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2013 年年 (2013.9.7 年年)義義義義義義義義義義義義 ―義 義 年年年年年年 年年年 年年年年年年 年年年年年 4 年 年年年年年年年 11 年 年年年年年

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【2013 年度 夏課題(2013.9.7 提出)】

義務教育を学校で行う意義

―ホーム・スクールを視座に用いて―

慶應義塾大学 文学部人文社会学科 教育学専攻 4年

松浦良充研究会 11期鈴木里依子

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―目次―

アブストラクト 2

序章 4

 第1節 本稿の目的 4 第2節 本稿の論じる対象及び言葉の定義 4

第1章 日本における義務教育 6

 第1節 義務教育の基本原理 6

 第2節 義務教育の発展 8

 第3節 義務教育の現在 9

  第1項 現代の義務教育と個性の尊重9第2項 オルタナティブを求めて 12

第2章 アメリカにおける義務教育とホーム・スクール 13

 第1節 公教育の発展と基本的理解 14

第2節 ホーム・スクールの誕生と発展 16

  第1項 ホーム・スクールの成り立ちと定義 17

第2項 ホーム・スクールの発展 18

第3項 ホーム・スクールの現状 20

 第3節 先行研究にみるホーム・スクールの問題点 21

第3章 日本におけるホーム・スクールの実施検討 22

 第1節 日本のホーム・スクールに関する現状の分析と先行研究検討 22

 第1項 日本のホーム・スクールに関する現状の分析 22

  第2項 日本のホーム・スクールに関する先行研究検討 25 第2節 ホーム・スクールの日米比較 27

第1項 日本のホーム・スクールの問題点 27

第4章 今後の義務教育の再考 30

 第1節 学校という空間 30

 第2節 義務教育の目標 30

結びとして 31今後の論の方向性と筆者の主張 33おわりに 36参考文献 37

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本稿の問題意識は、ホーム・スクールの取り組みを調査することで、現代における日本

の義務教育制度の問題点を明らかにし、子どもたちが義務教育をよりよく享受すること

ができる方策を提案することにある。

学制を基本とした教育体制が近代的公教育制度へと変換したのは第二次世界大戦後のこ

とであった1。単線型の教育制度を取った日本の教育は、小中9年間の義務教育課程を設

け、全ての子どもに平等な、つまり機会均等を基礎においた教育を目指した。ここで大

きな役割を果たしたのが「学校」の存在である2。

しかし近年、画一的といわれてきた義務教育制度はその目的として基礎教育を身に付け

させるだけでなく、個性の尊重を強調するようになった3。つまり学校教育には今、「国

民として」の教育ではなく、「個として」の教育をも求められているようになったのだ。

そんな中、注目されるようになったのが従来の学校教育に取って代わることのできる教

育だ。例えば学校選択制度はすでに東京都を中心に部分的に導入され、公立学校において

も教育を享受する場所を選択することができることができるようになった。それに加え

て、今にわかに増えつつあるのがホーム・スクールで義務教育期を過ごすという選択肢

である。

ホーム・スクールは1993年にアメリカ全州で合法化されたもので 4、2010年に

は全米で192万人の子ども達がその下で教育を受けている5。日本ではどのようにホー

ム・スクールが取り組まれているのだろうか。そして現在義務教育を行う場所が学校に

限定されている日本においては、ホーム・スクールを行うことの実施可能性、また行う

妥当性はあるのだろうか。筆者はそうした学校以外を義務教育の中心とする取り組みか

ら、日本における義務教育体制を見直すことができるのではないかと考えた。

本稿では以下の手順で研究を進めていくこととする。

 第1章では、戦後日本の義務教育がどのように形作られ、発展してきたかという概要を

示し、義務教育の基本原理について、日本国憲法、学校教育法、教育基本法を用いて明ら

かにする。次に義務教育の誕生から現在までを辿り、その上で現在義務教育では個性の尊

重が唱えられるようになったこと、その「個性」が指すものは何かについて考察してい

く。そしてここ数年のオルタナティブ教育に関して言及し、その中でも学校という概念

から離れ、家庭を第一の教育の場とするホーム・スクールに注目する。

1 新井郁男「求められる義務教育の目標の明確化」『教育展望』51,2005,pp.14-192田中圭治郎「公教育制度における公共性の限界と今後の展望」,『佛教大学教育学部論集』 22 ,2011, pp.117-1323中央教育審議会「21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について (中央教育審議会第二次答申(全文))」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/970606.htm (2013 年 8月 14日取得)4西川由里子「日米におけるホームスクールの現状を考える」,『文化研究』9,2003, pp.47-715 Terry, Bobby K., “Homeschooling in America a Viable Option” Online Submission, 2011

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 第2章では、第3章において日本のホーム・スクールについて言及する前段階として、

それに大きな影響を与えているアメリカのホーム・スクールについて、様々な視点から

探っていく。まずアメリカの義務教育全体に関してその歴史と理念や制度について扱い、

その中でなぜ今アメリカでホーム・スクールは一つの教育制度として認められるに至っ

たのか、特にその背景に注目して述べていく。ホーム・スクールは宗教的な背景からス

タートし、人種的平等を求める運動をきっかけに広がっていった。権利を求める裁判を

繰り返し、1993年には全州で合法化となり、現在も実施者は増え続けている。それを

踏まえて、第3章では日本に視点を戻し、日本で現在行われているホーム・スクールに

ついて取り上げる。

まず日本のホーム・スクールに関わる先行研究を取り上げ、その検討をした上で実際ど

のように取り組まれているのかという現状を扱う。そして、第2章で言及したアメリカ

のホーム・スクールと比較し、これらが同一の理念の下に存在する取り組みであるか、

日本で行うことに問題点はないのか、妥当性はあるのかについて探っていく。

 第4章では、第3章までで得られたホーム・スクールについての示唆から、日本の義

務教育制度について考察していく。今ホーム・スクールを選択している子ども達、現在

の義務教育制度に適応できていない子ども達のためがよりよい学校生活を送るためには

どうしたらよいのか。本論を通じて一策を講じたい。

 なお、第4章の後に卒業論文提出に向けた今後の論構成と本稿の反省を記述した。

・赤字は構想中や変更の余地があると判断した箇所です。

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序章

第 1 節 本稿の目的

本稿は、日本の義務教育制度の今後の方向性について、家庭を教育の中心とするホー

ム・スクールの取り組みを通じて探っていくことを目的としている。なぜならば、現在

教育は学校で行うことが当たり前となっている日本において、新たな視座から義務教育

について再考できるのではないかと考えたからである。

現在日本の義務教育は学習指導要領や検定教科書といった画一的な枠組みの中で行われ

ながらも、その目的としては、

1)国家・社会の要請に基づいて国家・社会の形成者としての国民を育成するという側

面。

2)個人の個性や能力を伸ばし、人格を高めるという側面。

という二つを掲げている6。

しかし筆者はこの二つは同時的に達成できるのだろうかという疑問を抱いた。そもそ

も日本では教育といえば「学校」を思い浮かべるが7、学校で教育を受けることの是非に

ついての疑問も浮かぶ。本稿では、こうした疑問を出発点とし、従来の学校教育を見直し

さらにホーム・スクールというオルタナティブな教育の可能性や問題点を探ることで、

現在の学校義務教育に不足している部分や果たすべき役割を追求し、子ども達にとってよ

りよい選択肢は何なのだろうかということを明らかにしたい。

第2節 本稿の論じる対象及び言葉の定義

筆者の目的意識は日本の義務教育制度の問題点と改善点をあきらかにすることにある。

そのため本稿ではまず義務教育に関する基本的な原理について先行研究も用いながら考

察し、その現状を明らかにする。それに加え、義務教育の在り方を明らかにするために

ホーム・スクールに関する考察を中心として論じていくこととする。まずアメリカの

ホーム・スクールについて扱い、その理念や取り組みを明らかにする。その後に日本に

おいて現在ホーム・スクールとして行われている教育について考察し、両者を比較検討

する。

なおここでいくつかの言葉の定義をしておきたいと思う。

・「義務教育」は、学校教育法第十六条及び第十七条に基づき、小学校 1 年から中学 3 年

までの 9 年間の年限において行われる教育を指す。ここにおいては、学校で第一条にお

いて学校として認められているものに就学していることも条件とする。

6 文部科学省「義務教育の目的・目標」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05082301/003.htm(2013 年 8月 16 日取得)7 田中「前掲」

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・「法的」と「社会的」の違いについては、前者はそれに関した法律などの制度が成立し

ている状態を指し、後者はその成立が社会的に認知されているという状況も考慮したも

のとして示す。

・「子ども」は広く学齢期の児童生徒のことを指し、義務教育段階の子どもに関しては小

学生を「児童」、中学生を「生徒」と記す。

 なおホーム・スクールに関する用語については、第 2 章の中で定義を行っていくこと

とする。

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第1章 日本における義務教育

 本章では戦後日本の教育改革から現在にいたるまでの義務教育に関して論じていく。

第1節では義務教育の基本原理について言及し、第2節では戦後から現在に至るまでの義

務教育について記す。その中でも「個性の尊重」について注目していき、その示すもの

について考察していく。第3節ではそして画一的な教育から離れた新たな教育形態につ

いて扱い、本稿のテーマでもあるホーム・スクールについての導入を行う。

第1節 義務教育の基本原理

 義務教育について扱っていくにあたり、まず本節では義務教育制度の基本的な原理、そ

れに関わる法について記していくことにする。

 

 義務教育に関わる法はいくつか存在するが、まずは日本国憲法から触れていこうと思

う8。憲法では教育の義務と権利について述べられている。義務教育とは、日本国憲法第

二十六条[教育を受ける権利、教育を受けさせる義務、義務教育の無償]を基礎として成り

立っている。ここにおいて全ての国民は「その能力に応じて等しく教育を受ける権利」

を有し、それに応じて全ての国民は「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務」を

負っている。ここでいう「能力に応じて」というのは「子どもの発達などの状況に対応

した教育」を指すが9、さらにその「状況に応じた」ということが何を考慮できる範囲の

線引きとするのかということは、本稿でも重要なポイントになるだろう。つまりこれが

指すところが障害によって特別な配慮を要する児童生徒が、義務教育制度を不便なく受け

ることができる環境を作り出すことを示しているのか、それにとどまらず学力的にまた

は身体的に優れた能力を持つ子どもに対して、特別な処置を与えるところまで含むのか

といったような事柄である。その点では、義務教育で保障すべき範囲はどこを限界とす

るのだろうかという疑問が残る。

次に学校教育法における小学校・中学校に関しての項目を概観していく。学校教育法は

学校制度の根幹といえる法律である。それぞれの目的と目標については、まず小学校に

おいては第二十九条で「心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基

礎的なものを施すことを目的とする10。」と書かれ、続く第三十条で、「生涯にわたり学

習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活

8市川須美子・浦野東洋一・小野田正利他編『教育小六法』学陽書房,2011,p.48,pp.113-115,117-1239新井郁男「求められる義務教育の目標の明確化」『教育展望』51,2005,pp.14-1910 市川他『前掲』p.48 より引用

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用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主

体的に学習に取り組む態度を養うこと11」を奨励している。ここで言う基本的な知識及び

技能とは、藤田12のいうところの common basic knowledge(共通基礎教育)であろう。

つまり、「3Rs(読み書き計算)、自社会についての基本的な知識と構え、道徳性・社会

性、政治的判断能力など、国民・市民としての基礎的な教養と生活者能力」13の基盤とな

る能力のことである。その他、修学年限が6年であること(第三十二条)や認定教科書を

使うこと(三十四条)、地域社会との連携のために積極的に情報を提供する義務について

(第四十三条)も言及されている。続いて中学校については先ほど記したように、目的に

ついては第四十五条において「小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、

義務教育として行われる普通教育を施すこと」とあるが、それを実現するための目標に

ついて(第四十六条)は、第二十二条に掲げられた十の義務教育の目標を達成することと

記されていた。その内容としては、共通基礎教育に加え、国際社会の平和と発展に対する

態度や芸術や文芸への理解、そして進路を選択する上での能力が挙げられていた。つま

り学校教育法からは、義務教育の目標が現在実に多様であるということがわかる。

 最後に教育基本法について記す。教育基本法は広く日本の教育の方針を定めている。平

成18年に改訂された教育基本法においては第五条で、「義務教育として行われる普通教

育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、

国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われ

るものとする。」と書かれている。これに関して織田は、教育基本法を日本の教育全体

のあるべき姿や理念を網羅した根本法であるとして、次のように述べている。

 「(教育基本法第五条を受けて、)これは普通教育の意義や理念の具現化である。つま

り普通教育は日本人の人格的発達をめざし、社会でも生きる力を所持し、引いては国や社

会を形成することに貢献できる人材を育成する教育であり、国民として最低限の教養を備

える教育でもある。いかなる専門に従事していようとも最低限備えていなければならな

い一般素養である。これは現在の社会の有益な文化的事象を取捨選択して、明日を担う児

童・生徒に伝えていく制度である。これらの文化的事項は教科、道徳教育、特別活動等に

具体化される。この内容は学校教育法や同施行令及び同施行規則を根拠に小・中学校等の

学習指導要領によって義務教育諸学校に浸透していくことになる 14。」教育基本法におい

ては基礎教育を根本におき、市民の育成を目標としているという印象を受ける。

11市川他『前掲』p.117 より引用12藤田英典『義務教育を問いなおす』ちくま新書,200513藤田『前掲』p.143 より引用14織田成和「教育基本法体制における義務の概念」,『近畿大学工学部紀要 人文・社会科学篇』(40), 2010, pp.11-23

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 これら3つの法に関しての考察は後ほど行うこととする。

第2節 義務教育の発展

 前節では現在の義務教育を規定している法律について記した。では、それらの法が定

まるまで日本の義務教育はどのように変化してきたのだろうか。本節では今日に至るま

での義務教育の歴史を概観していき、次節の現在の義務教育への橋渡しとしたい。

 初めて就学に関しての規定がされたのは1879年の教育令であった15。その後188

6年の小学校令の中で初めて「義務」という用語が使われた16。この当時の「義務」の指

すところは国に対する意義が強く、国へ奉公するために教育を受けることを義務化され

ることとなった。就学期間などの変更はあったもののこの姿勢は戦後に至るまで変わら

ず、義務教育は戦前国民の三大義務の一つとして数えられた17。

 それが第二次世界大戦の終了を境に大きく変化した。それまでの複線型の学校制度も

「6・3・3・4制」の単線型へと変更され、それと同時に、義務教育期間は6年間の小

学校教育に3年間の中学校教育が追加されたことで9年間に延長された。さらに義務教育

は無償18とされたことで、機会均等の理念の下、国民と子どもにとって義務教育は平等に

享受することができる制度として整っていったのだ19。この枠組みは、いくつかの制度や

科目変更などの変革はありながらも基本形を崩すことなく現在に至っている。前項で記

した法制に関してもこの頃から大きな変化は見られない。

また義務教育に止まらず、後期中等教育や高等教育に進む生徒数は戦後直後から大きく増

加し、それに伴い進学をかけた受験戦争も勢いを増し続けている。1997年の中教審で

の「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の答申においてもこの状況を鑑

み、

『過度の塾通い、特に、受験勉強を主たる目的とした塾通いについては、基本的に

は、知識量という一つの価値尺度による過度の受験競争に起因するものであり、ま

ず、そうした競争を是正・緩和するための取組を進めることが必要である。このた

めにも、大学、高等学校、国私立の中学校における入学者選抜の改善を図り、小さ

15 織田「前掲」16 第3条より「児童6年ヨリ14年ニ至ル8箇年ヲ以テ学齢トシ父母後見人等ハ其学齢児童ヲシテ普通教育ヲ得セシメルノ義務アルモノトス」17安彦忠彦「義務教育の弾力化と教育課程の課題」『教育展望』51,2005,pp.20-2718 原則として授業料の不徴収を指すもので、教科書代等に関しては出来る限りで軽減することが望ましいとだけされている。19文部科学省「第 1 章 検討の視点」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_chukyo_index/toushin/attach/1309745.htm(2013 年 4月 21 日取得)

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いころからの受験勉強をあおらないような選抜方法にしていくなどの努力を進めて

いくべきである。しかしながら、同時に、親にあっては、子どもの教育に対する責

任を自覚し、休業土曜日や夜遅くまで塾に通うといった過度の塾通いが子どもに

とって望ましいことかどうかを改めて深く考えてほしい。また、それとともに、塾

関係者に対しては節度ある対応を望みたい。なお、塾通いの実態を見てみると、子

どもたちが学校の授業についていけないために、補習などを目的として塾に通って

いる場合もあり、過度の塾通いを是正するという観点からも、学校において一人一

人の個に応じた指導の充実を図ることを改めて求めたい。』

と述べられているものの、現在何ら有効な策を立てられていないのが実状である。

 

 またその他近年の動向としては、グローバル化に伴う外国語学習の充実、情報化社会へ

の対応、科学技術の発展、環境問題を意識20して改革も進められるようになったことが挙

げられ、学校教育は様々な課題と常に向き合わねばならないこととなった。

第3節 義務教育の現在

第1項 現代の義務教育と個性の尊重

ここまで義務教育の基本となる取り決めについて憲法や学校教育法を概観し、現在に至

るまでの歴史を概観した。本項では現在の義務教育について言及し、そこで起こってい

る問題点について述べていくこととする。これまでの義務教育は、よき市民となる基礎

を築くための教育であることが第一の目的であった。しかし、現代において義務教育の

目的が市民を育成するために基礎教育を身につけさせるに止まらず、「個性」の尊重に関

して認識を強めてきていることを答申や学習指導要領から明らかにしていきたい。

まず現在施行されている新学習指導要領「生きる力」の総則の一部を引用する。

「・・・学校の教育活動を進めるに当たっては、各学校において、生徒に生きる力

をはぐくむことを目指し、創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で、

基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決す

るために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体的

に学習に取り組む態度を養い、個性を生かす教育の充実に努めなければならない。

その際、生徒の発達の段階を考慮して、生徒の言語活動を充実するとともに、家庭

との連携を図りながら、生徒の学習習慣が確立するよう配慮しなければならな

20 中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/960701.htm 

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い21。」

ここで文部科学省が示す「個性」とはどのようなものなのだろうかという疑問を抱く

広辞苑によればその意味は、「①(individuality)個人に具わり、他の人とはちがう、その

個人にしかない性格・性質。②個物または固体に特有な特徴あるいは性格。」であるが、

そもそも教育において「個性」を意識した指導というものは、近年になって始まったも

の で は な い 。 「 個 性 」 と い う 用 語 自 体 は 明 治 初 期 に 「 individuality 」 、

「individualität」の訳語として作られたものであり、これが 20 世紀初頭以降に一般に

使用されるようになったのだ22。しかし明治期にはすでに議論されていた「個性教育」は、

なかなか定着することがなかった23。工藤は、「個性を生かす教育とは、履修における選

択幅設定のアプローチ、指導方法、指導体制として個に応じた指導を重視するアプローチ

がある24。」と述べており、「個性」の教育は「ゆとり教育」や「自ら学び、自ら考える

力」といった他の教育概念の影響を受けながら現在に至ったことを記している。

では個性に関する内容が記されるようになったのは具体的にいつからなのだろうか。

学習指導要領の変遷とその改訂の背景から明らかにしていく25。

文部科学省が示す変遷を辿ると、個性が意識されて学習指導要領が改訂されたのは昭和

43年度からである。昭和43年の改訂では、国民生活の向上と文化の発達、国際的な地

位の向上といった社会的変化から、児童の発達の段階や個性、能力に即し、かつ学校の実

情に適合する必要が生まれた。そうして学習指導要領の改訂の方針としては3点挙げられ

た。

ア.小学校の教育は、教育基本法及び学校教育法の示すところに基づいて人間形成におけ

る基礎的な能力の伸長を図り、国民育成の基礎を養うこと。

イ.人間形成の上から調和と統一のある教育課程の実現を図ること。すなわち、基本的な

知識や技能を習得させるとともに、健康や体力の増進を図り、正しい判断力や創造性、豊

かな情操や強い意志の素地を養い、さらには、国家及び社会について正しい理解と愛情を

育てること。

ウ.指導内容は義務教育9年間を見通し、小学校段階として有効・適切な基本的な事項に

精選すること。この場合、特に時代の進展に応ずること。

21文部科学省「新学習指導要領「生きる力」第1教育課程編成の一般方針」http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/sou.htm(2013 年 8月 28 日取得)22石川衣紀, 高橋智「明治期の「個性」「個性教育」論の動向と鈴木治太郎の「個性の差」に応じた教育実践 : 大阪府師範学校附属小学校「特別教室」を中心に」 ,『白梅学園大学・短期大学紀要』49, 2013, pp.17-2923工藤文三「学習指導要領の基準性と学力観(第 1 部 <特集>学力問題の多面的考察)」,『学校教育研究』21,2006, pp.20-3624 工藤「前掲」25文部科学省「学習指導要領等の改訂の経過」http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/__icsFiles/afieldfile/2011/03/30/1304372_001.pdf(2013 年 8月 28 日取得)

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続く昭和52年の改訂では、高等学校へ進む生徒数の増加への対応が急務とされ、知徳

育が意識された改訂が行われた。この改訂にあたって、昭和48年に行われた教育課程審

議会では次のようなねらいが列挙された。

① 人間性豊かな児童生徒を育てること。

② ゆとりのあるしかも充実した学校生活が送れるようにすること。

③ 国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視するとともに児童生徒の個性や

能力に応じた教育が行われるようにすること。

これを受けて学習指導要領では、自ら考え正しく判断できる力をもつ児童生徒の育成が

意識され、道徳教育と体育の重視や教科の基礎基本を精選、またゆとりある学校生活につ

いて言及されることになった。

平成に入ると社会はより複雑さを増し、経済的な発展は教育にも大きな影響を与えた。

これを受けて昭和60年の教育課程審議会では、

① 豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図ること。

② 自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を重視すること。

③ 国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し、個性を生かす教育の充実を

図ること。

④ 国際理解を深め、我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視すること。

という4つの留意点が挙げられた。これ自体には昭和52年の学習指導要領改訂に関わっ

た昭和48年の教育課程審議会の方針と大幅な変化は見られないように思える。しかし以

後21世紀を目指し、さらに複雑化が予想される社会に対応できる「心豊かな」市民にな

ること、さらに生涯教育という言葉が叫ばれるようになり、これにより「個性」が内包

するものの幅が広がっていった。平成元年に改訂された学習指導要領の中でも次のよう

な方針が挙げられている。

 「・・・各教科の内容については、小学校段階において確実に身に付けさせるべき

基礎的・基本的な内容に一層の精選を図るとともに、基礎的・基本的な内容を児

童一人一人に確実に身に付けさせるようにするため、個に応じた指導など指導方

法の改善を図ることとした。また、個性を生かすためには、児童一人一人が自分

のものの見方や考え方をもつようにすることが大切であり、各教科において思考

力、判断力、表現力等の能力の育成や、自ら学ぶ意欲や主体的な学習の仕方を身

に付けさせることを重視した。」

ここにおいて「個性」とは、これまでの能力と近しい意味を持つものとして共に述べら

れる傾向にあった用途を越えて、各々の物事に関する自由な思想やその表現にも達して

いることがわかる。これ以降、「個性」は主体性や生きる力とも密接な関係を持つもの

として言及されるようになっていった。

 最後に現代における「個性」の意味を示すために1997年の21世紀を展望した我が

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国の教育の在り方についての答申に言及する。この答申の第一章は次の文章から始まっ

ている。

「教育は、「自分さがしの旅」を扶ける営みと言える。子どもたちは、教育を通

じて、社会の中で生きていくための基礎・基本を身に付けるとともに、個性を

見出し、自らにふさわしい生き方を選択していく。子どもたちは、こうした一

連の過程で、試行錯誤を経ながら様々な体験を積み重ね、自己実現を目指してい

くのであり、それを的確に支援することが、教育の最も重要な使命である。こ

のような教育本来の在り方からすれば、一人一人の個性をかけがえのないもの

として尊重し、その伸長を図ることを、教育改革の基本的な考え方としていく

べきである26。」

こうして明確になってきたのは、個性とは学習に関する得手不得手や身体的な特徴か

ら広がりを見せ、現在ではその子どもの生涯を通じて軸となるような性質といったとこ

ろまでを指す言葉となったことである。ここにおいて、本章第1節で扱った法律につい

て想起してほしい。日本国憲法、学校教育法、教育基本法において個性について詳細が述

べられていただろうか。それぞれの法において基礎教育と個性の尊重を指すと思われる

文言はあったものの、その比重も異なるようにも感じられた。

こうした法と理念はどのように関わっているのだろうか。文部科学省は平成17年の

初等中等教育分科会の審議の中で、義務教育の目的を「国民が共通に身に付けるべき公教

育の基礎的部分を、だれもが等しく享受し得るように制度的に保障するものである27。」

と述べている。しかし達成の指標となるはずの目標としては、小学校段階では、学校教

育法において詳細な事項が決められているにもかかわらず、中学校段階においては明確

な指標が掲げられてこなかったことを認めている。義務教育の終了地点となる中学校段

階の目標が決められていなかった原因としては、戦後の新体制の中で十分な検討の余地

がなかったことを挙げているが、四半世紀経った現代において再検討がされてこなかっ

たことは大きな反省点であろう。一方で、文部科学省の答申の中では、義務教育に関して

二つの目標とも言える文言が見られるようになった28。しかしこの個性の尊重に関して、

法的に明確な指針が記されていない。

こうした時、義務教育が果たすべき目標は非常に曖昧で途方もないものではないかと

感じる。この懸念点に関しては次節に任せて本項は閉じることにする。

26中央教育審議会「21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について (中央教育審議会第二次答申(全文))」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/970606.htm (2013 年 8月 14日取得)27文部科学省「第Ⅱ部 各論第 1 章 教育の目標を明確にして結果を検証し質を保証する-義務教育の使命の明確化及び教育内容の改善-」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05082301/003.htm(2013 年 4月 19 日取得)28

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第2項 オルタナティブを求めて

 前項までで明らかになったように、現在の義務教育は基礎教育にとどまらず個性の尊

重を目標としたことで、様々な複雑な要素を達成すべき機関となりつつある。そうした

中で、近年注目されるようになったのが、従来の学校教育とは異なる教育、いわゆるオ

ルタナティブ教育である。世界的に見ても、国の画一的な教育に対しての不満や不都合な

どから、従来とは違った形の教育を求める人たちの動きは様々に起こっており、それが

従来の制度を拡大、変更へと導くケースさえ発生している。

 実際に日本でも、学校選択制度が一部施行されていることは公立学校においては学区制

を採っていた義務教育の基本的な姿勢を揺るがす出来事であるといえるだろう。学校選

択制は2000年に品川区で導入されて以来、東京都を中心に地方にも広がり始めている

制度であり、法的にも認められたものである。様々な批判はありながらも、全国で何ら

かの形で学校選択制を採用している自治体は、小学校では8.8%、中学校で11.1%

である29。

そうした一方で、まだ法的には認められていない教育体制も存在している。その代表

として挙げられるのがフリー・スクールとホーム・スクールである。フリー・スクール

は、特に不登校の生徒の救援策として設置された機関で、様々な角度からの研究が進み、

全国でも支援の輪が広がっている30。そして本稿で筆者が着目していこうとしているのが、

ホーム・スクールである。詳細については次章以降で述べていくが、学校選択制度、フ

リー・スクールと比べてもまだ日本では認知が低いこと、学校に通うという体制はとら

ずに、家庭を教育の中心としていることが前掲の二つとは異なる点である。なぜ学校か

ら離れて教育を行うという選択肢が生まれたのだろうか。現代においてそれは子ども達

にとってより有益な選択肢だと言えるのだろうか。次章から検討していきたい。

第2章 アメリカにおける公教育とホーム・スクール

日本におけるホーム・スクールを考察していくにあたり、本章ではホーム・スクール

の発展が最も活発であるアメリカを取り上げる。アメリカは全州でホーム・スクールが

認めており、ホーム・スクールを受ける子ども達の数は2010年の調査では192万

人31を越えるとも言われるホーム・スクール先進国である。そんなアメリカではホーム・

スクールはどのように広がってきたのだろうか。またどのような理念や制度の上に成り

立っているのだろうか。

29 藤田『前掲』p.140 より引用30 佐川佳之「フリースクール運動における不登校支援の再構成-支援者の感情経験に関する社会学的考察」『教育社会学研究』87,2010,pp. 47-6731 National Home Education Research Institute, “Growth of Homeschooling in the United States” http://www.nheri.org/(accessed Apr.21th,2013)

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本章でまず第1節において、アメリカの公教育の歴史と理念について考察し、ホー

ム・スクールが発展した背景を探る。アメリカにおける教育の特徴やその他の教育形態

についても提示していく。そして第2章ではホーム・スクールを定義し、その発展と現

状について取り上げる。最後にはアメリカにおけるホーム・スクール実施の問題点につ

いても触れることとする。

第1節 公教育の発展と基本的理解3233

 ここではアメリカの学校教育の発展を理念面と制度面の両方から概観していく。まず

マ様々なバックグラウンドを持つ国民が集まるアメリカにおいて、全ての国民が平等な

権利を持つために教育改革が行われたことに触れ、そうした市民からの改革の動きが現

在の教育に大きく影響していることについて述べる。理念面に関してはクレミンの見解

を用いて、アメリカの教育の特徴を示す。その上で、アメリカで現在実施されている複

数の教育形態を紹介する。

 アメリカで義務教育を行おうとする動きは1642年にマサチューセッツで始まった

が 、それが全州で実現したのは、長い年月を経た1918年の出来事である。つまり現

在の、学校に通い、カリキュラムに沿って授業が行われるというスタイルはまだ歴史の

浅いものなのだ。そうして学校は産業社会の発展と国民統合という使命の下に、移民の子

どもたちに対して「アメリカ人」としての人間形成をする責任を果たすこととなった。

そんなアメリカの学校教育が大きく変化したのは、1970年代の公民権運動によって

であった。

 それまで行われてきた「平等な」教育から排除されていたマイノリティたちは、これ

をきっかけに人権の確立、そして社会的成功を目指して、教育現場でも平等を主張し、白

人と同じレベルでの学校教育へ参加するために闘った。その結果、教育はマイノリティ

達にとって平等な機会を享受する象徴となるまでになった。この運動はマイノリティだ

けでなく、アメリカの教育全体を変化させる出来事となり、ホーム・スクールにも大き

な影響を与えた。これについては本章の第2節で触れていくこととする。

 

 またアメリカは日本のような中央集権的な体制はとっておらず、各州に教育に関する

権限が与えられている。これは1791年制定の憲法修正第10条の、「本憲法によって

合衆国によって委任されず、また各州に対して禁止されなかった権限は各州それぞれに

または人民に留保される。」という規定に属するからである34。これにより、アメリカで

は州ごとに学校の種類やそれに関する法制度にも差異がある。同じ校種に対してもどの

程度の規則が存在するのかもまちまちだ。しかしこれによって広い領土におけるそれぞ

れの地域性に留意した教育を担保しているといっても過言ではない。

32 Terry, Bobby K., “Homeschooling in America a Viable Option” Online Submission, 201133 Hazlett, Lisa A., “American Education's Beginnings” Forum on Public Policy Online, 201134田浦武雄『アメリカ教育の文化的構造』,名古屋大学出版会,1994, p.7

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さらにこうしたアメリカの教育における基本的な理念について、教育学者クレミンの

見解を基に言及していくことにしたい。

1.多様性:広い国土、多様な人種ゆえに教育制度も州によって異なる。憲法修正第十条

によって、各州がその教育を定める、つまり中央集権的な規制を行わないという伝統が

続いている。州もまた厳しく規制を行わず、各地域や学区の考えを尊重する姿勢をとる。

また教育における実験的行為が多く為されており、それが成果を出すと他の地域へと広

がっていく傾向がある。

2.包括性:他国において各種学校に分化された機能を一つの機関が包括的に果たす。例

えば総合制ハイスクールはアメリカ公教育の典型として、進学や就職などの多様なニー

ズに応える機能を包括的に果たしていると言える。

3.公共性:これは他国でも共通した理念だと言えるが、アメリカでは公共性において

アカウンタビリティが引き合いに出されることが多い。1.多様性の中で示したように、

アメリカでは教育的実験がよく行われるが、その目先の効果に関してばかり注目されが

ちである。公的資源を利用して教育的投資が行われた成果に関する、つまり垢生んだビ

リティに対する適切な判断が求められる。

4.普遍性:全ての子ども達に公教育を与えること。これはアメリカ公教育の当初から

の目標である。高等教育研究家の M・トロウ によれば現在アメリカの大学はマス段階か

らユニバーサル段階に入っている。そして、その基礎にあるものはやはり公教育の機会

を全ての国民に平等に提供するという教育理念であると言える。

こうした性質を持つアメリカの教育理念の中では、様々な教育形態が生まれた。次に

それを紹介していく35。

・Open Enrollment:学齢期の子ども達の15%がここに属している。多く分けると学

35 Davis, Jennifer, “School Choice in the States: A Policy Landscape” Council of Chief State School Officer, 2013

Davis, Jennifer, “School Choice in the States: A Policy Landscape” Council of Chief State School Officer, 2013, p.5 “Conceptual Diagram of School Choice Types Included in the Policy Landscape”

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区に縛られない Interdistrict と指定された学区の学校に通う Intradistrict の二つの制度

がある。もっとも一般的なのが Magnet school であり、これは学区が特定されない場合

も多く、各校が特定の方針を立て、それに沿った教育が為されている。Magnet schoolは1970年代及び1980年代の人種差別撤廃運動の中で急激に数を増やしていった。

その他には Career and Technical Education(CTE) school があり、こちらも州によっ

て学区外の選択な場合もある。

・Charter Schools:比較的新しい種類の学校で、1991年に最初の学校が設立され

た。そこから数を伸ばし続け、全体のおよそ3.7%の子ども達が通っている。Charterと呼ばれる目標契約のもと、経営が認可された学校で、無宗教の公立学校に分類される。

各校の裁量に任されている分、chater が達成できなかった場合には chater は無効にな

り、新たなものを定めねばならない。

・Homeschooling:学齢期の子どものうち3.4%がこの教育を受けている。(ここで

は詳細については割愛することにする。)

・Private School:全体の0.3%の子どものみが Private School に通っている。基本

的に教育にかかる資金を自費で払わねばならないが、州は Vouchers または Tax Credits & Dedutions という形で資金的援助を行っている。前者は1970年代に実施されるよ

うになり、後者は1990年代に実施され始め、neovouchers とも呼ばれている。

・Online and Virtual Schools:基本的には前述のようなネットを使用しない学校の補

助的な役割を果たすものとして存在している。1990年代からそれ以降に広がったも

ので、国営でもなくコースの受講数しかわからないため、これを受けている子どもの数

は明確になっていない。

 

このようにアメリカでは伝統的な学校以外にも多様な選択肢の中から受ける教育を選ぶ

ことができる。そしてその多くが、1970年代以降に広がってきたものであることが

わかる。次節ではアメリカのホーム・スクールにフォーカスしていくが、これもやはり

この1970年代に勢いをつけたものの一つであった。

第2節 ホーム・スクールの誕生と発展

前節ではアメリカの公教育の発展と理念について扱い、現在行われているいくつかの

教育形態について言及したが、本節ではその中でもホーム・スクールに注目していく。

ホーム・スクールは現在アメリカで広く認知されており、全州で行われている。ではそ

のホーム・スクールとはどんなものなのだろうか。

 本節ではまず第1項でホーム・スクールの定義やその3つの形態36を先行研究より紹介

する。その後ホーム・スクールの誕生と発展について、20世紀後半において公教育批判

の中で勢いを増し、その後1990年代以降社会的にも認められたことで現在に至るまで

36 法的な視点から見た分類。

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拡大したという二回のホーム・スクール拡大期に注目しながら述べていく。言及してい

くこととする。

第1項 ホーム・スクールの成り立ちと定義

 ホーム・スクールの定義を示すにあたり、まずはどのようにしてホーム・スクールが

誕生したのか、その基本となる理念は何かについて示していく。

ホーム・スクールはその名の通り、家庭で子どもを教育することである。家庭におい

て教育を行い、親がその責任を負うということに関して言えば、その誕生は英国植民地

時代にまで遡ることとなる37。当時の子ども達は親と一緒に働きながら生活していく上で

必要な知識を学ぶに加えて、読み書きと基礎的な算数を教わっていた。その上で教科書と

しての役割を果たしていたのが聖書であった。これは学校への出席が義務化させるまで

続いた。先ほど義務教育の出発は1852年のマサチューセッツでの運動からだと述べ

たが、その頃公教育として教授しようとしていたのは実は英国植民地時代に教えられて

いた聖書をベースとした教育であった。しかしこれはすぐに人文主義的な教育と取って

代えられてしまったのだ。人文主義においては無宗教の視点から教育が為されるため、

聖書の精神を教育の中心として置くべきだと考えていた人々はその権限を奪われるとい

う結果になってしまった。

“Homeschooling allows the parent to take complete responsibility for his or her child’s academic and moral upbringing which is founded in scripture.38”とあるよ

うに、根本に宗教が関わっているため、現代においても宗教的信条がホーム・スクール

には深く根付いているのだ。

大久保39は、「ホーム・スクールは学校に通わせることなく家庭において子どもを教育す

る教育形態である。」 と定義している。また吉井40は、ホーム・スクールを「学校教育へ

の参加を一つの選択肢として」 「家庭と地域を拠点に、学校教育を含む様々な教育資源

を活用して」 教育を行うと述べている。大久保も述べているように、現在ホーム・ス

クールが教育の場としているのは、家庭に限らない。家庭を中心とした地域や学校、そ

して時には支援団体をも含んで教育を行っているからだ。アメリカではホーム・スクー

ルが法的に認められているわけであるが、その場合いくつかの条件があることが大半で

37 Terry, Bobby K., “Homeschooling in America a Viable Option” Online Submission, 2011,pp.11-1238 Terry, Bobby K., “Homeschooling in America a Viable Option” Online Submission, 2011, p.1439大久保卓治「ホームスクール実施要件とその憲法的評価―合衆国各州の規制と判例を手がかりに―」 ,『大阪学院大学通信』33(12),2003, pp.19-2940 吉井「前掲」

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ある。比較的規制の緩いアラスカ州を例に挙げてみると、3つの形態に分けることがで

きる。

第一は、私立学校の一種としてホーム・スクールを行う場合である。第二は、州もしくは

学区の通信制プログラムにフルタイムで就学する場合である。第三は、親や法定保護者

が自宅で子どもを教育する場合である。これら三つはそれぞれ細かな原則が存在してい

るが、いずれもその条件を満たすことで、公立学校への就学が免除される。それぞれの

形態によって州の教育長に届け出が必要であったり、ホーム・スクールの教師となるた

めの条件も設置されていたりと、州によって多少の差異はあるもののこうした条件を設

けることでホーム・スクールは社会的にも認可されている。アメリカ全州で行われてい

るホーム・スクールは基本的に今挙げた3つのうちのどれかに属する形で認められてい

る。

 こうしたことから本稿でのホーム・スクールは「宗教的信条がその根幹にあり、必要

に応じて学校も含めた他の教育資源を利用しながらも、家庭を中心として子どもを教育

する教育形態」と定義したいと思う。なおホーム・スクーリングやホーム・ベイズド・

エデュケーションは同義として扱う。またホーム・スクールを行う保護者及びホーム・

スクールを受ける子どもをホーム・スクーラーと呼ぶ。

第2項 ホーム・スクールの発展

 前項で示したように、ホーム・スクールの大元は公教育が興るより昔の植民地時代にあ

る。しかしそれが現在に至るまでに緩やかに増加してきたわけではない。ホーム・ス

クールの発展は2回の大きな波が存在しており、第1波は1970年代、第2波は199

0年代と言える。この時期に注目しながら、本項ではアメリカにおけるホーム・スクー

ルの発展について、それに関わる裁判と法律、また公的支援を記すことで探っていこう

と思う。

現在は全州で合法と認められるようになった ホーム・スクールだが、その社会的地位が

確立したのは1990年代に入ってからだといえる。ではそうなる以前、ホーム・ス

クールはどのような形で存在していたのだろうか。

 アメリカにおける公教育批判は元を辿れば1930年代のデューイまでさかのぼるこ

とになるが、そうした批判が私立学校やホーム・スクールを増加させる結果になったと

言える 。そうした一方で、1960年代から1970年代にかけて、アメリカでは公教

育を批判する内容の書物が多く出版された。 その代表としては、ジョン・ホルトやイ

ヴァン・イリイチがいるが、ホルトの思想は後のホーム・スクール運動にも大きな影響

を及ぼすこととなった41。こうした思想家に後押しされ、ホーム・スクールは拡大してい

くことになる。

41秦明夫・山田達雄訳『ホームスクールの時代』東信堂,1997

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 そしてホーム・スクールの実施が法的に争われるようになったのは、1970年代に

入ってからであった。ホーム・スクールをめぐる訴訟は、学校教育に関わる権限の針の

穴をくぐるような形で繰り広げられていった。当初争われたのは教育の自由の権利に関

してで、こうした裁判で保護者側が勝訴し、画期的なものとして知られるようになった

のは、1972年に行われたウィスコンシン州対ヨーダーの訴訟である。裁判所はアー

ミッシュの親に8学年以降自分の子どもを教育する権利を認めたのだ。この判決は「宗教

的な信条の自由と義務教育との関係に関する通念から離脱したもの」 だと言えるが、誰

が子どもの教育に対して最終的な決定権を持つかについては、判断が示されなかった。

 またそうした権利とは別に学校への出席義務についても多くの裁判が行われ、ホー

ム・スクールを行おうとする親たちは、公立学校や私立学校と同等のものとしてホー

ム・スクールを認めるべきであると主張した。一方では、同等のものである必要はない

ものの、代替的な教育方法を選ぶことはプライバシーの権利とも関わっているという憲

法修正第九条を引き合いにして議論されることもあった。こうした裁判は徐々に件数を

減らしており、例外はあるものの、ホーム・スクールを正規の教育に対してオルタナ

ティブな選択肢として認める傾向は強くなっているといわれている。アメリカにおいて

ホーム・スクールを選択する場合には大きく分けて二つのパターンがあると言われてい

る。まずは宗教信念に基づく場合である。これがホーム・スクールを行う理由の多数だ

と言われている。 もうひとつは公立学校への不信感からホーム・スクールを行う場合で

ある。親たちは学校教育が画一的であること、またモラルの低下に失望したことから、

自分が家庭で教育した方がよりよい教育を施すことができると考えるホーム・スクール

に踏み切るのだ。こうした事例からもわかるように、アメリカにおいてホーム・スクー

ルを行う場合に理由として挙げられるのは宗教的理由と公教育への不満である。

 一方で1980年代には、たくさんのキリスト教系の私立学校が税金の問題から閉校と

なっていた。これに伴い、それらの学校に教科書を供給していた出版社はその消費者を

ホーム・スクーラー達に切り替え、市場を再形成した42こともホーム・スクールが確立し

ていく段階のよい足がかりになる出来事であったと言える。

 こうした論争の後、1993年にホーム・スクールは全州で合法とされるに至った 。

それに伴い、ホーム・スクールを取り巻く環境はさらに変わってきており、それを支援

する仕組みも様々に存在している。まずは公立学校との連携である。カルフォルニア州

サンディエゴ市学区では、CHE(Community Home Education Program)により学校

と家庭の連絡役が配備され、ホーム・スクールで学習している子どもでも教科書やテス

ト、カウンセリングなどのサービスを受けることもできる。 全国レベルにおいても、

ホームエデュケーション全米センター(NCHE)や全米ホーム・スクール協会(NHA)が

42 Taylor-Hough, Deborah, “Are All Homeschooling Methods Created Equal?” Online Submission, 2010, p.3

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ホーム・スクール支援団体に情報や支援サービスを提供している。これら二つは宗教色

の強いホーム・スクーラーたちとのつながりは薄いものの、そうした人々はまた別に交

流し合い、互いに情報を共有しているようだ。

 ホーム・スクールに関する教育法もいくつか確立しており、有名なものとしては、

ホ ー ム ・ ス ク ー ル の確立 者 の 一 人 で あ る John Holt に も 大 き く影響を与え た

Unschoolingや19世紀終わりから20世紀初頭にかけて生きたイギリスの教育者

Charlotte Mason の考案した The Charlotte Mason method がある 43。この方法は

Mason の教育の精神である子ども達が生涯において学ぶことが好きになるということが

具現化されたものである。Levison44によれば、児童向けの本を避け、さらに教科書を使

用するのでもなく、一流の文学作品を読ませること、そして様々な深刻な問題に関して

探究することに焦点を置いている。現在この方法は主に保守的なキリスト教信者が利用

している。こういった教育法を利用してホーム・スクールは行われているのだ。

第3項 ホーム・スクールの現状

National Home Education Research Institute 「Growth of Homeschooling in the United States」http://www.nheri.org/ 

 National Home Education Research Institute(NHERI)によれば、2010年時点

でのアメリカでのホーム・スクール人口は、192万人であると言われている 。前項で

言及したようなホーム・スクーラーのネットワークはさらに拡大しており、アメリカと

いう国を越えて国際的なレベルで行われている事例もあるようだ 。ホーム・スクールと

いうとその家庭でのみ行われている非常に閉鎖的な、身勝手な行為だと考えられがちだ

43 Taylor-Hough, Deborah, “Are All Homeschooling Methods Created Equal?” Online Submission, 2010, p.7-44 Levison,C., “A Chalotte Mason education: A homeschooling how-to manual” Bevely Hills, California: Champion Press.Ltd.(孫引き)

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が、アメリカでの現状は決してそのようなものではなく、同じ信条を持った親たちが互

いに支え合い、それを認める形で学区の公立学校や州も支援をしているというのが現状

である。

 法的に見ると、先ほど挙げた3つの形態のいずれかとしてホーム・スクールは行われ

ているが、現在はホーム・スクーラーのみを対象とした、Family Partnership Charter School(以下 FPCS)という学校も存在している 。学校と言っても実際の校舎はなく、

管理・運営を行う事務所だけが存在している。FPCS はホーム・スクーラー達が望むよう

な親の広い裁量権を侵害することのない、親中心の学校運営を実現している。一方でもち

ろん学校としての規制も存在している。しかしその規制も親の裁量権というものを最大

限考慮にいれ、サポートのレベルに抑えることによってホーム・スクールの実践の良き

パートナーとなっているのだ。

第3節 先行研究にみるホーム・スクールの問題点

最後に先行研究を用いて、現在ホーム・スクールにおいて懸念される点について言及

しておきたいと思う。ホーム・スクールについて語られるとき、必ず引き合いに出され

るのが学力に関する点と社会性に関する点である。まず学力に関しては、全米で行われ

た調査によって公立学校に通う児童生徒と比較したとき、全く遜色ないどころか学力が高

いという結果が報告されていたり、大学への進学率も高いことが報告されている。 これ

を鵜呑みにしてよいのかについては検討が必要だか、こうした調査が行われた結果は注

目に値するといえる。続いて社会性については、具体的な調査こそ見当たらないが、先

行研究者の秦45はホーム・スクールでは社会性が育たないという批判に対して次の二点を

挙げ、反論している。

「一つは、情報化社会、生涯学習の時代といわれる今日、子ども達が人間関係を体

験する場はボランティア活動をはじめ多種多様なものがあることを無視している点

である。子ども達が生活する場は学校に限定されなくなったという事実を直視すべ

きである。二つ目は、ホーム・スクールの子どもは家のなかに閉じこもりがちだと

誤解していることである。・・・アメリカのホーム・スクールの子ども達の生活を

みると図書館や博物館その他の文化施設を大いに利用しているし、館員とも有効な

関係(つまり仲良しになって)にあり、多くの場合ボランティアとして館の活動に

参加している。なかには、学校でのボランティア活動(多くのホーム・スクーラー

が交替で週に一度ずつ学校に行き一年生に本を読んでやるなど)の活動に参加して

いる例も多い。」

確かに学校は同年代の子ども達と人間関係を築くためには最適の場所に思える。しかし、

アメリカにおいては学校に通わねばそうした社会性が身に付かないのか。このように学

校や地域との連携も図れている状態であれば、そうとは限らないのではないだろうか。

45秦明夫「我が国における「ホームスクール権」の形成」,『CONTEXTURE』21,2003, pp.5-16

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また、佐々木46はカリフォルニア州の法令について研究する中で、ホーム・スクールが

合法であるという主張は適切ではないと述べており、ホーム・スクールを「公」教育の

一つとして認めてよいかについてはまだ不明確な部分もある。

 

本章で見てきたように、ホーム・スクールは親たちの強い思いの下に発展し、全州で

法的にも認められるようになった。支援体制も充実しており、全米を巡るネットワーク

によってホーム・スクーラー同士は交流し、互いに支え合えるようにもなった。また州

ごとに教育体制や規制が異なるものの、法的な権利を与えると同時に制限をかけること

により公教育と同様に州の利益に適った教育となってきた。この利益とはつまり、「開

かれた市民社会に参加できるような市民を育てること」、「自立・自活できる社会の一員

となるための準備」である。州ごとにその姿勢に違いはあれど、アメリカではホーム・

スクールが単純に親の教育する権利の尊重、子どもの個性の尊重や信仰の自由とならない

ように権利と規制のバランスを取っているのではないだろうか。

第3章 日本におけるホーム・スクールの実施検討

前章ではアメリカのホーム・スクールについて言及した。アメリカでは長い年月の中

で、宗教的理由から、また公教育への不満からホーム・スクールが選択されてきた。

ホーム・スクールの動きが始まった当初は法的には認められなかったため、保護者と州

が対立して裁判で争うケースも見受けられた。しかしそうした結果、現在では全州で

ホーム・スクールが認可されるようになった。それに伴い、ホーム・スクールを取り囲

む支援制度も整うようになり、近年では学校教育との連携も図られるようにまでなった

のだ。さらにその教育方法もよく練られており、いくつかのスタンダードさえ存在して

いるということもわかった。

そんなホーム・スクールが近年日本でも動きを見せている。我が国におけるホーム・

スクールとはどのような取り組みなのだろうか。本章では日本におけるホーム・スクー

ルの実施可能性について検討していきたい。そのために、まず第1節第1項で現状の分

析を行い、第2項において現在の日本のホーム・スクールとそれに関する研究を取り上

げる。

その上で第2節では第2章で取り上げてきたアメリカのホーム・スクールとの違いに

ついて言及していく。そうすることで、日本においてホーム・スクールは今後実施され 、

社会的に認められていくに値するものであるのかを検証していきたい。そしてそこで得

られた結果を次章であり、本研究の目的である、今後の義務教育を再考する材料としたい。

46佐々木司『カリフォルニア州学校選択制度研究』風間書房,2007,pp.81-98

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第1節 日本のホーム・スクールに関する現状の分析と先行研究検討

 第1項 日本のホーム・スクールに関する現状の分析

 日本のホーム・スクールはどのようにして現在に至ったのであろうか。本節ではそれ

を明らかにしていく。

 日本においてホーム・スクーラーが登場したのは1990年代初頭であった。 アメリ

カのホーム・スクールに影響されて各家庭で始められたが、同時はインターネットの普

及も十分ではなかったために、同じようにホーム・スクールを行っている家庭を見つけ、

交流することは非常に困難であったようだ。それが2000年になると、特定非営利法人

である日本ホーム・スクール支援協会(以下 HoSA)が全国的なネットワーク支援を開始

し、他にもいくつかの大規模支援団体が発足した。現在ではそうしたネットワークを利

用して、勉強会やセミナーといった交流の場が設けられるようになった。

 現在日本では、約2~3千人のホーム・スクーラーが存在していると言われている。

とはいうもののしっかりとした調査が行われていないことや、不登校との線引きが難し

いことから正確な数値はわからないのが現状だ。では現在日本でホーム・スクール選択

した人々はどういった経緯から、それを選んだのだろうか。それはやはり、不登校と深

く結びついているようだ。文部科学省によれば 、全国の不登校者数は平成20年度時点

で、小学校では22,652名で、中学校では103,985名である。しかしこれと同

時に長期欠席者数(30日以上)が発表されている。ここにはその理由別に病気、経済的

理由、不登校、その他と分類されているが、ホーム・スクールを行っている人数に関し

てはその他に分類されているのではないかと考えられる。HoSA のホームページ上の発

表によれば、現在会員数は1000世帯に及ぶとのことであり 、これは西川の論文で2

001年当時登録世帯が258世帯であった ことから考えると4倍に膨れ上がっている。

 そうした一方で、ホーム・スクールと身近な公立学校との連携はうまくいっていない

そればかりか、ホーム・スクールは合法的な教育手段とされていないために、不登校と

して扱われている。では不登校とホーム・スクールとの違いは何なのだろうか。西川が

行った調査から見ても、子どもの不登校がホーム・スクールを始める要因の大部分を占

めているということは明確である。

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その他ホームスクーラーの成功例

子どもの不登校両親の信条

公教育に対する不満

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

14%

0%

57%

29%

14%

14%

7%

71%

21%

21%

関西関東

 (『日本でのホーム・スクール開始動機』西川47を基に自主作成)

西川は研究の中で、ホーム・スクーラー達には学校に通わねばならないという強迫概念

がないところで不登校との違いを述べている。不登校の家庭は学校には通わねばならな

いもので、その環境に戻ることを目標として固持している。しかしホーム・スクーラー

たちは、学校は一つの選択肢としてとらえ、義務的に学校に通う必要性から解放されて

いるというのだ。確かに現在日本の義務教育は年齢主義であるため、

学校に通わずとも義務教育課程を修了できることも事実である。つまり、ホーム・ス

クールで義務教育を行うべき時間を過ごしながらも、地域の学校に在籍しているという

状態が継続することとなるのだ。学校側の多くはホーム・スクールを行うことに関して 、

ただ黙認するしかないという状態となり、そちら側としては不登校となんら変わりがな

いとさえ言えるのではないだろうか。

47 西川「前掲」

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 さらに不登校に関する調査を見てみると、その実状は私たちが思うものとは少し違う

様相を見せているように感じる。まず昨年文科省によって行われた調査48によれば、不登

校は主なきっかけであるように思われがちないじめは小・中学校合わせた不登校のきっ

かけとして、2.0%とされている。きっかけとして高い割合を示しているのは、高い

方から順に「不安などの情緒不安定」(26.5%)、「無気力」(24.4%)、「い

じめを除く友人関係をめぐる問題」(14.7%)、「親子関係をめぐる問題」(10.

5%)でその他と不明を除く残りの17項目は全て10%以下を示している。また小学校

においては43.7%、中学校においては86.5%の学校に不登校の児童生徒が在籍し

ており、不登校は子ども達にとって非常に身近なものになっている。

 また、ホーム・スクーラーの中には学校から完全に離れるのではなく、地域の学校に

顔を出しているというケースもある。しかし、これに関する担任からの反応としては、

周囲の子どもへの迷惑行為であることや、やりたいことしかこなさないわがままな子ど

もに育つ49と記されており 、やはり日本ではホーム・スクールはただの身勝手な試みで

あるというとらえ方が通例であり、学校側の困惑が大きいという事実が見てとれる。

 第2項 日本のホーム・スクールに関する先行研究検討

第1項では日本でのホーム・スクールの広がりとともに、学校との連携が取れていな

いという問題点について言及した。こうした中で日本におけるホーム・スクールに関し

てどのような先行研究がされているのだろうか。本節では三人の先行研究の概要を紹介

し、最後にそれらの研究に対して筆者の意見を述べていくこととする。

①秦明夫50

秦は教育権の所在を軸として論を進めている。彼は、教育権は本来親にあるはずであ

るから、ホーム・スクールを行うことは親として当然の権利であると主張する。日本は

戦後の教育権論争の中で国家の教育権に関して話し合われたが、その際具体的な「この

子」の教育という視点が欠落していたのではないかと指摘する。政策の中では一人ひと

りの子どもは数量でしか存在せず、その子をかけがえのない存在として見ることができ

るのは親だけである。親は自然法的な感情に基づいてその子どもの教育権を国家に委託

しているだけであるから、これを自分で行おうとする親がでてくることは極めて自然で

あるとホーム・スクールに対して全面的に賛成の姿勢を見せている。

48 文部科学省初等中等教育局児童生徒課「平成 23 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について」http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/09/__icsFiles/afieldfile/2012/09/11/1325751_01.pdf49 吉田「前掲」50 秦「前掲」

文部科学省初等中等教育局児童生徒課「平成 23 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について」p.49

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②吉井健治51

 吉井も秦と同じく、教育の権利と自由についてを最初に論点として挙げている。そし

て彼が強調していることとしては、子どもの自己選択の尊重ということが挙げられる。

そのためホーム・スクールは子どもの意思の下で行われているという観点に立ち、論じ

られている。ホーム・スクールについて考えることはそれ自体に止まらず、子どもの主

体性を軸として、家庭や地域における教育観や教育資源、教育力に関する再検討にも繋が

ると述べている。事例紹介の後にホーム・スクールを教育臨床的視点からまとめている

が、その主張としては、学校教育にとらわれず、むしろ選択肢の一つという捉え方をす

ることでオルタナティブ教育を実現させ、「自己を基点とした生き方の追求」をするべ

きであるというものだ。最後に社会性に関して言及しており、社会性が育たないという

のは学校側が一方的に主張するものでむしろ学校という空間の方がはるかに形式的で画

一的、閉鎖的であると述べている。しかし同時に現在ホーム・スクールにおいて子ども

達が社会性を育てられる環境が整っているかに関しては言葉を濁しており、検討が必要

であると論を閉じている。

③西川由里子52

 西川はアメリカと日本のホーム・スクールに関して、その発展経緯、法律そして現状

について記している。その上で彼女も日本におけるホーム・スクール実施に関して賛成

しており、不登校の子ども達が学校を離れ、もっとホーム・スクールを選択肢として有

効活用するべきであると述べている。さらに結びには、HoSA の事務局長にインタビュー

した内容も記されている。それによれば、日本においてホーム・スクールを選択する家

庭の80%が不登校を要因としているが、これからもっと多様な理由でホーム・スクー

ルを選択する家庭は増える。教育の選択肢としてホーム・スクールが確立することは目

標であるとのことであった。そうでありながら、日本のホーム・スクーラー達はホー

ム・スクールが法律化することを望んでいないという調査結果を述べている。なぜなら

法として確立することはそこに規制が発生するからであるからだ。そしてその他の懸念

点に関してはやはり社会性を挙げ、今後研究されるべき課題として残している。

以上3つの論文について紹介したが、これらについて検討を行っていく。

3つの論文に共通することはホーム・スクールに関して、その権利や法律に着目して

論じていることである。確かに日本において教育権の所在については不明瞭だといえる

し、親がその子どもの将来に対して最も関心があることも確かである。これに関しては

義務教育が抱える問題点であり、アメリカではホーム・スクールが公教育の選択肢とし

51吉井健治「日本におけるホームスクールの可能性と課題―ホームスクールの一事例を通じて―」,『社会関係研究』6,2000, pp.55-7652 西川「前掲」

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て認められた証として合法化があったように、日本でもホーム・スクールを広く認識、

実施するためには不可欠な要素であろう。しかし西川の調査にあったように、実際の

ホーム・スクーラー達の約半数は法律として成立することを望んでいない。西川もホー

ム・スクールを選択肢の一つとすべきだと主張しているにもかかわらず、この調査結果

に関して何ら疑問や懸念を示しておらず、その立場を不明確なものにしている。吉井に

関しても、ホーム・スクールを行うことは子どもの主体性を軸に考えるべきであるとの

ことであったが、秦の取り上げた調査結果53では、ホーム・スクールを始めた子ども29

人にその理由を聞いたところ、「学校が面白くなくて、自分でホーム・スクールを選ん

だ」という回答が61%を示した。この「面白くない」が具体的にどのようなことを指

しているかはわからないが、子ども達の自主性や主体性を軸において考えることは果た

して本当によい選択だと言えるのだろうか。また吉井はこの自己選択は低学力に対する

危惧に対しても対応策として重視できるものだと述べている。アメリカではホーム・ス

クーラーが優秀な成績を修めるということは結果として表れているが、これには親の学

歴は相関していないために自己選択したことが学習の動機になって成績が上がったので

はないかと分析しているのだ。この考えは文化的、制度的な背景を十分に考慮してされ

たものだとは思えない。そして最後に吉井と西川が共に今後の課題として挙げたのが、

社会性に関する懸念である。ホーム・スクールは家庭という環境のみで成り立つもので

はない。学校や地域との連携があってこそ十分に実施できるものではないだろうか。

このように考えると、まず現在の日本におけるホーム・スクールは法律となる風潮も

感じられない。そして社会性に関する問題が残されている。学校や地域と連携するため

には法律化されることが必要である。法律となれば、今よりも社会的認識も上がり、周

囲からの理解もされるようになる可能性がある。しかしそうなることさえ望まず、現状

維持を求めるのならば、子ども達の社会性を担保することができず、ホーム・スクール

を実施する妥当性は示せないのではないだろうかと筆者は考える。

第2節 ホーム・スクールの日米比較

 本節では日本のホーム・スクールについてアメリカのホーム・スクールと比較するこ

とで検討をしていきたい。そうすることで、現状における日本のホーム・スクールの問

題点についてより明確に示していく。

 まずはここまで第2章、第3章第1節と述べてきた、アメリカのホーム・スクールと

日本のホーム・スクールについて再度ポイントをまとめておきたい。

 

 アメリカのホーム・スクールは宗教的信仰を守るために家庭においてその信仰に沿っ

た教育を行うというところを出発点としている。それが20世紀後半の公教育批判運動の

中で制度的な確立を求めて急成長し、1993年には全州で合法化されるに至った。それ

53 Hosaニュース 1992 年 2月号(孫引き)

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に伴ってホーム・スクールを行う上での資格や制限も存在している。また教育方法も長

い年月の中で確立され、公教育や地域との連携も非常に前向きに行われている。様々な

バックグランドを持つ人々が住むアメリカにおいては、基本的な教育の理念においても

ホーム・スクールは適しているものだと言われている。

 一方で日本ではホーム・スクールは不登校児への対応策として近年注目を集めるように

なった。しかし、きっかけが学校へのマイナスな感情であることに起因するためか、学

校との連携は取られていない、または学校を利用している場合でもそれは互いにとって

有意義な関係には程遠いものである。他方では学校に籍を置いておくということが可能

であるため、そのまま義務教育期間を終了してしまうことも可能である。そのためか、

ホーム・スクーラーのネットワークは形成されているが、制度化を求める運動は見られ

ておらず、むしろ制度化による法の制限を嫌っている風潮がある。

第1項 日本のホーム・スクールの問題点

 日本のホーム・スクールの問題点を述べるにあたり、筆者はアメリカのホーム・ス

クールとの差異に注目した。元々日本もアメリカも単線型という点では同一であり、平

等な機会を目指しているという理念を共に持っているとわかる。しかし平等を目指す上

でアメリカは多様な教育形態を認めてきた。その一つとしてホーム・スクールは存在し

ており、その果たす役割と理念が明確である。一方で日本では、長年、公立と私立という

二つの選択肢しか存在しておらず、近年ようやく公立校において学校選択制度が取り入れ

られるようになった。しかし、そんな中でホーム・スクールを選択する家庭は、その理

由として学校教育への不満、具体的には不登校を挙げることが大半である。これはアメ

リカのそれとは明確な違いがある。アメリカではまず宗教的な理由が挙げられていた。

これにおいてもアメリカのホーム・スクールと日本のホーム・スクールは同一のものと

はとらえるべきでないと筆者は考える。しかし、日本のホーム・スクールに関する先行

研究はアメリカと日本のそれを照らし合わせあたかも同一のように述べ、アメリカの成

功を根拠として日本におけるホーム・スクール実施の正当性を謳っていた。以下はこの

矛盾について証明し、同時に日本でホーム・スクールを実施する上での問題点を明確に示

したい。

(各項目の連続性が薄く整理しきれていないため①~④の項目に分けて記していく。)

①不登校の救済策

 日本のホーム・スクールはアメリカのホーム・スクールの根底にある信条の重視から

離れ、単なる不登校児のための救済策となっている。先ほども述べたように、義務教育

では基礎教育と共に社会性や共生性を育てる必要がある。不登校となったからホーム・ス

クールを行う。そうした選択肢をとったとしても、基礎教育の面においてフォローがさ

れるかもしれないが、社会性に関してはどうであろうか。この双方が達成できなければ

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義務教育の選択肢としては不足していると言わざるを得ないのではないか。

② 学校との連携

 日本では、集団行動を重んじる文化があるため、行事にせよ、普段の学級活動にせよ、

一人が欠けることが全体に及ぼす影響が大きいといえる。吉井の調査54を例に挙げる。熊

本に住む A君と B さんの兄妹は、入学当初から学校に対して違和感を持ち、心的ストレ

スから体調を崩すほどにまでなったため、母親の判断で二人まとめてホーム・スクール

を行うこととなった。二人は普段は自宅で学習し、学校へは選択登校という形を取るよ

うになった。この選択登校はアメリカでも行われている形態で、基本的には自分の好き

な時のみ学校に通学するというものである。これに関して吉井がアンケートを行った結

果、学校側(各担任、管理職、他の教師)の意見としては以下のようなものが挙げられて

いた55。

・二人は、登校したい時に登校し、帰りたい時に帰る。また、授業に関係なく、

行きたい所に行き、やりたいことをやっている。

・予定は時間割で知らせるので、A君が登校しないと全員が困るようなときだ

け登校の催促の電話をしている。

・全体で作業する時に参加しない A君の姿を見たとき、何とも言えない嫌な気

分になったことがある。

・学校の教師としては、その時期その時期に学んでほしいことがあるし、積み

重ねも必要だと思う。

・学校の勉強を無理にでもさせた方がよいのか、させない方がよいのか迷うこ

とが多々ある。お母さんに尋ねると「本人が決める」というが、結局は子ども

は楽な方向に流れてしまうと思う。二人はきついこと嫌なことにまだ対応しき

れず、逃げている状態だと思う。

・小学校の基礎学力を十分習得して、その後自分の進みたい道に進んでも決し

て遅くない。その方が、より幅広い中から選択できて、より自分にあった方向

へ進めるのではないかと思う。

以上はアンケートの回答の一部を抜粋したまでであり、否定的な中にも学校なしで二人

が自立することを願う意見や学校の在り方を問い直すきっかけとなっている様子も見受

けられる。しかし回答の大半からは困惑や苦悩の様子がうかがえる。このように現在

ホーム・スクールと学校の連携はうまくいっていない。この事例に関しては選択登校を

行っていたが、実際は学校に完全に背を向け、関わりを絶ってしまうホーム・スクー

ラーの方が多く、これは学校への不信感からきているようだ56。アンケートにもあったよ

54 吉井「前掲」55 吉井によるアンケート調査の結果から一部を抜粋。56 西川「前掲」

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うに、日本の学校教育においては集団行動が必要とされることが往々にしてある。その

ため、学校に籍を置いている以上教師はその子どもに対しても配慮をせねばならず、そ

れが負担になっていることは確かである。そのためホーム・スクールを実施することは、

日本においては個人の身勝手な行動とみなされることが多くなることが予想される。

③社会性

 第2章の第2節第 1 項において、ホーム・スクールを行う上での懸念点として、社会性

について述べた。それについてホーム・スクールの子ども達の生活の場が家庭に限られ

ていないことや学校を含む施設の利用、ボランティア活動について言及することで、そ

の問題を回避することができるという先行研究を紹介した。しかしこれを日本において

考えたとき、社会的に認められていないホーム・スクールで育つ子どもたちは、家庭の

外に出てのびのびと生活することが難しいのではないかと思われる。不登校がきっかけ

になってホーム・スクールを始める家庭が多いことからも、家庭外の社会と、特に学校

との交流を困難とする要因となりえるだろう。そうした時、現在の日本の状況において

は、ホーム・スクールで育ちながらも、豊かな社会性を持った子どもを育てるのは困難

であるのでないだろうか。

 さらにホーム・スクールは本来不登校からの救援策として存在しているわけではない

ということや、学校との関わり方がまちまちであること(行きたいときだけ学校に行く

というホーム・スクーラーが存在していること)も懸念する点である。不登校に関して

は第1章において示した通り、そのきっかけとして高い割合を示しているのは情緒不安

定や無気力、次いでは友人や家族との関係をめぐる問題である。この項目とホーム・ス

クーラーとなった家庭との相関関係は明確ではないものの、単純に学校という環境に適

応できないからホーム・スクールを行うという図式を許すのは正当性が低く、また子ど

も達の成長にとってもよいとは言えないと筆者は考える。

④環境・法的整備

日本では、ホーム・スクールを行うための環境がそろっていない。もし法的に認められ

たとしても、それが社会に定着するのには時間がかかるだろう。ホーム・スクールを行

うにあたって、社会性の確保は死活問題であるが、アメリカではこれを地域や学校との

連携の下で確保している。つまり、現実的にホーム・スクールを行うにあたって、周り

の承認は重要な要素となるのだ。学校教育をあきらめたとして、子ども達をそんなリス

クのある環境にさらす妥当性はあるのだろうか。学校制度がもっと整えば、ホーム・ス

クールを行う必要性はないのではないだろうか。

 しかしこれまでも述べてきたように日本ではホーム・スクーラーは法的整備を望んで

いない。ホーム・スクーラーのネットワークが整備されているにもかかわらずこうした

動きが見られないことはアメリカのように家庭・学校・地域の共同の中でホーム・ス

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クールを行うということとは程遠い状況であると言える。この姿勢を貫く限りにおいて、

家庭を「中心とした」ホーム・スクールの実施は難しいと考える。

以上の4点を現状の日本のホーム・スクールの問題点と考え、筆者は現状のまま日本で

ホーム・スクールが行われることに対して異を唱える。しかしホーム・スクールを選ば

ざるを得ない子ども達がいることは無視できない事実である。これは義務教育に限らず、

公教育において大きな問題である。そのためにも学校教育の中で子ども達に自由な選択

肢を広げられないだろうか。ここに関しても何か策を練る必要がある。

現在の状況のままのホーム・スクールの実施は行われるべきではない。それは何より

これを許していることは義務教育の形骸化につながってしまい、集団活動が多い日本に

おいては、学校に通っている生徒たちにとっても影響を与えやすいと言えるからだ。こ

の解決のためにも筆者は学校において義務教育では何をすべきかを再考する必要がある

のではないかと考える。そうした視点から次章は執筆を進めていきたい。

≪以下構想中≫

第4章 今後の義務教育の再考

第1節 学校という空間

第2節 義務教育の目標

結びとして

義務教育に関して、子どもには学校に行く権利がある。これを保護者は保障するとい

うのが日本の義務教育の中で踏みしめられてきた義務と権利の関係である。しかし、こ

こにおいて子どもが学校に行かず家に残るという選択肢を取る、つまり権利を放棄する

という選択肢が許されるのではないかというのがホーム・スクールを指示する側の主張

であろう。しかし現状においてそれでは公的な責任を果たせていない。これに関して

ウィスコンシン州対ヨーダー事件を引き合いに出し、織田は次のように述べている。

「・・・保護者の偏狭な主義・主張によって子どもの健全な社会的発達が阻害され、成

長してから社会で孤立化することは、本人にとっても社会にとってもマイナスである。

したがって教育の自由が保護者や子どもにあるといっても、教育における保護者の義務

や子どもの権利は一般社会からの視点で考えることが優先されよう57。」

57 織田「前掲」,p.22 より引用

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現状においてホーム・スクールは学校という空間からの逃避である。現在学校で為さ

れている義務教育に等しい、またはそれ以上の基礎教育や社会性の担保があってこそ初

めて個性を重視した「その子」の教育は行われてしかるべきではないか。そもそも学校

だけが教育の場であるという認識自体が間違っており、教育とは学校と家庭、その周辺的

な助けが相互に関係し合い、成り立っていくものではないだろうか。

また田中は学校が画一的な方向に向かったのは、保護者が学校万能主義に陥り、躾まで

学校に任せた結果でもあると指摘している。その上で次のように、学校に対する不信や

不満が募る現代においても、学校はそれでもなお人々の精神の拠り所となっていると述

べる58。

「地域社会の教育の核として小学校が位置づけられ、多くの人々が学校に集まってくる。

現在では昔とは違って立派な建物が多く存在するにもかかわらず、風水害、地震の際、

人々が集まるのは小学校、中学校なのである。学校を種々批判するにもかかわらず、学校

が、また学校教育が人々の精神の拠り所となっているのは事実であろう。学習塾や習い

事の塾が多く出現し、また学校開放の制限があるにもかかわらず、人々は、学校に様々な

期待を寄せている。」

 

 現在日本の義務教育は二つの大きな柱を掲げている。一つが国民育成、二つ目が個性を

伸ばすことである。この二つの柱こそが日本の義務教育の在り方を曖昧にしているので

はないか。アメリカでは公教育の第一理念はその子の教育ということだ。これを理念と

するからこそ、多様な教育形態が認められている。では日本ではどうだろうか。画一的

な既存の学校教育の中では、個性を伸ばすどころか、その競争社会の中に埋もれてしま

う子も少なくない。個性を伸ばしたいと考えているのは保護者である場合が多いだろう

が、確かに個性豊かな人材を生み出すことはこれからの社会にとって不可欠な要素であ

ろう。しかし、それだからといって基礎教育もままならない子ども達を生んでよいのだ

ろうか。それで義務教育と呼べるのだろうか。確かにホーム・スクールはアメリカの全

州で認められているばかりか、OECD の国々の53%で認められているというデータも

ある59。しかし、単に世界的に拡大しているから効果があるという判断ではなく、その国

の文化的・社会的な文脈においてホーム・スクールが認められるべきか、必要であるの

かについては、熟考する必要がある。

58 田中「前掲」59 Davis, Jennifer, “School Choice in the States: A Policy Landscape” Council of Chief State School Officer, 2013,p.32

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◇今後の論の方向性と筆者の主張

今回は調査不足であり、仮説を立てそれに沿って論を組み立てることが困難であると

感じたため、春課題で資料が不足していると指摘を受けたアメリカのホーム・スクール

(と公教育)に関する資料を中心に調査を行いました。しかし、卒業論文の中心はあくま

で日本の義務教育に据える予定です。

今回の夏課題を終えて、現在構想している卒業論文の論の流れを箇条書きにはなります

が、ここに示しておきたいと思います。みなさんから何かアドバイスをいただけたらと

思いますので、よろしくお願いします。

【卒業論文の論構成(仮)】

・現在学校に関して様々な問題が起こっている。その中でも身近なものとなっているの

が不登校である。

⇒不登校児童・生徒の数⇒各都道府県約 1000 人あたり 10 人(約 1%)、約 60%の学校

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・日本では年齢主義が採られているため、義務教育段階では学校に通わずともその過程を

修了することができる。

⇒日本において義務教育とは何か。なぜ義務教育を受けねばならず、何を目的として行わ

れているのか。

                    ↓

・義務教育に関する法令を見てみると、「市民の育成」が目的として記されている。一方

で、対極的とも思える「個性の尊重」が近年の文部科学省からの答申では記されている。

⇒この二つを目標とすることは可能なのだろうか。今後日本の義務教育はどのようになっ

ていくべきなのだろうか。

                    ↓

・これに対して現在、従来の学校教育の形が変化してきており、例えば学校選択制度が実

施されるなど、実際の制度としての変化が起こっている。これは教育に関して受ける側

の選択肢が広げられたことを意味する。

・その中でもホーム・スクールを行おうという動きは他のオルタナティブな選択肢とは

一線を画した取り組みである。なぜならば、教育=学校という従来の考え方を揺るがす

ものであるからだ。

                    ↓

・確かになぜ義務教育は学校でのみ行われているのだろうか。義務教育をホーム・ス

クールを利用することでクリアすることはできないのだろうか。

⇒日本におけるホーム・スクールの先行研究を調査。その具体的な取り組みを示すととも

に、それが行われている背景や理念に着目する。

                    ↓

仮説提示

「日本ではホーム・スクールを不登校といった学校教育に対する問題からの救済策とし

てしかとらえられておらず、その要因は基礎教育を軽視し、個性の尊重ばかりを重視し

ている風潮にある。」

⇒つまり、不登校児のために使われ、いわゆる“school”の役割を果たすに達していないこ

とを示したい。

検証方法として、

① そもそもホーム・スクールとはどんなものであるのか

 ⇒アメリカのホーム・スクールを成功例(合法化されている、広く知られているた

め)として、それがどのような理念の下に成り立っているのか。どのような経緯で現在

に至ったかを示す。

→国によって相違はあることも考慮しつつ、ホーム・スクールを行うために不可欠であ

ると思われる要素を挙げ、それが現状として足りていないことを示す。

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具体的には、

・社会的な承認=周囲の協力

・methodや規定    など

⇒これらを検証して、

・日本で現在行われているホーム・スクールは本来的なそれとは同一視できないもので

ある。

・現在日本では、ホーム・スクールを行う保護者たちからそれを義務教育の一つとして

認可させようという動きはない。しかし学習の方法に関しても、情報交換のネットワー

クは存在するが、学術的な方法は用いられず、単に学校教育からの避難場所と化している。

・日本は子どもを自由に育てるという考えが独り歩きし、市民育成の視点が欠けている。

これをよしとして認めてはいけない。

というようなことが言いたい・・・。

                   ↓

現状でホーム・スクールを行う妥当性は低い、不登校の子ども達にとってもよりよい方

法だとは言えない。そうだとしても、では学校で行われる義務教育はどうあるべきか?

学校教育の中で何か改革を行う必要があるのではないか。

例えば、

・日本の義務教育は2つの目標の下にある。これらをバランスよく達成する方策を見出

す必要がある。(自分なりの具体案を示す必要あり)

・学校評価制度は現在どのように活用されているか。評価制度を活用すれば、公立の中で

も各学校がそれぞれの目標を定め、様々な教育方針(基礎教育の充実、個性の尊重など)

を明確にすることができるのではないか。

・現在起こっている問題は、保護者と学校側での目標が共有できていないこと。それを

一致させ、両者が納得できる学校にする必要がある。

⇒こういったことが実現できれば、それが子どもにとってもより良い環境づくりになる

のではないか。(この提案の部分をしっかりと述べたい!)

【筆者が主張したいこと・明らかにしたいこと】

 公教育において「市民であること」と「個人であること」のどちらが優先事項である

か。どういったバランスをとるのか。これを考えるためには根本に帰る必要がある。人

は社会の一構成員としての役割を果たすことで初めて、具体的に言えば納税を始めとし

た義務を果たす、そうしたシステムを理解する能力を持つことで個人として認められる。

民主主義の国においては個々人が国を作っていくが、その一人としてふさわしい能力を

手に入れる機会を平等に与える役割を果たすのが義務教育ではないか。つまり現在の義

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務教育において最たる問題点は、そうした基礎教育の部分さえ十分に見に付けられない

子ども達がいることである。個性とはその上に成り立つものではないか。基礎教育で飽

き足らない子ども達を無視してよいということではなく、そうした子ども達にも、「そ

の能力に応じて」適した教育を受ける機会を与えるべきだ。つまり、現代の義務教育に

おける問題を解決するためには①基礎教育を全ての子どもに身に付ける機会を、教育資源

を最大限に使って与えること。②基礎教育を十分に身に付けた段階の子ども達に対し、そ

の個性を伸ばす環境を整えること。この二つに分けて考える必要があると筆者は考える。

 家庭と学校の連携について今どのようなことが論じられているか調べる必要がある。

家庭から見た学校の問題点、学校から見た家庭の問題点の両方を概観した上で、論を組み

立てねばならないと思う。つまり私が明らかにしたい「学校の役割」を追求するために

は、「家庭の役割」も明らかにする必要がある。

◇おわりに(夏課題の反省)

【夏課題の反省】

・調査で手いっぱいになってしまい、仮説を立てて論を組み立てることができなかった。

・自分の主張とその warrant として集めたデータがうまく組み合わさっていない。その

ため、先ほど示した仮の論構成もぼやっとしている部分が多く、特に仮説にあたる部分

にどうホーム・スクールのデータを使うかが見えていない。自分の主張の明確化とそれ

に必要な情報の取捨択一を早急にする必要がある。

・文献の読み込み量もまだ十分ではない。今回は英語文献に時間を取られてしまったが、

今後論の中心になるのは日本の義務教育であるので、それに関する文献に相当量あたる

必要がある。

・今回遅れを取った分、今後取り戻す必要がある。当たり前ではあるが、自分が納得でき

る卒業論文とするためにも、出来る限りの時間をかけて調査・執筆に取り組まねばなら

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ない。

参考文献

■英語文献

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■日本語文献

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【雑誌論文】

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短期大学紀要』49, 2013, pp.17-29上田伝明「高等学校教育を義務制に -「教育を受ける権利」 (憲法第 26条)の理念をと

おして-」,『教育実践研究指導センター研究紀要』 Vol.4,1995, pp.45 -56沖裕貴「学力低下論争」を振り返って ―「現代の教育」の講義と受講生との議論か

ら」,『立命館高等教育研究』11,2011, pp.131-150大久保卓治「ホームスクール実施要件とその憲法的評価―合衆国各州の規制と判例を手が

かりに―」,『大阪学院大学通信』33(12),2003, pp.19-29織田成和「教育基本法体制における義務の概念近畿大学工学部紀要 人文・社会科学

篇」40, 2010, pp.11-23工藤文三「学習指導要領の基準性と学力観(第 1 部 <特集>学力問題の多面的考察)」,『学

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社会学的考察」,『教育社会学研究』87,2010, pp. 47-67佐々木宏「「学校に行かない」という選択--ホームスクールの可能性と課題」,『論座』

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【web】

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