the kitchens - 建築家31会...2015/10/29  · the kitchens くらしを 楽しむ つくり方 2 3...

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1 2014 Spring Vol. 2 ISSUE 31 ARCHITECTS THE KITCHENS くらしを 楽しむ つくり方

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Page 1: THE KITCHENS - 建築家31会...2015/10/29  · THE KITCHENS くらしを 楽しむ つくり方 2 3 「最初はシステムキッチンのショールームを見に行ったんですが、どのメーカーも天板の高さが高いんで

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2014 Spring Vol. 2ISSUE 31 ARCHITECTSTHE KITCHENS

くらしを 楽しむ つくり方

Page 2: THE KITCHENS - 建築家31会...2015/10/29  · THE KITCHENS くらしを 楽しむ つくり方 2 3 「最初はシステムキッチンのショールームを見に行ったんですが、どのメーカーも天板の高さが高いんで

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「最初はシステムキッチンのショールームを見に行ったんですが、どのメーカーも天板の高さが高いんですよね。自分の身長に合わせて、もっと低い天板にしたかった。材質も、人造大理石のものが主流で、確かにおしゃれなんですが、自分はどうしても機能性重視のステンレスにしたかった。高い位置の収納は使いづらいので、吊り戸棚は付けたくなかった。いろいろな点で、システムキッチンはしっくりこなかったんです」 そんな奥様の好みを踏まえて、建築家の大塚さんは家具屋さんによる製作キッチンを提案。ご主人も料理好きで、休日にはパスタやピザを手作りすることがあると聞いて、作業スペースをたっぷりとったアイランドキッチンをしつらえることに。

「先日、パン作りが趣味の友人を呼んで、パン作り教室を開いたんですよ」と、広い作業台は予想以上の活躍ぶりを発揮しているようだ。 収納スペースはそれほど多くはない。というのも、小柄な奥様にとっては吊り戸棚は使いにくくデッドスペースになりがち。大塚さんは、以前の住まいで比較的コンパクトに使っていた様子を見て、「大収納は必要ないと思いました」と、パ

ントリーも設置しなかった。「下部の収納だけにしたので、最初は少ないかなと思ったんですけど、意外に不便なく使えていますね」と奥様。

「収納はスペースがあるだけ物が増えていきます。少ないスペースで不便を感じなければ造りすぎないほうがいいのではないでしょうか」(大塚さん)

 設備面では、家全体をオール電化にしようというプランもあったが、ご主人の「炒飯を作るときは火力が強いほうがいい」というひとことで、ガスの採用となった。家族

の思い描く生活を実現するために、さまざまな配慮が盛り込まれている。「家具屋さんにキッチン製作をお願いすることの一番のメリットは、木口や扉の角といった

部分の仕上げがとてもきれいなことです。引き出しなどもそうですね。大工仕事では難しい造作も美しく仕上がります。Y.P.Oの廣瀬さんと一緒に造って良かったのは、詳細な図面から、こ

ちらが意図していることを正確に読み取って理解してくださったこと。図面に込めた思いをすべて形にしてくれました」と大塚さん。

 例えば作業台の天板の仕上げ。無垢材の天板の表面にはシンクと一体成型のステンレスを貼り、機能性を確保。天板サイズぴったりで折り返しがない。デザインに磨

きがかかる。 キッチン収納の引き出しにブルモーションを採用したのは廣瀬さん

の提案だった。機能的なだけでなく、引き出しを開けたときも側面にレールが現れずすっきりしている。大塚さんが設計したキッチンのデザイン性を

さらに高める効果をもたらした。「自分の設計をイメージどおりに具体化するには製作でつくるのが一番ですね」

だから大塚さんがつくるキッチンは8割以上が製作によるものだ。 大きな作業台を囲んで家族が一緒に料理を楽しむ。こちらのお宅のキッチンは家

族の時間をつくる大切な場所になった。

わいわいできる製作キッチン建築家とつくる家族のための理想の形

使い勝手とデザイン性と

主婦のこだわりを形にした自慢のキッチン

設計監理:大塚 あや

space33一級建築士事務所〒206-0013東京都多摩市桜ヶ丘 2-42-29 サクラスタジオTEL/FAX [email protected]

キッチン製作:Y.P.O(担当:廣瀬)

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家に必要なのは機能だけじゃない 建築家は家を建てるとき、空間をデザインすることに全力を注ごうとします。しかし、私はそこで終わらせたくないと思っています。細部の造り込みや空間や寸法のバランス、光の入り方や照明、細かな事の積み重ねにこだわりたいと思っています。風通しがよくて日当りがよくて、明るくて住み心地のよい、使いやすい家といったことで施主の希望した家はできるでしょう。が、これにプラスαの何かを加えることで、家の魅力が引き出せるのではないかと思うのです。 こちらの写真は、家族と暮らしてきた2階建ての家を、ダウンサイジングして平屋に建て直した家の断片です。これら日常の断片が家というものを形作って完成します。間取りはシンプルにまとめ、居心地のよい空間に仕上がりました。そしてさらに、時間の経過とともに変化する材、真鍮や陶器、木材、タイルや石などの素材が空間に色気と奥行き、生活の豊かさを与えていきます。 必要なものではないかもしれませんが、このひと手間によって、一段と魅力的な家ができたと思います。

南部健太郎Ar.K architect〒141-0021東京都品川区上大崎3-5-4 第一田中ビル401TEL/FAX [email protected]/

Ar.K architect

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僕は個人的には火による調理が好きだ。火は原始以来人類が手にした文明の源だ。そしてガスコンロの火はその源をコントロールできる。また、コンロは大きな五徳が好みである。心おきなくフライパンを振るえるからであり、ちょっとずらして鍋を置けるからである。

エムズワークスTEL 045-680-5339www.msw-arch.com/

松永 基 炎のあるキッチン。

週末は夫婦で料理を楽しむご家族のためのキッチンです。L型+アイランドの構成は作業がしやすく収納力も十分。コンロは東京ガス+do GRILLER RN-P873-AUL、レンジフードは三菱V-316Kにステンレスの特注カバーをかけています。V-316K5はデザイン型のレンジフードよりも排気性能が高いうえ、実勢価格は2万円程と安価。その結果ワンランク上のコンロを選んでいただく事ができました。

髙野洋平建築設計事務所TEL 03-5447-5535www.yoheikohno.com/

高野 洋平 夫婦で使う万能キッチン。

家全体が見渡せるちょっと高くなったスペースに設置されたオーダーメイドのキッチンです。料理好きなご主人の希望に応えて火力が強い業務用のガスコンロを選択。流しの下には大きめの食器洗浄機と物入れ。流しの対面には引出しがたくさんついたカウンター兼食器棚を作りました。食品庫・冷蔵庫から調理台への動線がコンパクトになるように配置して、どこにでも手が届きやすく使い勝手のよいキッチンとなりました。

一級建築士事務所 OM-1TEL 03-6426-2480om-1sekkei.com/

大川 宗治 使いやすい手作りキッチン。

既製品のシステムキッチンでは物足りない。しかし、オーダーとなると金額が高くなりがち。そんなときは、大工工事でキッチンを作ります。システムキッチンのような豪華さはありませんが、使う人の希望や使い勝手が網羅されたオリジナルのキッチンが実現できます。その上金額もシステムキッチンやオーダーキッチンより安価にでき、室内との仕上げを合わせることで、統一感のある空間も演出可能です。

佐賀・高橋設計室TEL 046-876-9186www.takahashi-arch.com/

高橋 正彦 大工工事によるキッチン。

小林真人建築アトリエTEL 03-5701-8790www2u.biglobe.ne.jp/~mahito/

小林 真人

<キッチン製作>株式会社 マードレ

東京都世田谷区三軒茶屋2-11-24サンタワーズA棟306

TEL 03-6805-5584www.madre-style.com/

駒沢通りの角地に建つ、木造3階建ての住宅です。Hさんとの出会いは赴任先のメキシコからいただいた設計依頼のメールから。生活やデザインにこだわりをお持ちのハイセンスなご家族です。この家のキッチンは2階にあり、LDKは17畳弱です。そこに必要な機能をきちんと満たし、いかにすっきりと住まうことができるかがテーマでした。キッチンのゴミや電子レンジなど雑多なものはリビングから陰になる部分に納め、キッチンカウンターはリビングまで続く大きなものとし、

リビングの家具機能と一体化させることでキッチンの存在感を極力消すように設えました。一方ですべてのものを隠すのでなく、セレクトされたものをきちんと置くことでクール過ぎない落ち着きを持ったLDKの演出をしています。キッチンはその家ごとにオリジナルのものをデザイン・製作しています。その方に合わせたきめ細かい作り込みができ,機器もメーカーに囚われず好きなものを組み込め、LDK全体のバランスを考えながら素材や形状を自由に決めることができるからです。

キッチンはLDK の家具のひとつとして

トータルデザインで考えたい

日常のスナップ-1 日常のスナップ-2

キッチンからリビングに連続する家具見えない部分に雑多なものを集約

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現場に木を運び、寸法を合わせて切る。しっくいを混ぜ壁に塗る。自然の素材

を使い、大工職人や左官職人によって家を建てる。こうした職人の技術を結集させた現場施工が、日本の家づくりの原点だ。 根來さんの家づくりの原点もここにある。

「最近は壁紙も床材もキッチンも、なんでもカタログで選び、組み合わせて家を組み立てる。でもこれでは押しつけですよね。その建て主さんのために図面をひき現場で手作りすることで、その家族のための家ができる」 根來さんは建て主との会話のなかから本当の気持ちを引き出し、希望の優先順位を感じ取っていく。そして建て主のパーソナリティに最もしっくりとくる家をつくる。だからときにはモダンな家、ときには和風の、ときにはレトロな雰囲気の家になる。ひとつとして同じものはない。

キッチンも同様だ。カタログで選ぶ既成のシステムキッチンで

はなく、建て主に合わせて図面をひく。キッチンは暮らしの動線の中心になるところだから、建て主と話し合い、いっしょに考えて使いやすさを発見していく。キッチンはこうあるべきと押し付けるのではなく、建て主に合うスタイルを見つけて、暮らしやすい家をいっしょにつくっていく、それが根來さんのスタイルだ。だから根來さんがつくる家のキッチンはいつも大工職人による現場施工。天板の高さも、収納の量も、建て主にいちばん合うキッチンに仕上げることができる。

「既成のものから選ぶという作り方が一般的になっているので、オーダーとい

うと敷居が高い印象を持つかもしれない。でも本来家づくりはオーダーが普通だったんですよね。

『根來さんに設計してもらった家』ではなく『根來さんと建てた家』と言ってもらうことを大切にしています」と、根來さんは建て主といっしょに建てるオンリーワンの家づくりをめざす。

Hironori Negoro

建物間口3m強の細長い土地に、奥行を生かして開放感を生んだ「うなぎの寝床」。

玄関には収納力抜群の壁面収納を設置して、すっきりとした空間に。

中3階に設けた水回りへの入口。中2階のキッチンスペースが眺められる。

玄関から半階下が子供スペース、半階上がキッチンというスキップフロアの構造。

オリジナルで製作し たキッチン。中央には多目的に活用できる 作業台を設置した。

吹き抜けやすのこブリッジを通して自然光が降り注ぐ2階のリビングダイニング。

スキップフロア構造は、視覚的広さ、明るさを確保するだけでなく、空気の流れを快適に。

窓側にしつらえたパソコンコーナーは、バルコニーと一体感のあるゆったりとした空間。

すのこブリッジの向こうには寝室、階段室、ロフトが続く。左の壁は全面収納スペース。

根來宏典建築研究所〒151-0063東京都渋谷区富ヶ谷2-15-1 ヴィーナ・パルテール1205TEL 03-5454-2279 FAX [email protected]

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ISSUE 31 Architects vol.2、[ キッチン特集 ] はいかがでしたか。かつてキッチンはひとつの機能として家の北側に配置されていました。最近は、家族が集まる家の中心として位置づけられるようになり、南側の明るい場所にしつらえるようになりました。家事をこなす主婦の作業場から、家族が集まる団らんの場へと変化しています。建築家はオーダーでつくる機会が多く、いつもオリジナリティあふれるオンリーワンのキッチンをめざしています。家の中心となるキッチン空間を、建築家と一緒に造ってみませんか。

(編集長 南部健太郎)

建築家31人の会 出版WG 南部健太郎 松永 基 標 由理 田邉恵一 佐藤 剛 高野洋平 谷口裕子 南部健太郎 井上 玄 東京ガス 株式会社 株式会社 Madre マードレ 有限会社 ヤマシタ・プランニング・オフィス

建築家31人の会kenchikuka31.net/横浜市中区海岸通4-24 万国橋SOKO 301-b編集WG TEL 045-680-5339

発 行 元編 集 長編 集編集協力表紙写真写真協力協 賛

次世代型ハードウッド 「BD エンジニアボード」

特殊含浸技術により、持続可能な森林資源である「針葉樹」を硬化することで広葉樹同等の耐久・寸法安定性を実現。長さ2400mmまで縦継ぎのない「巾はぎ」フリーボードで、芯まで着色(全6色)しているため木口処理が容易です。ウレタン塗装仕上げで使用すると効果的。チャネルオリジナル株式会社TEL 045-662-0088 URL www.channel-o.co.jp/

YKK APから新世代玄関ドア「ヴェナートS」登場

YKK APのショールームでスペースや商品展示数など最大規模のショールーム品川。窓だけでなく、玄関ドア、インテリア、エクステリア、リフォーム商品、外装商品など、 見て触れて快適な住まいづくりが体感できます。予約すればプロのアドバイザーが分かりやすく館内を案内してくれます。YKK AP株式会社 TEL 03-3472-1380(水曜を除く10:00~17:00)URL www.ykkap.co.jp/sr/shinagawa/index.asp

特注家具・キッチン・建具・内装 / 造作

テーブルや本棚のような置き家具からキッチンや壁面収納のような造り付け家具まで家具全般を製作します。フルオーダーで、細かい寸法から材質・色・金物など、好みに合わせプランニングしてくれます。オーダー家具の楽しさを体験してみてはいかが。

有限会社 ヤマシタ・プランニング・オフィスTEL 045-590-4646URL www.ypo-kagu.com

東京ガスの家庭用燃料電池「エネファーム」

i n f o r m a t i o nS H O R T E S S E Y

from Editors編集後記

いつの頃からだろう。炊事するところをキッチンと表示するようになったのは…。 私が設計の仕事を始めた30年前は、寝室、客間、居間、茶の間、食堂、台所と表すことが一般的であった。そういえば、先日見に行った映画『小さなおうち』は、昭和10年代の話だったが、場面に出てくる住宅の姿は当時も余り変わらない時代であった。 現在、台所での使い方やデザインが大きく変わったとは思わないが、変わったところと言えば、電化製品が入り、流し、調理台、ガス台が1枚の天板で繋がってシステムキッチンというものになったことだろうか。不動産の表示が4LDK、2DK等となり、キッチンという言葉が一般的になった。 今や調理台は家具となり、ダイニング、リビングの一部となっていることが多くなっている。部屋の名称とは、ひと部屋の中で使い勝手が分かれている場所を示しているだけのようである。そろそろLDKに変わる新しい部屋の名称が出てきても良いのかもしれない。 住宅にはキッチンが必ずある。生活の中で食べるという行為、楽しみは絶対に外せない事柄であるからだ。私は今までに様々なキッチンのスタイルを作ってきた。しかし、一つとして同じものがない。そこに住まう家族には、他の家族とは全く同じ家族構成、個性を持つ人々が存在しないからである。 私の携わった中で特に印象に残っているキッチンをここでご紹介しよう。 一軒目は、プロの料理人がご主人の住まい。建て替えの相談で、港区新橋にある高級懐石料理店のオーナーシェフの家。ご主人からの要望は、これから歳を重ねて行った時でも安心、安全に暮らすことの出来る飽きの来ない落ち着いた家にしたいとのこと。厨房については、奥様の話を聞いてくれとのことであった。その時、改めてプロ用仕様と一般家庭のキッチンについて考えてみた。プロ用仕様は多く

の調理人が使い、多くの料理を作らなければならない。それに比べ、一般家庭のキッチンはとてもプライベートなものであり、食事を楽しむ場の中に置かれたりもする。もちろんインテリア性もとても重要なポイントになって来るであろう。 二軒目は、宅地を購入された新築の住宅。IT関連のサラリーマンのご主人、家族4人のための住まいである。キッチンの話はご主人主導で行われた。最初の要望は魚を下ろせるようにしたいとのこと。さらに話を進めて行くと、大きなカツオ程度は絶対にさばきたい!カツオ…?とても住宅内のキッチンでは後始末が終えるものではないので、キッチン横の外にプロ用シンクを作った。内部のキッチンも、一般的には奥行き65㎝のシンクが多い中、特注で奥行き75㎝の深く大きなシンクにした。全長7m程で前後2列に配置し、ガスコンロは15,000キロカロリー以上、プロの中華料理店並みである。オーブンとは別に、上下の火の高さが可変できる両面グリラーを置き、四季に合わせた食器類を保管するためのスペースの確保等、結果的にはプライベートでプロ用仕様のキッチンが出来上がった。 建物を引き渡し後、3カ月後住宅点検と同時に食事に招かれた。そこにはどう見ても素人の料理には見えないご主人の料理が並べられていて、とても美味しく、楽しい時間を堪能することが出来た。週末は買い出しから調理まで全てご主人が一人で行い、奥様、子ども達と一緒に家族で食事を楽しんでいるようである。キッチンは、家族、友人達との確かな楽しい時間を創る場所でもあった。 それから2年後、このご主人は銀座に和食の店を出した。ご主人が味に惚れ込み、料理を習っていた人に料理長になって貰ったそうである。さらに数年が経ち、今年届いた年賀状には、銀座に2件目の懐石料理の店を出店されたことが書かれていた。

キッチンについて

河辺 近 建築家31人の会代表ken-ken inc.横浜市中区海岸通4-24 創造空間万国橋SOKO 3FTEL 045-222-8303 www.ken-ken-a.co.jp/

燃料電池の技術を利用し、都市ガスをつかって自宅で発電する「エネファーム」。発電時に出る熱を捨てずにお湯も一緒につくります。オプションを設置すれば、停電時でもエネファームが発電を継続して、電気を供給することが可能です。※停電時にエネファームが発電している場合に限ります。

東京ガス株式会社TEL 0120-593039(日曜・祝日を除く9:00~19:00) URL www.tg-enefarm.com

「建築家31人の会」から「建築家31会協同組合」へ!建築家31人の会は31名(31組)の建築家による集団です。それぞれが自立し独立した立場で設計活動をしています。社会と市民のために安心で安全な建築を造っています。年に3~5回程度の模型展や相談会などを通じて一般の方とのFace to

Faceの繋がりを大切にしています。建築家31人の会も4年目を迎えました。2014年春には協同組合として法人化し、より一層、皆様との関わりを深めていきたいと思っています。今後は「建築家31会協同組合」としてよろしくお願いいたします。

建築家31人の会 www.kenchikuka31.net/

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私は1987年に事務所を設立して以来、

自然の素材や自然エネルギーをできるだ

け有効に利用する住まいを設計してきました。

2003年に自邸を設計することになり、それ

までの16年間に建築主さんに提案し続けてきた

自然素材を使いながら、雨と緑を有効に利用す

る実験的な試みを自邸で取り入れました。具体

的には屋根に降った雨を2トンのタンクに溜め

て3つの雨の道を計画しました。①トイレ2カ

所の流し水、②夏の間の屋根への散水、③西側

の緑のカーテン上部から散水……という3つで

す。「江戸S

tyle

の家」とネーミングした自邸は

エコロジーへの取り組みが評価されてグッドデ

ザイン賞を受賞しました。

今年で完成して10年近くになります。杉の

柱や天井、松の床などは経年美化で色が

飴色に美しく変わってきています。家を訪れる

人はいまでも「木の香りがしますね」と言って

くれます。内壁の珪藻土もひび割れなどなくて

きれいなままです。外部のカナダ杉の塀は昨年

に塗り直しをしました。トイレは年間で半分以

上の日数を雨水で流すことができています。夏

の屋根への散水によるクーリングは室内の気温

の変化がほとんどなくて残念ながらあまり効

果なしです。ただ、ガルバリウムの雨樋を流れ

る「チョロチョロ」という雨水の音が小川のせ

せらぎのように聞こえて、風鈴のように耳から

感じる涼感もあるということを実感しています。

緑のカーテンは毎年5月にゴーヤとヘチマの苗

を植えると8月のお盆のころには高さ5mくら

いになります。西日を防いでくれますので緑の

カーテンの効果は大きいです。ゴーヤとヘチマ

は天候などにも左右されうまく育たない年もあ

りますが、そんな失敗も楽しみながら暮らして

います。

私個人としては、できるだけ原発に電気を

依存しない社会を築くためにも、自然エ

ネルギーを有効に利用する家を計画することが

いままで以上に大切な時代になると思っていま

す。そのためには太陽や雨、緑などの自然の恵

みをもったいない精神で有効利用してエコを楽

しみながら暮らすスタイルが大切になります。

自邸は10年近く経った今もときどきオープ

ンハウスを開催して自然素材やエコロ

ジーに関心ある人たちに見てもらっています。

「楽しみながらのエコロジー……」そんな心意

気を共有する人たちが増えてくれると家づくり

はよりよい方向に向かうのではと思っています。

TIMESPACEArchitecture旧作への思い

実験住宅としての自邸栗原 守光設計東京都世田谷区北沢4-9-18 ガーデンハイツ弘瀬101TEL 03-3466-0761 www.kokyusumai.com/

© photo by Gen Inoue