『the comprehensive pbr guide volume 1: the theory of pbr by allegorithmic』私家訳版

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総合PBR ガイド by Allegorithmic - Vol.1 光と物質:物理ベースレンダリングとシェーディングの理論C カバー:Gaëtan Lassagne , 著者:Wes McDermott

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総合PBRガイド by Allegorithmic - Vol.1 光と物質:物理ベースレンダリングとシェーディングの理論C

カバー:Gaëtan Lassagne , 著者:Wes McDermott

vol. 1 - 物理ベースレンダリングとシェーディングの理論 Page 1

目次 • 光線 - 2

• 吸収と散乱(透明度と透過度) - 3

• 拡散反射と鏡面反射 - 4

• マイクロファセット理論 - 5

• 色 - 6

• BRDF(双方向反射率分布関数) - 6

• エネルギー保存 - 7

• フレネル効果 - 7

• F0(0度におけるフレネル反射率) - 8

• 導体と絶縁体(金属および非金属) - 9

• 金属 - 9

• 非金属 - 10

• リニアスペースレンダリング - 11

• キーとなる要素 - 11

• 参考資料 - 12 技術編集:Cyrille DamezおよびNicolas Wirrmann

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光と物質 物理ベースレンダリングとシェーディングの理論 光とは、それが波と粒子の両方の特性を示しえることからもわかるように、複雑な現象である。その結果、様々なモデルが光の挙動を記述するために作成されてきた。テクスチャアーティストとして、私達はライトレイ(光線)モデルを光と物質の相互作用を記述するモデルとして興味を持っている。私達の仕事は、モノの表面を描写するテクスチャを作成することだ。従って、光線がどのように表面物質と相互作用を行うかを理解することが重要になる。私達が作るテクスチャやマテリアルは、仮想世界内の光と相互作用するので、私達が光の振る舞い方を理解すればするほど、私達が作るテクスチャの見た目もさらによくなることだろう。 本ガイドでは、物理ベースレンダリング(PBR)モデルがその基礎を置いている物理学の元になる理論を説明する。まずは光線からはじめ、PBRのキーとなる要素を定義していく。

光線(Light Rays) ライトレイ(光線)モデルによれば、空気のような均質かつ透明な媒体中において光線はまっすぐな軌跡を描く。また同様にライトレイモデルによれば、不透明な物体などの表面に当たる時や、空気から水のような異なる媒質を通過する時に、光線は予測可能な振る舞いをする。その結果として、ある光線が描く経路を視覚化することが可能になり、その出発点から、それが 終的に熱などの別のエネルギー形態に変化する場所まで辿ることができる。 図01に示すように、あるサーフェイスに当たる光線は入射光と呼ばれ、その当たる角度は入射角と呼ばれる。 光線が入射するのは、2つの媒体間に存在する平らな境界面である。

光線がある表面に当たると、以下のいずれか、もしくは多くの場合、その両方が発生する: 1.光線が表面で反射し、異なる方向へと飛んでいく。これは反射の法則に従うが、その法則によれば、反射角は(反射した光の)入射角に等しい。 2.光線は、まっすぐな線(屈折光)を描きながら、一方の媒体からもう一方の媒体へと通り抜ける。 この時点で、私達は光線が2つの方向に分割すると言っていることになる。すなわち反射と屈折とにである。表面において反射、もしくは屈折した光線は、 終的にはいずれかの媒体によって吸収されることになる。しかし吸収が発生するのは表面ではない。

図01

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不均質な媒体または半透明素材を通過する際、光は吸収されたり散乱される: 1.吸収に関しては、光の強度はそれがエネルギーの他の形態(多くの場合は熱)に変化したぶんに応じて減衰し、光の色はその波長に応じて吸収された光量だけ変化するが、光線の方向は変化しない。 2.散乱に関しては、光線方向はランダムに変化するが、変移の程度は材質に応じる。散乱は光の方向をランダム化するが、その強度は変わらない。「耳」が良い例である。「耳」は薄い(すなわち、吸収が低い)ので、散乱光が耳の後ろから貫通する様を見ることができる。もし拡散がなく吸収も低い場合には、光線はガラスのように、その表面をダイレクトに通過することができる。例えば、今、プールを泳いでいるとしよう。

そのプールが上手い具合にとても綺麗だとしたら、目を開いて、綺麗な水越しにかなりの距離をはっきりと見ることができるだろう。しかしながら、同じプールがしばらくの間掃除がされていなかったために水が汚くなっている状態を想像してみよう。汚れの粒子が光を散乱し、その結果として水の透明度は著しく下がるだろう。 このような媒体/マテリアルの中を光がさらに通過すればするほど、光はより吸収、および(もしくは)より散乱されることになる。従って、オブジェクトの厚さは、光がどれほど吸収または散乱されるかその程度に対し大きな役割を果たす。図02に示すように、厚さマップ(Thickness map)は、シェーダに対し物体の厚さを表現するために使用される。

吸収と散乱(透明度と透過度)

図02

拡散反射と鏡面反射 鏡面反射(Specular Reflection)とは、すでに光線のセクションで述べたように、表面(サーフェイス)で反射された光をさす。光線は、表面で反射し、異なる方向へと進んでいく。これは反射の法則に従うが、その法則によれば完全に平坦な表面上においては、反射角は入射角と等しい。しかし大抵の表面は不規則なので、その結果として反射の方向も表面の粗さ(Roughness)に応じてランダムに変化してしまうことに留意しておこう。これは光の方向を変化させるが、光強度は一定のままである。

表面が粗くなればなるほど、ハイライトはより大きく、より不鮮明になる。表面がなめらかになればなるほど、鏡面反射のフォーカスは締まり、適切な角度から見ればより明るく見えたり、より強く見える。 しかしながら図03に示すように、この両者のケースで反射される光の総量はまったく同じである。 拡散反射は、屈折された光である。光線は、ある媒体からもうひとつの媒体へと通り抜けると同時に、その物体の内部で複数回に渡って散乱される。

物体の厚さは、光がいかに吸収、または散乱されるかに対し、大きな役割を果たしている

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そして図04に示すように、光線は、 初にそれが通過したのとおおよそ同じ場所から元の媒質に向かい引き返すかのように、再度その物体の外側へと屈折する。 ディフューズマテリアル(拡散材質)は極めて吸収性が高いので、屈折した光が十分長い時間、マテリアル中を進行すると、完全に吸収されてしまう可能性がある。従ってそのマテリアルから戻って来る光は、入射位置からさほどの距離を進行していないものと想定してよいだろう。 これが光の入射位置と出射位置の間の距離を無視できる理由だ。従来のシェーディングシーンにおいて拡散反射として通常に使われてきたランバートモデルでは表面の荒さは考慮に入れないが、Oren-Nayarモデルのようにそれらを考慮にいれる拡散反射モデルも存在する。

高い散乱性を持ちながら低い吸収性の両方を有するマテリアルは、しばしば「関与媒質」または「半透明マテリアル」と呼ばれている。これらの例は、煙、牛乳、皮膚、ヒスイや大理石である。後者3つのレンダリングをする際には、付加的モデルとしてサブサーフェススキャッタリング(SSS/表面下散乱)を使ってもよい。SSSを使うことで、光線の入射位置と出射位置の間の距離は無視されることはない。煙や霧のような、高い変動性と極めて低い散乱性および吸収性をもつ媒質を正確にレンダリングするには、モンテカルロ・シミュレーションのような、さらに高コストな方法が必要な場合もある。

図03

図04

表面が粗くなればなるほど、ハイライトはより大きく、より不鮮明になる

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理論的には、拡散反射と鏡面反射の両方は、光線が交差する表面の凹凸に依存する。しかし実際には、マテリアル内部で散乱が発生するため、拡散反射に対するラフネスの効果はより見えにくくなる。その結果として、光線の出射方向は、表面のラフネスおよびその入射方向とはほぼ独立している。 も一般的に使われる拡散反射モデル(ランバート)では、それを完全に無視する。 本書においては、これらの「表面の凹凸さ」を「表面のラフネス」と呼んでいる。実際、それは以下のようにいくつかの名称で呼ばれている。 例えば、roughness(荒さ)、smoothness(滑らかさ)、glossiness(光沢度)や マイクロサーフェイスなどだ。

これらは使用されるPBRワークフローに応じて変わるが、それらはすべて表面の同じ状態を指している。すなわちテクセル以下のジオメトリの詳細な状態である。

これらの表面の凹凸さは、使用しているワークフローに応じて、roughnessマップもしくはglossinessマップで作成される。物理ベースのBRDF(双方向反射率分布関数)はマイクロファセット(微小面)理論に基づいているが、その理論では、ある表面(サーフェイス)は、マイクロファセットと呼ばれる様々な方向を向く、それ自体は平坦な極小面で構成されていると想定する。図05に示すように、これらの極小面は各々その法線に基づいて、単一方向に光を反射する。

光の向きと視線の向きのちょうど中間の方向にその面法線を持つマイクロファセットは目視できる光を反射する。

しかしマイクロファセットの法線とハーフベクターが等しい、全てのマイクロファセットが貢献するわけではなく、図05に示されるように、あるものは(光方向からの)シャドーイングによって遮断され、またあるものは(視線方向からの)マスキングによって遮断されてしまう。 顕微鏡レベルの表面の凹凸さが光の拡散の原因になるのである。例えば、ぼやけた反射は光線の散乱によるものである。図06に示すように、光線が平行に反射されていないので、鏡面反射がぼやけているように私達は知覚してしまうのである。

マイクロファセット理論(Microfacet Theory)

図05

図06

顕微鏡レベルの表面の凹凸さが光の拡散の原因になる

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色 あるサーフェスの色(すなわ

ち、私達が見ている色)は、光源から発せられた波長のいずれかがその物体によって吸収され、それ以外の波長が鏡面および拡散の両方で反射されることによって生じる。残っている反射された波長が私達が色として見るものである。 例えば、リンゴの皮は、主に赤色光を反射する。図07で示すように、後方散乱した赤の波長だけがリンゴの皮の外へ飛び出していき、それ以外の波長は吸収されてしまう。

またリンゴの皮は、光源と同じ色の明るい鏡面ハイライトを持つ。それはリンゴの皮のような電気的に導体ではない(絶縁体)マテリアルでは、鏡面反射は波長に対してほぼ独立的だからである。従って、そのようなマテリアルに対しては、鏡面反射は決して着色されることはない。金属および絶縁体のような、違ったタイプのマテリアルについては、後の章でもっと詳しく触れる。

図07

BRDF(双方向反射率分布関数) 双方向反射率分布関数(BRDF)とは、簡単に言ってしまえばあるサーフェイスの持つ反射特性を記述する関数のことだ。コンピュータグラフィックスの世界では、その他にもBRDFがいくつか存在するが、中には物理的に正しくないものもある。あるBRDFが物理的に正しいためには、エネルギー保存と相反性(reciprocity)がなければならない。相反性に関して、ヘルムホルツの相反性定理について触れておくと、その定理によれば光線の入射方向と出射方向を入れ替えても、BRDFの値に影響を与えることはなく、互いの反転とみなすことができる。

SubstanceのPBRシェーダーが使用しているBRDFは、ディズニーによる「原理に則った」反射モデルに基づいており、そのモデルはGGXマイクロファセット分布に基づいている。GGXは、スペキュラ分布においてより短いピークのハイライトとよりロングテールなフォールオフという、図08で示されるように、よりリアリスティックな見た目を持つベターなソリューションを提供する。

図08

GGXのオブジェクトは、スペキュラ分布の点からみて、より優れたソリューションを提供する

Substance PBRシェーダは、GGXマイクロファセット分布を使用する

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エネルギー保存 エネルギー保存は、物理ベースのレンダリングソリューションにおいて重要な役割を果たすものである。エネルギー保存の法則によれば、あるサーフェイスから(反射および後方散乱によって)再放出される光の総量は、それが受けた光の総量以下になる。言い換えれば、サーフェイスによって反射される光が、その直前にサーフェイスが受けた光よりも強いことはあり得ないということである。アーティストとして、私達はエネルギー保存の法則をコントロールする必要はない。これはPBRの実に素晴らしい点のひとつで、PBRではシェーダーが常にエネルギーが保存されるように制約をかけているのである。これが物理ベースモデルの一部として含まれているおかげで、私達は物理的な理論ではなく、よりアート的な作業へと集中することができる。

フレネル効果 フレネル反射率もBRDFの係数として物理ベースのシェーディングに重要な役割を果たしている。フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルによって観測されたフレネル効果によれば、あるサーフェイスから反射されることで見ることができる光の総量は、それを知覚できる視野角に依存している。 例として、水のプールを考えてみよう。水面に対し垂直に、まっすぐに見下ろした場合、水の底まで見ることができるだろう。このように水面を見ることを「0度」または「垂直入射」といい、この時垂線は面法線と一致する。次に、見通すようにして水面に対しより平行になるように水のプールを眺めてみると、水面に発生する鏡面反射が段々と強くなっていき、仕舞いには水面から下がまったく見えなくなってしまうことがわかるだろう。

フレネルは、私達が伝統的なシェーディングにおいて行ってきたように、PBR中で調整できるようなものではない。繰り返すが、この現象は私達がPBRシェーダーで処理する物理現象とはまた違ったものである。あるサーフェイスを見通すように眺める時、平滑なサーフェイスならどんなものでも、入射角90度でほぼ100%の反射になる。 粗いサーフェスの場合、反射率はどんどん鏡面へと近づいていくが、100%の鏡面反射に達することはない。その場合重要なのは、各々のマイクロファセットの法線が光となす角度であって、マクロとしてのサーフェイスの法線が光となす角度ではない。光線が様々な方向に分散されるために、反射がより柔らかくなったり、よりおぼろげになることもある。巨視的なレベルであなたに見えているものは、個々のマイクロファセットに発生する全てのフレネル効果の平均のようなものなのだ。

図09

粗いサーフェスの場合、反射率はどんどん鏡面へと近づいていくが、100%の鏡面反射に達することはない

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F0(0度でのフレネル反射率) あるサーフェスに光がまっすぐまたは垂直(0度の角度)に当たった時に、ある一定の割合の光が鏡面のように反射して戻ってくる。あるサーフェイスの屈折率(IOR)を使用することで、反射して戻される量を導出することができるが、これは図09で示されているように、F0(フレネル0)と呼ばれている。 サーフェス内部へと屈折する光の量は、1-F0と呼ばれる。

PBRの観点および反射率の芸術的解釈から、図09に示すように、一般的に滑らかな不導体のサーフェイスについては、F0では光の2%〜5%を反射し、見通し角では100%反射するといえる。

不導体(非金属)の反射率の値は、現実にはさほど劇的には変化しない。事実、ラフネスが変わってしまえば、値の実際の変化はさらにわかりにくくなる。しかしながら、値の違いは存在する。図11に、金属および非金属マテリアルの両方のF0の範囲を示す。

非金属の場合、その値の範囲がお互いに大幅に異なってしまうようなことがないように注意すること。 宝石は例外で、より高い値を持つ。少し後で、導体と絶縁体に関連しさらにF0に関して説明する。

図10

図11

F0の範囲は、一般的な不導体の場合、0.02〜0.05ぐらいで、導体の場合、0.5〜1.0になる。従ってあるサーフェイスの反射率は、図10に示すようにセバスチャン・ラガルドが「物理ベースのシェーディングモデルのフィード」としてブログポストした方程式に従って屈折率から決定される。 私達がテクスチャオーサリングをする観点から関心を寄せるのは、このF0の反射率の値である。非金属(不導体/絶縁体)の場合にはグレースケール値を持ち、金属(導体)の場合には、RGB値を持っている。

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そして私達は物理ベースモデル内で作業しているので、マップで使用する金属反射率のために、実世界の測定値を使う必要がある。

テクスチャリングの観点から金属に関してもうひとつ重要な点をあげるならば、金属は腐食ができることである。これはウェザリング的要素が金属の反射状態に対し、大きな役割を果たすことを意味する。例えば、金属の錆の場合なら、これは金属の反射状態を変化させ、図13に示すように、腐食した領域はやがて不導体マテリアルとして扱われることになる。

私は、あるマテリアルが金属かそうでないか、いつも自分に問いかけてみると前に述べた。しかしより正確にいえば、その問いかけをする際に、金属の状態、つまりそれは塗装されているのか、錆びているのか、汚れやグリースで覆われているのかについても、同じように問いかけられなくてはならない。マテリアルは生の金属でないならば不導体として扱われることになるだろうが、ウェザリングの状態によっては金属と非金属の混ざった状態としても存在しうる。

導体と絶縁体(金属と非金属) PBR向けのマテリアルを作成するとき、金属か非金属かという観点で考えると大変分かりやすくなる。それもごくシンプルにサーフェスが金属かそうでないかを自問自答するだけだ。もしそうであれば、私はワンセットとなっているガイドラインに従うまでだし、そうでない場合には、もうひとつのガイドラインに従うまでである。これはかなり割り切ったアプローチであるので、半金属のように、マテリアルによってはこれらのカテゴリに分類されない可能性があるが、マテリアルの作成プロセス全体においてまず金属と非金属を区別し、半金属を例外とするのは、とてもよいアプローチである。マテリアルのためのガイドラインを設定するには、まず私達が作成しようとしているものについて理解しなければならない。PBRを使うことで、このガイドラインのセットから導き出される、金属(導体)と非金属(絶縁体)のプロパティを見ることができる。

屈折した光は吸収され、金属の色合いは反射光に由来する。 したがってマップ中では、金属に拡散色を使わない

金属 金属(導体)は、熱と電気の良導体である。簡単に言えば、導電性金属の電界はゼロであり、電界と磁界からなる入射光の波がサーフェイスに当たると、それは部分的に反射され、全ての屈折光が吸収される。 研磨された金属の反射率の値は、図12に示すように、反射約70〜100%の範囲で高くなるであろう。 いくつかの金属は、異なる波長の光を吸収する。例えば、金の場合、可視スペクトルの高周波端に位置する青色光を吸収するので、結果として、黄色に見える。しかしながら、屈折した光は吸収されてしまい、また金属の色合いは、反射光から来る。従って、使用するマップ内、我々は、金属に拡散色を与えていない。例えば、鏡面/光沢ワークフローでは、生のままの金属の拡散マップは黒に設定されており、反射率値は鏡面反射マップにおいて彩色されたカラー値となっている。金属では反射率の値はRGBとなり、色が付いている。

同様に塗装された金属は、金属というよりは、むしろ不導体のように扱われる。塗料は、生の金属の上のレイヤーとして機能する。塗料が欠けてはがれた部分から露出した生の金属のみが、金属として扱われる。金属についた汚れの他、生の金属を覆い隠すものならなんでも同じことが言える。

図12

ウェザリング要素は、金属の反射状態に大きな役割を演じる

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非金属 非金属(不導体/絶縁体)は、電気の伝

導性に劣る。屈折した光は、散乱され/もしくは吸収され(そしてしばしばサーフェイスから再放出される)そして金属よりも遙かにすくない量の光を反射し、アルベドカラーを有することもある。先に、屈折率(IOR)から計算される一般的な不導体の値は、F0基準で2〜5%であると述べた。図14に示すように、これらの値は、0.017〜0.067(sRGBで40〜75)のリニアレンジ内に含まれる。宝石を除けば、ほとんどの不導体は、4%を超えることはまずない。

金属の場合とまったく同じように、現実世界における測定値を使う必要があるが、透明ではないその他のマテリアルのためのIORを探し出すことはかなり難しいかもしれない。しかし、大方の一般的な不導体マテリアル間の値は急激に変化しないので、反射率に従うようにいくつかガイドラインを利用することができる。これに関しては第2巻でカバーする予定である。

図13

図14

屈折率(IOR)から計算される一般的な不導体の値は、F0基準で2~5%である

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線形空間レンダリング 線形空間レンダリングは、それだけでひとつのアーティクルとなりえる。従って、ここで詳細に説明することはしないつもりだ。それでも、計算が行われるのが線形空間内であることは、 低限理解しておこう。 簡単に言えば、線形空間レンダリングとはライティング計算において正しい計算法を提供するものだ。それが作り出した環境下では、光は現実世界での光と同じように振る舞うことが可能となる。線形空間内では、ガンマは1.0である。しかし、これが私たちの目に正しく見えるようにするには、線形のガンマがシフトする必要がある。ガンマエンコード済み空間(sRGB)は、コンピュータ画面に表示される画像を補正する。画像の値は、表示向けに調整される。 カラー値を計算したり、色の操作を行う場合には、全ての計算は、線形空間内で行われるべきである。それを理解するための単純な例として、ある画像がレンダー内ではベースカラーやディフューズとして表示される表示される場合をみてみよう。その場合、これらのマップはsRGBとして設定される必要がある。Substance内では、その画像がsRGBにタグ付けされていたとしても、それは計算のために一度線形に変換され、さらに表示するためにsRGBに再設定されるということが行われる。しかし、ラフネスやメタリックのようなテクスチャに、純粋にサーフェイスの特性を純粋に表す数学的な値を格納する場合には、これらのマップは線形として設定されなければならない。 Substnceは、レンダリングされたビューポートに計算結果を表示する際にガンマ補正を行うのと同じように、入力情報に対しても自動で線形およびsRGBスペース間の変換を処理する。アーティストは、Substanceパイプラインで内部的に行われている線形空間計算や変換を気にする必要はない。Substanceをインテグレートされたプラグイン経由でSubstanceマテリアルを使用する場合には、線形空間への変換も自動的に処理される。 しかしながら、そのプロセスを理解しておくことは重要なことで、Substanceマップをビットマップ形式でエクスポートして、Substanceマテリアルではなくして使うような場合では、自分が使っているレンダラーに合わせて手動で変換を実行する必要があるかもしれない。ベースカラーやディフューズマップはsRGBで、その他のマップは線形であることは知っておく必要がある。

キーとなる要素 さて、私達は物理の背後にある基本的な理論を見てきたが、ここでPBRのためにいくつか重要なキー要素を抜き出しておこう。

1.エネルギー保存。反射した光線は必ず、 初にサーフェスに当たった時に持っていた明るさよりも暗くなる。エネルギー保存は、シェーダーが処理する。 2.フレネル。BRDFは、シェーダーが処理する。F0での反射率の値は、 も一般的な不導体の場合、

小限の変化しかせず、2%〜5%の範囲内になる。一方、金属のF0は、70〜100%という高い値となる。 3.鏡面反射の強度は、BRDF、ラフネス(roughness)やグロッシネス(glossiness)マップ、F0での反射率の値(IOR)を介して制御される。

4.ライティング計算は線形空間内で計算される。ベースカラーやディフューズのようなガンマエンコードされた値を持つマップは全て、通常はシェーダーによって線形に変換される。それであっても自分が使うゲームエンジンやレンダラーに画像をインポートする際には、適切なオプションをチェックして、その変換が適切に行われているか確認したほうがよい。ラフネス、グロッシネス、メタリック、ハイトマップ

のような、サーフェイスの特性を記述するマップは、線形として解釈されるように設定されなければならない。

Substanceをインテグレートされたプラグイン経由で Substanceマテリアルを使用する場合には、 線形空間への変換も自動的に処理される

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参考資料 1.  Physically-Based Shading at Disney Brent Burley, Walt Disney Animation Studios. https://

disney-animation.s3.amazonaws.com/library/s2012_pbs_disney_brdf_notes_v2.pdf

2.  Microfacet Models for Refraction through Rough Surfaces

http://www.cs.cornell.edu/~srm/publications/EGSR07-btdf.pdf

3.  Feeding a Physically-Based Shading Model by Sebastien Lagarde

http://seblagarde.wordpress.com/2011/08/17/feeding-a-physical-based-lighting-mode/

4.  An Introduction to BRDF Models by Daniël Jimenez Kwast

http://hmi.ewi.utwente.nl/verslagen/capita-selecta/CS-Jimenez-Kwast-Daniel.pdf

Allegorithmicは、3Dテクスチャリングソフトウェアの新世代を開発している:Substance Painter、Substance DesignerとBitmap2Material。これらのツールを使用して、ほとんどのAAAゲームスタジオでは、Substanceは、次

世代のPBR(物理ベースレンダリング)のアセットを作成するためのスタンダードとなっている。

Substanceの詳細については、当社のウェブサイトをご覧ください。www.allegorithmic.com

日本語訳:Nobuyuki Kobayashi Twitter @nyaa_toraneko

2015/01/12

本ドキュメントは、Allegorithmic社が公開している 『THE COMPREHENSIVE PBR GUIDE  Volume 1: The Theory of PBR』

を私家訳したものです。 全ての著作物の権利は、Allegorithmic社にあります。

オリジナル版は、

http://www.allegorithmic.com/pbr-guide よりダウンロードできます。