の一員となり、事業を通じた社会貢献を、私個人としても最大限に
高めていきたいと感じています。そのためにも、より大所高所から仕事に取り
組めるようになることが大切です。仕事のビジネス的な側面も若いうちから明
確に把握しておきたいと思い、入社してすぐ簿記等の資格もとりました」。
この強い向上心と社会貢献への志こそが、吉岡の成長の原動力だ。
医薬品開発
吉岡 朋彦 生産技術職 農学府応用生命化学専攻修了 2009年入社
Q2学生時代で、いい経験だったと思うことは?
人材教育に熱心なシネコンでアルバイトをして、上下関係やチームワーク、顧客視点といった社会人の基礎を学べたことです。
Q1学生時代の研究テーマは?
「固-液2相ハイブリッドの新規ペプチド合成技術の開発」。研究室で引き継がれているテーマで、もう商用化も近いです。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
体力維持のため、週1回10km以上ランニングで汗を流しています。あとは、生まれたばかりの長男の育児です。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
勤務地となった光市が、思ったほど田舎ではなく生活環境も整っていて、交通の便も良かったことです。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
一番重要視していた“自分を伸ばせる環境”という点で、どこよりも勝っていると感じられたことです。
吉岡の仕事ネットワーク
Questions & Answers
海外グループ会社
光工場の関連部門
製薬本部本社機能
CMC研究センター
薬事部
国内外CMO
14 TAKEDA R&D Professional File 15TAKEDA R&D Professional File
どんなに優れた薬も、安全に不安がなく、十分な量を適正な価格で
安定供給できるものでなければ、治療薬としての普及は望めない。
一方、革新的なドラッグデリバリーシステムや
核酸医薬、抗体医薬などの登場もあり、
商用生産における課題は高度化の一途をたどっている。
時代が求める高度な医薬品を世に出し、
欠陥の許されない医薬品製造で世界をリードしていくために、
工業化に向けた設備・技術の追求はますます重要となっている。
世界最高水準の製造設備を構築できる技術者に。
[ 使 命 ]
高品質な医薬品を安定生産できる設備を構築していく。 原薬を錠剤、カプセル、注射剤など医師や患者さんの手に届く最終製品に仕
上げ、高品質な医薬品として安定生産できる設備を構築する。和田の所属部門
は、この使命達成に向けて、様々なプロジェクトを展開している。
和田自身は、入社1年目から注射剤の製造ライン立ち上げプロジェクトにお
ける主担当を経験。続いて、上市済み注射剤のデバイス改良プロジェクトの主
担当も務め、現在は上市済み注射剤の製造ラインを完全刷新するプロジェクト
に参画している。
「注射剤は経口剤よりさらに菌の混入などに対する管理も厳格です。そのた
め、命に直結する製品をお届けするという使命の重大さを常に実感していま
す。どんなときにも投与を受けられる患者さんの視点に立って、“高品質”と“安
定生産”を追求し続けていかなければならないと考えています」。
[ 挑 戦 ]
1年目に海外からの技術移管と設備立ち上げを任され、失敗を乗り越えて任務を達成。 入社1年目の冬、和田は上司に呼ばれた。ガラス容器に充填された最終製
品の形で他社から購入していたがんの注射剤を、原薬で購入し自社で製剤す
る形に改める。ついては、技術移管を受け自社の光工場で製造設備を立ち上
げるプロジェクトの主担当を務めるようにという辞令だった。
導入元が海外だったため、英語力と経験の不足を熱意で補いながらの、全
力チャレンジが始まった。
「導入元との大切な会議で、学生時代にもほとんど経験がなかった英語でのプ
レゼンをしたり、1人でプエルトリコの製造工場に飛び、導入元の技術者や現地
の製造担当者から情報収集を行ったり。不慣れな上にスケジュールが厳しく、関
係各所に助けてもらいながらなんとか初めての商用生産の日を迎えました」。
しかし、そこに大きな試練が待っていた。
「予期していなかった設備トラブルにより充填作業を中止せざるを得ない事態
となり、大量の薬液を廃棄することとなってしまいました。高価な薬液なので
損失も大きく目の前が真っ暗になりました」。
それでも、原因究明と問題解決に向け主担当として全情報を把握し、様々な
意見に耳を傾けながら進むべき方向を決断するという重責を果たし続けた。
「危機的状況のなか、タケダの結束力の真価を知ることができました」。
担当外のメンバーまでが一丸となり、目覚ましい組織力を発揮。最終的には無
事成功にこぎつけることができた。
「みんなと感動を分かち合った瞬間は、今も心に焼きついています。学んだの
は、初動を早くして無理なスケジューリングを避けることの大切さ。2度と同じ
失敗は繰り返しません」。
[ やりがい ]
医薬品の誕生に欠かせない商用生産を担い、医療に使われる最終製品を手掛けられる。 就職に際して、最初は製剤研究を希望していたという和田。
「幼いころから、つらい病気を治してくれる薬に興味があり、自分の手で医薬
品を創り出してみたかった。それができるのは、研究職だけだと思い込んでい
ました。ところが就職活動のなかで、商用生産に直結する生産技術職も、医薬
品の誕生に欠かせない専門性の高い仕事だと知りました。やってみるとまさに
その通りで、大きなやりがいを感じています」。
世界中を対象に、医師や患者さんのもとに届く最終製品の製造を手掛けら
れることも、仕事へのモチベーションを高めているという。
「デバイス改良プロジェクトで注射器の改良に取り組んだ時は、実際に注射器
をご使用いただいている医師の方々から返ってくる声に応える喜びも味わうこ
とができました。目の前の製品が患者さんの命に直結していると思うと、自分
でも思いがけないほど力が湧いてきます」。
[ 夢・目標 ]
成長と組織への貢献を重ね、理想とする技術者に日々近づき続けたい。 和田は現在、あるがん治療薬の製造ラインを完全刷新するビッグプロジェク
トに、専任メンバーの一人として参画。日々新たな課題に挑戦している。
「そんななかで個人的に目標としているのが、開発の経緯を皆で共有するため
の記録を残し、製造部門のナレッジマネジメントに貢献することです」。
自身の成長と組織への貢献に向けた努力の先には、大きな夢がある。
「最先端の技術を結集して世界最高水準の製造設備・システムを構築できる技
術者になりたい。絶対に夢で終わらせてはならないと思っています」。
世界を舞台に活躍できる環境が、若い和田の前進を支えている。
医薬品開発
和田 祐典 生産技術職 薬学研究科修了 2010年入社
Q2学生時代に熱中したことは?
もちろん、卒業できる程度には勉強もしましたが、何よりも、テニスに熱中していました。
Q1学生時代の研究テーマは?
「脂質を輸送するたんぱく質の研究」です。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
会社のサークルでテニスを続けています。上司の手ほどきでゴルフも始めましたし、読書やドライブをして過ごすこともあります。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
若手社員にも非常に重大なテーマが任せてもらえることに驚きました。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
国内トップでグローバル化も目覚ましいタケダなら大きな仕事ができて、自分自身も大きく成長できると感じたからです。
Questions & Answers
CMC研究センター
チームメンバー
製造部門
和田の仕事ネットワーク エンジニアリング部門
16 TAKEDA R&D Professional File 17TAKEDA R&D Professional File
新興国の成長などによって拡大を続ける世界のワクチン市場。
日本においても、新興感染症に対するワクチンの供給確保などが
大きな課題となっている。こうした背景のもと、タケダは2012年に
ワクチンビジネス部を新設。グローバルでの事業強化を
推進している。ワクチンはまだ様々な課題を抱え、
身近なインフルエンザワクチンなどにも改善すべき点は多い。
免疫、製造技術、試験法など多様な分野のスペシャリスト達が、
治療薬としての新たな展開など未来の可能性も見据えつつ、
ワクチンを通じた社会貢献を目指している。
成功体験を起爆剤にワクチンの最先端研究に挑む。
[ 使 命 ]
ワクチンの開発・製造の鍵を握る試験法のスペシャリストとして。 多くの健常者に対して用いられる予防ワクチンは、万一品質不良が出た場
合、社会への影響が大きいことなどから、特に厳正な試験法が求められる。し
かも、試験法には動物や細胞などを用いるバイオアッセイが多用され、含量・
活性などの尺度となる標準品も、多くが生物由来物質であるなどの特殊性が
ある。三成は、ワクチンの製造プロセス研究グループの一員として、こうした
ワクチンの試験法の研究を使命としている。
「現在は、日本の市場にはまだない培養方法の季節性インフルエンザワクチン
の導入開発において、試験法の技術導入、安定性試験、申請業務などを行っ
ています。季節性インフルエンザは年ごとにウイルスの型が変わるので、どの
タイプのウイルスについても確実な試験が行える体制を確立しなければなり
ません。当社で開発中の細胞培養法は、既存のものに比べウイルスの抗原変
異が起きにくいと言われています。安全性、有効性はもちろん、そうしたメリッ
トも立証して、一日も早く日本の市場に届けなければと頑張っています」。
[ 挑 戦 ]
新型インフルエンザワクチンの試験法導入を担い、重圧をはねのけ承認取得に貢献。 三成は他メーカーで動物用ワクチンの開発に取り組むうち、より社会貢献度
の高い人間用の新規ワクチンの開発を手掛けたいと考えるようになり、新天
地をタケダに求めた。ちょうどタケダが米国バクスター社からインフルエンザ
ワクチンの培養技術を導入し、同技術による新型インフルエンザワクチンの共
同開発に取り組もうとしていた矢先のことだった。
「即、新規培養技術の一環をなす試験法の導入担当と決まり、3か月目にはも
うチェコの工場で各種分析法のトレーニングを受けていました」。
初めて挑む分析は難しいながらもおもしろく、約2か月間で技術を吸収し日
本に持ち帰ることができた。しかし、帰国後は、設備機器の導入、検証、他部
門との各種調整など全てをほぼ1人でこなす日が続き不安がふくらんだ。
「国の助成も受けている事業であり、厳しいタイムラインであったことも重圧
でした」。
しかし、修羅場は三成を強くした。周囲の励ましに支えられ、苦手だった自己
主張もできるように。困難な目標に対しては一丸となって立ち向かうタケダの
社風にも、いつしかすっかり溶け込んでいた。
「それにしてもわずか3年で新しい建屋ができ、人の技術レベルも上がって、
本当に承認を取得できたのには驚きました。かつては高過ぎる目標には臆して
しまう性格でしたが、あれ以来、どんなに難しい目標でも、無理だ、ではなく、
こうすれば達成できると前向きに考えられるようになりました」。
[ やりがい ]
頑張れば頑張っただけ、世界の公衆衛生が向上することを、常に念頭に。 新規培養方法による新型インフルエンザワクチンの製造販売承認取得は、
三成に、かつて味わったことのない特別な喜びももたらした。
「これで、新型インフルエンザがいつ日本を襲おうとも、自分が開発に関わっ
たワクチンによって、国民のみなさんの健康を守ることができるわけです。そ
の事実を思うと、何とも言えないうれしさがこみあげました」。
その後担当してきた季節性インフルエンザワクチンも、広く全国民の健康
への貢献につなげるために日々努力している。
「将来的には、発展途上国の子ども達を怖い伝染病から守るような活動にもぜ
ひ関わっていきたいですね。海外のワクチン研究者との交流機会も多く、志も
自然に世界へと広がっていきます。自分の仕事が世界の公衆衛生に貢献して
いける仕事だというのは、本当にありがたいことだと思っています」。
[ 夢・目標 ]
どんどん新しい分野に挑戦を重ね、日本発の技術でワクチンビジネスの発展を。 タケダは、ワクチンビジネスを今後ますます加速していこうとしている。目
標は、2020年に世界のトップクラスに食い込むことだ。
「その時には、光工場がメインの生産拠点となります。われわれ製造プロセス
の分野からも日本発の技術を発信できるようにならなければなりません」。
そのためには、三成自身にも、大きな成長が求められる。
「試験法だけでなく培養法も手掛けてみたい。新しい技術を使ったワクチン開
発にもぜひ挑戦してみたいと思います。とにかく積極的に。前向きな努力が評
価されるタケダで、必ず夢を現実に変えてゆきたいと願っています」。
医薬品開発
三成 健二 研究職(ワクチン) 獣医学部卒 2010年入社
Q2学生時代でいい経験だったと思うことは?
タイで過ごした1か月。NPOのプログラムで現地の子ども達と交流した後、スラム街も含めてあちこちを放浪しました。
Q1学生時代の研究テーマは?
「高病原性鳥インフルエンザウイルスの病原性解析」。指導してくださった恩師は、かつてタケダに在籍されていました。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
3歳の一人娘と絵本を読んだり公園に行ったり。娘は私を父親とは思っておらず、まるで兄妹のような関係です。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
掲げた目標を推進する力が目を見張るほど大きいこと。目標が高ければ高いほど、結束力も推進力も強まる感じです。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
優秀な人材が集う中で成長していきたいと思ったから。大学の恩師がかつて所属された企業であることにも魅かれました。
Questions & Answers
海外パートナー
チームメンバー
製薬本部
三成の仕事ネットワーク国家研究機関
18 TAKEDA R&D Professional File 19TAKEDA R&D Professional File
新薬を世に出すために、避けては通れない
厚生労働省への製造販売承認申請。
まず、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に膨大な量の申請資料を
提出して、厳しい審査を通らなければ、承認は得られない。
PMDAからの広範かつ専門的な照会への迅速な対応が、
1日も早い承認の実現に向けての、大きな鍵を握っている。
臨床試験を終えてからも立ちはだかる、上市に向けての多くの関門。
ゴールを目指して、スペシャリスト達の活躍が続く。
公衆衛生に寄与するワクチン開発の一翼を担う。
[ 使 命 ]
強固な開発体制を整えて、日本におけるワクチンの開発に推進力を。 ワクチン開発における日本の遅れを挽回し、さらには日本発のワクチンを生
み出して世界の公衆衛生に貢献していくために、タケダが今、大きな力を注い
でいるワクチンビジネス。三家は、その推進を担うワクチンビジネス部門のう
ち、日本国内でのワクチンの臨床開発に関わる評価、企画立案、資料作成な
どを担うグループに所属。進行中の複数のワクチンプロジェクトにおいて、メ
ディカルライター及びプロジェクトリーダーのサポート役を務めている。
「担当するプロジェクトにおいて1日も早く製造販売承認を行い、かつ承認に
もっていくことがグループとしての重要な使命です。それを果たすためにも、
また、今後ワクチンビジネスを円滑に進めていくためにも、国内のワクチン開
発を長期間にわたってストップしていたことによるナレッジの不足や、体制の
未熟さなどを乗り越えていかなければなりません。それらも、現時点での大切
な使命だと考えています」。
[ 挑 戦 ]
個人としては初のワクチンの製造販売承認申請に、自らの意志で挑戦。 三家は、かつて製薬企業から臨床試験の実施を受託するCROと呼ばれる
機関の一つで、臨床試験実施の進行を担う開発モニターとして活躍。その後
タケダへ転職を果たした。以来、タケダ内部の開発モニターとして様々なプロ
ジェクトに参画。乳幼児に多い疾患の予防に役立つワクチンの臨床試験も担
当し、それが終了した段階で、続く承認申請作業の担当を希望して現在の部
署に異動した。
「開発モニターを長年やってきて、それ以外の仕事にもチャレンジしてみたく
なったのが一番の理由です。ワクチンビジネスを再構築していこうという、始
まったばかりのタケダのチャレンジに参加できるのも魅力でした」。
臨床試験が完了して試験成績が確定したのがある年の5月末。そこから9
月末の申請までの4か月間、初めての申請資料の作成に必死で取り組んだ。
「社内には古いナレッジしかなく、周囲にもワクチンの申請を経験した人がい
ない中、自分の考えで進められるのがとても刺激的でしたね」。
プロジェクトリーダーはもちろん、統計や薬事など関連部門のレビューを何
度も重ね、スムーズな承認につながる資料を追求。予定通り9月末の申請にこ
ぎつけた。
「自分が手掛けた臨床試験のデータを資料化することができ、モニター時代に
臨床試験に際して医療機関に遵守をお願いしていたワクチン接種時のルール
は、こういう資料に落とし込むためだったのかと、改めて納得したこともたくさ
んあります。よりよいモニタリングにつながりそうな発見は、今後、モニター
の人たちに伝えていければと思っています」。
[ やりがい ]
乳幼児とその保護者に、よりよいワクチンを届ける仕事には、想像以上のやりがいが。 担当したワクチンの申請を終えてからは、その後のフォローも行いつつ、国
内外でアンメットメディカルニーズが高まっている新たなワクチンの開発プロ
ジェクトに参画。臨床試験成績の資料化から、臨床試験の企画立案へと、仕事
の幅はさらに広がりつつある。どの仕事にも、ワクチンビジネスのノウハウを
ゼロから獲得していくおもしろさがあり、ワクチンビジネスを通じたタケダの
社会貢献に、直接参加できている実感があると目を輝かせる三家。
「海外と比較すると10~20年のギャップがあると言われる日本の市場にどん
どん新しいワクチンを届け、特に乳幼児の病気を減らしていく仕事ができるの
はすばらしいこと。もともとすでにあるレールの上を堅実に走っていくタイプ
だったのに、今は新たなレールを敷いていく楽しさに夢中です」。
[ 夢・目標 ]
まずは日本での感染予防。さらに治療ワクチンの実現や、世界での更なる公衆衛生向上も目指したい。 ワクチンの用途は、今はまだ予防が中心だが、その可能性は治療へと大き
く広がっている。また、医療体制が十分に整っていない発展途上国において、
ワクチンによる感染予防を普及させていくことは、とても重要だ。
「まず、日本にまだ存在しないアンメットメディカルニーズの高いワクチンを海
外から導入するプロジェクトにどんどん関わり、より有効性、安全性の高いワ
クチンを届けていきたい。さらに、治療薬としてのワクチンや、予防ワクチン
の更なるグローバルな普及にも目を向け、そうした分野でも将来貢献できる
ように、開発担当者としての幅を広げていきたいと思っています」。
そのためにも、多忙さに押し流されることなく、外部の先生方や社内の専門家
の話に耳を傾け、ワクチンへの理解を深めるとともに、グローバル臨床開発に
臨んで必須となる英語力の強化にも取り組んでいく。
医薬品開発
三家 野土香 クリニカルサイエンス(ワクチン) 生活環境学部卒 2006年入社
Q2学生時代でいい経験だったと思うことは?
ゼミでの活動で、CMプロデューサーや美術館館長など様々なジャンルの“大人”に出会い、協働の楽しさを知ったことです。
Q1学生時代の研究テーマは?
食物、建築、被服以外の生活に関わるテーマ全般を扱うゼミで、震災後の街の再興などに実践的に取り組みました。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
週1回5km走っています。また、海外旅行先や会社帰りなどに、友人と食べ歩きをするのも大好きです。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
入社当時はいい意味で伝統ある日本の会社だと感じました。想像以上にチームワークが良かったことに驚きました。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
CROのモニターとして一緒に仕事をするなかで、失敗を恐れずチャレンジできる社風を感じ、強く魅かれました。
Questions & Answers
導入元会社
医薬開発本部関連部門
ワクチンビジネスユニットメンバー
三家の仕事ネットワーク
医師・ワクチン被接種者
20 TAKEDA R&D Professional File 21TAKEDA R&D Professional File
医薬品候補化合物は、非臨床試験で安全性や品質が確かめられた後、
臨床試験を経て、製造販売承認申請、審査、承認へと至る。
こうした医薬品開発の最終段階では、統計のスペシャリスト達が、
臨床試験の計画・立案に関わるとともに、
集まった試験データの統計解析を遂行。
個々のデータを詳細に確認するミクロの目と、
膨大なデータから確かな事実を浮かび上がらせるマクロの目で、
審査に欠かせない、正確で要約された添付資料の作成を支えている。
創薬に、世界規模へと広がる統計解析の視点を。
[ 使 命 ]
統計的観点から臨床試験の計画立案に関わり、集まったデータを正確・迅速に解析。 統計科学は、医薬品候補化合物が人体という複雑多様な対象に対しどのよ
うな作用をもたらすかを、臨床試験のデータによって実証しようとする際に欠
かせないサイエンスだ。たとえば、化合物以外にも影響を及ぼす要因をどの
ように扱うべきか、有効性の裏づけにどれだけの規模の試験が必要かなど、数
多くの判断に、科学的根拠を与えることができる。また、膨大なデータを科学
的、客観的に読み解き、シンプルな解を示すこともできる。
仲家は、そんな統計科学の専門家の一人として、日々、各種医薬品候補化
合物の臨床試験における統計解析業務に取り組んでいる。
「申請に必要とされる分析結果を得るためには、まず、どういうデータをとり、
どう解析するかという計画がしっかりできていることが大切です。もちろん、
集まったデータを正確・迅速に解析するスキルも求められます」。
さらに、近年増加している国際共同治験に際して、統計的な観点からの要
望を海外サイトに発信していく役割も担っている。
「海外での治験結果を日本での承認申請に活用する場合にも、その逆の場合
にも、海外との事前の調整を欠かすことができません。そうしたグローバルで
の連携を深めていくことも、われわれの重要な使命です」。
[ 挑 戦 ]
チーム一丸で解析業務プロセスの効率化に挑み、通常の倍以上の統計解析を遅延なく完了。 ある年、統計グループでは、担当する臨床試験データの解析業務と並行し
て、解析業務プロセスの効率化を推し進めた。
「翌年には、臨床試験が出揃って統計解析へと進むプロジェクトが通常の年度
の倍以上となる見通しでした。もともと、解析業務にはテーマ毎に多くの準備
や確認作業が必要で、解析結果の解釈にも慎重さが求められます。当然、テー
マ数に比例して所要時間が増え、このままだと申請に遅延をきたすことが予想
されました。そこで、従来通りの人員で遅延なく1年間を乗り切るために、事
前に業務プロセスの効率化を進めることになりました。そしてリーダーのもと
で全員が一丸となり、レビューを繰り返しながら、汎用性があり完成度も高い
テンプレートなどを作り上げていったのです」。
準備が整うと、息つく暇もなく翌年の予定していたプロジェクトに突入。仲
家も開発後期にあるテーマを2つ担当し、皆でつくりあげたテンプレートをフ
ル活用しながら、昨年までの業務量を大きく上回る時期においても緻密で質
の高い分析を展開していった。
「全員、驚くほどの集中力でした。結局年末までに、全テーマの分析が遅延な
く完了しました。大きな課題にチームで挑み、成功することの達成感、充実感
を味わえました。また、チームのポテンシャルも大きく高まりました」。
[ やりがい ]
仲間と切磋琢磨して専門性を磨き、医薬品の上市という社会貢献に活かす。 仲家は、専攻する数学の中でも実社会に役立てることができるのが魅力で
統計学を専門として選択。最終的に、最も社会貢献度が高いと感じる製薬企
業を選んだ。
「学んだ統計学が医薬品の上市という社会貢献につながることは大きな喜びで
す。高度な手法や理論を勉強していくことで開発をスピードアップして、価値
ある新薬を少しでも早く患者さんのもとにお届けすることも可能です」。
タケダ特有の環境から生まれるやりがいも、日々実感しているという。
「国内外を問わずメンバーが個性的で、高い専門性を持って仕事に情熱を傾け
ています。このため周囲から常に刺激を受けることができます」。
[ 夢・目標 ]
広がり始めた海外とのつながりを大切に、海外派遣などのチャンスをつかんで成長を。 仲家が現在担当している自己免疫疾患や炎症性疾患領域の臨床試験では、
国際共同治験が計画されている。また、臨床試験とは別に、国内外の膨大な
医療データから副作用のシグナル検知など価値ある情報の獲得を目指すタス
クにも参画し、海外の統計スペシャリスト達との交流が深まっている。
「現状ではまだ英語でのコミュニケーションに苦戦しています。タケダでは英
語力が一定のレベルに到達すれば海外への短期派遣などのチャンスもつかめ
るので、近い将来海外へと飛び出し、様々な経験を積めるように頑張りたい。
そして、国や地域に適した創薬をリードしていける国際的視野も備えたスペ
シャリストに成長したいと思っています」。
ITの進化に伴い膨大なグローバルデータを日常的に扱うようになって、活躍
の場も大きく世界へと広げつつあるタケダの統計スペシャリスト達_。創薬を
加速する新しい力として、周囲の期待は高まるばかりだ。
医薬品開発
仲家 諒 臨床開発職(統計解析) 数理学府卒 2009年入社
Q2学生時代に熱中したことは?
様々な飲食関連のアルバイトです。笑顔などお客さまの反応が、仕事のモチベーションになることを知りました。
Q1学生時代の研究テーマは?
「非線形回帰モデルにおける縮小推定量の適用」です。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
2人の子どもと過ごすことが多いですが、バドミントンを学生時代から続けており、現在会社のサークルに参加しています。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
今はなくなりましたが、入社当初は始業と終業ベル時に朝礼・終礼があって、案外古風なところがあるなと思いました。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
母国の繁栄に寄与できる内資企業でありながら、海外展開が盛んでグローバルに働ける点に魅力を感じました。
Questions & Answers
仲家の仕事ネットワーク
海外グループ会社
グループメンバー
開発関連部門
市販後関連部門
22 TAKEDA R&D Professional File 23TAKEDA R&D Professional File
臨床企画部門によって立案された臨床試験は、
医師や医療機関の理解と協力のもと、
計画通り厳正に進めることが求められる。ここで、
医師や医療機関とタケダをつなぐ架け橋となり、
外部の協力も仰ぎながら、臨床試験のスムーズな進行を図るのが、
開発モニターと呼ばれるメンバー達だ。
数々のまだ満たされていない医薬品ニーズに応えていくために、
今も、世界各所で様々な臨床試験が進められている。
グローバル臨床開発体制の強化を支えたい。
[ 使 命 ]
上市まであと一歩。待ち望まれる新薬を少しでも早く医師と患者さんのもとへ。 開発モニターの使命は、臨床試験の進捗を管理するとともに、医師や医療
機関スタッフに法令や治験実施計画の規定にそった治験の遂行を求め、治験
データを正確に収集することだ。中西は現在、中枢神経系の治療薬の第3相
臨床試験において、こうした開発モニターとしての使命を担うとともに、サブ
リーダーの1人として各種とりまとめ業務も担当している。
「臨床試験においては、モニター業務の一部を委託するCROのほか、検体検
査を委託する検査会社や、検査データの取り扱いを委託するシステム会社な
ど、様々な社外パートナーの協力が必要です。私は、サブリーダーとして、検
査会社やシステム会社、医療機関紹介業者などの窓口を担当しています」。
チームが力を合わせ、社外のリソースも活用しつつ、円滑に臨床試験を推
進すること。中西たちの使命は、待ち望まれている新薬を一日でも早く患者さ
んのもとにお届けすることへと直結している。
[ 挑 戦 ]
希少な難病に対する消化器系治療薬の第3相試験立ち上げで、悩み苦しみながら、医師との信頼関係を構築。 ある年の5月、中西は、米国サンディエゴで開催された消化器関連学会で、
治療の難しい消化器系希少疾患の治療薬の、同国での第3相臨床試験結果
発表に、会場がどよめくのを聞いた。タケダが統合したミレニアム社が、統合
前から欧米での開発を推進。中西は、統合後にスタートした日本での第1相
試験の担当となり、この学会に参加する機会を得たのだった。
「世界中から集まった先生方の予想以上の反応に、この薬がいかに医師と患
者さん達に待たれている薬であるかを実感できました」。
その後、日本での開発は順調に進んだが、第3相試験の立ち上げにおいて、
思わぬ困難が待ち受けていた。臨床試験計画書の初期案に対し、専門医から
複数の疑問の声が上がったのだ。
「タケダにとって今回のケースのような希少な難病に対する消化器系治療薬
の国内での開発はこれが初めて。私たちモニターが先生方との関係をゼロか
ら築き上げ、さらに企画部門に臨床現場の実情を伝えて、計画を練り直しても
らうところから始めなければなりませんでした」。
批判的な医師との間に対話の突破口を開くのは容易ではなかったが、疾患そ
のものについて猛勉強し、自分達なりに患者さんの治療に少しでも役立ちた
いと願っていることを粘り強く伝えるうちに、少しずつ状況は変わっていった。
「最後は、臨床試験の進め方について親身にアドバイスいただけるまでになり
ました。患者さんに対する想いという点では、権威と言われる先生方も自分た
ちも同じなんだ。初めて、心からそう感じることができました」。
[ やりがい ]
国を越え力を合わせて、求められている薬の実現に取り組める、数々のチャンスが。 困難を克服し、第3相試験の立ち上げを終えた中西は、冒頭でも触れた中
枢神経系治療薬の第3相試験に取り組んでいる。
「以前取り組んだ希少疾患の消化器系治療薬の取り組みで、製薬企業は本当
に医師や患者さんたちのお役に立つことができるのだと実感できたことは大
きな収穫でした。タケダは今後ますますアンメットメディカルニーズに応えら
れる薬を手掛けていこうとしているので、多様な領域に、そうしたやりがいあ
る開発のチャンスが広がっています」。
領域も多様なら、チームメンバーも多様だ。タケダで医薬品開発一筋にき
た人、逆に様々な部門を経験してきた人、一度やめて海外で経験を積んで戻っ
た人など、それぞれにバックグラウンドの違う個性的なメンバーばかり。
「しかもエネルギッシュで魅力的なスペシャリストぞろいなので、いつも刺激
を受け、自分も負けずに頑張ろうと向上心がわきます」。
海外の開発部門との情報共有や連携が進み、患者さんへの貢献に向けてグ
ローバルな結束感が高まっていることも、中西のやる気に拍車をかけている。
[ 夢・目標 ]
開発モニターの視点と経験を活かし、グローバル開発になくてはならない存在を目指して。 今、中西が痛感しているのは、グローバル開発における課題の多さだ。
「たとえば、社外パートナーの探索も世界的視野で行う必要があります。また、
日本で採血した検体を海外の開発拠点に速く安く確実に届けるデリバリー体制
の確立や、海外のデータを国内の申請資料に適切に活用するためのノウハウ
の蓄積なども喫緊の課題です。これまでに培ってきたモニターの視点や経験を
活かしながら、そうした新たな課題に取り組んでいきたい。それが将来的に、
日本発の薬のグローバル開発に携わることへとつながっていけば最高です」。
医薬品開発
中西 晶子 臨床開発職(モニター職) 医学系研究科修了 2008年入社
Q2学生時代でいい経験だったと思うことは?
アジアの国々を旅して、知識ではなく経験として、自分たちとは全く価値観の異なる世界の存在を知ることができたことです。
Q1学生時代の研究テーマは?
「細胞内寄生菌のリンパ球への感染機構の解明」です。
Q5オフタイムの主な過ごし方は?
臨床試験を終えるとまとまって休めるので年 1回ぐらいは海外へ行きます。ふだんはスポーツ観戦や買い物で気分転換しています。
Q4入社後、驚いたこと・意外だったことは?
登山家、選手級のマラソンランナー、電車・飛行機マニアなど、仕事以外のもう一つの顔を持つ人が多いことです。
Q3タケダを選んだ一番の理由は?
開発モニター職を志望できることに加えて、タケダイズムに掲げる“誠実”という言葉が自分にとてもしっくりきたからです。
Questions & Answers
中西の仕事ネットワーク
社外パートナー
チームメンバー
他部署メンバー
医療機関
24 TAKEDA R&D Professional File 25TAKEDA R&D Professional File
クローズアップ
大阪十三研究所とつくば研究所を統合して生まれた湘南研究所は、研究開
発プロセスの初期である創薬ターゲットの探索、候補化合物選定から上市
までの非臨床研究に取り組んでいる。現在、約1200名の研究者が結集し、
最先端の機器を備えた研究環境を生かして、次世代の創薬へとつながる未
知の領域の開拓に取り組んでいる。タケダはこの施設をグローバルリサー
チハブとしてフル活用しながら、オープン・イノベーション推進拠点として
も高度に機能させていく。また社外との共同研究施設として「インキュベー
ションラボ」を設けて、アカデミアなどから同じ創薬マインドを持つ人材を
集めることで、外部研究機構との精緻なネットワークづくりを進めている。
湘南研究所[神奈川県 藤沢市・鎌倉市]
タケダの薬づくりは1915年にこの大阪工場から始まる。1914年に勃発
した第一次世界大戦によって西洋医薬品の輸入が困難となり、国内での自
家生産が必要となった。5代目武田長兵衞はこれに応えて大阪・十三の地
に製造工場を建設。現在は注射剤を主力とし、固形製剤および治験薬の工
場としての役割も担っている。また、敷地内には製造部門のほか、CMC研
究棟、環境安全管理室、一般用医薬品の研究棟などの各部門に加え、多く
の関係会社がある。
大阪工場[大阪府 大阪市]
四季折々の変化を見せる美しい海と山並みに囲まれた光工場は、終戦直
後の1946年、悪化した衛生状況の中で、医薬品を通じて日本の復興に
寄与することと将来の発展に備えるため、旧海軍工廠跡地に建設。以降、
医薬品原薬、医薬品製剤および生物学的製剤(ワクチン)を主体に高度な
生産体制を築き、高品質の医薬品を世界に安定供給するという使命のも
と、タケダのグローバル生産体制の中核を担う存在としてさらなる飛躍を
目指す。
「グローバル人材の獲得・育成」を中期成長戦
略における重要方針のひとつとするタケダでは、
多様な人材の採用を積極的に進めるとともに、グ
ローバルに活躍する人材の育成についても力を
注いでいる。さらに研究開発部門については「機
能横断的育成体系の確立」「キャリアのデザイン
や実現サポート」「OJTの強化/徹底」「Off-JT
の整備」の4つの施策を重点的に行い、研究者
の育成機会を増やすことで、創薬イノベーション
のさらなる推進を図る。
研究者が所内で自然を身近に感じ取り、発想力を高めて課題に取り組める
よう、リフレッシュ環境を整備し、同時に、社内産業医・健康管理スタッフ
が常駐するクリニックを設けて、個々の健康管理をサポートしている。さら
に、“多彩な知の融合”に欠かせないダイバーシティ推進の一環として、多
様な働き方の支援に力を注いでいる。たとえば、小さな子どもを持つ研究
者が安心して研究に打ち込めるように、所内保育施設「タケダキッズ」を開
設。また、育児の負担が女性に偏ることのないよう、男性社員も育児に参
加しやすい環境づくりを全社的に進めている。
1970年より環境保全活動を継続している タケダでは、「武田薬品グルー
プ環境自主行動計画」において地球温暖化対策や廃棄物削減などの中長期
目標値を定め、年度毎に目標の進捗状況を把握。また、事業が環境に与え
る影響を定量的に把握するべく、国内外グループを対象に2012年度から
「 LIME*」による環境影響評価を実施し、グローバルでの環境負荷削減に
取り組んでいる。「森の中の研究所」をコンセプトに設計された湘南研究所
は「国土交通省 平成21年度第1回住宅・建築物省CO2推進モデル事業」
に選定された。
*Life-cycle impact assessment Method based on Endpoint modeling: 日本の国家プロジェクトとして開発された環境影響評価法。
光工場[山口県 光市]
ワーク・ライフ・バランスの支援 長期的な環境保全活動
人材育成・サポート体制の強化
タケダキッズ
国内拠点紹介 働く環境
2013年度国内外グループのCO2排出量(2005年度比)
21%削減
2013年度国内グループの産業廃棄物最終処分量(2010年度比)
26%削減
R&Dの組織能力強化のために、部門を越えた育成体系を構築・運用する。
機能横断的育成体系の確立
面談等を通じて個人の方向性やキャリア目標実現の支援を行う。
キャリアのデザインや実現サポート
off-JTでは知識・スキルの修得やマインドセットの変革のために、有効な研修を企画・実施する。
off-JTの整備
OJTの意義や重要性の理解を促し、チーム・組織内での個々の育成をサポートする。
OJTの強化/徹底
育成体系の充実サポート体制の強化
R&Dにおける4つの重点施策
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