AKAMAI ホワイトペーパー

著者：Vishal Changrani – Enterprise Architect、Global Consulting Services、Akamai Technologies

Eugene Zhang –Enterprise Architect Director、Global Consulting Services、Akamai Technologies

VR ストリーミングにおける CDN の 最適化

VR ストリーミングにおける CDN の最適化 1

はじめに最近の視聴者は、高画質で中断されることなく配信される動画コンテンツを求めています。この期待は当然、360 度

VR コンテンツにも向けられています。実際に 360 度コンテンツでは、低品質の動画だと「酔い」を引き起こしてしまう可能性があるため、品質がより一層重要になります。満足度の高いユーザー体験の提供を目的とする上では当然避けなくてはならない問題です。

今日の VR（360 度）コンテンツが直面している問題は、まさにその性質上、極めて大容量となることです。体験の質（QoE）は、マネージド・ケーブル・テレビ・ネットワークの帯域幅の観点では管理できますが、今日のオーバーザトッ

プネットワークには新たなハードルとなっています。例えば、YouTube は 360 度動画を 150 Mbps のビットレートでアップロードすることを推奨しており、5 分の動画の容量は約 5.5 GB になります。こうした高品質の 360 度動画を中断することなく最小限のバッファリングでストリーミングするには、広いネットワーク帯域幅が必要となります。OTT や他のコンテンツへの消費者の需要は高いため、許容可能な QoE の 360 度動画を提供するためには新しいアプローチが必要です。

コンテンツをユーザーの近くにキャッシュできる Akamai ネットワークの規模に加え、Akamai ネットワークには、さらに優れた 360 度動画の QoE を引き出すために活用できる機能が他にもいくつかあります。

VR の適応型配信における新しい技術企業やブランドは、VR コンテンツを効率的に提供して帯域幅を減らす方法を模索しており、その多くはユーザーの視界（FOV）に目を付けています。この新しい技術では、ユーザーの FOV には高画質で、動画の残りの部分については低画質でコンテンツを提供するようにしています。これにより、360 度コンテンツに必要な帯域幅が減少します。

これはどのようにして実現できるのでしょうか？動画の各フレームをタイルという小さな要素に分割します。1 フレームが分割されると、その時点のユーザーの FOV に基づいてタイルがそれぞれ配信されます。VR ユニットで稼働中の、PC またはモバイルデバイスに対応しているソフトウェアが、タイルをデコーダーに送る前に戻します。その時点の視野に基づいて動画をストリーミングするこの新しい技術は、異なる組織の複数の手法によって実現しました。

Akamai チームが実践したことのある手法は、過去の業界イベントでも実証された、タイルを利用した適応型 VR ストリーミングです。2 この方法により、タイルが動画資産のカスタム・パッケージング・フォーマットを使用して配信され、フレーム内のタイルにランダムでアクセスします。このプロセスは、次の 2 つの Akamai の主力製品、Adaptive Media Delivery および NetStorage で利用可能です。高画質のタイルは、クライアントが報告した FOV に基づき、Akamai Edge Server が HTTP Byte-Range 要求を利用してオリジンから取得します。動画のマニフェスト内の URL は変更されません。

もう一歩先へ：近接性を認識したコンテンツ事前配置最適化に関して推奨されるもう 1 つの方法は、予測アプローチです。近接性と動きに基づいてコンテンツをプリフェッチする方法です。このアプローチでは、クライアントの近接性やユーザーの頭の動きに基づき、後で必要となるコンテンツを予測して CDN キャッシュサーバーに事前にロードし、タイルを投入します。これにより、CDN に事前取得しない場合と比べて、ユーザーの FOV 内で低画質のタイルを高画質のタイルに変更するのにかかる時間を 50% 以上削減できます。2

さらに、タイルをシンプルなバイナリーオブジェクトとして扱うことができ、HTTP または HTTPS を使用して Edge

経由でオリジンサーバーからクライアントに配信することができるため、Akamai はタイルの配信を複数の方法で最適化できます。したがって、タイルベースの他の VR ストリーミングアプローチ（デジタルイノベーターの

Fraunhofer HHI が提唱する方法など）3 でも、このようなプリフェッチの恩恵を受けることができます。

オリジンサーバー

タイルに分割された動画フレーム

頭部装着型ディスプレー タブレット／

スマートフォン

AkamaiCDN

Edge Server

Edge Server

Edge Server

VR ストリーミングにおける CDN の最適化 2

次世代プロトコルメディア配信を最適化する一般的なアプローチの 1 つは、リクエストやレスポンスの少ないプロトコルに切り替え、オーバーヘッドを減らすことです。QUIC や HTTP/2 など VR の提供に使われるプロトコルはすでに Akamai ですぐに利用できるようサポートされており、実験に用いる態勢も整っています。ResearchGate のフレームワークでは、特に RTT が速いモバイルネットワークにおいて、HTTP/2 サーバーがスループットの増加を促していることを示しています。4

広告の挿入 360 度動画は、広告ベースの収益化における新しい手法をもたらします。動画を再生中に、360 度の空間内にダイナミック広告を挿入することができます。タイルベースのエンコードが使用されている場合は、広告オーバーレイの挿入に関する Fraunhofer HHI の調査で示されているように、再生中にタイルに広告を載せることができます。5 これらのタイルベースの広告は、Akamai の NetStorage に格納することができ、レイテンシーを最小限に抑えてクライアントに送ることができます。さらにダイナミックな体験を提供するために、Edge Server は広告ターゲティングのルールに基づいて、再生中にサードパーティの広告サーバーからタイルベースの広告を取得することができます。

エンドユーザー Edge Server 親サーバー オリジン

エンドユーザー Edge Server 親サーバー オリジン

1000～8000 バイトのタイルを取得0～10000 バイトのタイルを取得

バイト数と共に 206 をレスポンス

0～10000 バイトのタイルを取得

バイト数と共に 206 をレスポンスバイト数と共に 206 をレスポンス

10000～20000 バイトのタイルを取得

10000～20000 バイトのタイルを取得Edge Server は初回リクエストを送信した後に、次のバイト範囲をリクエストします。これがプリフェッチ機能です。コンテンツはユーザーのリクエスト前にキャッシュ内に入ります。

VR アプリケーション Akamai_Edge

VR アプリケーション Akamai_Edge

Akamai_Parent

Akamai_Parent

オリジン

オリジン

POST／プッシュ

POST 本文を EST で処理I

各タイルの新規のリクエストを生成

各タイルをプッシュタイルを取得

タイルを取得

POST 本文/path/tile1?byte_start=X&byte_end=Y/path/tile2?byte_start=A&byte_end=B/path/tileN?byte_start=C&byte_end=D

ESI が POST 本文を読み込みますすべてのタイルとバイト範囲を持つ変数を生成してプッシュします

Edge Server がリクエストからクエリパラメータを取得します新規のヘッダー領域を追加します：bytes=byte_start-byte_end

各タイルがアプリケーションにプッシュされますアプリケーションは下記のローカルに保存された各オブジェクトのバイト範囲を取得できます/path/tile1?byte_start=X&byte_end=Y

VR ストリーミングにおける CDN の最適化 3

結論エコシステムによる推進力と技術の発展が重なり合い、現在では 360 度動画の普及がさらに広がっています。動画の品質や体験に関して、期待の高いユーザーの要件を満たすのは困難です。Akamai は、これらの困難に対処するソリューションやその他多くの成熟した機能を提供し、高い QoE の達成や 360 度コンテンツの新しい時代をリードしていきます。

高 い QoE を 達 成 す る 方 法 や、 没 入 感 の あ る 革 新 的 で 一 線 を 画 し た 体 験 を 創 造 す る 方 法 を お 探 し の 場 合 は、consulting@akamai.com までご連絡ください。

著者についてEugene Zhang は、Akamai の Director of Enterprise Architect です。エンドツーエンドのメディア／アプリケーションパフォーマンスの最適化やウェブセキュリティに注力しており、多くのお客様と連携し、それらの戦略的構想に取り組んでいます。ネットワーク、エンタープライズアプリケーション、電気通信などの分野において、15 年以上の多岐にわたる経験があります。Akamai 入社前は、Apple、Oracle、Silicon Graphics でアーキテクチャおよび開発に関する役職を担当してきました。デジタルメディアおよびアプリケーションセキュリティの領域で、数多くの特許を保有しています。

Vishal Changrani は、Akamai の Enterprise Architect です。Akamai のお客様がメディアワークフローを実現できるよう支援しています。組み込みシステム、バイオテクノロジー、大規模エンタープライズアプリケーションを含む数々のドメインに関して、13 年以上の経験を有しています。Akamai 入社前は、Ericsson、Motorola、シリコンバレーの新興企業でさまざまな役職を歴任してきました。デジタルメディアの領域で数多くの特許を保有しています。

世界最大、かつ最も信頼性の高いクラウド・デリバリー・プラットフォームを有する Akamai は、デバイスや場所に関係なく、最高、かつ最もセキュアなデジタル体験をお客様に提供します。Akamai のプラットフォームは 130 ヶ国に 20 万台以上という比類のないスケールで展開されており、お客様に優れたパフォーマンスとセキュリティを提供しています。ウェブ／モバイルパフォーマンス、クラウドセキュリティ、エンタープライズアクセス、ビデオ・デリバリー・ソリューションによって構成される Akamai のソリューションは、優れたカスタマーサービスと 365 日 /24 時間体制の監視によって支えられています。グローバルトップの金融機関、e コマース事業者、メディア・エンターテインメント企業、政府機関等が、Akamai を信頼する理由について、www.akamai.com/jp/ja/ または blogs.akamai.com/jp/ および Twitter の @Akamai_jp でご紹介しています。全事業所の連絡先情報は、www.akamai.com/jp/ja/locations.jsp をご覧ください。2018 年 6 月発行。

出典

1） http://ieeexplore.ieee.org/document/6547985/

2） https://www.ibc.org/tech-advances/cdn-optimisation-for-vr-streaming-/2457.article

3） https://www.hhi.fraunhofer.de/fileadmin/PDF/VCA/MC/Fraunhofer_HHI_Tile_Based_DASH_Streaming_for_VR_with_HEVC.pdf

4） S. Petrangeli, V. Swaminathan, M. Hosseini, F. De Turck.2017.An HTTP/2-Based Adaptive Streaming Framework for 360° Virtual

Reality Videos.In Proceedings of ACM Multimedia, Mountain View, USA, October 2017 (ACM MM ’17)

5） https://www.hhi.fraunhofer.de/en/departments/vca/research-groups/multimedia-communications/research-topics/advertisement-

overlay-insertion-for-hevc-based-services.html