tcfd提言に沿った情報開示(シナリオ分析) ·...
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TAIHEIYO CEMENT REPORT 202064
当社は、2019年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」の提言に賛同を表明しました。
TCFD推奨開示項⽬ 当社の開示内容
〔ガバナンス〕気候関連のリスクと機会に係る組織のガバナンス
● コーポレート・ガバナンス体制(P.45-46)● リスクマネジメント(P.50-52)● CSR経営の推進体制(P.56)● 全社環境マネジメントシステム(P.60-61)
〔戦略〕気候関連のリスクおよび機会がもたらす組織のビジネス・戦略・財務計画への実際のおよび潜在的な影響
● トップコミットメント(P.11-13)● 事業環境の認識(リスクと機会)(P.16-17)● 中期経営計画の進捗とCSR目標(P.20-21)● 特集1 地球温暖化に挑む太平洋セメントグループ(P.24-27)● 事業活動(P.30-41)● TCFD提言への取り組み(P.64-65)
〔リスク管理〕気候関連リスクについて、組織がどのように識別・評価・管理しているか
● リスクマネジメント(P.50-52)● CSR経営の推進体制(P.56)● 全社環境マネジメントシステム(P.60-61)● TCFD提言への取り組み(P.64-65)
〔指標と⽬標〕気候関連のリスクおよび機会を評価・管理する際に使用する指標と目標
● 中期経営計画の進捗とCSR目標(P.16-17)● 2050年を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョン(P.24-25)● 地球温暖化防止(P.62-63)● 環境会計(P.73)● GCCAに基づく主要業績評価指標(KPI)(P.92)
⿎シナリオ設定
気候変動が当社グループに与える事業リスク・機会
について2050 年までのシナリオを設定し、評価およ
び分析を実施しました。気候関連リスクや機会に重要
な影響をもたらす事象をIEA「世界エネルギー見通し
(WEO)」、「エネルギー技術展望(ETP)」やIPCC「第
5 次評価報告書(AR5)」など、科学的な根拠に基づき
開発された気候関連長期シナリオをもとに整理し、当
社事業に影響を及ぼす2つの気候関連シナリオ(4℃、
2℃)を設定しました。その後、各シナリオにおける
ビジネスインパクトを規模および時期(短期・中期・
長期)の側面から分析しました。
当社グループは、気候変動への対応を最重要課題の
一つと捉え、「CSR 目標 2025」に掲げたセメント製造
にかかるCO₂排出削減目標の達成、さらには2050 年
を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョン
に向けた、応用、発展、さらに革新の3つのCO₂排出
削減シナリオの取り組みを推進しています。
また、当社は2019 年 6 月にTCFDの提言に賛同し、
その提言に基づきシナリオ分析をはじめとする気候変
動が当社グループに与える事業リスクと事業機会につ
いて評価、分析を実施しました。
※ 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD): Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略で、気候関連財務情報の開示を促進するため、金融安定理事会(FSB)によって2015 年に設立。2017 年には投資家の適切な投資判断のために、気候関連のリスクと機会がもたらす財務的影響に関する情報開示を促す提言を公表。
TCFD対照表
重要な気候変動関連リスクと機会およびシナリオの選定プロセス
TCFD提言に沿った情報開示(シナリオ分析)
セメントセクターの気候関連リスク・機会の認識に関するベンチマーク調査を実施し、当社に関連するドライバーを洗い出し
STEP1
気候関連のドライバーとその中間的なアウトカム、当社にとってのインプリケーションの因果関係を整理し、キードライバーを特定
STEP2
キードライバー項目ごとに、科学的な根拠に基づき開発・公表された気候関連長期シナリオを参照し、気候関連シナリオを作成
STEP3
各シナリオにおいて、想定されるビジネスインパクトを評価STEP4
評価されたビジネスインパクトのうち、ポジティブ・ネガティブな影響が大きいと判断されたビジネスインパクトへの対応策を検討
STEP5
GRI102-11, 12, 103-2, 3, 201-2
環境への取り組み
区分 ドライバー4℃ 2℃
ネガティブ ポジティブ ネガティブ ポジティブ
気候変動政策
● カーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度)
● CO2排出規制の強化
● リサイクル関連の規制強化● 廃棄物輸出入の規制含む
技術
● CO2回収・利用・貯留技術(CCUS)開発の進展
● セメント新素材開発、低炭素技術の開発競争激化● コンクリートによるCO2回収を考慮した設計法の体系化 ━ ━ ━
人口・経済・地政学
● 新興国における人口の増加、国内における少子高齢化に伴うアーバナイゼーション、コンパクトシティ化
● 電気自動車、自動運転等の普及━ ━
● 石炭火力発電所の稼働低下 ━
社会・インフラ ● リサイクルに対する意識の高まり
平均気温の上昇と降雨パターンの変化
慢性 平均気温・海水温・海水面上昇 ・感染症媒介動物の分布拡大、数増加・都市構造によるヒートアイランド現象の増加・海水面上昇による国土減少
急性 集中豪雨・渇水・台風・洪水の増加
⿎シナリオ概要
65TAIHEIYO CEMENT REPORT 2020
環境マネジメント
資源循環の促進
生物多様性の保全
環境負荷の低減
水資源の適正利用
環境会計
事業の
マテリアルバランス
地球温暖化防止
気候変動政策4℃
先進国では石炭火力発電所の新設がなくなるなど再生可能エネルギーが普及するが、世界全体では石炭火力発電は一定の増加となる。経済活動が重要視されるため、GHG排出制限は緩く、炭素取引価格は低く設定される。セメント生産プロセスの大きな変化は生じず、フライアッシュ、スラグ等のセメント副原料を含む国内外の資源リサイクルはさらに活発化する。
2℃脱炭素社会を目指す気候変動対応政策が展開されるが、その移行は十分ではなく、GHG排出量は緩やかな増加に留まっている。「GHG排出ネットゼロ」を目指して、エネルギーの需要・供給関連の制度改革により、石炭火力発電は減少し、再生可能エネルギーやLNG他の低炭素エネルギーに移行する。炭素税や排出量取引制度等が広がりを見せる。
技術、社会・インフラ4℃
人口増加や都市化、さらには自然災害の激化を背景に世界全体のセメント需要は増加を維持する。セメント製造設備を更新する際には、よりクリンカ量を低減させた混合セメント生産に対応する省エネ設備が導入される。炭素税額や排出権取引価格は比較的低く、事業者のCCUS(CO2回収・有効利用・貯留)導入インセンティブは低く留まる。セメント生産量あたりのプロセス由来CO2排出量※は、現在と同水準である。
2℃カーボンプライシングを含むCO2排出規制の拡大により炭素排出に係るコストが高まる。セメント産業は需要に応じた投資を行う一方で、低CO2セメント生産のための研究や省エネを含む新技術の開発を促進する。また、政府によるCCS
(CO2回収・貯留)への優遇施策により、CCSを備えたセメント生産設備の割合は増加するため、セメント生産量あたりのプロセス由来CO2排出量※は低減していく。
平均気温の上昇と降雨パターンの変化4℃
温室効果ガス排出量は増加傾向が続き、気候変動緩和は困難である。世界の平均気温上昇、海面上昇により、洪水や高潮による浸水、氾濫の被害は増加していく。また、大雨の頻度増加、台風の激化等により世界中で洪水が頻発する。生産体制、供給体制の強化は必要となるが、都市のレジリエンス、国土強靭化のためのセメント、コンクリートの需要は高く推移する。
2℃温室効果ガス排出量は2℃目標を満たす濃度にほぼ沿うように抑制されるが、平均2℃の気温上昇に伴う物理的な影響は避けられず、降雨パターンの変化も進行する。そのため、セメント、コンクリートの生産体制、供給体制の強化は必要となるが、適応策としての島嶼や沿岸低平地を含めて、都市のレジリエンスや国土強靭化対策は緩和策と並んで必要となる。
※ 原料石灰石の脱炭酸による排出であり、エネルギー由来の排出を含まない。
TCFD提言に沿った情報開示(シナリオ分析)
不明 ━ネガティブな影響
大 中 小 ポジティブな影響
大 中 小
特集 事業活動 ガバナンス 環境への取り組み 社会との取り組み環境への取り組み